今年の注目株:Tony Malaby
"Warblepeck" Tony Malaby Cello Trio (Songlines)
毎年私にはマイ・ブームと言えそうなミュージシャンが現れる。一昨年はFred Hersch,昨年はDave DouglasとPaolo Fresuという感じである。今年,そうした私のマイブームになりそうなのがTony Malabyである(遅いよって声も聞こえそうだが...)。
この人の音楽はややフリーがかったかなりのパワー・ミュージックであるから,しょっちゅう聞きたいと思うわけではない。だが,昨年のJoachim KuhnとDaniel Humairとの共演作"Full Contact"での吹きっぷりが魅力的だった(記事はこちら)ので,それ以来いろいろ調べてみたら,別にその盤が私の初体験盤ではなかったのはお恥ずかしい限りである。Paul MotianのECM盤"Garden of Eden"にもMalabyは入っているが,そのアルバム,私は所有しているが,ちゃんと聞けていないということの表れであることは反省しなければならない。いずれにしても,これだけパワフルに吹く人というのは久しぶりであり,私の中では俄然注目度が上がってきている。
本日紹介するアルバムは,そのMalabyがチェロ,ドラムスという変則トリオで吹き込んだアルバムである。発売されてまだ3ヶ月未満なので新譜扱いとさせて頂くが,そのある意味実験的な編成ゆえに,私が望むサックス吹きまくりモードにはならず,どちらかと言うとバンドとしての響きが重視されているというか,あるいはドラムスのJohn Hollenbackの方が目立ってしまっているのはやや残念ではあるのだが,それでもMalabyの個性の一端はうかがえるアルバムにはなっている。巷の評価は結構高いが,私としては今後への期待もこめて星★★★☆ぐらいにしておきたい。
はっきり言ってしまえばこれは売れるアルバムではなかろう。しかし,こうしたミュージシャンを埋もれさせておくのはあまりにもったいないことである。他の皆さんにもろ手を挙げて推薦はしにくいのも事実だが,このTony Malabyの名前は心の片隅に留めて頂ければ幸甚である。
それにしてもTony MalabyがFred Herschと共演したことがあるっていうのは「水と油」って気がしないでもないなぁ。どんな音になっているのか,そっちも興味深いところではある。
Recorded on January 6 & 7, 2008
Personnel: Tony Malaby(ts, ss), Fred Lonberg-Holm(cello, electronics), John Hollenbeck(ds, marimba, xylophone, glockenspiel, melodica, small kitchen appliances)
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