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2025年3月26日 (水)

もはや強迫観念?

諸事情により某所に遠征していたため,記事を書く余裕がない。一日や二日,記事をアップしなくても何も変わらないと思いつつ,ついつい言い訳がましいエントリーをしてしまう私...。ということで,今日はここまで。

2025年3月25日 (火)

Susanna Hoffsの未発表音源をようやくゲット。

_20250321_0001 "The Lost Record"(Baroque Folk)

本作は昨年の後半にリリースされたものの,品薄が続いていて,LPで注文していてもちっとも入荷しないところに,某ショップでCD入荷の告知があったので,ちょっと高いと思いつつ,Susanna Hoffs姐さんのアルバムとあってはついつい購入してしまう私であった。

私がSusanna Hoffsにはまってしまったのは,Matthew Sweetとの"Under the Cover"シリーズの影響が大きかったが,彼女のソロ・アルバムや復活Baglesのアルバムも購入しているとは言え,相当遅れてきたファンではある。しかし,Susanna Hoffsのキュートな声はいまだに魅力的であり,私より年長者とは思えない瑞々しさだと思っている。だが,彼女のアルバムは媒体ではなかなか購入が難しいところがあるのは本作も同様であった。

本作は99年にガレージで録音されたらしいが,25年間未発表だったものを四半世紀を経てリリースされたから,その名も"The Lost Record"な訳だ。音もまさに宅録感に溢れたものだが,アコースティックな響きも交えつつ,Susanna Hoffsのキュートな声はいつも通りで,それだけでOKって感じなのはファンの弱みだ。パーソネルの情報も何もないので,詳しいことはわからないが,2曲目の"Grateful"はミキシングにJim Keltnerの名前があるのが意外。9曲目はGo-Go'sのCharlotte Caffey,Jane Wiedlinと共作というのも面白い組み合わせであった。

まぁこういうアルバムはファンが密かに聞いていればいいやって感じで,人に勧めるものでもないかなと思いつつ,好きなものは仕方ないのだ。星★★★★。

媒体の入手は難しいかもしれないが,本作のCDへのリンクはこちら。ストリーミング(リンクはこちら)ならいくらでも聞けるので念のため。

2025年3月24日 (月)

「名もなき者」を観てから明らかにBob Dylanを聞く回数が増えた。

Tell-tale-signs "Tell Tale Signs:Bootleg Series Vol. 8" Bob Dylan(Columbia)

映画としての「名もなき者」への評価は必ずしも高くない私だが,明らかにあの映画を観てからというもの,Bob Dylanのアルバムを聞く回数が増えている。記事にはしなかったが,オリジナル「武道館」を聞いたりしていた私だが,今回取り出したのがBootleg Seriesである。カヴァーにも書かれている通り,1989年~2006年の未発表/レア音源を集成したものだが,"Oh Mercy"から"Modern Times"に至る時期だが,この間に出た"Good as I Been to You"と"World Going Wrong"はトラディショナル・フォーク集だったので私は買っていない。しかし,その間のオリジナル作はどれもが優れた出来だったと思っているから,この時期の未発表音源ならば間違いないと思ってしまう。昨今はBootleg Seriesも全部は買わなくなってしまったが,このコンピレーションは改めて聞くと,案の定と言うか,実に滋味溢れる素晴らしい出来だったことに今更気づく私であった。

別テイクやライブ音源を交えながら,結構長い期間の音源を集成しているにしては,感じられる一貫性は見事と言わざるをえないが,本作のプロデュースと選曲に当たっているのはBootleg SeriesをプロデュースしているJeff Rosenだが,この人は「名もなき者」でもプロデューサーの一人となっているのを知って,なるほど...なんて感心してしまった。端的に言えば,「わかっている」のである。見事な審美眼に支えられた曲,演奏が揃っている。まぁDavid Brombergがプロデュースした"Miss the Mississippi"なんかは明らかに浮いているが...(笑)。それでもこれは十分楽しめるコンピレーションであることは間違いない。星★★★★☆。

コンピレーションゆえ,演奏者多数なのでPersonnelは省略。

本作へのリンクはこちら

 

2025年3月23日 (日)

Amazon Primeで見た「ニューヨーク1997」。B級もここまで行くと笑える。

Escape-from-new-york 「ニューヨーク1997 ("Escape from New York")」('81,米/英)

監督:John Carpenter

出演:Kurt Russell, Lee Van Cleef, Ernes Borgnine, Donald Pleasence, Issac Hayes, Harry Dean Stanton, Adrienne Barbeau

暇にかまけて見たのがこの映画である。この映画が好評だったかどうかは知らないが,"Escape from L.A."なる続編も作られている。しかし,主題の通り,完全なB級映画である。犯罪増加率の上昇により,マンハッタン島全部を刑務所にしてしまうというのはユニークなアイディアだったが,映画で描かれたストーリーそのものはご都合主義の極みみたいで,相当無茶苦茶と言ってよいものであった。

私としてはストーリーそのものより,Lee Van CleefとかIssac Hayesというキャスティングの方が興味深いって程度の映画。まぁ暇つぶしにはいいが,もう一回見たいという気には決してならないであろう作品。星★★。因みにちらっと出てくるSeason Hubreyは当時のKurt Russellのカミさんで,Maggieを演じるAdrienne BarbeauはJohn Carpenterのカミさんって言うキャスティングもどうなのよって思ってしまうが(笑)。

本作のBlu-rayへのリンクはこちら

2025年3月22日 (土)

とっくに記事にしていたと思っていた"Catch a Fire"。

Catch-a-fire"Catch a Fire (Deluxe Edition)" The Wailers (Island)

私はレゲエをそれほど聞いている訳ではないとしても,ごくごくメジャーなところはある程度聞く中で,最初に触れたのがEric Clapton経由でのBob Marleyだったというのは,ほかの人にも結構当てはまることもあるだろう。そうした中でこのアルバムのDeluxe Editionが出た時の驚きは今でも鮮烈に覚えている。

このヴァージョンはDisc 2がIslandからリリースされたヴァージョンで,Disc 1はそのジャマイカ・ミックスってことで,その雰囲気の違いが本当に大きいと思った。Islandヴァージョンはレーベル・オーナーであるChris Blackwellの意向もあって,オーヴァーダビングが施されているのに対し,ジャマイカ・ミックスは「素」の音楽という感じが濃厚なのだ。ジャマイカ・ヴァージョンは2曲多いこともあって,このDeluxe Versionがリリースされた時には,Disc 1への注目度が高かったと思うし,私もそっちに反応したクチであった。

私はChris Blackwellの判断は間違っていないと思うし,Wailersのメンバーも新市場開拓には必要だったと感じていたようだ。どちらのヴァージョンを好むかはリスナー側の判断ということになるが,私は洗練度よりも「素」の魅力を感じさせるジャマイカ・ヴァージョンの方がいいと思った。いずれにしても,こういうかたちで,Bob Marleyたちがやろうとしていた音源に触れることを可能にしたDeluxe Editionは十分存在意義があるものだと思う。星★★★★★。Islandヴァージョンも改めて聞いてみることにしよう。

尚,下記のクレジットはジャマイカ・ヴァージョンのもの。

Personnel: Bob Marley(vo, g), Peter McIntosh(p, org, g, vo), Bunny Livingston(perc, vo), Aston (Family Man) Barrett(b), Cartlon (Carly) Barrett(ds) with Rita Marley(vo), Marcia Griffiths(vo)

本作へのリンクはこちら

2025年3月21日 (金)

2007年のLed Zeppelin復活ライブ。凄いねぇと思いつつ,映像はまだ見たことない(爆)。

Celebration-day "Celebration Day" Led Zeppelin(Swan Song/Atlantic)

このライブの開催から17年以上が経過し,アルバムとしてリリースされて既に干支は一回りしている。時の流れは早いものだと思わざるをえない。リリースされた当時,一度記事にしているが,改めての本作である。

正直言って私は遅れてきたLed Zeppelinの聞き手であり,子供の頃はハードロックと言えばDeep Purpleであった。だが,90年に出たボックス・セットで彼らの音楽に真っ当に触れて以来,バンドとしては圧倒的にLed Zeppelinの方が上だったなんて思っているのだから,無知とは恐ろしいものだ。今や彼らのアルバムを紙ジャケ集成したボックスだって保有するに至っているのだから,人間変われば変わるのである。

それはさておき,このライブは前年に亡くなったAtlanticレーベルの創設者だったAhmet Ertegunのトリビュート・コンサートのメイン・アクトとして行われたもので,ドラムスはJohn Bonhamの息子,Jasonに代わっているが,久々のライブであったにもかかわらず,演奏の質が全く落ちていないのが凄い。だが,演奏を全部聞き通すのには2時間近く要するので,そこそこ時間がある時でないと,聞き通すのは難しい。映像ならば猶更だ。私はBlu-rayとCDのセットを保有しているが,これまで映像をプレイバックしたこともない。しかし,改めてこの音源を聞いて,そのうち映像も見ないといかんと思ってしまった。John Bonhamの死後,Live Aid等での短いセットはあったものの,これだけの長いセットでのバンド演奏は初と言ってよかっただけに,これはまさに事件だったと言ってもよいイベントだったのだから,映像版も見るに値するはずだ。

それは別の機会に譲るとして,ライブでは初披露となったらしい"Ramble on"と”For Your Life"を除けば,誰にもライブでも馴染みのある曲が並んでいるが,上述の通り全く衰え知らずなのが素晴らしい。Robert Plantはこの時,還暦より前とは言え,まだまだ声は出ているのも立派。こういうのを聞くと,より全盛期に近い時期の彼らのライブを収めた"How the West Was Won"も改めて聴きたいというモチベーションも高まるってものだ(と言っても,そっちも既に記事化しているし,しかも3枚組だから更に時間を要するが...)。そう思わせるほど,ここでの演奏のレベルは高いことを改めて感じた約2時間弱であった。全盛期やスタジオ録音に比べれば...というところもあるだろうが,喜んで星★★★★★としたくなる激熱ライブ。

Recorded on December 10, 2007

Personnel: Robert Plant(vo, hca, perc), Jimmy Page(g), John Paul Jones(b, key), Jason Bonham(ds, perc, vo)

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2025年3月20日 (木)

私が保有するBryan Adamsの唯一のアルバム。売れたねぇ。

_20250315_0001 "Waking up the Neighbours" Bryan Adams(A&M)

懐かしいアルバムだ。私が保有するBryan Adamsはこれ一枚だけだが,後にも先にも買ったのもこれ一枚だけのはずだ。これに先立つ"Summer of '69"等もコンピレーションの一部として聞いていたこともはあったが,別にファンってほどでもなかった私だ。本作を購入したのは私の在米中のことだが,偏に"(Everything I Do) I Do It for You"がヒットしていたことにつられたことは間違いない事実だ。当時のFMでのエアプレイの頻度は半端ではなかった。それから30年以上が経過したが,今でも売らずにまだ持っているのだから,決して嫌いという訳ではない。活躍した時期がオーヴァーラップしていることもあり,私の中ではRichard MarxとBryan Adamsは同じような関係性にあると言っていいかもしれない。Richard Marxも3枚目までのアルバムを保有しているから,この手のインダストリアル・ロックは時代,そして当時の私にフィットしていたと言ってもよいかもしれない。

Bryan Adamsというミュージシャンは,ロック・フレイヴァー強めながら,メロディ・ラインのセンスがいいところが受けたのだと思う。カナダ出身でありながら,アメリカより英国での受けの方がいいというのもなかなか面白い事実だ。久しぶりにこのアルバムを聞いても,確かにいい曲を書いていたと思うし,この適度にハスキーな声は受けるだろうなぁなんて思ってしまう。

それにしてもCDが普及期に入った頃にはよくあったが,とにかく収録時間が長い。本作も74分越えだから,アナログなら2枚組に相当するヴォリュームってことになるから,なかなか聞き通すのも大変だ。と言いつつ,聞き流せてしまうのがこのアルバムのいいところであり,一方でそれが限界でもあるように思う。まぁそれでもなかなか楽しめるアルバム。最後に入っている"Don’t Drop the Bomb on Me"なんてまるでDef Leopardのようで笑ってしまったが。星★★★★。

Personnel: Bryan Adams(vo, g), Keith Scott(g), Mickey Curry(ds), Dave Taylor(b), Tommy Mandel(org) with Phil Nicholas(key, prog), Robbie King(org), Bill Payne(p, org), Larry Klein(b), Ed Shearmur(key), The Tuck Back Twins(vo)

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2025年3月19日 (水)

Jeremy Peltの新作がなかなかよい。

Jeremy-pelt-woven "Woven" Jeremy Pelt(High Note)

最近は以前ほど追い掛けることもなくなったJeremy Peltであるが,ほぼ年に1枚のペースで新譜は出し続けていて,High Noteレーベルとの関係性は良好なようなのは何よりだ。以前はダニグリことDanny GrissettやJD Allenのような俊英を従えたクインテットでMiles色濃厚なアルバムをリリースしていたのも今は昔。その後,様々な音楽性を示しながら活躍し続けているが,CDの購入枚数が減少の一途をたどる私にとっては,ストリーミングで済ませることが多くなってしまったのも事実だ。しかし,それでもストリーミングでは聞いてみようと思わせる人ではある。

今回は,最近のレギュラーと言ってよさそうなクインテットにゲストを迎えてのアルバムだが,何曲かで参加するシンセサイザーのMarie Ann Hedoniaのアドオンがポイントか。今回のアルバムではあまり熱くならないJeremy Peltってところで,クールな感覚を維持しながら,心地よく時が流れていくのだ。終盤になって熱い演奏も展開されるが,編成のせいもあってか,全体的にはかなりクールな印象で,私はこのアルバムを聞いていて,五十嵐一生の"Summer’s Almost Gone"のサウンドを思い出していた。アルバムのコンセプトは違うものの,あくまでも何となくではあるが,ここで聞かれるJeremy Peltのサウンドに五十嵐に近しい印象を覚えていたのであった。それは決して悪いことではない。なぜなら私は"Summer’s Almost Gone"というアルバムが非常に好きなのだ。

前述のように,以前のJeremy Peltは60年代のMilesクインテットの如き,新主流派的なサウンドを特徴としていたが,ここでの演奏はぐっとピアノに代わってヴァイブ,ギターを入れるという編成で,コンテンポラリーな感覚が強めながらも魅力的な演奏を行っており,これはなかなかいいねぇと思わせる。やはりJeremy Peltは侮れないと思うし,こういう路線ならば改めてJeremy Peltを聞いてもいいと思わせるものであった。星★★★★。

Personnel: Jeremy Pelt(tp), Jalen Baker(vib), Misha Mendelenko(g), Leighton McKinley Harrell(b), Jared Spears(ds), Marie Ann Hedonia(synth), Mar Vilaseca(vo)

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2025年3月18日 (火)

Jon Anderson and the Band Geeksのライブ・アルバム:ここまで行くと潔いとすら思ってしまう。

Live-perpetual-change"Live - Perpetual Change" Jon Anderson and the Band Geeks(Frontiers)

昨年,Jon AndersonがBand Geeksと新作"True"をリリースした時には驚いた。後期高齢者とは思えない声の出方や本家YesよりYesっぽい音だったからだ(その時の記事はこちら)。それから非常に短いインターヴァルで届けられたのがこのライブ・アルバムだが,こちらは新作がリリースされる前のライブだけに,やっているのはYesの往年の名曲のみ。ここまで来ると,主題の通り「潔さ」すら感じてしまう。そもそもこれらの曲をやるには高度な演奏能力が必要だが,Band Geeksの実力もあって,「完コピ」と言ってもよいほどの最限度なのには改めて驚かされる。本作のリリースを受けて,既に傘寿を過ぎたJon AndersonとBand Geeksはツアーに出るというのも凄いことだが,Jon Andersonの声の出方は年齢を感じさせないのも立派。

まぁそうは言っても,Jon Andersonに関しては所詮は「昔の名前で出ています」ではないかと言われればその通りだし,敢えてこれを聞かなくてもオリジナルを聞いてりゃいいじゃん,あるいは"Yessongs"や3枚組ライブ・コンピレーション"The Word Is Live"を聞くべきだという声が上がっても仕方ないところだ。それでもこういう音源を聞いてノスタルジーに浸るのも高齢者だと思うし,Jon Andersonが頑張っているのを聞いて,自分も頑張る気になる私のような還暦をとうに過ぎたオッサンがいてもいいではないかと開き直りたくなる。

演奏は十分に楽しめるものだと思えるので,星★★★★には値するが,それにしてもうまいものだ。このアルバムがレコーディングされたらしいArcada Theatreはキャパ1,000人にも満たない小じんまりしたヴェニューだが,彼らの集客力というのはその程度ということになるのかもしれない。しかし,これだけ聞かせてくれれば,満足度は高かったろうと思いたくもなる。だからと言って私がこのアルバムの媒体を買うことはなく,ストリーミングで十分とは思っても,楽しめてしまうところはやっぱり往年のYesの音楽が好きな証拠だな(笑)。

ただ,ちょっと惜しいと思えるのは音があまりクリアでないことか。ストリーミングの限界かもしれないが,やっぱり惜しいと思える出来。媒体で聞いたら違うのかな?

Recorded Live at Arcada Theatre, St. Charles, Illinois in August, 2023

Personnel: Jon Anderson(vo) with the Band Geeks(この時の詳細なメンツは不明)

本作へのリンクはこちら

2025年3月17日 (月)

Steven Soderberghの新作「プレゼンス 存在」を見に行った。

Presence 「プレゼンス 存在 ("Presence")」('24,米)

監督:Steven Soderbergh

出演:Lucy Liu, Chris Sullivan, Calina Liang, Eddy Maday, West Mulholland, Julia Fox

カテゴリーとしてはホラーに分類される映画である。私は見た目に似合わず,肝っ玉が小さいせいでホラー映画が嫌いなのだが,ホラー嫌いの私がなんでこれを見に行く気になったかと言えばSteven Soderberghが監督だからという一点に尽きる。新作"Black Bag"も評価が高いようで,日本での公開が待たれるが,その前にこの作品である。

そもそも私の中ではSteven Soderberghの評価はもともと高かったが,「オーシャンズ」シリーズはちっとも見ていないから,ほんまか?と言われても仕方がない。しかし,「イギリスから来た男」,「トラフィック」,「コンテイジョン」,「サイド・エフェクト」等優れた作品を残しているのは間違いないところ。一時引退を表明しながら復帰したのはよかったものの,その後の作品は「ローガン・ラッキー」を機内エンタテインメントで見ただけで,私にとってはお久しぶりということになってしまった。

それでもって,この作品は舞台となる家に棲みついた「霊」の視点から描かれるというのがまずユニークである。定点的なカメラではなく,スマホでも撮影できてしまいそうにも思えるが,ストーリーとしては結構謎な部分が残る作品で,その辺りが評価の分かれ目になるのではないかと思った。私としてはホラーと言うよりサスペンスという感じがしたので,全く問題なく見られたのはよかったが,動的な部分はかなり少ないので睡魔に襲われる瞬間があったことは告白しておかねばなるまい。

正直言ってしまうと,結局この視点を提供する「霊」は何だったのかというのがわかったようでわからないというのが実感だが,むしろこれは「家庭崩壊」の話だと思った方がわかりやすいと思ったのも事実。実験的な映画ではあるが,成功したかと言えばそうでもないってところで,星★★★ってのが妥当な評価だろう。私としては父親を演じたChris Sullivanの方に肩入れしたくなったということだけは言っておく(笑)。父親は結局娘の味方なのだ(きっぱり)。

2025年3月16日 (日)

「渡辺貞夫 リサイタル」:このアルバムからほぼ半世紀。ナベサダがいまだ現役ってのが凄いねぇ。

_20250313_0002 「リサイタル」渡辺貞夫(East Wind)

1976年度の芸術祭大賞を受賞したことでも知られるリサイタルの実況盤である。この時ナベサダは脂ののった43歳と思いきや,今や92歳にしてまだ新作が出るという恐るべき生命力を発揮する,同郷の私としてはまさに栃木県民の誇りである(笑)。既にアフリカ的なところやブラジル的なところはあっても,まだまだフュージョン(当時で言えばクロスオーヴァー)的なところはそんなに濃厚に出てくる前だ。

本作はこの頃のレギュラー・クインテットにゲストを迎えたメンツによる演奏であるが,当時私がFMで「マイ・ディア・ライフ」を聞き始めた頃は,本田竹曠がまだレギュラーで,その後益田幹夫に交代したのであった。私が初めてナベサダのライブを見たのは1977年の神戸でのワイドワイドジャズで,まだその頃は本田竹曠がピアノだったはずだが,全く記憶から飛んでいる。しかも司会はタモリだったってのも記憶の彼方だが,新聞で告知を見て,すかさずチケットを申し込んで最前列で聞いていたことだけは覚えている(笑)。

それはさておき,芸術祭大賞をジャズ界で受賞するというのが「快挙」と言われる時代であったところに隔世の感があるが,当時に比べればジャズという音楽のポジションは上がったよなぁと思ってしまう。そうは言いつつ,芸術祭参加だからと言って気負ったところは感じられないのがジャズ・ミュージシャンらしいところだ。

どちらかと言えばアフリカ的な感覚の方が強いが,"Pastoral"や"Maraica",更には"My Dear Life"と言ったよく知られた曲もあるし,これだけのメンツを揃えているだけあって,ダイナミズムも十分感じられる出来。まぁ私はナベサダの作曲能力には若干の疑問を感じている部分があるのも事実なのだが,ここに収められている"Old Photograph"のような曲を聞いていると,評価を見直さないといけないとも感じさせるナイスなバラッドであった。時代を感じさせる部分はあるものの,全体としても結構楽しめるアルバムであった。星★★★★。

Recorded Live at 郵便貯金ホール on October 19, 1976

Personnel: 渡辺貞夫(as, fl, sopranino), 福村博(tb), 峰厚介(ts, ss), 渡辺香津美(g), 本田竹曠(p, el-p), 岡田勉(b), 岡沢章(el-b), 守新治(ds), 富樫雅彦(perc)

本作へのリンクはこちら

2025年3月15日 (土)

温故知新:Charles Mingusのクセが強~いアルバム(笑)。

_20250313_0001 "Charles Mingus Presents Charles Mingus" (Candid)

どうしてもCharles Mingusという人に対してはクセが強いという感覚がある。このアルバムなんてその代表と言ってもよいかもしれないが,それはここに収められた「フォーバス知事の寓話("Original Faubus Fables")」や"What Love"による部分が大きいように思える。

「フォーバス知事の寓話」は本来の曲名は"Fables of Faubus"だが,このアルバムにおけるクレジットが"Original Faubus Fables"となっているのには理由がある。元々は"Mingus Ah Um"に収められたこの曲は,政治的なプロテスト色の濃い歌詞をリリース元のColumbiaが嫌がって,インストにしたという経緯があるようで,Mingusとしては「ちゃんと歌詞付きでやったるわい!」ということで,"Original"を謳ったものだ。

改めてこのフォーバス知事について調べてみると,アーカンソー州リトルロック高校での事件の発端となったことがMingusの怒りを買ったものだ。この事件は白人と黒人が同じ学校に通う融合教育化が進められるようになった中で,当時の州知事Orval Faubusが州兵を動員して,黒人学生の登校を妨害しようとしたもので,当時の大統領,Dwight Eisenhowerもそれを静観したため,Mingusの怒りはEisenhowerに向いているというオマケつきである。まぁ当時であれば,南部のアーカンソーならばありそうな話であるが...。

政治的なプロテストが入ることで,純粋な音楽的な部分から離れた要素も出てきて,それがクセの強さにもなるという訳だ。ここでのMingusは結構怒っているが,怒りの対象となったOrval Faubusはその後も知事に再選されているから,アーカンソーの住民からは支持されたことを示すところに,アメリカの往時の人種差別の根深さを感じるし,それは今も残存していると考えてよい。Mingusが存命ならば,今のアメリカの状況をどう思うか聞いてみたい気もする。

そして,このアルバムの個性を更に際立てせるのが"What Love"におけるアバンギャルド一歩手前の演奏だろう。油井正一はこれをDolphyとMingusの対話と位置付けていたと記憶するが,ある意味Eric Dolphyらしい演奏ではあるものの,決して耳に優しい音楽ではない。この曲とてクセの強さを感じるところだ。

また,このアルバムはスタジオ録音であるにもかかわらず,MingusのMCが入って,疑似的にライブの感覚を生み出そうとしているところも相当ユニークだ。そうしたところもあれば,ピアノレスのクァルテット編成で自由度を高めたところも,何とも面白いアルバムだったと今更ながら思っている私である。いずれにしても,Charles Mingusの真骨頂が発揮されたアルバムであると同時に,Eric Dolphyとの相性も最高だったな。星★★★★★。

Recorded on October 20, 1960

Personnel: Charles Mingus(b), Eric Dolphy(as, b-cl), Ted Curson(tp), Danny Richmond(ds)

本作へのリンクはこちら

2025年3月14日 (金)

John Patitucciによるパワー・トリオ:悪かろうはずなし。

_20250312_0001"Spirit Fall" John Patitucci(Edition)

ダウンロード・オンリーだが,日本だけでCD化された"Live in Italy"と同じ,John PatitucciにクリポタことChrisi Potter,そしてBrian Bladeという強力なメンツで吹き込まれたアルバムである。前作もよかったし,このメンツであるから間違いないと思ってはいたが,案の定優れたアルバムとなっている。

アコースティックとエレクトリックの両刀使いというJohn Patitucciの姿勢はここでも変わらずだが,特に面白いと思ったのがエレクトリック期のMiles Davisを彷彿とさせる執拗なまでのベース・リフが続く"Limpi"であった。このファンク度合いがこのトリオの新しい側面を打ち出しているというところだと感じるが,全編を通じてレベルの高い演奏が続く。

それにしてもクリポタである。先日のSF Jazz Collectiveのライブでも素晴らしい演奏を聞かせたクリポタだが,まさに神出鬼没と言った感じでいろいろなセッションに顔を出して,どのような編成でも,どのような曲でも優れたレベルを示してくるのが素晴らしい。私はクリポタこそ現代No.1サックスだと信じて疑わないが,ここでもそれを実証する響きだ。

もちろん,このアルバムはクリポタだけでできるものではない。Brian Bladeの的確なドラミングとJohn Patitucciのリーダーとしての才覚あってのものだが,クリポタのリーダー作,”Eagle's Point"からBrad Mehldauを抜いたメンツなので,そちらと対比して聞くのも一興だと思える。いずれにしてもこのレベルのアルバムを一発録りで作ってしまうのも彼らの実力。星★★★★☆。

それにしても,英国のEditionレーベル,いいアルバムを作るねぇ。先日にはNils Petter Molværとの契約も発表していて,なかなか目が離せないな。

Recorded on August 22, 2024

Personnel: John Patitucci(b), Chris Potter(ts, ss, b-cl), Brian Blade(ds)

本作へのリンクはこちら

2025年3月13日 (木)

Mike Stern@Cotton Club参戦記

Ms-at-cotton-club

Mike-stern-at-cotton-club_20250312075901

私は昨年マイキーことMike Sternのライブを2回観ている。1回は村上JAMにおいてオールスターでフュージョンの名曲を演奏した時,そしてその後,Cotton Clubに出た時の2回だ。基本的に来日すれば確実に観に行ってしまうが,前回が昨年6~7月だから,非常に短いインターバルだと言ってもよい。まぁその間に新作"Echoes And Other Songs"もリリースしているから,そのプロモーションも兼ねての部分もあったと言ってもよい。前回からはベースがLincoln GoinesからRichard Bonaに代わっただけだが,Richard Bonaの目立ちっぷりは想定通りってところか。

会場はおそらくフルハウスと言ってよいほどの集客力で,マイキーの人気を裏付けるものだったと言ってもよいが,残りのライブのヴェニューとなるBlue Note東京よりはCotton Clubの方が小じんまりしていて,より彼らの演奏に近い環境で触れることができるから,それが人気だったのかもしれない。まぁBlue Noteでもそれなりには集客するはずだが,いずれにしてもこれなら盛り上がる。

_20250311_0001 最近のマイキーはライブに必ず奥方のLeni Sternを帯同するが,別にそれに文句はないとしても,少々彼女に華を持たせ過ぎって気がしないでもない。聴衆の多くはマイキーを見に来ているし,Leni Sternのあまりエフェクターを通さないギターのサウンドは,このバンド全体の音へのフィット感もイマイチなのは事実だ。それが強く感じられるほど,今回のバンドのタイトさは近年見た中でも突出していたように思える。それはRichard Bonaの煽りのせいもあるし,最近では最も体調がよさそうに見えたデニチェンことDennis Chambersの猛爆ドラミングもあるだろう。2曲目にやった"Tumble Home"ではそのノリ具合に,もはや笑ってしまっていた私であった。Bob Franceschiniのテナーもよかったしねぇ。

Mike-stern-i-at-cotton-club-mosaic

マイキーはマイキーなので,相変わらずと言うか,決してこちらの期待を裏切らないからこそ毎度ライブに通う訳で,今回も安定のプレイぶりだった。膝もよく揺れていたし(笑)。かつ,やはりマイキーはファンを大事にすると言うか,終演後もサイン会や撮影に気軽に応じるところはいつも通りって感じだ。前回はなかったので,サイン会はやるかどうかはわからないところもあったが,CDを持参していてよかったわ~。ということで,戦利品といつものように「マイキーと私(モザイク付き)」。

Live at Cotton Club on March 11, 2025,2ndセット

Personnel: Mike Stern(g, vo), Bob Franceschini(ts), Richard Bona(b, vo), Dennis Chambers(ds), Leni Stern(g, ngoni, vo)

トップの写真はBlue Noteのサイトから拝借。

2025年3月12日 (水)

Amazon Primeで「マルホランド・ドライブ」を見た。

Mulholland-drive 「マルホランド・ドライブ("Mulholland Dr.")」(’01,米/仏)

監督:David Lynch

出演:Naomi Watts, Laura Elena Harring, Justin Theroux, Ann Miller, Lee Grant, Billy Ray Cyrus

先日亡くなったDavid Lynchを偲んで見てみたのがこの作品。私はDavid Lynchとは縁のない人生だったが,昨年同じくAmazon Primeで「ブルー・ベルベット」を見て,このブログにも記事をアップしている(その時の記事はこちら)。「ブルー・ベルベット」もクセの強い映画だったが,やはりDavid Lynchは独特のスタイルを持っていて,実に変わっていると思ってしまった。

この映画がそもそもTVムービーとして製作されたものがベースというのは実に驚きだ。もしそのTVムービーが成功していたらTVシリーズ化されていたのか?と思うと,それは難しかろうと思わされる相当厄介な物語であった。端的に言えば,全編悪夢を見ているかの如き展開とでも言うべきだろうが,このストーリー展開には戸惑う人も多かろうというところだ。しかし,ミステリアスな展開とは言え,ストーリーとしては破綻していないシナリオに仕立てたのは立派だと思える。

あまり詳しく書くとネタバレになってしまうが,多くの役者が「夢(あるいは妄想)」と「現実」の間での役割を演じることからして,役者というのは多重人格的である必要があるよなぁなんて妙な感心の仕方をしてしまった私であった。特に大変だったのはNaomi WattsとLaura Elena Harringだろうが,彼女たちにとっては当たり前の世界か...。いずれにしても,終盤に向けての展開に驚きを覚える作品で,私は「ブルー・ベルベット」よりこっちの方がずっと楽しめた。

ただそれほど難解かと問われれば,私はそんなことはないと思うし,これならはるかに「インセプション」の方が訳がわからんと言ってもよい。しかし,いろいろな仕掛けがあるので,100%意図を理解できたかと言えばそれも怪しいが...(苦笑)。ということで星★★★★。

Ann-miller それにしてもこの映画,面白いキャスティングだと思えたのがCoco役を演じて,結構出演シーンも多いAnn Miller。Ann Millerは往年のMGMミュージカルにも出演していた人だが,私はこの人の名前を「ザッツ・エンタテインメント」を中学生の時に見て以来,ずっと覚えていたので懐かしかった。歌えて踊れたAnn Millerとこんなところで再会するとは思わなかった。ということで,彼女の「ザッツ・エンタテインメント」での出演シーンの写真も併せてアップしておこう。その模様は是非映像で見てもらいたいので,YouTubeで見つけた映像も貼り付けておく。この映像には歌はないが,私が「ザッツ・エンタテインメント」で見たのはこのシーンのはずだ。今の若い人が見たら,何のこっちゃな映像だが(爆)。

「マルホランド・ドライブ」のBlu-rayへのリンクはこちら

2025年3月11日 (火)

ソウル/ブラコン色が濃厚になったQuincy Jonesの"Body Heat"。

_20250308_0001"Body Heat" Quincy Jones (A&M)

A&Mレーベルに残したQuincy Jonesのアルバムはそれぞれに聞きどころがあると思うが,曲の粒揃い加減ということではこのアルバムは結構高く評価していいのではないかと思う。特に"Everything Must Change"が収録されているポイントが高い。作曲者であり,シンガーであるBenard Ighnerにとって,これは畢生の名曲と言ってもよかったと思うし,Marlena Shawの"Who Is This Bitch, Anyway?"をプロデュースしたのと並んで,彼の人生における二大成果の一つだったと言ってもよい。

更にこのアルバムはLeon Wareに活躍の場を与えたという点でも評価すべきだと思う。冒頭のタイトル・トラックに加え,最後に収められた"If I Ever Lose This Heaven"は極めて魅力的であり,その辺りにQuincy Jonesの優れた審美眼を感じるのだ。かと思えばBenny Golsonの"Along Came Betty"のような曲もやってしまいながら,コンテンポラリーな感覚に仕上げていて,ほかの曲と違和感がないのも素晴らしい。プロデューサーとしての仕事っぷりに敬服してしまう一作。

参加しているミュージシャンを見るだけで嬉しくなってしまうようなナイスなアルバムだと思う。これも久しぶりに聞いて温故知新を感じてしまった私である。星★★★★★。

Personnel: Quicy Jones(prod, vo), Dave Grusin(el-p, synth), Herbie Hancock(p, el-p, synth), Richard Tee(el-p), Bob James(el-p), Billy Preston(org, synth), Mike Melvoin(synth), Dennis Coffey(g), Arthur Adams(g), Phil Upchurch(g), Eric Gale(g), "Wah Wah" Watson(g), David T. Walker(g), James Gadson(ds), Paul Humprey(ds), Bernard Prudie(ds), Gardy Tate(ds), Bobby Hall(perc), Chuck Rainey(b), Melvin Dunlap(b), Max Bennett(b), Tom Morgan(hca), Hubert Lawa(fl), Jerome Richardson(reeds), Chuck Findley(tp), Frank Rosolino(tb), Clifford Solomon(reeds), Peter Christlieb(reeds), Robert Margouleff(prog), Malcolm Cecil(prog), Leon Ware(vo), Bruce Fisher(vo), Jim Gilstrap(vo), Minnie Riperton(vo), Benard Ighner(vo), Al Jarreau(vo), Tom Bahler(vo), Joe Greene(vo), Jesse Kirkland(vo), Carolyn Willis(vo), Myrna Matthews(vo)

本作へのリンクはこちら

2025年3月10日 (月)

「名もなき者/A Complete Unknown」:Timothée Chalametの頑張りは凄いのだが,映画としては少々疑問も。

A-complete-unknown 「名もなき者/A Complete Unknown」(’24,米,Searchlight)

監督:James Mangold

出演:Timothée Chalamet, Edward Norton, Elle Fanning, Monica Barbaro, Boyd Holbrook

Bob DylanがNYCにやってきてから,Newport Folk Festivalで電化サウンドを披露するまでの期間を描いた映画である。今年のOscarでは黙殺された映画だが,Timothée Chalametほか,実在のミュージシャンたちを演じた役者陣の頑張りは評価しなければならない。しかし,映画的に言うとよく出来ているとは言え,傑作とまでは言えないという気がした。それはなぜか。

正直言ってこの映画の背景については音楽ファンにとってはよく知られたものだ。実在の人物も多数出てくるが,Al Kooper参加のくだりなど,そういうことだったのか!という点もある。だが,映画としてのストーリーとしてよりも,音楽が勝ってしまったという部分が否めないと思えるのだ。それがBob Dylanというミュージシャンの存在感とその曲の強力さゆえだろう。上述の通り,実在のミュージシャンを演じた役者陣は歌や楽器の技量を高めるのも大変だっただろうと思いたくなるし,音楽は無茶苦茶楽しめると思う。それに比べるとストーリーが平板に感じられてしまうのはもったいなかった。

それゆえのOscar無冠というのもやむを得ないと思う一方,やはりこれはBob Dylanへの思い入れの有無によって評価は変わるだろう。私としては嫌いじゃないがベストでもないというのが正直なところだが,音楽面を評価して甘めの星★★★★。

2025年3月 9日 (日)

追悼,Angie Stone。

Angie-stone

Angie Stoneが亡くなった。ライブを終えての移動中の自動車事故で亡くなるとは何とも惜しい。私が彼女のアルバムを初めて聞いたのは2004年の"Stone Love"のことだったが,その後追っかけた訳ではないとしても,アルバム"Rich Girl"も結構高く評価していた(記事はこちら)。ネオ・ソウルとも言われたが,私にとっては耳馴染の良い歌手であった。

よくよく見れば,彼女は私と同い年。まだまだ活躍の余地はあっただろうと思うとなおさら惜しい人であった。

R.I.P.

2025年3月 8日 (土)

SF Jazz Collective@Blue Note東京参戦記。

Sfjc-at-blue-note

ほぼ1年半ぶりにクリポタことChris Potterが音楽監督を務めるSF Jazz Collectiveが来日するとあっては,行かぬわけにはいかないということで,前回同様財布には痛いが1st,2nd通しで参戦してきた。今回ご一緒するはずの方がお二方だったのだが,お一方は不測の事態により参戦不能,もうお一方はこちらも通しで参戦予定が,当日の新幹線の車両故障の影響を受けて1stに間に合わずという,呪われているんじゃないかという感覚を抱きながらの参戦となった。

Sfjc-bnt だが,演奏が始まってしまえば,そんなネガティブな意識を吹き飛ばす快演続きで今回も嬉しくなってしまった。1stは前回も演奏した結成20周年を記念した7部構成の組曲,2ndはサンフランシスコのゴールデン・ゲート・パークにあるデ・ヤング美術館で開催中の"Art Place"展の作品にインスパイアされた曲を演奏するというプログラムであった。曲順は異なるが,SF Jazz Collectiveのサイトによれば,2ndでの演奏曲とインスパイアされた作品及び作曲担当は次のような構成であった(実際の演奏順とは異なる)。

  • Warren Wolf: "FBI Drawings: Legal Ritual" by Sadie Barnette
  • Edward Simon: "New Normal" by Rupy C. Tut
  • Kendrick Scott: "The Child Opens Its Eyes to the Earth" by Sydney Cain
  • Mike Rodriguez: "Walking in Rainbow Rain" by Clare Rojas
  • David Sánchez: "Listo" by Guillermo Galindo
  • Matt Brewer: "Te Quiero Inti" by Miguel Arzabe
  • Chris Potter: "Unknow Know With What Is" by Chris Johanson

プログラムの特性上,アンサンブルも重視された訳だが,そこから浮かび上がる各々のソロイストの技量は見事なものだったと思う。7人のメンバーはそれぞれに質が高いのだが,その中でも特にレベルの違いを感じさせたのがクリポタ,バンドをドライブするKendrick Scott,そしてナイスなソロを連発したWarren Wolfの3人。この人たちは私たちがこう吹いて欲しい,こう叩いて欲しい,こう弾いて欲しいと感じるものを体現してくれるところが素晴らしいのだ。だからこそこういう人にはちゃんとファンが付くと感じざるをえないのだ。今回も極めて満足度の高い演奏を聞かせてくれたまさにプロ集団であった。

Live at Blue Note東京 on March 6,2025, 1st/2ndセット

Personnel: Chris Potter(music director, ts, ss, b-cl), David Sánchez(ts, perc), Mike Rodriguez(tp, fl-h), Warren Wolf(vib, perc, vo), Edward Simon(p), Matt Brewer(b), Kendrick Scott(ds)

尚,トップの写真はBlue Noteのサイトから拝借したもの。

2025年3月 7日 (金)

Chick Coreaがこの世を去って4年。まだまだ残っているレガシー。

_20250306_0001 "Trilogy 3" Chick Corea / Brian Blade / Christian McBride(Universal) 

早いものでChick Coreaが2021年に亡くなってから既に4年の歳月が流れている。そして私がこのトリオによるライブを観てからも6年近い時間が経過しており,時間の経過の早さをますます感じる今日この頃である。

そんなトリオの三島を含む世界各地での演奏を収めた第3作がリリースされた。このトリオであるから,悪い演奏であるはずもないので,そこは安心感ありありであったが,期待が裏切られることはない。Chick Coreaのオリジナルに加えて,Monk, Powellのジャズ・オリジナル,更にはスカルラッティのアダプテーションを含む全8曲が77分という長尺の中に収められているが,全編を通して大いに楽しめる。さすがである。

このライブ盤の好感度が高いのは,晩年のChick Coreaによくあったアドリブ・フレーズを聴衆に歌わせるという演出がないことだ。私はあの「演出」を好かん!と思っていたので,ピアノ・トリオの演奏に集中できるかたちこそ正しい姿なのだ。彼らのような実力者にはしょうもない演出は不要だと改めて強く思った私である。Chick Coreaは世を去ったが,レガシーはきっちり残ることを実証した「新作」であった。まぁ"Easy to Love"の冒頭とか,スカルラッティを入れる意味あったか?とか少々気にいらない部分もない訳ではないが,星★★★★☆には十分値する。名人芸だと思って楽しめばいいのだ。

Recorded at Various Venues between 2019 and 2020

Personnel: Chick Corea(p), Christian McBride(b), Brian Blade(ds)

本作へのリンクはこちら

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