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2025年4月21日 (月)

Jobimで休日をくつろぐ。

_20250420_0001"Terra Brasilia" Antonio Carlos Jobim (Warner Brothers)

新旧のAntonio Carlos Jobimの曲を,Claus Ogermanのアレンジするオーケストラに乗せて演奏するというアルバム。それだけで大体の雰囲気は想像できるが,想像通りの音が出てくるこの安心感。聞いていたのが休日の朝だったのだが,まったりとした時間を過ごすには丁度よい。

まぁJobim本人の歌は,味わい深いと言えるしても,むしろヘタウマと言ってもよいものだが,ここでの演奏へのフィット感は悪くない。それよりも何よりも,このアルバムで楽しむべきは,Jobimのメロディ・メイカーとしての素晴らしさであり,それに寄り添うようなOgermanアレンジのストリングスの美しさだ。一種のイージーリスニングと言ってもよいような響きを持つこのアルバムにおいても,曲の美しさが際立つというところだ。

こういう粗バムは音楽的にどうのこうの言うよりも,ただただ身を委ねればいいのだと思える一作。休日の過ごし方への貢献度含めて星★★★★☆。

Personnel: Antonio Carlos Jobim(key, vo), Claus Ogerman(arr), Oscar Castro-Neves(g), Bucky Pizzarelli(g), Vince Bell(g), Bob Cranshaw(b), Mike Moore(b), Pascoal De Soza Meirelles(ds), Grady Tate(ds), Rubens Bassini(perc), Ana Jobim(vo)

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2025年4月20日 (日)

亡き父の影響でプレイバック頻度が高いAshkenazyの演奏。

Ashkenazy-mozart "Mozart: Piano Concertos" Vladimir Ashkenazy / Philharmonia Orchestra (London)

以前にも書いたことがあるが,私の父はモーツァルトが非常に好きな人だったので,保有する結構な数のレコードの半数以上はモーツァルトのものだったと思う。そうした中で,父が聞いていた頻度が非常に高かったのが,このAshkenazyがPhilharmonia Orchestraを弾き振りしたP協の23番(とカップリングされた27番)だったと思う。

今や,私はこのコンビのP協の全集を保有しているのも,父のプレイバックによって刷り込まれた記憶が強かったからではないか。内田光子とJeffrey Tateの演奏も保有しているが,CDの枚数を抑えるために曲によってはCDで楽章またぎがあるという無粋な編集もあって,どうも手が伸びにくいのも事実。演奏はどちらも甲乙つけがたいと思いつつ,23番に関してはかつてアナログでも保有していたこともあり,私がプレイバックする機会が多いのはAshkenazyとPhilharmonia Orchestraの方なのは間違いない。 父の影響って結構色濃かったなぁなんて思っている。

モーツァルトのP協にはあまたの名演があるだろうが,久しぶりに聞いてみても,やはりこれはいい演奏だと思ってしまった。曲の素晴らしさは折り紙付きなので,今度内田光子盤も久しぶりに聞いてみることにしよう。

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2025年4月19日 (土)

Lars Jansson@Body & Soul参戦記。

Lars-jansson-at-body-and-soul-mosaic

およそ2年ぶりとなったLars Jansson Trioの演奏を観るべく,渋谷のBody & Soulに行ってきた。Lars Janssonは今年で74歳になっており,本人も"I'm getting old."と連発していたが,演奏はエネルギッシュなもので,その矍鑠とした演奏には驚かされたというのが実感だ。Lars Janssonと言えば「美メロ」という印象が強いが,"Marionette"や"Hope"と言った曲ではそうした「美メロ」も炸裂させながら,新曲として演奏した曲は8ビートも交えて,かなりアグレッシブなソロを聞かせていたのは意外であった。そこにバッハの「平均律」やドビュッシーをモチーフにした演奏も交えて,2セット2時間余りはあっという間に過ぎていったのであった。

このトリオでは長年プレイしているが,Lars Janssonがリーダーでありながら,ベースのThomas Fonnesbækの存在感が増していたように思う。ソロ・スペースも十分にあって,素晴らしい鳴りのベースで優れたフレージングを連発していた。Lars JanssonのMCによれば,このベースはRay Brownが使っていたものらしいが,さもありなんという感じであった。そしてドラムスはLars Janssonの息子のPaul Svanbergであるが,初めて見た15年前から比べると,長足の進歩を遂げていることがよくわかるドラミングであった。父親を立てつつ,叩くべきところはきっちり叩いているのが感じられて,本当に成長したなぁと感心していた私であった。

Lars-jansson-and-us-mosaic ということで終演後にご一緒した先輩とトリオと写したモザイク付写真と,昨日の戦利品2枚をアップしておこう。尚,トップの写真は聴衆の顔にもモザイクを施した。

Live at Body & Soul on April 17, 2025

Personnel: Lars Jansson(p), Thomas Fonnesbæk(b), Paul Svanberg(ds)

Lars-jansson-cds

2025年4月18日 (金)

Gil Evansの最晩年のライブ。

_20250416_0001 "75th Birthday Concert" Gil Evans (BBC Worldwide)

Gil Evansが亡くなったのは1988年のことであったが,その前年のGil Evansの誕生日にロンドンで開催されたライブ音源がこれ。もともとBBCが放送したものがソースとなっている。

私も一時期Gil Evansの音楽にはまっていて,ブートレッグやブートまがいも含めて随分な数のアルバムを購入したものだが,その活動が陽の目を見たのはMonday Night Orchestraによるところが大きいとしても,晩年には同じようなメンツによる似たような演奏が多くなって,さすがにきついと思わせたのも事実だ。私がSweet Basilで彼らを観たのは1983年8月のことだったが,その前のMiles Davisとのよみうりランドでのダブルビル・ライブ含めての記憶が鮮烈に残っているだけに,Monday Night初期と言ってよい当時とのギャップを感じるようになってきたと言うべきだろう。

この頃の演奏になると,Monday Night Orchestraに先立つ"Priestess"やPublic Theaterでのライブに比べて,クリエイティビティという点でどうしても見劣りがしてしまう。もちろんここでも有能かつ優秀なミュージシャンが参加しているので,演奏のクォリティは担保されているのだが,それでもやはり厳しいよなぁと思ってしまう。

そんな厳しさはあるものの,ここでのメンツはやはり魅力的なのは事実だ。Steve LacyやJohn Surmanがいるのは大きいし,Airtoの参加も結構珍しい。やっている曲は「いつもの」レパートリーが中心だが,この約2ヶ月後のStingとの共演を控えてアレンジしたと思われる"Murder by Numbers"と"Synchronicity"をここでやっているのが目新しいところではある。しかし,それでも全体的に演奏の冗長な感じは否めないのは致命的。ライブだから仕方ないという話もあるが,晩年のGil Evansはほぼライブ盤中心のレコーディングだったが,曲目をピックアップ編集することで何とかなっていたと言ってもよい。しかし,ライブ全体のフル収録となると,どうにも退屈な瞬間が訪れてしまう。最たる事例がDelmar Brownが自身のオリジナルで延々つまらないスキャットを聞かせる"Sometimes"であり,Airtoのソロを挟んで27分近く演じられる"Stone Free"だろう。前者はGil Evansのアレンジメントが効いているとも思えず,このバンドでやる意味が全く不明だし,後者はいかにも長いとしか言いようがない。

ということで,Gil Evansの晩節を汚すとまでは言わずとも,敢えてこのアルバムを推薦したいとは思えない。その程度のアルバムだ。星★★☆。

Recorded Live at Hammersmith Odeon on May 13, 1987

Personnel: Gil Evans(p, el-p), Lew Soloff(tp), Palle Mikkelborg(tp)Evans(p, el-p), Lew Soloff(tp), Palle Mikkelborg(tp), Miles Evans(tp), Dave Burgeron(tb), Dave Taylor(b-tb), John Clark(fr-h), Steve Lacy(ss), Chris Hunter(as), Don Weller(ts), George Adams(ts, fl), John Surman(bs, b-cl), Hiram Bullock(g), Delmar Brown(key, vo), Mark Egan(b), Danny Gottlieb(ds), Anita Evans(perc), Airto Moreira(perc, vo)

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2025年4月17日 (木)

CTIレーベル顔見世興行的なボートラ付きライブ盤。

_20250414_0001 "California Concert" Various Artists(CTI)

主題の通りである。CTIレーベルに吹き込みを行っているミュージシャンが集まって,顔見世的なセッションを聞かせたライブ・アルバム。元々2枚組のLPとしてリリースされていたものに3曲の未発表音源を加えて,トータル150分越えというオリジナルのほぼ倍という長尺盤となったもの。

冒頭の"Impressions"からして未発表音源だが,ミュージシャンの紹介から入るので,ライブの場でもこれが最初に演奏されたものであろう。ということで,手慣らしみたいな感じがあって,"Impressions"ならもっと熱くやってくれ~とさえ言いたくなってしまうようなテンポからして緩~い演奏からスタート。私のRon Carter嫌いは筋金入りだが,ここでもつまらないソロを聞かされて,面白くないことこの上ない。最初から一番気合が入っていると思えたのはメンツの中ではCTIと言うよりもKuduレーベルの人と言った方がよいJohnny Hammondであった。こういう演奏が24分近く続くと,この音源は未発表でも仕方ないよなと思ってしまう。

アナログでは1枚目の冒頭を飾っていたのが次のHubert Lawsをフィーチャーした"Fire and Rain"。Hubert LawsのフルートやGeorge Bensonのソロは聞かせるところがあるが,このお祭り的なイベントでやるにしては,少々アレンジメントが地味と言うか控えめ。

そしてこういうイベントにはこの男が必要みたいな感じで始まるのがFreddie Hubbardの"Red Clay"。オリジナルのアナログ盤ではA/B面に分かれて収録されるという憂き目に遭ったこの曲であるが,ここではCDの強みを活かして,そうした無粋な編集は行われていない。だが,この"Red Clay"とて,もっと熱くできるだろうと思えるのは,Freddie HubbardのバックでのBilly Cobhamのドラムスが結構控えめに感じられるせいのようにも思える。Stanley Turrentineのバックになって,ようやくBilly Cobhamらしくなるって感じなのが惜しい。まぁ後半のFreddie Hubbardはそれなりに吹いているのだが,もっとできたよなと思う。

続くDeodato作の"Blues West"は文字通りのブルーズ。こういうのは一丁上がりてきな演奏にはいいだろうが,だからどうなのよ?とも言いたくなる。それに比べれば,短いながらも"So What"はGeorge Bensonのショーケース的な演奏としてはまだ聞ける。

CD2枚目に移っても,どうもこれはいけていないと思える演奏が続く。そもそも選曲として"It's Too Late"のアドリブ・パートはまだしも,テーマ部分なんて,完全にずっこけるような演奏ぶり。Stanley Turrentineの"Sugar"もFreddie Hubbardの"Straigh Life"もオリジナルの方が圧倒的にいいのではなんだかなぁとなってしまう。その場にいれば感慨も違おうが,こりゃあダメだと改めて思ったのであった。

このアルバムのライナーではBob Beldenが「お仕事」的にこの時の演奏を褒めちぎっているが,それほどのものとは到底思えない。ついでに言っておくと,MCを務めたのはオーナーのCreed Taylorだと思うのだが,曲中に喋りを入れたりして,ちょっとうるさいんだよねぇ。それぞれのソロには相応に聞きどころはあっても,あまり面白いとは思えないアルバムであった。星★★。次回売却候補だな(爆)。

Recorded Live at the Hollywood Palladium on July 18, 1971

Personnel: Freddie Hubbard(tp,fl-h), Hubert Laws(fl, piccolo), Hank Crawford(as), Stanley Turrentine(ts), Johnny Hammond(org, el-p), George Benson(g), Ron Carter(b), Billy Cobham(ds), Airto Moreira(perc)

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2025年4月16日 (水)

Beatlesは好きだが,何でもOKとはならないというのが初期のアルバムでははっきりしてしまう。それでも温故知新だが。

Please-please-me

"Please Please Me" The Beatles (Parlophone)

昔からBeatlesの音源は聞いてきた私だ。私の音楽体験の根底にBeatlesがあるのは間違いないし,ロックの世界で彼らの音楽を無視することができないのは当たり前だ。そうは思っていても,アルバム単位で言えば"Rubber Soul"以降でいいだろうとずっと思ってきた。私は彼らのアルバムがオリジナル・アルバムを集成した"The Beatles Box"がリリースされた時に購入しているが,初期のアルバムは全くプレイバックしたことがなかった。初期の音源を聞くならば,ベスト盤である「赤盤」で十分だと思っているし,何でもかんでもOKと言うつもりもないのだ。

しかし気まぐれでこのアルバムを「初めて」聞いた(爆)。この偏り方はどうなのよと言われれば抗弁することは不可能だが,曲としてはまだまだ大したことないよなぁと思いつつ,このアルバムを聞いていて,Paul McCartneyのベース・ラインって当時としては画期的だったのかもしれないなぁなんて感じていた私である。まさに温故知新だよなぁ。今更評価するまでもないと思うが,「赤盤」に入っているオリジナルと,カヴァー曲では馴染方の違いもあるが,曲の魅力に違いが大きいと改めて感じたのであった。"Taste of Honey"なんて全然面白くない(きっぱり)。

だが,こうした温故知新によって,今まで無視してきたほかのアルバムも聞いてみようという効果は間違いなくあった。ということで,何を今更ではあるが"Rubber Soul"の前のアルバムも発展途上の音楽と思って楽しむことにしたい。

2025年4月15日 (火)

入手してから随分になるが,記事にしていなかったDouble ImageのECM作。

Dawn"Dawn" Double Image(ECM)

CD化されていないこのアルバムはずっと欲しいと思っていて,中古で見つけた時は実に嬉しかった。今やECMの音源はストリーミングでほぼすべて聞けるはずだが,それでもどうしてもアナログで欲しいものはあるのだ。入手したのは随分前のはずだが,記事にしていなかったのはなんでだ?と思いつつ,改めて聞いてみた。

ヴァイブとマリンバを持ち替える二人の奏者にベース+ドラムスという編成は実にユニークなものだったと思うが,ECMらしいというか,実にクールな音場だ。そして実は私はここでドラムスを叩いているMichael DiPasquaが結構好きで,この人が参加しているアルバムは私へのフィット感が強いのだ。Gallery然り,Ralph Townerの"New Friends, Old Friends"然り,Eberhard Weberの"Later That Evening"然りだ。ここでの叩きっぷりはDouble Imageというユニットに合わせてか,比較的控えめだが,この人の生み出すビートが何とも心地よく感じる。意外なのは,その後Harvie SなんてShiela Eの出来損ない(爆)みたいな名前を名乗ることになるHarvie Swartzが,楚々としながら,牧歌的とも言えそうなバッキングやソロを聞かせることで,こういうのを聞くと,Steve Kuhnとのデュオとかこのアルバムみたいな路線を続ければよかったのに...とさえ思ってしまう。

それはさておき,このDouble Imageというユニットは,ヴァイブとマリンバの金属と木の音の違いをうまく活かしたバンドだったと改めて思う。ヴァイブ2台でも,マリンバ2台でもこの音は出ない訳で,編成による計算された美学を感じる訳だ。そして全編,決して熱くなることはないが,そこにMichael DiPasquaのコンベンショナルではないドラミングが加わって,ますます面白さを感じてしまうのだ。B面1曲目の"Sunset Glow"辺りがその典型で,静~動~静のような流れが何とも心地よい。

正直言ってしまえば,アルバムとしては面白さを感じさせる部分と,そうでもない部分が混在しているが,私にとってはこのアルバムに関しては保有していることに意義があるのだと開き直っておこう。星★★★★。

Recorded in October 1978

Personnel: Dave Samuels(vib, marimba), David Friedman(marimba, vib), Harvie Swartz(b), Michael DiPasqua(ds)

2025年4月14日 (月)

Wilson姉妹に父も一部加わっての"The Wilsons"。

_20250410_0001"The Wilsons" (Mercury)

Wilson Phillipsとしてヒットを飛ばした後,一旦Chynna Phillipsが抜けて,残ったCarneyとWendyのWilson姉妹でリリースしたアルバム。ライナーのクレジットには彼女たちはWilson Sistersと書いてあるが,タイトルがThe Wilsonsとなっているのは,父であるBrian Wilsonの関与を踏まえたものだろう。Brian Wilsonが参加しているのは全12曲中4曲だけだが,姉妹とともにエグゼクティブ・プロデューサーとなっているので,一家での対応ということでThe Wilsonsってところか。

冒頭の父も参加した"Monday without You"からしてBeach Boysかっ!って感じのサウンドが微笑ましい。彼女たちのポップ・センスはWilson Phillipsのそれと大きな変化はないと思うのだが,アルバムを聞いていて感じるのが,特にCliff Magnessがプロデュースした曲に顕著なように,曲によって彼女たちにはやや過剰なバッキングが目立つってところだろうか。私の感覚で言えばオーバー・プロデュース,オーバー・アレンジメント気味なのだ。ミキシングも彼女たちにはやや低音過剰のファットな感覚があるのも気になる。彼女たちの魅力的な声を活かす方策はほかにもあったように思えるところがこのアルバムの惜しいところ。まぁ複数のプロデューサーが絡んでいるので,仕方がない部分もあるが,そこはエグゼクティブ・プロデューサーである彼女たち本人,そして父たるBrian Wilsonがもう少しコントロールしてもよかったように思える。

_20250410_0002_20250414175601 まぁ,そうしたところはWilson Phillipsのイメージと異なるものを打ち出したいという意図もあったのかもしれないが,必ずしも成功していないように思う。私もそうだが,別にWilson Phillipsの路線から大きく変わることを期待していない。そうしたところが少々残念。いい曲もあるんだけどね。星★★★。まぁそれでも裏ジャケに写る3人の姿は微笑ましい限りだが。

参加ミュージシャン多数なので,詳しいPersonnelは省略。1曲だけだがSteve Rodbyの名前を見つけたりしてへぇ~となってしまった。

Personnel: Carney Wilson(vo), Wendy Wilson(vo), Brian Wilson(p, vo) and Many Others

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2025年4月13日 (日)

全然認識していなかったDave LiebmanのColtrane集。曲は濃いが演奏は軽め。

_20250409_0001 "Selflessness: The Music of John Coltrane" Dave Liebman Expansions(Dot Time)

二日連続のDave Liebmanである(笑)。昨日Dave LiebmanのThelonious Monk集を取り上げて記事を書きながら,久しぶりにLiebmanのWebサイトを覗いてみた。ディスコグラフィが2022年で止まっているが,これまでの活動を考えると,何かあったのかと思ってしまう。そこで見つけたのが2021年リリースの比較的新しい本作。これまでもColtrane集を吹き込んでいるDave Liebmanによる最新のColtraneへの取り組みが本作。ここで率いるグループ,Expansionsはベテランと若手の混成軍となっていて,Dave Liebmanが若手を鍛える場としてやっている感じだ。そこで取り上げるのがJohn Coltraneの音楽というのは,若い衆も決して避けては通れないという感覚だろう。

そして,私がこれを買いだと思ったのはその曲目(とその値段:笑。安かったのだ)にある。"Mr. Day"に始まり"Dear Lord"で締める曲目が実に濃いのだ。"Compassion","My Favorite Things","Ole","Lazy Bird","Peace on Earth","One Up One Down",そしてタイトル・トラックとかを並べられたらそりゃあ気になるわ。Dave Liebmenのことだから,思い切りハイブラウに攻めることもできただろうが,ここでは比較的あっさりやっているのは意外であった。アルトを吹くMatt Vashikishanはウインド・シンセも使っているし,ピアノのBobby Aveyはエレピやシンセも演奏していて,ゴリゴリだけではない感覚を付与しているのがDave Liebmanとしては珍しい気がする。そうした印象は録音のせいもあるかもしれない。しかし,Liebmanの吹くソプラノは相変わらずのLiebman節の連発だが。

更にここでやっているような曲を演奏すれば,1曲当たりの時間が長くなりそうなものだが,本作では最長の"My Favorite Things"でも8:35というのも意外だし,アレンジも意表を突いている。全体的にはコンテンポラリーな感覚も残しながら,軽い演奏が多いのだ。それでもこういうのもありだなと思わせる部分があって,やれ精神性がどうのこうのとかいう小難しいことを言わずに,John Coltraneの曲に取り組むやり方としては一つの方法論だろうと思えた。そして鍛錬中の若手二人,Matt VashikishanとBobby Aveyはかなりの実力者だと思えるプレイぶりも,メンターとしてのDave Liebmanの賜物であろう。

ここでの演奏をDave Liebmanのファンがどう思うかという部分はあると思えるし,私としてはもう少し暑苦しい感じの方が好みなのも事実だが,私はこういうやり方もありだと思えた。星★★★★。

Personnel: Dave Liebman(ss, wooden-fl), Matt Vashilishan(as, fl, cl, wind-synth), Bobby Avey(p, key, synth), Tony Marino(b), Alex Ritz(ds)

本作へのリンクはこちら。今見たら値段が跳ね上がっている...。私としてはラッキー,ラッキー(爆)。

2025年4月12日 (土)

これも久しぶりに聞いたDave LiebmanによるMonk集。

_20250408_0001 "Monk's Mood" Dave Liebman Trio(Double-Time)

Dave Liebmanは多作の人なので,その活動を追いかけるのもなかなか大変だ。久々にプレイバックしたこのアルバムは1999年にリリースされたThelonious Monk集だが,Dave Liebmanがピアノレスで吹きまくるところがポイント。ベースはあまり私が好きではないEddie Gomezなのだが,ここでのEddie Gomezはいつもよりも落ち着いた音色で苦にならないのがよい。ドラムスは何でもこなせるAdam Nussbaumなのでそちらは安心だ。

ピアノレスという編成も手伝って,フリー的なアプローチも交えつつも,比較的コンベンショナルな演奏が聞ける。よく知られた曲もあれば,あまり聞いたことがない曲まで,いかにもMonkらしい曲が並んでいるが,"Monk's Mood"は冒頭と最後の2回演じられる。どちらもEddie Gomezとのデュオで演じられるが,冒頭ではソプラノを吹くが,最後ではLiebmanがピアノを弾く。この2回の演奏で,"Thelonious Himself"におけるMonkとJohn Coltraneの演奏にオマージュしたってことのようにも思える。

イメージ的にはDave LiebmanとThelonious Monkはなかなか結び付かないが,ライブの場でのSteve Lacyとの共演が一つのトリガーになったようだ。まぁSteve Lacyと言えばMonkのエキスパートだけに,相当啓発された結果がこういうアルバムに結びついたのだと考えれば納得である。星★★★★。

Recorded on January 31, 1999

Personnel: Dave Liebman(ts, ss, p), Eddie Gomez(b), Adam Nussbaum(ds)

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2025年4月11日 (金)

"Blues Breakers with Eric Clapton":この段階でEric Clapton既に恐るべし。

_20250407_0001 "Blues Breakers with Eric Clapton" John Mayall (Decca)

近く来日を控えるEric Claptonであるが,私は今回のライブには参戦するつもりはない。Steve Winwoodとのライブを聞いたのが2011年で,Claptonの単独公演は多分2006年に行ったのが最後だと思う。このブログを開設したのが2007年で,それ以降の来日時に行っていれば記事化しているはずだが,何も書いていないから多分2006年だろう。その段階からアンコールに確か"Over the Rainbow"をやっていて,何だかなぁと思っていたのだが,Winwoodとのライブは無茶苦茶よかった。やはりEric Claptonには鬼のようなギターを弾いて欲しいのだ(きっぱり)。そうした意味でJeff Beckとの共演を聞き逃したのは一生の痛恨事だ...。

そんな鬼のようなギターを弾くEric Claptonが聞けるアルバムがこれだ。この時Eric Claptonは弱冠21歳。そうとは思えぬフレーズを連発するここでのEric Claptonには,ギタリストとしてのClaptonの理想形が聞けると言いたい。このアルバムのリーダーはJohn Mayallだとしても,本作はあくまでもEric Claptonを聞くためにあるもので,後にFleetwood Macを支えるJohn McVieのベースがこれまたよいのだ。ブルーズ・ロックかくあるべし。星★★★★★。

今回,久しぶりに聞いてジャケを眺めていたら,ホーン・セクションにUKジャズ界で名を成すAlan Skidmoreの名前を見つけて,へぇ~となってしまった私である。

尚,ジャケ写真は私が保有するCDのものだが,もともとDeccaと書かれていたところが,似たようなフォントで再発元のDeramとなっているのが笑える。

Recorded in May, 1966

Personnel: John Mayall(vo, p, org, hca), Eric Clapton(g, vo), John McVie(b), Hughie Flint(ds), Alan Skidmore(ts), Johnny Almond(bs), Derek Healey(tp)

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2025年4月10日 (木)

Francesco Dillon@イタリア文化会館参戦記。

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毎度お馴染み,九段下にあるイタリア文化会館における無料コンサートにまたも行ってきた。今回はトリノ出身のチェリスト,Francisco Dillonによる無伴奏リサイタルであった。いつも思うのだが,この無料コンサート,聴衆の年齢層が高い(私より上多数)のはいつもの通りだが,大概の場合,早めに申し込まないとキャンセル待ちになってしまう。今回も座席は完全に満席状態だったが,どういう人たちなのかと思ってしまう。私のような純粋音楽好きばかりとは思えないのだが...。

今回も九段下へいそいそと向かった私であったが,九段下界隈は千鳥ヶ淵の花見に訪れた人々で大混雑。これで武道館ライブなんかと重なったら目も当てられなかっただろう。しかも,この日はライトアップ最終日ということもあり,インバウンド含めた老若男女で九段下から市ヶ谷方面へ向かう坂道は人で溢れていた。上の桜の写真はライブ後の帰り道に撮ったものだが,私は人ごみを避けて,靖国通りの逆側(靖国神社側)から撮影したのであった。無粋と言えば無粋だが,これでも十分だろう。

Francesco-dillon それはさておきである。今回の無伴奏チェロのリサイタルはバッハから現代音楽まで幅広いプログラムで,よく言えば意欲的なのだが,聴衆にとっては現代ものは相当ハードルが高い。私の場合,現代音楽に抵抗はあまりないのでまだいいとしても,一般的には聴衆の頭の上を???が飛び交う感じだろう。逆に言えば,今回演奏したのはバッハの無伴奏ソナタ3番であったが,バッハの素晴らしさを改めて浮かび上がらせたと言ってもよい。いずれにしても,前半の最後に演奏したSilvia Borzelliの"Here/Folia"は抽象度が高過ぎた気がする。私の前の列に座っていた少女が爆睡していたのには思わず笑ってしまったが。

そのほかに当日演奏したWeinbergとBrittenが書いたソナタは,どちらもMstislav Rostropovichに献呈された曲らしいが,そういうところで今更ながらRostropovichのポジションを再認識できるという効果もあった。いずれにしても,なかなかこういうリサイタルは聞くチャンスもないので,いい機会ではあった。無料で聞けてしまうのだから文句はないのである。

尚,Francesco DillonはQuartetto Prometeoの一員としてECM New Seriesにレコーディングしていることも初めて知ったのであった。

Live at イタリア文化会館 on April 8, 2025

Personnel: Francesco Dillon(cello)

2025年4月 9日 (水)

久しぶりに"Adam’s Apple"をアナログで聞く。

Adams-apple "Adam’s Apple" Wayne Shorter(Blue Note)

以前にも書いたことがあるが,私はBlue Note時代のWayne Shorterのアルバムは"Night Dreamer"から"Super Nova"まで,頑固なまでにアナログで保有している。その後の"Odyssey of Iska"と"Moto Grosso Feio"はCDで保有するに留まっているが,アナログ保有のアルバム群はやはりアナログで聞く方が感じが出ると思うのだ。

そんな私が久しぶりにこのアルバムを取り出したのは,先日ストリーミングでランダム再生される曲として,本作の"Footprints"が出てきたことが要因だと言ってもよい。この曲は"Miles Smiles"でも演奏される訳だが,"Miles Smiles"が66年10月録音であるのに対し,こっちは同年2月の録音だから,録音はこちらが先なのだが,リリースは"Miles Smiles"が先ということで,認知されたのは"Miles Smiles"の方が先だったということにはなる。しかし,Wayne Shorterとしては実のところ,こっちを先に出して欲しかったんじゃないかと思ってしまう。

それはさておき,A/B面のどこを聞いても,Wayne Shorterらしい演奏で,彼のファンでなくても60年代のジャズかくあるべしと感じられるような演奏で嬉しくなってしまう。まぁそれはBlue Noteレーベル時代のWayne Shorterのアルバムには当てはまることではあるが,本作を久しぶりに通しで聞いて,そのサウンドとアナログの手触りを楽しんだのであった。そしてこのアルバムのいいところは,テナーのワンホーンでWayne Shorterの演奏が楽しめることであり,いかにも新主流派的なリズムに乗って,聞かせるWayne Shorterの演奏は魅力的であり,文句のつけようがない。星★★★★★。

Recorded on February 3 and 14, 1966

Personnel: Wayne Shorter(ts), Herbie Hancock(p), Reginald Workman(b), Joe Chambers(ds)

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2025年4月 8日 (火)

Deacon Blueの新譜が出た!

_20250331_0001"The Great Western Road" Deacon Blue (Cooking Vinyl)

私が贔屓にするスコットランドのバンド,Deacon Blueである。過去,何度か年末のベスト作にも選んだことがあるバンドだが,日本では全然メジャーにならない気がする。スコットランドでは本作もリリース後,チャート1位になっているし,UKチャートでも3位だから,現地ではメジャーにもかかわらずだ。しかし,私にとっては所謂「推し」である。リーダーRicky Rossのポップなセンスはいつ聞いても満足感を与えてくれる。

そうは言いつつ,前作"Riding on the Time of Love"は記事にもしていない。これには少々訳があって,更にその前作となる"City of Love"が私としては今一つ評価が高まらないアルバムだったのだが,"Riding on the Time of Love"はコロナ禍を踏まえたその姉妹編みたいなところがあったからである。もちろん決して悪いアルバムを出す人たちではないが,私としてはそれほど評価できなかったのは"City of Love"同様だったので,記事化を見送ったのであった。

では約4年ぶりの新作となった本作はどうだったかと言えば,いかにもDeacon Blueらしいポップさがあって,嬉しくなってしまう。冒頭のタイトル・トラックからして,Ricky Rossは私より年長とは思えない瑞々しい声を聞かせるが,こうしたバラッド的な曲調では,やや歌いっぷりに怪しいところが出てきたように感じられるのは加齢ゆえか。しかし,紡ぎ出されるメロディ・ラインはRicky Rossの真骨頂と言えるものだろう。そしてシングル・カットされた"Late '88"を聞けば,ポップな曲調もあって,このロックとポップスのはざまを行く感じにはDeacon Blueかくあるべしと思ってしまう。

そうは言っても私がこれまで極めて高く評価してきたアルバム2010年代の3作,"The Hipsters","A New House","Believers"には及ばないという気もする。もちろん,上述の通り,Ricky Rossのポップ・センスは健在なので,これとて決して悪いとは思わないので,皆さんにもっと注目して頂くために甘いの承知で星★★★★☆としよう。

Personnel: Ricky Ross(vo, p, el-p), Lorraine McIntosh(vo, perc), James Prime(p, org, key, vo), Dougie Vipond(ds, perc, vo), Gregor Philp(g, key, vo), Lewis Gordon(b, vo) with strings and horns

本作へのリンクはこちら

2025年4月 7日 (月)

「アラビアのロレンス」を大スクリーンで観る至福(Again:笑)。

Lawrence-of-arabia-alternate 「アラビアのロレンス ("Lawrence of Arabia")」(’62,英,Columbia)

監督:David Lean

出演:Peter O'Toole, Alec Guiness, Omar Sharif, Anthony Quinn, Anthony Quail, Jack Hawkins, Claude Rains, José Ferrer

同じタイトルで約2年前にも記事を投稿しているので,Againである(笑)。正直言ってしまうと,2年前の記事を見て,2年前にも見に行ったことを思い出した私であった。記憶がすっかり飛んでいたのだが,全く歳は取りたくない。しかし,この映画の前半の砂漠のシーンは何度見ても感動するから,何度見てもいいのだ(と開き直る)。

なので,前回とは違った観点で思ったところを書こうと思う。この映画の素晴らしさはPeter O'tooleは言うまでもなく,登場人物を演じた役者陣の適材適所な配置だ。なりきりぶりを含めて,これこそ絶妙なキャスティングと言わずして何と言うってところだ。上に挙げた役者陣の演じっぷりを見れば本当に見事と言うしかない。

そしてもう一つ挙げておきたいのがMaurice Jarreの素晴らしい音楽である。オスカーのオリジナル作曲賞を受賞するのも当然と言いたくなるような,まさに時代を代表する映画音楽だったと思う。私が子供の頃,映画音楽をよくFM等で聞いていた時から,なんて素晴らしい曲だろうなんて子供心に思っていたのも懐かしい。

こうして考えると,演出,シナリオ,撮影,演技,音楽等のあらゆる観点で,本当に優れた映画だったということを再認識する私であった。

2025年4月 6日 (日)

才人Vijay IyerとWadada Leo Smithのデュオ第2作。

_20250405_0001"Defiant Life" Vijay Iyer / Wadada Leo Smith(ECM)

Vijay IyerとWadada Leo Smithのデュオ作"A Cosmic Rhythm wiith Each Stroke"がリリースされたのが2016年のことであったから,もう9年も経過したのかとついつい思ってしまうが,あれはよくできたアルバムだったと思う。そしてこの二人にJack DeJohnetteを加えた"A Love Sonet for Billie Holiday"をはさんで,リリースされたのが本作である。

"A Cosmic Rhythm wiith Each Stroke"は比較的(あくまでも比較的だが)聞き易さも備えたアルバムだったのに対し,"A Love Sonet for Billie Holiday"は正調フリー・ジャズと言いたくなるような作品であった。そして本作であるが,これは二人の静かな対話という趣と言えばよいかもしれない。

もはやこれは現代音楽的と言ってもよいような響きに加え,アンビエント的に響く部分もあるのだが,そこはこの二人のやることであるからレベルは高い。但し,耳に心地よいかと言えばそんなことはないから,ついつい身構えてしまうような音楽と言ってもよい。だが,Wadada Leo Smithは既に傘寿を過ぎていることを考えれば,このクリエイティビティと衰えぬラッパの吹奏能力には驚かされる。またそれに寄り添うVijay Iyerのピアノの的確なことよ。基本的には二人の完全即興と考えてよさそうだが,"Floating River Requiem for Patrice Lumumba"と"Kite"はそれぞれWadada Leo SmithとVijay Iyerが作曲者としてクレジットされているし,ジャケットに写るのは前者の譜面と思われるから,ちゃんと書かれているというのもある意味驚きだ。それでも"Elegy: The Pilgrimage"なんかは美的に響く部分もあるから,どこまでが書かれていて,どこからが即興かは正直わからないが...。

いずれにしても,才人二人による名コンビと言いたくなるようなアルバム。"A Cosmic Rhythm wiith Each Stroke"の方が私はいいと思っているので,半星引いて星★★★★☆。ただねぇ,どういうタイミングでプレイバックするかはかなり難しい(苦笑)。

Recorded in July 2024

Personnel: Wadada Leo Smith(tp), Vijay Iyer(p, rhodes, electronics)

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2025年4月 5日 (土)

確かにPaul McCartney的に響くEmitt Rhodes。

_20250403_0001 "Emitt Rhodes" (Dunhill)

「ひとりBeatles」だの,Paul McCartneyよりPaul McCartneyっぽいだの,パワー・ポップの先駆者だのと言われたEmitt Rhodesのアルバムを久しぶりに聞いた。全ての楽器を自身でこなしている中,ベースとピアノの響きは確かにPaul McCartneyを想起させるに十分だ。このアルバムをリリースした頃はまだ20歳そこそこというところだろうから,まさに早熟のアーチストであった。それに先立ってMerry-Go-Roundのアルバムをリリースしたのは17歳の頃なのだから,実に恐ろしい。

一般的に私が好むSSWのアルバムはもっと渋いものが多いが,ポップさに満ちたこれはこれでよいと思える。Wikipediaによれば,当時は組合の取り決めで,宅録は認められていなかったらしく,ジャケには宅録とは書けないというルールがあったらしい。まぁそんなことは当時の事情としても,このセンスというのは大したものだ。しかし,その後レコード会社ともめて,そのキャリアが絶たれてしまったのは今にしての思えば惜しいことであった。73年に"Farewell to Paradise"をリリースしてから,次の"Rainbow Ends"まで43年を要したということもあれば,その間にもアルバムを出そうとしたものの,様々な不運に見舞われて実現しなかったというのは,つくづくついていない人だったと言わざるをえない。

だからと言ってこのアルバムの価値が下がるものではないし,このポップなセンスをリリースから半世紀以上経過した今日に楽しむと言うのも一興である。星★★★★☆。

Personnel: Emitt Rhodes(vo, all instruments)

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2025年4月 4日 (金)

ストリーミングで聞いたDavid Sanbornのライブ音源。いかにもなSanbornの音。

David-sanborn-celebration "Celebration (Live New York '80)" David Sanborn

もともと(もどきも含めて)ブートレッグとしてリリースされていたものがストリーミングでも聞けるというのはよくあることだ。この音源もブートとして売られているものだが,ストリーミング・サイトで見つけたものを聞いてみた。アルバム"Hideaway"のリリースを受けてのプロモーション目的のスタジオ・ライブということらしい。

私が"Hideaway"について当ブログに記事を書いた時には「全編を通じて紛うことなきDavid Sanbornのサウンド,フレージングと心地よいフュージョン・ミュージックが楽しめる」なんて書いているが,ここでの演奏も同じことが当てはまる。また集められたメンツもフュージョン界ではよく知られた面々で,レベルの高い心地よい演奏が楽しめてしまった。アルバム"Hideaway"の中で私が異色と感じた"Creeeper"以外の曲を演じているが,"Creeper"をここで演奏していないってことは,本人もそう思っていたのかもねぇ(笑)。

いずれにしてもなかなか魅力的な音源であった。

Recorded Live on April 20, 1980

Personnel: David Sanborn(as), Cliff Carter(p), Michael Colina(synth), Jeff Mironov(g), Neil Jason(b), Steve Gadd(ds), Sammy Figueroa(perc)

2025年4月 3日 (木)

Reis Demuth Wiltgen with 馬場智章@Cotton Club参戦記

Reis-demuth-wiltgen

冷たい雨も降り,花冷えのする新年度初日に,ルクセンブルク出身のトリオがゲストに馬場智章を迎えたライブを見にCotton Clubに行ってきた。彼らの名前は認識していたのだが,アルバムも聞いたことがなかったのだが,チャージもそんなに高くないし,試しに行ってみるかぐらいの感じでの参戦であった。しかし客入りは少々寂しい。後方サイド席は誰もいない状態なのはちょっともったいない気がしたが,その分,ルクセンブルク大使館員も来場して盛り上げてはいたが...。

甚だ余談ではあるが,私は仕事でルクセンブルクを数回訪れたことがある。もはやそれも30年前のことになってしまったが,仕事自体は徹夜続きで大変だった一方,酸化防止剤が入っていないため,ほぼ輸出されることのないルクセンブルク・ワインの爽やかな美味しさは忘れられない。私は白ワインはほとんど飲まない人間だが,あのリースリングは今まで飲んだリースリングの中でも指折りのものだったと思える(遠い目...)。

Reis そんなルクセンブルクからやってきたこのトリオだが,高校の同級生らしいので,長年の盟友ってことになるから,コンビネーションには問題はないところだ。演奏は美的な部分と,8ビートや変拍子を交えたコンテンポラリーな部分のある,いかにも現代の欧州のトリオという感じがした。今回のライブを聞いていて,作曲能力,演奏能力ともに十分高いと思わせる面々であった。三者が対等のようなトリオではあるが,演奏上はあくまでもピアノが中心であったが,Michel Reisはなかなかのフレージングを聞かせていた。私もストリーミングで予習して臨んだが,受ける印象に大きな違いはなく,期待通りの演奏だったと言ってもよいだろう。

しかし,難点もなきにしもあらずで,ドラムスのPaul Wiltgenが少々叩き過ぎという感じだったのは明らかだ。それは私がややドラムス側の席に座っていたことも影響はあるだろうが,このトリオの音楽性を考えれば,もう少し抑制されたドラミングでもよかったと思う。ベースの音がこもり気味で,うまいんだから少々イコライザーを使って音色をクリアにしてもいいように思えた。

そこに一部ゲストで加わるのが映画「BLUE GIANT」のサントラでも話題の馬場智章だが,私はそもそも映画も見ていなければ,音楽も聞いていないし,予習もしていなかったので,これが完全な初聞きであった。相応に上手いテナーだとは思ったのだが,私は演奏中,これがクリポタことChris Potterだったらどうだったかとずっと妄想していたことは告白しておかねばならない。馬場智章には悪いが,私が比較する対象のレベルが高過ぎることもあって,不満はないとしても,フレージングに関してはまだまだ発展途上だよなぁと感じていたのであった。まぁそれは伸びしろがあると思ってもらえばよい。

_20250402_0001 そうは言っても,それなりに満足のいく演奏だったと思うので,帰り際に彼らのCDを購入してサインもしてもらっているのだから,私も相変わらずのミーハーである。彼らの最新作は"Sly"というアルバムだが,売っていたのは2017年作の"Once in a Blue Moon"であった。私はストリーミングで聞いても後者の方がいいと思っていたので,それはそれでよかった。秋口にはVince Mendozaが指揮するオケとの共演盤も控えているらしいから,そっちも期待しよう。

Live at Cotton Club on April 1, 2025, 2ndセット

Personnel: Michel Reis(p), Marc Demuth(b), Paul Wiltgen(ds) with 馬場智章(ts)

尚,上の写真はCotton ClubのThreadsから拝借したもの。

2025年4月 2日 (水)

Netflixで「正体」を見た。

Photo_20250401090801「正体」(’24,松竹)

監督:藤井道人

出演:横浜流星,吉岡里帆,山田孝之,森本慎太郎,山田杏奈,原日出子,西田尚美,松重豊

先般発表された日本アカデミー賞では監督賞,主演男優賞,助演女優賞などを受賞したこの映画をNetflixで見た。日本アカデミー賞ってのはどうも選考基準がよくわからない部分もあって,ほとんど関心を持てない私だが,相応に評価される部分を期待して見てみたもものだ。

冤罪~逃亡劇というのは「ゴールデン・スランバー」と同じプロットと言ってもよいが,だいぶ雰囲気は違う。主演の横浜流星は現在,NHKの大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」でも主演を務めているが,これまた随分と雰囲気が違って,根が関西人の私からすれば「役者やのう~」と言いたくなってしまうような演技っぷりであった。

脱獄から逃亡を続けるシークエンスにはかなり無理があるし,吉岡里帆演じる安藤沙耶香は完全に逃亡幇助で逮捕じゃねぇかと突っ込みを入れたくなるのは辛いところではあるが,エンタテインメントとしてはそこそこ見られるからまぁよしとしよう。原作を読んでいないので,どの程度の脚色を入れているかにもよるが,これはどちらかと言えば元々の原作のプロットの弱さって感じがしないでもない。まぁ主要な登場人物の造形は悪くないが,松重豊がにくたらしいねぇ~と思いながら見ていた私であった。星★★★☆。

«ボックスで出るのを待っていて正解のAndris Nelsonsによるショスタコーヴィチ交響曲全集+α。