Jack Wilkins:ジャズ界のマイナー・リーガー?
Jack WilkinsについてはBob Brookmyerとのライブ盤を取り上げて,「Jack Wilkinsファン必聴のアルバム」という記事をアップしたことがある。Wilkinsの人気盤は当然のことながら,Brecker Brothersとの共演盤ということになるのだが,Wilkinsの持つテクニックや歌心を鑑みれば,Brecker人脈でしか注目を浴びないというのはあまりにも彼にとっては酷なことのようにも思える。しかし,人気が上がらないのは日本に限った話ではないようで,かつてWilkinsがNYCのBlue Noteの月曜日(今はどうか知らないが,同店は火曜から日曜が一般の演奏で,月曜日は比較的マイナーなミュージシャンにチャンスを与えていた)に出演したときも,あまりの不入りに本人もくさっていたという話を聞いたことがある。ただ,そのときのバンドはWilkinsとしては明らかに失敗だった"Alien Army"だったはずだから,それもまた仕方あるまい。とは言え,やはりメジャーになれないのである。
そうしたJack Wilkinsが最もメジャーに近づいたのはCTIレーベルからPhil Woodsをゲストに迎えて"Captain Blued"と"Opal"のLP2部作を発売した頃と言ってよいと思う。このアルバム、"Fuse One"のようなパターンで、もともとは日本のマーケットを意識(あるいはキングレコードとCTIのタイアップ)して制作されたようなのだが、一体どれぐらい売れたのかは全くわからない。中古でもあまり見たことがないようにも思えるから、推して知るべしというところか。本日紹介する"Mexico"はその2枚のLPを再構成して1枚のCDにまとめ,90年代初頭の新生CTIから再リリースされたものである。よって,何曲かはオリジナルからカットされてしまっているが,メンツも悪くないし,これはこれで楽しめるアルバムである。ただ,Phil Woodsファンは,彼の参加曲が2曲しか含まれていないことに不満も感じてしまうかもしれない。
このアルバムでも,冒頭からJack Wilkinsのテクニック爆発であり,ソロで演じる"My Foolish Heart"なども悪くない出来である。Al Daileyってこんなピアノだったっけと思わせる瞬間もあり,結構スリリングな展開も示している。しかし,このアルバムですら廃盤の憂き目に長い間あっているのは本当に不幸な人である。そもそもBreckerとの共演盤だって,2枚のアルバムを1枚("Merge")にまとめられてしまっている。おそらくはこのままあまり陽の当たることなく終わってしまいそうな気もするなぁ。Jack Wilkinsがもう少し注目を浴びることを祈念して,ちょいと甘いが星★★★★としてしまおう。
Recorded during July 19-23, 1983
Personnel: Jack Wilkins(g), Phil Woods(as), Albert Dailey(p), Harvey Swartz(b), Akira Tana(ds), Carl Barry(g), Ted Moore(perc)
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Wilkinsの近作を書こうかな,って思ったらコレがヒット.クレマーでヒットした時以来の驚き.
確かにブレッカーとかゴメスとの共演からサッパリ感があるのだけど,2006年の盤(数年前にボストンで買ったもの.生存情報を見つけた感覚で持ち帰った)もマイナーリーグで光る選手(あるいは,あの人は今,みたいな)をみるような感覚で,嫌いじゃないですね.
投稿: ken | 2013年2月15日 (金) 12時26分
kenさん,こんにちは。返信が遅くなりました。
Jack Wilkinsって最近はアルバムもそんなに出ていないようですし,私もフォローはしなくなってしまいました。でもまぁライブはそこそこやっているみたいですね。
やはりマイナー・リーガーっぽいところはありつつも,ギターの腕は確かですよねぇ。もう少しスポットライトを当ててあげたいものです。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年2月17日 (日) 11時50分