久々にRainer Brüninghausを聴く
"Freigeweht" Rainer Brüninghaus (ECM)
現在もJan Garbarekグループのレギュラーとして活動を続けているRainer Brüninghausであるが,80年代には彼自身のリーダー・アルバムを本作含めて2枚ECMから発表しているものの,その後はリーダー・アルバムに恵まれないのは売れなかったということだろうか?いずれにしても,本作はECMにおけるBrüninghausの初リーダー作である。
私はこのアルバム,Kenny Wheelerの鋭いフリューゲル・ホーンも気に入っているが,リーダーの美しいピアノの響きとのバランスが結構好きで,こういう路線ならもっとアルバムを出してもいいのではないかと思っている。それにしても変った編成である。リーダーにWheelerのフリューゲル,それにJon Christensenのドラムスがメインで,そこにBrinjar Hoffのオーボエ,イングリッシュ・ホルンが加わるというものだから,この編成を見ただけで尻込みをするリスナーがいても不思議はない。しかし,音を聞いてみると,編成なんてあまり関係ないということがすぐにわかるECMらしいサウンドである。
このアルバムを聞いていて強く思うのはJon Christensenが多彩なドラミングのスタイルを持っているということである。結構バスドラをきかせた一般のジャズ的なスタイルとは異なるかたちの伴奏を聞かせていて,これがこのアルバムの魅力を増加させているようにも思えるのである。結局のところ,Brüninghausのシンセサイザーを通奏低音のように使いつつ,Christensenのシャープなドラムスに乗って,WheelerとBrüninghaus(ソロは前者が中心)がソロを展開するという形式に終始しているのだが,それが私にとっては心地よく響く。アルバムの中では"Taushung der Luft"のみ現代音楽的,あるいは室内楽的な異色の響きを持つが,それ以外は上記のような記述の範囲での演奏が聴けると思ってよい。また,Brüninghausの伴奏パターンゆえに,このアルバムもミニマル的な部分もあると思うが,そういう意味では先日取り上げた"Tubular Bells"より私はこっちの方がずっといいと感じる。
このアルバムはたまにしか聞かないのだが,聞く度ごとに「お~っ,いいねぇ」と同じような反応を私は示してしまう。それってこのアルバムが好きってことなんだろうが,我ながら反応がワンパターンである。本作は決してメジャーにはならないアルバムかもしれないが,もう少し注目されてもいいように思う。星★★★★。
Recorded in August 1980
Personnel: Rainer Brüninghaus(p, key), Kenny Wheeler(fl-h), Jon Christensen(ds), Brynjar Hoff(oboe, english-horn)
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