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2019年おすすめ作

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2021年10月22日 (金)

またまたブート?と言わても仕方ないが,これが強烈なBranford MarsalisのVanguardライブ4枚組!

Branford-at-vanguard"Village Vanguard 1989" Branford Marsalis Quartet(Bootleg)

何だか最近ブート盤の記事が多いなぁと思いつつ,これは取り上げざるをえない強烈な音源。8月にBrad Mehldauのブートレッグに関する記事を書いた時に,これについてもちらっとは触れているが,記事としてアップするのが遅れてしまった。しかし,これがまじで強烈なのだ。どう聞いても,オフィシャルなリリースを目的としてレコーディングした音源と思しきもので,それがなぜかオクラ入りしていたところ,ブートレッガーにより流出したと思われる。それぐらいのクォリティなのだ。あるいは翌年の"Crazy People Music"のレコーディングに向けての,バンドとしての助走,あるいはリハーサルということもあったのかもしれないが,ちゃんとレコーディングされていたであろうことは疑う余地がない。

1989年の12月に録音されたこの音源,ディスク4枚で,ラストに演じられる"The Ballad of Chet Kincaid"を除いて曲のほとんどダブりがないというのがまず凄い。その"The Ballad of Chet Kincaid"も,Miles Davisで言えば"The Theme"のようなエンディング・テーマのようなものだから,実質曲のかぶりは"Royal Garden Blues"と"Revelations"が2回演じられるだけである。しかもメンツはBranfordにとっての黄金クァルテットと言ってよい,Kenny Kirkland~Bob Hurst~Jeff Wattsという最強メンバーとあっては,聞く前から大体想像はつくのだが,これは軽く想像を越えていた。

正直言って,こういう音源を眠らせておいてはいかんとさえ言いたくなるような,スリルに満ちた演奏の数々には,1989年当時のBranfordの絶好調ぶりが聞いて取れる。Stingとの共演を経て,ミュージシャンとしての格も上がったというのもあるし,そうした経験を踏まえた余裕もあったと思うが,ジャズ・ミュージシャンとしてのBranford Marsalisの力量を完璧に捉えたライブ音源なのだ。とにかくこれは聞いていて燃えるし,聴衆の反応も無茶苦茶ヴィヴィッドである。自分だってこの場にいればそうなるわ!と言いたくなるようなものだ。いや~,いい買いものであった(笑)。

Recorded Live at the Village Vanguard on December 12-17, 1989

Personnel: Branford Marsalis(ts, ss), Kenny Kirkland(p), Robert Leslie Hurst, III(b), Jeff 'Tain' Watts(ds)

2021年10月21日 (木)

後のEaglesの面々を従えたLinda Ronstadtのアルバム。初々しいねぇ。

_20211017-4"Linda Ronstadt" Linda Ronstadt(Capitol)

Linda Ronstadtのバックを務めていたミュージシャンによって,後のEaglesが結成されたことはよく知られた事実である。このLinda Ronstadtの3枚目のアルバムがその契機となったということではあるが,Eaglesのオリジナル・メンバーは確かに全員参加しているが,全員が一緒にプレイしている曲は1曲もない。あくまでもトリガーであったということである。

そうした歴史的な話は別にして,これはカントリー,あるいはSSW系のアルバムである。様々な作家の曲をLinda Ronstadtが歌うというのは,彼女の基本的なスタンスと言うか,あくまで彼女は歌い手としての道を進んだ訳だが,ここでもいろいろな人の歌を歌っている。SSW系で言えば,Jackson Browne,Eric Kaz,Livingston Taylor, Neil Young,Eric Andersen等々である。確かにフレイヴァーはカントリーでもSSW系だと言いたくなるのはそうした側面が大きい。Eric Andersenが"Blue River"でも歌った"Faithful"を,ここでは早くも”I Ain’t Always Been Faithful"と本家より早く歌っていたとは...って感じである。

Eスタジオ録音とTroubardourでのライブ音源を組み合わせたこのアルバムだが,実に初々しいとしか言いようがない。このアルバムをリリースした頃は24~5歳ってところだが,そこからヒットを重ねるAsylumレーベル時代に向けたまだ助走期間である。それでも選曲のセンス然り,バックのミュージシャンを選ぶ審美眼然りということで,曲作りとは違うところでいい才能を持っていたことを実証するようなアルバムである。もちろん,本作には後のポップさを期待すべきではないが,手作り感があっていいよねぇと思う。

Linda Ronstadtはこのアルバムが成功につながらなかったのが気に入らなかったらしく,Asylumレーベルへ移籍し,その後はポップ・スターとなっていく訳だが,このアルバムの最後を飾る"Rescue Me"辺りにはその萌芽が見られると言っておこう。星★★★★。

Personnel: Linda Ronstadt(vo, tambourine), Gren Frey(g, vo), John Boylan(g), Richard Bowden(g), Tippy Armstrong(g), Bernie Leadon(g, vo), Herb Pedersen(g, banjo, vo), John Martin(g, vo), Sneaky Peat(pedal steel), Weldon Myrick(pedal steel), Buddy Emmons(pedal steel), Barry Beckett(key), Mike Bowden(b), David Hood(b), Wesley Pritchett(b), Randy Meisner(b, vo), Lyle Ritz(b), Don Henley(ds, vo), Roger Hawkins(ds), Michael Botts(ds), Gib Gilbeau(fiddle, vo), Dean Webb(mandolin), Jimmie Fadden(hca), John David Souther(vo), Merry Clayton(vo), Dianne Davidson(vo), Miss Ona(vo) 

2021年10月20日 (水)

久しぶりに聞いたChico Freemanの”Destiny’s Dance"。

_20211017-3 ”Destiny’s Dance" Chico Freeman(Contemporary)

Young Lionsの一人と呼ばれたChico Freemanももはや古希を過ぎたのだから,時の流れは恐ろしいものだ。今回,この記事を書こうと思って,Wikipediaを見ていたら,Chico Freemanって私と誕生日が一緒だったのねぇ,ってことで関係のないところで親近感が増す(笑)。

私はChico FreemanについてはIndia Navigation盤が最も光っていると思っているが,レーベルがマイナーだけに,より多くのジャズ・ファンの耳に触れたのは,Contemporaryレーベルに吹き込むようになってからではないか。このブログにもConptemporaryでの"Beyond the Rain"を取り上げたことがある(記事はこちら)が,あれもいいアルバムだったが,レコーディング時期が好調時のIndia Navigation盤と近いこともあると思う。

本作はContemporaryレーベルに吹き込むようになっての3作目で,80年代に入ってからのアルバムとなる。このアルバムが出た頃の話題は,Wynton Marsalisの客演であったが,どちらかと言えば,リーダーよりWyntonがゲストであることが取り上げられていたようにも思う。WyntonとChico Freemanと言えば,各々が親子共演してリリースした"Fathers And Sons"ってアルバムもあったが,あれはこのアルバムの後のリリースなので,この時の共演が何らかの契機になった可能性もある。

それはさておきである。冒頭のタイトル・トラックはやや不思議なメロディ・ラインから入り,突如として高速のフレージングに転じるというところで,つかみはOKであろう。こういう感じで突っ走れば,かなりの興奮度って感じだったかもしれないが,全体のアルバムのトーンはかなりバラけてくる。Bobby Hutchersonが全面的に参加していることもあり,基本は新主流派的響きが強いが,ややつかみどころがない感覚も与えるように思える。

各人のフレージングは魅力的なもので,そっちに注目していれば,かなりいけているアルバムと評することもできるかもしれないが,どうもプロデュースにもう少し一貫性があってもよかったのではないかと思える。特に4曲目にのみ出てくるPaulinho Da Costaのパーカッションはこのアルバムに本当に必要だったのか?って気もするし,その辺りはやはり疑問が残る。

ということで,悪いアルバムとは思わないが,捉えどころがはっきりしないってことで,星★★★☆。半星はソロの質とBobby Hutchersonに加点。

Recorded on October 29 & 30, 1981

Personnel: Chico Freeman(ts, b-cl), Wynton Marsalis(tp), Bobby Hutcherson(vib), Dennis Moorman(p), Cecil McBee(b), Ronnie Barrage(ds), Paulinho Da Costa(perc)

2021年10月19日 (火)

またブートかよ?と言われそうだが,今度は"The Mad Hatter" ~ "Secret Agent"期のChick Coreaの実況音源。

_20211017-2"Sydney 1978" Chick Corea Band(Bootleg)

またもブートレッグである。これは今年惜しくも亡くなったChick Coreaが,"The Mad Hatter"から"Secret Agent"あたりをリリースした時期のライブを収めた音源である。これが収録されたのは1978年5月とのことであるが,日本にも同じような編成で来ていたはずである。その頃の私はまだジャズを聞き始めて日が浅く,ジャズ系のライブに行くなんてこともあまり考えられなかった年頃であった訳だが,後々,Chick Coreaの音楽にはまっていって,この時のライブは観たかったなぁと思っても時既に遅しであった。なので,その時の音源がブートと言えども聞けるということは,私にとっては価値があることなのだ(きっぱり)。

以前"The Mad Hatter"についてこのブログに記事をアップした時,私はGayle Moranの声が好かんということもあり,星★★★★という評価に落ち着かせたのだが,アルバムとしては結構好きなのだ。この時のライブは"The Mad Hatter"の曲を再演することもあって,ストリングスも入った結構な大編成になっている。私は大編成Return to Foreverはイマイチ評価できないものの,"The Mad Hatter"におけるストリングスの使い方はうまいなぁと思っていたし,その後"Secret Agent"を聴いた時に,こういうバンド編成もなかなかと思ったので,メンツ的には"Secret Agent"とほぼ重なるこの音源は実に興味深い。

2枚組で2時間15分程度というかなりのボリュームであるが,当時のChick Coreaが好調だったということを強く感じさせるライブ音源となっている。1曲目はアルバム"The Leprechaun"において,突出したカッコよさだった"Nite Sprite"からで,ここで聞かれる高速ユニゾンでつかみは完全にOKであろう。続いて"The Secret Agent"から"Glebe St. Blues","The Mad Hatter"から”Tweedle Dum/Dear Alice"へとなだれ込み,ディスク1枚目は"Romantic Warrior"からの"Duel of the Jester and the Tyrant”というなかなかお腹いっぱいになりそうなプログラムである。

ディスク2に移っても,"My Spanish Heart"から"Spanish Fantasy"を全部やり,最後を"Spain"で締めるというプログラムはかなり強烈。そしてメンバーも,Joe Farrellの参加とソロイストとしての貢献は非常に大きいのは当然として,当時期待の新人と騒がれたAl Vizzuttiのラッパも相当強烈。更に当時のレコーディングからすればBunny Brunelを迎えそうなところに,Mahavishnu OrchestraのRick Lairdが入ってバンドをドライブしているし,当時はこれまた新人だったはずのTom Brechtleinの手数の多いドラムスもプッシュが強烈なのである。もちろん,ライブなりの粗さを感じない訳でもないが,それを上回る熱量があると思う。

まぁ,"Spain"のここでのアレンジってどうなのよって感じない訳でもないが,それでもこれを生で観ていたら私は相当興奮していたはずであり,改めてこういう音源に触れることができたことを喜ぶこととしたい。やはりこの頃のChick Coreaは調子が良かったってことを改めて感じるブートであった。これだけ聞かせてもらえば満足,満足(笑)。

Recorded Live at Regent Theate Corea(p, key), Joe Farrell(ts, ss, fl), Rick Laird(b), Tom Brechtlein(ds), arrell(ts, ss, fl), Rick Laird(b), Tom Brechtlein(ds), Gayle Moran(vo, key), Al Vizzutti(tp), Bob Zottora(tp), Ron Moss(tb), Jim Pugh(tb), Charles Veal(vln), Carol Shive(vln), Judy Geist(vla), Paula Hochhalter(cello)

2021年10月18日 (月)

Marc Johnsonのベース・ソロ・アルバム。ジャズ的な響きがあって実によい。

_20211017 "Overpass" Marc Johnson(ECM)

ECMレーベルにはベーシストによるソロ・アルバムというのが結構存在する。これは総帥Manfred Eicherが元々ベーシストだからというところもあるとは思うが,これだけベース・ソロ・アルバムを作っているレーベルというのはECMをおいてほかにあるまい。私のようなECMレーベル好きにとってはそれほど抵抗はないとは言え,一般的なジャズのリスナーにとってはベース・ソロのアルバムは多少なりとも敷居が高いことは間違いないと思う。かく言う私だって,少なからずビビる(爆)。

だが,このMarc Johnsonのベース・ソロ・アルバムはそこかしこにジャズ的な響きが感じられ,小難しいところがないので,比較的受け入れやすいはずである。そもそも本作の制作はMarc Johnson本人と奥方のEliane Elias,そして録音はサンパウロである。Manfred EicherはExecutive Producerとクレジットされているので,持ち込み音源,もしくはMarc Johnsonにお任せでEicherが作らせたものって感じか。しかもミキシング・エンジニアは何とPat Metheny GroupのSteve Rodbyである。

このアルバムがジャズ的だと思わせるのは冒頭から"Freedom Jazz Dance",そして"Nardis"と続いて敷居が下がるところもあるが,3曲目にアルコとピチカートの多重録音で演じられる"Samurai Fly"は,懐かしや"Bass Desires"で演じられた"Samurai Hee-Haw"ではないか。これだけで嬉しくなってしまうリスナーも結構多いと思える。更にそれに続くのが「スパルタカス 愛のテーマ」ときては,ちゃんとジャズのリスナーを意識して作っているということがはっきりすると言ってもよい。

前半4曲が比較的馴染み深い曲を並べ,後半4曲はそれほど認知されていないであろうMarc Johnsonのオリジナル(新曲?)を並べるという構成だが,選曲はさておき,全編を通してMarc Johnsonのベースの音が実に魅力的に捉えられているのが素晴らしい。Marc Johnsonのベースはテクニック云々を越えて,この音でリスナーを魅了するのだと言いたくなるような音である。演奏だけでなく,音そのものも評価すべきアルバム。繰り返しのプレイバックに耐えるのはこの魅力的なベース音ゆえだと言いたい。星★★★★☆。

Recorded in January and February, 2018

Personnel: Marc Johnson(b)

2021年10月17日 (日)

またもブートの話。今日はBob Bergの放送音源。

_20211016 "More Standard" Bob Berg(Bootleg)

私はBob Bergが相当好きなので,ブートでも出来がよければ聞いてみたいと思ってしまう。このブートは,アルバム"Another Standard"のコンセプトでライブを行った時の放送音源だが,"Another Standard"のハードボイルドな世界に痺れた人間としては,やはりこれは注目するのが当然である。

放送音源なので,フランス語の放送でのコメントが重なるが,まぁそれはよしとしよう。なきゃないに越したことはないが,ここはこの演奏を聴けることの方が嬉しい。そして,これが"Another Standard"同様,超ハードボイルドである。Beatlesの"Michell"だろうが,お馴染みのスタンダードだろうが全くお構いなしで,Bob Berg節が炸裂である。はっきり言ってこれはエグい。私から言わせれば,Bob Bergはこうでなくてはいかん(きっぱり)。

上述の通り,一部曲の途中に喋りは入るし,最後の"I Could Write a Book"はインコンプリートではあるが,そんな瑕疵を上回る興奮を感じさせるBob Bergの強烈ブロウである。今にして思えば,Bob BergとDavid Kikoskiというのはこういうブイブイ言わせる演奏では本当に相性がよかったと思えるので,レギュラーでの活動も聞いてみたかった。

まぁ,ブートレッグなので,大手を振って推奨という訳にはいかないが,Bob Bergのファンの方なら間違いなく興奮するはずだ。やっぱりこの人が事故で早逝したのは惜しかったと言わざるをえない。

Recorded Live at Cully Jazz Festival on March 24, 1999

Personnel: Bob Berg(ts, ss), David Kikoski(p), Ed Howard(b), Victor Lewis(ds)

2021年10月16日 (土)

Ketil BjørnstadとDavid Darlingに触発されてGouldの「バード/ギボンズ集」を聴く。

_20211015 "A Consort of Musicke bye William Byrde and Orland Gibbons" Glenn Gould(Columbia)

昨日取り上げたKetil BjørnstadとDavid Darlingの"The River"のライナーには,一部の曲はバードとギボンズの音楽に触発されて書いたという記述があった。バードとギボンズの音楽については,私はこのGouldのアルバムと,Simon Prestonの"Early English Organ Music"の一部としてしか音源を保持していないから,正直言って馴染みは薄いのだが,Gouldのアルバムはそのバードとギボンズの曲だけで構成されていて,ついつい聞きたくなってしまったのであった。

もともとはヴァージナル(チェンバロ)のための音楽として書かれたこれらの曲をGouldのピアノで聴くということは実に感慨深い。そもそもGouldが残したレコーディングにおいて,バッハ以前の音楽はこれだけだというのだから,ますます貴重ということになるが,実に淡々と弾いている感覚が強い。

そもそも,現在私が保有しているGouldの音源はこれ以外は全てバッハなのだが,どうしてもこのアルバムだけは手放すことができないと言ってよいぐらい好きなアルバムである。とは言っても,これを聴くのも実に久しぶりだが(爆)。常に才気を感じさせるGouldのバッハに比べると,上述の通り,あっさり感すら覚えるが,これが実に味わい深いのである。バッハの演奏とは比べるべきではないと思うが,それでも十分に星★★★★☆には相当するだろう。

Ketil Bjørnstadがバードとギボンズのどこにインスパイアされたかはさておき,改めてこのアルバムを聴く機会を与えてくれたことはよかったと思う。

Personnel: Glenn Gould(p)

Recorded on May 26, June 14, 15,1967, on August 1, 1968 and April 17 & 18, 1971

2021年10月15日 (金)

Ketil BjørnstadとDavid Darlingによる超美的なデュオ。たまりまへん。

_20211013-2"The River" Ketil Bjørnstad and David Darling(ECM)

今年の1月にDavid Darlingが亡くなった際に書いた追悼記事で,私は彼の音楽が「心の平安をもたらすのに役立つ」と書いた。David DarlingがKetil Bjørnstadとのデュオで作り上げたこのアルバムも例外ではない。実に静謐にして美しい。ささくれ立った心さえ落ち着かせるであろう音楽である。本作は全曲Ketil Bjørnstadの作曲によるものなので,主体はKetil Bjørnstadであることは間違いないのだが,David Darlingの貢献は極めて大きいとまず言っておく。

ライナーにKetil Bjørnstadが一部の曲は,後期ルネッサンスの音楽を研究,演奏しながら,Byrd,Gibbonsという英国ルネッサンス期の作曲家にインスパイアされたと書いているのが面白い。確かにそういう感じはない訳ではないとも思えるが,そういうことはあまり気にしなくても,この美しい音楽に没入すればいいと思える。あるいは没入しなくても,そこに流れているだけで環境と一体化するアンビエント・ミュージック的なところも感じることもできる。

この音楽は集中して聞くこともできれば,仕事をしていようが,読書をしていようが,勉強をしていようが,ながら聞きをしていても全く邪魔にならないという音楽である。これをジャズと呼ぶかと言うと微妙なところはあるが,ECM的な美学が表出したアルバムとして,これを聞いたのも実は久しぶりだったのだが,大いに楽しんだ私であった。星★★★★☆。

ByrdとかGibbonsという名前が出てきてしまっては,Glenn Gouldが弾いたByrd/Gibbons集を聞かずにはいられないな(笑)。

Recorded in June, 1996

Personnel: Ketil Bjørnstad(p), David Darling(cello)

2021年10月14日 (木)

実に懐かしいFlying Diskレーベル期のフュージョン音源を集めたナベサダのベスト盤。

_20211013 ”The Best" 渡辺貞夫(Flying Disk/JVC)

私がジャズを聞き始めたのが1977年頃であったが,所謂モダン・ジャズの超名盤と並行して,当時流行し始めていたフュージョン,当時の言葉で言えばクロスオーバーでジャズの世界に入っていったと言ってもよい。クロスオーバー音源で言えば,最初期に買ったアルバムがナベサダの"My Dear Life"であり,Al Di Meolaの"Elegant Gypsy"であり,そしてLee Ritenourの"Gentle Thoughts"あたりであった。そうした音楽はやはり何とも懐かしい響きを持つものだ。

そしてこのベスト盤は,当時のFlying Diskレーベルから出たナベサダのクロスオーバー系音源だけを集めたコンピレーション。私の年代のリスナーならばおそらくは相当数の人が聞いた音に違いない。収められているのはアルバム"California Shower","Morning Island","Autumn Blow","My Dear Life"からのセレクション,そして当時のベスト盤に新曲として収められた"Nice Shot"である。

どれもが懐かしい音源であるが,今,改めてこれらの音源を聞いてみると,ナベサダとDave Grusinというのはいいコンビだったなぁと思う。バックを支えるメンツも魅力的で,私がバックのミュージシャンの名前をチェックするなんてのは,この頃から始まっていたなぁと感じてしまう。それにしても,これらの音源から40年以上経過しても,ナベサダがいまだ現役というのは誠に凄いことである。

今にしてみれば,そんなに凄い音楽だとは思わないとしても,同時代を過ごした人間にとっての「ナツメロ」と言ってもよく,「ナツメロ」には「ナツメロ」のよさがあるのだと言いたくなってしまう。しかし,時間を経過してもそんなに古臭いって感じがしないのは大したもんだと思うが,それは同時代人の贔屓目かもなぁ...(笑)。いずれにしても,企画がはっきりしたいいコンピレーションだと思う。星★★★★。

Personnel: 渡辺貞夫(as, sn, fl), Dave Grusin(key, perc), Patrice Rushen(key), Don Grusin(key), Lee Ritenour(g), Jeff Mironov(g), Eric Gale(g), Bobby Bloom(g), Chuck Rainey(b), Francisco Centeno(b), Anthony Jackson(b), Marcus Miller(b), Harvey Mason(ds), Steve Gadd(ds), Buddy Williams(ds), Paulinho Da Costa(perc), Rubens Bassini(perc), Steve Forman(perc), Roger Squitero(perc), Ernie Watts(ts), Marvin Stamm(tp), Alan Rubin(tp), Oscar Brasher(tp), 福村博(tb),George Bohanon(tb), Tony Studd(tb), George Young(as), Michael Brecker(ts), Ronnie Cuber(bs) with strings

2021年10月13日 (水)

典型的なECM的響きと言ってよい"Dis"。

_20211012 "Dis" Jan Garbarek(ECM)

久しぶりにこのアルバムを聞いた。いかにもあの頃のECMの響きである。Jan Garbarekのサックスに加わるのが,Ralph Townerというのが私にとっては実に魅力的な組合せな訳だが,そこから出てくる音は,当時のレーベル・カラーそのものみたいな音と言ってよい。

そこに加わるWindharpってのがまたECMらしい。自然に吹く風によって弦を鳴らすというこの楽器を,Jan Garbarekの音楽に絶妙にミックスしてしまうところに,ECMの美学炸裂って感じである。このWindharp,またの名をエオリアン・ハープとも言うらしいが,ここに絡むRalph Townerの12絃ギターの響きが,Ralph Towner好きにはたまらないものである。ある意味,Ralph Townerのリーダー作と言っても通用する。

私としては音楽としてどうのこうの以前に,こういう響きを聞かせてもらうだけで星★★★★★である。もちろん,これは典型的なジャズではないから,聞く人によっては???な音楽だろうが,実にユニークかつ美しい音楽であることは保証したい。たまらん。

Recorded in December, 1976

Personnel: Jan Garbarek(ts, ss, w-fl), Ralph Towner(g), Den Norske Messingsekstett(brass) with windharp

2021年10月12日 (火)

「あけてくれ!」は名エピソードであった。

Photo_20211012000801

BSで放送していた4Kリストア版の「ウルトラQ」の放送は先日終了したが,その最終回のエピソードが「あけてくれ!」であった。今となってはよく知られているが,そのストーリーの特異性,と言うよりも,全く子供を相手にしていないストーリーゆえに,本放送では結局放送を見送られ,再放送で初めて世に出たというエピソードである。

脚本は小山内美江子,演出は円谷一によるこのエピソード,中年の悲哀みたいなものすら感じさせてしまうなんて,年齢を重ねればわかるだろうが,子供にはわかる訳がない(きっぱり)。子供が喜ぶのはロマンスカーが空を飛び,電車や車が飛び交う地下世界の描写ぐらいのものだろう。だが,大人になって見返すと,ケムール人のエピソード「2020年の挑戦」で刑事を演じた柳谷寛が再登場なんてことにも気づいて嬉しくなってしまうが,「あけれくれ!」は子供番組と言うより,完全に「トワイライト・ゾーン」のノリであった。

「ウルトラQ」という番組は怪獣モノもあれば,ファンタジーもある一方,私を含めて当時の子供を震え上がらせた「悪魔っ子」や,この「あけてくれ!」のようなエピソードが混じりあって,実にユニークな番組だったなぁなんて改めて思ってしまった。4Kにリストアされて,結構画像は綺麗になっていたと思うが,こうなったらブルーレイの「総天然色ウルトラQ」でまた見直すかなんてことも考えた私である。「このあけてくれ!」もブルーレイの着色版はまだ見たことがない(苦笑)。まぁ,好みのエピソードとそうでもないエピソードは確実にわかれるのだが,今回,全エピソードを見直したら,やっぱり面白い番組であった。本放送を見ていた世代ということで懐かしいのもあるが,時代を象徴する番組だったんだなぁと改めて思った次第。「あけてくれ!」は当初予定されていたという番組タイトル,「アンバランス」の名のもとに放送された方がしっくりくるな。

2021年10月11日 (月)

Michael Hedges:素晴らしい音と響きである。

_20211008-2 "Aerial Boundaries" Michael Hedges(Windham Hill)

Michael Hedgesである。この音楽はカテゴライズするならば,ニューエイジなんだろうなぁと思いつつ,私のブログにはニューエイジのカテゴリーはないので,違和感はありつつもジャズと分類してしまおう。まぁ,Wihdham Hillレーベルのアルバムもスウィング・ジャーナルに取り上げられていたのだから,まぁそれもよかろう。

Michael Hedgesはテクニシャンである。変則チューニングにタッピングを交えて,どうやったらこう弾けるのなんて思ったのも随分前のことだが,このアルバムに関してはそうしたテクニック的なところよりも,比較的穏やかにさえ思えるMichael Hedgesのギターに耳をすますべきアルバムだと思える。テクニシャンであることを忘れさせるような響きがとにかく心地よい。凄いことをやっているのだろうが,テクニックを感じさせずに聞かせるところにこのアルバムのよさがあるのだ。

私のような年代のリスナーは,Neil Youngの"After the Gold Rush"が出てきた瞬間,もろ手を挙げてよしとせざるをえない。そしてここで,Mike Manringのフレットレス・ベースにメロディ・ラインを弾かせるという演出には,嬉しさとともに何とも言えぬ落ち着きを感じさせられて,これがまたいいと思ってしまうのだ。ライブ盤では歌も歌ってしまうMichael Hedgesだが,私は歌なしの方がいいかな(笑)。

いずれにしても,これを至高の名盤とか言うつもりはないのだが,人生にある種の潤いを与えてくれるものの一つとして評価したい。星★★★★☆。これを聞くにつけ,Michael Hedgesの早逝はもったいなかった。

Personnel: Michael Hedges(g), Mike Manring(b), Mindy Rosenfeld(fl)

2021年10月10日 (日)

「タワーリング・インフェルノ」を何十年かぶりで観た。

Towering-inferno 「タワーリング・インフェルノ(”The Towering Inferno”)」('74,米,Fox/Warner Brothers)

監督:John Guillermin

出演:Steve McQueen,Paul Newman,William Holden,Faye Danaway,Fred Astair,Jennifer Jones,Susan Blakely, Robert Vaghn,Robert Wagner

私が映画館通いを一番していたのは中学生時代のことであったが,当時2大スターの共演ということで大きな話題になったのがこの作品である。しかもFoxとWarnerというメジャー2社が組んでの作品ということもあったし,当時多かったパニック映画の一本である。それを先日BSで放送されていたのを録画しておいて,久しぶりに再見となった。私は劇場でこの映画を一回はロードショーで,二回目は二本立てで観たはずだ。その後,ビデオで1回は再見していると思うが,それ以来なので,少なくとも30年近くぶりぐらいで観たって感じか。

何せPaul NewmanとSteve McQueenという二枚看板であるから,クレジットにおける名前の出し方にも苦労が感じられるのも懐かしかったが,今見ると,やっぱり顔見世的な要素が強いと言うか,脚本には苦労したんだろうなぁと思わせる部分がある。まぁ,こういう映画なので小難しいことを考えずに見ていればいいと思いつつ,2大スターには見せ場を設けつつ,カッコよさげなのはSteve McQueenの方だったなぁと今更ながら思ってしまった。

オールスター・キャストなので,所謂「グランドホテル」形式的人間模様を織り込むがゆえに,尺も長くなり2時間45分になってしまったが,もっとコンパクトに作ろうと思えばできただろうっていうところはある。まぁそれでもFred Astairってこの映画でも軽妙だったなぁと思わせる部分もあって,そういうところはちゃんと評価する必要はあると思う。それでも今にして思えば,次から次へとハラハラさせるシーンを挿入しようという意図が見えてしまっているのがStirling Silliphantの脚本の弱さと言わざるをえない。「ポセイドン・アドベンチャー」と同じ線っていうのがはっきりしてしまっているのが難点なのだ。

子供の頃はワクワクして見た映画も,こうして年齢を重ねて見ると,大したことはなかったなと思いつつ,ほとんどのシークエンスは覚えていたのは劇場で二回見たせいだろうな。でもまぁ今となっては星★★★☆ってところが妥当だろう。少なくともPaul Newmanにしても,Steve McQueenにしてもこれよりいい映画は確実に存在するからねぇ。まぁ,悪くはないんだけどね。

2021年10月 9日 (土)

全くもって素晴らしいDavid Bowieのライブ・アルバム。

_20211007"Welcome to the Blackout(Live London '78)" David Bowie(Parlophone)

このアルバムがリリースされて,3年以上経過しているが,私が入手したのは結構後になってからのことである。私はそれなりにDavid Bowieのアルバムは保有しているが,リリースされた頃は別に買わなくてもいいかなんて思っていた。しかし,ストリーミングでこのアルバムを聞いて,あまりのカッコよさにこれは保有すべきだと思って購入に至ったはずである。遅ぇ~よと言われればその通りだが,見逃すにはあまりに惜しいと思えた。

本作は1978年のライブ音源なので,"Heroes"と"Lodger"の間ぐらいのタイミングである。ある意味,David Bowieが最も尖っていた時期と言ってもよいかもしれない。本作もいきなり"Low"からの"Warszawa"でスタートである。このミステリアスな感じのスタートから"Heroes"になだれ込む興奮はロックならではの高揚感。この時,David Bowieは31歳ということで,ロッカーとしては丁度いい年齢ということもあるが,麻薬禍からも立ち直ったDavid Bowieの姿をヴィヴィッドに捉えた実に素晴らしいライブ・アルバムである。

私は一度だけDavid Bowieのライブを観る機会に恵まれたが,あの時は「戦場のメリークリスマス」の頃で,全くDavid Bowieに興味になさそうな聴衆もいたように記憶している。チケットを取るのに大いに苦労した"Serious Moonlight Tour"と題された”Let's Dance"期のライブであったが,あれはあれでカッコよかったとしても,ロッカーとしての魅力はこのライブ・アルバムの方がより示しているように思う。UtopiaのRoger Powellも入ったバック・バンドはタイトそのもので,そっちも聞きどころ十分と言ってよい。星★★★★★。

Recorded Live at Earl’s Court on June 30 and July 1, 1978

Personell: David Bowie(vo, chamberlain), Carlos Alomer(g, vo), Adrian Belew(g, vo), Sean Mayes(p, key, vo), Roger Powell(key, synth, vo), Simon House(vln), George Murray(b, vo), Dennis Davis(ds, perc) 

«Dave Brubeckの「日本の印象」:日本人にとってはこのジャケがハードルを高くする...(笑)。

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