Touchstone:RTFライブ盤発売記念ってわけではないが...。
"Touchstone" Chick Corea (Warner Brothers→Stretch)
先般,第二期RTFのリユニオン・ライブが発売されたときは,私の評価はかなり微妙だったわけだが,その中で,私はこのアルバムに収められた"Compadres"ぐらいの新曲があれば...と書いたこともあり,久しぶりにその曲が聞きたくなってしまった。
とは言え,本作のLPははるか昔に売り払ってしまった(なぜ売る気になったのかはよく思い出せない)ので,円高で値段も随分下がったところでネットで注文したものがデリバリーされた。こういう売っては買い,買っては売りみたいなパターンを結構繰り返しているのは何とも馬鹿馬鹿しいが,聞きたいものは仕方ないのである。
今回,私が再購入したのは"Compadres"のためだったが,本質的にこのアルバムはバラエティに富みながら,なかなかの好演が収められた佳作と言ってよいと思う。タイトル・トラックや"The Yellow Nimbus"に聞かれるPaco De Luciaのさすがの貫録かつ緊密なCoreaとのコンビネーションは聞き物である。ベースのCarlos Benaventもいいしなぁ。また,"Duende"のLee Konitzも渋い。LP時代で言えばB面に相当する後半はフュージョン色が強くなるが,これも悪くない。確かにアルバムとしての一貫性にはやや疑問な部分もあるが,これはこれでなかなかのアルバムであったなぁと久しぶりに再聴しても思った。
それでもって,主題の"Compadres"であるが,これがやはりよい。スペイシーなイントロ,いかにもChick Coreaらしいスパニッシュっぽいフレーズの中から浮かび上がるメロディ・ラインを奏でるCoreaとDi Meolaのユニゾンなど,今聞いてもワクワクする。Clarkeのソロも決まっているし,Lenny Whiteのドタドタ感があまりないのもいい。彼らが1983年に来日したときに,どうしてこの曲をやらなかったのか疑問を感じたが,それは今回のリユニオンにも当てはまるようにも思えるほど,これは魅力的な曲であると思わされる。
いずれにしても,久々に聞いてみて,魅力を再確認させてもらえるというのは決して悪いことではなかったから,RTFのリユニオンにも感謝せねばなるまい。後にChick CoreaはTouchstoneというバンドを組成するから,それなりに彼自身も愛着があったのではないかと思わされる。もう少し,評価されてもよさそうなアルバムである。星★★★★。
Personnel: Chick Corea(p, key, perc), Paco De Lucia(g), Al Di Meola(g), Carlos Benavent(b), Stanley Clarke(b), Bob Magnusen(b), Lenny White(ds), Alex Acuna(ds, perc), Don Alias(perc), Laudir De Oliviera(ganza, perc), Lee Konitz(as), Al Vizzutti(tp), Steve Kujala(ts, fl), Gayle Moran(vo), Carol Shive(vln), Greg Gottlieb(cello)
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コメント
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久しぶりに聴きましたが、やはりこのアルバム、いろいろな録音を集めて出したような気も強くします。それだけに、ここでしか聴けない種類の音源があって、楽しいものにはなっています。それぞれの曲に持ち味があっていいですね。
私のブログアドレスは以下の通りです。
http://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2019/08/post-ea2a3f.html
投稿: 910 | 2019年8月11日 (日) 12時40分
910さん,こんにちは。リンクありがとうございます。
RTF音源ですが,Chick Coreaのサイトには"Chick reunites the classic lineup of Return to Forever: Chick, Al di Meola, Stanley Clarke and Lenny White."という記述があるので,このアルバムのための再編だったというのが私の理解です。
私はキメキメのRTFもいいですが,これぐらいがいい塩梅だと思ってしまいます。惚れた弱みみたいなものですね(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2019年8月11日 (日) 14時18分