やっぱりCassandra Wilsonは最高だっ!
"Silver Pony" Cassandra Wilson(Blue Note)
Cassandra WilsonつながりのMarvin Sewellが参加したKellylee Evansのアルバムを昨日の記事で結構ほめたばかり(記事はこちら)だが,今度は本家のCassandra Wilsonの新譜が届いた。最近のCassandra Wilsonにはあまりピンと来ていない部分もあった私なのだが,これがまぁ何とも素晴らしい作品ではないか。はっきり言ってこれはたまらん。本作の前ではKellylee Evansなんてまだまだ大したことないと思わされてしまうような傑作である。
本作はライブ音源とスタジオ録音がミックスされた構成となっているが,なぜこういう形が取られたのかは定かではない。しかし,そんなことはどうでもいいと思いたくなるぐらいなのだ。これはもはや完全にジャズ・ヴォーカルというくくりを越えていて,私はあまりのよさにある種の感動を覚えてしまったのである。そもそもがジャズ・レパートリーの方が少数であり,ほぼ半数の曲はバンドによる共作,あるいは編曲となっているし,その他の曲もStevie Wonderあり,Lennon / McCartneyあり,そして最後にはJohn Legendのオリジナルである。そして演奏も,歌唱もジャズでもソウルでもブルーズでも,そんなカテゴリー分けが全く無意味と思わせるような出来なのだ。
Cassandraの歌唱が素晴らしいのはもちろんなのだが,バンドとのコラボレーションの緊密度が半端ではない。レギュラーでやっている強みと,そのディープな音楽性が相俟って,私は完全にメロメロされてしまったと言っても過言ではない。例えばライブで録音されたインスト曲"Live in Seville"からスタジオ録音の"Beneath a Silver Moon"への流れであるとか,"Saddle Up My Pony"に聞かれるブルージーな感覚が私の心を鷲掴みにしてしまうのである。更にはMuddy Watersのレパートリーである"Forty Days and Forty Nights"等にディープ・サウスな感覚が如実に表れているのは最近,Cassandraはニューオーリンズに居を構えた(というか戻った)らしいのと決して無関係ではないだろう。そして,最後のJohn Legend作"Watch the Sunrise"で落涙寸前となった私である。素晴らしい余韻を残すエンディングである。
はっきり言ってしまえば,私が今年聞いたヴォーカル入りの新譜では,ロックもソウルも含めて,間違いなく最高の作品だと言い切ってしまおう。やはりCassandra Wilsonは凄いシンガーであることを見事なまでに実証している。ジャケはライナーに説明が詳しいものの,若干???であることは認めざるをえないとし,やや後半にゆるくなるかなぁという瞬間もあるにはあるが,ここは純粋に音楽だけで星★★★★★を謹呈してしまおう。褒め過ぎかなぁ?
Recorded in Spain in November 2009(Live) and in December 2009
Personnel: Cassandra Wilson(vo, perc), Marvin Sewell(g), Reginald Veal(b), Herlin Riley(ds), Jonathan Batiste(p, el-p), Lekan Babalola(perc), Ravi Coltrane(ts), Helen Gilet(cello, viellle), John Legend(vo, p), Luke Laird(g), Brandon Ross(g)
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おはようございます。EVAです。
昨日、中年音楽狂さんがアップしていたCD3枚発注しました、で今日の記事私も彼女は好きで結構持っています。
なのでこれも次回、購入したいと思います。(爆)
投稿: EVA | 2010年11月17日 (水) 07時37分
おはようございます
前作はレコード買いましたよ!今回も良さそうですね!
レコードが出る待とうと思います
投稿: takeot | 2010年11月17日 (水) 09時03分
EVAさん,こんばんは。何をご注文になられたのか,これまた気になりますねぇ。
Cassandraがレベルの高いシンガーだというのは前からわかっていたんですが,記事にも書きました通り,どうも最近入り込めないなぁと感じていたのも事実でした。でもこのアルバムで,やはりこの人は素晴らしいのだと再確認した私です。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年11月17日 (水) 21時38分
takeotさん,こんばんは。
これはいいです。ここ何年かで私としてはCassandraでは一番よかったんじゃないかと思います。前作"Loverly"で復調したとは思わせましたが,今回の印象はそれを上回っていました。これはいいですよ。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年11月17日 (水) 21時44分
春から夏にかけて出る予定だったのが発売延期で強制キャンセルになってしまったのですが、延期されただけあって、ライヴとスタジオ録音の混成アルバムでも、かなりいいセンいってますねえ。10曲目の「ブラックバード」も原曲が分からないくらい彼女のサウンドになっている感じです、私もこのアルバム、けっこう気に入りました。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2010年11月25日 (木) 16時06分
910さん,こんばんは。TBありがとうございます。
私もこのアルバムには痺れましたねぇ。やはり凄い人でした。帰国しましたら,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年11月26日 (金) 00時47分
世間は、ヒロミちゃんですが、今更、カサンドラさまにやられてます。
全部、よかったんだけど、スティービー曲と最後の曲は、不覚にも目が潤みまくってしまいました。
ジャケットだって、いいじゃないですか。。。
トラバさせていただきましたよ。
投稿: すずっく | 2011年4月 2日 (土) 12時35分
すずっくさん,こんにちは。今更でも何でも,いいものはいいですから。近年のCassandraの最高作ですよ,これって。
John Legendとのデュオは確かに泣ける。いいですねぇ~。
ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年4月 2日 (土) 12時50分