Andy SheppardがECMからリーダー作とは意外だが,これがいけている
"Movements in Colour" Andy Sheppard(ECM)
英国人サックス奏者Andy Sheppardがセルフ・タイトルのアルバムをAntillesレーベルから発売したのが1988年らしいから,もう20年以上にもなるわけだ。つくづく月日の流れるのは早いが,私は今まで彼の音楽とはほとんど接点がないままここまできた。例外はCarla Bleyのバンドのアルバムということになろうが,私の中では正直言って存在感は薄い人だったというのが正直なところである。これがECMからの発売でなければ,今回も買うことはなかっただろうが,やはり私はECMレーベルには弱く,ついつい買ってしまうのである。
そう言う意味で,私は今回のアルバムもどんな感じになっているのかなぁぐらいのもので,妙な期待は抱いていなかったのだが,さすが名プロデューサーManfred Eicherである。これがなかなかの優れたアルバムになっているではないか。だからECM好きはやめられない。
そもそも編成が変わっている。Sheppardのサックスに2ギター,ベース,タブラ(及びその他のパーカッション)という編成でどういうことになってしまうのかと思うが,これが異色とは言え,素晴らしいサウンドスケープを生み出しているのである。これにはまいった。
冒頭は「すわっ,フリー・ジャズかっ!」と思わせる出だしで一瞬出端をくじかれるのだが,それは一瞬の杞憂に終わる。全編,基本的にはフォーク・タッチを感じさせ,高揚感には乏しいものの,穏やかな中にもサックス,ギターのなかなかいいソロが展開されている。それをバックで支えるAndersenがいいのは当然として,このアルバムの響きを魅力的にしているのが実はタブラではないかと思わせるのである。世の中,叩きまくればいいと思っているタブラ奏者はいくらでもいるが,ここでタブラを叩いているKuljit Bhamraにはある種の上品ささえ感じてしまうと言えばいいだろうか。とにかく「適切」なのである。
この編成のアイディアがSheppardによるものなのか,Eicherによるものなのかは不明であるが,全曲Sheppardのオリジナルであり,私ははっきり言ってSheppardというサックス奏者に対する認識を新たにしたと言わなければならない。いずれにしてもこれはECM好きの心に結構突き刺さってくるものだと思う。ここでタブラがドラムスだったら,私の感想はずいぶん違っていたはずなのである。Arild Andersenのライブもよかったが,これも同じぐらい評価したくなる好アルバム。星★★★★☆。
Recorded in February, 2008
Personnel: Andy Sheppard(ts, ss), John Parricelli(g), Eivind Aarset(g electronics), Arild Andersen(b, electronics), Kuljit Bhamra(tabla, perc)
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ECMレーベル新譜聴き。アンディ・シェパードは今までカーラ・ブレイのアルバムに参 [続きを読む]

































































私、カーラ・ブレイのアルバムはほとんど聴かないのですが、少し前に「:rarum」(ベスト盤)のカーラブレイのクレジットを書き出していて、彼(アンディ・シェパード)の名前がよく出ていたのを思いだしました。
なので、あまりなじみがなかったミュージシャンですが、やっぱりキモはドラムスを使わずにタブラを前面に出していたところでしょうか。しかも主役のサックスも良かったので、けっこうポイント高かったです。誰の発案でこういう変則編成になったのか、興味があります。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2009年4月21日 (火) 17時27分
910さん,おはようございます。
やはりタブラですよね。「編成の妙」,「プロデュースの妙」と言いたくなります。予想外の素晴らしさでした。
こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年4月22日 (水) 07時20分
ECMの整った不協和音が、最近ちょっと苦手なのですが、記事を読んで気になりました。
一度聴いてみたいです。(サンプル試聴が出来るサイトをひたすら探しています。)
投稿: 東信JAZZ研究所 | 2009年4月22日 (水) 18時44分
東信JAZZ研究所さん,おはようございます。
ECMもいろいろなタイプの音楽があって,一概に言えないですけれども,これはなかなか面白いですし,比較的聞きやすいのではないかと思います。
試聴できるサイトがあるといいですね。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年4月23日 (木) 08時11分
Toshiyaさん、今晩は♪
アンディーさんの名前で反応しました。調度一年半前くらいに、カルラさん率いるグループでツアーに来たので見に行きました。ロスト・コードというアルバムの宣伝が目的だったと思います。演奏終了後、出演者全員、コンサート主催者、ジャーナリスト、主人と私で、食事に行ったのですが、調度隣に、アンディーさんが座ったので少し話しました。とても人柄が良さそ~なオーラを感じたのを思い出しました。
私達の目的は、ドラムスのビリーに会う目的でしたが、空気の読めないジャーナリストがビリーに喋りっぱなしで、残念ながらあまり話すことが出来ませんでした。ビリーも、食事も満更に出来ない状態で、とても気の毒でした。ビリーも私達に気を使って、このジャーナリストに、何かお勧めのジャズ演奏があったら、私達に紹介してあげて、と、話をふってくれたのですが、全くその気がない!という感じでしたね。
ビリーは、カルラさんをとても尊敬していると話していました。アメリカよりもヨーロッパの方が、彼女の名前は知られているそうです。
購入されたアンディさんのCDが期待以上に満足度が高くて、良かったですね。
余談ですが、先日買ったACTのサンプルCDが、大ハズレでした(苦笑)。4ユーロと値段に誘われてしまいました。。
投稿: Laie | 2009年4月23日 (木) 22時07分
Laieさん,こんにちは。
コメントの公開が遅れてすみません。長~い地方出張中につき,なかなかうまくいきません。
いかなるかたちでもミュージシャンと近いところで話ができるのは羨ましいことです。私もNYに住んでいることはジャズ・クラブで雑談することもできましたが,日本では全然そういう機会がありません。
空気が読めないジャーナリストは残念でした。ジャーナリストは必要以上に話の長いところがあるのは事実ですが,世の中彼らだけで生きているわけではないのにと思ってしまいます。
実は私としてはBilly DrummondとCarla Bleyの組み合わせは意外に思えるのですが,"The Lost Chords Find Paolo Fresu"はいいアルバムでした。ライブにはFresuも来ていたのでしょうか?見てみたいです。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年4月24日 (金) 11時14分
わあ。。やはり、何通も入ってしまっていました。。すみませんでした。。(汗)
そうですか、ロストコードのCDはもうお聞きになっていたのですね。はい、パオル・フレズも演奏しました。若き、ハンサム、トランペッター!と宣伝されていました。
ビリーとカルラさんの組み合わせは、珍しいのですね。ビリー以外の方は、自分にとって全て初めてでした。勉強になります。
投稿: Laie | 2009年4月24日 (金) 14時26分
Laieさん,こんにちは。すみません。公開するつもりではなかったのに,手違いです。ダブったコメントは削除させて頂きました。
Billy Drummondは結構オール・マイティなドラマーだと思いますが,Carla Bleyともうまくブレンドしているなぁと感心してしまいました。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年4月24日 (金) 15時24分
Toshiyaさん、こんにちは。
"The Lost Chords Find Paolo Fresu"
の演奏会では、サックスとトランペットのアンサンブルがとても熱くパワフルで良かったと記憶しています。
食事の際に、主人とアンディさんが演奏したサックスは、テナーかソプラノのどっちだったか聞いてみよう!ということで、聞いてみたら、テナーサックスだよ、と教えてくれました。主人はソプラノ、自分はテナーと主張。こんな低レベルの質問にも答えてくれたアンディーさんの優しさを感じた瞬間でした。
投稿: Laie | 2009年4月25日 (土) 01時34分
Laieさん,おはようございます。
テナーvs.ソプラノの話,受けてしまいました。日頃ジャズをお聞きにならない方々にとってはそんなもんなのかもしれません。ちなみにソプラノは一般的にはストレートな形状です。
最近,日本のレストランではBGMにやたらにジャズがかかっていることが多い(本当に猫も杓子も状態です)のですが,客はどういう風に受けとめているんでしょうかねぇ。私のようにジャズが好きな人間にとっては違和感をおぼえることも多々あるのですが。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年4月25日 (土) 09時31分