ゲスト・ソロイストも賑々しい"The Avatar Sessions"
"The Avatar Sessions: The Music of Tim Hagans" Randy Brecker, Peter Erskine, George Garzone, Tim Hagans, Dave Lebman, Rufus Reid & The Norrbotten Big Band (Fuzzy Music)
Peter Erskineが主宰するFuzzy Musicのサイトを見ていたら,なんじゃこれはというメンツのアルバムを発見した。私はビッグバンドは好きな方だとは思わないが,このソロイストを見たら聞いてみたくなるのが人情である。
Norrbotten Big Bandはスウェーデンを本拠とするモダン・ビッグバンドで,現在その音楽監督にあるのがTim Hagansだそうだが,そのHagansのオリジナルをゲストを迎えてNYCで録音したのがこのアルバムである。Tim Hagansとこのビッグバンドは既に同じレーベルで,同じくPeter Erskineを迎えた"Worth the Wait"というアルバムも吹き込んでおり,そちらはDown Beatで四つ星を獲得したそうである。また,このバンド,Scott Kinseyを迎えたアルバム(その名も"Future Miles"!!)も作っているようだから,その指向は相当コンテンポラリーだと想像させる。ErskineはStan KentonやMaynard Ferguson出身だから,ビッグバンドとの相性はいいのは当然だろうが,さて,どんなサウンドなのか。
1曲目から随分とモダンというかコンテンポラリーな響きのサウンドであり,これが現在のビッグバンドの主流的な乗りなのかなぁと思わせる。Garzoneのソロは「あのトーン」でさすがにいけている。2曲目の"Boo"なんて不思議な変拍子だし,どうせならこんな曲はエレクトリック・ベースにすればいいのに,とも思わせるような曲でもRufus Reidがアコースティック・ベースを弾いているのはちょっと微妙。全体的に見れば,変拍子やら,結構複雑な構成の曲もあって,続く3曲目の"Box of Cannoli"はFrank Fosterを記念して,IAJE/ASCAPから委嘱されたもので,いかにもそれっぽい。
ところで余談になるが,ASCAPはThe American Society of Composers, Authors and Publishersの略で、米国作曲家作詞家出版家協会というのは結構お馴染みかもしれないが,もう一つのIAJEはジャズ教育関係を中心に様々なプログラム、コンファレンスを行ってきた非営利団体International Association for Jazz
Education(国際ジャズ教育者協会)である。こういう団体が主催するコンファレンスの動員が芳しくないという理由で財政難に陥って,挙句の果てに倒産というのは凄い事実であるが。そもそも協会トップの使い込みなどいろんな疑惑があって,業界内で強い反発を生んでいたらしいから,これもまぁ当然の帰結か。
それはさておき,それに続く"Here with Me"はまさにDave Liebmanの独壇場と言ってよい美しいスロー・ナンバーである。そして本作で一番モダン・ビッグバンドらしいのが5曲目の"Palt Seanuts"である。タイトルからして"Salt Peanuts"のもじりであるから,そういう響きも当然か。6曲目はRufus Reidをフィーチャーした"Rufus at Gilly's"であるが,私はこの人のベース音があまり好きではないので,これまた微妙。ベースは私としてはReidじゃなくてもよかったんではないかと思うのだが...。そして最後はしっとりと"Song for Mirka"で締めるというプログラムは悪くない。ここではDan Johanssonのフリューゲルがいい味を出している。
ということで,私はビッグバンドにあまり関心がある人間とは言えないが,それでも現代のバンドの作品としてはそれなりに楽しめるものだったと思う。スウェーデン勢がソロを取るのは7曲中3曲だけだが,それでもレベルの高さは十分実証できている。曲は必ずしも最高とは思わないが,ソロイストの魅力もあって星★★★☆。また,書きそびれたが,Tim Hagansのトランペット奏者としての実力も結構高いことがよくわかる。
本作も日本にそのうち入ってくるだろうが,なんとアマゾンでは5/18発売予定になっている。現段階でそんなもんを聞いている私も相当の好き者というか,我ながらマメである。ちなみに本作をプロデュースしたのはBob Belden,エンジニアはJim Farberである。まぁこれだけでも,そんな失敗作にはならんだろうと思わせる作品ではある。
Recorded between May 10-13, 2009
Personnel: Tim Hagans(tp, arr), Håkan Broström, Jan Thelin, Mats
Garberg, Karl-Martin Almqvist, Per Moberg(sax, woodwinds), Peter
Dahlgren, Magnus Puls, Ola Nordqvist(tb), Björn Hängsel(b-tb), Bo Strandberg, Dan Johansson, Magnus
Ekholm, Tapio Maunuvaara(tp, fl-h), Daniel Tilling(p, el-p), Vic Juris(g), Rufus Reid(b), Peter Erskine(ds) with Randy Brecker(tp), George Gazone(ts), Dave Liebman(ss)
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