Bill FrisellによるJohn Lennonトリビュートは結構味わい深い
"All We Are Saying..." Bill Frisell (Savoy Jazz)
これは意外な組み合わせと言ってもいいのではないだろうか。Bill Frisellのギターと言えば,独特のアンビエンスを生み出すサウンドが特徴的であるが,そのFrisellがJohn Lennonと対峙するとどうなってしまうのか。興味はその一点に集中していた...,実際に聞くまでは。
しかし,このアルバムを聞いてみて感じたのは,非常にストレートにLennonのメロディを紡ぐBill Frisellだったのである。アドリブは最小限に留め,John Lennonが書いたメロディの素晴らしさを,Bill Frisellならではのサウンドでかなり真っ当に再構築するという印象が強いのである。私としては,このストレートさにLennonへのリスペクトを感じてしまうのである。このメロディ・ラインの前ではギミックは不要だと言っているかのようなのである。
そうした演奏なので,大きな驚きはない。しかし,このサウンドでこのメロディってのはなんとも和むのである。ややイントロ部で緊張感が高まるのは"Mother"ということになるが,それでもメロディをしっかり弾くという基本スタンスはちゃんと守られている。Bill Frisellはライナーにこう記している。
"The songs are part of us. In our blood."
そうなのである。彼らの人生の中で,これらの曲が肉体の一部と化してしまったからこそ,それを自然に発露させれば,こういうサウンドになるということなのだと思う。
ある意味,こうした演奏スタイルは潔ささえ感じさせて,私としては相応に評価したくなる。もちろん曲のよさに救われている部分もあるかもしれない。だが,本作を通じて,私はJohn Lennonの書いた曲のよさを再確認することができたのだから,それはそれでいいことなのである。そして最後に演奏される"Give Peace a Chance"は平和へのアンセムのようにさえ響いている。この締めくくり方は非常に感銘深いものであった。
本作を傑作だとは評価はしないが,いろいろな思いをリスナーに喚起させることができるという点ではその存在意義を認めたくなる佳作である。やはりLennonの書く曲は素晴らしかったのである。星★★★★。
Personnel: Bill Frisell(g), Greg Leisz(g), Jenny Scheinman(vln), Tony Scherr(b), Kenny Wollesen(ds)
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Bill Frisell (g)
Greg Leisz (g)
Jenny Scheinman (vln)
Tony Scherr (b)
Kenny Wollesen (ds)
Rel:2011 SAVOY JAZZ SVY17836
Recorded at Fantasy Studio ,Berkeley ,CA
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このアルバムを聴いた時に、演奏がカントリー風味もあるロックで、聴き心地が良かったですが、著作権料、全曲だと高いよなあ、どのくらい売れば元が取れるかなあ、と心配した私はやっぱり貧乏性でした(笑)。
日本では分かりませんが、アメリカではけっこうこういうアルバム、売れてるんじゃないでしょうか。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2011年10月 7日 (金) 19時03分
910さん,こんにちは。TBありがとうございます。
カントリー・フレイバーというのは編成ゆえに感じられるところではありますが,それよりも私にとっては記事にも書いたようにストレートな演奏が好感度高かったです。
ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年10月 8日 (土) 13時37分
こんにちは。
とらばだけ先にすみません。
今日みたいなお天気のいい日にぴったりなアルバムです。
しかし、レノンやビートルズの曲って、いい曲だよねぇ。
コアなファンからしたら、いいかげんなリスナーなのですが、アクのないビルフリの綺麗な音も楽しめて、楽しいアルバムでした。
断捨離ですか。。
わたしはぜったいできません。。
投稿: Suzuck | 2011年10月10日 (月) 16時34分
すずっくさん,こんにちは。
今日は天気がよかったですね。外は暑いぐらいでした。こんなときに「断捨離」に取り組んでいた私はアホみたいです。すずっくさんには「断捨離」は関係のない世界でも,こちらの住宅事情は深刻なので仕方がないです。でも,無条件に服を捨てるのって結構快感だなぁなんて思ってしまいました。
でもCDは処分できないんだろうなぁ...。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年10月10日 (月) 17時22分
Bill Frisellが、Bill Frisellの音世界でJohn Lennonの音楽をかなりストレートに演奏しているだけ と言ってしまえばそういうことなんですが、"これほど魅力的に響くものかと驚愕"してしまうのだから、Bill Frisell恐るべしであり、John Lennon恐るべしであります。
TBありがとうございます。逆TBさせていただきます。
投稿: oza。 | 2011年10月27日 (木) 06時14分
oza。さん,こんばんは。TBありがとうございます。
やはりLennonの曲あってのこの演奏だというのは間違いない事実ですが,Frisellらしい魅力は十分出ていますよね。私はJenny Sheinmanもいいと思いますが,実はGreg Leiszのペダル・スティールがサウンドのいいアクセントになっているようにも感じます。いずれにしても特異なサウンドですよねぇ。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年10月27日 (木) 23時45分
音楽狂さん、こんにちは、このアルバムの企画自体私たち向きですよね。
あまりにストレートで最初控えましたが、我慢がならない、時期もあってとても楽しんでいます。
投稿: monaka | 2011年11月17日 (木) 21時23分
monakaさん,こんばんは。TBありがとうございます。
確かに私たち向きでした(笑)。インパクトが強いわけでもなく,名盤ってわけでもないかもしれませんが,なぜか心地よい。そんなアルバムだと思います。Bill Frisellを見直したと言ってもいいと思います。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年11月17日 (木) 22時38分
音楽狂さん、こんにちは。今日辺りからガクッと冷え込んできました。
結構このビルフリは心地よくて、記事にするタイミングを逸してきましたが、今日は僕が小さい頃でも覚えている夜のニュース1980年の今日(日本時間だと違うんですけど)ということで、ささっとアップしました。壊さずにこのメロディをリスナーに温かみをもって届けられるビルフリは凄いと感心した一枚でした。TBさせていただきます。
投稿: とっつぁん | 2011年12月 8日 (木) 19時35分
とっつぁんさん,こんばんは。TBありがとうございます。そうでしたねぇ。12月8日でしたね。
Frisellは意図的にメロディ・ラインを維持しながら演奏したんだろうと思っていますが,確かにこのアルバムは心地よかったです。本当にリスペクトとかシンパシーというものが感じられるアルバムでした。
ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年12月 9日 (金) 21時42分