Jesper Bodilsen:どういうシチュエーションで聞けばいいのやら...でも好き。
"Short Stories for Dreamers" Jesper Bodilsen (Stunt)
本作の帯には女流写真家Tove KurtzweilとJesper Bodilsenのコラボレーションのように書かれているが,ライナーを読む限り,特に明確なコラボの意図は見受けられない。しかし,ライナーに挿入された写真から何らかのイメージが喚起されているということはあるのかもしれないが,まぁそれはさておきである。
このジャケット,この編成であるから,好き者の琴線に触れることは間違いなかろう。私もそうした好き者の一人である。何と言っても,ベース,ギター,トランペット,ヴァイブ(最後の曲はメロディカを吹いている)が組み合わせを変えながら,原則として静謐な音楽を奏でるのだから,だいたい最初に音が出てきた瞬間から展開は予想がつきそうなものである。しかも冒頭の"Caetano"は,文字通りCaetano Velosoへのオマージュであろうが,スローなボッサのようなかたちで演奏されるのを聞いて,思わず膝を抱えたくなってしまった私である。いずれにしても編成が編成なだけに,一般的なジャズ的な乗りのようなものとは全くと言ってよいほど縁のない音楽である。
この音楽を聞いていて,一体どういうシチュエーションならば,こういう音楽がフィットするのかということを考えていたのだが,私がいつもやっているような通勤中に聞くような音楽では決してない。例えば朝の通勤時にこんなものを聞いてしまったら,そのまま家へUターンしたくなるかもしれない。例えば,気だるい午後を無為に過ごすバックに流れていれば,それはそれでいいかもしれないのだが,その場合は,聞き流すには音楽としてよくでき過ぎの部分があって,これが難しい。ということで,私はこの音楽を聞いていて,どのようなタイミング,場所でこの音楽をプレイバックするのが最適なのか,まだ発見できていない。
純粋鑑賞音楽として捉えればそれはそれでいいのだが,その場合,冒頭の膝を抱えたくなってしまうようなこの音楽の雰囲気はどうすればいいのだと思ってしまう私である。しかし,聞き進むにつれて,これは実は静かながら明るさも秘めた音楽とも思えてくるから,全編を聞き通すことは全く苦にはならないのである。そういうことを考えると,最近は,飲み屋,そば屋,カフェその他のありとあらゆる場所で,やたらにモダン・ジャズを耳にする機会があって実は私は辟易としているのだが,こういう音楽がBGMで流れてきたら実は新鮮かもしれないなぁ等と想像してみる私である。店でこの音楽が小音量で流れていたら,つい耳をそばだててしまうかもしれないなぁとも思ってしまった。
基本的に静謐な音楽の中で,6曲目の"Marie"はUlf Wakeniusがスチール弦のギターを軽やかにカッティングしていることもあり,若干雰囲気が違うが,よい感じのチェンジ・オブ・ペースになっている。ということで,全編を聞き終わると,なかなかよくできたアルバムではないかと思ってしまった私である。Peter Asplundってこんなラッパも吹けるのねぇと変な感心の仕方もしてしまった。結局,我ながらこの音楽が好きなんじゃんというのが結論。繰り返すが,ジャズ的なフレイバーは希薄ながら,私にとってはかなり落ち着ける音楽である。星★★★★。更にこの音楽がフィットするTPOを探求することにしようか。こんなことを書いていると,「やっぱりあなたはネクラなのよ」という声が新潟方面から飛んできそうである(笑)。
ところで全くの余談だが,このTove Kurtzweilの写真は意図的にフォーカスをずらしているのが芸風のようだ。素人のピンボケ写真はみっともないだけだが,プロの意図による写真だと違って見えるのが不思議。
Recorded on March 23 & 24, 2009
Personnel: Jesper Bodilsen(b), Ulf Wakenius(g), Peter Asplund(tp, fl-h), Severi Pyysalo(vib, melodica)
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中年音楽狂さん、はじめまして。
いつも興味深い内容のblog、そして楽しいblogを拝読させて頂いておりました。
つぶやきではフォローさせて頂きましたが、やっと自分でも入り込めそうな記事でしたのでコメントさせて頂きました。
さて本作ですが、と申\し上げる前に、、、
本当にいつもユーモアも交えた文章に感心しておりますし、勉強もさせて頂いております。
今回でも、《朝の通勤電車で聴いた日にはUターンしてしまうかも》とか《冒頭の曲では膝を抱えたくなった》という所では、思わず爆笑してしまいました!
本当にそうですよね、自分は絶対通勤電車では聴きません(笑)
本作、おそらくこの編成を見ただけではハジカレる可能\性大だと思うのですが。自分は以前、ペットは入ってなかったのですが、ヴァイブとアコギ、ベースの作品を妙に気に入ってしまいました。ヴァイブとアコギのハーモニーがなんとも良く感じられたのです。
そんな事もあり、名手ボディルセンがリーダー、ペットがアスプラッドですから迷わず買い!でした。
どんなシチュエーションで?についてですが、、、
これは改めて考えさせられる、と言いますか、自分は単純、単細胞ですので、ガンガンのハードバップを聴き過ぎた後にこっそり膝を抱えて、う~ん良いなぁ、と自分の世界に入り聴いております(爆)
投稿: SINTETIC | 2010年3月26日 (金) 13時31分
>どのようなタイミング,場所でこの音楽をプレイバックするのが最適なのか,まだ発見できていない。
夢の中で。
これ、あんまり頭で考えないで良いと思うよ。
確かに、閣下が通勤電車でこの音楽聴いてると思ったら、、
笑えてくるなぁ。。
でも、流れゆく車窓に人生を重ね合わせて、、
なんて、無理だなぁ。。
ワケニウスの手癖ポイ、、フレーズ満載ですよねぇ。。
投稿: すずっく | 2010年3月26日 (金) 18時52分
SINTETICさん,こちらでははじめましてですね。当ブログをご覧頂きありがとうございます。Twitterのフォローもありがとうございます。
ユーモアっていうか,私がつまらないジョークを書いたりするのは関西人の血かもしれません。ボケるかつっこむかどちらかをしないと,生きていけないのが関西人ですから(笑)。
これからも自虐的ギャグを中心に,皆さんが退屈しないような記事を書きたいと思います。そのためには真面目一辺倒では無理!と思っています。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年3月26日 (金) 20時24分
すずっくさん,こんばんは。TBありがとうございます。
あんまり頭で考えなくてもいいと言われましてもですねぇ,これはやっぱり考えちゃうでしょう。
私が通勤中にこの音楽を聞いている姿を想像して笑ってやって下さい。こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年3月26日 (金) 20時25分