見ず知らずのミュージシャンでもOKだったギャンブル成功事例
"Traction Avant" Alessandro Galati (VVJ)
昨日記事にしたEric Le Lannがはずれの代表みたいなものだとすれば,こちらのAlessandro Galatiは大当たりであった。このアルバムは欧州ジャズのファンの間では結構有名らしい(というか,皆さん既にかなりの取り上げぶりであるから,さすがとしか言いようがないが...)のだが,不勉強な私はリーダーの名前も見たこともなければ,聞いたこともなかった(少なくとも意識していなかった)。そんな私がこのアルバムを購入したのは,たまたま行ったショップで,バックがDanielsson~ErskineというピアノをJohn Taylorに変えればPeter Erskineの欧州トリオではないかというメンツにつられてのことにほかならない。しかもエンジニアはECMでもお馴染みのJan Erik Kongshaugとあっては「あの世界」を期待するのが人情である。その期待に応える音が出てきたので,思わず嬉しくなってしまった私である。これなら全く問題はない。いずれにしても,このジャケからは想定できない抒情的な音の連続である。いいねぇ。
しかし,この人,抒情性だけではなく,結構,毒も隠し持っていることはタイトル・トラックのような曲からも明らかであろう。こういうミクスチャーが,ライナーを執筆するKenny Wheeler(リーダーとは共演経験があるようである)をして,このアルバムを「最高レベルのECMレーベルのアルバムに伍する」と言わしめている部分ではないかと感じられるのである。"Wassily"と言う曲は画家のカンディンスキーにちなんで作曲されたもののようであるが,全然抽象的な部分はなく,美的で繊細な演奏が展開されており,Danielssonのベース・ソロが音も含めて素晴らしい。さすがKongshaugと言いたくなってしまった。このあたりもECM的な感覚を覚えさせる要因であろう。
そして,彼らの手に掛ってしまえば,あのMiles Davis作"Solar"さえもが全く違った響きで迫ってくるのである。こういうタッチの"Solar"はあまり聞いたことがないなぁと思わせるもので,まぁ自分の本質を光らせるようなアレンジと言うべきであろうか(と言っても,若干アルバムでは浮いているかもしれないが)。とにかく,現代音楽的な響きも交えながら,全編を通じてECMレーベル,あるいは抒情派ピアノ・トリオ好きにはたまらない魅力を持ったアルバムと言えるのではないだろうか。このアルバムが吹き込まれた当時,Galatiは20代後半だったはずである。その年齢にしてこの落ち着きってのは,Brad Mehldauがメジャーになってきた頃の雰囲気とかぶるものがあると言っては褒め過ぎだろうか。
いずれにしても,知らぬこととは言え,欧州ジャズは本当に奥深い。このアルバムは上述のとおりメンツ買いの一枚であったが,最終的にはAlessadro Galatiというピアニストは大したもんだと思わされてしまった。星★★★★☆。
Recorded between September 12 & 15, 1994
Personnel: Alessandro Galati(p), Palle Danielsson(b), Peter Erskine(ds)
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