Fourplay:メンバー・チェンジの結果やいかに。
"Let's Touch the Sky" Fourplay (Heads Up)
Fourplayの新作が出た。今回,ギターがLarry CarltonからChuck Loebに代わるという事前情報が流れたときに,へぇ~と思ったのはきっと私だけではないと思うのだが,Lee Ritenour→Larry Carltonというフュージョン界の2大巨頭から比べれば,Chuck Loebが小粒に感じられることは仕方がないとしても,今回のアルバムでの注目点は,それによってFourplayのサウンドがどう変わるかという一点に尽きると言っても過言ではない。
正直に言ってしまうと,私はLarry Carltonが加入してからのFourplayのアルバムをあまり評価できなかった人間である。サウンド的にどうもしっくりこない感覚が強く,絶対Ritenour時代の方がよかったと思っており,結局は最近ではアルバムも買わなくなってしまっていたのである。そこへ来てこのメンバー・チェンジであるから,どのような変化がもたらされるのか,それが改善なのか,はたまた改悪なのかが,初期のRitenour時代のアルバムを愛する人間としては気になり,今回久々に彼らのアルバムを購入したのだ。
結果的に見れば,今回のChuck Loebの加入は,少なくとも私にとっては吉と出たと言ってよいと思う。Chuck Loebには強烈な個性はないが,なんでも弾きこなしてしまう器用さがあり,ブラジリアン・テイストもOK,ゆるいファンクもOK,バラッドもOKという感じなので,大人向けのフュージョン・ミュージックとしてのFourplayにはかなりフィットしていると言ってよいように思う。そもそもChuck LoebはStan Getzともやれば,サックスのBill Evansとのライブではかなり激しいギターを聞かせるという幅の広いプレイヤーだから,そう聞こえても当たり前って気がしないでもない。
曲もこれぞFourplayというようなものが並んでいて,ファンは結構喜ぶのではないかと思わせる出来である。ヴォーカル入りの曲もナイスだし,何よりもLoebのフィット感というか,バランスのよさが嬉しい。これはまさにRitenour時代のFourplayを彷彿とさせるような演奏なのである。Chuck Loebの加入は,私はFourplayの演奏を原点に立ちかえらせる効果があったように思えてならない。これは私にとっては極めてポジティブな反応であり,これははっきり言って嬉しかった。
まぁそれでもFourplayはFourplayなので,革新的な演奏とか,超弩級のスリルとかそういったものとは全く無縁の世界である。どこまでも心地よく,そして非常に落ち着ける。喧騒に満ちた世界であるからこそ,こういう演奏を求める人も多いはずである。久々に私の求めるFourplayの音楽を聞けたように思える。ということで,繰り返しになるが,Ritenour在籍時のFourplayが好きなリスナーは間違いなく気に入るものと確信する。星★★★★。これなら次作も期待できるな。
そう言えば,以前,NYCに出張した時に,IridiumにChuck Loebのライブを見に行ったなぁなんて急に思い出してしまった。ネットで調べてみると,LoebにEric Marienthal (Sax), Jim Beard (key), Josh Dion (ds, vo), Anthony Jackson (b)なんていう結構なメンツである。客席にはWill Leeがいて,ねぇちゃんをはべらせていたが,客の入りは芳しくなかったなぁ(笑)。更にLoebと言えば,Metroというフュージョン・バンドもあったが,今回のFourplay加入により,Metroで演奏する機会はもうないんだろうなぁ。可哀想なMetroの相方,Mitchell Formanって感じか(笑)。
Personnel: Bob James(key), Nathan East(b, vo), Chuck Loeb(g), Harvey Mason(ds, perc), Ruben Studdard(vo), Anita Baker(vo)
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Bob James (key)
Nathan East (b, vo)
Chuck Loeb (g)
Harvey Mason (ds, perc)
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思いがけないですよー!
私も、これ、いいね!って、思っていたところです。
itunesのpingで評判を聴き、聴いてみたら、まあ、なんて素敵なんでしょう!
私、リトナーさんの加入時のFourplayは全く知らなく、ラリー・カールトンのも知りません。
でも、ローブさんが時々JLさんとも重なるので、以前から、気になるギタリストの一人でした。
自然にスッーと入ってくる演奏です。1曲目から、心地よく聴いていくと、5曲目のネイザン・イーストの歌声に完全にうっとりです。
I'll still be lovin' you、、、男性が歌うから、さらに、ジーンとします。
また、エリックの名前出されてしまうと、反応してしまいますわ。その時のIridium、私も行ってみたかったです。
今日は、JLさんと、santa cruzのライブでしょうか?、、JLF、、ああ、日本に来て欲しいです。
投稿: ひまわり | 2010年11月 9日 (火) 08時12分
今日は。EVAです。
私は昔からFourplayが好きで聴いていましたが、ここのところややマンネリ気味だったのでご無沙汰していました。
久し振りに聴いてみたいと思い、先程カートに入れて置きました。
又、kcはチョッと遅れ気味です。ひょっとしたら駄目かも知れません。後数日待てばハッキリするでしょう。
投稿: EVA | 2010年11月 9日 (火) 11時22分
こんにちは。うーん、評判いいですね。自分も1st、2nd、Elixirが好きで今でもたまに聴きます(自然にリトナー時代ですね)。カートに入れたいんですが日本盤がちょっと悩ましいです。輸入盤買った後レンタルで日本盤が置かれるとなんとも言えない気持ちになってしまいます。うーん、、、。
投稿: ki-ma | 2010年11月 9日 (火) 12時58分
私、フォープレイでもボブ・ジェームスの曲やフレーズに注目して聴く性格です。売れセンのアルバムのはずなのに、彼、けっこうマニアックなことを入れているなあ、と感心してます。特に1曲目なんかにその特徴が表れているんじゃないかな、と思います。
チャック・ローブが入って、アコースティック・ギターも目立つし、ちょっと地味かなとも思いましたが、渋いですねえ。私もメンバーチェンジ賛成派です。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2010年11月 9日 (火) 17時53分
こんばんは
今日はラリ-・カ-ルトンの話題で 重なってしまいました(^_^;)
ラリ-・カ-ルトン あんまり 好きでないですか?
『Fourplay』 ラリ-・カ-ルトンがメンバ-の頃も あまり聞いてなかったのですが メンバ-チェンジされたあとのアルバム 評判良いようなので
メモして 今度聴いてみます♪
投稿: マ-リン | 2010年11月 9日 (火) 20時33分
ひまわりさん,こんばんは。これは確かにいいと思いますね。落ち着きます。
JLF,日本に来てもよさそうですけどねぇ。Blue NoteでもCotton Clubでも呼べばいいのにと思っている人は結構いるのではないでしょうか。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年11月 9日 (火) 21時05分
EVAさん,こんばんは。Fourplayが「ここのところややマンネリ気味」だったのは否めない事実でしょう。やはり今回のメンバー・チェンジは彼らにとっても正解でしたね。
KCはきっと大丈夫ですよ。私もGeorge BensonのCarnegieのライブって3カ月ぐらいかかりましたから。気長にお待ちになれば,そのうち届くと思いますよ。廃盤になるようなアルバムでもないですし。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年11月 9日 (火) 21時08分
ki-maさん,こんばんは。国内盤は1曲ボーナスですよね。でも私には,そのためだけに価格差を正当化はできないです。
それにしてもやっぱりRitenour期のFourplayのファンは結構いらっしゃいますねぇ。ちょっと嬉しいです。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年11月 9日 (火) 21時11分
910さん,こんばんは。TBありがとうございます。
私はギタリストのはしくれなので,やはりギターのサウンドが気になりますね。Bob Jamesは音でわかるところまで行っていると思いますが,今回はシンセのストリングスの音とか,結構いい感じの響きが多かったですね。
こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年11月 9日 (火) 21時12分
マーリンさん,こんばんは。
私はLarry Carltonが嫌いなんじゃないですよ。むしろ好きなぐらいです。但し,Fourplayには合ってなかったと思うというのが本音です。Carltonはかっちりしたバンドでよりも,ソロイストとしての色彩を強く出す方が魅力的ではないかと思えます。それがFourplayに合っていなかったように思える原因なのではないかなぁなんて思っています。
いずれにしても,このアルバムは私にとってはFourplayとしては久々のヒットって感じでした。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年11月 9日 (火) 21時15分
中年音楽狂さん、お久しぶりです。
正直、昔はリー・リトナーとラリー・カールトンって二大双璧で互角に勝負していたけど、最近、ラリーは急速にそのオーラを失ってきているように感じてしまいます。
とにかく、チャック・ローブは適任だと思います。今一つこのバンドでは押し出しが弱いですが、まあ最初ですから仕方ないですね。
それはそうと、僕のブログにTBできませんか? FC2ユーザーのみTB受け付ける。なんて設定していませんけど。どういうことでしょうか? 急がないので教えてください。では、また。
投稿: criss | 2010年11月19日 (金) 00時11分
crissさん,こんばんは。TBありがとうございます。Larry CarltonはFourplayでは特にそのよさが感じられなかったようにも思えます。まぁ最近の活動もちょっとなぁって気はしますが。
TBに関する記述の件,私が勘違いしたようですので,crissさんのブログにコメントしておきました。でも相変わらず,私も一応TBを試みましたが,ココログからは飛びませんね。ココログ・ユーザからは実質的にはそういうことになってるように思えちゃいます。不思議ですね。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年11月19日 (金) 19時48分
はじめまして。
今頃、購入しました。
彼らのアルバムは全部持っておりますが、
私もリトナー時代が好きです。
カールトンも好きなギタリストですが、このバンドには
合ってないような気がしておりました。
たしかに初期の雰囲気しますね。
もう長いですけどこのバンド。
曲によってはカシオペアを彷彿したりして、
楽しんでおります。
投稿: Sken | 2011年5月30日 (月) 16時24分
Skenさん,はじめまして。コメントありがとうございます。
私はLarry Carltonが嫌いなわけではないんですが,このバンドと彼は合ってなかったことは多くの人が認めるところでしょう。
Chuck Loebは小粒かもしれませんが,これぐらいの感覚がこのバンドには丁度いいのではないかと思えました。
これからもよろしくお願いします。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年5月31日 (火) 21時43分