フランスが苦手な私も納得のMoutin Reunion Quartet
"Red Moon" Moutin Reunion Quartet (Nocturne)
何を隠そう,私はフレンチ・ジャズが苦手である。あまりいいと思ったためしがない。これは単なる思い込みかもしれないし,私のフランスに対する苦手意識に起因するものかもしれない。なんで苦手かはさておきだが,そうした私の苦手意識を完全に払拭させるようなアルバムと言ってよいアルバムである。
このアルバム,今さらのように注文したのだが,到着するまで3カ月ぐらい掛って,忘れかけたころにようやく到着である。そして聞いてみて驚いたのである。おぉっ!アコースティックなのに,なんとコンテンポラリーな響きであろうか。これは一般的な4ビートというよりも,ロックを経験してきた(あるいは通り抜けてきた)世代による新たなジャズと言ってもよい。だが,決してジャズ・ロックとかそういうものではない。サウンドはオーセンティックなジャズのものなのだが,響きや雰囲気が現代的かつソリッドなのである。私がこのアルバムを聞いてみようと思ったのは,ほかのブロガーの皆さんのご意見もあったし,それにBaptiste Trotignonがピアノで参加しているという要素もあったのだが,そんなことはどうでもよくなるぐらい,リーダーのMoutin兄弟の打ち出すビートがいかしている。もちろんTrotignonも好演。それより驚いたのがRick Margitzaってこんないいサックス奏者だったのかということである。
最近,彼のアルバムもとんと聞いていないので,正確な感想とは言えないかもしれないが,今一つ個性がよくわからないサックスだというのが,私のMargitzaに対する感覚である。しかし,ここで聞かれるフレージングは十分に魅力的であり,4人全員の好演もあって,これは私の中でかなり興奮度の高いアルバムとなった。これなら3カ月待った甲斐もあるというもの。こういうアルバムがころがっているところが,ジャズの恐ろしいところであるとともに,私の不勉強を明らかにするものである。
このバンド,ほかにもアルバムを出しているようだから,そっちも聞いてみたくなるような満足度を与えてくれたアルバムと評価してよい。まぁ,でもこのメンツに"Stompin' at the Savoy"はないよなぁということで,星★★★★☆。いずれにしても,私はこのアルバムでフランス人ミュージシャンに対する認識を新たにしたと言える。何を今さらの紹介となったが,これはかなりよかった。こういうフレンチ・ジャズならいつでも歓迎である。
Recorded on May 22 & 23, 2003
Personnel: Francois Moutin(b), Louis Moutin(ds), Baptiste Trotignon(p, el-p), RIck Margitza(ts, ss)
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