2009年を回顧する(最終回):ジャズ編
いよいよ大晦日である。このブログも始めてから丸3年が経過したということになるが,飽きっぽい自分にしてはよく続いている方だと思う。ブロガー3年限界説を打破するぞ!(爆)。それはさておき,2009年を回顧するシリーズもいよいよ大詰め,ジャズ編と相成った。
今年もいろいろな音源を聞いたが,地元のショップ以外はなかなかCDを漁りに行く機会がない中,頼りになるのはブログのお仲間の情報と,ショップのサイト情報である。もちろん,ひいきにしているミュージシャンについては,彼らのサイトで情報の収集も図り,できるだけUp-to-dateな状態を保つようにはしたつもりではいるが,それにも限界がある中,やはり持つべきものはお仲間である。
そうした中で,私の中で,最も期待をさせ,そして完全に期待に応えた作品はRalph Towner/Paolo Fresuの"Chiaroscuro"である。まさしく,これこそこのご両人,更にはECMレーベルに期待する音楽であった。そういう意味で,私は本作を今年の最高作としたい。これがなければ最高作はSteve Kuhnの"Mostly Coltrane"だったはずである。こちらも甲乙つけがたい傑作であり,この2作を出したという事実により,Label of the YearはECMということになるのである。レーベルの40周年を祝うような素晴らしい作品を連発したManfred Eicher恐るべし。ECMにはStefano Bollaniのトリオによる作品もあったしなぁ。やはりこのクォリティの高さは尋常ではない。
そして今年の最大の嬉しいニュースは大西順子のカムバックであろう。長年の隠遁生活で,多少音楽も枯れたかと思いきや,鋭さは健在。彼女がいない間に雨後のたけのこのように日本ジャズ界にも女性ピアニストが現れたが,彼女を凌駕する存在はまだいないと確信させられるような素晴らしい作品を長いインターバルの後でもリリースしてきたのは立派だった。これからも日本ジャズ界を牽引して行って欲しいものである。
ということで,これらの3枚を今年のベストとしてもいいのだが,ほかにも挙げたいアルバムがいくつかある。中でも記事にした当初はこれほどよいと思っていなかったのだが,何度も聞いていると,実は凄く良くできたアルバムではないかと思わせるのがJoe Martinの"Not By Chance"である。こういうのをスルメ盤という。噛めば噛むほどというか,聞けば聞くほど,その良さにはまっていっていく自分がいた。当初私はこのアルバムに星★★★★をつけたが,今では次席に据えてもいいのではないかと思えるほど評価が上がった作品である。このほかにChris Potter関連作としてUndergroundもMonterey Quartetもよかった。ということで,今年1年を通してのMVPはChris Potterだったと言ってもよいだろう。
そして発掘音源/映像としては山下洋輔トリオの結成40周年記念盤,"Brilliant Moments"が楽しかった。何年経っても,この人たちの音楽の爽快感は素晴らしいなぁと思う。返す返すも日比谷野音の復活ライブに行けなかったのは残念である。
ということで,今年もいろいろなアルバムを聞いてきたが,それなりに楽しめる年だったと言ってよいように思う。ここに挙げたもの以外でも,Enrico Rava,Branford Marsalis,Marc Copland,Enrico Pieranunzi等は強い印象を残した。そして忘れちゃいかん,Fred HerschのJobim集は見事なまでにHerschの音楽になっていた。ほかにもまだまだあるが,これ以上書き出すときりがない。もちろん,裏切られたガックリ盤もあるにはあったが,それは仕方ないことである。そんな中で,来年に向けて期待感を高めてくれたのがWayne Krantz。Krantzをロンドンで聞けたのはよかったが,あのときは自分のバンドではなかった。2月にはKrantz/Carlock/Lefebvreでの来日が迫っているので,ライブに向けて,また復習のために彼のアルバムを聞くことにしよう。
いずれにしても,当ブログを1年間ご愛顧頂きありがとうございました。来年はまた気分も新たにいろいろな音楽に接していきたいと思うが,ちょっと新譜を買うのは控えめにしないと,未聴盤が山のようにあって,かなりまずい状態である。まずはその解消が来年の当初の目標ってことになるかもしれない。ちなみに今年はブログのお仲間であるすずっくさん,crissさん,rhodiaさんにお会いするチャンスに恵まれたのが嬉しかったが,さて来年やいかに。
では皆さん,よいお年をお迎え下さい。
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おはようございます。EVAです。
私は今年からのお付き合いとなりましたが、素晴らしいアルバムの紹介で私自身の聴くジャンルを広げることが出来ました。
私は新譜の購入は今までと同様には出来ませんが、これぞ、と思うモノは機会を見付けて購入して行きたいと思っています。
来年も宜しくお願いします。
投稿: EVA | 2009年12月31日 (木) 07時42分
ジョンマーケティンのアルバムはいいですよね。
発売のタイミングが悪かったとおもいますが。
閣下、楽しいお話しありがとうございました。また、八木さんのライブでお会いできるかな。(笑)
とらばは年越しになりそ。良いお年お迎えください。
投稿: すずっく | 2009年12月31日 (木) 07時45分
多分、クリポタ参加のComing Togetherと共に今日キューンのMostly Coltraneが我が家に届くはずなので濃い大晦日をゆっくり過ごそうと思います。
それでは良いお年をお迎え下さい。
投稿: とっつぁん | 2009年12月31日 (木) 09時41分
EVAさん,こんにちは。
私のブログが少しでもEVAさんの音楽生活の足しになったのであれば,誠に光栄です。私も更に審美眼を磨いて,更にお役に立てるように精進したいと思います。
ではよいお年をお迎え下さい。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年12月31日 (木) 11時25分
すずっくさん,こんにちは。
確かにJoe Martinはほかの注目アルバムに埋もれた感がなきにしもあらずですが,本当に聞けば聞くほどよくなってくるというアルバムでした。
でもやっぱりベストはTowner/Fresuになっちゃうんですよねぇ。
また,来年もよろしくお願いします。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年12月31日 (木) 11時27分
とっつぁんさん,こんにちは。
大晦日に"Mostly Coltrane"とは確かにディープです(笑)。是非お楽しみ下さい。
本年はお世話さまでした。来年もよろしくお願いします。よいお年をお迎え下さい。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年12月31日 (木) 11時30分
今年もお世話になりました。
他の方のベスト10とかだと、ああ、重なり具合が多いな(でもよく重なる方、身近に多いです)、という印象ですが、ベストの枚数が少ないとズバリ、ツボに入ってきますね。ジョー・マーティンはベストには入れませんでしたけど、私もよく聴いています。
来年も中年音楽狂さんはじめ、ブログ仲間の情報を一番の頼りに、新譜を漁りたいと思います。
来年もよろしくお願いします。
投稿: 910 | 2009年12月31日 (木) 12時05分
910さん,こんにちは。TBありがとうございます。
ブログでお付き合いをさせて頂いていると,影響を受けて購入するアルバムも増えますから,ある意味かぶりが多くなるのも当然ですかね。私もそうですが,皆さんの情報には大いに啓発されています。私も少しでもお役に立てればと思いつつ,雑食系ゆえに,ジャズだけで閉じないのが結構厳しいですが。
いずれにしましても,本年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。よいお年をお迎え下さい。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年12月31日 (木) 12時50分
中年音楽狂さん、こんにちはmonakaです。
皆さんの記事から、やはりこれかわなければと仕事収めの日、たまたま銀座にいけたのでTowner/Fresu探したらなんとありませんでした。
手に入れるのは来年になりそうです。
今年一年ありがとうございました。
最後の記事と最初の記事はECMで行くことにしました。
来年もよろしくお願いします。
投稿: monaka | 2009年12月31日 (木) 13時57分
monakaさん,TBありがとうございます。
Towner/Fresuは最高です。是非是非お聞きになってみて下さい。monakaさんの記事を拝見していて,私も久しぶりに"Facing You"が聞きたくなってしまいました。
それではよいお年をお迎え下さい。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年12月31日 (木) 17時18分
大西盤の話題性は内容も充分伴っていてピカ一でした。
この盤は入れようか悩んだのですが..(^^;;
私のECM濃度はかなり低めなので、紹介されている2枚とも未聴です。
Towner/Fresuは手に入れる算段をつけてみようかと思います。
今年一年いろいろありがとうございました。来年も引き続きよろしくお願いいたします。
投稿: oza。 | 2009年12月31日 (木) 18時01分
oza。さん,こんばんは。TBありがとうございます。
ECMは万人向けというレーベルではないですから,まぁそれはそれということで。でもジャズ的なスリルということではKuhnの方がいいかもしれませんね。
ということで,今年も間もなく終わりです。来年もよろしくお願いします。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年12月31日 (木) 18時55分
中年音楽狂さん、大西さんは私もベストに入れました。それとフレッド・ハーシュのジョビン集もいいですね。スティーブ・キューンはさっそく聴いてみたいと思います。参考になります。TBさせてください。
来年もよろしくお願いします。良いお年を。
投稿: madame | 2009年12月31日 (木) 22時02分
今年、さらにjazzが好きになった私です。いっぱいありがとうございました。
来年も、楽しみにしています。
投稿: ひまわり | 2009年12月31日 (木) 23時50分
madameさん,もう年が変わってしまいました。ということで,あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
Kuhnはいい意味で裏切られます。是非!
今年もよろしくお願いします。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年1月 1日 (金) 00時06分
ひまわりさん,あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
今年はJeff Lorberが来日してくれるといいですね。正夢になるよう祈りましょう。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年1月 1日 (金) 00時09分
Toshiyaさん、おはようございます。
新年明けましておめでとうございます。昨年中は、色々なアドバイス、並びに、たくさんの事を教えて頂きまして、有難う御座いました。記事からズレることの方が、多かったですが、日本語でのやり取りが出来ましたこと、大変感謝して折ります。
先週、オペラのドンジョバンニを鑑賞して来ました。主人からのサプライズで、クリスマスプレゼントでした。自分自身、オペラはたくさん観たので、見納めと言いますか、封印していたところがあったのですが、序曲が始まり、カーテンが開く瞬間に、鳥肌が立ってしまったくらい、ワクワク感を味わいました。ドンジョバンニは、これで、3回目くらいだと思いますが、良いですね~♪主人は、生まれて初めてのオペラ鑑賞になりました。(私へのプレゼントのはずですが。。。)オペラ鑑賞に、また、火がついてしまいそうで、怖いです(苦笑)。席の位置も悪くなく、35ユーロでした。会場が、満席状態だったというのも驚きました。オペラがこんなにも身近になっているのを実感したら、何だか嬉しくなりました。
昨年は、色々なジャズ演奏も観ることが出来ました。クラシックとは全く違う世界で、新たに音楽の楽しみを発見できたことも、私達にとって、大きな収穫になりました。
今年も、色々とズレまくり、外れっぱなしのコメントをさせて頂くかと思いますが、どうぞ宜しくお願い致します。
今日は、自宅でフォンデュ-をする予定です。年越し蕎麦に、天ぷら。。食べたいです!(笑)。
今年一年、御家族の皆様と共に、健康で充実した年が送れますよう、お祈り申し上げます。
投稿: Laie | 2010年1月 1日 (金) 00時26分
Laieさん,あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
ドン・ジョバンニですか。それはいいですねぇ。オペラの鑑賞はお金が掛り過ぎて,日本ではなかなか難しいですが,NYCに住んでいた頃はMetにたまに行っていたのも懐かしいですね。ジャズのライブも価格が手ごろなそちらが羨ましいです。
今年も相変わらずで参りますが,是非ご愛顧のほどを。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年1月 1日 (金) 08時51分
こんにちわ。初めて訪問させて頂きました。
45年前、渋谷の百軒店のJAZZ喫茶通いでビルエバンスに嵌りました。それ以来LP/CDを集めてiPodにはJAZZが一万曲以上入っています。
たった3年前に気付いたのですが、JAZZは聴くよりもやる方が100倍面白いということで、いまやヤマハ教室通いでSAXをプップクプーと吹いております。
もち
投稿: もっちー | 2010年1月 5日 (火) 16時21分
もっちーさん,ようこそお越し下さいました。大ベテランをお迎えすると身が引き締まります。
私はジャズはやるのも聞くのもどちらもOKですが,演奏するには技がなさ過ぎなのが悩みですね。ごくまれにうまい人が合わせてくれると,自分もできるのではないかと誤解しますが,それは間違いだと思っている今日この頃です。
いずれにしても,これからもご贔屓によろしくお願い致します。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年1月 5日 (火) 23時58分
音楽狂様、私は何も書かなかったのに、私の夢をあててしまわれて、私は赤面したまま、ですわ。
でも、本当に、正夢になったら、うれしいです、、
以前読んだ本の中に、想いはどんなに離れていても、通じる、と書かれていたものがありました。
日本は景気低迷、働き過ぎても、さらに、過酷に仕事をしいられ、身体を悪くしている人が多くみえます。
昨日、職場で、新婚なのに、悩んで泣き出した同僚がいました。
悪いのは、本人でも、旦那さんでもありません。
仕事が多すぎるのです。
こんな時こそ、音楽や美術は必要ですよね。
私は会社の廊下で、とても寒いことも感じないで、夢中で話す彼女に、私はダウンジャケットを部屋から取ってきて、チョコレートを二人で食べながら、話を聞きました。
Jeff Lorberのwizard islandを月曜日会社に持って行き、彼女に渡すつもりです。
大きな愛がいっぱいありますように
投稿: ひまわり | 2010年1月 9日 (土) 12時43分
ひまわりさん,こんにちは。
仕事が多過ぎるってのはいけません。ワーク&ライフ・バランスと言いながら,心の均衡を保つのは大変ですよね。ひまわりさんがおっしゃる通り,これで音楽がなければ,私もどうなっているかわかりません。
是非同僚の方の心にJeff Lorberが響けばよいですね。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年1月 9日 (土) 14時58分