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2019年おすすめ作

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2021年9月26日 (日)

劇場で観る「赤ひげ」。実に素晴らしい。やっぱり映画は劇場だ。

Photo_20210924173501 「赤ひげ」('65,東宝)

監督:黒澤明

出演:三船敏郎,加山雄三,山崎努,団令子,桑野みゆき,香川京子,二木てるみ,土屋嘉男,笠智衆,田中絹代

古い映画を劇場の大スクリーンで観るというのはやはり感慨深い。以前,「七人の侍」もそうしたかたちで観た私だが,今回は「赤ひげ」である。私はこの映画,録画をしたままで今まで観たことがなかったので,丁度いいやってことで観に行って,またまた感動してしまった。我ながら単純だ。

小石川養生所を舞台に,三船敏郎演じる「赤ひげ」こと新出去定と,蘭学を学び,野心溢れる加山雄三演じる保本登がメインのキャラクターであるが,この二人を取り巻いて,様々なストーリーが次から次へと展開される映画で,ある意味オムニバス映画的な手法と言ってもよい。一方,派手なアクション・シーンはなく,あくまでもヒューマニズムに溢れた映画である。

こうしたヒューマニズムを今の時代にどう捉えるかについてはいろいろ議論もあるところと思う。何せもはや60年近く前の映画であるが,三船演じる赤ひげが病は「貧困と無知に対する闘い」だとする台詞や,大名,豪商から金を巻き上げて,市井の人々の医療に充てるというところは,当時の現代社会に対する黒澤の怒りを反映したものではなかったのかと思える。そうした意味では実にリベラルな映画なのだ。

映画にはいろいろな挿話がある中で,恐ろしいのが香川京子。これは観てもらえばわかるが,香川京子の視線が実に怖い。更に山崎努の「天国と地獄」とは全く異なる劇演,根岸明美の独白シーン,そして何よりも泣かせる二木てるみと頭師佳孝の名演技,更には内藤洋子の美しさ等,当時の日本映画界のレベルの高さを反映したもので,私は素直に感動してしまった。まじでたまらん。こういう映画は無条件に星★★★★★である。

この映画に描かれるようなヒューマニズムが現代においては嘘臭いという感覚を生むかもしれない。一方,こういう映画を観て無条件に感動してしまうのは,私が老境に差し掛かった証でもあろう。しかし,そうした心根を失いたくないなぁと映画を観ながら思っていた私である。そして,こうしたヒューマニズムが今後の日本という国においても有効であって欲しいと切に願う。

これは黒澤明の最高傑作ではないだろう。しかし,襟を正して観るに値する映画である。暗闇で素直に涙するカタルシスは少なくとも私にとっては重要であり,いいものを見せてもらったと言うしかない。

2021年9月25日 (土)

私は上原ひろみのファンではないが,こういうのはなかなか面白いと思う。

_20210919 "Silver Lining Suite" 上原ひろみ(Telarc)

私は上原ひろみのファンではない(きっぱり)。むしろ彼女の音楽は評価しつつ結構辛口な感じだったと思うってのが正直なところだ。だから,私は彼女のアルバムが出れば買うということはないので,本作も久しぶりにアルバムを購入したという感じが強い。

Anthony Jackson~Simon Phillipsとのトリオはそれなりに面白いと思っていたが,いつも感じるのが彼女のピアノのやり過ぎ感。うまいのはわかったけど,そこまでやらなくてもいいじゃんっていう感覚である。そうした演奏が相応の高揚感をもたらすことは事実だが,常に満腹になってしまうと,飽きるのも早いっていうのが私の彼女に対する正直なところである。

では,この新作,なんで買う気になったのか?と皆さん思われるかもしれないが,先日「報道ステーション」にこのクインテットで出演していたのを見ていて,これって結構面白いかもなぁって思ったからってのが正直なところである。ということで,ボーナス・ディスクもついたお得感のある2枚組をゲットした私であった。

ジャズ・ミュージシャンがストリングスと共演するというのはCharlie Parkerの時代から続いてきていることだが,弦楽四重奏との共演と言えば,私の年代はChick Corea~Gary Burtonとの共演盤を思い出すってのが普通ではないか。そのほかだって,上原ひろみのようなコンテンポラリー感覚が強い人と言えば,またもChick Coreaの"Mad Hatter"の時期が想起される。それはいいか悪いか,あるいは好きか嫌いかは別にして,どうしてもチャレンジしたくなってしまうというミュージシャンの「性」みたいなところがあるのかなって思ってしまう。ましてやChick Coreaとの共演盤も残している上原ひろみだから,更にそういうところはあるのではないかと勝手に想像してしまう。

それでもって,今回のストリングスのアレンジメントを聞いていると,まぁよく頑張ったねっていう感じだろうか。破綻していないのは立派だとは思いつつ,あまり面白いと思えるものではない。ちょっとした違いを感じるとすれば,チェリストにピチカートでリズムを刻ませる展開だろうか。それ以外はよく出来ましたとは思うが,「普通だなぁ」って感じは否めない。ストリングスがユニゾンで演奏するシーンが多いからかもなぁという気もするが,まだまだ成長の余地はあるって気がする。

ピアノはいつもながらの上原ひろみで,目眩くフレージングで圧倒するってところだが,もはやこれは個性として捉えるべき領域と思う。そこに弦楽クァルテットが加わって,いつもと違う感じも付加していてなかなか面白いと思えた。

このご時世を踏まえて“Silver Lining Suite”と名づける気持ちもわかるってところもあり,星★★★★。それでもファンの方からすれば,まだ辛口って言われそうだが(笑)。

そもそもSilver Liningってのは”Every cloud has a silver lining."から来ているが,端的に言えば,「希望の光」みたいな意味である。上原ひろみはコロナ禍でライブ活動が制限される中,Blue Note東京で"Save Live Music"という趣旨でライブを行っていたが,ボーナス・ディスクはそのBlue Note東京でのピアノ・ソロの模様を収めたもの。65分超の音源なので,お買い得感はあるし,その「志」は認めなければならないと思う。こちらは"Ballads"と題されていて,そういう演奏が収められていて,いつものような手数やスピード感は抑制されていて,好みはわかれるかもしれないが,私には結構味わい深いものがあった。ということで,こちらとの合わせ技で星★★★★☆としよう。購入されるなら私はボーナス・ディスク付きの2枚組を推奨したい。

Recorded between April 28 and 30, 2021

Personnel: 上原ひろみ(p),西江辰郎(vln),ビルマン聡平(vln),中恵菜(vla),向井航(cello)

Bonus Disc Recorded Live at Blue Note東京 on September 10 & 11,2020

Personnel: 上原ひろみ(p)

2021年9月24日 (金)

Pat MethenyのSide Eyeが遂にリリース。

_20210923"Side Eye NYC V.1.IV" Pat Metheny(Modern Recordings)

Pat Methenyが新プロジェクトとしてSide Eyeを立ち上げ,その初ライブとして日本で公演を行ったのが2019年1月のことであった。私もそのライブに参戦し,このブログでも記事にしている(記事はこちら)。その時はPAの不調に辟易とさせられたが,それでも新しい取り組みは面白いと思ったし,何よりもその時はドラマーがNate Smithということもあり,そこへの注目度も高かった。  

そんなSide Eyeとしてのアルバムがようやくリリースされることとなったが,このV.1.IVの意味するところはジャケの中身を見るまでは謎であった。結局のところ,このSide EyeはPat MethenyとキーボードのJames Franciesを核として,ドラマーをいろいろ入れ替えるというのが基本的な考え方ということらしい。ジャケを見るとV.1.Iから現在はV.1.Vまで5人のドラマーが使われている。順にEric Harland,Anvar Marshall, Nate Smith, Marcus Gilmore, Joe Dysonとなっている。それで今回はV.1.IVということでMarcus Gilmoreとの共演である。

そして,ライナーを見ると,2019年9月のSony Hallにおける実況録音とある。ということで思い当たったのが,以前NHKのBSで放送された彼らのライブであったが,このアルバムを聴いた後,確認のためにビデオをプレイバックしてみた。すると,やはりこのアルバム,放送された時の音源(放送での収録はは9/13)も含まれている。そしてその番組でPat Methenyがインタビューに答えているのだが,ちょっと世代の離れたミュージシャンとの共演ということを念頭に置いているとのことであった。Marcus Gilmoreには最初断られると思っていたなんて言っていたが,それはまぁないだろう(笑)。

このアルバムはライブ音源であるが,3人のミュージシャンによる音楽としては,かなり音が分厚い部分があるが,放送を見直してみると,小型のオーケストリオンを使っていた。私はアンチ・オーケストリオンであり,あんな大人のオモチャがなくても,ちゃんとした音楽はできるはずと思っているので,う~むとなってしまうのだが,まぁそれでも曲によって,使ったり,使わなかったりということで,演奏に変化をつけたということになるのだろう。余談だが,インタビューで2025年ぐらいにはオーケストリオンV.2.0を作りたいなんて言っていたが,そんなことに金と時間を掛けるより,ちゃんとバンドで音楽をやって欲しいと思っていた私である。

曲としては旧作と新作が混ざっているが,どれも相応に聞きどころはあると思うが,Pat Methenyのデビュー・アルバム,"Bright Size Life"から2曲をやっているのが目を引く。BSのインタビューでも,古い曲だからと言ってやらないということはなく,キャリアの一環として捉えているというようなことを言っていたが,そのほかにも"80/81"にも入っていた”Turnaround”や,Michael Breckerのために書いた"Timeline"なんかもやっている。そうした中で旧作で一番面白くないのが"Better Days Ahead"かもしれない。それは多分,私がこの曲にPat Metheny Group的な音を求めてしまう部分もあるからかなぁなんて思っていた。一方,新作のコンテンポラリー感は更に強まっていて,その辺に時の流れも感じるが,アルバム全体としてはやはり魅力的に響く。

実力者が集まることで,優れた演奏が可能ということが実証されているが,James Franciesの貢献度はかなり大きいように思える。私はJames Franciesのリーダー作は未聴であるが,ストリーミングで聴いてみようと思わせるところはあったと思う。そして,Marcus Gilmoreは実に器用なもので,何でも叩けるというところを示している。Antonio Sanchezのような派手さはないが,実に堅実さとうまさを兼ね備えたドラマーだと思った。

ということで,やっぱりこれは相応に評価しないといかんと思えるアルバム。星★★★★☆。尚,私が購入したのは輸入盤であるが,国内盤には最後にこれまた"80/81"からの"The Bat"が加えられているが,これはストリーミングで聴ける。アンコール的な感じ(実際はアンコールではないと思うが...)でこれも悪くなかった。

Recorded Live at Sony Hall on September 12&13,2019

Personnel: Pat Metheny(g, guitar-b, orchestronic), James Francies(org, p, synth), Marcus Gilmore(ds)

2021年9月22日 (水)

またも観ました007。今回は「美しき獲物たち」。

A-view-to-a-kill「美しき獲物たち(”A View to a Kill”)」(’85,米/英/アイスランド,UA/MGM)

監督:John Glen

出演:Roger Moore, Christopher Walke,Tanya Roberts, Grace Jones, Patrick Macnee, David Yip

Amazon Primeで007シリーズが観られるのをいいことに,またも観てしまった。私はシリーズの中で,Roger MooreがJames Bondを演じた作品を高く評価できないので,この映画も通しでは初めて観たような気がする。

この映画はそのRoger MooreがBondを演じる最終作ということで,この時,Roger Mooreは撮影中に57歳の誕生日を迎えており,James Bondを最年長で演じたことになるそうだ。それにしては頑張っているとは思えるが,なんで私がRoger Moore版007を評価できないかと言えば,シナリオの出来が良くなかったからだと思っている。娯楽映画として仕方のない部分もあるが,この映画もつまらないエピソードを盛り込み過ぎで,荒唐無稽度が高いというのがその理由だ。

映画の前半は抑えめのストーリーで,これはなかなかいいんじゃないのと思わせるのが,後半になって「やっちまった」感が出てくる。サンフランシスコにおけるカー・チェイスのシーンって必要だったのかって思えるのもあり,2時間を越える上映時間は必要なかったと感じざるをえない。鉱山のシーンも明らかに冗長で,シナリオはもっと整理のしようがあったはずだ。

そうした中で,救いはChristopher Walkenの悪役ぶり。もうここまで来ると本人も楽しんで演じているに違いないって感じの,いかにもChristopher Walkenらしいサイコパスぶりである。まじでこういう役が似合うよねぇ。まぁそれでも星★★★が精一杯ってところだが。

それにしても,007のテーマソングをDuran Duranってのはどうもミスマッチ感があったなぁ。

さて,次は何を観るかねぇ...(笑)。パロディ版「カジノ・ロワイヤル」かな。

2021年9月21日 (火)

父の遺品のThelonious Monkのアルバムを聴く。

_20210918"The Unique" Thelonious Monk(Riverside)

主題の通り,これは父の遺品のCDだ。前にも書いたが,私の亡くなった父はモーツァルトを偏愛しつつ,昔,ヴァイオリンを弾いていたこともあって,ヴァイオリンのCDも結構残してくれた。そんな父がジャズに目覚めたのは晩年のことであるが,結構Monkは好きで聴いていたようである。そして私が保有しているMonkのアルバムと被っていないのが非常に不思議であったが,それにより私の聞く範囲は拡大したのだから,それは父に感謝しなければならない。

それはさておき,本日はこのアルバムである。やっているのがいつものようなMonkオリジナルではなく,有名曲ばかりというのがこのアルバムのポイントだが,どんなに有名な曲をやっても,出てくる音はMonkそのもの。だからこそ,アルバム・タイトルも"The Unique"ということになろうが,まさにユニーク,まさにOne and Onlyとしか言いようがない。

この後に出てくる"Brilliant Corners(ブリコー:笑)"のような驚きはないとしても,個性の発露という観点では,「ブリコー」に劣るということは全くない。むしろ,よく知られている曲で,Monkの個性をリスナーに理解させるという意味は大いにあったと言ってよいと思う。私にとってThelonious Monkの音楽の魅力を理解するのは,高校時代のジャズの聞き始めの頃は正直難しい部分もあったのだが,本作辺りを入り口にして,Monkの音楽に接すれば,私としてももう少し違った聞き方が出来ていたかもなぁなんて思ってしまった。

いずれにしても,タイトルに偽りなしである。星★★★★☆。

Recorded on March 17 and April 3, 1956

Personnel: Thelonious Monk(p), Oscar Pettiford(b), Art Blakey(ds)

2021年9月20日 (月)

007の新作公開を前に初めて観た「ネバーセイ・ネバーアゲイン」。

Never-say-never-again 「ネバーセイ・ネバーアゲイン("Never Sat Never Again")」(’83,米/英/独,Warner Brothers)

監督:Irvin Kershner

出演:Sean Connery,Klaus Maria Blandauer, Kim Basinger, Barbara Carrera, Max von Sydow, Edward Fox, Bernie Casey,Rowan Atkinson

007シリーズの新作の公開を前にAmazon Primeでは旧作が全部観られるようになっているが,そのうち,番外編とでも呼ぶべきこの作品は,私は今まで観たことがなかった。本家の007シリーズとは別枠で,Sean Conneryが最後のJames Bond映画として撮ったのがこれだが,随分と老けて,太ったJames Bondみたいな感じではあるが,ストーリーは「サンダーボール作戦」のリメイクである。

前半では最早,退役軍人みたいなJames Bondみたいな感じだが,ストーリーそのものは「サンダーボール作戦」同様に展開し,まぁこれはこれでいいんじゃない?って007好きの私は思ってしまった。少なくとも「ダイヤモンドは永遠に」よりはずっと面白いと思っていた私である。

私としてはこの映画はセクシーなKim Basingerを見るためにあるみたいな感じであったが,演技云々より,もうKim Basingerが出てくるシーンで集中力が上がるみたいになっていた。キャスティングでは悪役のBarbara Carreraの方が上なのだが,誰がどう見たってKim Basingerの方がいいのだ。

そして,この頃の本家007シリーズにもお笑いみたいな要素が入っていたが,ここでもそれを踏襲するかのように,コミック・リリーフとして,Mr. ビーンことRowan Atkinsonが出てきたのには笑ってしまった。そして,ラスト・シーンのSean Conneryのウインクで締めるってのも結構笑えるつくりだと思った。

前述の通り,これはあくまで番外編であり,小難しいことを言わず気楽に楽しめばいい映画。星★★★☆。

2021年9月19日 (日)

一部で話題沸騰(笑),Nicole Gloverのアルバム。

_20210917 "Strange Lands" Nicole Glover(Savant)

テナー・サックスに一家言をお持ちと言えば,惜しくも閉店した新橋のテナーの聖地,「Bar D2」のマスターだった河上さんだが,その河上さんが最近ことあるごとに(笑)推しを入れているのが,このNicole Gloverである。NYCのSmallsには結構出ているようではあるが,いかんせんレコーディングはまだまだ少ないので,私は河上さんのお話から想像するに留まっていた。そうは言っても,George Colliganのアルバムで吹いているのとかは聞いていて,なるほど,さもありなんと思っていたが,そこへ彼女のアルバムが登場である。

Nicole Gloverの音楽を表すとすれば,アルバムのライナーの冒頭の文章が最適である。そこには"Her name is Nicole Glover; she is thirty years old; and she burns.” 年齢はさておき,重要なのは"She burns."ってことだろう。この目くるめくようなハードでリスナーを燃えさせるブローイングこそが,彼女の魅力と言ってよい。そして,本作は4曲にGeorge Cablesをピアノに迎えつつ,そのほかの曲はピアノレスのトリオである。サックス・プレイヤーとしての自信がなければ,そのフォーマットは取らないというところだろうが,冒頭のタイトル・トラックからして,吹きまくりである。河上さんが推すのもよくわかる演奏と言ってよい。

スタンダード3曲以外は,本人もしくはバンド・メンバー(及びその関係者?)のオリジナルである。このアルバムを聞いて思うのは,Nicole Gloverはスタンダードだってちゃんと吹けるとは思うのだが,私にはこうしたスタンダードよりも,よりハードな吹きっぷりの方が似合っていると思えてしまう。George Cablesとデュオで演じた”A Flower Is Lovesome Thing"だってちゃんとやってはいるし,ラストの"I Concentrate on You",あるいは中盤の"Dindi"だって破綻はない。ではあるのだが,これらの曲にはまだ彼女に成長,あるいは成熟の余地があると思わせるもので,やはり私にはよりハード・ブローイングな曲の方に魅力を感じてしまう。若気の至りだってよいのだ。

このアルバムを聞いていて,Lee Morganって最初から出来上がっていたのねぇと思ってしまったが,Nicole GloverをLee Morganと比べてはさすがに可哀想か...。

そうは言っても,Nicole Gloverがライブの場でブイブイ吹く姿を見れば,間違いなく悶絶させられるだろうと思うが,こうしたスタジオ・アルバムではまだまだ発展途上って感じが残るのは事実である。やはりこの人,まずはSmalls辺りでライブを観るところから始めていれば,更にはまっていたかなと思う。それでも彼女が注目に値するRising Starであることは間違いないと思えるアルバム。星★★★★。

尚,本作のプロデュースをしているのがJeremy Peltってことも,リリースしているレーベルがJerry Bergonziと同じSavantであるってことも,「その筋」のリスナーのシンパシーは間違いなく誘うな(笑)。

Recorded on December 15, 2020

Personnel: Nicole Glover(ts), George Cables(p), Daniel Duke(b), Nic Cacioppo(ds)

2021年9月18日 (土)

Amazon Primeで「タクシードライバー」を45年ぶり(!)ぐらいで観た。

Taxi-driver「タクシードライバー("Taxi Driver")」(’76,米,Columbia)

監督:Martin Scorsese

出演:Robert De Niro, Cybill Shepherd, Jodie Foster, Harvey Keitel,Albert Brooks,Peter Boyle

私がこの映画を観たのは確か大毎地下で二本立ての一本だったと思う。それは公開された年だから,おそらく1976年で,私が中学生の頃である。それ以来,幾星霜を経て,Amazon Primeでこの映画を再見することとなった。さすがに45年も経つと,ストーリーラインの細かいところまでは覚えていない部分もあったが,その端々は印象に残っていたのは結構凄いことだと思える。そうは言いつつ,Robert De Niroの狂った感覚の印象が強過ぎて,エンディングってこんな感じだったのかってのは全然記憶になかったが...(笑)。

まぁ結構暴力的な表現もあるこの映画が,カンヌでパルム・ドールを獲ったというのも結構凄いことだし,Jodie Fosterの役柄なんかは現代であれば,自主規制が入ってあり得ないって感じになるのではないか。そういう意味では,どんどん映画製作も難しくなってしまうよなぁと思ってしまうが,本作はインパクトの強い映画だったと言わざるをえない。キネ旬の1位ってのもやはりそのインパクトゆえであったと思わざるをえない。

そしてこの映画を印象付けたのは映像のインパクトに加えて,Bernard Herrmannが書いたテーマのメロディだと思える。この哀愁を帯びたメロディが,この暴力的な映画と実にマッチしてしまうというところに,私は逆説的な魅力を感じる。そして,Robert De Niroだけでなく,いろいろな役者が適材適所で配置されていて,これはまさにキャスティングの妙と言わざるをえない。45年を経て観ても,これは実に面白い映画であったということで,星★★★★★。まさに温故知新であった。

2021年9月17日 (金)

私の好物と言ってよい定冠詞付きの現代音楽,ブーレーズのピアノ曲全集。

Boulez "Pierre Boulez: Constellation-Miroir" Michael Wendeberg / Nicolas Hodges(Bastille Musique)

私が現代音楽のピアノ曲が結構好きなことは,おそらくこのブログの読者の皆さんにはバレていると思うが,そうした私の趣味嗜好に合致するアルバムの登場である。

私にとってはPierre Boulezは指揮者としての位置づけの方が強く,彼の作曲した音楽にはほぼ接することなく過ごしてきたと言ってもよい。だが,彼の指揮する音楽にはなるほど,そういうこともあるよなと感じさせるような理知的な解釈が感じられて実に面白いと思うことも多かった。最も印象深かったのはロンドン響とやったベルリオーズの「幻想」だったかもしれない。「断頭台への行進」のテンポの設定って,まさに解釈としてはこれが正しいのではないかと思っていた。

それはさておきである。このアルバムはそのBoulezのピアノ曲をすべて録音したアルバムということらしい。そこには主題の通り,"The 現代音楽"と言ってよい響きがディスク2枚に渡って収められている。私が現代音楽のピアノ曲を聴く場合,何が好みかと言えば,そこに示される「間」なのだが,ある意味フリー・ジャズの時として苛烈な音列と対極にあるような,この「間」こそが私にとって快感なのだ。そして,このアルバムもそれがたまらないのだ。

世界発録音を含む二手と四手のピアノ曲の集成として,それはそれとして価値があると思えるが,私としてはそれよりもこの響きに身を委ねていることが重要ということで,実に邪な聞き方と言われても仕方ない。それでもこの清冽な響きこそが,私が現代音楽のピアノに求めるものである。リリースされたことの重要性も含めて星★★★★★としよう。

それにしても,本作をリリースしたBastille Musiqueというレーベル,パッケージングには相当のこだわりを持っているようだが,ボックスの体裁は昔のブートレッグのようでもある。しかし,箱を開けると結構凝った作りって感じなのはユニークだと思った。これもレーベルとしてのこだわりなのかもしれないが,ここまでやらなくてもって思うのも事実。まぁ,でも音楽がよければそれでいいのだが,私としてはECMライクな方がいいなぁ(笑)。

Recorded between 2018 & 2020

Personnel: Michael Wendeberg(p), Nicholas Hodges(p)

2021年9月16日 (木)

ようやく記事をアップ:Deacon Blueのライブ・アルバム。

Deacon-blue ”Live at the Glasgaw Barrowllands" Deacon Blue (e.a.r. music)

彼らの最新作である"City of Love"の記事をアップした時に,このライブ盤の記事をアップしていないのはなんでやねん?みたいなことを書いたが,本当に書きそびれてしまったというのが正直なところなのだ。よくよく調べるとその後,"Riding on the Tide of Love"というEPをリリースしているので,"City of Love"は最新作という訳ではないが,それは未聴である。"City of Love"については若干辛口の評価だった私だが,それに先立つライブ盤を,リリースから4年以上経ってアップするのもなんだかなぁというところなのだが,やっぱりこれが素晴らしいので,アップせざるをえない。

私がDeacon Blueというバンドに惹かれるのは,Ricky Rossの書く曲のポップさゆえであるが,バンド歴を重ねてもこのバンドの持つ瑞々しい感覚が不変なのが素晴らしいと思える。Ricky Rossは私よりも年長であるが,全然そういう年齢を感じさせないポップな感覚を失わないところは,還暦を過ぎた私も見習わなければならないとつくづく思ってしまう。

冒頭を"Come Awake"のようなゆったりした曲で飾るというところは意表を突いているが,その後の王道ポップへの流れを作り出すためのプレリュードと言ってもよく,まさに彼らのベスト盤的選曲も素晴らしい。そして最後をBob Dylanの"Forever Young"で締めるところもおっさんの心をくすぐるのだ。全27曲という結構なボリュームであるが,全然飽きるところはないし,どこから聞いてもこのアルバムは楽しい。やはり私はこのバンドが好きなんだなぁというのを再認識させるに十分なアルバム。紹介が遅れてしまったことも反省して,星★★★★★としよう。

Recorded Live at Brrowlands Ballroom on December 4, 2016

Personnel: Ricky Ross(vo, p, key), Lorraine McIntosh(vo, perc), James Prime(key, vo), Dougie Vipond(ds, perc), Gregor Philp(g, key, vo), Lewis Gordon(b, g, vo)

2021年9月15日 (水)

感涙。これまた凄い音楽映画:「サマー・オブ・ソウル」

Summer-of-soul 「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)<Summer of Soul (...Or, When The Revolution Could Not Be Televised) >」(’21,米,Searchlight)

監督:Ahmir "Questlove" Thompson

出演:Sly Stone, Mahalia Jackson, The Staple Singers, Nina Simone, Gradys Knight, Stevie Wonder,The 5th Dimension

先日,「プロミシング・ヤング・ウーマン」と梯子して観たのがこの映画であった。これが凄い。

今年はライブに行っていないせいもあって,音楽映画を結構観ていて,「アメイジング・グレイス」,「アメリカン・ユートピア」もよかった。どれも当たりという中で,この映画も実に素晴らしいものってのは,音楽への渇望感を埋めるという意味で実に貴重な作品であった。

1969年,ほぼウッドストックと同じようなタイミングで開催されていたHarlem Cultural Festivalは,ソウルに留まらず,ブルーズ,ゴスペル,ジャズもカバーしていたという素晴らしいイベントであった訳だが,その記録映像が残っていたということだけでも素晴らしい。そしてここに収められた演奏の数々を見て,興奮しなければ嘘だろうと言いたくなってしまうようなものばかりだ。

冒頭からしてStevie Wonderの素晴らしいドラミングに度肝を抜かれるが,そこから出てくるキラ星のごときミュージシャンを見て,私はひたすら感動していた。その中でも特に,Mahalia JacksonがMavis Staplesと歌う"Take My Hand, Precious Lord"のシーンでは感動のあまり落涙した。これを見て感動しない人とは私は友人になれないと思うほどの素晴らしさであるが,それだけではない。

興奮度という意味ではSly Stoneに勝るものはないし,メッセージ性という意味での感動という点ではNina Simoneも素晴らしい。それだけに留まらず,ここに登場するどのミュージシャンもとにかく凄いのだ。ジャズ界からはMax RoachやAbbey Lincolnまで出てくるしねぇ。

この映画が公開されたことを,BLM運動と結びつけて考えることもできようが,難しいことを考えなくても,黒人たちの作り出す音楽の素晴らしさを堪能すればよいと思って私はこの映画を観ていた。とにかくこの作品を世に出したQuestloveに感謝したくなった私である。この映像には星★★★★★しかない。この映画も全音楽ファン必見だと言っておこう。最高だ。

2021年9月14日 (火)

待望!Marcin Wasilewski Trioの新作。やっぱり痺れるわ。

_20210913 "En Attendant" Marcin Wasilewski Trio(ECM)

今年の音楽シーズンの幕開けを飾ると言ってもよい待望の新作の登場である。このブログにも何度か書いているが,今,私が最も信頼するピアニストはBrad Mehldau,Fred Hersch,そしてこのMarcin Wasilewskiである。そのMarcin Wasilewskiのトリオによる新譜とあってはデリバリー,即記事アップである。

前作"Arctic Riff"はJoe Lovanoを迎えたある種の企画盤であったが,あれはあれでいいとして,私としては彼らの魅力はやはりピアノ・トリオでこそ発揮されると思っていた。特に私が引っ掛かったのは前作におけるコレクティブ・インプロヴィゼーションの部分であった。では本作ではどうなっていたか?

結論から言えば,私としては前作よりはるかに評価したい。トリオの3人による即興のようなアブストラクトな展開ももあるにはあるのだが,それを上回る美感がこのアルバムを支配している。録音時期は"Arctic Riff"同様,2019年8月なので,どっちが先だったのか?ってのは実に興味深いところではあるし,前作でも演奏していた"Glimmer of Hope"と"Vashkar"をここでも演奏しているのが,この2枚のアルバムの関係性を示しているような気もする。私にとってはこっちが本番,"Arctic Riff"が番外編のように思えてしまうが,彼らにとっては逆だったかもしれない。

いずれにしても,いつもながらの美学を感じさせる演奏なのだが,Doorsの"Riders on the Storm"のような意外な選曲もありながら,Doorsのメロディが実は非常に優れていたものであることをあぶり出しているような演奏だし,もっと驚いたのは「ゴルトベルク変奏曲」の第25変奏をアダプテーションしたことである。しかし,彼らの手にかかれば,バッハもこうなるかぁみたいな感じで,これがまたまたびっくりである。しかし,そこには彼らの音楽的資質と相俟った深遠なる世界が現れるというところで,実に味わい深い演奏である。

今回このアルバムを聞いても,彼らはやはり現代最高峰のピアノ・トリオの一つだという思いを強くしてしまったが,私にとってはもはやこれは惚れた弱みなのかもしれない。どうしても星★★★★★としてしまうのがその証(笑)。

Recorded in August 2019

Personnel: Marcin Wasilewski(p), Slawomir Kurkiewicz(b), Michal Miskiewicz(ds)

2021年9月13日 (月)

実に素晴らしいLacy~RuddによるMonk集。

_20210909 "School Days" Steve Lacy - Roswell Rudd Quartet(Hatlogy)

実に久々に聞くアルバムだ。でもこのアルバムはちゃんと「一軍」のラックに収まっている。聞く頻度は高くないとしても私としてはちゃんと評価しているアルバムである。

このアルバムが出たのは2002年のことだが,実際には1963年頃にライブ録音された音源である。なんでそんな時期になってと思う節もあろうが,これは出さねばならんとHatologyレーベルが思ったとしても頷けるものだとしか言いようがない。

一般的に言えば,Steve LacyとRoswell Ruddと聞けば,敷居が高そうにも感じる部分はあるかもしれないが,これは彼らがThelonius Monkの曲に取り組んだ,極めて真っ当なジャズ・アルバムであって,何も怖がることはない。まぁ彼ららしくというか,Monk曲集をピアノレスでやるってところが一筋縄ではいかないところではあるのだが,彼らとしてはピアノを入れないことによって自由度を高めたかったのだろうと想像される。

ことあるごとにSteve LacyはMonkの音楽に取り組んできたが,なかなか手が出なかった私が遅まきながらSteve Lacyの本質を理解したのがこのアルバムだったと言っても過言ではない。Roswell Ruddとのコンビは後年Verveにアルバムを残しているので,そっちも久しぶりに聞いてみようと思わせる効果もあった。見事なものである。星★★★★★。

Recorded Live at Phase Two Coffee House circa March 1963

Personnel: Steve Lacy(ss), Roswell Rudd(tb), Henry Grimes(b), Dennis Charles(ds)

2021年9月12日 (日)

今頃になって「プロミシング・ヤング・ウーマン」を観たが,実に面白かった。

Promising-young-woman 「プロミシング・ヤング・ウーマン」(’20,英/米,Universal)

監督:Emerald Fennell

出演:Carey Mulligan, Bo Burnham, Alison Brie, Connie Britton, Chris Lowell

今年のオスカーで脚本賞を獲ったのがこの映画なのだが,シナリオが優れている映画は面白いというのが私の実体験ベースにある。なので,この映画もきっと面白いだろうと思っていたのだが,全然観に行く機会がなく,今頃になってようやく観たのだが,やっぱり面白かった。

詳しく書くとネタバレになってしまうので控えるが,エンディングに向けて,「おぉっ,そう来るか~」って展開が待っている。ストーリーにチャプター付けをする部分などはQuentin Tarantino的であるが,ネタバレ絶対ダメみたいな展開そのものも結構影響ありかなぁなんて思ってしまう。その一方で,エグい表現はほとんど出てこないところがこの映画のもう一つの美点ではないか。粗暴なシーンはゼロではないが,えげつなさは全然ないところに,おそらくは演出上のこだわりもあったはずである。

これは実に面白く,正直言ってしまうと,今年のオスカーで作品賞を獲った「ノマドランド」より好きだなぁ。ってことで,遅ればせながら星★★★★★としよう。もっと早く観ておけばよかった,と反省。

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