本年を回顧する(その1):書籍編
このブログにおいて,去年は大晦日にさまざまなジャンルに関するベスト作について語ったものだから,ちゃんとした回顧になっていなかったように思えるので,今年はジャンル別に回顧することとしてみたい。まずは書籍編である。
最近は私もめっきり読書量が減りつつあり,ちゃんとした回顧になるのかどうなのかよくわからないのだが,今年読んだ本の中で最も刺激的だったのは平野啓一郎作「決壊」であろう。世の中に訳のわからない犯罪が多発する中で,本作はまさしくその時流を鋭くとらえた作品だったと思う。読了後にはどっと疲れが出るような本であったが,それでもこの大作を一気に読ませる筆力は大したものだと言わざるをえまい。そのほかにも読んでいないわけではないのだが,インパクトという意味では本作にとどめをさす。これに対抗しうる作品としては古川日出男の「聖家族」があると思うのだが,私の根気が続かず未了となっており,評価できないのは残念である。
そのほかに,素晴らしいスピード感で読者を誘う伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」も忘れ難い作品であるが,発売は2007年末だったはずだから,今年のベストには挙げにくいところもあるのは事実なので,やはり今年のベスト作は「決壊」ということにしよう。
また,今年ついに私がスイング・ジャーナル誌の購読を止めたことは自分にとって記憶にとどめるべき事実である。批評性に乏しいディスク紹介,私にとってはもはや全く意味をなさないジャズ史の回顧記事等,毎月読むに値しない誌面にここ数年間耐えてきたが,それも限界に達したということであろう。信じるべきは自らの審美眼と,ブログのお知り合いの皆さんからの情報で十分と判断すれば,私にとっての同誌の存在意義は全く無に帰したということである。結局のところ,スイング・ジャーナル誌は自己瓦解を起こしてしまい,全く顧みるに値しない雑誌へ堕落したと思わざるをえない。
一方で,巷のCDショップのポップも「売らんかな」という商魂見え見えのところがあるのは残念である。そうした商魂に騙されないためにも,ブログのお知り合いの皆さんの見解は私にとって極めて重要なものとなっている。こうしたブロガーの皆さんに難癖をつける後藤誠といううつけ者もいるが,ブロガーの皆さんの記事は極めて信頼のおけるBuyers' Guideとなっているのだから,ブロガーの存在意義は決して否定できないと思う。
ということで書籍の回顧から大きく脱線してしまったが,私のCDの購入意思決定に与えるSNSやブログの影響力は本当に大きくなったということは間違いのない事実である。それを考えると私も駄文ばかり垂れ流していてはまずいなぁと反省する次第。
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