Paul Motian:異色のメンツ,異色の演奏,でも好き。
"Lost in a Dream" Paul Motian(ECM)
先日,このブログでEnrico PieranunziとPaul MotianのデュオにChris Potterが客演したアルバムを取り上げたが(記事はこちら),ピアノをJason Moranに変えたアルバムである。Piearnuzi盤がどちらかというとクリポタ客演曲にダイナミズムを持たせていたのとは異なり,このアルバムは,ECMレーベルらしい静謐さが支配的である。途中にフリー的なアプローチも聞かせるものの,これはやはりリーダーとしてのMotianの特性に基づいて展開されたのだろうと思わせる。
しかし,こうした静謐な雰囲気の中でも,クリポタが繰り出すフレーズは刺激的で,雰囲気はクリポタ・ファンが求める世界ではないとしても,彼の演奏は楽しめるはずである。また,Jason MoranはJaki Byard,さらにはMuhal Richard Abrams,Andrew Hillに師事しただけあって,こういう雰囲気はお手の物かもしれない。そもそもMoranって,Charles Lloydともベースレスのトリオで来日もしたことがあるはずであるから,このフォーマットは決して苦にならないのだろう。通常の感覚では変わった編成(だって初代山下洋輔トリオの構成だ)であることを意識させない演奏を展開していて,大いに評価したくなってしまう。また,MoranはDave HollandのOvertone Quartetにおいては,クリポタとバンド・メイトだったこともあり,ここでもかなりの相性の良さを示しているのではないだろうか。
いずれにしろ,ジャズらしい「熱さ」というものをほとんど感じさせない音楽であるが,それでもここでの緊張感あふれる演奏を聞けば,録音されていた日にVanguardに来ていた聴衆が確実に満足して帰路についたことは想像に難くない。Paul Motianと言えば,Bill EvansのRiverside4部作においてドラムスを担当していたことばかりが話題になりがちであるが,そういう要素をサトルなドラミングの中に感じさせながらも,より自由に演奏に参加することをよしとしているように強く感じるのである。
その辺りが,まさしくPaul Motianらいしいと言えばその通りであるが,一般のリスナーの好き嫌いはかなり大きく分かれるのではないだろうと思われう作品である。しかし,夜遅くなってから,この作品を聞いてみれば,そうした時間にフィットしたアルバムであることはわかって頂けるのではないかと思っている。ということで,私はこのアルバムを否定できない見解を持つがゆえに,星★★★★。万人向けの音楽とは思わないが,確実に夜には合うはずだ(眠気を誘うという話もあるが,それは音楽としてよいから眠くなるのだ,と強弁したい)。
いずれにしても,途中で拍手などが入らなければ,Vanguardでのライブってことを忘れてしまいそうである。聴衆もこのライブに関してはおとなしいものであるが,ローカルの聴衆がこの音楽を生で聞いて,実際のところ演奏中にはどのように感じたかは非常に興味深い。ここに旅行客が混じっていたら,面喰ったんだろうなぁ,なんて考えてしまうが。
Recorded Live at the Village Vanguard in February 2009
Personnel: Paul Motian(ds), Chris Potter(ts), Jason Moran(p)
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この盤は、純粋にChris Potter買いです。
2009年2月のNY Village Vanguardでのライブ録音です。
ECMで、このメンツでライブ盤というのも珍しいんじゃないでしょうか。
メンツは、以下の通り。Jason Moranが入っているのが、興味津々です。
もしかしたら、初Jason Moranかもしれません。
Chris Potter(ts) Jason Moran(p) Paul Motian(ds)
演奏曲も、1曲を除いて全部オリジナルとなっています..... [続きを読む]
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前のジョー・ロヴァーノとビル・フリゼールとで演奏したトリオもそうでしたけど、ベースレスのトリオでやる時はモチアン色がかなり出ていますね。楽器構成も違うのにイメージ的に2つのバンドの差があまり自分の中では感じられないのです。いい意味で。
かなりスペイシーなんですが、それでいて魅力的なトリオの演奏になってしまうという。今回は静かなだけではなくて、後半に盛り上がりのある曲も少しあるので、変化もありますし。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2010年4月25日 (日) 07時43分
910さん,おはようございます。TBありがとうございます。
確かにMotianって,リーダーとしては不思議な編成で攻めてきますよね。Electric Bebop Bandも2ギターですし。まぁでもこうしたアンビエンスはMotian独特のものではないかなぁなんて思っています。
こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年4月25日 (日) 10時27分
これ、わたしはとっても好き。
なんか、聞くたびに好感度アップです。
いわゆる熱さではないんだけど、この緊張感、密度の濃さ、それは空間的にスペイシーなんだけど、なんか、、濃いのだ。
ッテ、、二日酔ですが。。。
しかし、、アリスを夜に観に行かなくちゃ。。。
うむ。。。約束しちゃったからなぁ。。。
投稿: すずっく | 2010年4月25日 (日) 17時28分
すずっくさん,こんばんは。TBありがとうございます。
確かにこの演奏は「濃厚」ですね。ただ,Vanguardという空間で,こういう演奏を聞いたらどうなってしまうのかなぁなんて思います。"Lift"が録音されたのもVanguardですから,違い過ぎ~なんて感じても仕方ないですよね。
でも私もこのアルバム,好きですよ。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年4月25日 (日) 17時47分
私も、聴くたびに好感度アップしてる印象です。
たしかに、たった1回のライブを聴いて、良さが身に染みるとは思えませんので、こうしてCDで何度も聴けるのがウレシイと言うかなんと言うか..。
TBありがとうございます。逆TBさせていただきます。
投稿: oza。 | 2010年4月25日 (日) 21時05分
oza。さん,こんばんは。TBありがとうございます。
確かにすずっくさんもおっしゃっているように,このアルバム「スルメ」盤なのかもしれませんねぇ。聞くたびに,新しい発見があるという感じでしょうか。一聴地味だけに,なかなかわからなあいじもありますが,実は優れた演奏というのがECMらしいのかもしれませんね。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年4月25日 (日) 21時37分