中年音楽狂が一肌脱ぐシリーズ(第5回):今度はCharlie Parkerだ
"Charlie Parker with Strings: The Master Takes" Charlie Parker(Verve)
この「お店に並んでいそうでジャズをこれから聴いてみようかなぁという人にお薦めというのがありましたらご紹介ください。」というリクエストにお応えするという「一肌脱ぐ」シリーズ,大体月1回ぐらいのペースで続けていければと思うのだが,実は盤の選定が相当悩ましい。今回はアルト・サックスにしようというのはさっさと決めていたのだが,Art Pepperにしようか,意表を突いてPaul Desmondにしようかとも迷っていた。しかし,ここは敢えてCharlie Parkerにすることにした。
Charlie Parker,誰もが知るジャズ史上最大の巨人と言ってもよい。だが,現代の一般のリスナー(特にこれからジャズをお聞きになろうという皆さん)にとっては,録音の古さ(≒音の悪さ:一部例外がないことはないが...)ゆえに,なかなか手が出にくい代物となっているのも一方では事実である。しかし,Parkerを聞くことなくジャズを語ることは無理なのよということを認識して頂くためにも,私がここでParkerの演奏を取り上げることには,大した影響力なんてないとしても,これまでParkerに触れたことがない方にとっては多少は意義があると思いたい。
そこで選んだのがこの"With Strings"なのだが,この演奏には様々な批判が伴っているのも事実である。バックのストリングスがしょぼいだの,Parkerのアドリブの凄みが感じられないだの,まぁ実際にいろいろあるわけだ。正直言って,Parkerのアドリブを聞きたいならば,サヴォイあるいはダイアルのセッションでも聞いていればいい(ダイアルなんて,今や名演集が999円で買える! 買おうかな...)と私も思うわけだが,では私がこのアルバムを選んだのは,「歌心」とは何かということをこれほど痛切に感じさせるものはないと思えるからである。伴奏がしょぼかろうがなんだろうが,名歌手の歌が心に響くように,ここでのParkerの吹奏は心に突き刺さるのだ。
収められている曲は,著名なスタンダードばかりで,馴染みのメロディがぼんぼん出てくる。しかし,そこにかまされるParkerのアドリブ・フレーズ(イントロに出てくる数小節でもOKだ)は,短いけれども何とも鮮烈なのだ。そして何よりも歌っている。しかも音がでかかったであろうと想像させるに十分な吹奏である。
確かに,Parkerのインプロヴァイザーとしての本当の凄みはここには感じられないかもしれないが,それでも肩ひじをはらずにParkerに接することができるという意味ではこのアルバムは貴重である。まずはここでParkerに触れて,これまでParkerをお聞きになっていない皆さんに更なる深みにはまって頂けるなら,それこそ私としても本望である。本作はコンピレーションなので,録音時期の違いで演奏の感じにだいぶ違う部分があるが,まずは最初の14曲を聞いて頂ければと思う。私がここで書いていることが多少はお分かり頂けるはずである。やっぱりParkerは凄いのだ。星★★★★★。
ただ,このアルバムが通常のリアル・ショップで簡単に買えるかというと若干疑問なのがこのシリーズの主旨からするとちょっと問題だ。しかし,ネットならすぐ買えるので,気になる方はネット・ショップでどうぞ(と開き直る)。こうして記事にするために本作を久々に聞いたのだが,全く温故知新とはこのことである。今の私に魅力的に響いてきたのは,それは私がそういう年になったからなのかもしれないが...。でもいいものはいいと改めて言っておこう。
Recorded in 1947, 1949, 1950 & 1952
Personnel: Charlie Parker(as) & Many More...
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コメント
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こうきましたか。私と同じだ(笑)。
まあ、アルトサックスと言えばパーカー抜きには語れない、っていうかパーカーだけ聴いてりゃいい(笑)って言う気もします。特にこれは音がいいんですよ、なんかキラキラしててかつ密度が濃くて。
これ以外の録音だと、最近では10枚ボックス1980円なんてのもありますよね。私も先日買いました。まあどれもこれも異常に正しいバップです(当たり前だ)。会社の隣の丸善で売ってますので、明日あたりどうぞ(笑)。
投稿: こやぎ@でかいほう | 2010年11月 2日 (火) 01時35分
こんにちは
楽しみにしていた このコーナー。
今回はチャーリー・パーカーですね♪
初めて地元の社会人バンドのライブを聴きに行った時 チャーリー・パーカーの曲を演奏されていて かっこいい〜♪と思ったわたしです。
曲名は忘れてしまったのですが…
ウェイン・ショーターと パーカーの名前は しっかり頭に入れて帰りました。
ちなみに「三瀬まりの」さんという女性トランペッタ-の方のライブでした。
今は 行きたいライブに備えて お金を使わないようにしているので メモして(すずっくさん お薦めも含め)います。
たっくさんになりました♪
どれから聴こうか 来年のお楽しみです。
そして わたしのブログお友達に このコ-ナ-を紹介させてください。
彼女も Jazzサックスが好きなようなので…
ではでは
寒くなりましたので お体に気をつけてください。
次も楽しみにしています。
投稿: マ-リン | 2010年11月 2日 (火) 17時06分
こやぎさん,こんばんは。結局Birdになってしまった...。
Paul Desmondファンの私としては,アルトはParkerだけ聞いていればいいとは思いませんが,でも絶対に避けては通れないですね。私は仕事の帰り道にダイアル2枚買っちゃいましたよ。聞くのは何年振りかなぁ。これも温故知新効果なれど,またも家人の顰蹙確定(爆)。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年11月 2日 (火) 21時49分
マーリンさん,こんばんは。ParkerにShorterをご存じならば十分ですね(嘘)。
私のお薦め盤がお気に召せばいいのですが,こればかりは個人の趣味がありますから,こればかりは何とも言えません。お聞きになる機会がありましたら,ご感想をどうぞ。
また,お友だちへのご紹介大歓迎です。どのような反応が返ってくるかはわかりませんが...(戦々恐々)。ということで,また1カ月ぐらいしたら第6弾をアップしたいと思います。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年11月 2日 (火) 21時53分
こんにちは。
かっこいいのは、わかっちゃいるんだけど、最近ターンテーブルをまわすのがめんどなわたしです。反省。
で、クリスマスの話題にリンクさせてもらいました。
投稿: すずっく | 2010年11月 3日 (水) 15時05分
すずっくさん,こんにちは。リンクありがとうございます。回答はよくわかりませ~ん。
確かにCDやらiPodに慣れてしまうと,LPをかけるのって確かに面倒なんですよね。その気持ち,よくわかります。だから私はどんどんLP→CDの移行を図ったわけですが,LPを処分していないというのが問題ですね。でもどうしてもLPを聞きたいものもありますし,微妙ですねぇ。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年11月 3日 (水) 15時15分