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2025年11月 9日 (日)

またも見ました白黒映画:今回の「過去を逃れて」は完全なファム・ファタールもの。

Out-of-the-past「過去を逃れて("Out of the Past")」('47,米,RKO)

監督:Jacques Tourneur

出演:Robert Mitchum, Jane Greer, Kirk Douglas, Rhonda Fleming, Virginia Huston, Rciahrd Webb

いかにもフィルム・ノワールって感じの映画である。この映画をそうしているのはJane Greer演じるKathieの悪女ぶりなのだが,私のこの手の映画体験の少なさ故もあって,なかなかここまでの悪女キャラってのもあまりお目に掛かったことがない。男を手玉に取って,自分がいい思いをするためなら何でもありみたいに描かれているのは強烈。40年代屈指のフィルム・ノワールと評されるのも,こういう人物造形あってゆえの部分があろう。

銀幕デビューして間もないKirk Douglasも出ているが,男優ではRobert Mitchumのハード・ボイルドな部分も示しつつ,Jane Greerに騙されるところは騙されるというのも面白い。結局美形には弱いのだ(笑)。そして主役,準主役,脇役という感じで出てくる女優陣であるJane Greer,Virginia Huston,Rhonda Flemingが個性は異なるものの,3人ともなかなかの別嬪なのも眼福と思えてしまう。それぞれが順に悪女,清楚系,何を考えているか謎という類型で描かれるのも大いに結構。

この映画は後にDVDではリリースされたとは言え,結局日本では未公開に終わったらしいが,それが不思議にも思える作品。星★★★★☆。因みに「カリブの熱い夜」は本作のリメイクだそうだ。へぇ~。

本作のDVDへのリンクはこちら。ストリーミングへのリンクはこちら

2025年11月 8日 (土)

Clapton温故知新。

_20251105_0002 "E.C. Was Here" Eric Clapton (RSO)

久しぶりに聞いたブルーズ感覚溢れるEric Claptonのライブ・アルバム。ここに収録されている曲はほとんどがリミックスされて"Crossroads 2 (live in seventies)"という4枚組ボックスに収録されているので,音が改善されているそっちは聞いても,こっちを聞く回数はあまり多くない。だが,ここに収められた演奏はブルーズ基本なのに対し,ボックスはより幅広いセレクションなので,ブルーズ・ロックにどっぷりつかりたければ,本作かボックスのディスク1を聞くというのが正解だ。4枚組のディスク1には"Further on up the Road"以外は収録されているから似たようなものなのだ。

このCDのブックレットには詳しい録音場所は書いていないが,4枚組ボックスで明らかになっている。不思議なのは本作に入っている"Further on up the Road"とボックスの同曲だけがテイクが違うことだが,そんなことは大して気にならないぐらいのカッコよさであることは間違いない。しかし,どうせなら4枚組のディスク1に入れた方が本作との一貫性,関係性が保ててよかったようにも思えるが...。

それにしても,ブルーズを弾きまくるEric Claptonの素晴らしさを改めて堪能できると言ってもよいが,このCDで復活した音源として,アナログ時代には入っていなかった"Ramblin' on My Mind"におけるスライドの響きに痺れない人間はいないだろう。いくらアナログの収録時間に限界があるからと言って,この演奏を省いたアナログ盤の編集方針はちょっとなぁ...と思ってしまう。今やディープでヘヴィなギターを堪能できるからいいようなものの,本作に関して言えばアナログだけではもったいないのである。

この頃のバック・バンドは魅力的なメンツが揃っていたし,Eric Claptonの鬼のようなギターも聞きどころ満載で,改めてこの頃のEric Claptonのよさを再認識したのであった。後年のライブ・アルバムより圧倒的にこっちの方がいいのではないかとも思え,ついつい星★★★★☆としてしまうのである。今更ながらであるが,Yvonne Ellimanとの相性もよかったと思え,二人によるデュエットはなかなか素敵である。

Recorded Live at Varios Venues in 1974

Personnel: Eric Clapton(vo, g), George Terry(g), Dick Sims(key), Carl Radle(b), Jamie Oldkaer(ds), Yvonne Elliman(vo), Mercy Levy(vo)

本作へのリンクはこちら

2025年11月 7日 (金)

今にしてみればリーダーが一番マイナー?とでも言いたくなるBruce Gertzのアルバム。

_20251105_0001"Blueprint" Bruce Gertz Quintet (Free Lance)

主題の通りである。ベーシスト,Bruce Gertzのアルバムであるが,リーダーには悪いが,メンバーからすれば一番名の通っていないのがリーダーだと思いたくなってしまう。まぁそうは言っても私がこの人を知っているのはJerry Bergonzi人脈としての訳なのだが,Bruce Gertzはバークリーで教鞭を執る方がメインの活動だったようだから,アルバムはそこそこあっても,なかなか表に出てこない(出てこれない)というのが実態だったのではないか。

そしてこのアルバムだが,クインテットと言いつつ,編成はいろいろなパターンで行われており,5人揃っての演奏がなかなか出てこないというのはどうなのよと思ってしまうところもある。だが演奏自体はメンツがメンツだけに破綻はないし,特にこの当時のJerry Bergonziは好調だった時期のはずなので,Bergonziのフレージングを聞いているだけでも嬉しくなってしまうというところだ。また,ジョンアバことJohn Abercrombieのソロも刺激的。曲は全てリーダーのオリジナルだが,曲の魅力と言うよりもBergonziやジョンアバのアドリブの魅力の方が上かなぁというのが正直なところだ。Joey CalderazzoはBlue Noteから初リーダー作"In the Door"をBlue Noteから出した頃と重なる時期だが,ここではまだまだ控えめにピアノを弾いているという感じか。

面白いのはこのアルバムがフランスのレーベルから出ているというところ。本国のレーベルでは無視されそうな面々のアルバムを米国以外のレーベルが出すというところが,この当時の状況と言ってもいいかもしれない。それでも演奏とは相応に聞きどころもあり,見逃すには惜しいと思えるアルバム。星★★★★。

Recorded on February 28 & March 1, 1991

Personnel: Bruce Gertz(b), Jerry Bergonzi(ts), John Abercrombie(g), Joey Calderazzo(p), Adam Nussbaum(ds)

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2025年11月 6日 (木)

兄貴の"Life"を久しぶりに聞く。

_20251102_0001 "Life" Neil Young and Crazy Horse(Geffin)

兄貴ことNeil Youngの多作ぶりにはもはや追随できなくなっている私だが,以前はアルバムが出ればほぼ確実に入手していたのも今は昔である。本作は1987年リリースなので,全部ではないとしても,結構兄貴のアルバムを買っていた頃だ。ただ,この時期,Geffenレーベルとは折り合いが悪かったようで,レーベルからすれば自分の趣味じゃなく,もっと売れるアルバムを出せよって感じだったことは想像に難くない。

このアルバムに関してはフォーク・タッチの曲や兄貴にしてはポップに響く曲もあれば,後のグランジの萌芽となりそうな曲が混在していて,やや捉えどころがないと言ってもよいように思う。私がこのアルバムの後,兄貴のアルバムを買うのは"Ragged Glory"になるのだが,この頃の私は兄貴のアルバムもちゃんと選択して購入しようとしていた時期かもしれない。やはりGeffenレーベルでのアルバムの捉えどころのなさは私にも相応の影響を与えていたはずだからだ。

しかし,よくよく調べてみると,この音源がもとはほとんどがライブ音源で,そこにオーヴァーダビングを施したものであることを考えると,兄貴とCrazy Horseのライブでの演奏能力の高さが実証されていることは間違いない。このアルバムが異色なのはシンセサイザーが結構使われているところかもしれないが,その辺はJoni Mitchellの"Dog Eat Dog"に近い部分を若干感じる。そうは言っても"Dog Eat Dog"ほど極端ではないので,そんなにデジタル臭さないが,ごちゃまぜ感はやはりあるよなぁってところ。それでもよくよく聞けばかなりいい曲が揃っていて,私にアンビバレントな感覚を残すので星★★★★。

Personnel: Neil Young(vo, g, hca, key), Poncho Sampedro(g, key, vo), Billy Talbot(b, key, vo), Ralph Molina(ds, vo), Jack Nitzsche(vo)

本作へのリンクはこちら。 

2025年11月 5日 (水)

Dionne WarwickボックスからDisc 3を聞く。

Here-i-am_20251101183601 Dionne Warwickの12枚組ボックス,"Make It Easy on Yourself: The Scepter Recordings 1962-1971"から今日はDisc 3。このディスク3は"Here I Am"と"Here Where There Is Love"の2枚のアルバムをカップリングし,ボーナス・トラックを3曲追加したもの。

"Here I Am"には特大のヒット曲は収められていないが,"I Love You Porgy"なんかを歌っているのが珍しいと言えば珍しいが,それでもほとんどは安定のBurt Bacharachサウンドと言ってよいので,ヒット曲があろうがなかろうが楽しめることは間違いない。だが少々地味だと思われても仕方がない部分があるのは事実だと思う。

Here-where-there-is-love しかしこのディスク3においてはもう一枚の"Here Where There Is Love"の方がはるかにDionne Warwickの魅力を示すものと思うし,曲も粒揃いだ。究極は"Alfie"(これがシングルのB面だったというのは信じがたいが)だと思うが,"Alfie"に限らずここにはBurt Bacharachサウンドに乗ったDionne Warwickの良さが凝縮されているとさえ感じてしまう。彼らに期待する音がここには詰まっていると思うし,これまで聞いてきたアルバム群においては,コラボレーションの成果としての一つのピークだったと言ってもいいのではないだろうか。まぁBob Dylanの「風に吹かれて」がDionne Warwickに合っているかは微妙だが,ここまでオリジナルと違うかたちならこれはこれでありだ。

このボックスに関してはいつも書いていることだが,やっぱいいですわぁ(笑)。

2025年11月 4日 (火)

このブログにKansas初登場 (笑)。

_20251101_0001 "Point of Know Return" Kansas(Columbia)

邦題は「暗黒への曳航」だ。私はKansasのアルバムはこれとライブ盤の2枚しか保有していないし,両方とも中古で安く仕入れたはずだから,ファンでも何でもない。だから,ブログを開始以来,初のKansasに関する記事のアップである。

改めてこのアルバムを聞いてみると,この頃のKansasというバンドは相応の勢いを感じさせる。「アメリカン・プログレ・ハード」とも位置付けられるプログレ的な音作りは,ツイン・キーボードとヴァイオリンによるところが大きいと感じさせるが,今となっては少々時代を感じさせるものと言っても,私のようにロックは70年代中心の人間にとってはフィット感が大きいのだ。完全にプログレ的な音が支配する中で,突然登場するアコースティック・ギターが印象的な"Dust in the Wind"はアルバムにとっていいスパイスのようになっているように思う。

今にして思えば,少々の仰々しさと多少の曲の出来不出来はあるが,全体的には結構よく出来たアルバムだったなぁと思えるで,これならストリーミングでほかのアルバムを聞いてもいいように思えたこれが本当の温故知新。その前に手持ちのライブ盤,"Two for the Show"を聞くのが先か(笑)。本作はミキシングのせいか,音が軽いのがちょっと惜しいように思えるが,十分星★★★★には値する。

Personnel: Steve Walsh(vo, org, synth, vib, perc), Kerry Livgren(synth, key, g, vo), Robby Steinhardt(vo, vln, vla), Rich Williams(g), Dae Hope(b), Phil Ehart(ds, perc)

本作へのリンクはこちら

2025年11月 3日 (月)

90歳を過ぎてもまだまだ現役,ナベサダのストリングス付きライブ盤。

Hope-for-tomorrow"Hope for Tomorrow" 渡辺貞夫(Victor)

ナベサダこと渡辺貞夫は既に92歳となっているが,来年には"California Shower"を再演するツアーもアナウンスしていて,高齢者としては考えられないようなアクティブな活動を続けている。そんなナベサダが昨年の12月にストリングスを従えて行ったライブの実況盤をストリーミングで聞いた。このレコーディングが行われた時だって,既に91歳だ。私が最後にナベサダのライブを観たのは2019年のBlue Note東京でのことだった(そのライブに関する記事はこちら。)が,その時にも驚かされたのに,まだまだ驚かさせてくれるわが同郷のナベサダである。

この時のストリングスは20人からなる結構な編成だったそうだが,まずこのストリングスのアレンジを誰がやったのかと思いたくなる適切さにまず感心してしまった。私はストリングスものの最高傑作はWynton Marsalisの"Hot House Flowers"だと信じて疑わないが,同作を想起してしまうぐらいのレベルだと思っていた。

そうしたストリングスをバックに,ナベサダは気持ちよさそうに吹いているが,さすがに音は昔に比べればソフトになった感じがするものの,フレージングには全く衰えを感じさせないのは凄い。バックのトリオも実力者なので安心感があることも効いているとは思うが,当時91歳にしてこの演奏ぶりはもはや化け物の領域に入ってきたと言ってもいいかもしれない。しかし,ナベサダの年齢を考えれば,やはりこれは評価しなくてはならないだろうということで,星★★★★☆。半星引いたのは,開催時期を踏まえて演奏されたであろう"Sonho de Natal(邦題は「クリスマス・ドリーム」)"が曲として私として魅力を感じられなかったことによる。私にとってはこの曲は蛇足であった。

とは言え,これは味わい深く,なかなかいいアルバムだと思う。

Recorded Live at Various Venues on December 15, 18, 20 & 21, 2024

Personnel: 渡辺貞夫 (as), Russell Ferrante (p), Ben Williams (b), 竹村一哲 (ds), 押鐘貴之ストリングス 

本作へのリンクはこちら

2025年11月 2日 (日)

今回見た白黒映画は「絶壁の彼方に」。タイトル通り絶壁が出てくるのねぇ。

State-secret「絶壁の彼方に("State Secret")」(’50,英)

監督:Sidney Gilliat

出演:Douglas Fairbanks, Jr., Glynis Johns, Jack Hawkins, Herbert Lom, Walter Rilla

逢坂剛と川本三郎の「さらば愛しきサスペンス映画」でも絶賛されていたこの映画を見た。架空の国における重大な原題通りの「国家の秘密」を知ってしまったDouglas Fairbanks, Jr.演じる医師の逃避行を描いたものだが,架空の国の言葉が何を言っているのかわからないというところにこの映画のサスペンス的意義がある。

主題の通り,逃避行の中で国境越えを図るために登山映画のような趣になるのがなかなか面白いが,監督のSidney GilliatはAlfred Hitchcockの「バルカン超特急」のシナリオも書いた人なので,同じような架空の国を舞台にするのもなるほどと思えてしまう。まぁ,ヒロインを演じるGlynis Johnsの巻き込まれ具合とか,エンディング等はどうなのよと思わせる部分もあるので,この映画がそれほど絶賛に値するかなぁと思えるが,それでも1950年という時代を考えれば,このハラハラドキドキ的な展開は相応に刺激的だったんだろうと感じられるものであった。星★★★★。

Jack-hawkins 尚,甚だ余談ながら,Jack Hawkinsが数々の名作に出演した名優だと認めつつ,この映画でのJack Hawkinsがザキヤマに見えて仕方なかった私であった(爆)。

本作のDVDへのリンクはこちら。ストリーミングへのリンクはこちら

2025年11月 1日 (土)

リリースから35年!今なお瑞々しさが変わらないPrefab Sproutの傑作。

_20251023_0001 "Jordan: the Comeback" Prefab Sprout (Epic)

このアルバムがリリースされたのが1990年だから,購入したのは私のNYC在住中だったはずだ。そもそもアメリカ音楽指向の強い私がなぜこのアルバムを購入する気になったかは記憶の彼方ではあるが,店頭でプレイバックされていたのを気に入った可能性が高い。あるいはジャケの色遣いに惹かれた可能性もあるが,本作は心から買って正解だと思ったアルバムとなった。とにかくPaddy McAloonのソング・ライティングのセンスが素晴らしく,35年経った今でも魅力的に響く。購入した当時も何度聞いたかわからないぐらいよく聞いたから,今回久しぶりにプレイバックしても曲をよく覚えていた。主題の通り,その瑞々しさは不変であった。

Prefab Sproutとしての最新作は私が2013年のベスト作の一枚にも選んだ"Crimson / Red"なので,それからも12年という時間が経過しているが,今後アルバムが出るかどうかはもはやPaddy McAloonのワンマン・バンドと化したPrefab Sproutゆえ,Paddy McAloonの心持ち次第ということになろう。だが,このアルバムや"Crimson / Red"におけるような音を今一度聞きたいという気持ちになってしまった。

私がブリティッシュで惹かれるのはPrefab SproutやDeacon Blueのようなバンドなので,メロディ・ラインこそが私のバンドへの思い入れの支配的要素なんだろうと思える。そうした私の音楽的な好みにストレートに刺さる大傑作だと評価したい。そしてそんなメロディ・メイカーとプロデューサーとしてタッグを組んだのがThomas Dolbyなのだ。実に素晴らしい仕事ぶりだ。もちろん星★★★★★だ。

このアルバムのライナーにはメンバーの担当楽器の記載がないが,まぁ下記のような感じだろう。そして今更気づいたが,Jenny Agutterが1曲で語りの声を聞かせている。この人,「2300年未来への旅」やそのほかにもホラー映画に結構出ていたように記憶しているが,「アベンジャーズ」にも出ていたのねぇ。

Personnel: Paddy McAloon(vo, g, p, key), Martin McAloon(b), Wendy Smith(g, p, key, vo), Neil Conti(sa, perc) with Jenny Agutter(spoken words), Luís Jardim(perc), Judd Lander(hca), Phantom Horns

本作へのリンクはこちら

2025年10月31日 (金)

ジャズ界注目のヴァイブ奏者,Patricia Brennanの新作を聞く。

Patricia-brennan "Of the Near and Far" Partricia Brennan(Pyrolastic)

今年の7月に「Patricia Brennanって誰だ?ってことで聞いたアルバム。」という記事をアップしたが,今年のDownBeat国際批評家投票でも高く評価された前作"Breaking Stretch"が実に刺激的だったので,リリースされたばかりの新作をストリーミングで聞いた。今回は前作と異なりホーンは不在なのだが,その代わりに弦楽クァルテットが加わっている。そしてその結果として出てきた音はまたも刺激的なものであった。

Bandcampのサイトに本人の説明があり,本作の7曲のうち5曲は星座の名称に由来しているが,星座の形状を五度圏(Circle of Fifth)に当てはめることでピッチ,コード,キーが設定されることで曲が生み出されているようだ。ということで,ある意味作曲の技法的には現代音楽的なアプローチ,あるいは図形譜的と言ってもよいかもしれないが,そうは言ってもきっちり書かれている部分もあるようなので,出てくる音楽には難解さはそれほど強くは感じられない。

ただ,決してコンベンショナルなジャズとは言えず,実験的な要素は強いし,作曲に当たってのインスピレーションはブラームス,ドビュッシー,ドヴォルザーク,ストラヴィンスキー,コープランドから,ケージ,シュトックハウゼン,ランスキー,更にはレディオヘッドやサウンドガーデンの名前が挙がっているから,複雑な音になりそうなことは推して知るべしだ。最後に収められた"When You Stare into the Abyss"に顕著だが,アンビエント的,あるいはサウンドスケープ的な部分もあって,実に面白い。

ということで,ともすれば頭でっかちだという指摘も受けそうな部分はあるものの,これだけ刺激的な音を出してくれれば,現代音楽に何の抵抗もない私にとっては歓迎すべきものであった。やはりこのPatricia Brennanというプレイヤーは侮れないし,注目に値する人だ。星★★★★☆。

Recorded on December 8 & 9, 2024

Personnel: Patricia Brennan(vib with electronics, marimba), Sylvie Courvoisier(p), Miles Okazaki(g), Kim Cass(b), John Hollenbeck(ds, perc), Arktureye(electronics), Modney(vln), Pala Garcia(vln), Kyle Armbrust(vla), Michael Nicolas(cello), Eli Greenhoe(cond)

媒体でもリリースされているようだが,本作のストリーミングへのリンクはこちら

2025年10月30日 (木)

Arooj Aftab@Billboard Live東京参戦記。

Arooj-aftab-at-billboard-live-2

私が昨年,一昨年とアルバムをその年のベスト作の一枚に選んだArooj Aftabの来日とあっては行かねばならんということで,先日のSonny Landrethに続いてBillboard Liveに行ってきた。Arooj Aftabについては,そのアルバムのクォリティは間違いないものの,日本におけるポピュラリティという観点では少々心配して会場に向かった。今回も私は当然のようにカジュアル・シートでの参戦であったが,音楽を聞くだけならカジュアルで十分なのだ。Blue NoteやらCotton Clubでは良席ねらいでそそくさと予約を入れる私だが,Billboard Liveではカジュアル・シートは一般予約開始時に対応しても,よほどのことがない限り,ほぼ真ん中の席は取れてしまうところもよい。今回もカジュアル・シートは客入りは少ないが,テーブル付きの席はSonny Landrethの時よりは入っているってところか。

このバンド,バックのベースは全編アコースティック・ベースであったり,メンバーに相応のソロ・スペースを与えるところはジャズ的な感覚も持ちつつ,ロック,ワールド・ミュージックを見事に融合した感じなのが面白かった。まさにこれが本当のフュージョンだ。バンドはトリオながら非常にタイトなバッキングぶりで応えていたが,何よりも魅力なのはArooj Aftab自身の声そのものだ。一方,ステージ上でほとんどサングラスをはずさなかったり,ステージ上の最小限とでも言うべき動きや一部自虐的とも思えるMCを見聞きしていると,相当シャイな人なのではないかと感じさせる部分もあって,エンタテインメント性とは一線を画する感じと言えばいいだろうか。換言すればギミック不要で音楽だけで勝負するという感覚だろう。

いずれにしても,極めてユニークな音楽と言ってもよいものであり,ある意味これまで聞いたことがないタイプとも言えて,非常に面白いと思えたライブであった。尚,上の写真はBillboard LiveのFBページから拝借。

Live at Billboard Live東京 on October 28, 2025, 2ndセット

Personnel: Arooj Aftab(vo), Gyan Riley(g), Zwelakhe Duma Bell le Pere(b), Engin Gunaydin(ds)

Arooj-aftab-at-billboard-live-3

2025年10月29日 (水)

追悼,Jack DeJohnette。

Jack-dejohnette

Jack DeJohnetteの訃報は突然であった。考えてみればJack DeJohnetteも83歳という年齢だったのだが,いつまでもシャープなドラミングを聞かせるイメージがあったので,年齢を感じさせない人であっただけに,この訃報は残念だ。ドラマーとしてだけでなく,ピアニストとしても優秀,リーダーとしても優秀というミュージシャンシップに溢れた人をジャズ界はまた失った。

New-direction-in-europe 追悼のために聞いていたのが,"New Directions in Europe"。冒頭のドラムス・ソロからJack DeJohnetteらしさが出たアルバムであった。Lester Bowieというひと癖もふた癖もあるミュージシャンさえ見事に使いこなすところは立派。また,Miles Davisとの通称「ロスト・クインテット」での演奏も忘れがたい。ブログにアップする記事とは別に,暫くはJack DeJohnetteが残した音源を聞き直すことにしたいと思う。

R.I.P.

2025年10月28日 (火)

Chick Corea生前最後のライブ・パフォーマンスが全曲公開された。

Forever-yours "Forever Yours: The Final Performance" Chick Corea(Candid)

9月末にご紹介したアルバムがストリーミングで全編公開されたので早速聞いてみた。国内では媒体も本国より早くリリースされるらしいのはCD天国,日本らしい。

それはさておき,本作はChick Coreaが亡くなる4か月前の演奏を収めたものだが,演奏そのものに死期を感じさせるところはない。しかしである。ここでのChick CoreaのMCは明らかに私が知るChick Coreaの喋りとは異なる。このライブがコロナ禍真っ只中で世界的にコンサートが制限される中での開催だったらしいので,もしかするとマスクをしながらのMCだったのかとさえ思わせるほど,声に覇気がなく,のどが枯れたように聞こえるのだ。それはこの演奏を生前最後の演奏と知るゆえか...。

もしChick Coreaが存命であれば,この音源のリリースを許可したかどうかは微妙だが, 演奏そのものも絶好調とは言えない感じがするので,これはあくまでもChick Coreaのレガシーとして聞くべきものであって,評価を越えた存在だと考えることにしたい。しかし,Chick Coreaが弾く"Overjoyed"はやはり趣があるし,終盤に"Children's Song"から6曲演奏するが,#19ってこんなに現代音楽的だったかなぁなんて感じながら聞いていた。改めてあまり聞かない"Children's Song"アルバムそのものを聞いてみようという気にさせるところがChick Coreaだと言っておきたい。

Recorded Live at Ruth Eckerd Hall on October 23 & 24, 2020

Personnel: Chick Corea(p)

本作のストリーミングへのリンクはこちら

2025年10月27日 (月)

またも見ました白黒映画:「彼奴は顔役だ!」って凄いタイトルだねぇ。

Roaring-twenties 「彼奴(きゃつ)は顔役だ!("The Roaring Twenties")」(’39,米,Warner Brothers)

監督:Raoul Walsh

出演:James Cagney, Pricilla Lane, Hamphrey Bogart, Gradys George, Jeffrey Lynn, Frank McHugh

1939年に本国では公開されたこの映画,日本での公開は1955年までずれ込んだ往年のギャング映画である。それにしても凄い邦題だが,「彼奴」なんてのはもはや死語と言っていいだろうなぁ。舞台は第一次大戦の終戦から1920年代の禁酒法時代,そして大恐慌といった時代を描くがゆえの原題の"The Roaring Twenties"である。この20年代の時代の流れとともに,James Cagney演じるEddie Bartlettの運命も翻弄され,大きな浮沈を経験することになるというところだ。

私はこれまでJames Cagneyの映画を見た記憶はほとんどないのだが,決して美男という感じでは全くないから,ギャング映画を中心とするキャスティングだったのにもうなずける話だ。片や相手役のPricilla Laneは普通のアメリカのおねぇちゃんって感じで,劇中で歌も披露するものの,印象が強くないのが難点。Hamphrey Bogartは助演扱いだが,後のカッコよさの片鱗を示す。

この映画,典型的なギャング映画という感じだが,サスペンスを盛り上げるというのでもないので,私の好みからは少々外れるというのが実感だが,それでも古い映画の割に,ストリーミングでも画質は十分見られるレベルだったのは嬉しい。いずれにしても,禁酒法という訳のわからない法律がいかにばかげたものであるかを感じるとともに,結局それがギャングの金づるになっていたことを明確に示すところも時代を感じさせる。同時代感ゼロなので,評価すること自体が難しい部分もあるが,これはこれで十分見られる映画だし,劇中で流れる音楽もなかなか魅力的。星★★★★。この手の映画における古典という位置づけでよいと思う。

本作のDVDへのリンクはこちら。ストリーミングへのリンクはこちら

2025年10月26日 (日)

ひえ~,12弦ギターでもPat Martino節炸裂。

Pat-martino-desperado "Desperado" Pat Martino(Prestige)

このアルバムを初めてストリーミングで聞いた。全然意識していなかったアルバムなのだが,ここでPat Martinoが弾いているのが12弦ギターなのだが,12弦だろうが何だろうが,出てくるのがPat Martino節,そしてPat Maritnoの音ってのが凄い。おそらく太いゲージを使っていると思われるが,それでこのフレージングってどういう握力をしているのよ?と思わざるを得ない。

メンツは後の"Consciousness"と同じなので,この頃のレギュラー・コンボってところだろうが,演奏では冒頭のオリジナル曲"Blackjack"が若干フリーっぽさを感じさせたり,ブルーズ・フレイヴァー溢れる"Dearborn Wark",そしてタイトル・トラックでは後の"Joyous Lake"につながりそうなコンテンポラリーな感覚が出ていて面白いと思った。"Portrait of Diana"を除けば,鬼のようにスピーディなPat Martino節が聞ける曲が並んでいて,やっぱりこれには興奮させられると思うのが人情だ。でもやっぱり"Oleo"が一番魅力的かなぁなんて思ってしまうのも事実だが,それでも70年代のPat Martinoのアルバム同様,興奮必至。星★★★★☆。この演奏が12弦でっせ。マジで凄いわ。

尚,クレジットにはEric Klossが"Blackjack"にソプラノ・サックスで参加とあるのだが,私の耳には全然ソプラノが聞こえてこない。やっぱり難聴か?(爆)

Recorded on March 9, 1970

Personnel: Pat Martino(g), Eddie Green(el-p), Tyrone Brown(b), Sherman Ferguson(ds), Eric Kloss(ss)

本作へのリンクはこちら

2025年10月25日 (土)

超ハイ・テンション:「ハウス・オブ・ダイナマイト」に痺れた。

A-house-of-dynamite 「ハウス・オブ・ダイナマイト("A House of Dynamite")」('25,米,Netflix)

監督:Kathryn Bigelow

出演:Idris Elba, Rebecca Ferguson, Gabriel Basso, Jared Harris, Tracy Letts, Moses Ingram, Jason Clarke

いやいや,凄い映画を見ちゃったなぁって感じだ。Kathryn Bigelowと言えば,「ハート・ロッカー」,「ゼロ・ダーク・サーティ」の2作のテンションが記憶に残るが,同じような緊張感に満ちた映画であった。もはやこの人のキャラだと思わざるをえないが,こういう映画は多分メジャーでは作れないだろうし,Netflixで作られるところに時代の流れを感じるのは私だけではないだろう。その本作は現在劇場でも公開されているが,Netflixで見たのであった。

ストーリーが3部構成みたいなかたちで時間軸をずらして展開されるのは,Christopher Nolanの「ダンケルク」に近いものを感じていたが,まさに群像劇のようなかたちでストーリーが描かれ,そして最後は...で終わらせるシナリオは上手いなぁと思ってしまった。このエンディングについては詳しくは書かないとしても,見る人によって解釈が分かれるところだと思うのだが,そこは見た人が各々が判断すればいい話だ。私はこういうのはありだということで,完全肯定派だ。

この映画で提示されるレベルのテンションは「アメリカン・スナイパー」以来かもなぁなんて思いながら見ていたが,約2時間,一瞬たりとも緩まないので,見ていて疲れるのは事実だ。しかし,これぐらいのリアリティを以て描かれれば何の文句もない。明日,同じ事象が発生しても不思議ではない一触即発の世界を描いたのが素晴らしいと思うが,軍関係者が「好戦的」に描かれるところにはむかつくって人もいるかもしれない。しかし,大体の場合,そういう風に描かれるのが軍関係者の宿命なのだ。

いずれにしても,いろいろな登場人物が苦悩しまくる感じで,見ていて辛くなる部分もあるが,これは私が今年見た映画の中でも高く評価したくなる一本であった。星★★★★☆。まぁ,このテンションは本来映画館で見るべきだったなぁと思うのも事実。やっぱり映画は映画館がいいと思う。

2025年10月24日 (金)

これも知らなかった!Dave Liebmanのスタンダード・バラッド集。Ben Monderが効いている!

Trust-and-honesty "Trust and Honesty" Dave Liebman (Newvelle)

ストリーミングを利用していると,特定のアルバムを聞いた後,似たような音楽のランダム再生が行われることで,全く知らなかった音楽に出会う機会が結構あると思っている。このアルバムがどんな音楽から連携してきたかは覚えていないが,これがDave Liebmanとしては珍しい編成にして,こういう音楽もやるのかと思わせるものであった。

このアルバムは基本的によく知られたスタンダード・ナンバーをバラッド・テイストで演奏しているのだが,通常ははるかにハイブラウな音楽をやると思わせるDave Liebmanにしては珍しいなぁと感じさせるのだが,実はこれが味わい深いアルバムなのだ。冒頭の"Designs"こそLiebmanのオリジナルらしいが,それ以外は誰もが知る曲なのだ。もちろん,Dave Liebmanだけに時折,鋭いフレージングも交えてくるが,それも控えめというところが実感だ。それをよしとするか否かが評価の分かれ目というところだろうが,私には十分ありだと思えた。

このアルバムのサウンド上,重要なのはBen Monderらしい浮遊感のあるギターだと思うが,そこに加わるJohn Hébertのベースも控えめながらいい音で捉えらえていて,好印象なのだ。そして基本はトリオ演奏の中,"Blue in Green"のみLiebmanのソプラノ・ソロで演じられる。このアルバムのストリーミング版には,その代わりにと言ってよいのかどうかわからないが,Ben Monderのソロによる"Time Remembered"とJohn Hébertのソロによる"Blind Pig"が追加されているところに,三者対等感を打ち出そうとするかのようなDave Liebmanの気配りを感じるのは私だけだろうか。

そして,最後はJobimの"Zingaro"で締めるが,ここでのみLiebmanはイントロで木製フルートを吹き,Ben Monderは12弦ギターで対応して,異なった雰囲気を作っているが,Ben Monderの12弦はもう1曲ぐらいあってもよかったように思える。それでもこのアルバムは傾聴に値するバラッド・アルバムだと思えることは間違いない。星★★★★。尚,本作はアナログ盤でもリリースされていて,レーベルのサイトから購入できるようだ(Trust and Honesty by Dave Liebman – Newvelle Records)。送料を考えると相当の出費覚悟の方は是非。

Recorded on February 12, 2022

Personnel: Dave Liebman(ss, wooden-fl), Ben Monder(g), John Hébert(b)

本作のストリーミングへのリンクはこちら

2025年10月23日 (木)

Boz Scaggsの新譜,"Detour"は渋いジャズ・ヴォーカル作。

Detour "Detour" Boz Scaggs (Concord)

傘寿を過ぎたBoz Scaggsは今なおライブで元気な声を聞かせており,昨年2月の日本公演でもまだまだ現役感たっぷりだったのは凄いが,7年ぶりのアルバムは渋いジャズ・ヴォーカル作で来た。これまでも同系列の"Speak Low"や"But Beautiful"をリリースしているから,この路線は驚かないが,基本的にピアノ・トリオをバックにしたこのアルバムはスローな曲を中心とした実に渋くも味わい深いアルバムとなった。

このアルバムを紹介した記事によれば,Boz Scaggsにとってはこれまでも歌ってきた曲という訳ではなく,"Angel Eyes"は初めて歌ったのだそうだ。それにしてはこのフィット感は何?と言いたくなるぐらいのフィット感なのだ。"Angel Eyes"やBill Evansでお馴染みの"Detour Ahead",あるいは"The Meaning of the Blues"のような曲を聞いていると,インティメイトなジャズ・クラブでこれらの曲を歌うBoz Scaggsの姿を目撃したいという衝動に駆られる。また,Duane Allmanとのセルフ・タイトル作にも入っていた"I'll Be Long Gone"の再演でのヴォーカルの違いを感じるのも一興だろう。尚,国内盤にはボートラで"Body and Soul"も入るらしいが,ストリーミングでは公開されていない。

Boz Scaggsの年齢を考えれば,この路線も十分にあると思うが,ライブではバリバリのヴォーカルとギターを聞かせていたから,今後はライブでこうした曲のセットを組み込むというかたちなのかもしれないとしても,こうした編成で一度来日してくれてもいいかなぁなんて思えるアルバムであった。それが日本で受けるかどうかは別だが,私はそれもありだと思えるほどの味わいなのだ。きっとうまい酒が飲めると思える歌いっぷり。星★★★★。参加メンバーの詳細はわからないが,ネット情報を信じれば下記の通り。

Personnel: Boz Scaggs(vo), Seth Asarnow(p, arr), Hans Trowsea(b), Jason Lewis(ds), Jim Cox(p, synth), Jeremy Cohen(vln, vla), Michael Miller(g), Ashra Weston(g)

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2025年10月22日 (水)

Sonny Landreth@Billboard Live東京参戦記

Sonny-landreth-at-blt

私はSonny Landrethというギタリストを昔から買っている。特に人のバックでこの人が聞かせるギターは実に魅力的だ。逆に言えば,リーダー作はイマイチ感があることも否定はしないが,音楽界における究極のバイプレイヤーと言ってもよいかもしれない。

Sonny-landreth-at-blt-on-stage そんなSonny Landrethがソロで来日するとあっては,どうしてもその技が見てみたいということで,Billboard Live東京に駆けつけた私である。会場に到着すると,どう見ても聴衆が少ない。アリーナはそこそこいるようだが,2階以上の客席は空席が目立つ。いつもなら音楽好きが集まるカジュアル・シートも今回ばかりは3割も埋まっていないって感じなのだ。しかし,Sonny Landrethはそんなことも一切関係ないプレイぶりで,これって実にもったいないと思わせるような演奏を聞かせた約80分であった。

まず何が凄いかって,Sonny Landrethがスライドで繰り出す技の数々である。思わず「技のデパートじゃん...」と独り言ちてしまった私であったが,こうやって弾いているのかぁなんて,最上階のカジュアル・シートからビデオをズームしながら見ていた私である(今回は開演前に撮影OKのアナウンスがあった)。そして,ギター1本(使用したのはストラト2本だが...)の弾き語りにもかかわらず,これほどロックを感じさせてくれるとは...と思っていた私である。今年74歳になったとは思えないプレイぶり,歌いっぷりには驚かされるとともに,所作も若々しいのだ。

_20251021_0001 サイン会があるのはわかっていたのだが,値段がバカ高いと思いつつ,Sonny Landrethのサインをゲットするとともに,話す機会なんてもうあるかどうかわからないから,無駄遣いと思いつつ,今のところ最新のスタジオ盤である"Blacktop Run"をゲットしてきたのであった。財布の紐も緩むぐらいの満足感の高いライブであったことの証だ。Sonny Landrethが素晴らしいギタリストであることはこれまでも理解していたつもりだが,生で観てその思いがますます強くなってしまった。同じスライドということで,ついついDerek Trucksと比較していた私だが,フレージングはさておき,スライドの技の多彩さはSonny Landrethに軍配が上がるかなぁなんて漠然と思っていた。

演奏の模様の映像の一部を貼り付けておくが,ご覧になれば私の思いもご理解頂けると思う。是非画面を拡大して見て頂きたい。尚,一番上の写真はBillboard LiveのFBから拝借したもの。

Live at Billboard Live東京 on October 20, 2025

Personnel: Sonny Landreth(vo, g)

2025年10月21日 (火)

Rachael Yamagataの新作の現物が到着。

Starlit-alchemy_20251018172501 "Starlit Alchemy" Rachael Yamagata(Julian)

私の長年の「推し」であるRachael Yamagataの新作がリリースされるという記事は8月にアップしていたが,本国から飛ばした現物がようやく到着である。私はこの人の声や,曲の質の高さに強い魅力を感じているのだが,新作としてのフル・アルバムは"Tightrope Walker"以来9年ぶりというのはあまりにも長いインターバルだったと思わざるをえない。正直言って,一時期はクラウド・ファンディングでアルバムをリリースしたりしていたRachael Yamagataだが,彼女がやっている音楽は現代においてはそう多くは売れないとしても,優れたシンガー・ソングライターであることは改めて強く主張しておきたい。

内省的あるいはマイナー・キーにおける曲調において発揮される彼女の魅力は本作においても全く変わらないと思えるし,やはりいい曲を書くと感じる。ただ,一点違和感があるとすれば,"Carnival"に聞かれる仰々しいアレンジメントだろうか。映画音楽の主題歌みたいなノリだと思えてしまって,どうもこの曲は私には居心地が悪かった。そのほかの曲におけるストリングスの使い方に問題を感じないだけに,この曲の異色さが際立ってしまったように思えるのは残念。しかし,それ以外はRacheal Yamagataらしい曲,歌が並んでいると言ってよいので,ファンは必携。聞いたことがない人にも是非聞いて頂きたい。星★★★★☆。

私は「推し」だけに彼女の活動を支えるべく,LPとCDのバンドルを購入したが,基本はCDだけでもよいと思う。

Personnel: Rachael Yamagata(vo, p, thumb-p, ds, perc), Michael Chaves(key, g, b), John Alagia(key, synth, b, vo), Jeff Lipstein(key, synth, ds), Brandon Morrison(b),  Zac Rae(b), Pete Hanlon(b), Jesse Siebenberg(ds, b), Jay Bellrose(ds), Josh Dion(ds), Zach Djanikian(ds), Jeff Hill(ds), John Reilly(ds), Kristi Lee(vo), Chris Sovich(vo), Jordan Allen(vo), Jasper Pearson(vo), Donna Stride(vo), Oli Kraus(strings), Zevi Sun(vln), Lana Auerback(vln), Eelena Kawazu(vln), Nayong Kim(vln), Sydney Link(vla), Michael Halbrook(vla), Amelia Smerz(cello), Sam Boudy(cello)

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«見たかった「ブラックバッグ」をようやく劇場で見た。