Chris Potter Undergroundのライブ作
"Follow the Red Line: Live at the Village Vanguard" Chris Potter Underground (Emarcy)
Chris Potterがベースレス編成の"Underground"をリリースしたのは2006年初頭のことであったが,その彼が今回は名門Village Vanguardでのライブを発表した。私は"Underground"が発表された時にAmazonに次のようなレビューを投稿した。
『Chris PotterがWayne Krantz(g),Craig Taborn(Rhodes),Nate Smith(ds)という異色のメンバー,編成(2曲でAdam Rogersがギターで加わる)でのぞんだ作品である。冒頭からSteve ColemanらM-Base的なサウンドに驚かされるが,全編を通して聞いてみると,これだけとがったメンバーで演奏する必然性は残念ながら感じられないし,TabornのRhodes低音部にベースを代替させた効果も疑問。確かにこれまでのPotterとは異なるイメージを打ち出した意欲作ではあるが,若干上滑り気味と評価せざるをえない。KrantzとTabornがいれば,より丁丁発止の演奏を期待するというのが人情というものだろう。収穫はNate Smithの鋭いドラミング。』
ということで,期待が大きかっただけにやや肩透かしを食ったというのが正直な感想だった訳だが,今回はVanguardでのライブということもあって,より熱い演奏を期待するのは当然である。今回のギターがWayne KrantzでなくAdam Rogersというのはやや残念であるが,私は前作よりも今回の作品の方がはるかに好ましく感じられる。
その評価はやはりライブならではのダイナミズムゆえということになろうが,Potterのフレージングも前作よりもはるかにダイナミックに聞こえるのがよいし,聴衆も相当の反応を示している。前作同様ここでもNate Smithのドラミングがバンドをドライブさせており大変素晴らしいが,TabornはFender Rhodesでいい音を聞かせているものの,サウンド的にはもう少し暴れてもらってもよいような気がする。しかし,前作よりはここでのTabornの方がよいことは間違いない。Adam RogersはKrantzほどの変態感はないが,まぁまぁ善戦しているというところである。ただし私はやはりWayne Krantzでこのバンドのライブを聞いてみたいところである。それもVanguardよりもより下世話な55Barがこのバンドには相応しいかもしれない。
私は前作は星★★★という評価だったが,本作はライブならではの熱さを評価して星★★★★☆としよう。今回のリリースを契機に久し振りに前作を聞いてみてみることにするか。また違う感覚があるかもしれない。
ところで,バック・インレイに書かれた曲の収録時間が,実際よりもかなり短く記載されているのはなぜなのか?謎である。
Recorded Live at the Village Vanguard on February 15-17, 2007
Personnel: Chris Potter(ts, b-cl), Craig Taborn(el-p), Adam Rogers(g), Nate Smith(ds)
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» Chris Potter Follow The Red Line: Live At The Village Vanguard [JAZZとAUDIOが出会うと...]
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1つはコレで、UNDERGROUNDバンドでのライブです。
もう1つがコッチ(http://www.hmv.co.jp/product/detail/2607799)で、テンテット+ストリングス
とかそんな感じの構成のようです。
こう並べられると、前作でブッ飛んだ私としては、コレは買うけど、コッチはちょっと様子見となるのが、自然な状況(嘘、ただの金欠。優先(聴きたい)度を考慮しただけ)なわけでして..
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TBさせていただきます。
個人的には、自身の刷り込みでもあった前作(underground)の方が上に感じていますかねぇ。
(刷り込みの力は強いです。)
初コメントだったと思います。今後ともよろしくお願いします。
投稿: oza。 | 2007年10月28日 (日) 08時30分
oza。さん,コメントありがとうございます。通勤時間に依存している私の音楽の聞き方が悪いのかもしれません。ということで一作目も聞き直してみようかと思った次第です。また違った感触があるかもしレません。
こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2007年10月28日 (日) 11時04分
遅れてクリス・ポッターをまとめて聴くことになり、これでVerve以降のリーダー作は聴き終えたことになります。
やはりライヴがいいですね、と思いましたけど、個人的には最初に「Underground」、次にこのアルバム、最後に「Ultrahang」で聴ければもっと良かったかな、と思ってます。
もう3作出てますので、次はまた音楽的にもメンバー的にも変化があるともっと面白いんじゃないかと思いました。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2010年4月28日 (水) 07時54分
910さん,こんにちは。TBありがとうございます。また,返信が遅くなりました。
私はUndergroundの第1作は今一つ評価できなかったんですが,こっちにははまりました。最近はあまり聞いていませんが,iPodには突っ込んであるので,聞いてみることにします。
ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2010年4月29日 (木) 11時21分
こんばんは。
トラバしたままですみません。
いつも、時間の読みが甘すぎて。。
なんだか、新譜は2枚くらいを聴いてましたが、、後は、クリポタ聴いてました。
いや、これも良いと思いまっせ。
つうか、タイムリーにブログにあげられませんでしたが、、
先日のライブを聴いて、少し、クリポタ観も変わって、、新たに聴き直してよかったと思ってます。
今後も、気が向いたら、クリポタあげたいな、と、思ってしまいました。
ありがとうございました。
投稿: Suzuck | 2012年8月18日 (土) 22時10分
すずっくさん,こんにちは。TBありがとうございます。
私は間もなく夏休み終了ですが,いろいろCDは新旧取り混ぜて買ってはいるものの,何を聞いていたかなぁなんて思ってしまいます。暑くて音楽に集中できませんしねぇ。
こういう時期なので,私はクリポタは聞いていませんが,またそのうち聞き直すってことが必要な気がしています。
投稿: 中年音楽狂 | 2012年8月19日 (日) 10時59分