"Rituals" Jim McNeely with Frankfurt Radio Big Band Featuring Chris Potter(Double Moon)
ブログのお知り合いのoza。さんが紹介されていて,これは気になるということで慌てて発注したアルバムである。ビッグバンドにクリポタが客演してソロを吹きまくるというパターンはこれまでもあったが,それに加えてこのアルバムが猛烈に気になったのは,前半がJim McNeelyがストラヴィンスキーの「春の祭典」にインスパイアされて書いた曲を自らアレンジした6曲,後半4曲がChris PotterのオリジナルをMcNeelyがアレンジしたものという構成にある。
冒頭6曲には確かに「春の祭典」に近いようなメロディ・ラインやリズム・パターンが出てきて,なるほどと思わせる。まぁストラヴィンスキーは米国移住後にはジャズにはまっていたという逸話もあるが,「春の祭典」にはジャズ・アダプテーションもあるぐらいだから,曲そのものにJim McNeelyがインスピレーションを得るというのは不思議なことではない。それだけジャズ・ミュージシャンを刺激するような要素が「春の祭典」にはあるということだが,確かに「春の祭典」の持つ激烈モードはジャズにおける興奮と近しいものを感じる。
ここでの演奏は曲としての面白さもあるが,やはり私の耳はクリポタのソロに向かってしまう。何せ冒頭6曲においてはソロイストはクリポタ一人なのだ。ということはJim McNeelyとしてはクリポタを意識して書いたと言ってもいいかもしれないし,クリポタも「春の祭典」を"One of my favorite compositions"と言っているから相思相愛ってところだろうが,とにかくクリポタの吹きっぷりは聞いている方も熱くなる。くぅ~って感じである。
更にクリポタ・オリジナルとして選ばれているのは,"The Sirens"に入っていた"Dawn"に"Wine Dark Sea"の2曲に,"Underground"から"The Wheel",そして"Lift"にも入っていた"Okinawa"というチョイスで,どれもいい演奏だが,やはり"The Wheel"が燃える。これらの4曲にはビッグバンドのプレイヤーたちのソロも交えていて,メンバーの実力の高さも実証されている。
Jim McNeelyは昔はStan Getzとかともやっていたが,近年はビッグバンドの世界が活動の中心となっていることもあって,実にチャレンジングな取り組みである。そこにクリポタという素晴らしいソロイストを迎えて,実によいアルバムを出してくれたと思う。星★★★★☆。
尚,このアルバムのレコーディングそのものは2015年に行われていたものだが,リリースは今年になってからのようである。しかし,oza。さんのブログの記事なかりせば,私のレーダー・スクリーンには全く引っ掛からなかっただろう。ショップに行く機会が激減する現在,やはりブログのお知り合いの情報は貴重なのだ。oza。さん,ご紹介ありがとうございました。
Recorded on Feburuary 10-13,2015
Personnel: Jim McNeely(comp, arr), Chris Potter(ts), Frankfurt Radio Big Band<Heinz-Dieter Sauerborn(as, ss, ts, fl, cl, picc), Oliver Leicht(as ss, ts, fl, cl, picc), Tony Lakatos(ts, fl), Stefan Weber(ts, ss, bs, fl, cl), Rainer Heute(bs, b-cl), FFrank Wellert(tp, fl-h), Thomas Vogel(tp, fl-h), Martin Auer(tp, fl-h), Axel Schlosser(tp, fl-h), Gunter Bollman(tb), Peter Feil(tb), Christian Jaksjo(tb), Manfred Honetschlager(b-tb), Peter Reiter(p), Martin Scales(g), Thomas Heidepriem(b), Jean Paul Hochstadter(ds), Christine Chapaman(fr-h), Miroslava Stareychinska(harp), Claus Kiesselbach(perc)
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