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2023年9月28日 (木)

Dan Penn~Spooner Oldhamをビルボードライブ東京で観た。

Dan-penn 数々の名曲を生み出したこのコンビも,Dan Pennが81歳,Spooner Oldhamが80歳の後期高齢者となっては,次があるかどうかはわからないということで,ビルボードライブ東京における彼らのライブを観に行ってきた。彼らの現在の雰囲気に近い写真をアップしておくが,実際は更によいよい感が増していると思ってもらえばよいだろう(爆)。

コロナ禍もあって,私がこのヴェニューを訪れるのは何と5年半ぶりで,前回はVictor Wootenのバンドを観に行って以来となる。その時から全然店の雰囲気は変わらないが,変化があったのは,予約情報がQRコードとしてメールで送られてきて,それを受付で提示するという仕組みになったことぐらいだろう。それによってチェックインのプロセスが効率的になったのは間違いないところだ。

Spooner-oldham それはさておきDan PennとSpooner Oldhamである。Dan Pennは杖を使わないと足元もおぼつかないし,Spooner Oldhamは演奏の途中でミスるという高齢者らしい姿を見ると,時の流れを感じざるをえないが,それでもDan Pennは年齢の割には声はよく出ていたし,Spooner Oldhamはミスったものの,それ以外はご両人の楽器のプレイぶりもいい音が出ていたし,しっかりしたものだった。だからこそ,見た目とのギャップが大きいのだが,聞いていて思ったのが,つくづく彼らの曲がよくできているってことで,かつあのコード進行とメロディ・ラインは日本人には書けないだろうなぁなんて思っていた。

Dan PennとSpooner Oldhamの二人にこのこじゃれたヴェニューが最適だったかと言えば,ちょっと違うかなとも思う。しかしある意味,その姿を見られただけで満足しなければならないのだろうが,音楽としてちゃんと成立しているところを見て,安心したのであった。最後は案の定"Dark End of the Street"で締めたが,ついついしまったままのギターを取り出したくなってしまった私である。

因みに私はカジュアル・シートから見ていたのだが,ステージの前の最前列で妙に盛り上がる女性が二人いて,遠目だけに年齢はいくつぐらいかまではわからないが,世の中には渋い趣味の人もいるのだなとある意味感心していた私であった。

Live at ビルボードライブ東京 on September 26, 2023, 2ndセット

Personnel: Dan Penn(vo, g), Spooner Oldham(el-p, vo)

2023年9月27日 (水)

荒唐無稽の極致:伊坂幸太郎の「777」

777

「777(トリプルセブン)」伊坂幸太郎(角川書店)

先日、お彼岸でお墓参りに行った際、行き帰りに気楽に読める本はないかと思い、この本を購入した。 伊坂幸太郎の「マリアビートル」を原作とする「ブレット・トレイン」を配信で観た時も荒唐無稽だと思ったが、この本もシリーズものだけに同様だと分かっていても、暇つぶしとして考えればよしとしよう(と開き直る)。

今回もついていない男、天道虫こと七尾が主人公だが、それにしてもいろんな殺し屋が出てくるものだ。 伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」は非常に面白かったが、このシリーズもエンターテイメントとしては良いとしても,やっぱりこれはやり過ぎ感が強いよなぁと思いながら読んでいた。まぁそれでもあっという間に読了(頁数が少ないってのもあるが)してしまったのには,我ながら呆れてしまった。文句を言いながらやめられないんじゃん!ってところである。

詳しく書くとネタバレになるのでやめておくが,読みながら伊坂幸太郎は「なりすまし」が好きだねぇと思っていた。それはさておき,この小説を映像化した時には,誰をキャスティングするかというのを考えながら読むのも一興かもしれない。それでも決して私の好みのストーリーではないので,星★★★ぐらいにしておこう。

2023年9月26日 (火)

"Rumours Live"がデリバリーされた。やはりこの時期は充実していたと思わせる。

Rumours-live_20230923163601 "Rumours Live" Fleetwood Mac (Warner)

私はなんだかんだと言ってFleetwood Macの音源を多数保有している。結局ファンなんじゃんと言われればそうなってしまうと思うが,正直言って自分では熱烈なファンとは思っていない。しかし,そうは言ってもChristine McVieが好きなのは事実だし,Bob Welchも好きだった。だからこそ,一番メジャーだった時期以外の音源も保有しているのだが,これこそ彼らの人気絶頂期の音源と言ってもよいだろう。誰が何と言おうが,彼らのアルバムで一番売れたのは"Rumours"であることは疑いようがない事実だが,やはりその時のラインアップでの演奏は勢いがあったと思わせるに十分な発掘ライブ・アルバムだ。

この頃のFleetwood MacをFleetwood Macたらしめていたのは,優れたソングライターが3人いたということになると思う。一般的にはStevie Nicksの人気があったことは否定しないが,正直言って私はStevie Nicksの声が決して好みではない。私にとってそれを補って余りあったのがChristine McVieの魅力であった。そして,それを支えるバンドとしての演奏能力が優れていたというのが実感だ。ライブでの演奏を聞いていると,John McVieとMick Fleetwoodが支えるリズムが実にはまっていて,彼らの貢献度はフロントの3人よりは目立たないと言えども,バンドとしての屋台骨はこの二人がきっちり支えていたのだと思ってしまった。スタジオ・アルバムではあまり目立たないJohn McVieのベースの安定度なんて見事としか言いようがないのだ。

ということで,往時のこのバンドの素晴らしさを改めて追体験するのに適したアルバム。演奏は"You Make Loving Fun"の途中でChristineの声が途切れるなど粗い部分もあるが,以前リリースされた"Tusk"期のライブ盤よりずっとこっちの方がいいと思ってしまったと言っておこう。星★★★★☆。

Recorded Live at the Fabulous Forum, Inglewood, California on August 29, 1977

Personnel: Mick Fleetwood(ds, perc), John McVie(b), Christine McVie(key, synth, vo), Lindsey Buckingham(g, vo), Stevie Nicks(vo) 

2023年9月25日 (月)

休日の昼下がりに見た「椿三十郎」。

Photo_20230923083801「椿三十郎」(’62,東宝)

監督:黒澤明

出演:三船敏郎,仲代達矢,加山雄三,入江たか子,団令子,小林桂樹,伊藤雄之介

なんとこの映画,このブログに登場するのは3度目だ。直近では,新たにリージョン・フリーDVDプレイヤーをゲットしたときにこの映画を見たのが昨年の8月。それをまた見ているんだから,私もつくづくこの映画が好きだってことがバレバレになってしまうが,見ていて痛快そのもの,実に面白い時代劇である。会社の休日の昼下がり,酒をちびちびやりながらこういう映画を見る至福。劇場で見られればなおよしだが,DVDだっていいのだ。

「用心棒」では桑畑三十郎だったが,今度は屋敷の庭を見て名乗った名前が椿三十郎である。悪い奴は悪い奴として描かれていて,あの志村喬でさえ本当に悪く,そして最後は情けなく見える(笑)。そして入江たか子や伊藤雄之介,そして小林桂樹の使い方も最高だ。

そんなに三十郎の打つ手がうまくはまるのかと言われれば,確かにケチのつけようもあるが,そこはエンタテインメントと割り切って見ればいいのだ。いずれにしても心地よく時間が過ぎていくのを楽しんだ私であった。休日の正しい過ごし方の一つだ(笑)。

2023年9月24日 (日)

これも久しく聞いていなかったBranford Marsalis版「至上の愛」ライブ。

_20230922_0002 "Coltrane’s A Love Supreme Live in Amsterdam" Branford Marsalis (Rounder)

正直言って音楽DVDやBlu-rayってあまりプレイバックする機会がない。私はどちらかと言えば音優先なので,ついついCDやアナログLPの方が主になってしまう。だからこのCDが付帯されたDVDもラックには収まっていても,取り出す機会がほとんどないので,CDもプレイバックするのはいつ以来かわからない。だが,Branford Marsalisが「至上の愛」をライブで演奏するならば,聞きたいと思うのは当然だし,だからこそ私は本作も購入した訳だ。

と言っても,Branford Marsalisはこのライブが収録される前に,"Footsteps of Our Fathers"というアルバムで「至上の愛」を演奏しているから,そっちを取り上げてもよかったのだが,そこは天邪鬼の私である。そう言えば...ってことで,これを取り出してきたのである。

DVDの方はインタビューとかも入って110分を越えるが,音だけなら余計なコンテンツなしで48分強なところも,私はCDの方がいいやと思ってしまう。それでもって,演奏はと言えば,Coltraneと同じレベルとはいかずとも,それを意識さえしなければ十分聞ける演奏である。本家があまりに凄過ぎて損をしているという気がしないでもないが,これはなかなか燃える音源となっている。少なくとも私にとっては"Footsteps of Our Fathers"での演奏よりもこちらの方が好ましい。これだけ熱い演奏をしてくれれば,アムステルダムの聴衆も満足だっただろうし,特にPart 2~3辺りの反応にそれがよく表れていると思う。

Coltraneの演奏を知る人間からすれば,気に入らないところもあるだろうし,Branford Marsalis本人にとってはチャレンジだったと思うが,十分聞く側の期待には応えた演奏だと思う。星★★★★☆。

Recorded Live at Bimhuis, Amsterdam on March 30, 2003

Personnel: Branford Marsalis(ts), Joey Calderazzo(p), Eric Revis(b), Jeff "Tain" Watts(ds)

2023年9月23日 (土)

Dave Liebmanの日本録音盤:このCDのジャケはないなぁ...。

_20230922_0001 "First Visit" Dave Liebman(Philips→West Wind)

先日,Facebook上でこのアルバムのジャケ写真を見て,久しぶりに取り出した私である。Dave Liebmanが73年に来日した折に,同じタイミングで来ていたStan Getzのバンドの3人と共演してPhilipsレーベルに録音したアルバム。これがLiebmanにとって2作目のリーダー作だそうだ。

下に掲げるオリジナルのLPのジャケットも正直訳の分からないものだったと言ってもいいが,このCDのジャケットは更にないなぁと誰しもが思うであろう。折角素晴らしい演奏が収められているのに,購買意欲をそぐデザインには怒りすら覚える(爆)。

First-visitLPでA面に相当する2曲がクァルテットで演じられ,B面に相当する4曲がメンバーとのデュオまたはトリオで演じられるのだが,Dave Liebmanらしいハイブラウな感覚炸裂ってところである。冒頭の"Man-Child"から興奮させられ,最後のJack DeJohnetteとのバトルで締めくくられるタイトル・トラックで改めて興奮させられるという構成にやられる。それは決して中だるみするという意味ではない。いい塩梅の緩急がつけられていて,あっという間に時間が過ぎ去る感覚だと思ってもらえばよい。そして盟友Richie Beirachとはこの競演が縁となってLookout Farmにつながったのかもしれない(あくまでもこれは私の想像で,二人は本作前に既に知己を得ていたのかもしれないが...)と思うと,実に感慨深い。

上述の通り,かなりのハイブラウさで迫ってくるので,万人向けの音楽とは言えないかもしれない。しかし,Dave Liebmanに痺れたことがあるリスナーであれば,爆音再生必須の好アルバム。星★★★★☆。

Recorded on July 20 and 21, 1973

Personnel: Dave Liebman(ts, ss, fl), Richie Beirach(p), Dave Holland(b), Jack DeJohnette(ds)

2023年9月22日 (金)

驚きのCorinne Bailey Raeの7年ぶりの新作。

_20230919_0001_20230920175501 "Black Rainbow" Corinne Bailey Rae (Thirty Tigers)

主題に書いた「驚きの」というのは決して大げさではない。本作に収められた"Erasure"ようなパンク的にさえ響く曲を聞いて,これまでのCorinne Bailey Raeのイメージからの大きな変化を聞けば,一体彼女に何があったのかと思いたくなっても仕方がない。この変化を受け入れられるか否かによって,このアルバムの評価は変わるだろう。ジャケからしてこれまでと雰囲気違うしなぁ。

しかし,元々,Corinne Bailey Raeはガールズ・バンドでパンクをやっていたこともあるとの話もあって,これまでの活動の方がそこから乖離していたものだったと言えなくもない。だが,原点回帰というよりも,このアルバムはシカゴにあるStony Island Arts Bankのオブジェやアート作品にインスパイアを受けたというものらしい。ここまで変わるということは強烈なインスピレーションを与えたということだよなぁなんて思ってしまう。

そして"New York Transit Queen"のなんだかチア・リーディングのための曲のように響く曲が異色。聞いていてTony Basilの"Micky"を思い出してしまった。やっぱりこれには面食らうってところだろうが,以前の彼女の音楽にあったソフトさが減少しているのは明らかだ。私のようなリスナーにとってはこの変化にはやはり戸惑ったというところ。音楽的にはよくできているとは思うが,これは私がCorinne Bailey Raeに求める音ではないなぁ。星★★★☆ぐらいってところか。

尚,彼女のアルバムのクレジットは文字が小さ過ぎて老眼には解読不能なので,Personnelは省略。因みに本人はギターやキーボードも演奏している。

2023年9月21日 (木)

Netflixで「ブルー・サンダー」を観た。

Blue-thunder 「ブルー・サンダー("Blue Thunder")」(’83,米,Columbia)

監督:John Badham

出演:Roy Sheider, Warren Oates, Malcolm McDowell, Candy Clark, Daniel Stern

私は80年代はあまり劇場で映画を観ていない。前半は浪人中から大学生で学生時代はほぼ音楽を聴くことに集中,後半は社会人になって仕事も結構忙しかったこともあって,映画はもっぱら当時はレーザー・ディスク(死語)で観ていた。この映画もその後ビデオで観ることもなく,今回初めて観たと思う。ただ,このポスターは印象に残っている。

主演のRoy Sheiderは70年代は作品に恵まれていたが,80年代以降の作品では印象に残るものが少ない中くなっていたように思うが,主演としては本作あるいは「2010」辺りを境に完全に失速したと言ってもいいかもしれない。まぁ,美男でもなんでもないから,作品に恵まれないとどうしようもないところもある。

それはさておき,これは空撮が全てと言ってもよい映画だと思う。シナリオはかなり無茶苦茶で,LAの市街地でF16がミサイルをぶっ放すこと自体ありえない。ストーリーもヴェトナム後遺症とかありがちで想定通りのものだ。それでも,ヘリ対ヘリ,ヘリ対F16にカーチェイスも交えて,アクション映画としてはそれなりに見られるとしても,評価としては星★★★で十分だろう。

Malcolm McDowellは相変わらずファナティックな感じで,この人はいつもこうなっちゃうのは「時計じかけのオレンジ」のせいだろうなぁと思いながら見ていた。

また,Roy Sheiderのボスを演じるWarren Oatesは,映画としてはこれが遺作だと思うが,映画のエンディング・ロールでもWarren Oatesへの献辞が出てくる。Warren Oatesがパイオニアのカー・ステレオのTVコマーシャルに出ていたのも懐かしいが,その当時はどういう人選やねんと思っていた。「渋い」ということで選ばれていたんだろうが,しかも音楽はRy Cooder,ナレーションは確か片岡義男だったはずだ。趣味出過ぎである(笑)。こっちも懐かしいので,映像を貼り付けておこう。Warren Oatesも「デリンジャー」や「ガルシアの首」で主役を張ったが,どちらかと言えば,主役を食う脇役の方がしっくりくる。この映画では存在感はあるものの,活躍の場が限定的ってのはストーリー上,仕方がないとは思うが,いずれにしてもいい役者であった。

尚,脚本にDan O'Bannonの名前を見つけて,へぇ~と思っていたことも追記しておく。やっぱりこの人は「エイリアン」が最高だったな。

2023年9月20日 (水)

Keith Jarrett,1979年,アンティーブでのライブのブートレッグ。

Keith-jarret-at-antibes "Solo Concert in Antibes" Keith Jarrett(Bootleg)

これは結構前に入手したブートレッグだが,記事にしていなかったので,改めて聞いてみた。この音源はRadio Franceが再放送した音源がもとになっていて,出るべくして出たブートである。それゆえ音自体は全く問題ないが,日頃のECMのエコーが聞いた音に慣れた耳からすれば,本当はこういう音なんだよなぁと思わせるピアノの響きである。このブート,CD-R2枚組だが,1枚目に1stセット,2枚面に2ndセットを収めているが,1枚目は約43分の即興の後に,アンコール的に聴衆に手拍子を求めたり,喋りもはさみながら約10分演奏するというのが珍しい。気難しいKeithもこの日は機嫌がよかったということだろう。ただ,この1枚目はいかにもKeith Jarrett的演奏ではあるのだが,若干美的な感覚が乏しいように思える。

しかし,2枚目に転じて,感覚が随分違う演奏を聞かせる。現在は病気で引退状態のようなKeith Jarrettではあるが,まだライブを開催している時期に私が聞いた演奏では,第1部はアブストラクトに,第2部は美的にという展開が通常であったから,これ以前からそうだったということだったのかもと思わせる部分もあった。第2部でも途中でアブストラクトな感覚も混ざってくるが,この日の演奏でのKeith Jarrettはやや集中力に欠けるような気がするのも事実。だからこそ,第2部のアンコールで演奏される"My Song"や"Never Never Land"の方がいいと思ってしまうのだが。これを機会に別のブートで保有する1975年のブレーメンでのライブ音源でも試しに聞きなおしてみることにしよう。

Recorded Live at Juan-les-Pins, Antibes on July 25, 1979

Personnel: Keith Jarrett(p) 

2023年9月19日 (火)

Chick Coreaの小品集と言ってよい"Children’s Songs"

Childrens-songs "Children’s Songs" Chick Corea(ECM)

いろいろなアルバムで公開されてきた"Children's Song"を集大成したのがこのアルバムであった。私の記憶ではリアルタイムで聞いたのが"Friends"に入っていたのが最初だったように思うが,"Light as a Feather"に既に"Children Song"として1曲収録されているから,長い歴史の中で積み上げられてきたものであろう。

一番短い曲は38秒しかないし,長いものでも2分38秒であるから,まさに主題の通りの小品集である。私はこのアルバムがリリースされた時に,リアルタイムで入手していたが,その当時からへぇ~と思いつつ,Chick Coreaを聞くならこれからじゃないなぁと思っていた。もちろんピアノの響きは十分に美しいし,悪いとは思わない。でもプレイバックの回数が上がっていかないというのが正直なところであった。私が現在保有しているのは,ECMからのソロ・ピアノ作品を集成したボックス・セットであるが,買ってからこのアルバムをプレイバックしたかどうか...。しかし,一度曲集としてまとめてリリースしたくなったChick Coreaの気持ちはわからないでもない。

"Children's Songs"20曲の後に,ECMの総帥Manfred Eicherに捧げて"Addendum for Violin, Cello and Piano"が収録されているが,正直言ってしまえば,LPで聞いていた時代にこの曲を聞いた記憶に乏しい。その頃から既にプレイバック頻度が低かったことの証左であるが,まぁアルバム全体を通じてジャズと言うよりは,現代音楽的な響きが強いように思うが,当時の私はまだ現代音楽への耐性ができていなかったことも影響しているかもと今更ながら思う。

今は全然抵抗なく聞けるが,それでもこれからもプレイバック頻度が上がるとは思えないが,久しぶりに聞いてちゃんと聞けるアルバムであったことは再認識した私である。星★★★★。

Recorded in July, 1983

Personnel: Chick Corea(p), Fred Sheery(cello), Ida Kavafian(vln)

2023年9月18日 (月)

無駄遣いだと思いつつゲットした「危機」のUSオリジナル盤。

Close-to-the-edge "Close to the Edge" Yes(Atlantic)

長年聞いているこのアルバム。最初に買ったのは国内盤のLPであった。それが現在はCDに置き換わったが,私の人生の中で非常にインパクトの強かったこのアルバムをオリジナルで聞いてみたいという欲求がなぜか異常に高まってしまった。そこで,まずは結構初期プレスのはずのRCA Club Editionというのをゲットしたのだが,ジャケの状態は比較的いいものだったし,盤質もよかったのだが,私のしょぼいオーディオ・セットでも明らかに高音がきつい。イコライザーでごまかすという手もあるが,これでは全く納得がいかない。値段もそんなにしなかったのはその辺の理由によるものだろう。

音としてはこんなはずではないだろうということで,諦めきれずに次にゲットしたのが,音圧が高いと言われるUSオリジナル(所謂AT/GP刻印,Presswellプレッシング)であった。惜しくもマトリックスは両面Bであったが,それでも初期プレスであることには違いはないので結構な値段はした(大人買いである)。ジャケの状態はRCA Club Editionには負けるが,盤質は良好(若干のスクラッチ・ノイズはあるが,それほど気にならない程度。それがなければ完璧だったのだが...)のものだ。これが全く違う音が出てきて驚いたのだが,とにかく迫力が違う。しょぼいセットでもわかるのだから,この違いは明らかだと思ってしまった。

私はどちらかと言えば音楽は聞ければいいというタイプの人間なので,こういうのは無駄遣いだと思ってきたが,昨今のソフト購入枚数の減少の分を,こういう方につぎ込んだって感じか。それでも無駄遣いは無駄遣いであることには間違いないが...(苦笑)。

だからと言って,ほかのアルバムに関しても同じようなことをしようとは思わないが,それでもジャケが好きな"Relayer"の英国オリジナルも同時期にゲットしているんだから,ほかにも同じようなことをしてしまうかもなぁ。でも音楽としては圧倒的に「危機」の勝ち。何年経っても凄いアルバムだと再認識。こんどは改めてCDで聞いて比べてみよう。我ながらアホだよなぁと思いつつ,今回の買い物はある意味勉強になったと思っている。

2023年9月17日 (日)

「第三の男」:これを本当の傑作と言う。完璧だ。

Third-man 「第三の男("The Third Man")」(’49,英)

監督: Carol Reed

出演: Joseph Cotton, Valli, Orson Welles, Trevor Howard, Bernard Lee

先日「サムライ」の後に見たのがこの映画である。何も言うことのない不朽の名作であり,私の亡くなった父が度々この映画について話していたのを思い出す。

原作者Graham Greeneが書いたシナリオも素晴らしければ,サスペンスフルなCarol Reedの演出,オスカー受賞も当然と思わせるRobert Kraskerの光と影を駆使した撮影,そしてAnton Karasのチターによる音楽と,全てが素晴らしい。まさに私にとっては完全無欠の映画と言ってよい。

私はこの映画を何度も見ているが,見るたびに感心させられてしまう作品。オープニングからエンディングまでいくつもの印象的なシーンにも満ちた真の傑作。この映画を見ればウィーンという街への憧れも強くなる。星はいくつあっても足りない。

2023年9月15日 (金)

還暦過ぎてブルックナーの生演奏初参戦。

Mario-venzago

恥ずかしながら私はブルックナーの音楽と無縁なまま還暦を過ぎたのだが,ここに来てオーケストラの響きを生で聞きたいという欲望が増してきているのは,私がこのブログでクラシックのコンサートについての記事をアップすることが増えていることと無関係ではない。ロックにはロックの良さがあれば,ジャズにはジャズの良さがあるように,クラシックにはクラシックの良さがあるのだ。

ということで,私が今回行ったのが読響定期で演じられたブルックナーの交響曲4番であった。そもそも私はブルックナーのいい聞き手ではないどころか,これまでほとんど聞いたことがなかったというのが実態だ。しかし,私の周りにはブルックナー好きが存在していて,ようやく聞いてみるかとなったのは1年ちょっと前ぐらいだと思う。

そして臨んだのが今回のコンサートだったのだが,指揮したMario Venzagoは気のいい爺さんっていう感じであった。それはさておき,今回の演奏は周りの聴衆の熱狂具合に比べるとしっくりこなかったというのが正直なところであった。私にとっては聞いていて違和感が強かったのがなぜなのかよくわからなかったので,この演奏を聞かれたブルックナー通の方に聞いてみたのだが,非常にユニークな演奏だったそうだ。なるほどそういうことかと思ってしまった。ブルックナー初心者のような私にとっては,よりオーセンティックな演奏の方がピンとくるという感じだったんだなというところであった。結局は経験値の不足ということをよく理解したのだが,まだまだ修行が足りないってことだ(笑)。

ということで,私にとっては第一部で演奏された大編成現代音楽と言ってよさそうな,読響とも縁の深いスクロヴァチェフスキの交響曲の方が面白かったという結果になったのであった。

Live at サントリーホール on September 12, 2023

Personnel: Mario Venzago(cond), 読売日本交響楽団

2023年9月13日 (水)

Amazon Primeで見た「サムライ」。定冠詞付きのフィルム・ノワール。

Samourai 「サムライ(Le Samouraï)」(’67, 仏/伊)

監督:Jean-Pierre Melville

出演:Alain Delon, François Périer, Nathalie Delon, Cathy Rosier

初めてこの映画を見たのだが,何とも言えない雰囲気を持つ「ザ・フィルム・ノワール」と言ってもよい映画である。とにかくAlain Delonがカッコいいねぇ。当時の奥方,Nathalie Delonの映画デビュー作というオマケつき。

この映画,一匹狼の殺し屋を演じるAlain Delonは劇中,寡黙と言ってよい演技で通し, とにもかくにもAlain Delonをカッコよく見せることに成功している。そしてこの映画を非常に印象深いものとしているのがlain Delonが着用する帽子とコートの着こなし。これを見たらマネしたくなること必定だが,Alain Delonだからきまるのであって,私がやっても絶対に似合わない(当たり前だ!)。

とにもかくにも,非常に雰囲気のある映画であり,またそれを高めるのに貢献したのがピアニストを演じたCathy Rosierだろう。フランスのジャズ・クラブの雰囲気を醸し出しながら,Nathalie Delonよりも印象に残るのは彼女の方だと思ってしまった。

いずれにしてもAlain Delonのカッコよさを余すところなく捉えた快作。星★★★★☆。

2023年9月12日 (火)

Mike Stern~Jeff Lorber@Cotton Club参戦記。

Mike-stern-jeff-lorber-on-stage-at-cotto

Mike SternがJeff Lorber Fusionとの共演作"Eleven"をリリースしたのが2019年の秋口のことであった。その後,来日も予定されていた彼らだが,突然のパンデミックにより公演は中止となった。それから約3年半の時を経て,ついに彼らが来日し,Blue NoteとCotton Clubでライブを行った。私が行ったのは主題の通り,今回の最終公演となったCotton Clubでのライブである。ステージの並びはBlue Noteでも同様であったが,Blue NoteとCotton Clubの双方でライブがあるならば,常にCotton Clubを選ぶのが私の主義である。ハコのサイズの違いもあって,インティマシーが違うのだ。

私にとってはマイキーのライブは2019年以来,Jeff Lorberのライブは2016年以来ということで,実に久しぶりに彼らの演奏に触れることができた。

それでもってMike-stern-jeff-lorber-at-cotton-club今回のライブだが,これはMike Stern / Jeff Lorber Fusionではなく,Mike Stern Band Featuring Jeff Lorber and Leni Sternというのが正しいのではないかと感じていた私である。Cotton Clubの出演者告知も右の写真のように,Mike Stern Jeff Lorberだったしねぇ。もちろん,"Eleven"からの曲はやっていたが,Jeff Lorber が書いた"Motor City"なんて,アルバムのヴァージョンはJLF色濃厚だったものが,完全にマイキーの音にしてしまっていた。それが悪いというのではなく,マイキーのファンとしては「よし,よし」になってしまうのだが,ほかの演奏を聞いていると,アルバムでも感じたように,マイキーとJeff Lorberが共演することによるシナジーがもっとあって然るべきだったと感じていた。

だからと言って演奏は聴衆を興奮させるに十分だったが,Leni Sternを入れたのはどうだったかなぁって気がする。Mike Stern / JLFとするならば,本来ならホーンを一人入れるのが筋なのだ。私はLeni Sternのアルバムも結構評価しているので,彼女の演奏がどうこうという訳ではない。コンセプトが違うのだ。だから,冒頭,Leni Sternをフィーチャーした"Like a Thief"で幕を開けた時には,実は「おい,おい」と思っていたのだ。

一方,Jeff Lorberはキーボードでいけているフレージングを連発していたが,PAのバランスがあまりよろしくなく,バンドの音にそれが若干埋もれてしまっていたのは惜しかった。しかし,あのキーボード・プレイは実によかった。マイキーのギター抜きでフィーチャーされたのが"Rain Dance"が魅力的に響いたからこそ,Jeff Lorberはもっと目立ってもよかったと思う。

まぁ,今回は日頃からやっているメンツとは違うという感じで,各々のメンバーをフィーチャーするところもあって,いつものマイキーのバンドのライブとは雰囲気が若干異なっていたが,結局はマイキーの音に帰結していくというのが,マイキーのマイキーたる所以だ。アンコールはジミヘンをやって,その直後に"Satisfaction"のイントロを弾きだして,「冗談だ」と笑わせてライブは終了した。

マイキーは終始ご機嫌だったし,Leni Sternも聴衆の反応を楽しんでいたように思うが,Jeff Lorberが演奏中にあくびをかみ殺していたのは完全に時差ボケだなぁって感じであった。その割にフレーズがキレキレなのはさすがプロである。いずれにしても,マイキーの演奏にはついつい笑みが洩れてしまうライブであったと言っておこう。マイキー好きは結局楽しんでしまうのだが,それでももっと激しくやってくれという感覚は残ったが...。まぁ次は自分のバンドで来てくれることを待とう。

一点だけ文句を言っておきたいのは,アホな聴衆の存在である。Hadrian Feraudのベース・ソロの場面で手拍子するのはいいが,完全にリズムとずれとるやんけ!マイキーが手拍子をして修正を試みるも,全く改善せずのバカ聴衆には辟易とした。楽しむのはいいが,無駄な手拍子はお願いだからやめてくれ。まじで人の迷惑を顧みない恥知らずである。

Live at Cotton Club on September 11, 2023

Personnel: Mike Stern(g, vo), Jeff Lorber(key), Leni Stern(g, ngoni, vo), Hadrien Feraud(b), Gary Novak(ds)

2023年9月11日 (月)

Yazooはいいバンドだった。

_20230909_0002 "You and Me Both" Yazoo (Mute)

とかく音楽に関してはアメリカ指向が強い私でももちろん例外はある。Yazooなんてその例外に入るバンドである。エレクトリック・ポップなんてのはほとんど聞かない私だが,Yazooは"Upstairs at Eric's"が非常に好きで,結局2008年にリリースされたボックス・セットを仕入れたぐらいである。よって,このアルバムもそのボックスに入ったものなのだが,オリジナルのリリースがもはや40年前,ボックスのリリースからも15年も経っているというのは信じがたい。やはり加齢により時間の経過がどんどん早く感じてしまうのだ(苦笑)。

それでもって,このセカンド・アルバムにして最終作(その後,リユニオンしてライブ盤を出しているが...)である。編成が編成だけに,感覚的にはデビュー作と同様であるが,このセカンド・アルバムはデビュー作に比べると,曲のクォリティが少々落ちたように気がする。Alison Moyetの声は相変わらず魅力的だし,Vince Clarkeの作り出すサウンドにも特に文句はないのだが,"Upstairs"が持っていたキャッチーさに欠けるような気がする。

まぁ,これはバンドそのものが,このアルバムのリリース前に解体していたということもあって,二人の間に何らかの軋轢があったと考えることもできるから,そういう雰囲気を反映してしまった部分もあるだろう。アルバムとしてはそれでも十分楽しめるとは言え,ついつい"Upstairs at Eric's"と比べてしまうと,星としては★★★★がいいところだろう。ちなみに"Happy People"はAlison Moyetが歌唱拒否したので,Vince Clarkeがヘタウマ・ヴォーカルを聞かせている。Alison Moyetの歌唱力が高いため,このギャップには笑える。

ってことで,そのうち再結成ライブでも聞いてみることにしよう。

Personnel: Alison Moyet(vo, p), Vince Clarke(Noises, vo), The Sapphires(vo) 

2023年9月10日 (日)

Sonny Landrethのアルバムではこれが一番好きかなぁ...。完全に見直した。

_20230909_0001 "Outward Bound" Sonny Landreth (Zoo)

Sonny Landreth,スライド・ギターの名手である。しかし同じスライド・ギターではDerek Trucksの陰に隠れてしまって,どうしてもメジャーにはならない。しかし,John Hiattのバック等で聞かせるギターを聞けば,この人が凄いギタリストだということはわかるはずだ。そして,リーダー作も結構出しているが,決定的な作品がないというのが私の印象だ。長年やっているこのブログでも,彼のアルバムは"From the Reach"しか取り上げていない。ほかにもアルバムを保有しているにもかかわらずだ。これがミュージシャンズ・ミュージシャンの限界という気もするが,そんなSonny Landrethのアルバムで,多分私が最初に買ったのが本作だったはずである。

そしてこれを久しぶりに聞いてみると,かなり印象が違う。冒頭から強烈なギターが聞こえてきて,これはいいと思える。"From the Reach"は多彩かつ豪華なゲストを迎えて制作されていたのに対し,このアルバムは基本フォーマットがJohn Hiattのバックを務めたThe Gonersのメンツで固められており,基本はギター・トリオとしたところが成功の要因だと思える。ゲストもJohn Hiattは入っているが,ゲストは控え目にして,Gonersとしての感覚を出しているところがまとまりがあっていいのだ。また,ここで聞かれるSonny Landrethのスライドの技には相変わらずぞくぞくさせられる。

やっている音楽に比べると,ヴォーカリストとしてはテナー・ヴォイスなので,若干線が細くも感じられるが,それを補って余りあるギターの技である。まさにアメリカン・ロックの良さを感じさせてくれる。今までつれない扱いをしてきたこのアルバムだが,今回の再聴を契機に格納場所を格上げしよう(笑)。曲のクォリティにはばらつきがあるが,反省も込めて少々甘いと思いつつ星★★★★☆としよう。

Personnel: Sonny Landreth(vo, g), David Ranson(b), Kenneth Blevins(ds), John Hiatt(vo, g), Steve Conn(org, accor), Sue Medley(vo), Marce Lacouture(vo)

2023年9月 9日 (土)

バスクラ好きの私だが,このCourtney Pineのアルバムは何度聞いてもよくわからない...。

_20230908_0001 "Europa" Courtney Pine (Destin-E)

私はバス・クラリネットの響きが結構好きである。このアルバムを購入したのも全編でCourtney Pineがバスクラを吹いているからというところが最大の要因であった。しかし,そんな私もこのアルバムは何度聞いてもよくわからない,と言うかピンとこない。買ったのは随分前だが,まったくブログにアップできなかったのは,それが理由と言ってもよい。

なぜなのかとか考えると,それはこのアルバムに収められた曲の中近東的な響きを持つメロディ・ラインにあるのではないかと思ってしまう。私は例えばLionel Louekeのアフリカン・テイストをよしとしないということはこのブログにも何度か書いている。このアルバムに聞かれる異国情緒のようなものがどうしても違和感をもたらしているのだろうと思えてしまうのだ。

アドリブ・パートになって,必ずしもそうした異国情緒を感じさせなくなると,まぁ聞けるかなとも思うのだが,主題に戻るとやっぱりこれは自分には合わないと思ってしまう。結局,これは私が得意としない類の演奏であり,いくらバスクラ好きでもダメだったというアルバム。自分の嗜好に合わないだけなので,星を付けるのはやめておこう。

Personnel: Cortney Pine(b-cl, synth, org, harmonium, perc), Shabaka Hutchins(cl), Omar Puente(vln), Amanda Drummond(vla), Cameron Pierre(g, mandolin), Dominic Grant(g), Zoe Rahman(p), Alec Dankworth(b), Mark Mondesir(ds), Robert Fordjour(ds, perc)

2023年9月 8日 (金)

久しぶりに聞いたChick CoreaとHerbie Hancockのデュオ・ライブ

Corea-hancock"An Evening with Chick Corea and Herbie Hancock" Chick Corea / Herbie Hancock (Polydor)

これは確か父の遺品のはずだ。もともとこのデュオのライブはColumbiaレーベルから,Herbie Hancock / Chick Coreaという名義で既に出ていたところに,こちらは当時のChick Corea所属のPolydorからリリースされたもの。Columbia盤と曲のダブりは"Maiden Voyage"と"La Fiesta"のみというのはまぁいいだろう。そのせいもあるが,Columbia盤とは随分と雰囲気が違う。バルトークの"Microcosmos"をやっていることもあるが,こっちの方が演奏はアブストラクトな感覚が強い。それをどう捉えるかによって,Columbia盤との好き嫌いはわかれるだろう。

まぁ大物二人の競演であり,当時は「世紀の競演」なんて騒がれたようにも思うが,その後も何度かこのデュオはライブで演奏をしたから,まぁ最初の頃の鮮度は徐々に薄れていったというのが実態だろう。それでも当時は結構大騒ぎになっていた記憶があるし,確か東京での演奏は武道館だったはずだしねぇ。

演奏のクォリティには別に文句はない。しかし,このCDについては,"Maiden Voyage"と"La Fiesta"に編集を施したところはどうなのかねぇと思ってしまう。まぁ,Columbia盤にも入っているからということはあるかもしれない。しかし,アナログ2枚組に収められたこの2曲よりもだいぶ演奏時間が短くなっている。CDを2枚組にするほどではないという判断もあっただろうが,それなら演奏には大差ないのだから,アナログでもこの2曲そのものも省いてもよかったようにも思えるのだ。そうは言いつつ,Polydorとしてはこの2曲抜きでは売れ行きに影響すると考えるのも無理はないが,CD化に際してのこの編集はやはりいただけない。

いずれにしても,残り物にしておくのはもったいないというのは事実だとしても,やはりColumbia盤に比べると存在感が薄いのはいかんともしがたい。演奏に免じて星★★★★とするが,商売っ気が感じられすぎると思うのは私だけではあるまい。

Recorded Live in San Francisco, Los Angeles and Ann Arbor in February1978

Personnel: Chick Corea(p), Herbie Hancock(p)

2023年9月 7日 (木)

聞けば聞くほど燃えてしまうPhil Woods & His European Rhythm Machine。

_20230906_0001 "Alive and Well in Paris" Phil Woods and His European Rhythm Machine (Pathé)

血沸き肉躍るって感じのアルバムである。冒頭の暗殺されたRobert Kennedyに捧げた"And When We Are Young"からしてメランコリックでありながら,激しいブロウに転むずむずしてくる大概のジャズ好きはしびれてしまうのではないかと思ってしまう。まぁ,全編を通じて一本調子だ,オーバー・ブロウイングだと言ってしまえばその通りかもしれない。しかし,この身体がむずむずしてくる感覚は貴重だと思う。そうは言っても,このアルバムのハイライトは"And When We Are Young"なのだが。

それにしても,昨今は私も欧州ジャズをかなり聞くようになったので,ここでのバッキングを務める3人は,今となっては欧州におけるビッグネームではないかと思えるとしても,このアルバムが出た当時は,欧州のミュージシャンの実力の高さを認識させる効果もあっただろう。そうした意味で実に意義のあるアルバムだったと思ってしまう。それも含めて星★★★★★としてしまおう。改めて聞いて興奮してしまった私である。

Recorded on November 14 & 15, 1968

Personnel: Phil Woods(as), George Gruntz(p), Henri Texier(b), Daniel Humair(ds)

«Elton Johnのゴージャスなライブ・アルバム。

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