いろいろ批判もあるが,気持ちよいブラジリアン・フュージョン
"Larry Coryell + Live from Bahia" (CTI)
このアルバムが出た頃,CTIレーベルが一時的に復活して何枚かのアルバムを発表したわけだが,70年代のCTIが果たしたような役割には程遠いインパクトしか与えられたなかったというのがおそらくは大方の見解であろう。このアルバムについても,なんでLarry Coryellがブラジリアン・フュージョンなのかという否定的な見解も多かったように思う。
しかし,私はこのアルバムは結構好きなのである。Coryellがどうのこうのと気にしなければ,これはかなり気持ちのよい音楽である。振り返ってみれば,私は彼らがLive Under the Skyに出たときにも,そのライブを見ているが,CDでもライブでもその気持ちよさは同じだったと記憶している。
この心地よさは,ブラジル風味のフュージョンには共通のものと思うが,快適なリズムの上をDori Caymmiのヴォーカルを交えながら,各楽器のソロが展開されれば,私などは何でもOKと言いたくなってしまうぐらいである。なんてたって,ドラマーはBilly Cobhamだし。ここでも何でCobhamなんだという疑問は提示されるかもしれないが,いいドラマーは何を叩いてもうまいのだというのをCobhamは完璧に実証している。いずれにしても,ブラジル~米国の混成軍はそれなりに演奏をこなしているし,今聞いてもこれは楽しめる。大体,Coryellなんて,絶対ブラジル音楽にフィットしそうにないようにも思えるが,意外や意外の相性を示しているしなぁ。
結局のところ,この音楽をどう思うかは何らかの先入観があるかないかによって,大きく変わるように考えられる。別に私はCoryellのファンというわけでもないから,彼がどんな音楽をやったって,全然問題ないし,純粋にこの音楽を聞いて気持ちいいと思うだけなのである。
そういう意味では,ここにCoryellという役者をあてがいながら,急造のバンドの演奏をここまでに仕立てたCreed Taylorというプロデューサーの手腕を評価しなければならないのではないかと思えてくる。未聴の方はまぁだまされたと思って聞いてみてもらえばと思うし,Coryellのコアなファン以外は,「決してこんなはずではなかった」ということにはならないはずである。星★★★★。
まぁでも最高なのはやっぱり"Vera Cruz"なのだが...。また,何曲かで聞けるDori Caymmiの声のヒーリング効果は抜群である。気持ちよさの源泉はやっぱり彼なのかもしれないなぁ。
Personel: Larry Coryell(g), Dori Caymmi(vo, g), Romero Lubambo(g), Billy Cobham(ds), Donald Harrison(ss, as), Marcio Montarroyos(tp), Luiz Avellar(key), Nico Assumpcao(b), Monica Millet(perc), Tiao Oliveira(perc), Bashiri Johnson(perc), Francisco Centeno(b)
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私もこのアルバム好きです。 特にVera Cruzなのも一緒(^^;
Larry Coryellに何の先入観も持っていないときに聴いているので、そういうことなのかもしれません。 というのも同じです(^^)
さらに同じく、1992年のLUTSで生でも見ていたりします。
投稿: oza。 | 2009年2月21日 (土) 06時43分
oza。さん,こんにちは。
なんだかかぶっていますよねぇ。まぁリンクを張らせていただいたりしている方は,嗜好が似ているからリンクしていたりすることもありますし。
それにしてもEASTでのライブ,懐かしいですよね。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年2月21日 (土) 17時09分
いつも楽しく閲覧しております。ラリー・コリエルの本作ですが、とても良かったです!初コリエルでしたが、今年の僕の大事な1枚になりました!!これからもいいアルバムの紹介お願いします。
投稿: billevanz | 2009年12月26日 (土) 23時08分
billevanzさん,お久しぶりです。
このアルバムは,私にとっては心地の良い音楽として,実は愛聴度が高いものとなっています。お気に召したのは何よりでした。
追ってTBさせて頂きますね。
投稿: 中年音楽狂 | 2009年12月27日 (日) 09時06分