Cassandra Wilsonの「ほぼ」スタンダード集
"Loverly" Cassandra Wilson(Blue Note)
ジャズというフィールドを超越して,今やアメリカを代表するディープ・ボイスと呼びたいCassandra Wilsonがほぼ全面的(但し,"Arere"はバンド・メンバーの共作なので,ほぼ即興的に歌われたものであろうし,そのほかにElmore Jamesのブルースもあり。)にジャズ・スタンダードを歌った新作である。ジャケットを見ていてCassandraもいよいよジャズ・ボーカルの大御所化を図るのかと思わせるようなポートレートである。私は彼女のアメリカン・ルーツ・ミュージック的なアルバムも大好きであった。このアルバムも曲はほぼスタンダードながら,やはり典型的なジャズ的な演唱とはなっていないのがCassandra Wilsonらしい。その代表が"St. James Infirmary゛だが,やはりCassandraはこうでなくっちゃと思わせるもので嬉しくなってしまう。ベース1本をバックに歌う"The Very Thought of You"もいいねぇ。
いずれにしても,彼女のディープ・ボイスはますます磨きがかかり,これなら何を歌ってもOKという領域に入りつつあるように思える。オープナーは"Lover, Come Back to Me"であるが,テンポは軽快,しかしボイスはディープというギャップが大きいものの,トランペットとの掛け合いも楽しい。クレジットがないのだが,別のサイトの情報によればこのラッパはNicholas Paytonが吹いているようである。"Black Orfeus"は全く別の曲のような印象を与えるし,ミュージカル"My Fair Lady"からの"Wouldn't It Be Loverly"はオリジナルのJulie Andrews(あるいは映画版でもよいが)とはこれまた全く別物にしてしまうCassandra恐るべし。
そのほかの曲にしても,我々が慣れ親しんだバージョンとはかなり毛色が異なるものになっているのはCassandraを支えるバンド・メイツにもよるところが大きいように思う。だって,かなりハイブラウなメンバーが揃っているからなぁ。いずれにしてもアメリカ音楽の本質を曲げることなく,ジャズの曲を歌っているというところがこのアルバムの最大の特徴である。一般のジャズ・ボーカル・ファンが聞けば,なんじゃこれはという反応を示そうが,私はCassandra Wilsonの音楽を高く評価しているので,いつものようにこのアルバムでも大いに楽しませてもらった次第である。ジャズ・ファンのみならず,アメリカン・ロック・ファンにも大いに薦めたい好アルバム。ロック・ファンをジャズに目覚めさせるにはこういうのがきっといいのである。星★★★★☆。
Recorded on August 13-17, 2007
Personnel: Cassandra Wilson(vo), Marvin Sewell(g), Jason Moran(p), Lonnie Praxico(b), Reginald Veal(b), Herlin Riley(ds), Lekan Babalola(perc), Rhonda Richmond(vo)
« Dave Liebman + イタリア人トリオの続編 | トップページ | Alan Parsons Projectの最高傑作リマスター盤 »
「新譜」カテゴリの記事
- Walter Smith IIIのピアノレス・トリオ盤をストリーミングで聞いた。(2026.03.13)
- またもAlice Sara Ottが放つ超美的ピアノ音楽。(2026.03.11)
- クリポタの新譜への期待が高まる。(2026.03.08)
- Jeremy Peltの新作をストリーミングで聞く。タイトルに込めた意図ほどは激しくはないがいい出来だ。(2026.03.05)
- Kris Davisによる越境型音楽。もはや現代音楽と言った方がよいだろう。(2026.02.24)
「ジャズ(2008年の記事)」カテゴリの記事
- 追悼:Freddie Hubbard(2008.12.30)
- 本年を回顧する(その4):ジャズ編(2008.12.31)
- 今年一番聞いたCD(2008.12.27)
- 耳より情報:Enrico Pieranunziのノルウェイ録音!(2008.12.26)
- Stanley Clarke:これ1枚でOKよ(2008.12.19)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: Cassandra Wilsonの「ほぼ」スタンダード集:
» Cassandra Wilson / Loverly [雨の日にはJAZZを聴きながら]
ダイアン・シューア、ダイアン・リーブス、カサンドラ・ウイルソンら、いわゆる新御三家がジャズ・ヴォーカル界の注目を集め始めたのは80年代半ばのことでした。あれから20年。両ダイアンがメインストリーム系のいわばオールド・スタイルの歌唱法を受け継ぎながら人気を獲得してきたのに対してカサンドラは、伝統と革新を融合させたスタイルで時代をリードし、ジャズのテリトリーにとどまらない幅広いファンの支持を得てきました。そして現代アメリカのポピュラー・ミュージック界最高のディーヴァとして君臨し、各方面から最大級の賛辞が... [続きを読む]
» ラヴァリー~恋人のように/カサンドラ・ウィルソン [ジャズCDの個人ページBlog]
カサンドラ・ウィルソンの新作。彼女は’80年代にはスティーヴ・コールマンらと一緒 [続きを読む]
« Dave Liebman + イタリア人トリオの続編 | トップページ | Alan Parsons Projectの最高傑作リマスター盤 »




































































TBありがとうございました。
本作はすごく出来がいいと思いましたので、記事にしましたが、個人的にはカサンドラの熱心なファンではありません。どうもあの歌声はなじめないのですね。
でも、まあ、本文にも書きましたが、好きな作品は2、3枚あります。今回の新作は愛聴盤になりそうです。
ということで、こちらからもTBさせていただきます。
では、よい週末を。
投稿: criss | 2008年7月 5日 (土) 00時28分
crissさん,コメント,TBありがとうございます。
私はCassandraは好きなんですけど,だからといってしょっちゅうプレイバックするかというとそうでもないんですよねぇ。
確かにあのディープ・ボイスは好き嫌いがわかれても仕方がないものでしょうが,私はバックの伴奏の「非ジャズ感」がよくマッチしていると思います。
投稿: 中年音楽狂 | 2008年7月 5日 (土) 10時04分
おぉ。。私も積極的なファンではありません。
でも、実力は認めています。
ペレスの新譜に、2曲参加、これくらいだと、もっと、聴きたくなる感じでした。
文中でリンクしちゃった。
投稿: Suzuck | 2008年7月 5日 (土) 11時35分
TBさせていただきます。間違えて2ヶ所からTBしてしまったので、すいませんが1ヶ所削除してください。
私は国内盤を購入したのですが、Tpの参加はライナーに「ニコラス・ペイトンがゲスト参加」と書いてありましたので、間違いないようです。クレジットのミスでしょうか。
アクはけっこう強いですけれども、’80年代から追いかけている少ないヴォーカリストのひとりです。今回のアルバムもかなりお気に入りとなりました。
投稿: 910 | 2008年7月 6日 (日) 08時01分
910さん,コメント,TBありがとうございます。
私もCassandraはこれからもずっと聞いていきたい人だと思っています。今回のもかなりいいですよね。
Nicholas PaytonについてはCassandraへのインタビューにもたまたま遊びにきたPaytonにソロを吹いてもらったと書いてありましたね。契約の関係で敢えてクレジットしなかった可能性が高いのではないでしょうか。
投稿: 中年音楽狂 | 2008年7月 6日 (日) 09時27分