余韻が素晴らしかった「ヒア アフター」
「ヒア アフター("Hereafter")」('10,米,Warner Brothers)
監督:Clint Eastwood
出演:Mat Damon,Cecile de France,Jay Mohr,Bryce Dallas Howard,Frankie McLaren,George McLaren
この映画は,実は今年の映画でも最も早い時期から見たいと思っていた映画である。私は過去2年,映画の年間ベスト作にEastwoodの「グラン・トリノ」と「インビクタス -負けざる者たち-」を選んできたが,近年のEastwoodのヒューマンな感触に満ちた作品は,私の心の琴線に本当に触れてきたからである。よって,今回の新作についても非常に期待が大きかった。そしてこの映画であるが,私はまたも感動させられてしまったのである。
この映画のテーマは「苦悩と救済」だと思う。様々なかたちで「死」と結びついた3人の登場人物にまつわるストーリーが,一つに紡がれるように絡みあっていくという展開は,近年の映画には結構あるパターンだと思うが,この映画のシナリオにはその「偶発性」に若干の無理があるようにも思えるが,フィクションなのだから固いことは言うまい。それよりも苦悩を抱える3人が,何らかのかたちでの魂の救済を得るというところが何とも心地よく,私は素直に感動してしまった。
Eastwoodにはめずらしく,津波のシーンのようなVFXを駆使したシーンが出てきて,ビックリするのも事実であるが,それはストーリー上必要なものであり,不自然な感じはしなかった。逆にこうした映像と,その後に展開される落ち着いたストーリーとのコントラストが明確でよかったのではないかと思う。
もちろん,「臨死体験」あるいは「死後の世界」というもののイメージをより明確にすべきだという議論もあるだろうが,それがこの映画の主題ではないのである。繰り返すが,そうしたモチーフを使ってEastwoodが描いたのは「救済」なのである。そして私が何よりも強く印象に残ったのは,この映画のラスト・シーンである。これほどある意味では地味な終わり方でありながら,非常に強い印象を残すラストはなかなかない。このシーンのあまりの心地よさには今回もやられてしまった。私が何を言いたいかは映画を見て頂くしかないのだが,まさしく「滋味」に溢れながらも,素晴らしい余韻を残している。大傑作とは言わないが,今回も見てよかった~とつくづく思わせてくれるEastwoodの佳作である。星★★★★☆。
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死者と対話する特殊な能力故に霊能者としてもてはやされながらも虚しさと孤独を感じているジョージ(Matt Damon)、バカンス中に津波に襲われ...... [続きを読む]
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こんにちは。
私もこの映画をとても楽しみにしておりまして、ブログにUPして頂いて時点で「やった!」と喜んでいたのですが、まずは自分で見てから、ということで拝読しておりませんでした。で、ようやく昨日映画館で見て、安心して本日読ませて頂いている、というところです(笑)
概ね貴殿のご感想に同意なのであまり申し上げることもないのですが、とにかく(津波を除く)全編の描写が穏やかで淡々としていて、本当にイーストウッドの映画に対する眼差しが素晴らしいと感激しました。見る側に「想起させる余地」をあえて沢山残しているような印象も。仰せのとおり大傑作ではないけど、かなり質の高い映画だと思いました。次はFBIのフーバーを描いた作品だとのこと、楽しみです。
長々と失礼致しました。
投稿: よーく | 2011年3月 2日 (水) 09時03分
よーくさん,こんばんは。
この映画は本当に淡いタッチという感じのものでしたが,やはり津波とのコントラストが強烈ですよね。私の後ろでご覧になっていたご高齢のご婦人が,席を立つとき「いい映画だった」とつぶやかれたのが印象的でした。私もそう思っていましたから。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年3月 2日 (水) 19時10分
TBありがとうございます。ラストに向けて大げさな展開を用意するのではなく各々の「救済」をさり気なく描き、彼らのその後を予感させる終わり方は実に心地良いと思いましたし、Eastwood流だな、と唸った次第です。私からもTBさせて頂きます。
投稿: 1irvingplace | 2011年10月10日 (月) 11時05分
1irvingplaceさん,こんにちは。TBありがとうございます。
そうなんですよねぇ。この淡々としながらも,しっかり心地よく締めるというのがEastwoodが最近では巨匠と言われる所以ではないかと思います。でも相当の早撮りだそうですから,まさに職人芸って感じでしょうか。作風は誓いますが,師匠のDon Siegelにつながる部分を感じますね。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年10月10日 (月) 12時03分