Chet Bakerの静と動
"Memories: Chet Baker in Tokyo" Chet Baker(Paddle Wheel)
私がこのブログでChet Bakerについて取り上げるのはCTIレーベルの"She Was Too Good to Me"以来のことである(記事はこちら)から,ほぼ3年振りということになる。実は,Chet Bakerのアルバムは結構保有しているのだが,それは古い音源がほとんどであった。このアルバムは父の遺品の1枚だが,久しぶりに聞いて,1988年というタイミングでのChet Bakerの好調ぶりにある意味驚かされてしまった私である。
晩年のChet Bakerはそれこそ濫作と言ってもよいほど,多数のアルバムを残しているが,本作は別格の扱いをしてもいいのではないかと思わせるような快演揃いである。本作と同じタイミングで残されたライブ盤"Four"は現在カップリングされた2枚組でリリースされているようであるが,私が聞いているのは1枚ものである。ライブだけあって,演奏は長尺で,一番短くても7分42秒というもので,最長の"Portrait in Black & White"は15分48秒という長さである。"My Funny Valentine"も13分を越えており,Chet Bakerのプレイが十二分に記録されていると言ってよいだろう。やはり"My Funny Valentine"への聴衆の拍手が大きいのは当然ではあるが,本作で私が最もしびれるのは"Almost Blue"である。これぞ,Chet Bakerって感じなのである。もちろん,"My Funny Valentine"もいいが,歌があっても,なくてもここでのChet Bakerはかなりの好調ぶりである。
この作品を聞いていると,Chet Bakerのヴァイタルな部分とソフトな部分をうまく捉えたものだと私には感じられるのである。Chet Bakerと言えば,ユニセックス的なヴォーカルにばかり注目が集まりがちではあるが,トランペッターとしてもまともだったということに改めて気付かされる演奏群である。とても,この翌年亡くなってしまうとは思えないぐらいの好調ぶりなのである。
しかし,死因はホテルからの転落死だが,それもドラッグゆえらしいというところが,この人の人生を物語っているような気がする。この演奏を聞く限りは,58歳での早逝は惜しいとしか言いようがないが,ドラッグに依存せざるをえなかった人間としての弱さはここでは感じられないのである。今一度,Chet Bakerを聞きなおすには丁度よかった一枚である。星★★★★。
Recorded Live at 昭和女子大学人見記念講堂 on June 14, 1987
Personnel: Chet Baker(tp, vo), Harold Danko(p), Hein Van Der Geyn(b), John Engels(ds)
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