タイトルにだまされると痛い目にあうMiroslav Vitousの新譜
"Remembering Weather Report" Miroslav Vitous Group with Michel Portal (ECM)
それにしても何というタイトルだろうか。Weather Report設立メンバーながら,途中で袂を分かったVitousがなぜ?と思うのが人情のタイトルである。このタイトルを見れば,VitousがWR的な演奏に取り組むのかと多くの人が思うであろう。
しかし,Vitousはライナーで「このアルバムは極めてクリエイティブだった時代のWR作品を記念したものだが,ここではWRのレパートリーを再演するのではなく,1970年にWRに私が持ち込んだコンセプトを使って,新曲を演奏したものである。」と書いている。こういう文章を書いてしまうと,Vitousは性格があまりよろしくなくて,今だにその後のWRに怨念を抱えていているのではないかと思いたくもなってしまうが,まぁそれはそれとして置いておこう。いずれにしても,Vitousのライナーを読まなくても,これは絶対WR的になるはずはないよなぁというメンツであり,ここに収められた演奏はかなりフリーなアプローチによるものだから,一般のリスナーは要注意である。
冒頭の"Variations on W. Shorter"はVitousも書いている通り,"Nefertiti"をフラグメント化したものであるが,フラグメントと言うよりも濃厚に"Nefertiti"のメロディ・ラインが出てくるので,まずそこでのけぞってしまう。その後も全編フリー・ジャズと言ってもよい演奏であるが,テンションもレベルも高い。よって,音楽だけを評価するならば星★★★★ぐらいを付けてもいいのだが,でもやはりこのタイトルはないだろう。何ともリスナーの期待感だけを煽っておきながら,実は自分のやりたいことをやりましたっていう感じなのである。これはある意味詐欺的であって,こういうタイトルを付けるVitousの商売っ気を感じてしまって,大いに冷めてしまった私である。そうした違和感を含めるとこのアルバムには星★★★しか付けられない。
多分,同じように感じる人は他にもいらっしゃるはずだと言っておこう。何とも複雑な気分である。
Recorded fall 2006 and spring 2007
Personnel: Miroslav Vitous(b), Franco Ambrosetti(tp), Gary Campbell(ts), Gerald Cleaver(ds), Michel Portal(b-cl)
« やはりBuzz Feiton入りのDave Weckl Bandはカッコいいのだ | トップページ | ラップの元祖? »
「ECM」カテゴリの記事
- 追悼,Ralph Towner。(2026.01.20)
- 2025年の回顧:音楽編(その2::ジャズ)(2025.12.29)
- Dino Saluzziの新作は哀愁度高く心に沁みるアルバムであった。(2025.12.17)
- "The Köln Concert: 50th Anniversary Special Edition"を入手。無駄遣いと言われればその通りだが。(2025.12.14)
- 全然ECMっぽくないのだが,音に痺れるジョンスコ~Dave Hollandデュオ。(2025.11.29)
「新譜」カテゴリの記事
- Chick Coreaの旭川でのソロ・ライブ音源が公開された。(2026.02.06)
- Joel Rossの新作はその名も"Gospel Music"。だが,典型的ゴスペルではない。(2026.02.07)
- Julian Lageの新作はまたもJoe Henryプロデュース。(2026.01.25)
- 今年最初の新譜はEnrico Pieranunzi。あの"Live in Paris"と同じメンツで悪いはずなし。(2026.01.05)
- 2025年の回顧:音楽編(その1:ジャズ以外)(2025.12.28)
「ジャズ(2009年の記事)」カテゴリの記事
- 燃えるFreddie Hubbardのライブ。(2009.02.01)
- 予想よりはるかによかったBobby Watson参加作(2009.12.27)
- 2009年を回顧する(最終回):ジャズ編(2009.12.31)
- まだあるWayne Krantz参加作:でもゆるいFive Elementsみたいだ。(2009.12.26)
- Freddie Hubbard対Lee Morgan:暑苦しいのは当然だが...(2009.12.15)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: タイトルにだまされると痛い目にあうMiroslav Vitousの新譜:
» 塊が REMEMBERING WEATHER REPORT / MIROSLAV VITOUS [JAZZ最中]
ショップの棚を見ていたらヴィトウスの新しいアルバムがありました。
大作の次の作品で、「リメンバリング・ウェザー・リポート」とあり、曲名を見るとマイルスの名があったりで、これは当然買いです。
演奏者にM・ポルタルがあるのはちょっと木になりますが、Yaron Hermanのトリオでも活躍のジェラルド・クリーヴァーがドラムスです。
同じころのヴィトウスの演奏がとても良かったことを思い出しました。
http://blog.goo.ne.jp/monakasm/d/20090317
店員の人が聞いてみま... [続きを読む]
» Remembering Weather Report/Miroslav Vitous Group w/Michel Portal [ジャズCDの個人ページBlog]
このアルバムは、アルバムタイトルは気にせずに、純粋にミロスラフ・ヴィトウスの最新 [続きを読む]
« やはりBuzz Feiton入りのDave Weckl Bandはカッコいいのだ | トップページ | ラップの元祖? »

































































音楽狂さん、こんにちはmonakaです。
やはりRememberring WRでは無視できないですよね。
この人でこれだったら絶対買いだからあまり不快感はありません。
いかにいいところを見つけるかが趣旨になりました。
ECMですが、やりたいことが出来るポジションにヴィトウスはいるみたいですね。
出来たらメンバーをもっとひろげてバラエティを増やしてくれたら楽しいアルバムだと思うのに、ちょっと暗かったですね。
でもヴィトウスなので良いとこさがしました。
そこはいいです。
投稿: monaka | 2009年6月 8日 (月) 21時51分
monakaさん、こんばんは。
おっしゃる通りいいところだけ探せればいいのですが、私はVitousの発言やら何やらに結構反発を覚えます。これは音楽の話ではなく、ミュージシャンとしての人間性を疑わせる彼の発言に問題があります。Milesが辛辣なのとレベルが違うように思えてなりません。
そういう意味で私が言いたいのは彼が損をしているということです。いちいち無意味な発言をしなくてもいいのにと「ECMの真実(増補改訂版)」を読んでも思いました。相性悪いんでしょうね。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年6月 9日 (火) 01時22分
確かにタイトル、ECMにしてはこういうつけ方、不思議なのです。おかげでHMVでは値段の安いこともあってか、ECMレーベルの現在売り上げ1位ですね。別なタイトルでもそれなりに売れて、評価されるアルバムなのに、ちょっと惜しいかな、と思っています。
WRの精神性云々よりは、このフリーに近い世界と、流麗なベースの高音アルコ奏法を楽しんで聴いた、という感じではありました。好きなアルバムです。
投稿: 910 | 2009年6月23日 (火) 15時37分
910さん,こんにちは。おっしゃるとおり,価格は安かったですし,音楽にも文句はありません。
WRが結成されたときの精神性は,確かにその後のファンク志向や楽園指向の中で失われたかもしれませんが,それはVitousが脱退したからだけの話でもないようには思います。
私が頑固なだけかもしれませんが,それでもこのタイトルはないんではないかと思いますね。こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年6月23日 (火) 16時09分
この記事を拝見して吹き出しました.私も先日買って,異様な期待感の落とし所がなくて,未だに腹がたっています.
美味しいイタリアン,と看板が出ていて中華が出てきたら,美味しくてもダメですよね,という怒り.同じ気持ちの方がおられるのをみて,少し気持ちが落ち着きました.僕のなかでは素晴らしいECMの小さな,だけど消せない瑕疵のように見えます.
投稿: ken | 2010年5月25日 (火) 09時04分
kenさん,こんばんは。このタイトルを見て期待するのは,この音楽でないというのは当たり前ですよねぇ。
だから私は最終的にVitousが好きになれないのかもしれません。確信犯としてもこれはやっぱりまずいですよね。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年5月28日 (金) 00時45分
本人のコメントによると(UNIV SYNC)そもそもWRはショーターとヴィトウスが母体になったバンドでザヴィヌルはあくまでも客演だったのでは。
創立メンバーなのだからある程度の「力技」は許してあげたくなります
投稿: | 2012年2月 3日 (金) 01時55分
お名前を頂いておりませんが,コメントありがとうございます。Milesにコメント頂いた方と同じ方でしょうか(違ったらごめんなさい)。
Vitousの気持ちもわかりないではないのですが,彼の言動はちょっと大人げないような気がします。音楽的には評価したいですが,ちょっとなぁって感じが今でもしています。
投稿: 中年音楽狂 | 2012年2月 5日 (日) 20時48分
新作が出たので、慌てて聴き直しました。WRで本来やりたかったことを、やったアルバムのようですね。toshiya氏のようにライナーを読んでいなかったので、入手時点はタイトルに幻惑されて、がっかりして聴いていませんでした:
http://kanazawajazzdays.hatenablog.com/entry/2016/07/15/193801
投稿: ken | 2016年7月15日 (金) 19時43分
kenさん,こんにちは。リンクありがとうございます。
私は新作の方は支持していますが,まぁ気持ちはわからんでもないですが,このアプローチは当時の私は受け入れられなかったってことですね。
こちらからもお邪魔させて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年7月16日 (土) 16時30分