Jimmy Smith:懐かしのFourmost
"Fourmost" Jimmy Smith(Milestone)
このアルバムは私にとって感慨深いアルバムである。なぜなら私はこのライブ録音の現場にたまたま居合わせたからである。時は1990年,私のニューヨーク在住が始まって約3ヶ月,そろそろ街や生活に慣れてきた頃である。私は毎週Village Voiceのジャズ・クラブの告知欄をチェック(当時はインターネットという便利なものはない)しては,ライブに出掛けていたのだが,これもそんな一夜の記録である。場所は今は亡きFat Tuesday's。確か3rd Avenueの17丁目あたりというクラブとしては珍しい場所にあったが,今でも階段を降りていくと現れるうなぎの寝床のような店構えをおぼえている。
メンツはJimmy Smithとも共演豊富な大ベテランばかりである。このアルバムに収められた演奏を聞けば,リラクゼーション満点というか,ある意味手慣れた演奏が展開されていて,安心感たっぷりである。そのかわり,緊張感とかはほとんど感じられないが,冒頭の"Midnight Special"のTurrentineのソロの後に湧き上がる歓声を聞けば,(私を含めた)聴衆も乗っていることがわかる演奏である。そうしたトーンは全編を通じて続くこのアルバムは,私はもちろん懐かしさもあるが,十分楽しめるアルバムである。"My Funny Valentine"ではGrady Tateの渋いボーカルも聞け,至れりつくせりという感じである。作品の評価としては,"Things Ain't What They Used to Be"などは明らかにオーバーブローイング気味であるが,それも含めてベテランによる平均点の高い演奏として星★★★★ぐらいであろう。ただ,私にとっては現場にいたということもあって"Steve Grossman in New York"と並んで記憶に残るアルバムとなった。
尚,本作の続編が2001年,"Fourmost Return"として発売されており,そちらも相応に楽しめるが,まずは本日紹介した作品からというのが正しい聞き方であろう。
いずれにしても,こうしたメンバーによるこうした演奏が普通に聞けてしまうところがNYCのいいところであるが,そこにわずか2年弱ではあったが住まうことができた私は幸福者である。そう言えば,あれも見た,あれも聞いたと考えると楽しくなってしまうが,こうした懐古的な気分になるところが,私も中年となった証拠だろう。やや微妙。
Recorded Live at Fat Tuesday's on November 16 & 17, 1990
Personnel: Jimmy Smith(org), Stanley Turrentine(ts), Kenny Burrell(g), Grady Tate(ds, vo)
« Mariah Careyのデビューから数年は本当に凄かった | トップページ | 藤原伊織:今度こそ最後か »
「ジャズ」カテゴリの記事
- Mike Stern@ブルーノート東京参戦記(2019.08.04)
- コレクターはつらいよ(3)(2007.12.30)
- 追悼,Oscar Peterson(2007.12.25)
- Dave Douglas:年末になって現れた素晴らしい作品(2007.12.26)
- 私も今年のベスト盤を...(2007.12.31)
コメント