凄かった大西順子@オーチャードホール
新作「バロック」が物凄い出来だと感じさせたので,やはりその再現ライブは気になっていた私である。先日,やはり行こうと決意して,チケットを取ってみたら,1Fの11列目なんて悪くない席をゲットである。ということで,余計なお世話かもしれないが,客の入りを心配しつつ,仕事帰りにオーチャードへと向かった。でもまぁ客席はほぼいっぱいだったのではないだろうか。それにしても,私は最近はライブ派とは言えないのだが,今月はこれで3本目のライブなんて,本当に珍しいねぇ。
肝腎の演奏だが,オープニングからクロージングまで,まさにアルバム「バロック」で展開された世界が,更なるダイナミズムを持って迫ってきた。さすがにこのメンツである。燃えた。特に私が感心したのがHerlin Rileyのドラムスであった。シャープで素晴らしい切れ味を示していて,バンドを見事にドライブしていたが,あまりに激しくやり過ぎたのか,終盤で演奏された"The Street Beat"で腕がつったらしく,突然,ドラマーに代打登場である。バンド・メンバーがスーツで決めているのに,代打で出てきたおっさんはジャージ姿のようにも見える完全普段着だったが,問題なく演奏を終了した。誰だと思ったら,楽屋に遊びに来ていたTommy Campbellだったようである。突然のアクシデントだったので,演奏の質は多少落ちたのは仕方がないが,それでもまぁ無事に終わって良かったというところである(Rileyは最後の"52nd Street Theme"で無事復帰)。
フロントの3人はそれぞれ個性があって面白く,ノリノリのJames Carterの横で,Nicholas Paytonは直立不動みたいに行儀よく構えているし,その横でWycliffe Gordonはマイペースって感じであった。私としてはJames Carterに最も注目していたが,Carterに限らず,フロントの3人は本当に達者な人たちである。Gordonのトロンボーンなんて,ハイレベルなアーティキュレーションでうまいわ~と思わず唸りそうになってしまった。ソロにスキャットを交える芸達者なところも楽しく,聴衆からも大いに受けていた。Paytonは何でも吹けるねぇという感じで,ハイノートも見事なもの。そしてCarterであるが,やはり3人の中ではアプローチが最もアバンギャルドに近く,激しく吹きまくっていて,見ているだけでも楽しめてしまった。
もちろん,ライブだけにダイナミズムはありながらも,瑕疵がなかったわけではない。美しいバラードである"Flamingo"のエンディングは明らかに乱れ,Paytonのソロがよかっただけにもったいないと思わせた。だが,全体を通して言えば,これほど熱く燃えさせてくれる演奏はなかなか出会えるものではなく,大いに満足した私であった。
しかしである。これだけは言っておかねばならないが,今回のPAは最悪であった。冒頭なんて大西順子のピアノはほとんど聞こえないバランスの悪さを露呈し,かつトランペットとサックス用のマイクはオーバー・エコーで,まるで風呂場で聞いているような感覚を覚えさせ,居心地の悪いこと甚だしかったのはいただけない。Paytonのトランペットなんて極端で,オフ・マイク気味に吹くと,非常にクリアに聞こえるのに,マイクに向かって吹くと,風呂場状態なのである。これがホールの性質なのか,PA担当者の出来が悪いのかはよくわからんが,それにしてもあれはひどい。トロンボーンは比較的まともに聞こえたので,これはPAのセッティングのミスだろう。ベースも最初は完全にボリューム・オーバー気味だったし,せっかくの演奏のよさを台無しにするPAだったと言えるだろう。
だが,演奏そのものとしては確実に記憶に残る一夜になったと言えるだろう。大西順子も疲れ果てたのか,アンコールにも応えないと宣言して退いたが,ここはアルバムのように"Stardust"でも"Memories of You"でもソロで弾いたら,聴衆の大西順子への好感度はもっと上がったと思うけどねぇ...。でもいいライブだったから許す。しかし,PAは許せん。
Personnel: 大西順子(p), Nicholas Payton(tp), James Carter(ts, b-cl, fl), Wycliffe Gordon(tb, vo), Reginald Veal(b), Herman Burney(b), Herlin Riley(ds), Roland Guerrero(perc)
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コメント
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今日は。EVAです。
彼女は聴いたことがないのですが、James Carterが絡んでいるとなると聴いてみたい気がして来ました。
先のライノは在庫切れとなりましたね。
タイミングが合いませんでした。
今月中に輸入盤2枚とこれ↑を買いたいと思っています。
投稿: EVA | 2010年10月 2日 (土) 16時34分
EVAさん,こんばんは。そう言えば,James Carter,EVAさんのCD100選に入ってましたよね。
ライブでもブリブリ吹きまくっていました。どうせならバリトンも吹けばよかったのにって感じです。
Rhinoは残念でしたね。でも考えようによっては,ArethaとKing Curtisの拡大版の方が,絶対コスト・パフォーマンスはいいですから,まぁいいんじゃないでしょうか。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年10月 2日 (土) 18時10分