"75th Birthday Concert" Gil Evans (BBC Worldwide)
Gil Evansが亡くなったのは1988年のことであったが,その前年のGil Evansの誕生日にロンドンで開催されたライブ音源がこれ。もともとBBCが放送したものがソースとなっている。
私も一時期Gil Evansの音楽にはまっていて,ブートレッグやブートまがいも含めて随分な数のアルバムを購入したものだが,その活動が陽の目を見たのはMonday Night Orchestraによるところが大きいとしても,晩年には同じようなメンツによる似たような演奏が多くなって,さすがにきついと思わせたのも事実だ。私がSweet Basilで彼らを観たのは1983年8月のことだったが,その前のMiles Davisとのよみうりランドでのダブルビル・ライブ含めての記憶が鮮烈に残っているだけに,Monday Night初期と言ってよい当時とのギャップを感じるようになってきたと言うべきだろう。
この頃の演奏になると,Monday Night Orchestraに先立つ"Priestess"やPublic Theaterでのライブに比べて,クリエイティビティという点でどうしても見劣りがしてしまう。もちろんここでも有能かつ優秀なミュージシャンが参加しているので,演奏のクォリティは担保されているのだが,それでもやはり厳しいよなぁと思ってしまう。
そんな厳しさはあるものの,ここでのメンツはやはり魅力的なのは事実だ。Steve LacyやJohn Surmanがいるのは大きいし,Airtoの参加も結構珍しい。やっている曲は「いつもの」レパートリーが中心だが,この約2ヶ月後のStingとの共演を控えてアレンジしたと思われる"Murder by Numbers"と"Synchronicity"をここでやっているのが目新しいところではある。しかし,それでも全体的に演奏の冗長な感じは否めないのは致命的。ライブだから仕方ないという話もあるが,晩年のGil Evansはほぼライブ盤中心のレコーディングだったが,曲目をピックアップ編集することで何とかなっていたと言ってもよい。しかし,ライブ全体のフル収録となると,どうにも退屈な瞬間が訪れてしまう。最たる事例がDelmar Brownが自身のオリジナルで延々つまらないスキャットを聞かせる"Sometimes"であり,Airtoのソロを挟んで27分近く演じられる"Stone Free"だろう。前者はGil Evansのアレンジメントが効いているとも思えず,このバンドでやる意味が全く不明だし,後者はいかにも長いとしか言いようがない。
ということで,Gil Evansの晩節を汚すとまでは言わずとも,敢えてこのアルバムを推薦したいとは思えない。その程度のアルバムだ。星★★☆。
Recorded Live at Hammersmith Odeon on May 13, 1987
Personnel: Gil Evans(p, el-p), Lew Soloff(tp), Palle Mikkelborg(tp)Evans(p, el-p), Lew Soloff(tp), Palle Mikkelborg(tp), Miles Evans(tp), Dave Burgeron(tb), Dave Taylor(b-tb), John Clark(fr-h), Steve Lacy(ss), Chris Hunter(as), Don Weller(ts), George Adams(ts, fl), John Surman(bs, b-cl), Hiram Bullock(g), Delmar Brown(key, vo), Mark Egan(b), Danny Gottlieb(ds), Anita Evans(perc), Airto Moreira(perc, vo)
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