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カテゴリー「ジャズ(2009年の記事)」の記事

2009年12月31日 (木)

2009年を回顧する(最終回):ジャズ編

Chiaroscuro いよいよ大晦日である。このブログも始めてから丸3年が経過したということになるが,飽きっぽい自分にしてはよく続いている方だと思う。ブロガー3年限界説を打破するぞ(爆)。それはさておき,2009年を回顧するシリーズもいよいよ大詰め,ジャズ編と相成った。

今年もいろいろな音源を聞いたが,地元のショップ以外はなかなかCDを漁りに行く機会がない中,頼りになるのはブログのお仲間の情報と,ショップのサイト情報である。もちろん,ひいきにしているミュージシャンについては,彼らのサイトで情報の収集も図り,できるだけUp-to-dateな状態を保つようにはしたつもりではいるが,それにも限界がある中,やはり持つべきものはお仲間である。

Mostly_coltrane そうした中で,私の中で,最も期待をさせ,そして完全に期待に応えた作品はRalph Towner/Paolo Fresuの"Chiaroscuro"である。まさしく,これこそこのご両人,更にはECMレーベルに期待する音楽であった。そういう意味で,私は本作を今年の最高作としたい。これがなければ最高作はSteve Kuhnの"Mostly Coltrane"だったはずである。こちらも甲乙つけがたい傑作であり,この2作を出したという事実により,Label of the YearはECMということになるのである。レーベルの40周年を祝うような素晴らしい作品を連発したManfred Eicher恐るべし。ECMにはStefano Bollaniのトリオによる作品もあったしなぁ。やはりこのクォリティの高さは尋常ではない。

Photo そして今年の最大の嬉しいニュースは大西順子のカムバックであろう。長年の隠遁生活で,多少音楽も枯れたかと思いきや,鋭さは健在。彼女がいない間に雨後のたけのこのように日本ジャズ界にも女性ピアニストが現れたが,彼女を凌駕する存在はまだいないと確信させられるような素晴らしい作品を長いインターバルの後でもリリースしてきたのは立派だった。これからも日本ジャズ界を牽引して行って欲しいものである。

Not_by_chance ということで,これらの3枚を今年のベストとしてもいいのだが,ほかにも挙げたいアルバムがいくつかある。中でも記事にした当初はこれほどよいと思っていなかったのだが,何度も聞いていると,実は凄く良くできたアルバムではないかと思わせるのがJoe Martinの"Not By Chance"である。こういうのをスルメ盤という。噛めば噛むほどというか,聞けば聞くほど,その良さにはまっていっていく自分がいた。当初私はこのアルバムに星★をつけたが,今では次席に据えてもいいのではないかと思えるほど評価が上がった作品である。このほかにChris Potter関連作としてUndergroundもMonterey Quartetもよかった。ということで,今年1年を通してのMVPはChris Potterだったと言ってもよいだろう。

Brilliant_moments そして発掘音源/映像としては山下洋輔トリオの結成40周年記念盤,"Brilliant Moments"が楽しかった。何年経っても,この人たちの音楽の爽快感は素晴らしいなぁと思う。返す返すも日比谷野音の復活ライブに行けなかったのは残念である。

ということで,今年もいろいろなアルバムを聞いてきたが,それなりに楽しめる年だったと言ってよいように思う。ここに挙げたもの以外でも,Enrico Rava,Branford Marsalis,Marc Copland,Enrico Pieranunzi等は強い印象を残した。そして忘れちゃいかん,Fred HerschのJobim集は見事なまでにHerschの音楽になっていた。ほかにもまだまだあるが,これ以上書き出すときりがない。もちろん,裏切られたガックリ盤もあるにはあったが,それは仕方ないことである。そんな中で,来年に向けて期待感を高めてくれたのがWayne Krantz。Krantzをロンドンで聞けたのはよかったが,あのときは自分のバンドではなかった。2月にはKrantz/Carlock/Lefebvreでの来日が迫っているので,ライブに向けて,また復習のために彼のアルバムを聞くことにしよう。

いずれにしても,当ブログを1年間ご愛顧頂きありがとうございました。来年はまた気分も新たにいろいろな音楽に接していきたいと思うが,ちょっと新譜を買うのは控えめにしないと,未聴盤が山のようにあって,かなりまずい状態である。まずはその解消が来年の当初の目標ってことになるかもしれない。ちなみに今年はブログのお仲間であるすずっくさん,crissさん,rhodiaさんにお会いするチャンスに恵まれたのが嬉しかったが,さて来年やいかに。

では皆さん,よいお年をお迎え下さい。

2009年12月27日 (日)

予想よりはるかによかったBobby Watson参加作

At_ease "At Ease" Benjamin Koppel & Bobby Watson(Cowbell)

私はBobby Watsonが結構好きである。彼のリーダー・アルバムにはあんまり面白いものがないのは厳然たる事実だが,ライブでこの人を見ると,プレイヤー,ソロイストとしての実力はあまりに素晴らしく,どうしても燃えてしまうのである。今は昔の話になるが,1991年のJVCジャズ・フェスティバルで見たときのBobby Watsonはそれこそ最高だったと言ってよい。ほかのソロイストを完全になぎ倒していたものなぁ。

そんなBobby WatsonがBenjamin Koppelと発表した双頭リーダー作が本作であるが,曲は全てKoppelのオリジナルだから,Watsonは客演と考えるのが妥当である。よって,実は買う前はお気楽セッション・アルバムか?という危惧があったのも事実である。しかし,ピアノはKenny Wernerだし,ドラムスはAlex Rielだからこれは意外にいけるかもという判断のもと購入に至った。

それでもって聞いてみたら,これがかなりいけているではないか。これは決してお気楽セッション・アルバムではないし,単なるアルト・バトルのアルバムでもない。ちゃんとアルバムの曲の構成もメリハリがきいているし,いかにもバトルでございますっていう感じもなく,ちゃんと作られているというところがまず嬉しい。その上で,KoppelとWatsonの勝負ということになれば,やはりフレージングにはWatsonに一日の長ありである。やはりこの人はうまいのである。

私にとってはこのアルバムはWatsonのソロを聞いているだけでも楽しいが,更にその魅力を増幅させたのがKenny Wernerのピアノである。Wernerは地味なピアニストと言ってもいいだろうが,この人が入っていると,アルバムに締りがなくなることはないと言ってもいいぐらい,平均点の高い演奏を繰り広げる人である。リーダーとしての派手さはないとしても,優れたバイ・プレイヤーである。Kenny Wernerと言えば,あのTom Harrellとの"Sail Away"も最高だったしなぁ。

ということで,メンツにも恵まれたこともあり,このアルバムはジャケットのシャビーな雰囲気からは想像できないぐらいの佳作になっていたのはある意味で想定外だったが,私にとっては嬉しい誤算であった。星★★★★。

Personnel: Benjamin Koppel(as), Bobby Watson(as), Kenny Werner(p), Pierre Boussaguet(b), Alex Riel(ds)

2009年12月26日 (土)

まだあるWayne Krantz参加作:でもゆるいFive Elementsみたいだ。

Balance"Balance" David Binney(Act)

このアルバムにはWayne Krantzが参加しているばかりでなく,その他のメンツも結構豪華なため,購入と相成った。リーダーのBinneyについては彼のアルバム"Third Occasion"をこのブログでも取り上げたことがある(記事はこちら)し,彼がプロデュースしたKrantz参加作であるJonathan Haffner(本作にもちらっと参加)の"Life on Wednesday"も取り上げている(記事はこちら)。それらの作品がいかにもNYC的サウンドだと感じさせた人であるから,このアルバムの音もある程度は想像がつくものである。

出てきた音楽もある意味で予想通りであり,結構とんがった印象を与えるものであることは間違いない。しかし,この音楽を聞いていて,私はどこかで聞いたようなサウンドだなぁと感じたのである。それはビートが強力な曲ほど明らかで,それはSteve Coleman & Five Elementsのサウンドに近いと言えるのではないかと思う。だが,Colemanの音楽はキメ重視というか,かなりタイトなサウンドを聞かせるのに対し,Binneyの音楽は,それよりはルースな感覚が強い。Five Elementsは音楽がパターン化して,飽きられるのも早かったが,それはリズムもタイトさばかりが目立って,肝腎の音楽の全体像がどれを聞いても同じに聞こえるようになったからではないかと思う。その点,Binney一派の音楽は,まだそこまでは行っていないで,適度にユルさを保っているので,アルバム全体を通して楽しむことは可能である。また,編成も曲ごとにいじっており,リーダーの目指す多様性は表出されていると評価できる。

ただ,Krantz目当てでこのアルバムを聞いた場合,ソロ・スペースが十分与えられているわけではないところはやはり痛い。これはKrantzの個性が強過ぎて,ホーンのバックではそれほど活躍する余地がないことのあらわれではないかとも思えてしまう。結局のところ,Krantzの個性が最大限に発揮されるのは,人のバックではなく,自らがメイン・ソロイストとなるギター・トリオという編成だということにほかならないのである。そのあたりに,Chris Potter Undergroundを抜けた理由もあるのではないだろうか。

だが,Krantzがこうした音楽に対して何らかのシンパシーを感じていることは間違いなく,これはこれで,一つのKrantzの実像の一つであるから,彼の音楽を知る上では,やはり避けては通れない作品だと思える。星★★★。いずれにしても,このアルバムもまたまたNYC的な感覚が濃厚であった。こんなアルバムがActレーベルから出てるってのが不思議だなぁ。

Recorded in July and August, 2001

Personnel: David Binney(as, ts, synth), Wayne Krantz(g), Uri Caine(p, synth), Tim Lefebvre(b), Jim Black(ds), Adam Rogers(g), Fima Ephron(b), Donny McCaslin(ts), Tanya Henri(vo), Peck Almond(brass), Kenny Wollesen(broom), Jon Haffner(as)

2009年12月15日 (火)

Freddie Hubbard対Lee Morgan:暑苦しいのは当然だが...

The_night_of_the_cookers"The Night of the Cookers: Live at Club La Marchal" Freddie Hubbard (Blue Note)

私はBlue Noteレーベルのフリークではないが,それでもたまに聞くとこのレーベルははずれが少ないし,ジャズのガッツを感じさせてくれる演奏が多くて,やはり名レーベルだと思わせてくれる。それでもって,このアルバムはFreddie HubbardとLee Morganのバトルが聞けるのだから,そりゃ熱く燃える演奏でしょうよと期待したくなるのは当然である。そうした期待からいつか買おうと思いつつ,買いそびれていたものであるが,今回は本作を2枚組のCD中古盤でようやくゲットしたものである。2枚組全4曲という長尺ものの集まりであるが,実は2人の共演は2曲のみである。

結果的に言うと,これはあくまでもHubbardのグループにMorganが参加したものであるが,演奏は荒っぽいというか,かなり雑である。もちろん,このご両人であるから,燃えるようなソロを展開して,聴衆も湧かせているが,冷静にCDで聞いている私には,ちょっとこれはねぇ...という感じなのである。もちろん,こういうセッティングであるから,聴衆を煽るような演奏を当初からやっていこうという思いもあろうが,こちらはそれを聞いてどんどん冷めていく感覚を覚えてしまった。バトルを盛り上げるため,バックは延々と同じリズムを繰り返しているが,それもどうなのよと思わせる原因かもしれない。

私としては,実はこのアルバムで,これはいいんじゃないと思ったのが,2人が共演していない2曲だというのも皮肉ではないか。即ちMorganだけで吹く"Walkin'"とHubbardだけで吹く"Jodo"である。2人が一緒に吹くとお祭り的というか,どうも節度に乏しい感じがしてしまうのだ。まぁ,そんな聴き方をしないで,会場の聴衆になったつもりで楽しめばいいじゃないかという声もあろうが,それでも私にはやや受け入れにくい作品となっている。

そんな中で,ソロを吹きだすとかなりいけているのがJames Spauldingである。Spauldingってかなり過小評価されているとは思うが,この演奏を聞けば,かなり実力はあったはずだと認識できる。Spauldingもかなり熱いし,そこにコンガまで入ってくるので,更に暑苦しい感覚もありである。まぁ,でもそれがBlue Noteの一部の特長かもしれないが,総体的に言えば評価としては星★★★ってところだろう。

尚,私が購入したのはRVGリマスター盤だが,聞いている限り,結構音揺れがあるように感じられるのはマスター・テープに起因するものだろうか?それとも私の装置がおかしいのか?

Recorded Live at the Club La Marchal, Brooklyn, NY on April 9 & 10, 1965

Personnel: Freddie Hubbard (tp), Lee Morgan(tp), James Spaulding (as, fl), Harold Mabern (p), Larry Ridley (b), Pete La Roca(ds), Big Black (congas);

2009年12月12日 (土)

素のMilesバンドみたいな音がするブート盤

Miles_barcelona"Barcelona 1984" Miles Davis(MegaDisc)

これはタイトル通り,1984年にバルセロナで吹き込まれたコンサート音源のブートレッグである。1984年と言えば,アルバムで言えば,"Decoy"と"You're Under Arrest"の間ぐらいで,バンドもジョンスコとBob Bergを迎え,タイトなまとまりを示し,Milesも比較的好調な時期である。試聴した限り,結構音もいい感じだったので購入したものだが,最終的に私の購入の後押しをしたのが,Tina Turnerの"What's Love Got to Do with It"が収められていることであった。ちなみにこの音源,「Milesを聴け!Version 8」にも入っていないから,新発見の音源ということであろう。

既にこの段階で,レパートリーには"Time After Time"が入っているが,それよりも"What's Love"である。この曲もスタジオ録音されていながら,お蔵入りしたという話もあるが,さもありなんである。Milesは好調のはずなのに,肝腎の「あの」フレーズで真っ当に音が出ないのである。これはまずいと思ったのか,この曲を演奏したのはごく短期間だったようだから,まぁこの音源の貴重度はそこにつきるということにはなる。

加えてもう一つ面白い点はDisc 1の特に前半が,何のエフェクトも施さないような,ほぼ原音ではないのかと思わせるような音で収められていることである。エコーもディレイもほとんど感じられないのだ。これが何とも不思議な感覚を呼び起こす。これが「素」のMilesバンドの音なのか。しかしである。この音源,バランスが悪かったり,フェイド・アウトがあったり,更には編集がなぁ~と思わせる部分もあって,名作ブートに比べれば,やはり今イチ感がぬぐえない。そもそもこの年のバンドのライブを聴くなら,モントルーのコンプリート・ボックスの演奏を聞いているのが本来の正しい姿であって,"What's Love"に釣られて買ってしまった私の選択は正しいものだったとは言えないなぁ。まぁ,こういうことも経験してみないとわからない世界であるから,まずは反省,反省。ここでの演奏は悪くないが,そんな暇があるなら,ちゃんとモントルーを聞かねば。

Recorded Live at Montjuich, Barcelona on November 8, 1984

Personnel: Miles Davis(tp, key), Bob Berg(ts, ss), John Scofield(g), Robert Irving III(key), Darryl Jones(b), Al Foster(ds), Steve Thornton(perc)

2009年12月11日 (金)

"The Hard Fusion"って感じである

Blues_for_tony"Blues for Tony" Holdsworth / Pasqua / Haslip / Wackerman(Moonjune)

国内盤はとっくに出ているのに,輸入盤がちっとも入ってこないこのアルバム,私はAbstract Logixのサイトで,同じメンツでのDVDと抱き合わせで注文したものだが,送料込みで5,000円もしないぐらいで買えてしまった。円高恐るべし。

それはさておき,このメンツがTony Williams Lifetimeの曲の再演も含めて演奏するのだから,ハード・フュージョンになるに決まったようなものである。聞こえてきた音はやっぱりハードだ。だから"The Hard Fusion"なんてタイトルに書いてしまったわけである。

ここでは,超タイトなリズムに乗ってHoldsworthは相変わらずのウネウネ・フレーズを炸裂させるのだが,それよりも私はAlan Pasquaの演奏ぶりにある意味で驚かされてしまった。PasquaもNew Lifetimeに在籍していたから,当然,こうした演奏もできるということはわかっていながらも,私の中ではPeter Erskineのアメリカン・トリオで楚々としたピアノを聞かせるイメージの人だから,この演奏ぶりにPasquaという人の多様性を思い知らされたのである。実はこのバンドの中で,最もカッコいいと私が思ったのは実はこのPasquaかもしれない。

演奏はどこから聞いても楽しめるが,あっという間に聞けてしまうぐらいの適正な尺でDisc 1と2に演奏が収められていて,私のような通勤リスナーには片道で2回繰り返し聞ける丁度よい長さなのがいいねぇ。こういう聞き方ができると記事を書くのも楽だが,それにしてもこの演奏は何とも言えぬカッコよさである。一部でBrand X的な響きが感じられる曲もあるが,やはりこの4人である。十分に各人のよさを活かした実力発揮の快演を聞かせてくれていて,Holdsworthのファンとは言えない私でも本当にうれしくなってしまった次第である。今年聞いたフュージョン系の新譜の中でも記憶に残る一枚になった。星★★★★☆。ハード・フュージョン・ファンは必聴である。

Recorded Live in 2007

Personnel: Allan Holdsworth(g), Alan Pasqua(key), Jimmy Haslip(b), Chad Wackerman(ds)

2009年12月 9日 (水)

Wayne Krantz温故知新:Leni SternのアルバムでのWK。

Leni_stern "Closer to the Light" Leni Stern(Enja)

私がこのアルバムを買ったのは随分前のことであるが,その動機は,2曲だけ参加しているDavid Sanbornのソロがカッコよかったからにほかならない。しかし,たまたまWayne Krantzのディスコグラフィをネット上で見ていたら,このアルバムが出ているではないか。う~む,全く認識していなかったとはこのことである。そもそもこのアルバムもずっと聞いていなかったものだが,Krantz参加を知って,奥の方から引っ張り出してきた(簡単に見つかったのは幸いであった)。

Leni SternとWayne Krantzはデュオ・アルバムも作っているぐらいだから,それなりの交流はあっただろうし,そもそも今はKrantzはレギュラーをやめてしまったとは言え,ずっとNYCの55Barに出演していたから,そこでLeniとギグしていても不思議はない。このアルバムも,SanbornとDennis Chambers,Don Aliasを除けば,55Bar人脈だから,やはりそうしたつながりが濃厚ではないだろうか。

演奏はと言えば,Leni Sternの音色やフレーズにはダンナのMike Sternぽさを感じさせるのが微笑ましいが,Wayne Krantzの方はというと,その後の彼の音楽性をあまり感じさせない助演ぶりである。このアルバムでは珍しくもKrantzのアコースティック・ギターが聞けるということもあるが,いずれにしても発展途上という感が強く,現在のような変態的な響きはない。だからと言って,このアルバムが平凡かというと,必ずしもそういうことではなく,Sanbornのソロもあって,久しぶりに聞いても結構楽しめた。

まぁ,私としても,結構簡単にみつかるようなポジションをこのアルバムには与えていたということだから,悪くはないと当初から思っていたのであろう。それでも,今のWayne Krantzを期待して聞くと,当然のことながら肩すかしをくらうことは間違いない。Krantzにはこういう時代もあったのだということを認識できただけでもめっけもの。ということで星★★★☆。

Recorded in December 1989

Personnel: Leni Stern(g), Wayne Krantz(g), Paul Socolow(b), Lincoln Goines(b), Zach Danziger(ds), Dennis Chambers(ds), David Sanborn(as), Don Alias(perc)

2009年12月 7日 (月)

The Jeff Lorber Fusion:フュージョン界の中間派?

Soft_space"Soft Space" The Jeff Lorber Fusion(Inner City→Wounded Bird)

これは懐かしいアルバムである。クロスオーバー全盛期と言ってもよい70年代後半に,今は亡きマイナー・レーベル,Inner Cityから発売されたThe Jeff Lorber Fusionのアルバムである。本作が,彼らにとっての日本デビュー作であったはずである。

そもそもこのアルバムが日本で発売になったのは客演したChick CoreaとJoe Farrellあってのこととは思うが,マイナー盤を発掘するWounded Birdレーベルから再発になって,本作が入手しやすくなって,この作品の魅力が再認識されればと思う私である。

なぜ,このアルバムがいいかというと,ハード・フュージョンでもなく,スムーズ・ジャズでもない,丁度いいさじ加減のフュージョン・ミュージックが展開されていることである。キメやユニゾンもある曲もあれば,適度なファンクも感じられて,このグルーブの心地よさは,往時のフュージョン・ミュージックのよさの典型と言ってもいいのではないかと思うのである。よって,私は彼らを敢えて「中間派」と呼んだわけだが,凡百のスムーズ・ジャズは毒にも薬にもならないし,ハード・フュージョンばかり聞いていると,はっきり言って疲れるというところもあるから,これぐらいが「いい感じ」なのである。

このアルバムが出た当時は「フュージョン」というカテゴリーはなかったはずである。そんな時代に,グループ名からしてフュージョン・ミュージックの拡大に貢献したと言ってはさすがに褒め過ぎの気がしないでもないが,それでもたまに聞くと心地よいアルバムである。その後もJeff Lorberは自身のアルバムも多数発表しているし,Michael Franksのプロデューサー業等でも活躍しているが,その原点と言ってよいアルバムであろう。いずれにしても,久しぶりに聞いてみて温故知新モードになってしまった私である。ある意味では,後のChick Corea Elektric Bandの原型のような部分を感じる部分もあったと言っておこう。固いこと言わずに楽しんでしまえばいいアルバムとして,星★★★★。収録時間の短さも当時のLPを思い出させて微笑ましい。

Personnel: Jeff Lorber(key), Terry Layne(reeds), Dennis Bradford(ds), Lester McFarland(b), Ron Young(perc) with Chick Corea(key), Joe Farrell(ss, fl), Bruce Smith(perc), Dean Reichert(g)

2009年12月 6日 (日)

ブートも売れないからバージョン・アップするのか...

CD不況の今,やれリマスターしました,紙ジャケにしました,更にはSHM-CDやBlu-Specにしましたと,再発が相次いでいる。直近ではCTIの諸作がRudy Van Gelderによるリマスタリングにより,SHM-CD化されたという,ある意味信じられないような話も出てきている。結局は音を改善する,あるいはその他の付加価値をつけないとCDが十分に売れないことを示している。

Black_devil しかし,こうした状況は何も真っ当な音楽業界だけの話ではなく,ブートレッグの世界でも事情は同じようである。ブートレッグに手を出すのは深みにはまるということで,普通の人には勧めたくないのだが,その一方で,ファン心理としては色々な音源を,少しでもいい音で聞きたいと思うのも人情である。その代表的な例として挙げられるのが,Miles Davisが死の直前にパリで行った同窓会セッションである。決して過去を振り返らなかったと言われるMilesがなぜこうしたセッションに臨んだかは不明だが,やはり,自分の死期を悟った上でのことだと考えるのが妥当である。参加しているメンツも強烈だし,そんな音源だから,ファンは聞きたいと思うのが当たり前なのである。でも公式盤はいつまで経っても出ないから,ブートに頼る以外に手はないのだ。だって,この時の参加メンバーは以下の通りなのだ。買いたくなって当たり前である。

Miles Davis, Wayne Shorter, Steve Grossman, Jackie McLean, Bill Evans, Kenny Garrett, Chick Corea, Herbie Hancock, Joe Zawinul, John McLaughlin, John Scofield, Joe "Foley" McCreary, Deron Johonson, Dave Holland, Richard Patterson, Al Foster, Ricky Wellman


Black_devil_definitive この時の音源はまずはオーディエンス録音と思しき"Black Devil"(上)ってブートが出て,その次に出たのが放送音源のエア・チェックであろう"Black Devil Definitive Edition"(中)である。これらの音的な違いは相当大きくて,DJ(司会者?)のトークが相当邪魔だという欠点はありつつも,後者が決定版だと思われていた。何と言っても,オーディエンス録音と,サウンドボード録音では音に相当の違いがあるのは事実だからねぇ...。

Devil_or_angel そこに今度は,その邪魔なトークが入っていないバージョンとして"Devil or Angel"(下)という冗談のようなタイトルでプレス盤が登場するに至り,これでこのときの音源探索も打ち止めということになるだろうが,困ってしまうのは,最初に"Black Devil"をゲットして,その後"Definitive Edition"まで買っている私のような人間である。所詮ブートなんだからやめときゃいいものを,結局"Devil or Angel"まで買ってしまったではないか。まんまとブート屋の策略に乗せられているような気もするが,まぁこれも仕方あるまい。同じようなパターンで,Milesブートの名作"Another Unity"のバージョン・アップ盤"Oriental Afrobeat"も買ってしまった私は,自分で言うのも何だが,もはや病的,というかアホである。

私を見てもらえばわかるが,やはりブートは普通の人間を闇社会へ誘うものである。よい子の皆さんはくれぐれも手を出してはいけません(きっぱり)。

2009年12月 5日 (土)

CMソングにSarah Vaughan...

Sarah 最近、TVを見ているとSarah Vaughanの"A Lover's Concerto"がよく聞こえてくる。Sarahの中では特にポップなこの曲であるから、まぁCM音楽の選択肢に入っても不思議はないとも言える。ここでもし、例の「枯葉」のスキャット・バージョンなんかが使われたら、びっくりしてしまうだろうしねぇ。

それにしても、最近のCMってのは結構古い音源を使っていることもよくある。ちょっと違うかもしれないが、OCNの「魔法使いサキー」なんて、オリジナルを歌っているスリー・グレイセスが歌ってるしねぇ(takeotさん、情報ありがとうございました)。私などはタイアップによるヒット狙いに辟易としているので、どちらかと言うと、私はそういう方が好きなのだが、それにしてもSarah Vaughanってのはやっぱり意外なセレクションであった。

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