なんでJeff Beckが「誰も寝てはならぬ」やねん!!
"Emotions & Commotions" Jeff Beck(ATCO)
Jeff Beckがスタジオ・レコーディングを発表するのは7年ぶりだそうである。その間にもライブ盤が出たり,来日もしているから,そんなに久しぶりなのかなぁとも思ってしまうが,待望と言ってもよい作品であることは間違いない。前作は"Jeff"ってことになるが,あれも賛否両論だったような気がする。しかし,今回の作品は更に評価が分かれるのではないかと思う。
まず,冒頭からBenjamin Britten(というかJeff Beckはそれを歌ったJeff Buckleyを引き合いに出している)作曲の"Corpus Christi Carol"がオーケストラ共々に演奏され,おやおや,これは映画音楽的だと思わせるのだが,聞き進んでいくと,"Over the Rainbow"も再演しているではないか。Official Bootlegに入れておきながら,またやるとはよほどこの曲が好きらしい。まぁこれも許すとして,私が聞いていてびっくりしてしまったのが,プッチーニ作曲「誰も寝てはならぬ」(トリノで荒川静香が滑ったあの曲ですね)を,朗々とBeckが弾いているではないか。これには思わず私も電車の中で「なんでやねん」とひとりごちて突っ込みを入れてしまったではないか。一体Jeff Beckに何があったのか。
もちろん,Jeff Beckらしいスリリングなナンバーもあるにはあるが,どうも私にはこのアルバムはピンとこないのである。Jeff Beckらしい締め上げるような痺れる感覚はほとんど感じられない。歌伴でのオブリガートなんて素晴らしいものだが,でもやっぱり変だ。確かにJeff Beckはもう65歳だから,多少枯れてきても仕方がないのかもしれないが,これは我々がJeff Beckというギターの鬼神に期待する姿ではないだろう。これは偏にプロデューサーが悪いと言いたくもなるが,Trevor Hornがエグゼクティブ・プロデューサーではさもありなんってやつか。
近々来日する際には,Jeff Beckはこのアルバムからも演奏するではあろうが,それでも基本はRonnie Scott'sでのライブのような演奏になるのではないかと思うが,「誰も寝てはならぬ」をJeff Beckが弾くのを聞いて盛り上がる聴衆がいるのだろうかと思わざるをえない。もちろん,これだけの有名曲だから,クラシック,ひいてはプッチーニなんて聞いたこともない若者たちは「おぉっ,知ってる,知ってる,荒川静香のあれじゃん」などと喜ぶのかもしれんが,私がライブの場にいたとしたら,げんなりしてしまうだろうなぁ。とにかく,私はRonnie Scott'sでのライブ映像との落差に本当に戸惑ってしまったのだが,こんなアルバムを聞いてしまっては,私がJeff Beckのアルバムを買うのはこれが最後だろうと思わず感傷的になってしまったではないか。ということで,私には全く納得がいかないので,星★★。やっぱりこれは絶対に変だ。
Personnel: Jeff Beck(g), Jason Rebello(key), Pete Murray(key, arr), Tal Wilkenfeld(b), Pino Palladino(b), Chris Bruce(b), Vinnie Colaiuta(ds), Allesia Mattalia(ds), Clive Deamer(ds), Earl Harvin(ds), Luis Jardin(perc), Joss Stone(vo), Olivia Safe(vo), Imelda May(vo), Steve Lipson(prog)
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» Jeff Beck "Emotion & Commotion" [very fond of music !]
Emotion & CommotionAtco詳細
来日公演、行けませんでした{/m_0163/}
新譜"Emotion & Commotion" それはそれは綺麗な仕上がりで
「驚き」と「戸惑い」だったりします。
曲のつなぎのうまさや、浮遊感やら美しさには「うひゃ〜」ですが
ジェットストリームちっくな曲や、聖歌隊だったり
りちゃーど・ぶらっくもあだったり、イナバウアーだったり
映画音楽だったり...。
はて?去年見たJeff Beckだよね?っておや?? だったりします。
とはいえ、"Hmm... [続きを読む]
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お疲れ様です。
ジェフベックは最近オーストラリアでライブをやったのですが、情報筋によれば、ライブでもプッチーニやったそうです。しかも、突然レスポール持ってきてドロックなHow High the Moonなんてのもやったらしいですよ。
ちなみにメンツですが、タルちゃんとカリウタはいなくて、代わりにロンダスミスという強力に格好いい女性ベースとナラダマイケルウォルデン(!?)だったとのこと。なんか変なバンドですな。
というわけで、お気をつけて(謎)。
投稿: こやぎ@でかいほう | 2010年3月28日 (日) 02時13分
気をつけておでかけください。
我が家では、ロックなアルバムはダーリンが担当なのですが、これはわたしもチェックはしてますです。
とりあえず、沢山かいこんじゃっているので、しばらく、様子みまあす。
毒入り事件は犯人あがりましたね。。。。
んじゃ、お気をつけて!
投稿: すずっく | 2010年3月28日 (日) 09時23分
こやぎさん,情報ありがとうございます。なんかプッチーニをやるってのは,大衆に迎合しているようにも思えてしまうというのは言い過ぎですかねぇ。
今回のライブのメンツは,臨時編成みたいですが,NaradaがBeckのバックでドラムスを叩くのは25年ぶりだそうですわ。行く予定はないですが...。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年3月28日 (日) 10時56分
すずっくさん,こんにちは。
まぁ感想は人によっていろいろあるかもしれませんが,これは少なくとも私の求めるJeff Beckではありませんでした。賛否は間違いなくわかれるでしょうね。
では出かけてきますです。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年3月28日 (日) 10時58分
今晩は!もう聞かれたんですか!日本では来月発売のはずですがさすがですね!私もレコードが出るので予約したのですが、コメント見まして心配しております
でも今回はレコードと言うこともあって買おうと思っております
投稿: takeot | 2010年3月28日 (日) 21時21分
すみません。3月24日に発売されていたんですね?レコードが4月発売なのでてっきり4月になってから発売と思い込んでおりました
iTunesでも試聴できるので聞いてきました!
確かに荒川静香さんの曲でしたね!でもジョスストーンが2曲歌っていたりで楽しめそうだなと感じたのですが如何でしょうか?
投稿: takeot | 2010年3月29日 (月) 22時29分
takeotさん、こんばんは。現在天津におります。
このアルバム、Joss Stoneには文句ありません。プッチーニもちゃんと弾いているのはよくわかります。しかし、やはりこれは本来あるべき姿のJeff Beckではないと思います。
少なくとも私は支持できません。ただ、それは私だけの考えだったとしてもどうこう言えませんが。でも納得できないものは仕方ありません。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年3月30日 (火) 00時19分
こんにちは。
Ronnie Scott'sでのライブとの落差は大きいですね。
相変わらず 数曲を除いては、消化しきれないでいるので
企画物として考えちゃう方がいいのかな?とか思ってます。
トラックバックありがとうございますm(__)m
投稿: 9356 | 2010年4月19日 (月) 13時15分
9356さん,こんばんは。TBありがとうございます。
「企画物」ですか...。確かにそうかもしれません。でもこれを聞いて,ファンは喜ぶと思ったのかなぁ。やっぱりイメージが違うと思います。よって,私は支持できないままです。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年4月19日 (月) 22時24分
今晩は!やっとこのアルバム届きました!輸入盤は火山の噴火のせいで大分遅れているみたいです4月中旬予定がやっと本日手にした次第です!
ボーカルの入っている曲は良いですね!
やっぱり問題はインストに新しさがないことでしょうか?オーケストラとのコラボがテーマなのですかね?というよりもクラシックとのコラボなのかな?ということなのでしょうね
投稿: takeot | 2010年5月 4日 (火) 22時00分
takeotさん,こんばんは。
はい。確かにヴォーカル入りの曲はそれなりに楽しめます。しかし,このアルバムのプロダクションそのものは,Jeff Beckのファンには受け入れられるものではないと思います。やっぱりTrevor Hornが悪いってことかもしれませんねぇ。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年5月 4日 (火) 22時27分
コメント、TBありがとうございます。
コレ音楽狂さんのご意見を聞いてから収捨を決めようかと思っていました。
実は、日本盤ボートラのクライミーアリバーが気になってるんですよ…
投稿: 東信JAZZ | 2010年6月 2日 (水) 18時08分
おはようございます。国内盤は未聴ですが,このアルバムはファンとしては微妙でした。
"Cry Me a River"は渡辺香津美が"Mo' Bop II"で見事なJeff Beckへのオマージュを捧げていますので,そちらをお聞きになってみてからでもいいのではないかと思います(既にお聞きならごめんなさい)。
いずれにしてもこのアルバムを皆さんに強く推薦はできないなぁというのが正直なところです。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年6月 3日 (木) 08時02分
お久しぶりです。
やっと最近になって、このアルバムを買いました。
自分は◎です。
どこか懐かしくて、ノスタルジックに癒やされます。
自分は"ワイアード世代"のはずですが、懐かしく感じるのです。
投稿: 東信JAZZ研究所 | 2014年5月 3日 (土) 20時40分
東信JAZZ研究所さん,こんばんは。
このアルバムが出てから4年近く経ってますので,記憶そのものが曖昧になりつつありますが,記事のように酷評していますので,その後ほとんどこのアルバムを耳にしたことはありません。
しかし,先月のライブは全然違っていて,やっぱりライブでは激しさ炸裂,ということで,落ち着くところに落ち着いていました。ただ,何がJeff Beckをこういう音楽に駆り立てたのかは謎ですが,そろそろ新譜も出るらしいという話もありますので,次作を注視したいと思います。
投稿: 中年音楽狂 | 2014年5月 3日 (土) 21時22分