"The Hard Fusion"って感じである
"Blues for Tony" Holdsworth / Pasqua / Haslip / Wackerman(Moonjune)
国内盤はとっくに出ているのに,輸入盤がちっとも入ってこないこのアルバム,私はAbstract Logixのサイトで,同じメンツでのDVDと抱き合わせで注文したものだが,送料込みで5,000円もしないぐらいで買えてしまった。円高恐るべし。
それはさておき,このメンツがTony Williams Lifetimeの曲の再演も含めて演奏するのだから,ハード・フュージョンになるに決まったようなものである。聞こえてきた音はやっぱりハードだ。だから"The Hard Fusion"なんてタイトルに書いてしまったわけである。
ここでは,超タイトなリズムに乗ってHoldsworthは相変わらずのウネウネ・フレーズを炸裂させるのだが,それよりも私はAlan Pasquaの演奏ぶりにある意味で驚かされてしまった。PasquaもNew Lifetimeに在籍していたから,当然,こうした演奏もできるということはわかっていながらも,私の中ではPeter Erskineのアメリカン・トリオで楚々としたピアノを聞かせるイメージの人だから,この演奏ぶりにPasquaという人の多様性を思い知らされたのである。実はこのバンドの中で,最もカッコいいと私が思ったのは実はこのPasquaかもしれない。
演奏はどこから聞いても楽しめるが,あっという間に聞けてしまうぐらいの適正な尺でDisc 1と2に演奏が収められていて,私のような通勤リスナーには片道で2回繰り返し聞ける丁度よい長さなのがいいねぇ。こういう聞き方ができると記事を書くのも楽だが,それにしてもこの演奏は何とも言えぬカッコよさである。一部でBrand X的な響きが感じられる曲もあるが,やはりこの4人である。十分に各人のよさを活かした実力発揮の快演を聞かせてくれていて,Holdsworthのファンとは言えない私でも本当にうれしくなってしまった次第である。今年聞いたフュージョン系の新譜の中でも記憶に残る一枚になった。星★★★★☆。ハード・フュージョン・ファンは必聴である。
Recorded Live in 2007
Personnel: Allan Holdsworth(g), Alan Pasqua(key), Jimmy Haslip(b), Chad Wackerman(ds)
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最近ではアラン・ホールズワース参加作があまりなかったので、これは久しぶりにギター [続きを読む]
今日は。EVAです。
このアルバムとは直接関係ないですが、Tony Williams は好きなドラマーです。
そしてBrand Xはかつてのレビューを見て買いました。(爆)アルバムは「LIVESTOCK」です。未だ聴いていませんが、その内、聴いてからアップしたいと思います。
私は先月一杯でソフトの購入をストップしました。中年音楽狂さんのレビュー記事が最後になりました。暫くは我慢して又買える日が来るまで候補をリストして置きたいと思います。
投稿: EVA | 2009年12月11日 (金) 10時12分
EVAさん,こんばんは。Tony Williamsはアルバムには出来不出来はありましたが,やはりいいドラマーでしたよね。
Brand Xもお買い上げでしたか。私もその後も彼らのアルバムは聞いてはいるものの,"Livestock"を上回るアルバムは結局なかったと思います。
私はソフトを買い過ぎだと思いますので,買うのを控えめにしたいと思うこともあるのですが,欲求は抑えがたく,どんどん枚数だけが膨らんでいます。でもやめられないんですよねぇ...。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年12月11日 (金) 19時39分
音楽狂さん、こんにちはmonakaです。
Pasqua大ファンの、と言ってもアコピアノのほうですが、Pasquaのアルバムで歳を越している経験もあるのでぜひ新しいアルバムも聴きたいところです。
年越しのアルバム、というのも選んだようなきがしますから、今年どうしましょうかと思っています。
投稿: monaka | 2009年12月11日 (金) 22時07分
アラン・ホールズワースは、いちおう無理のない範囲でCDの追っかけをしているのですが、比較的最近の録音で、こういうアルバムが出てくれるのはうれしいですね。
トニー・ウィリアムスへのトリビュートのようですけど、トニーの曲はなく、やはりこのメンバーが集まるとこのサウンド、という感じで楽しめました。それにしても輸入盤が国内に出回らないのは大人の事情でしょうか(笑)。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2009年12月11日 (金) 23時07分
monakaさん,こんばんは。
ここでのPasquaはアコースティック・ピアノを弾いている時のPasquaとはまるで別人です。でも,このアルバムで賑々しく年を越すというのもありかと...(ないですかね?)。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年12月11日 (金) 23時13分
910さん,こんばんは。TBありがとうございます。
私はHoldsworthのファンでも何でもないですけれども,このアルバムはよかったですね。まさしくメンツならではの音です。
輸入盤が出回らないのは大人の事情というか,何と言うか...。でもこのアルバムは海外のサイトで買えますし,値段もかなり安いというのがいいですね。国内盤は帯と解説で値段分の付加価値は絶対にないでしょう。だっていりませんから。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年12月11日 (金) 23時16分