新譜も山のようにたまっているのだが,今日はRadu Lupuである。
"Schubert: 9 Piano Sonatas" Radu Lupu(Decca)
主題の通りである。既にブロガーの皆さんが取り上げられているものから,そうでないものまで,新譜が結構な数たまってきているのだが,こういう時に限って出張が重なったりして,真っ当に音楽が聞けない。こういう時ってフラストレーションがたまるものだが,なぜか突然LupuのSchubertが聞きたくなって,オンライン・ショップに注文してしまった。こんなことをしているから,ますます新譜が聞けなくなるのだが,そういうこともあるわ。
Radu Lupuは今年久しぶりに来日を果たしたのだが,京都の公演を行っただけで,体調不良により,ほかの公演をキャンセルしたようである。実は私もLupuが来日するということは知っていたのだが,行くか行くまいか迷っているうちに,すっかり忘れてしまっていた(爆)。チケットを買っていてキャンセルになるよりはまぁよいだろうが,期待していた人たちは本当にがっかりしたことだろう。でもそれぐらい,人を期待させるピアニストだとも言えるということである。特にSchubertを弾かせれば,現代屈指のピアニストという評価は揺るがないように思える。
私は,昔もLupuの弾くSchubertを聞いていなかったわけではないのだが,若い頃はどうもSchubertの音楽そのものにピンと来ていなかったという部分があるかもしれない。だから,Lupuの弾くピアノ・ソナタも愛聴するというところまでは間違いなく行っていなかった。だが,冬も深まり,更には体力的にきつい日が続いて,なぜか無性に聞きたくなってしまったというのが今回のCD購入の理由である。
そして,今回本当に久しぶり(少なくとも20年は聞いていないだろう)に聞いてみて,この演奏集は私に心にしみた。Toots Thielemansを聞いても「しみた」と言っていた私だが,私が年を取ったせいもあるとしても,ある種の音楽がこれまで以上にしみてしまうということが増えた。しかし,そんなことを置いておいても,このSchubertは全てが素晴らしい。「何が」と具体的に言うことは難しいのだが,とにかく今の私へのフィット感はたまらなく高い。体が求めるという感じなのだ。Schubertのピアノ・ソナタとはこれほど優れた音楽だったのかと今更ながら気付かされた私だが,暫くはこの演奏に身を委ねるだけでも幸せかもしれないとさえ思う。
LupuのDecca時代の録音は10枚組のボックスも出ているが,私が聞きたかったのはあくまでもSchubertなので,この4枚組で十分。価格も安かったが,簡単に元を取っただけでなく,価格をはるかに凌駕する感動を得たと思える素晴らしい演奏であった。これはどう考えても星★★★★★。これから,何度も聞くことになるだろうと本当に実感している私である。未聴の方は騙されたと思ってでも聞いてみて頂きたい。まじで素晴らしい演奏群である。
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