ジャケも凄いが,中身も凄い大西順子の新作(本編)
"Baroque" 大西順子(Verve)
昨日は睡魔に勝てず,記事を書けなかった大西順子の新作である。私は彼女の復帰作「楽興の時」も高く評価したが,今回の作品は更に輪を掛けて強烈な作品であった。そもそもが蜷川実花撮影によるカバーがすこぶる強烈なカラーで,これまでの大西順子のアルバムと完全にトーンが違うが,音楽的に大きな変化があるわけではなく,あくまでも剛腕,大西順子は健在である。
このアルバムにおける大西順子を何に例えればいいかというと,女猛獣使いって感じか。かなり猛々しいメンツが揃っていて,それに対して一歩も引いていないところがまず凄いと感じさせる。また,ここで強く感じるのはCharles Mingus的なフレイバーと言えばいいだろうか。それは特にJames Carterがバスクラを吹くときに顕著になるように思えるのである。まるでMingusバンドにおけるEric Dolphyが乗り移ったかのような演奏なのである。また,ダブル・ベースにしている曲が4曲あるのは,ベースを強化してMingus並みのサウンドを出すためだったのではないかというのは考え過ぎだろうか?
いずれにしても,冒頭の大西のオリジナル"Tutti"からして緊張感に溢れているが,4曲目と最後に入る大西のソロ・ピアノが「緊張と弛緩」のバランスをうまく取っているように思える。最初から最後までテンションが高い演奏を続けられては,こちらも参ってしまうが,この2曲が絶妙なインタールード及びポストルードとして機能しているのである。ここでの"Stardust"及び”Memories of You"というスタンダードがまるで「猛獣使いの休息」のように響く。
もちろん,74分強というのはちょっと長いかなぁと思わないわけでもないが,アルバムを聞いていてだれるという感覚がないのは立派である。とにかく,ジャズという音楽が持つエネルギーを音として具体的に提示したこのアルバムは,決して万人受けするものではないかもしれないが,非常にレベルの高いものであり,これが日本人ミュージシャンによって生み出されたというのが素晴らしい。やはり大西順子は傑物である。ちょっとオマケも含めて星★★★★★としてしまおう。
そして,このアルバムの出来を更によくした功労者としてJames Carterを挙げておきたい。上述のように,特にDolphyを彷彿とさせるバスクラの響きが最高である。やはり彼も大したミュージシャンであることを実証したと言ってよいだろう。ほかのメンツも好演なのはリーダーの統率力の表れか。さすが猛獣使いである。(ちょっとほめ過ぎ?)
Recorded between March 24-29, 2010
Personnel: 大西順子(p), Nicholas Payton(tp), James Carter(ts, as, b-cl, fl), Wycliffe Gordon(tb), Reginald Veal(b), Rodney Whitaker(b), Herlin Riley(ds), Roland Guerrero(perc)
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大西順子さんの復帰2作目です。
ですが、なんだか本人気合いが入っているようで、今作リリース前後にいろいろ露出が多くなっている印象があります。
1作目は、ちょうどほぼ1年前紹介の楽興の時(http://blogs.yahoo.co.jp/pabljxan/58339374.html)でした。
前作はトリオでの演奏でしたが、本作は3管を配して、ベースが2人入った7人編成となっています。
メンツ詳細は下記の通り。
Junko Onishi(P)、Nichola..... [続きを読む]



































































今晩は!大西順子は月曜日札幌でコンサートがあるんですがソウルドアウトです!チケット買っておけばよかったなあ!2週間前の山中千尋は見に行ったのですが若さに勝てませんでした
投稿: takeot | 2010年7月31日 (土) 23時15分
takeotさん,こんにちは。そうですか。札幌でもライブをやるんですねぇ,今度東京では発売記念ライブがあるようですが,まだメンツが発表になっていないものの,レコーディング・メンバーに近い線が揃うのかなぁなんて思っています。
行ってみたいですが,う~む,どうしよう...。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年8月 1日 (日) 15時12分
今日は何度も失礼します。いやはや、何とも恐ろしいアルバムが出てしまったものです。聴いていて、今年の個人的アルバムのベスト3に入るかも、なんてことを思ってしまいました。
タイトルが「バロック」なのは、ウィントン関係者が多いようなので、現代ジャズとオールドスタイルがにじみ出てくる部分とをうまく使って、という理由なのかなあ、なんてことも想像してしまいました。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2010年8月 7日 (土) 17時28分
910さん,TBありがとうございます。
そうですねぇ。年末に振り返ってみれば,今年のベスト作候補には確実に残っていると私も思います。やはり大したミュージシャンです。
こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年8月 7日 (土) 20時48分
すみません、やっと、コメントがいれられますわ。
とらばだけ、お先に失礼しました。
これは、一番めの曲から、一気にひきこまれました。
生活の中に溶け込むよーな音楽とは、違いますが、このエネルギーはすごいなあ、って、憧れてしまいます。
相対的に見れば、ソロは静なのですが、わたしには、密度濃い高揚感ある演奏にきこえました。
大西さま、強。。
投稿: すずっく | 2010年8月15日 (日) 18時04分
すずっくさん、こんばんは。
いろいろな聞き方あれど、このアルバムが、本年のベスト候補本命と言ってもいいのではないでしょうか?
やはり、大西順子恐るべし。ライブ行こうかな〜。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年8月15日 (日) 22時45分
これは、もの凄いアルバムでした。
絶対聴かなきゃもったいないアルバムだと思います。
これほどの演奏を出してくるとは思いも寄りませんでした。
でもって
>女猛獣使いって感じか。
まさにこんな感じ(笑)
James Carterの活躍についても御意であります。
TBありがとうございます。逆TBさせていただきます。
投稿: oza。 | 2010年8月22日 (日) 06時54分
oza。さん,TBありがとうございます。
ブログ界でも話題沸騰,これを悪いという人はあまりいないでしょうねぇ。確かに凄過ぎます。まず間違いなく今年のベスト作候補には残りますね。これをライブで再現できたら,更に凄いですが,どうなるんでしょうか。やっぱり行こうかなぁ。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年8月22日 (日) 11時38分