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2007年10月24日 (水)

「また逢う日まで」と言っても尾崎紀世彦ではない!

Photo 「また逢う日まで」('50 東宝)

監督:今井正

出演:岡田英次,久我美子,滝沢修,風見章子,杉村春子

先日,「青い山脈」についてこのブログに書いたが,あれ以来というわけでもないが,昔の日本映画が気になって仕方がなく,今回は「青い山脈」と同じ今井正監督の「また逢う日まで」を見た。タイトルを見て誤解してもらっては困るが,尾崎紀世彦のヒット曲にあやかった映画ではなく,1950年制作のれっきとした反戦的ラブストーリーである。同じ今井正監督でも,「青い山脈」が健康的なリベラリズムに満ちていたのと違い,こちらの映画は随分と暗いトーンに満ちている。これが実は今井正の本質なのか?

同年のキネマ旬報のベスト10で,この映画が「羅生門」を抑えてトップという事実には驚かされるが,この映画,悲劇的なラブストーリーとしては確かによく出来てはいる。ただ岡田英次の台詞回しがあまりにも素人っぽくて私としてはのめり込めない部分も多々あった。久我美子は現代で言えば沢口靖子的な美人ぶりだが,いずれにせよ,彼ら二人は相当にバタくさい。そんな彼ら主役二人よりも誰よりも私を泣かせたのは,久我美子の母親役の杉村春子である。あれだけの出番で,最もこのドラマを際立たせたのは杉村春子と言いたいほど素晴らしい。ラストのラストでついに私の涙腺をゆるませたのは杉村春子の動きそのものなのである。

岡田英次の父に扮した滝沢修の格好のよさにも頭が下がる。ラスト・シーンの一瞬の演技にこの人の名優ぶりを思い知らされた思いである。また,私の同時代的には母親女優であった風見章子の当時の美形ぶりにも驚かされた。

この映画の名シーンとして知られるガラス越しのキス・シーンはこの時代性を理解しない限り,「何のこっちゃ」となるわけだが,こうした純情な時代も過去には存在していたということである。即物的なAVとは対極にある世界とでも言いたいが,今の若者にこのシーンを見せてもその意味はきっと理解できないのだろうなぁなどと考える私も相当にオジンくさい。

いずれにしても,メロドラマの王道としては「哀愁」的,男女のすれ違いでは「めぐり逢い」的とも言える作品である。終戦後の厭戦気分という世の中を反映したことが,おそらくはキネ旬1位につながったということのように思えるが,個人的には星★★★★ぐらい。

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