Bill Evansの参加が貴重なDave Pike作品
CDラックを眺めていると,こんなCDを持っていたのかと思わされることがたまにある。実はこのCDも買ったことを全然覚えていなかったものである。それもご丁寧に紙ジャケである。おそらく中古で拾ったものであろうが,聞く前にラックにしまい込んでしまったのが失念の最大の理由であろう。
このアルバムはDave Pikeにとっての2作目のリーダー作らしいが,ほとんどそんなことに注目する人はいなくて,大方のリスナーの目当てはBill Evansの参加と言うことになってしまうある意味Dave Pikeにとっては幸せ(Bill Evans目当てに購入する人間が多いから印税は入る)なのか不幸(彼のリーダー作であることはほとんど無視される)なのかよくわからない。それでも私の記事も当然のことながらEvans中心に書かざるをえないのである。
このアルバムは"Why Not"という曲から始まるが,これは曲名からも明らかなように"So What"に基づいて書かれた曲である。ということは最後の方に"So What"と同じ成り立ち(Dドリアン~E♭ドリアン)の"Impressions"そっくりのフレーズが出てきても全く不思議はない(即ち,ライナーで岡崎某氏がこの曲の原曲が"Impressions"だとこだわっていることには何の意味もない。言っちゃ悪いが,ジャズ評論家なんてこの程度のものである)。いずれにしても"Kind of Blue"でピアノを弾いたEvansがこの演奏のピアニストを務めているのは偶然でなく,意図的であることは明らかである。しかし,ある意味この曲だけがモードなので,他の曲から浮いている印象を与えているのは仕方がないところか。続く"In a Sentimental Mood"ではEvansらしいピアノ・ソロが聞ける。3曲目の"Vierd Blues"はMiles Davisオリジナルらしいが,元がMiles作ではかなりマイナーな方の"Collectors Item"に入っているのでは普通は知らなくて当たり前か。いずれにしても普通のブルースである。
この作品で珍しいと言えるのはEvansが"Besame Mucho"を弾いているということだろうが,これはまぁ私にとっては可もなく不可もなくというところだろうか。ほんの少しなのだがテンポが速いのが味わいを落としているように感じるのは私だけだろうか。Evansのピアノ・ソロは無難だがあまり面白いとは言えない。Evansにラテンは合わないことを本人も自覚しているからこそ,ここでの録音が唯一なのだろう。最後の"Wild in the Wind"はEvansのイントロがまさにという感じである。ただ,リーダーのソロが長過ぎるのが難点で,もっとEvansを出せっ!と思うリスナーも多いだろう。
作品全体としては,Evansが入って一本芯が通ったというところだろうが,Dave Pikeはヴァイブ奏者として決して個性的とは思えないし,唸り(鼻歌?)もしつこくてやや辟易とさせられるのが難点。決して悪いアルバムではないが,Evansなかりせば,やはり誰も買わないのではないかと思ってしまう。星★★★。これを敢えて買うぐらいなら,EvansのRiversideの諸作を聞いていればいいように感じる。
Recorded on February 6 & 8, 1962
Personnel: Dave Pike(vib), Bill Evans(p), Herbie Lewis(b), Walter Perkins(ds)
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コメント
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「ジャズ評論家なんて、こんなもの」 まさにそうです。つまらない論を弄して、行数を稼ぐだけの商売。特に、池上比沙之とか平岡正明が嫌いだった。実生活では無口か饒舌かは知らないが、くだらない雑文をペラペラ、まさにペラペラの文章だ。ついでに言うなら、マンガ兼ジャズ評論のラズウェル細木もつまらない。あの程度の、どっちつかずの雑文で、喜ぶ読者がいるのか。いるんだろうなぁ。
投稿: Log | 2025年4月25日 (金) 17時56分
Logさん,おはようございます。お久しぶりです。
>つまらない論を弄して、行数を稼ぐだけの商売。
死者に鞭打ちたくはないですが,その代表は岩浪洋三ですね。
>ラズウェル細木もつまらない。あの程度の、どっちつかずの雑文で、喜ぶ読者がいるのか。いるんだろうなぁ。
ラズウェルは漫画としてだけ見ていればいいように思いますが,まぁおっしゃることはわかります。いずれにしても気骨のあるライターが本当にいなくなりました。
投稿: 中年音楽狂 | 2025年4月28日 (月) 07時41分