Tangerine Dream:音の極北
"Zeit (Expanded Edition)" Tangerine Dream(Esoteric)
この音楽にはビートらしいビートも,メロディらしいメロディもほとんど現れてこない。よって,これを音楽と呼ぶのか,あるいは呼べるのかという疑問もあることは間違いのない事実だろう。よって,これをどういう局面でプレイバックするのかというのも問題になってくるわけだが,私がこれを聞いていたのは,料理中のキッチン・ドリンカーとして,しかも流し聞きしていたという信じられないシチュエーションである。
だからと言ってこれをそうした局面でプレイバックしていることが苦痛だったかと言えば全然そんなことはない。単純に環境と一体化していただけと言ってもいいし,プレイバックしていることすら意識させなかったと言ってもよい。換言すれば,生活の中の通奏低音のごとく,音が流れ続けているだけのことなのである。
だが,多くの人々にとってはこのアルバムは確実にハードルが高いものであり,ほとんどの人は「何じゃこりゃ?」という反応を示すに違いない。だからこそ,主題に音の極北と書いたわけだが,この音は特定の人にとっては麻薬的にも響くだろうし,多くの人にとっては睡眠導入剤としての効果を持つもののように思える。私はこれにはまるところまでは決していかないが,これはこれとして,次世代のミュージシャンたちに与えた影響も大きかろうという点では評価せざるをえないと思う。
いずれにしても,このアルバムには採点行為そのものが無意味である。基本的には賛否両論確実とは言え,理屈では考えられない世界に行ってしまっていることは厳然たる事実であるから,まずは一度何も考えずに身を委ねてみるということが重要だろう。それでダメなら二度と聞かなければいいし,気に入れば,このアルバムを繰り返し聞くもよし,ほかのアルバムも当たってみるもよしというだけのことだ。
それにしても,Disc 2としてついてきたケルンでのライブも,音の極北感はほとんどDisc 1と一緒というのは考えてみれば凄いことである。ある意味これほどぶっ飛んだ音楽は滅多に聞けない。Tangerine Dream恐るべし。
Recorded in 1972(Disc 1) and Recorded Live at he Grossen Sendesaal des Rundfunkhouses, Cologne on November 25,1972
Personnel: Chris Franke(synth, cynbals, key), Edgar Froese(g, generator), Peter Baumann(synth, org, generator) with Steve Shroyder(org), Florian Fricke(synth), Christian Vallbracht(cello), Jochen von Grumbcow(cello), Hans Joachim Brune(cello), Johannes Lucke(cello)
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コメント
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これは面白い音楽の提案ですね。
子供の頃、いかに部屋を涼しくするか?
と、友達や妹と、音の即興で寒さを演出し、お化けの絵を描いて、さらに、部屋を暗くしたり、工夫した夏休みの時間を思い出します。
夜、お化けの絵と、音を思い出し、トイレに行けなくなり、妹と子供部屋で震えていて、母に叱られましたが、今振り返ると、とても楽しい遊びでした。
大学になり、武満徹の音楽を知り、、wow!これって、子供の時の遊びに似ている!
と、思いましたが、、、、
このCDをかけたら、心理的に
3度くらいは室温が下がり、節電にもつながる気がします。
しかし、あまり人ごみのない地下道では絶対聞きたくないですし、会社の受付で流れていたら、お客さんが、来なくなり、叱られそう。(笑)
私は、宇宙飛行士に聞いてみたい、と思う事があります。実際、地球でイメージしている音の雰囲気と、宇宙に行ってどうだったか?
宇宙には、ほとんどの人が行ったことがないのに、同じようなイメージの音があること、人間の想像力はすごいわ。
投稿: ひまわり | 2011年6月28日 (火) 15時44分
ひまわりさん,大変お返事が遅くなってしまいました。すみません。
この音楽で部屋の温度が下がるような気がするというのはよくわかる気がします。しかも会社の受付で流れていたら...。それはあまりにも怪しいですよねぇ(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年7月 2日 (土) 15時17分