Jan Lundgren:選曲の勝利
"European Standards" Jan Lundgren(ACT)
多くのブロガーの皆さんが既にレビューされているJan Lundgrenの新作である。このアルバム,ピアノ・トリオ・フォーマットであるから,Lundgrenのピアノが楽しめるのは当然なのだが,このアルバムを魅力的にしているのが選曲であることは間違いのない事実である。
カバーを開くと国名とともに曲名が書いてある。"European Standards"だけに独仏英,ハンガリー,スイス,スペイン,伊,ポーランド,オーストリア,スウェーデンと幅広い。かつ独仏伊は2曲ずつのセレクションである。これだけ多岐に渡ると,有名曲とそうでない曲のギャップは大きくなるが,冒頭がKraftwerkの"Computer Liebe"というのがまず笑わせてくれる(私は結構Kraftwerk好きなのだ)が,快調な出だしに思わず膝を乗り出す私であった。しかし,2曲目「風のささやき」の訥弁なメロディ・ラインの紡ぎ方に一瞬がっくりくるのだが,ソロになると途端によくなる。どうして最初からこう弾かなかったのかと文句も言いたくなるのが人情である。そして3曲目はBeatlesナンバーである。この辺りまで聞いていると,かなりメジャーな選曲なのかとも思わされるのだが,この"Here, There And Everywhere"が通常とは異なるテンポの設定で面白いのである。
その後も「男と女」と"Il Postino","September Song",「ローズマリーの赤ちゃん」はおなじみだが,それ以外の曲はよくわからない。Rhodesで弾かれる「男と女」なんて,かなりイージーリスニング的な作りと言ってもよいが,これはこれでよいし,4曲目以降の展開は基本的に美しいメロディ・ラインが目立つように思える。その白眉が,ラストに収められた故Esbjorn Svensson作,"Pavane: Thoughts of a Septuagenarian"のピアノ・ソロであろう。これぞまさに天上の音楽とでも言いたい余韻をアルバムに与えていて素晴らしいのである。
結局,このアルバムは,Jan Lundgrenが考える欧州を代表する曲を,彼らの感性で再構築したものであるが,私としては美的に響く曲が楽しめた次第である。ドラムスのDoltan Csorsz Jr.はスウェーデンのプログレ・バンド,Flower Kingsのドラマー(だった?)らしいのだが,ロック・ドラマーとは思えないサトルな味を見せるのが素晴らしいではないか。Bill Brufordもジャズに傾斜しているが,ロック・ドラマーと言っても侮ってはならない。
いずれにしてもこのアルバムは,選曲とLundgrenトリオの美的センスがうまく融合して,結構楽しめるアルバムとなっていると思う。Joe Sample的,あるいはイージーリスニング的な部分もあるが,トータルでは星★★★★は付けてもよかろう。これで「風のささやき」のテーマが少しでも流麗に弾かれていたら,もう半星つけていたかもしれない。惜しいねぇ。
Recorded on October 2-7, 2008
Personnel: Jan Lundgren(p, el-p), Mattias Svensson(b), Doltan Csorsz Jr.(ds, perc)
相変わらずcrissさんからのTBの調子が悪いようなので,こちらに記事を貼り付けます。 皆さんよろしくどうぞ。
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北欧の貴公子、ヤン・ラングレン。その貴公子も最近、ややおじさまか。
でもそのピアノは相変わらず、貴公子の名にふさわしいリリカル、かつアクティブ。
オープニング、 Computer Liebe 8ビートナンバー。ロックのようで一瞬、お!と思う。
ドラムに続くベース、ロックはエレべのほうが似合いますね。スベンソンの..... [続きを読む]




































































音楽狂さん、こんにちはmonakaです。
このアルバムの選曲、ちょっと不思議に思っています。
スウェーデンのスタンダードを何度かやっているのですから実はつながりからはもっと突き詰めてもいいかと思います。
本当にこのような曲なのか、特に知られた曲など選ばなくてもとおもいますが、ACTそれまでのラングレンの売れ筋を意識したような気がしてなりません。
次にもっと凄いのを出してくれると期待しています。
投稿: monaka | 2009年5月21日 (木) 20時55分
monakaさん,おはようございます。
スウェーデンの曲は誰も知らなくても文句は言えないでしょうが,汎欧州となるとなかなかそれも難しかったでしょうし,リスナーも納得できない可能性もあるのではないかと思います。要は彼らが何を選ぶかが今回の肝でしょう。
確かに選曲はもう少しひねりがあってもよさそうな気もしますが,私は演奏がよければ許すって感じですかねぇ。でもmonakaさんのおっしゃることもよくわかりますね。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年5月22日 (金) 05時52分
こんばんはあ。
夕方にトラバだけしたんですが。m(__)m
わたくしも最中さんに意見が近いのです。が、かなり苦労して選曲したみたいだし、、結構理解をしめしてるつもりです。
次、どうすんねん。。って、心配も入ってるんです。ダーリンとは、呼びませんが、ファンなので。
最後のソロよかったですよね。。。
投稿: すずっく | 2009年5月22日 (金) 23時24分
すずっくさん,こんにちは。TBありがとうございます。
まぁ感じ方はそれぞれだと思いますが,まぁ知られざる曲を演奏するよりも,メジャーな曲を演奏することがよりチャレンジングだという部分も認めてあげたい気もしますね。
こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年5月23日 (土) 16時13分
中年音楽狂さん、こんにちは。
クラフトワークは僕も懐かしいフェイバリット・グループの一つです。
80年代前半にジャズと並行してクラフトワークやヒューマンリーグやデペッシュモードなどを好んで聴いていました。
youtube で懐かしい音源がたくさんアップされていたので時間を忘れて聴き入ってしまいましたよ。
聴いていると、お金はないけどすごく楽しかった大学時代を思いだします。
というわけで、僕は完全にこのCDにはまりました。
程よく緩い曲もは挟みつつ、全体にすごく丁寧にアレンジされた美曲ぞろいで、初めての五つ星をつけてしまったくらいです。
TBさせていただきました。
うまくいってるでしょうか?
投稿: criss | 2009年5月25日 (月) 08時18分
crissさん,こんばんは。私もDepeche Modeも好きでした。Human Leagueはよく聞いたことがありませんが。私もYouTube見てみます。
ところで,TBはやはりダメなようですので,記事にURLを貼り付けることでお許しを。何ででしょうかね?
投稿: 中年音楽狂 | 2009年5月25日 (月) 21時32分
これは確かに選曲が面白いし、その一つ一つの曲のアレンジ、切り口も面白いですね。かなり幅広く受け入れらる感じです。幅広くといってもわかりやすい、ともまた違う彼のオリジナルな感じ。TBしますね。
投稿: madame | 2010年4月10日 (土) 23時33分
madameさん,こんばんは。TBありがとうございます。
私はJan Lundgrenへの思い入れがあまりないのですが,雑食系音楽リスナーとしてこのアルバムは結構楽しめました。例えばBrad MehldauがRadioheadやBeatles,更にはPaul Simonをやったりするのも同じ感覚なんではないかと思っています。おそらくそういう世代の成せる技ではないかなぁなんて,考え過ぎですかね。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年4月11日 (日) 00時05分