よく見れば凄いメンツのジョージ大塚の1978年作
"Maracaibo Cornpone" ジョージ大塚 (Trio)
このアルバム,久し振りに聞いたが,よくよく見れば結構なメンツである。この当時の日本のレーベルの海外制作盤(鈴木良雄の"Wings"とか山口真文の"Mabumi"とかがそうだ)にはこういうことが多いので見逃せないが,それにしても好き者が見れば膝を乗り出すこと間違いなしというメンバーである。サウンドはいかにもその当時のコンテンポラリー・サウンドという感じであるが,期待は裏切られることはない。
これだけのメンバーが揃っているのであれば,菊地の「ススト」のようなもう少し緊張感のある演奏でもいいようには思えるが,これはこれで楽しめるから文句を言うのは野暮というものである。私が一番いいと思うのはRichie Beirach作の"Who Got?"であるが,何ともこのメンバーらしいコンテンポラリーな4ビートが楽しめる。この感覚,誤解を恐れずに言えば,Stepsのそれに近い感覚があるかもしれないが,メンツが違うので,響きには当然違いはある。あくまで感覚の問題である。ここでのVitousのアルコは相変わらずの音(しかも相当リバーブがかかっていたりする)で,どうなのよという反応もありえるが,これは好き嫌いの問題である(ちなみに私はVitousのアルコは苦手)が,バッキングのベース・ランニングなどはなかなかよい。
サウンド的には当時はやりだったヤマハのエレクトリック・グランドが結構使われているあたりに時代を感じさせるところもあるが,演奏そのものは今でも十分通用するもので,古臭さはそれほど感じない。曲ではBeirachの2曲が私の好みだが,ピアノ・プレイの観点でもBeirachの貢献度は大きい。これでもう少しSteve Grossmanがブリブリ吹いていてくれれば文句ないところなのだが,それはないものねだりということであろう。ただ,ミキシングのせいもあるかもしれないが,Grossmanのソプラノに今一つ力強さが感じられないのが残念ではある。いずれにしても70年代の日本のレーベルやミュージシャンには進取の精神が強く感じられるということを痛感させられる好アルバムである。星★★★★。
でもこのアルバム,地味なアルバム・デザインで結構損をしているのではないかと思うがどうだろうか?
Recorded on May 25& 26, 1978
Personnel: ジョージ大塚(ds), 菊地雅章(key, synth-ds), 増尾好秋(g), Steve Grossman(ss), John Abercrombie(g), Richard Beirach(p, key), Miroslav Vitous(b), Nana Vasconcelos(perc, vo)
« コレクターはつらいよ(4) | トップページ | Renee RosnesがJoe Hendersonを迎えた佳作 »
「ジャズ(2008年の記事)」カテゴリの記事
- 追悼:Freddie Hubbard(2008.12.30)
- 本年を回顧する(その4):ジャズ編(2008.12.31)
- 今年一番聞いたCD(2008.12.27)
- 耳より情報:Enrico Pieranunziのノルウェイ録音!(2008.12.26)
- Stanley Clarke:これ1枚でOKよ(2008.12.19)
コメント
« コレクターはつらいよ(4) | トップページ | Renee RosnesがJoe Hendersonを迎えた佳作 »
こんにちは。私はこのLPをジャケ違いで2枚持ってます。1枚はこちらで紹介されているものと、もう1枚は赤いジャージを着たジョージ大塚が波打ち際の砂浜でワイングラスをもっているジャケで全然音楽の内容とは関係ないものです。たぶん後者のジャケが思わしくないためジャケ変更したのではないでしょうか。変更してもジャケで損をしているのでしょうね。
投稿: Bar D2 | 2008年4月28日 (月) 12時24分
Bar D2さま,コメントありがとうございます。
多分ですが,このページでアップした方のジャケがオリジナルで,ジョージ大塚が浜辺で微笑むのが再発時のものだと思います。しかし,あれはいくらなんでもないですよねぇ。
そう言えば,大塚とVitousの"Guardian Angels゛というのも悶絶もののジャケでしたね。あれでは売れるものも売れなくなるだけだと思うのは私だけではないと思います。
投稿: 中年音楽狂 | 2008年4月28日 (月) 23時24分
またディープな作品を(笑)。
これ、まともに聴いたこと無いんですよ。聞きたいなあ。それにしてもタイトルがやばすぎます。「マラかイボ」だもんなあ。当時ジョージさんのパーマネントなバンド名がこれでしたね。
鈴木義雄のWingsは愛聴盤でした。一曲目の7/8の曲バンドでやったなあ。3曲目ぐらいにまだ売れてないボブバーグが入ってましたね。真文さんのは改めて聴いてみたい(ケニーカークランドとトニー?)ですが、ここら辺の作品はさすがにCDになってないですよねえ。
投稿: やぎ | 2008年4月29日 (火) 00時06分
やぎさん,こんばんは。一気にこのブログを下品なものにするコメントどうも。考えたことなかったわ。
゛Mabumi゛はその通り。Kirkland~Vitous~Williamsというアンビリーバブルなリズムがバックですねぇ。トリオ原盤はなかなか再発されないので,これも結構厳しいかもしれませんな。
投稿: 中年音楽狂 | 2008年4月29日 (火) 00時18分
おはようございます。
このアルバム、久しぶりに聴いて、方向性は曲によって違うけど、なかなかすごいメンツですごいことをやっているなあ、という印象でした。こういうのがあるからCDの大量処分がなかなかできないんだよなあ、と思います。
なぜジョージ大塚がこのメンバーをそろえて演奏できたのか、まあ、当時だったら十分他にもあった話で、今でも話題作にはなるでしょうね。たまたま今回はリッチー・バイラークつながりで引っ張り出してきましたが、改めて聴いて良かったなあ、と思います。
当方のブログアドレスは下記の通りです。
https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2022/06/post-d60c6c.html
投稿: 910 | 2022年6月 4日 (土) 05時01分
910さん,こんばんは。リンクありがとうございます。
>こういうのがあるからCDの大量処分がなかなかできないんだよなあ、と思います。
温故知新を始めると,売るのが惜しくなることは私もありますねぇ...。
>なぜジョージ大塚がこのメンバーをそろえて演奏できたのか、(中略)今でも話題作にはなるでしょうね。
このメンツには改めて驚きます。菊地人脈ですかねぇ。
>今回はリッチー・バイラークつながりで引っ張り出してきました
そのRichie Beirachが一番異色のようで,貢献度大なのが面白いですね。
投稿: 中年音楽狂 | 2022年6月 4日 (土) 21時46分