John McLaughlinのWarner時代を振り返る(その1)
"Music Spoken Here" John McLaughlin(Warner Brothers)
私が認識する限り,John McLaughlinがWarner Brothersレーベルに残したアルバムは3枚ある。後の超弩級モントルー・ボックスもWarnerレーベルだが,それは今回の対象とはしない。その3枚とは今日取り上げる"Music Spoken Here"及び"Belo Horizonte","Mahavishnu"である。John McLaughlinが自らのWebサイトで述懐する通り,"Mahavishnu"以外の2枚で狙ったのは,McLaughlinのアコースティック・ギターを中心とする音楽だったわけだが,Warnerとはそうした路線では折り合いが悪かったらしい。それが,Billy Cobhamを迎えたMahavishnuの再編アルバムである"Mahavishnu"を制作するきっかけになったのかもしれない。
いずれにしても,McLaughlinがWarnerに在籍した頃は,あのスーパー・ギター・トリオが全盛の頃であるから,彼がアコースティック・ギターの可能性を追求しようとしたこと自体は理解できないわけではない。しかし,アコースティック・ギターだけでなく,当時の最新鋭機器であるSynclavierの導入が一つのアクセントであり,更にはそれを弾いていたのが当時の奥さんであるKatia Labèqueというのが一つのポイントであろう。Katiaは妹のMarielleと組んだLabèque Sistersでの活動をしていたれっきとしたクラシック畑のミュージシャンである。それがMcLaughlinと共演するという越境型の活動が話題になったのも懐かしい。余談だが,KatiaはMiles Davisの"You're under Arrest"において,"Katia Prelude"と"Katia"の2曲にその名前が取られているのも,McLaughlinが同作に参加したことと無意味ではなかろう(おそらくはスタジオに一緒にいて,美人のKatiaにMilesが目を付けたんだろう)。
私は何だかんだと言って,John McLaughlinのアルバムを保有しているわけだが,実はこのWarner時代のアルバムを結構評価していて,実は全てLPで保有しているのが,先日思い立って,これらのCDを購入することとなって,改めて聞き直しているのだが,やはりこれは悪くない。相変わらずのMcLaughlin節が炸裂しているが,それを支えるバンド・サウンドとの親和性は悪くない。本作は一時期Wounded Birdレーベルから再発されたはずなのだが,今はカタログから消えてしまっていているのが不思議だ。私は某中古サイトで結構安く購入できたからいいが,無茶苦茶な高値だったら,LPで我慢していたはずである。ほかのWarner時代の2枚はカタログに残っているだけに,これはなんでなんだろうと思わざるをえない。
いずれにしても,この英米仏混合バンド(McLaughlinは"The Translators"と呼んでいる)はメンツもいいし,演奏もいいので,なぜ過小評価なのか理解に苦しむのだが,やはりMcLaughlinはエレクトリックのイメージが強かったということなのかもしれない。だが,これはこれで私はいいと思っている。キーボードとのバランスがちょっと悪いかなぁという点は差し引いても,星★★★★ぐらいにしておいてもよいハイブラウなフュージョン・ミュージックだと思う。やはり私はMcLaughlinには甘いのか...。
尚,ジャケット・デザインは名工房Hipgnosisによるものである。彼らがジャケットのデザインをすることはジャズ界では非常に珍しいことだと思うが,よくよく調べてみたらスーパー・ギター・トリオの"Passion, Grace & Fire"もHipgnosisデザインであった。う~む,勉強になるねぇ(笑)。
しかし,その1と言ったら,ちゃんとあと2作もやらないとねぇ。プレッシャーだ。
Recorded in June - July, 1982
Personnel: John McLaughlin(g), Katia Labèque(p, synclavier), Francois Couturier(el-p, key), Jean Paul Celea(b), Tommy Campbell(ds)
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