Argerichに感謝したくなるベネフィット・アルバム
"Schuman / Chopin Piano Concertos" Martha Argerich / Christian Arming / 新日本フィルハーモニー交響楽団(Kajimoto)
本作に収められた演奏は昨年Martha Argerichが来日し,上記のメンツですみだトリフォニーホールに出演した時のライブ音源である。元々は彼女の生誕70周年記念アルバムとしてリリースされる予定だったらしいのだが,それを今回の震災を受けて,急遽チャリティ・アルバムとして発表されたものである。
残念ながら,このアルバムは流通経路が限定的であるため,必ずしもすぐに入手できなかった人もいるかもしれないが,これは是が非でも入手して,被災地の支援にあててもらいたいアルバムだと断言してしまおう。
そもそも彼女がライナーに寄せているコメントが(ちょいと英語としては違和感があるが)泣かせる。"Please do everything you feel could somehow help the victims of the earthquake. I agree of course the use of the live recordings of Schumann and Chopin. I am so worried and concerned about the situation in Japan. I look all the time the news and feel the incredible pain and courage that the Japanese people endure. My deep love and admiration, hoping to visit Japan very soon, my words cannot express much. Excuse me. Martha"
もちろん,彼女がこの演奏を展開しているその場では,今回の震災のことなどは想定していなかったわけだが,それでもこうした演奏をベネフィットのためにリリースしてくれるその心意気が素晴らしいと思う。本当にありがたいことである。
Martha Argerichがソリストとしてこれまでも何度も演奏してきたであろうこれらの曲を弾くのだから,演奏が悪いわけはないのだが,それでもここに聞かれるのは,古希目前の人の演奏とは思えぬ力強さである。若かりし頃のArgerichのようなもの凄い感覚というものは影をひそめたかもしれないが,円熟という言葉とは少し違う若々しさやタッチの瑞々しさが感じられるのである。まさにClear & Crispなのだ。やはり凄いピアニストだと思わされる演奏ぶりなのである。
そして,それよりも何よりも,やはりこのArgerichの被災地に寄せる思いはその感動を倍加させるものだと言ってよい。本当にありがたいことである。そうした意味も含めて,このアルバムには星★★★★★しかありえないだろう。皆さんも是非。
Recorded Live at すみだトリフォニーホール on November 28 (Chopin) and December 1 (Schumann), 2010
Personnel: Martha Argerich(p), Christian Arming(cond), 新日本フィルハーモニー交響楽団
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こんにちは!
今日は休みで昨日買ったオーディオ雑誌を読んでおりました!そうしたらこのCDはガラスCDでも出るんですね!もちろん約10万円もするので買うことも聞くことも出来ませんが、普通のCDで聞いても素晴らしいとあったので聞いてみたい思います
その前に聞きたいものをオーダーしたのでその後の予定です
投稿: takeot | 2011年5月25日 (水) 14時19分
takeotさん,こんばんは。ガラスCDもチャリティの一環なんでしょうから,それはそれで大きな社会貢献ですが,普通あの金額は出ないでしょう。
でも演奏は素晴らしいですから,通常盤でも全く問題ないと思います。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年5月25日 (水) 23時58分