クラシックのアダプテーションはロックでも機能することを証明した一作
"Pictures at an Exhibition" Emerson,Lake & Palmer(Atlantic)
私が洋楽ロックに目覚めた頃,私に大きな影響を及ぼした懐メロである。確か私が初めてこの曲を聞いたのはFMで,それは「展覧会の絵」聞き比べというプログラムであったはずである。ムソルグスキーによるオリジナルのピアノ版は聞き逃したが,ラヴェル編曲版に続いて,この演奏が放送され,私はぶっ飛んでしまった。その頃,私はクラシックにはほとんど興味はなかったのだが,同じ曲がかくもロック的な感覚を持ったまま演奏できるのかと,ある意味感動すら覚えた記憶がある。おそらくそれは私が小学校の6年生ぐらいの頃だったはずではないかと思うが,エア・チェックしたテープを私はその後ずっと聞き続けていたのである。そういう意味ではこれも同じくエア・チェックで聞いていたDeep Purpleの"Live in Japan"と同じぐらい強烈なインパクトを私に与えたアルバムと言えるかもしれない。
今,このアルバムを聞けば,確かにKeith Emersonのキーボードは時代を感じさせる。しかし,一般的にはラヴェル編曲版で賑々しく盛り上がりたいという感じのこの曲の雰囲気をロックで再現することには間違いなく成功しているだろう。しかし,私がこの演奏で一番気に入っていたのは実はGreg Lakeの歌が入る部分だったのである。そこはLPで言えばA面の比較的静謐なパートだが,久しぶりにこの記事を書くためにこのアルバムを聞いても,その感覚は変わらなかった。そして,Lakeがアコースティック・ギターが結構うまいということを認識し,彼のソロ・パートをコピーしたのは私が中学生か高校生の頃だったろうか。やっぱり私にとっては懐かしいのである。
まぁ,Keith Emersonにしても,YesのRick Wakemanにしても,クラシックの教育を受けているものだから,そうしたものへのコンプレックスなのか,シンパシーなのかよくわからないが,こうしたアダプテーションをしたがる部分っていうのはあったとしても,この演奏は十分にロックだと認められるところが半端なアダプテーションでお茶を濁す,そんじょそこいらの普通のロック・ミュージシャンと違う。特にエンディングなんて,ラヴェル版の盛り上がりを見事に再現した見事なアダプテーションだと言ってよいのではないかと思っている私である。
このアルバムが発売された時代に,これだけインスト重視のアルバムがそれなりに売れたということはある意味で驚異的でもあるが,それでもこれだけ出来がよければ首肯できる話である。もちろん,クラシック音楽原理主義者の皆さんには絶対認められないだろうアルバムだろう。しかし,こういう音楽が契機となってクラシック音楽に関心を持つ若者もいるかもしれないと考えれば,このアルバムが果たした役割は大きかったのではないかと思う。Yesがコンサートのオープニングにストラビンスキーを使っていたのとはややレベルは違うものの,そういう出会いって結構大事だよなぁと,音楽については雑食の私は強く思う。それに比べれば,アンコール的な"Nutcracker"はいただけないが,まぁそれはここでは甘く見ておこう。
ということで,子どもの頃の私に強く影響を与えた音楽であることもあって,私にとってはいつまでも星★★★★★のアルバムである。まぁ,ちょっと面映ゆい部分はあるが,人生を振り返ればやっぱりそうなのである。
Personnel: Keith Emerson(key), Greg Lake(b, g, vo), Carl Palmer(ds, perc)
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