今年はクラシックを買っていないなぁ...という中で
"Bach: The Well-Tempered Clavier I" Maurizio Pollini(Deutsche Grammophon)
よくよく考えてみると,今年はクラシックの新譜をほとんど買っていない。食指が動くものがないというか,そこまで手が回らなかったというのも事実だが,Schiffのバッハとか,ArgerichのDG集成盤とかのボックスを買っていたので,全然聞いていないわけでもない。しかし,新譜となるとお寒い状況である。
そんな私でも,これは買わないわけにはいかないと思ったのがこのPolliniの初バッハ盤である。Polliniとバッハというのははっきり言ってうまく結び付かない部分もあるが,同様に予想外と言ってもよかったArgerichのシャープなバッハに参ってしまった私であるから,これも相応の期待を持って購入である。なんてたってPolliniですから。
だが,デリバリーからかなりの時間が経過しても,なかなか手が伸びない。そうこうするうちに,これが新譜かいっ!という声も聞こえてきそうな時期になってしまった。もちろん,ほかのジャンルの音楽をどっさり買っているからというのもあるが,ちょっと聞くのがこわいと思っていたのかもしれない。そもそも平均律ならRichterがあればいいじゃんという話もあるし,Schiffもいいしねぇ。事実,私も以前ならばPolliniの新譜が出れば,必ずと言っていいほど「いの一番」で入手していたものが,最近ではそういうこともなくなってしまった中でのこのアルバムである。
冒頭のプレリュードから,かなりソフトなタッチが飛び出してきて,おぉっ!Polliniも枯淡の境地かと思わせるが,その後はきっちりした印象の演奏が続いて,さすがPollini,ちゃんと聞かせる演奏にはなっている。しかし,平均律を聞きたいと思ったときに,このアルバムを私が選択するかどうかとなるとやや微妙である。余計なものをそぎ落とした筋肉質な演奏と言ってもよいのかもしれないが,ちょっと私には硬過ぎるかなぁという感じである。これは長年Richterに馴染んできてしまったがゆえの要因であり,決してPolliniの責任ではないが,私の中でのイメージとの落差というところだろうか。もちろん,大Polliniであるから,優れた演奏であることは間違いない。ただ,私も年を取ってきて,音楽に求める要素に変化が生じてきているということであろう。そういった好みを反映して,星★★★★。
そう言えば,Schiffのパルティータ(ECM盤)も買ったまま全然聞いていないや。早く聞かねば。
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Toshiyaさん、今晩は。
あっ、ポリーニですね!久久に彼の名前を聞きました(笑)。ジャケットにバッハの文字。。これは、中々新鮮です。ポリーニというと、やはり、ロマン派を中心に演奏してきたイメージがあったので、少し驚きましたが、でも、ピアノ弾きなら、バッハは絶対避けられない作曲者。彼自身、きっと長年考えた故?!の録音取りだったのかなぁ。。なんて、思いました。
うろ覚えですが、ルービンシュタインが、ポリーニのことを絶賛していたように思います。何のコンクールだったかな。それと、ポリーニは、手が大きいことでも有名ですよね。ピアノ弾きなら、これほどの利点はないですね。
バッハと聞いて、彼の正確な演奏技法は、中々もってこいのレパートリーになっているようなイメージがあります。アルゲリッチ、ポリーニ、ブレンデル。。ピアノの大御所ですよね。
私も今年は、自分で演奏することはあっても、クラシックの演奏会へ出向きませんでした。。(悲)見たい演奏会は、間違いなく高すぎるので、泣く泣く我慢する傾向にあります(苦笑)
外はマイナス13度。。顔にあたる外気に痛さを感じました。ブルブル。。
投稿: Laie | 2009年12月19日 (土) 21時56分
Laieさん、こんにちは。ドイツ寒いんですね〜。富良野以上です。
この演奏、Polliniなら当然のレベルかもしれません。しかし、そうしたレベルを維持するのが偉いところだと思います。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年12月20日 (日) 16時33分