かなりいけているAlex Sipiagin:現在進行形のNYCのジャズ?
"Generations: Dedicated to Woody Shaw" Alex Sipiagin (Criss Cross)
ジャズ・ブロガー界ではCriss Crossレーベルのファンが結構多いように思うが,なぜか私はそれほどこのレーベルへの思い入れは少ないのが実態で,ミュージシャンによって,是々非々で購入を決めているって感じである。ただ,このレーベルが,欧州ジャズ心境著しい中にあって,欧州に対抗する米国勢の砦のような感じになっているのは事実であろうし,一貫したプロダクションには好感が持てる。そんなレーベルから気になるメンツによるアルバムが登場したので,これには私も食指を動かされ,購入と相成った。その要因としては,まずトランペットのワンホーン・クァルテットであること,第二にピアノでなく,ギター入りであること,そして第三に「Woody Shawに捧ぐ」とサブタイトルが付いていることである。
常々書いているとおり,私はトランペットのワンホーン・クァルテットが結構好きなのだが,この編成を見れば,欧州勢ではPaolo FresuのAngel及びDevil Quartetを思い出すリスナーも多いはず(それは内輪だけ?)である。私はFresuのクァルテットが相当好きなので,やはりこの作品を聞くときにも,Fresuが一つのひな形になったと言ってはSipiaginに失礼かもしれないが,どうしても比べてしまうのである。でもまぁやはり感じは全然違うなぁっていう気がして,これはこれとして聞かなければならないと思わされる。これが欧米間の違いというものだろうか。また,Woody Shawは結構好きなラッパなだけに,Sipiaginがどういう風にトリビュートするのかも大いに気になった。しかし,ここでの演奏は結構コンテンポラリーな感覚が強くて,どのあたりがWoody Shawへのトリビュートかってのは,Shawの曲をやっている以外は実はちょっと掴みにくい。それでも"Cassandranite"なんかを聞いていると,確かにそういう感じがないわけではない。いずれにしても,Sipiaginのラッパはよく鳴っている。なかなかにハードボイルドでスリリングなフレージングを連発しているのが素晴らしい。
先日,Seamus BlakeのSmallsのライブ盤を聞いた時も,SeamusとLage Lundのユニゾンが心地よいと書いた(記事はこちら)のだが,本作でもSipiaginとAdam Rogersのユニゾンが多く,最近はホーンとギターのユニゾンがNYCでは流行りなのかと思ってしまったが,その分,Rogersの露出も大きく,聞きようによってはRogersのリーダー作に聞こえないこともない。そこに鋭く切れ込むSanchezのドラムス,更には好バックアップを展開するKozlovと,バンド全体を通して聞きどころの多いアルバムである。私が今年聞いた中でも,ハードボイルド度では,クリポタ参加のDaniel Szabo Trioと双璧と言ってもよいかもしれない。そうした点を評価して星★★★★☆。ただ一点,減点対象としたいのが,最後に冒頭の"Greenwood"の別テイクを持ってきているところである。両テイクに大きな違いがあるわけでもないのに,いかにも時間稼ぎのような曲の収録を行うことには私は疑問を感じる。いくら演奏がよくても,これは明らかに蛇足である。どちらか一方で十分なはずではないか。
そうは言いながらも,私のブログのお仲間でもこのアルバムが好きな人はきっと多いのではないかと思わせる好アルバムである。無性に本家Woody Shawの演奏を聞きたくなってきたように思えるのは気のせいかなぁ。
Recorded on January 25, 2010
Personnel: Alex Sipiagin(tp, fl-h), Adam Rogers(g), Boris Kozlov(b), Antonio Sanchez(ds)
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Alex Sipiagin (tp,flh) [[attached(1,left)]]
Adam Rogers (g)
Boris Koslov (b)
Antonio Sanchez (ds)
Rel:2010 Cris Cross Jazz
久しぶりのJazzネタです。
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というわけで、手元に届いていたけどどうも記事にするモチベーションがあがりにくかったのですが、試合も飛び飛びに..... [続きを読む]
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Criss Crossレーベルの5月の新譜は4枚だったのですが、今回は特に気になる1枚だけの購入にしました。
財布軽すぎ。
メンツ買いではありますが、Alex SipiaginというよりAdam Rogers、Antonio Sanchezの両名買いって感じです。
そのメンツは以下の通り、Tp+Gのカルテットとなります。ピアノレスです。
Alex Sipiagin(Tp)、Adam Rogers(G)、Boris Kozlov(B)、Antonio Sanchez(Ds)
演奏曲は..... [続きを読む]



































































今回出たCriss Cross新譜4枚の中で、一般的には人気がありそうなのはデヴィッド・ヘイゼルタインのアルバムなんですが、周りでは、このアレックス・シピアギンのピアノレス・クァルテットのアルバムがダントツで一番人気ですねえ。やはり、そういう現代ジャズの嗜好の方たちが集まるってことなのか、こういうサウンドの方が皆さんの琴線に引っ掛かるということなのか。私もこちらの方が好きですけれども(笑)。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2010年6月29日 (火) 17時57分
言い訳は、、らしくない。閣下。。ψ(`∇´)ψ
眠いなっ。
クリスクロスは、地方のお店でも、帯付きで売ってたりしたことがあるので、わりと親しみがあるんじゃない?
アレックスのこの盤は特別先鋭的なわけでもないけど、でも、この辺の灰色な感じはいいです。2人のヤリトリだけでも痺れるけど、ベース&ドラムもいいのだ。
フレスの悪魔や天使と編成同じって、言われて気がついた。(爆)
スリリングはあるけど、このシリアスな感じは。。。
って、どっちにラブ?って、聞かれたら、「フレス個人」にラブ。
だって、ずっと好きなんだもん。(爆)
みんな寝不足だねぇ。。。
投稿: すずっく | 2010年6月30日 (水) 08時04分
910さん,こんにちは。TBありがとうございます。どうもお仲間ではそういうことになるみたいですねぇ。やはり皆さん,ちょっと普通じゃない線がお好きと見えます(私も含めてですが)。
ということで,追ってこちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年6月30日 (水) 10時52分
すずっくさん,こんにちは。TBありがとうございます。仕方ないです。たまには言い訳もしたくなるような状態ですから...(たまにではない?)
最近のCriss Crossは帯はやめたみたいですが,あれって凄いマーケティング施策でしたよねぇ。誰が考えていたんだろう。
ということで,追ってこちらからもTBさせて頂きますので,暫くお待ちを。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年6月30日 (水) 10時57分
中年音楽狂さん、こんにちは。
出張お疲れ様です。蒸し暑い季節なので、体調管理と暴飲暴食にはお気を付けてください。
しかし、まさにSipiagin&Rogersの2トップにAntonio Sanchezのアンカーという布陣で攻撃的な音ですね。(冷たくファンクって感じで・・夏向きかも)聴く時間帯も選ぶ作品ですけど、かっこいい作品であることには変わりないかと。それではTBさせていただきます。
ps.これが気に入ればPaolo Fresuもいけるってものでしょうか?
投稿: とっつぁん | 2010年7月 3日 (土) 11時49分
とっつぁんさん,TBありがとうございます。また,お気づかい痛み入ります。しかし,暴飲暴食は自分の意思ではいかんともしがたいのが中国式でして...。
聞く時間帯と言えば,確かに夜には合いませんかねぇ。私はもっぱら通勤時間(往き)ですかねぇ。
これが気に入ればFresuが気に入るか。はい。多分...(笑)。コンテンポラリーな感覚と言う意味では同質だと思います。聞いた感じは違いますが,きっとあちらもお気に召すかと思います。悪魔でも天使でもどちらでもOKでしょう。
ということで,こちらからもTBさせて頂きますね。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年7月 3日 (土) 13時08分
Tp+ギタートリオという布陣ではありますが個人的にはギタートリオ+Tpな扱いになっています。
この盤を聴いていると、知らず知らずTp無視してギタートリオで楽しんでしまっていることがとっても多いです。
TBありがとうございます。逆TBさせていただきます。
投稿: oza。 | 2010年7月 4日 (日) 07時43分
oza。さん,TBありがとうございます。お気もちよくわかります。特にイントロなんて完全にギター・トリオですもんねぇ。
まぁ,どのように聞いても,これだけブロガー界で記事になるのは,今年ではクリポタ入りDaniel Szabo Trio,Seamusに次ぐぐらいの勢いと言っていいですね。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年7月 4日 (日) 13時10分