なんだか随分ソフトなFranck Avitabileの新作
"Paris Sketches" Franck Avitabile (Dreyfus)
Franck Avitabileは私の知り合いの方が結構熱狂的なファンで,個人的にもコミュニケーションをされているぐらいだったので,その方を通じて音源を聞かせてもらったりしていたのも懐かしいが,最近ではSteve Grossmanも登場したDreyfusのライブDVDでの演奏ぶりの好感度が高かった。
そのAvitabileがJeff BeckやThe Who,更にはJohn Mayer等,ロック畑の演奏が主のPino PalladinoとECMレーベルにリーダー作を持ちながら,もともとはPeter GabrielやらSting等,こちらもロック畑から出てきたManu Katcheと共演するというのだから,どちらかと言えばビートを強調した演奏になるのではないかと思って期待して購入したアルバムである。
しかし,蓋を開けてみれば,ポップでソフトなインスト・アルバムになっていたのにはやや肩透かしを喰った感じが強い。とにかくこのリズムを活かしているとは思えない曲調が多く,やわなJoe Sampleみたいにも聞こえてしまうのである。かと言って,Joe Sampleのような強烈なタッチがあるわけではなく,なんとも凡庸なサウンドとなっているのはいかん。演奏自体はこれだけのメンツであるから,レベル的には破綻はない。だが,リスナーがこのコンビネーションに求めるのはこうした音楽ではないだろうと突っ込みを入れたくなる。
ここでの演奏は明らかにAvitabileの本質ではないと思うし,このアルバムの真の狙いがどこにあったかは知る由もない。一体プロデューサーのFancis Dreyfusは何を考えていたのか?また,Artistic DirectorとなっているPino Palladinoがこの音楽を主導したとしたのならば,彼の責任は重い。私としては,このアルバムを聞くぐらいならばJoe Sampleを聞くし,このアルバムにはほとんど存在意義を見出せないと言っては言い過ぎだろうか。ということなので,本作への評価は当然のことながら辛くなり,星★★☆ってところである。ちなみに,このメンツだと思わないでBGMだと思って流している分には何の問題もない。このメンツだから腹立たしいのである。
Recorded on October 2 & 3, 2008
Personnel: Franck Avitabile(p), Pino Palladino(b), Manu Katche(ds)
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音楽狂さん、こんにちはmonakaです。
Avitabileは前作“short story”でエッセイみたいな音楽を綴ってそれはそれでよいと思っていました。
新作を期待していたのですが、変に振れましたね。
買う気充分だったのですが、ショップで1,2曲試聴して、アレアレ、やめました。
投稿: monaka | 2009年4月18日 (土) 06時27分
monakaさん,おはようございます。
このアルバムは私は失敗作だと思います。この音楽はAvitabileでなくても可能な音楽ですし,記事にも書いたとおり,リズムが活かせていません。「ブレた」というのはまさしく適切な表現でしょう。
一体これはどういう意図で制作されたものなのかが私には理解できないままです。家人の顰蹙を買いながら,CDを結構な枚数買っていれば,こういうこともありますね。こういう場合は試聴ってのは重要だと痛感しました。過剰な期待を掛けた私がいけなかったことで反省,反省。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年4月18日 (土) 08時58分