ブートも売れないからバージョン・アップするのか...
CD不況の今,やれリマスターしました,紙ジャケにしました,更にはSHM-CDやBlu-Specにしましたと,再発が相次いでいる。直近ではCTIの諸作がRudy Van Gelderによるリマスタリングにより,SHM-CD化されたという,ある意味信じられないような話も出てきている。結局は音を改善する,あるいはその他の付加価値をつけないとCDが十分に売れないことを示している。
しかし,こうした状況は何も真っ当な音楽業界だけの話ではなく,ブートレッグの世界でも事情は同じようである。ブートレッグに手を出すのは深みにはまるということで,普通の人には勧めたくないのだが,その一方で,ファン心理としては色々な音源を,少しでもいい音で聞きたいと思うのも人情である。その代表的な例として挙げられるのが,Miles Davisが死の直前にパリで行った同窓会セッションである。決して過去を振り返らなかったと言われるMilesがなぜこうしたセッションに臨んだかは不明だが,やはり,自分の死期を悟った上でのことだと考えるのが妥当である。参加しているメンツも強烈だし,そんな音源だから,ファンは聞きたいと思うのが当たり前なのである。でも公式盤はいつまで経っても出ないから,ブートに頼る以外に手はないのだ。だって,この時の参加メンバーは以下の通りなのだ。買いたくなって当たり前である。
Miles Davis, Wayne Shorter, Steve Grossman, Jackie McLean, Bill Evans, Kenny Garrett, Chick Corea, Herbie Hancock, Joe Zawinul, John McLaughlin, John Scofield, Joe "Foley" McCreary, Deron Johonson, Dave Holland, Richard Patterson, Al Foster, Ricky Wellman
この時の音源はまずはオーディエンス録音と思しき"Black Devil"(上)ってブートが出て,その次に出たのが放送音源のエア・チェックであろう"Black Devil Definitive Edition"(中)である。これらの音的な違いは相当大きくて,DJ(司会者?)のトークが相当邪魔だという欠点はありつつも,後者が決定版だと思われていた。何と言っても,オーディエンス録音と,サウンドボード録音では音に相当の違いがあるのは事実だからねぇ...。
そこに今度は,その邪魔なトークが入っていないバージョンとして"Devil or Angel"(下)という冗談のようなタイトルでプレス盤が登場するに至り,これでこのときの音源探索も打ち止めということになるだろうが,困ってしまうのは,最初に"Black Devil"をゲットして,その後"Definitive Edition"まで買っている私のような人間である。所詮ブートなんだからやめときゃいいものを,結局"Devil or Angel"まで買ってしまったではないか。まんまとブート屋の策略に乗せられているような気もするが,まぁこれも仕方あるまい。同じようなパターンで,Milesブートの名作"Another Unity"のバージョン・アップ盤"Oriental Afrobeat"も買ってしまった私は,自分で言うのも何だが,もはや病的,というかアホである。
私を見てもらえばわかるが,やはりブートは普通の人間を闇社会へ誘うものである。よい子の皆さんはくれぐれも手を出してはいけません(きっぱり)。
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未だ正規盤は発売されていない。この海賊盤CDは最近多いSound Board音源流出モノではなくて,会場録音。だから会場のざわめきが入るが、臨場感を高める程度。かなり音質は良く、ある意味で正規録音より楽しめるような気がする。... [続きを読む]
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ご無沙汰しております。
私も、ブートは敬遠しています。(笑)
なんたって、きりがないですから。
それに録音がよくないのにあたると、ガックリするし。
Another Unityは、持ってるんですが、これのバージョンアップ盤って良いですかね?
それにしても、ブートのリマスタリングって、いったい…
って感じです。
投稿: 東信JAZZ研究所 | 2009年12月11日 (金) 15時03分
東信JAZZ研究所さん,確かにこちらではお久しぶりですねぇ。
"Another Unity"をお持ちなら敢えて買い換えることはないでしょうね。私は勢いで買ってしまいましたが,そんなに大差はないと思いますよ。所詮はブートですから。大体,元から音はよかったわけですしね。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年12月11日 (金) 19時42分
こんにちは。
そちらにもTBをお送りしました。
サウンドボードまで出ているとは。でもボクは案外,ブラックデビルのオーディエンス録音が気に入っているのです.適度な臨場感があって。
1982年の復活のときの日本ツアー(Miles, Miles, Miles!のとき)で大阪にきたとき,録音したテープを持っているのだけど,もうカセットテープを聴くこともないなあ,と思い出しました.
投稿: ken | 2011年1月15日 (土) 09時50分
kenさん,おはようございます。TBありがとうございます。今はご出張中ですよね。ご苦労様です。
"Black Devil"しかなかった頃はそれで納得していたんですが,出ると聞きたくなるのが性ってやつですね。最近はブートもやたらに音質向上盤が登場していてついていけませんが,それでもMilesで言えば,69年のベルリンのライブなんて,某所で音源を聞かせてもらってぶっ飛んでしまい,すぐに買ってしまった私でした。やっぱりアホですね。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年1月15日 (土) 09時55分
驚きのあまり、お便りします。40年ほど昔、サンスイが、FM大阪からMiles Davis来日公演を放送したのを当時、私は、アカイのオープン・リールデッキで録音していました。それが何と、5880円で”Another Unity”と云う名で売られているとは、アッと驚くタメゴロウ!私は、このテープをCDに写し換えて現在も聴いていますが、これって海賊版になるのでしょうかね?
投稿: 宇宙人 | 2013年7月14日 (日) 21時12分
宇宙人さん,はじめまして,ですよね。コメントありがとうございます。
"Another Unity"は非常に音のいいブートレッグでしたから,放送音源がソースだろうとは思っていましたが,そうでしたか。存じませんでした。ブートレッグはそうした音源を販売するからブートレッグなのであって,宇宙人さんのように,私的に録音されたものを私的にお楽しみになる限りはブートレッグ(海賊版)にはならないと思いますよ。もとは放送されたものをエア・チェックされたものですから。
ただ,そういう音源をソースに,ブートレッグが多数発売されているのも事実です。そんなものに金を出してはいかんと思いつつ,どうしても聞きたくなってしまうのがファンの悲しい性です。私も買うものは厳選しているつもりですが,本当にきりがないです。
ということで,今後ともよろしくお願い致します。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年7月14日 (日) 21時54分