久しぶりに幻想交響曲を聞く
"Hector Berlioz: Symphonie Fantastique(幻想交響曲)" Myung-Whun Chung / Orchestre de l'Opera Bastille(DG)
私のクラシックの趣味はかなりバラバラで,はっきり言って一貫性もポリシーも何もないって感じなのだが,昔からなぜか好きな曲というのはあって,この「幻想」なんてその代表と言ってもいいかもしれない。なんでこの曲が好きなのかってのは自分でもよくわからないのだが,演奏を通して,結構なダイナミズムを保持できる曲だからというのはあるとは思う。しかしながら,この曲で一番好きなのは第2楽章のワルツだってのも相当変わり者だとは思うが...。
そんな私なので,昔から「幻想」のLPやCDは結構な枚数を保有していて,若い頃は,どの演奏がああでもない,こうでもないなんてよくやっていたものである。一般的に言えば,この曲の演奏ではミュンシュ/パリ管が決定的と評価されているが,天邪鬼の私はマルティノン/フランス国立放送管の演奏が最高だなんて言ってきた。その後もいろいろな演奏を聞いたわけだが,マルティノン盤に比肩しうるのはアバド/シカゴ響盤かなぁなんて思っている。その後,私がこの曲を聞く機会も年とともに減少していったのだが,それでも何だか無性に聞きたくなって,珍しくも中古盤屋のクラシック・コーナーを漁っていて見つけたのがこのアルバムである。
このアルバムも以前,1995年のレコードアカデミー大賞を受賞しているってことは,その年の最優秀レコードと認知されているということだが,そんなことは露知らず聞いてみたところ,確かにこれは優秀な演奏だと思った。オケはパリのオペラ座のオーケストラということだろうが,チョン・ミュンフンの指揮と相俟って,その演奏能力も私の想像以上に優れていたことが実証されている。とにかく,この曲を活かすためのダイナミズムに第1楽章から溢れているところが素晴らしい。これはかなり興奮させられる出来だと第1楽章から私は確信してしまった。私にとってはいくら好きだとは言っても,この曲の鬼門は冗長さを感じさせる第3楽章にあるのだが,この演奏では終盤にかけてのテンションが高いので,その3楽章が丁度良いインタールードに聞こえると言っては言い過ぎか。いずれにしても,静と動,緩と急を見事に使い分けた演奏である。ここまではっきりした演奏はあまり記憶にないのである。よって,多くのリスナーにこの演奏が評価されるのも首肯できるものであり,これはやはり強烈な名演と言ってよいものだと思う。
これがライブだったら,第5楽章を終わった瞬間,「ブラボー~!!」確実な演奏と言ってよい。いやいや,それにしても,凄い演奏をこれまで聞かずにすませてきたものである。お見それしました。ということもあって,星★★★★★。マルティノンの演奏とは対極にあると言ってもいいだろうが,これはこれでこの曲の魅力を極限まで引き出したと感じられる激演で,本当に素晴らしい。
最後に,よくよく考えてみると,私が好きな「幻想」の演奏って,全部2楽章にコルネットが入っているなぁ。偶然かもしれないが...。
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こんにちは
きのうの記事では「イッヒッヒッ」と楽しそうな記事を書かれていた音狂さん。
今日は すてきなクラシックをご紹介ですね(笑)
他のブロガ-の方々もそうですが、映画にしても ジャズにしても 毎回 自分の感じたことを いつも上手に描写されていて 凄いですね。
クラシックも あまり詳しくないのですが たまに 聴きたくなることありますよね。
今回 5つ星ですから 気になります。でも お宝のようで 同じものは見つけにくいでしょうね。
投稿: マ-リン | 2011年4月 6日 (水) 15時12分
マーリンさん,こんばんは。このCDは簡単に手に入りますよ。私は中古で買いましたが,735円でした。その値段で,こんな演奏だったら,安い買い物です。
最近はクラシックはあまり聞いていませんが,たまにオーケストラのぐわ~んっていう響きが聞きたくなるんですよねぇ。是非お試し下さい。カップリングされている曲はさておきですが(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年4月 7日 (木) 21時15分