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2020年8月13日 (木)

Paul Bleyの”Fragments":ECMの本領発揮って感じの音。

_20200812 "Fragments" Paul Bley(ECM)

正直言ってしまうと,私はPaul Bleyと相性があまりよくない。この人のアルバムを聞いて,これは凄いって思ったことが実はないのだ。そういうこともあって,実はこのブログでもPaul Bleyはあまり取り上げていないのも仕方がないのである。ECMでのアルバムは全部ではないとしてもそこそこ保有しているが,この人のアルバムを聞く頻度は決して高くない。結局苦手なのである。

そんな私が久々に取り出したのが本作なのだが,基本は幽玄な響きを聞かせながら,"Line Down"などではアブストラクトな路線も聞かせるという一方,Carla Bley作の"Seven"等では美的に迫ってくるこのアルバムは,普通の人にとっては結構ハードルが高いと思わせるに十分である。だが,ここでのメンツの組み合わせなんて,まさにECMの妙とでも言うべきものであり,こんな編成はECM以外では絶対にありえないものなのが,ECMのECMたる所以だろう。

本作のライナーには珍しくもSteve Lakeによる長文が寄せられている。私が不勉強なだけかもしれないが,ECMではNew Series以外ではあまりライナーへの寄稿は見たことがないような気がする。しかも書いているのが,Manfred Eicherがプロデュースしないようなフリー系ミュージシャン(?)のアルバムの制作担当をしているSteve Lakeである。アルバムを聞いていて,なんだかECMにしては雰囲気が違うと思うと,Steve Lakeがプロデューサーだったって経験は何度かしたことがあると思う。だが,このアルバムはSteve Lakeはあくまでもライナー担当で,音楽に関してはEicherの美学炸裂って感じというのが率直な思いである。

決して難解ではないのだが,ハードルが高い。しかも普通の一般的なジャズとは全然違う。そういう音楽であり,このアルバムは特定のリスナー(かつ結構限定的だろう...)には訴求しても,大多数の人にとっては「何のこっちゃ」にしかならないと思えるのだ。だが,ECMというレーベルの音楽をかなり聞いていれば,こういうのが苦にならなくなるのである。苦にならないどころか,むしろ快感になってくるのではないかという感覚と言ってもよい。世の中は猛暑に襲われているが,これを聞けば,8割方の曲で冷気が漂ってくる感じがするってところか。気まぐれで聞いたのだが,部屋の温度が数℃は下がった気がした私であった。星★★★★。

Recorded in January 1986

Personnel: Paul Bley(p), John Surman(ss, bs, b-cl), Bill Frisell(g), Paul Motian(ds)

2020年8月12日 (水)

Amazon Primeで「シャレード」を見た。多分初めて見たなぁ。

Charade「シャレード(”Charade")」(’63,米,Universal)

監督:Stanley Donen

出演:Cary Grant, Audrey Hepburn, Walter Matthau, James Coburn, George Kennedy, Ned Glass

前にも書いた通り,昨今のAmazon Primeでは結構古い映画が見られるのが楽しいのだが,今回選んだ「シャレード」なんて,Herny Manciniが書いた主題曲は皆知っているだろうって感じだが,私はこの歳になって,この映画を見たのは初めてではないかと思う。私にとってAudrey Hepburnは「ローマの休日」が全てみたいなところがあるが,それでもCary Grantが出ているのだから,小じゃれた展開になるのは必定と思っていたら,案の定,ロマンティックなコメディ・タッチのサスペンスというお腹がいっぱいになるような映画であった。

正直言ってシナリオが無茶苦茶(本当に無茶苦茶なのだ)だという点については目をつぶろう。なぜならば,ここでのAudrey Hepburnはいかにもキュートなのだ。「ローマの休日」の時の清楚さから転じて,小悪魔的と言ってもよい彼女の魅力こそが,この映画の売りだろう。まぁ,Cary Grantはこの映画の頃は還暦近いが,一方Audrey Hepburnは34歳ぐらいであるから,親子ほどの年の差があるのだが,これを成り立たせるのはCary Grantの洒脱さ故なのは当然としても,清楚なだけではないちょっと大人な感じのAudrey Hepburnの魅力が大きいと思った。

途中で大体誰が一番のワルかはわかってしまうのだが,いかにも悪役的なJames CoburnとかGeorge Kennedyが結構笑える。こういうストーリー展開でも許されるいい時代だったと言わざるをえないが,それでもこのおしゃれな感じはAudrey Hepburn主演映画らしいよなぁとつくづく思ってしまった。ジバンシーのコスチュームをパリの街並みでAudrey Hepburnが着こなせば,それだけでおしゃれに決まっとろうがというところ。いずれにしても,他愛はないものの,古き佳き時代の映画って感覚を味合わせてもらった。星★★★★。

余談ながら,映画の途中で,Cary GrantがAudrey Hepburnに向かって"On the Street Where You Live"というセリフを言うシーンがあったが,この映画の撮影中には"My Fair Lady"の主演が決まっていたってことなんだろうなぁと思っていた私であった。

2020年8月11日 (火)

やはりDonny Hathawayのライブは最高なのだ。

_20200810"In Performance" Donny Hathaway(Atlantic)

私が長年愛聴しているのがDonny Hathawayの”Live"である。あれを最高と言わず,何を最高と言うのかというぐらいしびれるアルバムであるが,本作は”Live"と同じ時の音源を中心に,Donny Hathawayの死後にリリースされたライブ・アルバムである。残りテイクと言ってしまえばその通りなのだが,これまた実にしびれるアルバムなのだ。特に冒頭の”To Be Young, Gifted and Black"なんて鳥肌もの。もはやこれはゴスペルの世界とさえ言いたくなる歌だが,聴衆が大騒ぎするのも当然である。それぐらい強烈なのだ。それに続く"A Song for You"も絶唱である。この歌のうまさは尋常ではない。本当のソウルを感じる。

私はこの2曲だけでもこのアルバムは買う価値があると思っているが,全編に渡って素晴らしい演奏,歌唱の数々である。3曲目の"Nu-Po"はインストとなっているが,Donny Hathawayのエレピの響きというのがこれまた心地よいのだ。この曲だけCarnegie Hallでの演奏で,ほかのクラブでの演奏とは雰囲気が違うのだが,エレピのグルーブも楽しめることは言うまでもない。

4曲目だけがNYCのBitter Endでの演奏だが,これがまたソウルを感じさせる名唱。それに続く”We Need You Right Now"も"Sack Full of Dreams"も残りテイクと言うにはあまりにももったいないもので,"Live"と同様に聞かれるべきものである。

もちろん,スタジオ音源だって十分に魅力的なものと思いつつ,それでもやはりDonny Hathawayはライブが素晴らしいのだと改めて思ってしまった。星★★★★★。まじで惚れ惚れしてしまった。これを聞いて,Donny Hathawayのビター・スウィートとでも言うべき魅力を語り合えない人とは,私は友人にはなれないな(きっぱり)。

こうなったら次は既発音源と未発表音源を組み合わせた”These Songs for You, Live!"も久々に聞かない訳にはいかなくなって(笑)。

Recorded Live at the Troubador. the Bitter End(track 4) and the Carnegie Hall(track 3)

Personnel: Donny Hathaway(vo, el-p, p), Phil Upchurch(g), Mike Howard(g), Cornell Dupree(g), Gil Silva(g), Willie Weeks(b), Bassie Saunders(b), Fred White(ds), John Susswell(ds), Earl Derouen(conga), Leslie Carter(conga), Richard Tee(org)

2020年8月 8日 (土)

オリジナル「猿の惑星」を見るのは何年ぶりだろうか?

Planet-of-the-apes「猿の惑星("Planet of the Apes")」(’68,米,Fox)

監督:Franklin J. Schaffner

出演:Charlton Heston, Roddy McDowall, Kim Hunter, Maurice Evans, Linda Harrison

実に懐かしい映画である。この映画がBSで放送されていたので録画して見たのだが,この映画を見るのは何年ぶりなのだろうか。私の記憶の中では,荻昌弘がMCだった「月曜ロードショー」で,当時は珍しかったノーカット放送が行われたのが私が小学生5年生か6年生ぐらいの頃だったはずである。更に私の記憶が正しければ,37%とかのとんでもない視聴率を叩き出したはずである。みんなこういう映画をTVで見たいと思っていたのねということの裏返しかもしれないが,その後,私がこの映画をちゃんと見たかどうかというとあまり自信がない。

いずれにしても,今回,かなり久しぶりに再見した訳だが,この映画,ラスト・シーンの印象が強過ぎて,途中の展開については覚えているところもあれば,ほとんど記憶にすらないと思ってしまったシーンがあったのも事実である。まぁ,最初のTV放送からも相当な年月が経過しているし,老境に達して記憶力の低下に悩む私としては不思議なことではない(苦笑)。今にして思えば,特殊メークも実にプリミティブな感じだが,それでも当時は担当したJohn Chambersはオスカーも獲ったし,凄い,凄いと言われていたのも懐かしい。もはや50年以上前の映画なのだから,それも当然だが,その当時に思いを馳せて改めて見ていたら,ついつい寝る時間が遅くなってしまったではないか(笑)。やはり。私も同時代感を覚えるものに対して強い郷愁を感じる年ごろなのだ。

ストーリーはかなり無茶苦茶と言ってもいいし,Charlton Hestonがマッチョな行動パターンを取りたがるところは笑ってしまうところもあるとしても,結構よく出来ていたなぁと改めて感じさせてくれた映画である。結局シリーズ化されて5作も作ってしまったのはどうなのよとは思うが,それぐらい当時は人気のあるフランチャイズだったということである。2作目はダメダメで,3作目はストーリーで何とか持ち直し,4作目はまぁまぁだったが,5作目は駄作中の駄作と堕したという感じだったと思うが,この1作目は見るに値する映画だったと思った私である。夜中まで見続けてしまうところにそういうところが表れていると思うが,それは結局ラスト・シーンが見たかったからではないかって言われればその通りかもしれない。それぐらいインパクトの強いラスト・シーンを描いたシナリオを褒めることにしよう。星★★★★。

たまにこういう映画を見るのも楽しいなぁってつくづく思った私だが,これの前日には「パットン大戦車軍団」を録画しているので,追々見ることにしよう。実は「パットン大戦車軍団」はオープニングは記憶しているが,全編見たことがないはずなのだ。ってことで,音楽だけでなく,映画も温故知新モードに入るとするか(笑)。

2020年8月 7日 (金)

Laura Marlingの新作の媒体到着!やっぱり最高だ。

_20200803-3 "Song for Our Daughter" Laura Marling (Chrysalis)

この音源を先行公開のストリーミングで聞いて最高だと思った私である(記事はこちら)。そこにも書いた通り,「現物が出たら買う」という初志を貫徹し,現物がデリバリーされたので早速聞いているのだが,これが本当によい。本国である英国のメディアも大絶賛であるが,これは英国に限らず,グローバルで普遍的な魅力を持つ音源と思える実に素晴らしい作品である。但し,言っておかねばならないのはこれが売れるとは限らないということだ。いい音楽は必ずしも売れる音楽にはならないが,本作などは日本においてもちゃんと売れて欲しいと思ってしまった。

Laura Marlingという人はEthan Johnsをにプロデューサーに迎えることによって,完全にその才能を開花させたと思う。Ethan Johnsが関わっていないファースト・アルバムにはまだ青臭さを感じさせるが,プロデューサーによってこれほど変わるのかと思わせるほどレベルに変化が生じたと思うのだ。

本作はEthan JohnsとLaura Marlingの共同プロデュースとなっているが,ここでもいい曲を書き,しかもいい声で歌うねぇという感じである。彼女が書き,歌う曲を聞いていると,Joni Mitchellとの同質性すら感じてしまうぐらいこの人は優れていると私は評価したい。落ち着いて聞くと,曲によってクォリティに若干のバラツキもあるように感じない訳でもないのだが,私はこの音楽は全面的に評価なのだ。惚れた弱みで星★★★★★。もはや彼女はこの分野で,現在最も信頼に値するミュージシャンの一人であると言っておこう。歌詞はこれからゆっくり吟味することにしよう。

それにしてもChrysalisというレーベル名は久しぶりに聞いたが,まだ残存していたんだねぇ。そして,Chris Hillmanの名前をクレジットに見出すことの懐かしさ。ミュージシャン同士,やっぱりわかる人にはわかるのだ。

Personnel: Laura Marling(vo, g), Dan See(ds), Nick Pini(b), Ethan Johns(ds, continuum, g, synth, perc), Anna Corcoran(p), Dom Monks(loop), Chris Hillman(pedal steel), Gabriel Cabazas(cello), Robert Moose(strings)

 

2020年8月 6日 (木)

”Mostly Ballads”:こういうのがバーでかかっていたらしびれるよねぇ。

_20200804"Mostly Ballads" Steve Kuhn(New World)

Steve Kuhnはいろいろなスタイルで演奏をできる人なので,リスナーとしてはどの辺りが好みかというのを決めてもいいし,いろいろなスタイルをそれぞれ楽しむって感じでもいいと思う。私の場合は後者だが,これなんか主題の通り,バーとかで小音量でプレイバックされていたら,店主の趣味を褒めたくなること必定というような「ほぼ」バラッド集である。あくまでもタイトル通り「ほぼ」なので,小粋なミディアム・テンポの曲もある。それがまたいい塩梅なのだ。

やっているのは有名曲ばかりなので,それをKuhnのソロ,もしくは半数の曲で加わるHarvie Swartzとのデュオでどのように料理するかというのが楽しみとなるが,実に美しく仕上げつつ,若干の毒も仕込んであるというところである。曲で私が知らなかったのは"Yesterday's Gardenias"という曲だが,元々Glen Millerがやったらしく,その後,Stan GetzやSerge Chaloffとかも取り上げているらしい。へぇ~って感じである。

本作においては,1曲最長5分43秒,2分台の曲も12曲中5曲もあるということで,比較的あっさりとした演奏ではあるものの,密度は濃いと感じさせるものなのだ。こんなのは所謂カクテル・ピアノではないかという指摘もあるだろう。しかし,凡百のピアニストが"Danny Boy"のような曲を弾いてもこうはならないはずだ。ちゃんとSteve Kuhnの美学が反映されているのだ。

繰り返しになるが,こういう音楽が店でプレイバックされていたら,確実に嬉しくなる。新型コロナウイルス禍により,飲み屋にも行っていない私だが,居酒屋,そば屋,中華料理屋,ありとあらゆるところで有線からモダン・ジャズがBGMとして流れている頃に対する違和感をずっと感じていたことは前にも書いたと思う。だが,本当の趣味のよさってのはこういうアルバムをプレイバックしてこそ表れると考えるべきだろう。

いずれにしても,以前取り上げたSteve Kuhnのほぼ映画音楽集,"Jazz 'n (E)motion"(記事はこちら)同様,夜にしかフィットしないとも言えるが,こういう音楽を聞いているとついつい酒が進んでしまう私である。星★★★★☆。

Recorded on January 3, 1984

Personnel: Steve Kuhn(p), Harvie Swartz(b)

2020年8月 5日 (水)

温故知新は続く:今日は"Jazz at Massey Hall"のDefinitive Editionだ。

_20200803 "Complete Jazz at Massey Hall" Charlie Parker (Jazz Factory)

多くのジャズ・ファンにとってMassey Hallという場所は,行ったことはないとしても,名前は聞いたことがあるという場所ではないだろうか。Venueという意味では,ヴァンガードとか,カフェ・ボヘミアとか,ファイヴ・スポットというクラブ名称の方が響きとしてはいいのは間違いないが,なぜこのMassey Hall,しかもカナダはトロントという場所にあるこのコンサート・ホールがこれほど多くのジャズ・ファンに知られているかと言えば,この音源が録音されたからにほかなるまい。

ジャズに関する古い音源,特にバップを語る場合,本作とかCharlie ChristianのMinton's Playhouseでの音源が出てくるのが当然と思われていた。ただ,Charlie Christian盤なんてのは,現代人にとっては音がひど過ぎて,その価値を理解できるのかと言えば,実は疑問を感じている。なぜならば,40年近く前にその音源を聞いた私でさえ,音のひどさに辟易としてしまった方が勝ちなのだ。歴史的,音楽的な価値はあるかもしれないが,それを受け入れられるほど,約40年前ですら,現代人(私だけ?)は寛容ではなかった思うのだ。あるいはわかっていなかっただけかもしれんが...。

しかし,温故知新と言うのであれば,Charlie Parker入りのこのライブ盤は避けて通れないよなぁってことで,今日はこれである。"Jazz at Massey Hall"は言わずと知れたバップの巨人が集結したライブ盤であるが,Charles Mingusが訳のわからないオーバーダビングを施したことによって,雰囲気が変わってしまうという不思議な印象を残したことはその筋では知られた話である。

本作はそのオーバーダビングを排し,演奏当日の曲の並びを極力再現するという高い志で作られた「決定盤」と言ってよいと思うが,こういう音源を作る会社が長続きはしていなさそうなのは実に残念である。このアルバム,ライナーもしっかり作られていて,リリースしたスペインの会社のCharlie Parker愛が感じられるのだ。今でも入手は難しくないが,あくまでも売っているのは「在庫処分品」ということだろう。

ライナーによれば,この決定盤とは言っても,音源が残っていない演奏がまだあるそうである。しかし,ここで聞けるものがほぼその日の全貌ってことになるが,The Quintetによる演奏には新発見はない。しかし,Mingusのオーバーダビングを排しただけでなく,Parker,Gillespie抜きのBud Powellトリオ,それにMax Roachのドラム・ソロまで入っているのだから,芸が細かいのである。ラテン系は雑なイメージがある(爆)が,何ともしっかりした仕事ぶりってところだろう。

この演奏が行われたのは1953年なので,Charlie ParkerにとってもBud Powellにとっても全盛期は過ぎていると言ってよい時期だが,それでもここまでくると名人芸の領域である。音は決していいとは言えないが,聞くには問題ないレベルだし,ライブの熱気が伝わるという点では,実に貴重なアルバムだと言える。

_20200803-2 私はこのアルバムをLP時代から保有していたが,現在保有しているCDは今日ご紹介の「決定盤」と,国内盤で出たそちらもオーバーダビングなし版である。しかし,この2枚,曲の並びが違うのだ。私としては情熱具合からして,「決定盤」の方の並びが正しいと思うが,真相は?である。しかし,そんなことは無視しても,この演奏は強烈。バップの巨人の最後の輝きと言ってはいかんが,ここでの強烈なアドリブを聞いて燃えない人間がいるのか?と言いたくなってしまう。

Charlie Parkerを聞くなら,SavoyやDialを聞くのが正しいとは思うが,音がねぇって思った時に,本作はまだまともに聞けるレベルだと思っていたのが私の若い頃。今となってはこういう演奏が聞けることに感謝したくなるのが,老境に達しつつある私。もちろんこれもしょっちゅう聞こうとは思わないが,歴史的な観点からすればやっぱり星★★★★★だよなぁ。

甚だ余談ではあるが,初めてトロントに行った時,Massey Hallの前を通って,おぉ,これがあのMassey Hallかと思ったのも懐かしい。

Recorded Live at Massey Hall, Toronto on May 15, 1953

Personnel: Charlie Parker(as), Dizzy Gillespie(tp), Bud Powell(p), Charles Mingus(b), Max Roach(ds)

2020年8月 4日 (火)

今日の温故知新は”Bag's Groove”。

_20200802-2 "Bag's Groove" Miles Davis(Prestige)

モダン・ジャズのクラシックと呼ぶべきアルバムも,実生活の中ではプレイバックの回数が減っているのは疑いようのない事実である。だが,たまに取り出して聞くと,実に魅力的に響いてしまう。現代のジャズには現代のジャズの魅力があるとしても,こうしたクラシック・アルバムを聞くと,ジャズという音楽の長い歴史の積み上げの上に,現代のジャズが成り立っているのだという当たり前のことを改めて感じざるを得ない。

とか何とかいいながら,私がこのアルバムを聞くのは何年ぶり?みたいな感じなので,決して偉そうなことは言えないのだが,久々に聞いてみて,やはりこの辺りのアルバムの魅力は絶対的だったなぁと思ってしまう。冒頭の"Bag's Groove"からして,晩年のMilesとは音もフレージングも全然違うし,テイク1のソロの構成力なんて信じがたい。バンドとしての演奏のレベルの高さも半端ではないが,この曲における実に訥弁なThelonious Monkのソロを聞いて,あぁそうだったなぁなんて思った私である。MonkはどうやってもMonkなのだ。そういうことに改めて気づかされる。これこそ温故知新である。

そして3曲目以降はピアノがMonkからHorace Silverに代わり,更にSonny Rollinsの加わった曲になるが,スタンダード"But Not for Me"を除けば,”Airegin","Oleo",そして"Doxy"というRollins有名オリジナルを収めているところに,Rollinsにとっても重要なアルバムな訳だ。そうは言っても,Rollinsのソロもまだまだ若いねぇって感じ(はっきり言ってまだまだ青臭い感じがする)があるのが実に新鮮なのだ。John Coltraneもそうだが,ミュージシャンが急速,あるいは急激な進化を遂げる瞬間というか,そういうタイミングがあるってのをここでのRollinsを聞いていると強く感じるのだ。

振り返れば,私もジャズを聴くようになって40年以上になるが,若い頃ははっきり言ってカッコつけて聞いていただけだったなぁと今更ながら思う。しかし,ジャズ喫茶での修行やら,その後の幾星霜を経て現在という時間になっても,あぁそうだったのかって感じることができるジャズという音楽の永続的な魅力を痛切に思い知らされるのは,こういうクラシック・アルバムのおかげと言いたくなってしまった。アルバムとしては冒頭の”Bag's Groove(Take 1)"が緊張感という観点でも突出していて,アルバム全体として聞くと,評価は若干微妙な部分もあるというのが正直なところだが,それでもやっぱりこれは星★★★★★しかないだろうな。

Rollinsと言えば,「サキコロ」も何年も聞いてないねぇ...。そのうち,当ブログにも登場するかもなぁ(笑)。でも書きようがないか(爆)。

sRecorded on June 29 and December 24, 1954

Personnel: Miles Davis(tp), Sonny Rollins(ts), Milt Jackson(vib), Thelonious Monk(p), Horace Silver(p), Percy Heath(b), Kenny Clarke(ds)

2020年8月 3日 (月)

これも久々に聞いたら,またもスリリングな響きに痺れてしまった"Extensions"。

_20200802"Extensions" Dave Holland Quartet(ECM)

このアルバムを聞くのも久しぶりだったのだが,これほどスリリングでカッコいい音楽だったのか...と絶句してしまった私である。はっきり言ってしまおう。このアルバムの鍵を握るのはKevin Eubanksである。後にPrismのメンバーとして改めてDave Hollandと共演するKevin Eubanksの鋭いギターが,このアルバムのスリルを倍加させたと言っても過言ではない。Prismも素晴らしいアルバムだった(記事はこちら)が,このアルバムも同列に並べたい。

そもそもSteve ColemanやMarvin "Smitty” Smithというメンバーからも鋭い演奏になるのは想定できる。しかし,ここでのKevin Eubanksが加えたギターの音は,実に刺激的であり,PrismにKevin Eubanksを呼んだのも,Dave Hollandがこのアルバムでの共演を忘れられなかったのではないからではないかとさえ思ってしまった。

全6曲をHolland,Coleman,Eubanksがオリジナルを2曲ずつ提供して構成しているが,これはどこから聞いても刺激的で実に素晴らしいアルバム。こういうのはもっと頻度を上げて聞かねばならん!と改めて思った次第。反省も込めて星★★★★★。次は"Triplicate"でも聞くか(笑)。

Recorded in September 1989

Personnel: Dave Holland(b), Steve Coleman(as), Kevin Eubanks(g), Marvin "Smitty” Smith(ds)

2020年8月 2日 (日)

久しぶりに聞いたらタイトル・トラックのスリリングな響きに引き込まれてしまったEnrico Rava盤。

_20200730 ”The Pilgrim and the Stars" Enrico Rava (ECM)

ECMレーベルもリリースされるアルバムの数が多過ぎて,さすがに最近はストリーミング頼みになり,買うアルバムも随分減ったと思う。そうは言いながら,過去にリリースされたアルバムは結構な枚数を保有しているのだが,家人の言葉を借りれば,「いつ聞くの?死ぬまでに一回も聞かなんじゃない?」ということになってしまう可能性なきにしもあらずである。保有しているアルバムは記憶しているつもりだが,しょっちゅう聞くって感じのアルバムはそう多くはないのも事実だ。

Enrico RavaのECMのアルバムも結構な枚数になっているし,私もほぼ保有していると思うが,プレイバックの回数が多いかと言えば,必ずしもそうでもない。実のところ,RavaのアルバムではVenusレーベルの"Renaissance"をプレイバックする回数の方が多いのではないかとさえ思ってしまう。だが,こうして久しぶりに聞いてみると,タイトル・トラックのECMらしい出だしから始まって,熱を帯びてくる展開に痺れてしまった。今回久しぶりに聞いてみて,編成も同じということもあり,Paolo FresuのDevil Quartetの源流はこの辺にあったのではないかなんて思ってしまった。

まぁ,ここに揃ったメンツを考えれば,間違いないよねと思うのが普通なのだが,やっぱりこれはよい。私がラッパのワンホーン好きというのも影響しているところは多分にあるが,この硬派な(と言っても「どフリー」ではない)サウンドには痺れる。ECMの比較的初期のアルバムであり,既にリリースから45年を経過しているのに,全く古さを感じさせないって凄いことである。ちゃんと昔のアルバムも聞かないといかんという反省と自戒も込めて星★★★★★としてしまおう。Ravaのラッパの音は素晴らしいし,マジでカッコいいですわぁ~。

Recorded in June 1975

Personnel: Enrico Rava(tp), John Abercrombie(g), Palle Daelsson(b), Jon Christensen(ds)

2020年8月 1日 (土)

ようやくデリバリーされたJoshua Redman Quartetのリユニオン・アルバムなのだが...。

Roundagain "RoundAgain" Redman Mehldau McBride Blade(Nonesuch)

本国でリリースされていながら,ちっともデリバリーされなかった本作がようやく到着である。コロナ禍の影響がないとは言わないが,それにしても時間が掛かり過ぎで,イライラさせられた。最近のAmazonは新譜がまともにデリバリーされたことがないのはどういう了見かと文句も言いたくなる。

それはさておき,このメンツが集結するのは94年に"MoodSwing"をリリースして以来なので,四半世紀以上ぶりということになるが,当時の若手が,今や現代のジャズ界を支える面々となってのリユニオンである。期待するなって方が無理である。そういう意味では,今年一番の話題作,注目作と言ってもいいぐらいの作品だろう。よって,私としてもCDがデリバリーされる前からストリーミングで期待しながら聞いていたことは言うまでもない。

既にストリーミングで聞いていた時から音の具合はわかっていたのだが,やはり媒体で聞いてみないとわからない部分もあるだろうということで,記事にすることは控えてきた私である。ようやくアルバムを我が家のオーディオで,家人がいないことをいいことに「相応の音量」で聞き直した訳だが,期待値が大き過ぎたかなとついつい思ってしまったというのが正直なところである。

聞いた感じで言えば,ストリーミングで聞いていた時よりは,音の粒立ちが違うこともあって印象はやや好転したのだが,聞き進むにつれて,ストリーミングで聞いていた時にも思っていた感覚が甦ってきたのである。はっきり言ってしまえば高揚感がないのだ。このメンツであれば,オーディエンスをワクワクさせるような演奏を展開できると思うが,最大の難点は曲があまり面白くないことではないか。アドリブ・パートはいいとして,どうも没入できない。贔屓の引き倒しと言われそうだが,私がいいと思えたのは結局Brad Mehldauの2曲なのだ。

演奏のレベルの高さはケチのつけようがないところなのだが,特にJoshua Redmanのオリジナルがイマイチだなぁという感覚に囚われ続けてしまう私である。更に言わせてもらえば,リズム・セクションに比べて,Joshua Redmanの吹奏も音色も魅力的に響かないのである。94年にはリーダーであったJoshua Redmanが今や一番つまらないと思わせるというのが象徴的な気もするが,私にとってはもう少しやれたのではなかったのかと思ってしまうのだ。今や,各々がリーダーとして活躍しているから,Joshua Redman Quartetではなく,4人の連名表記となっているのも仕方ないと思わせるというところか。こういう表記を見ると,私なんかはAnderson Bruford Wakeman Howeを思い出してしまうねぇ(笑)。

はっきり言ってしまえば,このメンツならこれぐらいできて当たり前。オーディエンスは我がままだから,更なる高みを求めるのだが,彼らに期待する高みに達していないのが残念なのだ。これではJames Farmの方がずっとよかったと思えてしまったのが残念である。今回に関しては,いくら私がBrad Mehldauの追っかけだからと言って,何でもかんでももろ手を挙げて最高と言うつもりはないってことだ。Brad Mehldauの演奏については特に文句はないとしても星★★★☆が精一杯。はぁ~。

Recorded on September 10-12, 2019

Personnel: Joshua Redman(ts, ss), Brad Mehldau(p), Christian McBride(b), Brian Blade(ds)

 

2020年7月31日 (金)

Amazon Primeで見た超クラシック映画「上海特急」。

Shanghai-express 「上海特急("Shanghai Express")」('32,米,Paramount)

監督:Josef von Sternberg

出演:Marlene Dietrich,Clive Brook, Anna May Wong, Warner Oland, Eugene Pallette

昨今はAmazon Primeで結構古い映画が見られるようになって,CG全盛の時代に古き良き時代の映画を見直せるのは実にありがたい。まぁそうは言ってもチョイスは限られているが,今まで見たことのないようなクラシックな映画を見る機会ができたことは嬉しい限りである。こうなったら,著作権切れの映画は全部アップして欲しいものだが,そうもいかないか...。

この映画,制作されたのは1932年。トーキー初期と言っても過言ではないが,北京発上海行きの特急を舞台にしながら,一筋縄ではいかないラブ・ストーリーになっているのが実に面白かった。画質についてはどうこう言えるものではないが,60インチ近い液晶で見ると,さすがに画像が厳しいので,むしろPCの画面で見た方が粗が目立たないってところは何だかなぁって気がする。なぜならば,この映画の一番のポイントはMarlene Dietrichの美貌だからである。いやいやそれにしても実に美しい女優である。

1932年という時代を考えると,中国を舞台にすれば,エキゾチックな感じになってもしょうがないが,この映画はあまりそういう感じがしないのは列車内が中心のストーリーゆえというところであるが,プロットはさておき,ついて,離れて,またくっついてみたいな恋愛映画ってのがある意味微笑ましい。そこにちょいとサスペンス風味を入れているってのがこの時代においては新鮮だったのではないかと想像する。

それにしてもMarlene Dietrichである。私は往年の美女と言えば,Ingrid Bergmanこそ最高だと思っているが,Marlene Dietrichについては「モロッコ」とか,後年の「黒い罠」ぐらいしか記憶にないというか,その記憶も飛んでいるが,まさに別嬪というのはこういう人のためにあったと思ってしまう。彼女の美貌を拝むだけでも価値があった87分。星★★★★。

さて,次は何を見るかなぁ...(笑)。

2020年7月30日 (木)

”Morning Rise”:この暑苦しさがたまりまへん(笑)

_20200729-2”Morning Rise" Alan Skidmore / Gerd Dudek / Aderhard Roidinger / Lala Kovachev(EGO)

今年は長梅雨で,本格的夏の到来はこれからってところだが,夏場になると私には暑苦しい音楽を聞きたくなる性癖があるようである。夏場に辛いカレーを食してひぃひぃ言ってしまうのと同じ感覚と言ってもよいが,まぁ物好きというか,アホというか...(苦笑)。このアルバムも取り出したのは久しぶりであるが,この暑苦しさがたまらないのだ。

このアルバムは”The EGO Recordings of Leszek Zadlo Alan Skidmore"という濃い~ボックス・セットの中の1枚であるが,このボックス・セットの中身は全部こんな感じみたいな暑苦しさを感じさせてくれるのだ。まさに夏にこそこのボックスである(爆)。

そもそもこのアルバム,ただでさえ熱いAlan Skidmoreに,ドイツからGlobe Unityでも活躍したGerd Dudekが加わるのだから,更に暑苦しいに決まっているのだが,聞いてみれば全くその予想は裏切られることはない。

まぁサウンドはそんな感じなのだが,このアルバム,全4曲なのだが,各々のミュージシャンが曲を提供しており,対等な立場のバンドであるということになるが,曲の感じも必ずしもゴリゴリ一直線でもなく,結構バラエティに富んでおり,なかなか面白い。こういうのは大音量で聞くに限るのだが,在宅勤務で家人の不在を大いに活用させてもらった私であった(笑)。

当然のことながら,そんなしょっちゅうプレイバックしたいタイプの音楽ではないが,久しぶりにこういう音を浴びたって感じである。星★★★★。こんな音源ばかり作っていては,カタログ22枚でレーベルがクローズしても仕方ないって気がするが,これはこれで欧州ジャズの遺産としてこれからも楽しみたいと思わせるアルバムであった。

Recorded in September 1977

Personnel: Ala Skidmore(ts, ss), Gerd Dudek(ts, ss), Aderhard Roidinger(b), Lala Kovachev(ds)

2020年7月29日 (水)

John ScofieldのSteve Swallow集:これがECMから出ることが実に意外。

_20200726-3 "Swallow Tales" John Scofield(ECM)

昨日,Steve SwallowとJohn Taylorのデュオを取り上げたからという訳ではないが,このアルバムの記事をアップしていなかったってことで,遅くなったが本作を取り上げよう。

正直言って,ジョンスコとECMってイメージ的にはあまり結びつかない。私の記憶ではJack DeJohnetteとやったTrio Beyondと,Marc JohnsonのBass Desiresぐらいって感じだが,どっちもECMっぽくないと言えばその通りだと思う。しかし,Bass Desiresのカッコよさは永久に不滅だと思うし,結局は「結びつかない」と言ったって,私のイメージだけの問題である。

それでもって,本作のメンツはジョンスコにSteve Swallow,そしてビルスチュなので,Verveの"EnRoute"と同じである。この3人はこの編成に加えて,別の組み合わせでもことあるごとに共演しているから,勝手知ったるトリオってことになるが,今回のキモはSteve Swallow曲集ってことになる。だが,このアルバム,録音されたのがニューヨーク大学のSteinhardt School of Culture, Education and Human Developmentにあるスタジオでの録音,かつエンジニアリングもECMとは縁のないであろうTyler McDiarmidということで,これは明らかに(そしておそらくはSteve Swallowによる)持ち込み音源ってことだろう。そういうことなので,ECMからでなくても出て不思議はないアルバムであり,ECM的な感覚は実は薄い。なので,これはECMレーベルのアルバムとして聞くことにはあまり意味はないように思う。

なので,このアルバムを評価するためには,企画としてのSteve Swallow集をどう捉えるかというところになる。Steve Swallowが優れたメロディ・メイカーであることは,John Taylorとのデュオ作のところでも書いた通りだが,ここでは素材としてSwallowの曲を使いつつ,ジョンスコが気持ちよさそうにソロを展開しているのが聞きものって気がする。ジョンスコも来年は古希を迎えるってことを考えると,ガンガン引き倒すって感じではなくなっているが,むしろ枯れた味わいを感じさせるというところか。もちろん,ジョンスコのことであるから,「枯れた」と言っても,デニチェンとやっているのとかと比べると随分おとなしくなったということだが,フレージングのアウト具合は不変である。

そして,付き合いの長いSteve Swallowの曲を,きっちりプレイしているところにジョンスコのSteve Swallowに対するリスペクトなり,友情なりが感じられる。正直言って,刺激には乏しいと思えなくもないが,優れたミュージシャン同士によるレベルの高い対話であり,かつ丁寧な演奏っぷりが実にいいと思う。そうした取り組み姿勢も評価し,ちょいと甘いと思いつつも星★★★★☆としよう。

それにしても,大学の中にレコーディング・スタジオを持っていることがまさにNYUらしい。

Recorded in March 2019

Personnel: John Scofield(g), Steve Swallow(b), Bill Stewart(ds)

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