祝復活,Jeff Lorber Fusion!
"Now Is the Time" Jeff Lorber Fusion(Heads Up)
Jeff LorberがJeff Lorber Fusion(JLF)名義で最後にアルバムをリリースしたのは1981年,その名もゲーセン・マニアにも懐かしい"Galaxian"である。それからほぼ30年を経た今,なぜJeff LorberがJLFを復活させる気になったのか?Jeff Lorberのサイトの映像には次のように書いてある。
"Now is the Time" Recaptures the Spirit of Jazz Fusion.
なるほど。Jeff Lorberが目指したのはスムーズ・ジャズではなく,あくまでもジャズ・フュージョンなのである。私はJeff Lorberというミュージシャンは凡百のスムーズ・ジャズとは違うと思っているが,それは彼の他のミュージシャンのプロデューサーとしての活動からも感じられることであった。その彼がジャズ・フュージョンの精神に再度立ち帰るというのはある意味でJeff Lorberその人の男気を感じさせる。
ここでは過去のレパートリーを散りばめながら,現代におけるジャズ・フュージョンを再構築するという感覚と言ってよいだろうが,それは適度なファンクを感じさせながらも心地よい音楽の連続である。その中に,Weather Reportの"Mysterious Traveler"のカバーが入っていることが,硬派な感覚を増すのに貢献しているが,全体を通じてこれぞジャズ・フュージョンだよねぇというサウンドが楽しめる。まぁそれもそのはずというメンツが揃っているが,ジャケの写真からすると,現在のJLFはJeff Lorber,Eric Marienthal,Jimmy Haslipというのが基本のメンツのようである。そう言えば,Kenny Gも昔はJLFのメンバーだったんだよねぇ("Wizard Island"と"Galaxian"で吹いている)なんて懐かしんでしまうが,この3人もなかなかに強力である。Jimmy Haslipは最近,Renegade CreationにJLFなんて活動が活発化(しかもプロデューサー兼業である)しているが,本業のYellowjacketsはどうなってんねんなんて余計な心配もしたくなる。
まぁそんな心配もどうでもよくなるような爽快なフュージョン・ミュージックてんこ盛りなので,ただこの心地よい響きに身を委ねればよいのである。"Mysterious Traveler"だけがややサウンドとしては異色としても,全体としてはなかなかにナイスな出来のアルバムである。フィーチャーされるIrene Bの声もなかなか魅力的。この人,スペイン出身らしいが,ヴォーカルを加えることで,アルバムとしてのバランスが崩れていないところもいいねぇ。歴史に残るアルバムとかではないが,こういうのは貴重なアルバムである。もう一つ,特筆していいのは昔のレパートリーが,全然古めかしさを感じさせないことである。これって大したことである。星★★★★。
それにしても,Blood Sweat & Tearsってまだ現役だったんだ,ってのがちょいとビックリ。"Spinning Wheel"が猛烈に聞きたくなってきたなぁ。でも手許にない(爆)。
Personnel: Jeff Lorber(key, synth-b, g), Eric Marienthal(as, ss), Randy Brecker(fl-h), Paul Jackson Jr.(g), Tony Maiden(g), Michael Thompson(g), Larry Koonse(g), Jimmy Haslip(b, perc), Alex Al(b), Vinnie Colaiuta(ds), Li'l John Roberts(ds), Jimmy Branly(ds, perc), Dave Weckl(ds), Lenny Castro(perc), Irene B(vo), Frankie Biggz(vo) & the Blood, Sweat & Tears Horn Section<Tom Tiko(sax, fl), Steve Jankowski(tp, fl-h, bs), Jens Wendelboe(tb), Teddy Mulet(lead tp)>, Jerry Hey(horn arr), David Mann(horn arr)
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» Jeff Lorber Fusion / Now Is The Time [雨の日にはジャズを聴きながら]
Jeff Lorber Fusion / Now Is the Time ( amazon )
2010 Heads Up
Jeff Lorber (p,key), Jimmy Haslip (b), Eric Marienthal (as), Randy Brecker (tp), Paul Jackson Jr. (g), Vinnie Colaiuta (ds)... [続きを読む]
はい! 祝復活です!待ってました!
感想が同じって、うれしいです!
そうです、男気、それですねぇーー!
好きだった理由が、今わかったような気がします、、うわぁーーうれしい、うれしい!
音楽狂さんに、感想を言っていただけると、安心します。公平に様々な音楽を聴いてみえる方の意見は、私自身も納得出来、冷静に物事が見られます。様々な側面から、物事を見ることは、私の好きな作業です。
記事の中に、私が感じた気持ちがたくさん含まれていたことが、さらにうれしい、と、感じたことです。
私も、Mysterious Travelerだけは、異質で、聴き流せなくて、一つだけ取り上げて聴いています。
ひょっとしたら、演奏しているメンバー自身、様々なイメージがあり、まだしもMysteriousの内容が一致していない部分もあるのでは?と思います。どんな風に録音したのか?言葉で言えない神秘的なものを、それぞれがイメージして、とにかくやってみよう、と言ったのか?
すごいコラボ、感性のぶつかり合い。
作品自身が、生き物のようで、まさにMysteriousです。聴くたびに進化するのでは、と楽しみにしています。
Jeffの創りだしたい音楽の世界が、出せるメンバーに、今、恵まれていることを、幸せに感じます。
私は最近思います、感動を共有する、良い仕事が出来る、一緒に笑顔になれる、意見をぶつけあって、お互いの欠点を知っていても、成長出来る仲間がいることは、本当に幸せです。
私は昨日、ボランティアで、コンサートの手伝いをしましたが、その中で、感動することがたくさんあり、昨夜はうれしかったです。
サッカーも熱いですね。音楽狂さんの気持ちが届いたのかもしれません。
いくつになっても、成長したいです。
投稿: ひまわり | 2010年6月27日 (日) 09時04分
ひまわりさん,こんにちは。コメントありがとうございます。というよりお待ちしておりました。
まぁ私の感想はありきたりのものかもしれませんが,今なぜJLFなのかというのは,Jeff Lorberもスムーズ・ジャズにカテゴライズされる昨今であることが関係しているのではないかと思います。Jeff Lorber本人がスムーズ・ジャズだと思われることに抵抗があったのではないかというのは深読みかもしれませんが,でもそこにミュージシャンとしてのプライドのようなものを感じてしまいました。
いずれにしても,Randyのフリューゲルもいい感じでしたし,出だしから本当に快調なアルバムでしたね。今年はきっとJLFで来日するんじゃないですかね。このメンツなら行っちゃうかもなぁ,なんて思っています。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年6月27日 (日) 13時50分
このメンバーでの演奏、間違いなく、ライブではさらに熱いものになるでしょうね。ブルーノート来て欲しいわ。
眉間にしわを寄せて、唸ってきいてるかも、真剣モード(笑)
私は今日、細かい音の工夫を発見し、ドビュッシーの曲を練習すればするほど、気付かなかった音やフレーズを見つけて、楽しくなる気持ちに似た、想いに至りました。
無いところから、創りだすエネルギーは、想像を超える。その部分の、努力が、昔のレパートリーが古めかしく感じさせないのかもしれません。
ドビッシーは、常に今に甘んじない、人と同じことはしない、新しい音楽を考えている人だった、と私の恩師は言っていましたが、、
でも、実際にJeff Lorberから出る音は、親近感がある。いろんな工夫があるのに、そこが私にはすごい、と思います。私は星5つ。
投稿: ひまわり | 2010年6月29日 (火) 22時38分
ひまわりさん,こんにちは。ドビュッシーと比較されるとは変化球ですねぇ。
確かにJeff Lorberの音楽には親近感がある割に,結構いろいろな手を施してあるという気はします。そうした意味でも風化しない音楽なのかもしれませんね。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年6月30日 (水) 10時55分
中年音楽狂さん、こんにちは。
すみません、TB、今しました。
忘れていたわけじゃないのですが、なんだか
忙しくて。ついつい(-_-;)
BS&T って、ほんとまだ現役だったんですね。
僕も意外な感じがしました。
それにしてもランディー・ブレッカーもプロデューサーのボビーコロンビーも元BS&Tのメンバーですから、なんだか同窓会みたいな雰囲気でレコーディングがおこなわれたんじゃないでしょうかね。
僕もフュージョンの中ではジェフに人一倍思い入れがあるので、このJLFの復活は大変嬉しいですが、やっぱりボーカルがちょっとね~。上手い歌手ですけどね。でもね~、みたいな。
投稿: criss | 2010年7月 9日 (金) 18時22分
crissさん,こんばんは。TBありがとうございます。crissさんのTBは無事入っています。私もトライしてみようかな。
BS&Tなんて名前が出てきて,私は思わず彼らのセカンド・アルバムを中古で買っちゃいました。セカンドではLew Soloffがラッパを吹いていますね。無茶苦茶懐かしかったです~。
まぁやはりcrissさん,私とはJLFへの思い入れ度が違うから仕方ないでしょう。でもこのIrene B,これまた懐かしのShakatakを聞いているみたいで,結構私は好きだったりして...。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年7月 9日 (金) 20時58分
とても楽しそう!私も話題に入れてくださーーい。
BS&T知らないです。もし、機会がありましたら、時間がある時でいいです、教えていただきたいです。
あと、Shakatak!懐かしいです。
お気に入りで、一時期必ず、車の中に、テープを入れてたくらいです。
今、NITE FLITEのカセットが見つかって、聴いています。Sunshiny Dayを聴いたら、当時がそのまま出てきちゃった。
沖縄の旅でもこれを聴きながら、レンタカー運転してました。
懐かし過ぎる、好きだったものが、変わらないわあ。
Irene Bの歌、私も好きです。
こんなに懐かしい大切なものがあったことを、思い出すきっかけになるなんて。
いろんなことが今につながっているんですね。
そういえば、先日LAに行った時、私の泊った部屋は、ドア一つで2ベッドルームになる部屋でした。
というのも、Irene Bのささやくような声が朝からお隣の部屋から聞こえてきて、、、その時、まあ!!ドア一枚だったのね!!と、気付き、Now is the Timeのカーテンさながらの世界。ドア一枚でも大変なのに、カーテンだなんて、、、
え!どうしよう??どうしよう??とあわてて、音を出さないように、静かに静かに部屋から出て、熱いお二人のお邪魔をしないように、急いで朝食を食べに行きました。
会社で話したら、みんなに惜しいことをした、と泣き笑いされましたが、本当に、あの曲のままのカーテンでした。
投稿: ひまわり | 2010年7月10日 (土) 08時14分
ひまわりさん,こんにちは。BS&TはChicago,Chase等と並んで,ブラス・ロックという範疇で語られることが多いバンドです。もともとはAl KooperやRandy Breckerがいたのですが,第1作だけで脱退しました。メジャーになったのは"Spinning Wheel"やLaura Nyroの"And When I Die"が入っている2ndではないかと思います。ソリッドなブラスと言えば,Chaseの「黒い炎」が代表的ですが,BS&Tのブラスも十分ソリッドな魅力があると思います。彼らに比べると,Chicagoのブラス・セクションはもう少しルースな感じがします。
今回のアルバムにホーン・セクションが参加したのはcrissさんもおっしゃる通り,Bobby Colombieつながりかもしれませんね。
ところで,LAのホテルの件,普通なら災難ですね。ホテルで遮音性が悪ければ,それはほとんど悲劇のもとです。私は以前,貨物用のエレベーター脇の部屋をあてがわれて(結構な利用頻度だったにもかかわらずです),部屋を変更させた経験がありますが,プライバシーやコンフォートを確保できないホテルはホテル失格でしょう。それ以降,私はそのホテルには二度と泊らないことにしました。ひまわりさんの事例はいずれにしてもあまり遭遇したくないシチュエーションですね。特に仕事で出張している人間には災難でしょうねぇ。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年7月10日 (土) 12時40分
BS&Tの件、早速ありがとうございます。知らない人のお名前も出てきたので、私の好奇心は高まってます。
ホテルの件は、あらかじめ紹介されたホテルをパスして、利便性だけで勝手に変更したので、全て自己責任です。翌日は、友人との電話を切った後で、咳ばらいが聞こえ、男性客がいることがわかりました。緊張すると、こちらも咳が出てしまい、向こうがまた咳をして、相手がどこにいるかも特定出来るので、もう怖くなって、テレビを付け、応接セットの椅子をドアの前に並べ、さらにスーツケースも立てかけました。
かなりの重労働で、もう、こりごりでした。
投稿: ひまわり | 2010年7月11日 (日) 08時02分
ひまわりさん,こんにちは。旺盛な好奇心って重要ですよね。どのあたりにご関心がおありでしょうか?
ホテルは利便性も重要ですが,出張者にとってはセキュリティの方が更に重要でしょうね。私も時期的にホテルが取れないタイミングで出張した時は,かなりの場末のホテルに泊まったこともありますが,これなら時期をずらした方が正解だと思いましたから。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年7月11日 (日) 13時28分
昨夜から、今朝、特に午前中は、とても、とても長い一日になりました。Now is the Timeのスマトラを聴きながら、午後は何度も、奮い立たして働きました。友人が、今、入院中で、改めて仕事に行けるありがみを、しみじみ感じたり、もっと感謝しなくては、、。
Jazzの面白さの範囲は、ますます広がり、1000ピースのパズルが部分的に埋まっています。
LAのホテルですが、改めて考えると、一泊3万円していました。美味しいレストランには、確かに歩いていける便利な場所でしたが、とても古いホテルで、同じ値段なのに、ハリウッドの豪華ホテルとはかなり印象の差がありました。
その地区は高いから、宿泊プランにないよ、と言われた理由がわかりました。
珍道中は良い教訓にします。
投稿: ひまわり | 2010年7月12日 (月) 23時14分
ひまわりさん,こんばんは。私も今日は長かったです。決勝戦のせいで(爆)。最近は,私は完全なメタボ体型で,血圧が高い以外は健康そのものですが,薬が手放せないというのは情けないです。節制が足りないんですね。
しかし,3万円って,レートがいつの頃かわかりませんが,まぁそこそこまともなプライシングですよね。それであれでは,ちょっと微妙です。そもそも私はLAが嫌い(お好きでしたら申し訳ありません)なので,出来るだけ行きたくないと思っていますが,こういう逸話をお聞きすると,ますます行きたくなくなりますねぇ(笑)。
やっぱり私は東海岸派ってことで,お許しを。ポートランドやSFは結構好きですけど...。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年7月12日 (月) 23時21分