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2024年3月 5日 (火)

Famous Doorと言えばこのアルバムと思っていたが,記事にしていなかったZoot Simsのアルバム。

Zoot-at-ease "Zoot at Ease" Zoot Sims(Famous Door)

Famous Doorレーベルのアルバムには結構好きなものがある。Butch Miles然り,Scott Hamilton然りである。しかし,このレーベルのアルバムでダントツで好きなのがこのZoot Simsのアルバムである。モダン・スウィングってのはこういうものだという感じのアルバムは,アナログも持っているし,追加の別テイクが聞きたくて,CDでも保有している。だから,このアルバムを今までこのブログにアップしていなかったというのは実に意外としか言いようがない。私はこのブログでZoot Simsのアルバムを何枚か取り上げているが,実はこの人のアルバムでプレイバック頻度が高いのは本作なのだ。

テナーのイメージが強いZoot Simsだが,冒頭の"Softly as in a Morning Sunrise"をソプラノ・サックスで演奏するところからして意外な感覚があったが,これが実にいいのである。私は多分往時のジャズ喫茶において初めてこのアルバムを耳にしたはずだが,この演奏にまさに「ひと聴き惚れ」と言った感覚を覚えて,すぐさまアルバムの購入に走ったはずだ。そして全編で繰り広げられる演奏はテナーとソプラノを交えながら,心地よいスウィング感を与えてくれる。アルバムを購入した頃はまだ私も若かったはずだが,こういう演奏に魅力を感じてしまったのだから若年寄みたいなもんだ(爆)。

まぁ,このメンツである。リーダーもよければ,バックも素晴らしいのだから,良くて当たり前だが,このくつろぎ感に満ちた演奏はジャズのある一面を如実に示すものとして,若い私にとっても魅力的に響いたし,それは還暦を過ぎた現在になっても変わることはない。むしろ更にその魅力は増していると言っても過言ではない。必ずしも有名曲ばかりをやっている訳ではなくとも,実に心地よく時が流れていくのだ。大げさに言えば,私にとってZoot Simsと言えば本作と言ってもよい最初から最後までええわぁ~と言いたくなる傑作。星★★★★★。

こういうアルバムが簡単にCDで入手できるのだから本当にいい時代である。

Recorded on May 30 and August 9, 1973

Personnel: Zoot Sims(ts, ss), Hank Jones(p), Milt Hinton(b), Louis Bellson(ds), Grady Tate(ds)

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2024年3月 4日 (月)

"Touch of Time": この静謐さがたまらん!

Touch_of_time"Touch of Time" Arve Henriksen / Harmen Fraanje (ECM)

これは堪らん!と最初に言ってしまおう。とてもトランペットと思えぬ音色とそれに寄り添うピアノとエレクトロニクス。静謐な中に繰り広げられるこの美学には,世間のECM好きは間違いなくはまる。"The Most Beautiful Sound Next To Silence"を地で行くと言ってよいサウンドなのだ。私も当然はまった。

Arve Henriksenのトランペットはあたかも尺八のようにさえ響き,ラッパ(あるいはブラス)の概念を完全に覆してしまう音色で,決して熱を帯びることはない。「ジャズ原理主義者」から言わせれば,こんなものはジャズではないという声も聞こえてきそうだが,それが何か?と開き直りたくなる。コンベンショナルなジャズではないとしても,こうした音楽も含められるところがジャズの間口の広さなのだと原理主義者には抗弁することにしよう,と音楽は全然熱くないのに,ついつい熱くなる中年音楽狂(笑)。

まぁこういう音楽であるから,万人向けの音楽とは言わない。しかしこの静謐さと美しさを受け入れることで,私は自分の音楽生活は更に豊かになると感じてしまう。おそらくは先日取り上げた,高橋アキの「橋」のようなミニマルな現代音楽のピアノを愛するのと同じ感覚なのだ。私は全方位的な音楽のリスナーだと思っているが,身体がこういう音楽を欲する瞬間もあるし,たとえ身体が欲しなくとも,こういう音楽を聞いているとついつい強いシンパシーを感じてしまうこともある。結局好きなんだってことが明らかになるだけだが,このいかにもECM的な音にはやはり強い磁力を感じてしまったのであった。

この音楽は間違いなく聞く人を選ぶ。しかし,この世界に一旦足を踏み入れれば,決して抜けられないのだ。まさにECMの魔力。星★★★★★としてしまおう。

Recorded in January 2023

Personnel: Arve Henriksen(tp, electronics), Harmen Fraanje(p)

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2024年3月 3日 (日)

Brad Mehldauの新曲を捉えたブートレッグ。

_20240301_0001 "Zellerbach Hall 2024" Brad Mehldau (Bootleg)

Brad Mehldauが各所から委嘱を受けて作曲した新作"14 Reveries"がロンドンで初演されたのが昨年の9月のことであった。正式録音はそのうち行われるだろうが,できるだけ早く新曲を聞きたくなるのがファン心理。だが,ブートレッグもある程度の音のクォリティが確保されていないとなかなか手が出ないところであるが,今回届いたこのブートレッグはオーディエンス録音ながら,かなりよく録れているのが視聴してわかっていたので,購入と相成った。録音されたのはつい先日の2月10日,UC Berkeley内にあるZellerbach Hallでの演奏の模様がもう聞けてしまうというブートの世界恐るべし。

上述の通り,オーディエンス録音にしてはかなりよく録れているのだが,一部がさがさノイズが入るのは少々惜しい。しかし,ほとんど気にならないレベルなので,これなら十分だと思える。それでもって新作"14 Reveries"であるが,この時のプログラム後半では,"Suite: April 2020"からの曲が10曲演奏されていることからも,新作が同作の姉妹編のような位置づけにあるのではないかと想像させる。姉妹編と呼んだが,Brad Mehldauとしては,当然新作には発展性も持たせたと思われる美しいピアノ曲が並んでいる。

詳細については正式録音が出てからということにしたいが,一聴してアドリブ・パートがどの程度あるのかはよくわからなかった。しかし,Brad Mehldauのサイトで"Reverie #1"の楽譜がダウンロードできるので見てみると,完全に書き譜のようで,更には"Fourteen Reveries runs 38-42 minutes in performance."とまで書いてある。ということで,本人に限らず,他のピアニストが演奏することも念頭に置いて書かれた作品ってところか。

そういう意味でBrad Mehldauの越境型活動の一環という気もするが,どうやってもBrad Mehldauの音楽だと思わせるのは立派なものだと思う。Disc 2に収められた新作以外の演奏も含めて,なかなかに聞き応えのあるブートレッグであった。

Live at Zellerbach Hall, UC Berkeley on February 10, 2024

Personnel: Brad Mehldau(p)

2024年3月 2日 (土)

Wolfert Brederode@晴れたら空に豆まいて参戦記。

Wolfert-brederodes-piano

Wolfert Brederodeの"Ruins and Remains"は素晴らしいアルバムであった。同作を私は2022年のベスト作の一枚に選んでいるぐらい評価している(記事はこちら)が,そのWolfert Brederodeが来日するということで,代官山の晴れたら空に豆まいて(何とも不思議な店名だ...)に行ってきた。前日のBanksia Trioからの連チャンとなったが,2月はこれで5本目のライブというなかなかないハイペースである。

私がWolfert Brederodeのライブに参戦するのはこれで2回目になる。前回は約7年前の武蔵野スイングホールにおけるトリオ公演だったが,今回はピアノ・ソロ。先週にはJoost Lijbaartとのデュオ公演も行っているが,私はスケジュールが合わず,今回のソロに行くこととなった。私は最前列でかぶりつきで見ていたので,正確にはわからないが,箱の半分ぐらいの入りだったのではないか。

今回のライブは本人も語っていたが,完全即興で臨んだ演奏が約60分,その後,アンコール的に"American Folk Song"と言っていたが,曲名は失念したショート・ピースを1曲というプログラムであった。完全即興は相応の集中力を要すると考えられるから,この程度の演奏時間が限界という気がするが,徹底して美的で静謐な音楽を展開していた。時としてもう少しダイナミズムを加えてもいいかなと思わせる瞬間もあったのも事実だが,生音でこれだけの美音を聞かせてもらえばこちらの満足度も高いというものだ。ピアノの音が天井にす~っと吸い込まれていくような感覚は,以前カザルス・ホールでFred Herschを聞いて以来だったかもしれない。音楽と同時にピアノの響きを堪能した一夜であった。

Live at 晴れたら空に豆まいて on February 29, 2024

Personnel: Wolfert Brederode(p)

2024年3月 1日 (金)

Banksia Trio@公園通りクラシックス参戦記

Banksia-trio_20240301084701

須川崇志率いるBanksia Trioが2日間のクラブ・デイトということで,その2日目に渋谷の公園通りクラシックスに行ってきた。私にとっては初ヴェニューである。山手教会の地下というユニークな場所,かつ入口は駐車場のスロープを降りて行ったところにあるというロケーションは実に不思議(笑)。キャパは最大120人前後と思われるが,立ち見も出る盛況ぶりであった。彼らを観るのは一昨年末の武蔵野市民会館小ホールでのライブ以来となるが,その間に3枚目のアルバム,"Masks"をリリースし,それもいい出来だっただけに,今回も期待のライブであった。

__20240229083501 そして行われた演奏は静謐さ,美的なるもの,ダイナミズム,フリーなイディオム等の様々な演奏様式において,どれもが極めて高いレベルを実現していて,このトリオの実力を改めて実証したものであった。菊地雅章の"Drizzling Rain"から始まり,アンコールのWayne Shorter作"Lady Day"まで,約100分のプログラムは弛緩するところ全くなしの演奏で誠に見事であった。

当日のプログラムは正確さには少々自信はない(曲順も若干曖昧)が,次のようなものであったはず。私にとって特に印象的だったのが,Ornette Colemanの"When Will the Blues Leave"で,ここで聞かれた,ややコンベンショナルながら強烈なブルーズ感覚をこのトリオで聞けるとは思わなかった。とにかくトリオの全員が何でもできてしまう人たちなのだ。

改めて彼らが現在の日本において屈指のピアノ・トリオであることを確信した一夜となった。上の写真はご同行頂いた先輩から拝借。右は同地でのショットにモザイクを掛けたもの。モザイクを掛けているのでこれではよくわからないが,二人とも演奏への満足度が表れた表情になっている。

  1. Drizzling Rain(菊地雅章)
  2. First Dance(市野元彦)
  3. Untitled(新曲,須川崇志)
  4. 曲名失念(石若駿作曲のバラッド)
  5. Masks(須川崇志)
  6. When Will the Blues Leave(Ornette Coleman)
  7. Doppo Movimento(林正樹)
  8. Algospeak Suite(新曲, 須川崇志)

    (Ec.)Lady Day(Wayne Shorter)

Live at 公園通りクラシックス on February 28,2024

Personnel: 須川崇志(b),林正樹(p),石若駿(ds)

2024年2月29日 (木)

不思議な編成のJohn Surmanの新作:でも昔のECMならこういう編成は結構あったような...。

_20240227_0002 "Words Unspoken" John Surman (ECM)

私は最近は以前ほどECMのアルバムを追わなくなっているが,それでも食指が動くミュージシャンというのは存在する。John Surmanもそんな一人だ。そうは言いながら,John SurmanのECMの前作"Invisible Threads"は購入していないみたい(買ったかもしれない:爆)だし,アルバムだってそれほど保有している訳ではないのだから,結構適当なものなのだが,今回はついついこの編成につられての購入となった。何てたってJohn Surmanにギター,ヴァイブ,ドラムスというなかなかにユニークな編成なのだ。

70年代から80年代のECMなら,様々なメンツの組み合わせでのアルバムは結構あったと思うが,最近ではなかなかこういう編成は少なくなった。それでもやはりこういうのが出てくるのがECMだなぁと思わせる。

総帥Manfred EicherはExecutive Producerとなっているので,これはおそらくJohn Surmanの持ち込み音源なのだが,レコーディングはRainbow Studioだし,出てくる音も実にECMライクなのだ。静謐に流れる部分もあれば,メロディアスな曲もあって,これがなかなか面白い。ベースレスということが全く気にならないというのも,この編成の妙というところだろう。激しさは皆無な中で,淡々と音楽は流れていくのだが,結局はこのサウンドがかなり耳に残るという点では,John Surmanの術中にはまったと感じる私であった。

John Surmanも今年で80歳になるが,そのクリエイティビティにはまだ衰えはないと感じさせるに十分なアルバム。星★★★★。

Recorded in December 2022

Personnel: John Surman(bs, ss, b-cl), Rob Luft(g), Rob Waring(vib), Thomas Strønen(ds)

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2024年2月28日 (水)

相変わらずのScott Hendersonの新譜。

_20240227_0001 "Karnevel!" Scott Henderson(自主制作盤)

Scott Hendersonはだいたい4~5年に1枚のペースで新作をリリースしているが,レコード会社との契約はないようで,このアルバムもレコード会社の企業情報が全く記載されていないところを見ると,今回も自主制作ということでよいだろう。一部ではカルト的な人気を誇るスコヘンのような人でも契約を取れないというのは何とも不幸なことだが,そう売れるって訳でもないだろうから仕方なしってところか。

本作は前作"People Mover"と同じメンツでレコーディングされており,これが現在のスコヘンのレギュラー・バンドってことになるだろうが,リズムは欧州ベースのようなので,現在行っているツアーも3月いっぱいは欧州ということになっている。その後中国~インドと回るようだが,日本でのライブはなかなか難しそうなのが残念。情報によるとブッキングしてもらえないそうだ。中国まで来ているんだから呼べばいいのにと感じざるをえないが,やっぱりこの人はライブで観ると燃えるよねぇと思っているので,また日本にも来て欲しいものだ。

それにしても,ここでの音楽を聴いていると,Scott Hendersonが今年古希を迎えるとは信じがたいが,やる音楽に年齢は関係ないって感じで,相変わらずのスコヘン節炸裂である。むしろこの人の場合,変わりようがないって方が正しいんだろうが,いかにもスコヘンらしいフレージングや音を聞いているだけでファンは嬉しくなること必定。アルバムとして突出した出来とは思わないが,このレベルを維持してくれれば私としては文句も出ない。そして"Sky Coaster"みたいな曲でギターとドラムスのバトルみたいなのをやられてしまえば,こっちはウハウハになってしまうのである。ということで今回も星★★★★。

尚,ベースのRomain Labayeのサイトにバンドでのライブの模様の写真がアップされていたので貼り付けておこう。

Personnel: Scott Henderson(g), Romain Labaye(b), Archibald Ligonniere(ds), Scott Kinsey(e-perc), Roland Ajate Garcia(conga)

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Scott-henderson-band

2024年2月27日 (火)

高橋アキが弾く佐藤聰明:このミニマルな響きがたまりません。

_20240226_0001「佐藤聰明:橋」高橋アキ(カメラータ東京)

昨年秋にリリースされていた本作に気づかないでいたのだが,先日CDをまとめ買いしようと思ってサイトを見ていて見つけてしまった。まだリリースから半年も経っていないので新譜扱いとさせて頂く。

これはまさに私の好物と言ってよい曲であり,演奏なのだが,この連作ピアノ曲「橋」は2000年より8年に渡り全5曲が作曲され、高橋アキに献呈されたものということで,高橋アキが弾くべくして生まれた曲と言ってよい。流れ出る音はMorton Feldman的なミニマリズムと言ってよいが,朝日新聞のインタビューで高橋アキは「聡明さんの音楽は『一音成仏』。ぽつん、ぽつんと置かれた数少ない音のすべてに魂が込められている。一瞬もおろそかにできないんです」と語っているが,まさにそういう感じの音楽である。

更に高橋アキは「音の数が少ないから誰でも弾けるけど、それじゃ『音楽』にならない。本当に難しい」とも言っているが,こういう話を聞いていると,この音楽への理解レベルが我々と違うという気がする。それこそ献呈された高橋アキにしか出せない音である。まさにミニマルであるから,人によっては何がいいのかわからないと言われても仕方ないが,とにかくここでの演奏には強くひきつけられてしまった私である。好きなものは仕方ないのだ(笑)。星★★★★★。

Recorded on April 18, 2023

Personnel: 高橋アキ(p)

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2024年2月26日 (月)

祝来日:James Taylorってことで,彼の旧作を。

_20240223_0001 "Never Die Young" James Taylor (Columbia)

この4月に来日公演を行うことになっているJames Taylorである。公演が東京で1回だけというのが,日本における今のJames Taylorの受け入れられ方なのかと思ってしまうが,かく言う私も都合がつかないため行く予定はない。都合がつきさえすれば,多分行っていたと思えるだけにちょっと残念ではある。何と言っても米国の国民的な歌手という位置づけは揺るがないところだけに,やはり見ておきたいという思いは強いのだ...。

ということで,ライブには行けそうにはないが,私としても結構な数のアルバムを保有しているから,久しぶりに聞いてみるかということで取り出したのが1988年リリースの本作。正直言って,James Taylorのアルバムには奇をてらったところはないので,いつでも安定のJames Taylorを楽しむことができる。その中でアルバムにはそれぞれ良し悪しはあるとしても,平均点は高いのがこの人のアルバムの特徴だと思う。

このアルバムも,突出した曲はないとは言え,まぁいつもJames Taylorである。まぁ,"Sun on the Moon"なんかはワールド・ミュージック風味を感じさせるのが新機軸ってところではあるが,それでも大筋は変わらない。この人の声さえあれば成立してしまうんだろうなぁという感じもするが,私はJames Taylorはそれでいいと思う。そしていつも思うことだが,James Taylorの音楽を支えるバックのメンツの豪華さである。そうしたところにJames Taylorの米国音楽界におけるポジションが表れていると思ってしまうのだ。これだけのメンツが揃えばおかしなことにはならんというのが正直なところだが,このアルバムはちょっと甘いかなと思いつつ星★★★★ってところだろう。James Taylorと言えばこれって作品ではないが,私が保有するアルバムに限ってということにはなるが,つくづくJames Taylorに駄作はないと思わされるアルバム。

Personnel: James Taylor(vo, g), Leland Sklar(b), Carlos Ve, g), Leland Sklar(b), Carlos Vega(ds, perc), Bob Mann(g), Dan Dougmore(pedal-steel, banjo), Don Grolnick(key), Arnold McCuller(vo), Rosemary Butler(vo) with Michael Brecker(ts), "Cafe" Edson A. daSilva(perc), Jay Leonhart(b), Jeff Mironov(g), Mark O'Conner(vln), Bill Payne(synth), Greg "Fingers" Taylor(hca), David Lasley(vo), Lani Groves(vo)

本作へのリンクはこちら

2024年2月25日 (日)

Amazon Primeで「ビッグ・ガン」を観た。これって映画館で観たんだよなぁ。

Big-guns 「ビッグ・ガン("Big Guns")」(’73,伊/仏)

監督:Duccio Tessari

出演:Alain Delon, Richard Conte, Marc Porel, Carla Gravina

Webの情報によれば,この映画が日本で公開されたのが1973年秋口で,記憶が確かならば,私は神戸にあったスカイシネマで2本立て(もう一本が何だったは全く覚えていない)で観たはずなので,時はおそらく1974年,私が中学生になるかならないかの頃だったと思う。ストーリーは覚えているようで,覚えていなかった部分も多々あったが,ほぼ50年ぶりに観ているんだから当たり前だ(笑)。

改めて観なおしてみると,かなり暴力的な描写が多く,それなりにエロ・シーンもあるので,現代ならR15+ぐらいになっちゃうだろうと思える映画で,これだけ女性に対する激しい暴力シーンを入れること自体,時代を感じさせる部分がある。それを中学生になるかならないかのガキンチョが一人で観に行けるというのも時代だったのだ。

Alain Delonは典型的な二枚目役者でありながら,結構な数のフィルム・ノワール的な映画に出ている。美貌ゆえの陰影みたいなところが大体のパターンになると思えるが,以前このブログでも取り上げた「サムライ」もそんな感じであった(記事はこちら)。この映画でも裏社会の殺し屋を演じつつ,足を洗おうとして組織と対立する姿が描かれる訳だが,いろいろな都市でのロケーションやらもありながら,映画としてはイマイチ。特にいけていないのがカーチェイスのシーンで,ここまでスピード感皆無だと逆に笑える。

まぁ,Alain Delonをカッコよく見せればいいやみたいな映画で,それには成功しているとは言え,ストーリーとしては無理がある部分もあり,星★★★ってところ。それにしてもCarla Gravinaって当時結構名前を目にしたようにも思うが,私にはどこがいいのかよくわからない女優だなぁ(笑)。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

2024年2月24日 (土)

不思議なことに今まで記事にしていないJack DeJohonette Special Editionのアルバム群。ってことで,今日は"Audio Visualscapes"から。

_20240220_0001 "Audio Visualscapes" Jack DeJonette's Special Edition (Impulse!)

長年ブログをやっていても,このアルバムを取り上げていなかったかと気づいて驚いてしまうことがある。今日取り上げるJack DeJonette's Special EditionのアルバムもECM,Impulse両レーベルのアルバムを一度も記事にしていなかったのは我ながら意外であった。本来ならECMのアルバムから取り上げるべきではあるが,気まぐれでSpecial Editionとしての最終作となった本作を選ぶのが私の天邪鬼なところだが,まぁよかろう。

このメンツでのSpecial EditionはLive under the Skyにも1987年に登場していて,私は現場で観たような気もするのだが,記憶が飛んでいる。あるいはここにPat Methenyが参加したレーザーディスク(死語!)を以前保有していたので,観たつもりになっていただけかもしれない。我ながらいい加減なものだ。だが,同じ年のMiles DavisのグループとWayn ShorterとDave Liebman入りのJohn Coltrane Tributeは確実に見ている。

本作はSpecial Editionとしては,ECMからImpulseに移籍しての第2作,通算6作目のアルバムである。Impulseの初作となった"Irresistable Forces"は満面の笑みのJack DeJohnetteのジャケに違和感があって,聞いたことがない(爆)。まぁメンツは本作にNaná Vasconcelosが加わっただけなので,大きくは変わらないと想像しているが,そのうちストリーミングで聞いてみることにしよう。

それでもってこのアルバムであるが,私の中ではSpecial Editionというと,どうしてもECMの第1作の強烈なイメージが残っており,そこからはサウンド的には大きく変化したと思わせる。ここではそのアルバムでも演奏した"One for Eric"を再演しているが,曲の印象は変わらなくとも,半ばエレクトリック化したSpecial Editionもなかなか面白いと思わせる。そしてECMのアルバムよりはずっと聞きやすいようにも思える。その辺りが後期Special Editionへの評価の分かれ目になるのではないかと思える。私の場合,ECM第1作のハイブラウな感覚がどうしても頭から離れない。それぐらい強烈な印象を残すアルバムだったが,本作も凡百のアルバムに比べれば,ハイブラウであることには間違いない。

まぁ全編を通しで聞くと74分以上の長尺ではあるが,だれずに聞かせるところはやはり大したものだと思わざるをえないが,このメンツであるから,これぐらいは軽々と行けそうだというのも正直なところ。それでも硬軟取り混ぜて,この長編を聞かせるのがJack DeJohnetteのJack DeJohnetteたる所以。星★★★★。

Recorded on February 1-3, 1988

Personnel: Jack DeJohnette(ds, key), Gary Thomas(ts, fl, b-cl), Greg Osby(as, ss), Mick Goodrick(g), Lonnie Plaxico(b)

本作へのリンクはこちら

2024年2月23日 (金)

Boz Scaggs@東京ドームシティホール参戦記。

Boz-scaggs-live

Boz Scaggsも今年の6月で80歳になるそうだ。今回は5年ぶりの来日だが,次はあるのか...と考えると行かざるを得ないのが長年のファンの務めである(笑)。それにしても,世間には同じことを考えている人が多いのか,東京公演が追加公演含めて3日間ともソールド・アウトというのは凄いことだ。Boz Scaggsの神通力は衰えずってところか。ということで,私も"Hits!"を聞きながら現地に向かったのであった。いずれにしても,私にとっては約10年ぶりのBoz Scaggsのライブであったが,会場は高齢者の集まりのノリ(爆)って気もする年齢層の高さ。

演奏はアルバム"Some Change"から"Sierra"で渋くスタートし,前半はゆったりとした感覚でムーディーと言ってもよい雰囲気で進んだ。この辺りがBoz Scaggsの年齢相応?と思わせる部分もあったのだが,全編を通して新旧のレパートリーを取り混ぜ,ブルーズも炸裂させながら歌うBoz Scaggsの声の若々しいことよ。キーは幾分下がったのは仕方がないところだが,ファルセットも含めてちゃんと声が出ているのは,まさに日頃からのヴォイス・トレーニングの賜物だろうと言いたくなるような歌いっぷりであった。

聴衆に受けるのが"Silk Degrees"や"Middle Man"からの曲であることは仕方なかろうが,現在のBoz Scaggsのよりブルーズ指向を強めた歌と演奏も十分楽しめるものであった。Boz Scaggsはギターを何本か変えながら演奏していたが,やはりこの人,ギターの腕は相変わらず達者なものだ。この日弾いたのも,アコースティック,セミアコ,ストラト・タイプ,レスポール・タイプ,そしてSGタイプの5種類だったと思うが,ソロもちゃんと行けているところが素晴らしい。

そして,本編で約90分歌い続け,更にアンコールで4曲歌うというその体力に感心し続けた還暦過ぎの私であった。そうは言っても,"We’re All Alone"は2013年に渋谷で観た時も厳しいと思ったが,人気曲ゆえに外せないとしても,やっぱり今のBoz Scaggsにはこの曲は厳しかった気がする。"Harbor Lights"で聞かせた歌唱の真っ当さに比べるとやはり粗が目立つ気がした。

それでも,日頃からレギュラーで演奏しているバック・バンドとのコンビネーションもよく,バンド自体も非常に引き締まった演奏で応えていた。昔であったらバッキング・ヴォーカルに女性シンガーを入れることが多かったBoz Scaggsだが,ドラムスのTeddy CampbellとパーカッションのBranlie Mejiasがその役割をきっちりこなしていたのにも感心してしまった。少々ギターのMike Millerの音がでか過ぎると感じる一方,Boz Scaggs自身のギター・ソロのボリュームが低かった気もするが,PAのバランスとしては大きな瑕疵はなく,全体的に満足のいくライブであった。私の目はついついベースのWillie Weeksに向けられることも多かったが,やはりこの人の安定度は素晴らしいと思えた。

当日のセットリストは下記で間違いないと思う。

  1. Sierra
  2. Miss Riddle
  3. Last Tango on 16th Street
  4. Jojo
  5. The Feeling Is Gone
  6. Slow Dancer
  7. Rock and Stick
  8. Thanks to You
  9. It’s Over
  10. Harbor Lights
  11. Look What You Have Done to Me
  12. Radiator 110
  13. Loan Me a Dime
  14. Lido Shuffle

Ec.1

  1. What Can I Say
  2. Lowdown
  3. We’re All Alone

Ec.2

  1. Breakdown Dead Ahead

尚,当日は写真撮影NGだったので,上の写真は昨年のライブの模様をWebで拝借したもの。下の写真はウドーのサイトにアップされていた2/19の公演時の写真。当日の雰囲気もこれとほぼ変わらないものであった。

Live at 東京ドームシティホール on Feburuary 21, 2024

Personnel: Boz Scaggs(vo, g), Mike Miller(g), Michael Logan(key, vo), Eric Crystal(ts, ss, key, melodica, g), Willie Weeks(b),  Teddy Campbell(ds, vo), Branlie Mejias(perc, vo)


Boz-scaggs-live_udo1_20240222085701

2024年2月22日 (木)

こんなのも持ってましたってことでJoe Jacksonのライブ盤。

_20240219_0002 "Afterlife" Joe Jackson Band (Rykodisc)

CDラックを見ていて,おぉ,こんなのも持っていたなぁなんて思うことが結構あるが,このアルバムもそんな感じである。しかもよくよく見ればボーナス・ディスク付きの2枚組。すっかり忘れていたわ(爆)。

このアルバムは2002年から2003年にかけての再編Joe Jackson Bandのライブの模様を,ツアー後半の米国西海岸4か所での演奏を集中的に収録したもの。ミキシングのせいもあると思うが,かなりラフな感じのサウンドに仕上がっていて,ライブ感が横溢している。逆に言えば,ちょっとうるさく感じさせるところもあるが,ロックだと思えば腹も立たない。但し,Joe Jacksonと言えば"Steppin’ Out"でしょとか思っていると,イメージが随分違うように思える。こんな激しかったっけ?と感じる部分もあって,私が聞いていて思ったのはデビュー直後のElvis Costelloみたいに響く部分もあるってことか。

Joe Jacksonという人は,キャリアの途中でうつ病になったりして,なかなか波乱万丈の人生を歩んでいるようだが,このアルバムがレコーディングされたのは復活後の吹っ切れた姿ってところかもしれない。オリジナルのバンドを再編しての気安さもあったかもしれないが,勢いのあるライブ盤となった。星★★★★。

尚,ボーナス・ディスクには同じツアーから,約3か月前のアムステルダムでのライブの模様が収められていて,こっちも同じような感じながら,収録時間はこちらの方が長く,多分ライブの場での演奏はこの曲順だったんだろう。構成されたショーとしての盛り上がり感は実はこっちの方が楽しめるかもなぁ。こちらではBeatlesの"Girl"を弾き語りでやっているのも面白かった。ということで,ファンの皆さんは2枚組をゲットしましょう(笑)。

Recorded Live at the Fil,ore, San Francisco on August 27, at the House of Blues, LA on August 28, at the House of the Blues Anaheim on August 29 and at 4th and B, San Diego on Augisut 31, 2003

Bonus Disc Recorded Live at the Heineken Music Hall, Amsterdam on May 30, 2003

Personnel: Joe Jackson(vo, key, melodica), Graham Maby(b, vo), Dave Houghton(ds, vo), Gary Sanford(g, vo)

本作(ボーナス・ディスク付き)へのリンクはこちら

2024年2月21日 (水)

"Secrets":Herbie Hancockのファンク・アルバムだが,ゆるくて燃えないなぁ...。

_20240219_0001 "Secrets" Herbie Hancock (Columbia)

Herbie HancockのColumbiaボックスから本作を聞いた。本作の次に出るのが”V.S.O.P."となるのだが,アナログならそのD面に収められているファンク・チューンを演奏しているのが,このアルバムの主要メンツなのだが,随分印象が違う。"V.S.O.P."の演奏がファンク度が強い演奏だったのに比べると,ここでの演奏はよく言えばメロウ度が高く,悪く言えばゆるい。特にアナログで言えばA面の3曲はいけていない。典型的なのが"Cantaloup Island"の再演だろうが,なんじゃこれは?のレベルではがっくり来る。

まぁ,アナログだとB面に転じて,"V.S.O.P."にも収められた"Spider"はライブ音源同様の演奏で許せる出来だと思えるし,後にLee Ritenourがバンド名とした"Gentle Thoughts"はソフトながらもなかなかの佳曲だとは思う。Paul Jacksonのベースかくあるべしと思わせる"Swamp Rat"や,ラストのBennie Maupin作"Sansho Shima"もHerbie Hancockのピアノ・ソロがいかにもでいいのだが,全体的にもう少しヘヴィな感覚があってもよかったように思える。

ということで,私が本作をアナログで保有していれば,おそらくB面しか聞いていなかったであろうアルバム。こういうのを聞くと,やっぱり"Flood"って最高だったよなぁなんて思ってしまう私である。星★★★。このアルバム,7曲中5曲にMelvin Raginなる人物が作曲で絡んでいるが,これはWah-Wah Watsonのことだそうだ。ということで,このアルバムのサウンドにはWah-Wah Watsonの関与度が高いということになるな。

Personnel: Herbie Hancock(p, el-p, key, synth), Bennie Maupin(ts, ss, saxello, b-cl), Wah-Wah Watson(g, synth, b, vo), Ray Parker, (g, synth, b, vo), Ray Parker, Jr.(g, vo), Paul Jackson(b), James Levi(ds), Kenneth Nash(perc), James Gadson(ds, vo), Art Baldacci(vo), Fred Dobbs(vo), Don Kerr(vo), Chris Mancini(vo)

本作へのリンクはこちら

2024年2月20日 (火)

Wayne Shorterのブートレッグ:テンション高過ぎである。

Zero-gravity-2016 "Zero Gravity 2016" Wayne Shorter Quartet (Bootleg)

早いもので,Wayne Shorterがこの世を去って間もなく1年になる。私がWayne Shorterのライブを観たのは2014年に遡る(その時の記事はこちら)が,それは物凄いテンションで迫ってきたのが今でも忘れがたい。このWayne Shorterが率いた最後のクァルテットはアルバムでも,ライブでも無茶苦茶高度な演奏をしていた訳だが,こういうブートを聞いていると,それを改めて追体験するには最適だと思えてしまう。

このブート,Definitive Blu-ray Editionとなっていて,演奏の模様がBlu-rayに映像でも格納されていて,音源は映像をソースとするものだと思う。ただ,私の場合,音楽に関しては映像よりも音指向なので,音だけでも十分なのだが,まぁ付加価値として映像が付いていることに文句はない。

それにしても,2014年に聞いた彼らのライブを思い起こさせる緊張感には改めて驚いてしまうが,この時,Wayne Shorterは80歳を過ぎていたということには驚愕させられる。後に"Children of the Light"としても活動を続けるバックのトリオも超優秀で,この4者の一体感も素晴らしい。

しかし,これだけのテンションの高さゆえ,しょっちゅう聞きたいとは思えないのも事実だが,Wayne Shorterのクリエイティビティを振り返る意味では避けては通れない音源である。まさにこの時点でWayne Shorterは人間国宝と呼ぶに相応しい人であった。

Recorded Live at Bela Bartok National Concert Hall, Budapest, Hungary on April 11, 2016

Personnel: Wayne Shorter(ts, ss), Danilo Perez(p), John Patitucci(b), Brian Blade(ds)

2024年2月19日 (月)

Amazon Primeで観た「情無用の街」

Street-with-no-name 「情無用の街 ("The Street with No Name")」(’48,米,Fox)

監督:William Keighley

出演:Mark Stevens, Richard Widmark, Lloyd Nolan, John McIntyre, Ed Begly

最近,入浴中に川本三郎と逢坂剛の趣味趣味対談本「さらば愛しきサスペンス映画」を再読しているのだが,そこに出てくる映画が気になって仕方がなくなってしまい,AmazonやNetflixで観られそうなものを探していたら,あった,あったということでこの映画である。

この映画の主役はFBIの潜入捜査官を演じるMark Stevensではあるのだが,この映画のポスターを見ればわかる通り,Richard Widmarkの存在感が圧倒的な「フィルム・ノワール」となっている。ここでのRichard Widmarkを見ていると,黒澤映画で「用心棒」や「椿三十郎」で三船敏郎に対峙する仲代達矢のひな形と言いたくなるような造形であった。若干Richard Widmarkの方が粗野には写るが,風貌と言い,ついつい私は仲代達矢を思い出していたのであった。

ストーリーとしては実際の事件に基づくものを描いていて,FBIの捜査手法がそうなっていたのか~なんて思わせる部分もあるが,まぁストーリーとしては大したことがないと言えば大したことはない。しかし,こういう映画を見ていると古き佳き時代って気もして,結構楽しんでしまったのであった。星★★★☆。また,こういう古い映画を探してみようと思わせる動機づけには確実になった。

本作のDVDへのリンクはこちら

2024年2月18日 (日)

デンマークの叙情派ピアニスト,Søren Bebeの新作がまたも到着。今度は未発表曲の拾遺集。

First-song"First Song" Søren Bebe Trio (From Out Here Music)

先日,Søren Bebe Trioの新作"Here Now"を取り上げたが,非常に短いインターバルで,またまた新作が届いた。新作と言っても,これはこれまでリリーズ済みのレコーディングで,未発表となっていた演奏の拾遺集という位置づけなので,純粋な新作とは言えない。しかし,この人が紡ぎ出す美的フレージングは,北欧ジャズ・ファンには訴求力を以て迫ってくるはずなので,今回も本人のサイトから直接仕入れたもの。

そして今回のアルバムのキモは,Charlie Hadenの名バラッド,"First Song"の収録だと思えるが,冒頭に収められたこの曲の演奏はこちらの期待値にちゃんと応えるものとなっていて,相変わらず美しいピアノが楽しめる。そのほかの曲も実に美的でうっとりしてしまうような演奏ばかりだと言ってもよい。

まぁ,そうは言っても,未発表音源を集めたものなので,オリジナル・アルバムと同列に扱ってはいけないとは思いつつ,かなり満足度は高い。ただ,Ravelの「亡き王女のためのパヴァーヌ」だけは,どうもそもそもの主題のメロディ・ラインが生硬な感じがするのは惜しいと思えた。アドリブ・パートになれば気にならなくなるのだが,それでもこの曲に関してはちゃんとテーマを弾いてこそ評価されるべきだということを差し引いて星★★★★。

それでも,これだけの演奏を聞かせてもらえれば,相応に満足度は高い。結局,何だかんだと言って,私がSøren Bebeのアルバムを買い続けていることからすれば,彼のマーケティング戦略にはまっていることは間違いないのだが,それでもより幅広いオーディエンスに知られてよいピアニストということで,これからも応援していきたいと思う。

Recorded in November 2015, January 2019 and April 2023

Personnel: Søren Bebe(p), Kasper Tagel(b),Knut Dinsrud(ds), Anders Mogensen(ds)

2024年2月17日 (土)

Little Feat: このファンキーさがたまらない。

_20240215_0002 "The Last Record Album" Little Feat (Warner Brothers)

Warner時代のLittle Featのボックス・セットをオークション・サイトで仕入れてから1年以上が経過しているが,まだ全部聞いていない(爆)。まぁ時間を掛けてゆっくり聞いていこうと思っていたが,それにしても時間を掛け過ぎって言われれば返す言葉はない。それでもって,今回は彼らの5枚目のアルバム。タイトルからして,最終作かと思ってしまうが,そんなことはない。このタイトル,映画"The Last Picture Show"のパロディだそうだ。

この次の6作目,"Time Loves a Hero"で随分雰囲気を変えるLittle Featだったが,ここではいかにもLittle Featな音に満ちていて,こういう音が好きなリスナーにとってはたまらない。やれ,Paul BarrèreやBill Payneのジャズ/フュージョン指向が表れたとも言われるが,私には全くそういったところを感じない。敢えて言うならば若干サウンドの洗練度が増したってところではないか。

ここでのサウンドを聞いていて感じるのはLowell Georgeのスライドがキモであることは事実としても,私はBill Payneのエレピの音が全体像を決定づけているように思える。もちろん,バンド全体でLittle Featなのだが,私にはBill Payneのエレピが何とも魅力的に響いてきた。前作も好きだったが,私にとっては同様に魅力的なアルバムであった。前作との差をつけるために星★★★★☆とするが,やっぱりLittle Featっていいねぇと思わせるに十分。

Personnel: Bill Payne(key, vo), Richie Hayward(ds, vo), Lowell George(g, vo), Ken Gradney(b), Sam Clayton(perc), Paul Barrère(g, vo), John Hall(g), Valerie Carter(vo), Fran Tate(vo)

本作へのリンクはこちら

2024年2月16日 (金)

Vijay Iyerの新作:これは凄い!近年稀に見る傑作と言いたい。

_20240215_0001"Compassion" Vijya Iyer (ECM)

プレイバックを開始した瞬間から心を捉えられてしまう音楽というのはなかなか出会えるものではない。先日のMeshell Ndegeocelloのライブの素晴らしさにも似た感覚を,CDで味わってしまったというのがこのVijay Iyerの新作である。

鋭いテンションに満ちた演奏が続き,一部フリーな展開もあることはあるのだが,決して聞きづらい音楽ではない。全編を通じてジャズ的なスリルを感じさせながら,熱量だけではないVijya Iyerらしい理知的な部分を持ち合わせた音楽は,近年のピアノ・トリオのアルバムでも最も傑出した一枚と言ってもよいかもしれない。私はVijay Iyerのアルバムは参加作を含めて高く評価し続けてきた。昨年も異色のアンビエント・ライクな"Love in Exile"さえベスト作の一枚に選んでいる(同作に関する記事はこちら)ぐらいなので,基本的に評価に値する活動を継続していると思っている。そんな中でもこのアルバムは,私の中でのVijay Iyerへの評価を更に高めるアルバムとなった。まだ2月ではあるが,今年のベスト作の有力候補であることは間違いないところ。

Vijay Iyerの魅力的なオリジナルに加えられたカヴァー曲がまた見事。Stevie Wonderの"Overjoyed"をこれほどスリリングな演奏にアダプテーションしたところからして興奮させられるし,Roscoe Mitchellの"Nonah"のフリーな展開も,アルバム中のChange of Paceとして適切。そして最後を飾るのがJohn Stubblefieldの"Free Spirits"とGeri Allenの”Drummer’s Song"のメドレーなのだが,Geri Allenをカヴァーするのはわかるが,John Stubblefieldというのが意外でありつつ,この"Free Spirits"というのがなかなかの佳曲でびっくりであった。大した審美眼である。

本作は体裁としてはManfred EicherとVijay Iyerの共同プロデュースってかたちになっているが,おそらくEicherとしてもVijay Iyerにかなり自由にやらせたって気がする。いずれにしても,Linda May Han Oh,Tyshawn Soreyという強力な共演者に恵まれたことも有効に作用して,これこそ真の傑作と評価したくなる逸品。星★★★★★。素晴らしい。

Recorded in May 2022

Personnel: Vijay Iyer(p), Linda May Han Oh(b), Tyshawn Sorey(ds)

本作へのリンクはこちら

2024年2月15日 (木)

Meshell Ndegeocello@Billboard Live東京参戦記。

Meshell-ndegeocello-at-billboard-live

Meshell Ndegeocelloが,先日のグラミーでBest Alternative Jazz Albumを受賞したばかりというタイミングで来日を果たしたので,Billboard Live東京に出かけてきた。私はMeshell Ndegeocelloの最新作,"The Omnichord Real Book"を昨年のベスト作の一枚に選んでいることもあり,私はチケット発売のタイミングで購入して,このヴェニューではいつものカジュアル・シートで演奏を聞いてきた。純粋に音楽を聴くだけなら,ワンドリンクの付いたカジュアル・シートで十分なのだ。いずれにしても客席はカジュアル・シートを含めてソールド・アウトの聴衆で埋まっていた。

結論から言えば,実に素晴らしいライブで,ヘヴィーなファンク,ソフトなソウルを交えながら,非常に質の高い演奏を聞かせてくれた。そもそもこのバンド,"The Omnichord Real Book"の主要レコーディング・メンバーでもあり,演奏能力の高さに加え,コンビネーションは熟成され,演奏の引き締まり具合は最高レベルと言ってもよかった。

私が近年ライブ・ハウスで聞いた演奏の中でも屈指のものと思えるものであり,ここまでの演奏を聞かせてくれれば大満足である。昨日,Brittany Howardの新作を褒めたばかりだが,このMeshell Ndegeocelloの演奏を聞いてしまえば,まだまだ格が違うとさえ思ってしまった私である。こんなライブを観てしまっては,ライブに求めるレベルが無茶苦茶上がってしまったではないか。そういう意味では罪作りなライブであった(笑)。もはや今年のベスト・ライブはこれだろうと思わざるをえない最高のパフォーマンスに感謝したい。

Live at Billboard Livet東京 on February 13, 2024, 2ndセット

Personnel:Meshell Ndegeocello(vo, b, key), Justin Hicks(vo, perc), Jebin Bruni(key), Chris Bruce(g), Abe Rounds(ds, perc, vo), Kyle Miles(b)

«待望のBrittany Howardの2ndアルバム。これまた強烈なロックとソウルのフュージョン。