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2018年おすすめ作

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2020年2月20日 (木)

リリースされて40年も経って,初めて聞いた”London Calling"。

London-calling "London Calling" The Clash(Columbia)

主題の通りである。ジャケットはロック史上最もカッコいいものの一つではないかと思いながら,私のパンク・ロック嫌いが災いして(笑),このアルバムをリリースされてから40年の間,一度も聞いたことがなかった。しかし,世の中では非常に高く評価されているアルバムで,いつか聞かねばとずっと思っていたが,40周年記念盤がリリースされたのを受けて,輸入盤は結構手頃な値段だったので,買ってきたものだ。

なんで私がパンクが嫌いだったかと言えば,私が好む音楽とは明らかに違うテイストについていけなかったからだと言ってもよい。私はパンク・ロックのアルバムはほとんど保有していないと思っているが,Patti Smithもパンクではないのか?と言われればそうかもしれない。しかし,私はPatti Smith教の信者ではあるものの,彼女の音楽をパンクと思ったことは実は一度もない。結局,いあゆるパンク・バンドが発する過剰なアナーキズムみたいなメッセージや,いかにもパンク的なサウンドが私の趣味ではないのだ(きっぱり)。そもそも日頃はジャズやら,渋いSSWを好んで聞いている人間にとってはパンクはある意味縁遠かったのだ。しかし,本作がリリースされた40年前と言えば,私もまだティーンエイジャーだったのだから,パンクの世界に引き込まれても不思議はなかったのだが,そうなることはなかった。

だが,改めてこのアルバムを初めて聞いてみると,今の私には普通のロックに聞こえる。そして,多様な音楽性を吸収した実に出来のいいロック・アルバムではないか。Clashも出自はパンクってことだったのかもしれないが,その懐はずっと深かったのだろうということを感じさせた。時代が彼らの普遍性を増幅させたって気がしないでもないが,それでもこれは実によくできたロック・アルバムだと思えた。そして繰り返しになるが,カッコいいジャケットである。リリースされて40年も経って,この魅力を理解する私もいい加減なものだが,これはほとんどエヴァーグリーンと言ってもよい。星★★★★★。今更ながらお見それ致しました。

Personnel: Mick Jones(vo, g), Joe Strummer(vo, g), Paul Simonon(b, vo), Topper Headon(ds, perc)

2020年2月19日 (水)

Carla Bley,Andy Sheppard,Steve SwallowのトリオによるECM第3作。

Life-goes-on "Life Goes on" Carla Bley / Andy Sheppard / Steve Swallow(ECM)

このトリオによるECMレーベル第3作がリリースされた。彼らの初レコーディングは95年の"Songs with Legs"に遡るので,今年で結成25年という節目になるらしい。私は"Songs with Legs"は未聴であるが,ECMでの第1作”Trios",そして第2作"Andando di Tiempo"については絶賛を惜しまなかった。その2枚は2013年と2016年の年間ベスト盤の一枚にも選んでいるから,どれほど評価しているかはお判り頂けるだろう。そうした彼らの新作である。期待しない訳にはいかない。

このアルバムには次のように書かれている。”Carla was hit by a bucket of shit and the band played on. She opened the door and was hit by some more and the band played on. Could this be the ending or just the biginning of life without music or fun?" これをどう解釈するかはなかなか難しいところであるが,皮肉な感覚に満ちているのは間違いないところである。それがどう音楽に反映するのか?

今回のアルバムは3つの組局から構成されているが,冒頭のタイトル・トラックはいきなりのブルーズにびっくりする。それに続く"Life Goes On"組曲に含まれた曲を聞いていて,私は前作に感じたような「深み」は感じなかったのだが,むしろ,音楽を通じたポジティブな感覚をおぼえていた。

しかし,2つ目の組曲"Bearutiful Telephone"はダークな響きで始まる。この曲はECMのサイトによれば,Donald Trumpがホワイト・ハウスに足を踏み入れた時に,“These are the most beautiful phones I’ve ever used in my life"と言ったとか言わないとかいう逸話への皮肉としか思えない。まさに何言ってやがるみたいなCarla Bleyの心証を反映したものと言いたくなってしまう。

3つ目の組曲"Copycat"の意味するところは不明であるが,”After You"~”Follow the Leader"~"Copycat"というタイトルには別な皮肉を感じてしまうのはうがち過ぎだろうか。いずれにしても,ここでは比較的中庸な表現が用いられているって感じである。

トータルで考えると,やはり"Andando di Tiempo"に感じた音楽的な深さは薄れたが,それでも非常に三者によるレベル高い会話を聞かせてくれるという点では評価したいし,彼らにしか出せない音だと思う。Carla Bleyも80歳を過ぎても,まだまだいけるところを実証したアルバム。半星オマケしてちょいと甘めの星★★★★☆ということにしよう。

Recorded in May, 2019

Personnel: Carla Bley(p), Andy Sheppard(ts, ss), Steve Swallow(b)

2020年2月18日 (火)

出張中に見た映画(20/02編):2本目は「ジョン・ウィック:パラベラム」だったが,よくやるわとしか言えない。

John-wick 「ジョン・ウィック:パラベラム(”John Wick: Chapter 3 - Pallabelum”)」(’19,米,Lionsgate)

監督:Chad Stahelski

出演:Keanu Reeves,Halle Berry,Ian McShane,Lawrence Fishburn,Mark Dacascos,Asia Kate Dillon,Angelica Houston

往路の2本目としてみた映画がこれなのだが,主題の通りなのだ。2時間以上に渡って,よくもこれだけのアクション・シーンを詰め込むわとしか言いようがない。実はこの映画,昨年の出張時にも一度見ようとしたのだが,どうしても睡魔を誘うのだ。これだけド派手な映画なのに,眠くなるというのは,私にとってはあまりに一本調子で面白くないってことかもしれない。実は今回も途中で眠りに落ちた私だが,結局今回は最後まで見た。

ストーリーからしても,もう1本作る気満々だが,映画の80%近くは格闘もしくはアクション・シーンではないのかと思えるほどの徹底ぶりで,こういう映画には固定ファンがついているってことだろうし,興行収入も好調のようだ。しかし,私は劇場に金を払ってまでこういう映画を見に行きたいとは思わない。あくまでも機内エンタテインメントだから見たようなものだが,このシリーズ,一応ストーリーとしては連続性は担保しているようだから,その点は認めてもいいだろうが,こういうノンストップ・アクションは相当に疲れる。

まぁ,TVゲーム感覚と言えばいいのだろうか。格闘もののTVゲームを見ているような感じを強く覚えた私であった。この映画の中で死ぬ人間は何人いるのか,なんて余計なことも考えてしまったが,やっぱりこういうのはあまり評価したくないというのが正直なところである。アクション・シーンは強烈だが,私にとってはそれだけ。星★★☆ってところだろう。見る映画のチョイスを間違えたな(苦笑)。

2020年2月17日 (月)

出張中に見た映画(20/02編):1本目はRenée Zellwegerがオスカーを獲った「ジュディ 虹の彼方に」。

Judy 「ジュディ 虹の彼方に("Judy")」(’19,英/米,FOX)

監督:Rupert Goold

出演:Renée Zellweger,Jessie Buckley,Fin Wittrock,Rufus Sewell,Michael Gambon

今回,シンガポールに行ってきたのだが,帰りは夜行便だったので,見たのは往路での2本だけ。1本目がRenée Zellwegerが見事にオスカーで主演女優賞を獲ったこの映画である。日本での公開は3月の予定だが,こういうのを先に見られるのが機内エンタテインメントのいいところである。そして,私の興味はなぜ彼女が受賞に値するのかというところにあった訳だが,吹替なしで自身がJudy Garlandになりきって歌うところを評価されたと考えてよいだろう。実にうまいものなのだ。

この映画の主人公は,誰もが知るJudy Garlandである。「オズの魔法使い」やその他のMGMでのミュージカルでの明るいイメージが持たれることが多い彼女だが,この映画に描かれる通り,相当に精神的に病んでいる人だった。その彼女の晩年の姿をRenée Zellwegerが演じる訳だが,正直言って,ちゃんと救いのシーンは準備されてはいるが,それでもこの映画はかなり 重い。ストーリー展開はまぁ想定通りであるし,Renée Zellwegerの演技は評価できたとしても,映画としては無茶苦茶優れているとは思えなかったというのが正直なところである。

それでも1968年という時代感はうまく出していると思えるし,Renée Zellwegerが歌うシーンは見ごたえがある。それでも,Judy Garlandの凄みはこんなものではなかっただろうと思ってしまうのは,私が中学生の時に見た「ザッツ・エンタテインメント」で見られた映画"Summer Stock"における"Get Happy"のシーンが強烈に印象に残っているからだ。Judy Garlandはある意味悲劇的な人生を歩んだとも言えるが,アーティストとしては一流であったことを感じさせる映像を貼り付けておこう。いずれにしても,この映画は悪くはないが,まさしくRenée Zellwegerのためだけにある映画であったと言ってもよい。星★★★★。

2020年2月15日 (土)

Jesse Frederick: こういうのまで再発される日本って凄いねぇ。

_20200211-2”Jesse Frederick" Jesse Frederick (Bearsville)

主題の通りである。こういうあまり知られていない作品がCDとして再発される日本って凄いなぁってつくづく思うが,実は私は本作がリリースされていたことも全然知らなかった。しかし,ある本を読んでいて,本作に触れた記事があって,よくよく調べたら日本でも出てんじゃん!ってことではあったのだが,もはや結構入手困難化していたようだ。まぁ,相当マイナーな作品であるから,プレスの枚数も少なかったのではないかと想像する。ってことで,中古で入手したものである。大したことはなかったが,それでも定価を上回る価格での購入となった。

このジャケットを見れば,まぁ売れるはずはないかって気もするが(笑),それでもその筋の聞き手にとってはそこそこ魅力的に響くはずだ。このアルバムはシンガー・ソングライターのアルバムとしては,結構ロック色が強い。どちらかと言えば,昨日取り上げたDonnie Frittsのような「ど渋い」シンガー・ソングライターを好む私としては,この人の声やサウンドはやや好みからはずれる部分があるのは事実である。このアルバムがある程度人の記憶に残るのは,Todd Rundgrenがリミックスに関わっていることもあるだろうが,それだけで買うリスナーはそれほど多くはないだろう。

正直言ってしまうと,これなら保有していなくてもいいかなぐらいのレベルのアルバムではあるが,でも聞いてみたかったんだもん(爆)ってことで,それはそれでよしとしよう。ところで,このアルバムのアレンジャーとしてはDavid Darlingの名前があるが,ECMからアルバムもリリースしたDavid Darlingなのか?このアルバムが録音されたのはNashvilleであるが,David DarlingもNashvilleをベースに活動していたはずだから,その可能性は高そうだ。David Darlingが録音された後にECMでリリースするアルバムを考えると,全然違う音楽だが,そうだとしたら実に面白い発見だと思った。星★★★☆。

Personnel: Jesse Frederick(vo, b), Wayne Watson(g), Jim Crawford(ds), Lindsay Lee(p), David Darling(arr) and Others

2020年2月14日 (金)

最後まで渋かった...:Donnie Frittsの遺作。

Donnie-fritts”June: A Tribute to Arthur Alexander" Donnie Fritts(Single Rock)

昨年来日が予定されていながら,体調不良により来日がキャンセルされたばかりか,8月には亡くなってしまったDonnie Frittsの遺作である。Donnie Frittsと言えば"Prone to Lean"が真っ先に思い出されることに異論はないが,その後,彼がリリースした数少ないアルバムのそれぞれは,アメリカン・ロックあるいはシンガー・ソングライター好きの心を捉えて離さないものばかりだったと言ってもよい。

とにかくこの人の音楽は渋い,渋過ぎるって感じだが,特に私が痺れたのが彼の声だと言ってもよい。私はこの手の音楽を結構偏愛してきたと言ってもよいが,そうした中でも,Donnie Frittsの声は私の心に刺さるのだ。それは遺作となった本作でも同じであり,彼の声はやはり私には魅力的に響くし,彼の弾くエレピ(Wurlitzer)の音が,彼の音楽に実にフィットしているのだ。

本作においても,彼の声と伴奏が実にマッチして,私の好物たる音楽を奏でてくれる。最後まで,変わらぬ音楽を提供し続けたミュージシャンであった。本作は過去の作品に比べると若干評価は下という感じはあるが,Donnie Frittsが残してくれた音楽と彼への追悼も込めて星★★★★★としよう。R.I.P.

Personnel: Donnie Fritts(vo, el-p), David Hood(b), Reed Watson(ds), John PaulWhite(g, vo), Ben Tanner(key, b, vo), Kevin Holly(g), Kimi Samson(vln), Caleb Elliott(cello), Selwyn Jones(bassoon), Lara Lay(oboe), David McCullough(fr-h), Meghan Merciers(cl), Laura and Lydia Rogers(vo), Louisa Murray(vo), Cindy Walker(vo), Marie Lewey(vo)

2020年2月13日 (木)

懐かしのBrecker Brothersのデビュー・アルバム。

_20200211-3

"The Brecker Bros.” The Brecker Brothers (Arista)

何を今更と言われそうだが,1975年にリリースされたBrecker Brothersのバンドとしてのデビュー・アルバムである。もう45年も経っているのか~と思わざるをえないが,今にしてこのアルバムを聞いていると,音そのものを含めて,やはり時の流れを感じさせるようなサウンドである。

本作には,後に"Heavy Metal Be-Bop"でも演奏される"Some Skunk Funk"と"Sponge"の初演が収められている。今聞くと,特に"Some Skunk Funk"については,"Heavy Metal Be-Bop"での爆演に比べて,まだまだゆるい感じがするが,もともとはそういう曲だったのが,ライブではち切れたってのが実態なのかもしれない。ついついその2曲に耳が行ってしまうのが,もともと"Heavy Metal Be-Bop"以外は,彼らのアルバムをまともに聞いてこなかった私の限界である。

それでも今にして思えば,ここに収められた音っていうのは,彼らにしか出せないだろうアンサンブルって感じだと思ってしまう。正直に言ってしまうと,私がMichael Breckerに目覚めたのは,バンド時代ではなく,ソロ活動に移行してからのことだし,世のMichael Breckerファンには申し訳ないが,それでもBob Bergの方が好きだと言ってしまうような人間なので,思い入れが相当に少ないのだ。だが,彼らが70年代から80年代にかけて残したアルバム群は改めて聞いてもいいよなぁと思って,私が仕入れたのは廉価版5枚組だが,まともにプレイバックもしていなかった。今や彼らのアルバムは全てストリーミングで聞けるから,ストリーミングでもいいじゃんってことなのだが,まぁそれはよかろう。

いずれにしても,ユニゾン・フレーズを聞いていると,おぉ,確かにBrecker Brothersってこんな音だったなぁなんて懐かしくなってしまった。LPで言えば,B面冒頭に相当する"Sneakin' up behind You"あたりに特にそういうのを感じるが,気まぐれでプレイバックしたら,結構面白かった。星★★★★。ここに収められた"Rocks"を聞いていて,久しぶりに"Blue Montreux"が聞きたくなるという効果もあったと言っておこう。

Personnel: Randy Brecker(tp, fl-h, vo), Michael Brecker(ts), Dave Sanborn(as), Don Grolnick(key), Bob Mann(g), Will Lee(b), Harvey Mason(ds), Christopher Parker(ds), Ralph McDonald(perc)

2020年2月11日 (火)

追悼,Lyle Mays。

Lyle-mays-portrait

ノムさんに続いて,Lyle Maysの訃報が届くとは...。半ば音楽活動からは引退状態だったはずだが,これでPMGの復活は完全に夢と化した。思えば,Lyle Maysの姿を日本で最後に見たのは,2009年1月6日のBlue Note東京におけるPMGリユニオン・ライブになってしまったが,あの演奏を見ておいてよかったと思わずにはいられない。その時にも書いた(記事はこちら)が,ライブを見ていて「私の渇望感を最も癒してくれたのはLyle Maysということである。やはりMethenyはMaysと共演しているときが最もよいのだということを痛感させられたし,私が飢えていたのはMaysのピアノであり,キーボードではなかったのかと思う。(中略) 私が一番感動していたのはMaysのプレイだったのかもしれない。」と感じていた。リーダーはPat Methenyであっても,Pat Metheny Groupとしてのサウンド・テクスチャーを作り上げていたのは,私にとってはLyle Maysだと思えたのである。

彼の死によって,Pat Metheny Groupの再編は不可能となったが,彼らが残した音楽,そしてLyle Maysがリーダーとして残したアルバムの魅力が色褪せることはないが,まだ66歳という若過ぎる死を惜しまずにはいられない。リーダー・アルバム”Street Dreams"に収められた"Before You Go"の響きに胸をしめつけられた私である。

R.I.P.

実に素晴らしい須川崇志Banksia Trio。

_20200211 "Time Remembered" 須川崇志Banksia Trio(Days of Delight)

ブログのお知り合いの皆さんが次々と取り上げられていて,非常に気になっていたアルバム。それを聞いてみて皆さんがこのアルバムを好意的に捉える意味がわかった。実によくできた作品であり,レベルが高いのだ。

Bill Evansの"Time Remembered"から始まるが,Bill Evans的な響きではなく,ECMで聞かれるような北欧系の響きすら感じられるオープニングである。それに続くメンバーによるオリジナルも,美的なるものと,清冽な緊張感が同居する非常に魅力的なトリオの演奏であることに,私は日頃の不勉強を恥じることとなった。これなら世界のどこに出ていっても勝負できると言っては大げさかもしれないが,彼らのレベルの高さにはまさに瞠目させられた。

例えば,林正樹のオリジナル"Nigella"のようなスロー・チューンを,ここで聞かれるような表現に仕立てるところに,私は彼らに欧州的な響きを感じてしまう。それはリーダー須川のオリジナル"Banksia"でも同様である。その辺りに私は強く魅かれてしまうのだろう。これはまさに「ずっぽしはまった」感が強いアルバムであり,日本からこうしたアルバムが生まれたことを喜びたい。

こういう感覚,以前にも覚えたことがあるが,今回の購入に至る経緯もそうだし,感心の仕方も,須川崇志も参加した本田珠也のIctus Trioに感じたものと同質だと思えた。Ictus Trio同様の評価とすべく,喜んで星★★★★★を謹呈しよう。緊張感に満ちた美学が継続する43分間である。

Recorded on July 31, 2019

Personnel: 須川崇志(b),林正樹(p),石若駿(ds)

2020年2月 9日 (日)

Ben Watt,およそ4年ぶりのアルバム。

_20200208-2 "Storm Damage" Ben Watt(Unmade Road)

この新作を携えての4月の来日も決まっているBen Wattの新作である。早いもので,前作から4年も経っているのかと思ってしまった。月日の経つのがつくづく早くなった...。

Ben Wattの前作,"Fever Dream"はポップな感覚もあり,実に好きなアルバムであったが,本作は前々作の"Hendra"の内省的な響きが戻っているような気がする。Ben Wattの声がかなりリアルな響きで録られているということもあるが,そうした感覚をより強くさせるのは全編でアコースティック・ベースが使われているところによるような気がする。それも含めて,サウンドがどちらかと言えば,よりアコースティックな方向へシフトしていると思えるのだ。

最初にストリーミングで聞いた時には,そうしたサウンドの変化に若干戸惑いをおぼえたのだが,CDが届いて,何度か聞いていると,違和感はなくなってくる。それでもここに流れる音楽にはそこはかとない「暗さ」を感じるのも事実である。もちろん,Ben Wattはこれまでだってチャラチャラした音楽はやっていないが,ここには聞きようによっては,これまで以上に負の感情の発露のようなものが強まっているように思えるところが,評価は別にして,好き嫌いの違いにつながるかもしれない。

私としては"Fever Dreams"が非常によかったと思えただけに,サウンド的にはあの路線を継続してもよかったと思えるが,これはこれでBen Wattの側面として聞くべきアルバムと言える。私が本質的にこの音楽を理解するには,もう少し歌詞を読み込む必要がありそうだが,そうしたいと思わせてくれるアルバムだと思う。星★★★★☆。

Personnel: Ben Watt(vo, p, el-p, g, synth, synth-prog), Rex Horan(b, viola), Evan Jenkins(ds, perc), Alan Sparhawk(g, vo), Ewan Pearson(vocoder), Jennifer Valone(vo)

2020年2月 8日 (土)

のどに引っ掛かった魚の骨のようだった(笑)Helge Lienのアルバム。

_20200208 "Natsukashii" Helge Lien Trio(Ozella)

またもブログの更新が滞ってしまった。最近はどうもさぼり癖がついていかん。というか,なかなか記事を書いている時間を見つけられなかったというのが正直なところなのだが...。

さて,このアルバム,主題の通りなのだ。このアルバムを,ブログのお知り合いの皆さんが高く評価されたのももはや10年近く前のことになるのだが,いつか聞かねば,聞かねばと思いつつ,中古で買えばいいやと思ってきた。しかし,一向に中古盤に出会うこともなく(というか,手頃な価格で出会うことがなかった),時は過ぎていったのだが,ようやく先日仕事帰りに立ち寄ったショップで,手頃価格で発見である。私としてはのどに引っ掛かった魚の骨がようやく取れたって思いである。まぁ,そうは言いつつ,今やストリーミングでも聞けるようになっているので,敢えて購入する必要があったかというと微妙な部分もあるのも事実だ。しかし,それはさておきとして聞いてみた。

なるほど,私のブログのお知り合いの皆さんが褒めるのも当然と言うべき演奏である。原則としては「静」のアルバムではあるが,単なる詩情だけではない,ダイナミズムも兼ね備えたピアノ・トリオの演奏には惚れ惚れする。実に美しくも,リスナーを優しく受け入れる音楽である。やはり気になった音楽はさっさと聴いておけばよかったなぁと反省した私である。ということで,これは保有に値するアルバムであった。であった。反省も込めて星★★★★★。

ところで,このタイトル"Natsukashii"はもちろん「懐かしい」であるが,正直言って,日本語の「懐かしい」という語感にフィットする英語はどうも思いつかない。"Nostalgic"でもいいとは思うが,どうもしっくりこないし,感じが違うところを,敢えて"Natsukashii"としてしまうところは,Helge Lienって日本語に対する理解が深いのかと思ってしまう。いずれにしても,その語感を音楽にするとこういう感じだよねと思わせるところもポイントが高い。そういう音楽であった。

Recorded between September 24 and 26

Personnel: Helge Lien(p), Frode Berg(b), Knut Aalefjær(ds)

2020年2月 4日 (火)

保有していることもほぼ失念していたWayne Escofferyのアルバム。

_20200201-3

"The Only Son of the One" Wayne Escoffery (Sunnyside)

Wayne EscofferyにはTom Harrellのバンド時代から注目してきたし,Cotton Clubでのライブにも行っている。しかし,このブログではこのアルバムはアップしていなかったし,そもそも保有していることさえ失念していたのだから,私もどうしようもない。ということで,久しぶりに手に取ったアルバムを早速聞いたのだが,これがなかなかコンテンポラリーな響きを有していてよいではないか。こういうことがあるから,手持ちのアルバムはたまにはちゃんとチェックしないといかんのだ。

ここでのサウンドはのキーとなるのがWayne Escoferryのテナーであることはもちろんなのだが,そのテクスチャーを作り出すのに貢献しているのはOrrin EvansとAdam Holzmanの二人のキーボード・プレイヤーである。今やBad Plusの一員となったOrrin Evansはピアノも弾いているが,Rhodesを多く弾いていることもあって,コンテンポラリー感は強くなるが,このアルバムにおいては私はRhodesの音の方がフィットしているように感じるのだ。一方,Adam HoltzmanはMiles Davisのバンドでもそうだったと思うが,前面に出てくるタイプではなく,どちらかというと,サウンドをよりカラフルに仕立てるって感じだろう。

私は本作の次作となる"Live at Firehouse 12"について記事(こちら)を書いていて,そこには『コンテンポラリーな感覚は増しているのは事実だが,フュージョンまでは行っておらず,極めて真っ当な「現代のジャズ」という気がする。』なんてことを書いているから,その源流は本作にあったってことだ。そんなこともすっかり忘れているのだから,いかに私はいい加減かってことがバレバレになってしまった(元からバレバレって話も...)。

それはさておきとして,Wayne Escofferyのアルバムはどれも侮れないと思えるし,一本筋が通っていると感じさせるのは立派である。これもTom Harrellの薫陶を受けたってことが効いているのかもしれないが,この人は期待できると改めて思わされたアルバム。星★★★★。

いずれにしても,昨今は新譜を買うペースも劇的に落ちているから,その間にこうして手持ちの音源を改めて聞き直すってのは結構大事なことだと思う。まぁ,このブログもそういう感じになっていかざるをえないのだろうなぁと感じている。

Recorded on March 29 and September 18, 2011

Personnel: Wayne Escoffery(ts, ss), Orrin Evans(rhodes, p), Adam Holtzman(key), Hans Glawishnig(b), Ricky Rodrigues(b), Jason Brown(ds)

2020年2月 3日 (月)

実に軽快なRay Brown Trio。

_20200201 "Live at Starbucks" Ray Brown Trio(Telarc)

シアトルはスターバックスの本拠地であるが,このアルバムはシアトルのJackson Street Storeでライブ・レコーディングされたアルバム。なぜここなのかというのは,ライナーによれば,かつてのシアトル・ジャズ・シーンの中心地がこの辺りだったかららしい。それはさておき,ここでのトリオであるが,Ray Brownにとっては孫みたいな年齢の2人を従えての演奏であるが,晩年の演奏と言ってよい時期であるが,軽快にしてそして実に矍鑠としている。

ベーシストのアルバムとなると,ベースがフィーチャーされた演奏が多くなりそうだが,そういうことはRay Brownはやらない。ここでもRay Brown Trioを名乗っているように,あくまでもトリオとしての演奏であり,年齢差を越えて三者が協調するのが実に微笑ましい。もちろん,聴衆にフィンガー・スナップさせてベース・ソロで演じる"Love You Madly"のような曲もあるが,基本的にはトリオ・フォーマットを優先させた演奏にはRay Brownの余裕さえ感じてしまう。

こういう演奏にはアルコール片手にでもいいが,スタバでのライブだけに当然ノン・アルコールだったと思われ,それはそれでこの軽快さにフィットしているってところか。聴衆の盛り上がりぶりもその軽快さ故って感じがする。若い二人の好演も立派なものである。そして,締めは"Starbucks Blues" 。Ray Brownのソロから入って,ブルージーにエンディングを迎える。久しぶりに聞いたが,結構楽しめてしまった。星★★★★。

Recorded Live at Starbucks Jackson Street Store on September 22 & 23, 1999

Personnel: Ray Brown(b), Geoff Keezer(p), Karriem Riggings(ds)

2020年2月 2日 (日)

またもEastwoodにやられたと思ってしまった「リチャード・ジュエル」

Richard-jewell 「リチャード・ジュエル(”Richard Jewell")」(’19,米,Warner Brothers)

監督:Clint Eastwood

出演:Paul Walter Hauser,Sam Rockwell,Kathy Bates,Olvia Wilde,John Hamm,Nina Arianda

今年の5月に90歳になろうとしているClint Eastwoodの作品にはほぼ毎回痺れさせられている私である。老いてますます盛んとはEastwoodのためにあると言いたくなるが,今回もまたも彼の手腕にやられてしまった。

昨今,Clint Eastwoodの映画は実話に基づくものが多くなっているが,今回はアトランタ五輪期間中の爆弾テロにおける爆発物の第一発見者でありながら,容疑者としてメディアとFBIから追われるという,まさに冤罪の被害者としてのRichard Jewellの姿が描かれる。こういう映画を見ていると,本当に何が正義なのかわからなくなるという点で,実に恐ろしい事件を描いている。実際にはもっと複雑であったであろう事件について,非常にコンパクトにストーリーに仕立てているが,まさにここに描かれているのはFBIの傲慢とメディア・リンチである。プロファイリングだけに依存するような,あれほど予断に満ちた捜査が本当に行われていたとすれば,FBIなんてとんでもない組織だってことになるし,メディアも視聴者,読者の「関心」をかさに,人間の尊厳を踏みにじるような行為をしているとも言える訳だ。それをドラマとして仕立てるEastwoodの技はここでも十分に発揮されていた。

私がこの映画で最も泣かされたのはRichard Jewellの母親を演じたKathy Batesの演技だったが,まさに素晴らしい助演ぶりで,かつリアルな演技は本当に素晴らしかった。こういう映画が興行的にはなかなか苦しいのはわかるが,日本での不入りぶりには愕然としてしまった。公開してまだ2週間強だが,すぐに打ち切られてしまいそうなこともあって,慌てて劇場に駆けつけてよかったと思わざるをえない。劇場で見るに値する傑作というのはこういうのを言うのであって,CGに依存するような映画ではない。

結末はわかっていても,見終わった後の清涼感という観点でも,実に素晴らしいと思えた映画。興行的には世界的に苦しいようだが,より多くの人が見て,そして考えるべき作品。喜んで星★★★★★としよう。ここ数年,私はClint Eastwoodの映画をほぼ必ず見ていると言ってよいが,「アメリカン・スナイパー」なみに痺れたと言っても過言ではない。

2020年1月30日 (木)

中古でゲットした"Sonny Clark Quintets"。

_20200129 "Sonny Clark Quintets" Sonny Clark(Blue Note)

少し前に中古でゲットしたアルバムをようやくアップである。本作は日本のある程度年齢の高いリスナーにはお馴染みかもしれないが,オクラ入りしていた音源を,日本でリリースしたのがもともとである。確か出たのは私がジャズを聞き始めた頃ではなかったかと記憶する。そもそもBlue Noteのカタログには掲載されていたにもかかわらず,発売が見送られたというある意味不幸なアルバムである。

そのタイトルからもわかる通り,2つのクインテットによる演奏を収めており,前半は"Cool Struttin'"の残りテイクである。こちらの演奏は今や本家"Cool Struttin'"のボーナス・トラックとして収録されているから,別に珍しいものでもなんでもないし,そのCDは私も保有しているが,もう一つのクインテットも"My Conception"のボーナス・トラック化しているので全然希少ではない。まぁ,ちょっと無駄な買い物と言ってしまえばその通りだが,後半のクインテット演奏は聞いたこともなかったし,安かったからいいのである。まぁ,演奏が希少ではないから,中古も安いってことにしておこう(苦笑)。

演奏を聞けば,いかにもBlue Noteらしい音と言ってよいが,決して発売が見送られるレベルのものではなく,ちゃんと単体リリースされてよかったねぇと考えなければならない。しかし,このアルバムももはや”Complete Albums Collection"という4枚組廉価ボックスの一部として聞けてしまうので,珍しくも何ともないのだが...。

まぁ,Blue Noteのこの時期の演奏であるから,だいたいはずれはないのはわかっているのだが,なぜSonny Clarkが米国本国でメジャーになれなかったのかは謎と言ってよい。彼の書くオリジナルのちょっとした「哀愁感」みたいなのが,日本のリスナーに受けるのはよくわかるとしても,やっぱり謎だ。

前半の"Cool Struttin'"の残りテイクは雰囲気を濃厚に引き継いでいるが,もう一つのクインテット演奏ではKenny Burrellがいいねぇと思わせる。そしてアルバムに全面参加しているのはリーダーとPaul Chambersだけだが,いかにもPaul Chambersらしいソロが聞けるのも嬉しいところ。必携のアルバムとまでは言わないが,聞いても絶対損はしない,そんなアルバム。星★★★★。

Recorded on December 8, 1957 and January 5, 1958

Personnel: Sonny Clark(p), Art Farmer(tp), Jackie McLean(as), Clifford Jordan(ts), Kenny Burrell(g), Paul Chambers(b), "Philly" Joe Jones(ds), Peter LaRoca(ds)

«小音量プレイバックにもフィットするHerbie Hancock曲集。

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