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2026年10月16日 (金)

またも無駄遣い:今度はEaglesの"Desperado"オリジナル盤。

Desperado"Desperado" Eagles(Asylum)

いつも書いていることだが,ストリーミングで音楽を聞く機会が増えたことで,CDの購入枚数は激減した。ではその分がどこへ向くかと言えば,数は多くないとしてもアナログ・レコードに向かう。それもCDで保有しているアルバムのオリジナル盤をゲットしているのだから,これも無駄遣いと言われても仕方がない。私の場合,何でもかんでもという訳ではなく,ある程度状態の良いものに限定しているつもりだし,よほどのことでないと手は出さないのだが,その分価格は上がるのは仕方ない。前回はJoni Mitchellの"Hejira"で同じようなことを書いたが,今回はこのEaglesの2ndアルバムである。

往時の米国盤は盤質に問題があったという印象が強いが,このレコードも"Hejira"同様全然問題なしである。ジャケにほんの少し痛みがあるのと,センター・レーベルにカビが見られるぐらいのもので,無視できるレベルだ。

それはさておき,まだこの頃はBernie Leadonも在籍していることもあって,カントリー色の強い響きも残っている。それが最も顕著なのは"Twenty-One"辺りになる。そうしたサウンドに興味はありつつも結局はA面最後の2曲"Tequila Sunrise"と"Desperado"の響きが聞きたくて買ったというのが正直なところだ。西部のならず者を描いたコンセプト・アルバムとして作られていながら,この2曲が含まれていることのポイントは高い。

しかし,これを買うなら私自身としては"One of These Nights"の方が優先されるべきだったかなと思いつつ,改めて聞いてみると,そこそこよく出来たアルバムだったと思う。このアルバムからシングル・カットされたのが"Tequila Sunrise"と"Outlaw Man"の2曲で後者はDavid Blueが書いていたことを知ってへぇ~となってしまった私であった。それでもって,"Desperado"はシングルになっていないという不思議を改めて知るのであった。まぁコンセプト・アルバムゆえの作りはどうなのよ?って気がしないでもないが,これはこれでOKだと思わせるのがEagles。

尚,裏ジャケで横たわっている6人はバンド・メンバー4人にJackson Browne,J.D. Southerだそうだ。これまたへぇ~である(笑)。

Personnel: Glenn Frey(vo, g, key, hca), Don Henley(vo, ds, g), Bernie Leadon(vo, g, banjo, mandolin, dobro), Randy Meisner(vo, b)

本作へのリンクはこちら。

2026年10月15日 (木)

椎名豊 Inspired Swing Special Quartet Featuring Max Ionata@赤坂B-flat参戦記。

Photo_20261014072701

Max Ionataが椎名豊のバンドに客演するライブがあるという「夜の部活」メイトからのお誘いに乗って,赤坂のB-flatに行ってきた。ここに行くのは超久しぶりで,Steve Kuhnのトリオが先だったか,Tom Harrellがひっそり来た時のライブが先だったかの記憶は定かではない。よくよく見返すとTom Harrellは2008年のことだったようだが,記事には某所としか書いていない。ではSteve Kuhnはいつだったのか?まぁそれはさておきだ。

Max Ionataを生で観るのはイタリア文化会館でのDado Moroniとのデュオ以来だが,それからもう12年も経っているとは我ながら驚きだ。昨今はMax Ionataのレコーディングも停滞しているようなので,こうして改めてライブが見られるのはよいことだ。私が知らなかっただけで,スカンジナビアのミュージシャンたちと"Tivoli"というアルバムをリリースしていたようなので,それは改めてストリーミングで聞いてみることにしよう。

現地に到着すると会場はフルハウス。椎名豊のトリオにMax Ionataを加えたクァルテットに,上の写真には写っていないが,アルトの中島朱葉がゲストで加わったクインテットでの演奏は,オリジナル,Kenny Dorham,Lee Morgan,Mulgrew Millerらのジャズマン・オリジナルにスタンダード交えた2セットで,いい意味でコンベンショナルな響きのジャズを味わうことができた。Max Ionataをフィーチャーした"Stardust"では,ステージから外れたところもを歩きながらのソロを聞かせたが,やはりイタリア人の歌心というものを改めて感じたのであった。B-flatぐらいの箱なら,PA不要とすら感じたのであった。

椎名豊のトリオはレギュラーだと思うので,さすがに安定感のあるトリオだと思ったが,どのようなテンポでも対応できる万能型であった。ドラムスの広瀬潤次はライブでは初めて聞いたと思うが,この人のバスドラ使いはなかなかのものだと思いながら聞いていた。バスドラでドライブ感を生み出すってのは大したものである。

更にゲストの中島朱葉だが,小柄な体格から生み出すフレージングは切れ味鋭く,日本の女性プレイヤーの実力には改めて驚いた私であった。バークリーに行っていたのも伊達ではない。特に速いパッセージでは,この人はJackie McLean好きかなぁなんて思っていたが,まだまだバラッドよりもミディアム以上のテンポの曲の方がこの人には合っていると感じた。まぁそれでも音は結構でかいし,大したもんだと思っていたのも事実である。

Max-ionata-and-us_mosaic1 終演後はMax Ionataはサインだ,撮影だと聴衆に大人気であったが,結構隅の席に座っていた「夜の部活メイト」を目ざとく見つけて寄ってきたMax Ionataである。彼女はイタリア語もこなすイタリア・ジャズ通として,Max Ionataとも長年の知り合い(日本のファン第1号ならぬ第0号と言っていたような...)であるから,私も便乗して,ちょっと話をしたり,自分のスマホでの3ショットを撮影したりであった。Max Ionataは酒や炭水化物の制限で14kg減量したと言っていたから,随分ほっそりしたのは見ての通りで,写真もなかなかいい具合になったが,ここではMax Ionata以外にはモザイクを掛けておく。

余談ではあるが,この赤坂B-flatの料理はなかなか美味くて,Jazz Diningを称するだけのことはある。Body & Soulなき今,プログラム次第で,この店がBody & Soulに代わるヴェニューになるかもなぁなんて思っていた私である。ってこともあり,そんなこんなで気持ちよく家路についた私であった。

Live at 赤坂B-flat on October 13, 2026

Personnel: 椎名豊(p), Max Ionata(ts), 中島朱葉(as), Pat Glynn(b), 広瀬潤次(ds) 

2026年10月14日 (水)

無茶苦茶面白かった「ウィンチェスター銃 ’73」。

Winchester_73 「ウィンチェスター銃 ’73(Winchester ’73)」(’50,米,UIP)

監督:Anthony Mann

出演:James Stewart, Shelley Winters, Dan Duryea, Stephen McNally, Millard Mitchell, John McIntire, Will Geer, Jay C. Crippen

西部劇における傑作と言われるのがこの映画である。善と悪が明快なストーリー,スピード感溢れるアクション,優れたカメラ・ワーク,そして記憶に残る脇役陣等,なぜ傑作と言われるのかがよくわかる作品であった。

ダッジ・シティでの射撃大会での賞品がタイトルとなったウィンチェスター M1873ライフルが様々な人の手に渡っていく過程で,数々のアクションが生まれていくのだが,その途中では先住民のボスの手にも渡るのだが,それを演じているのが若き日のRock Hudson,それと対峙する騎兵隊の中にはこれまた若き日のTony Curtisの姿もあるところに時代を感じる。それはさておきとして,ライフルによって生まれるストーリーは秀逸であった。

そもそも主役のJames Stewartが素晴らしいが,全編で相棒を演じるMillard Mitchellが超渋いのに加え,序盤でWyatt Earpを演じるWill Geer,怪しげな武器商人を演じるJohn McIntire,そして騎兵隊の軍曹を演じるJay C. Crippenも印象的なキャラクターとして登場して,Dan Duryea,Stephen McNallyの悪役陣とともに映画を盛り上げるのだ。

Shelley-winters そして先日取り上げた「狩人の夜」に続いてこの映画にもShelley Wintersが出ているが,当時の彼女は超絶的別嬪というより,親しみやすい,いい意味でのファニー・フェイス的な感じで人気があったんだろうと思う。私は「狩人の夜」の役柄より,こちらのShelley Wintersの方が好きである。私の年代でも,ついつい「ポセイドン・アドベンチャー」の太っちょのローゼン夫人の印象が強くなりがちなShelley Wintersであるが,昔の姿も貼り付けておこう。

映像では,先住民に追われる馬車の疾走シーンや,先住民との戦闘シーン,更にはJames StewartがStephen McNallyを追跡するシーンのスピード感が見事なのであった。監督のAnthony Mannの作品をこのブログで取り上げるのは初めてのはずだが,彼のフィルモグラフィを見れば,どんなストーリーでも撮れてしまうまさに職人。ここでも見事な職人芸を披露したということになろう。

西部劇にもいろいろあるが,面白さという意味ではこの映画は高く評価すべきものと思う。星★★★★★。

本作はDVDでも出ていたはずだが,昨今は単体での入手が難しそうなので,ストリーミングへのリンクはこちら。

2026年10月13日 (火)

Art Farmerの東京ライブを人生初聞き(笑)。これがCTIから出る不思議。

Art-farmer-in-tokyo "Live in Tokyo" Art Farmer (CTI)

人生において聞いたことがないアルバムなんていくらでもあると思いつつ,往時のジャズ喫茶でも一度も聞いた記憶がないというアルバムをストリーミングで聞いた。Art Farmerと言えば70年代の「おもいでの夏」等のアルバムでのソフトな印象があるが,元々はバッパーなのはSonny Clarkの"Cool Struttin'"のみならず,Jazztet等のアルバムでも承知している。だが,フリューゲルホーンの響きもあって,Atlanticレーベル時代のアルバムを聞いても,ハードな演奏をする印象はあまりないというところだ。このアルバムはバックは「おもいでの夏」同様のCedar Waltonのトリオで,ゲスト的に"Cool Struttin'"でも共演したJackie McLeanも参加しているところがひとつの目玉だろう。

アルバムはいきなりCharlie Parkerの"Constellation"で幕を開け,Jackie McLeanを含めた正調ハードバップ的な演奏に驚かされるが,続く"What’s New"と"In the Wee Small Hours of the Morning","Love Letters"はほぼワンホーンみたいなかたちでしっとりと演奏するところは当時のArt Farmerのイメージに合致したものと言ってもよいだろう。そして最後は再度Jackie McLeanを加えて,Sonny Rollinsの"Moving Out"で締めるという構成。Art Farmerは特に"Love Letters"では若干ハイノートに苦しいところもない訳ではないが,まぁアルバムとしてはこういう構成になるだろうって感じだ。因みにCedar Waltonトリオの面々はさすがの安定感だ。

Art-farmer-in-tokyo-complete ということで,Jackie McLeanの出番は2曲だけなので,もったいないって気もするが,あくまでもゲストだったと思えばこういう構成でも仕方ないってところ。アルバムとしては悪くはないが,突出していいとも言えないので星★★★☆。尚,このアルバムに4曲追加したコンプリート盤も存在して,そちらでは"Bag’s Groove"や"Round Midnight"もやっているようだから興味深いところだが,ストリーミングでも見つからないし,アルバムも入手困難のようだなので,ジャケのイメージだけアップしておこう。

こういうアルバムがCTIレーベルから出るというのはイメージが相当違うが,当時Art FarmerはCTIからアルバムを出していたから,その契約関係によるものだろう。

Recorded Live at 郵便貯金会館 on April 26 & 27, 1977

Personnel: Art Farmer(fl-h), Jackie McLean(as), Cedar Walton(p), Sam Jones(b), Billy Higgins(ds)

本作へのリンクはこちら。

2026年10月12日 (月)

今だ現役,ナベサダの旧譜を聞く。

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"Swing Journal Jazz Workshop 2: Dedicated to Charlie Parker" 渡辺貞夫(日本コロムビア)

90歳を過ぎても現役のナベサダである。私はフュージョン期の"My Dear Life"がナベサダの初聞きだったので,ある程度バップ・フィーリングに満ちたアルバムは追って"I'm Old Fashoned"や"Bird of Paradise"を聞いたぐらいだ。廉価盤でリリースされたCBSソニー時代のアルバムにおいても,純粋バップ的な音は全然聞いたことがなかった。そこでストリーミングを活かして聞いたのが1969年のこのライブ・アルバム。

当時36歳で脂ものってきたナベサダによるCharlie Parkerの13回忌における演奏ということで,当然Birdゆかりの曲が選ばれているが,ここでのほぼワンホーンのクァルテットでの演奏が実によい。現在は加齢もあって,やや音が細くなったように思えるナベサダの当時の力強い演奏は,フュージョンとも異なる魅力に満ちていたということを今更ながら知ったのであった。

冒頭の"Parker’s Mood"からいい演奏が続くが,特に,全曲を完全無伴奏で吹く"I Can’t Get Started"がこれまた素晴らしいもので,往時のナベサダの演奏の魅力を再認識できると言ってよい。そしてそれは次の"Au Privave"の序盤へ引き継がれていくが,無伴奏のカデンツァでこれだけ吹けてしまうのが凄い。

まぁ現在につながる手癖のようなものも感じない訳ではないのだが,繰り出される見事なソロには感心せざるをえないし,ライブでこれだけの演奏をしてしまうところがナベサダのナベサダたる所以だろうと思うのであった。

バックの八代一夫,原田政長,渡辺文男のトリオも好演で応えるが,私はゲストで入る日野皓正のラッパの適当さがどうにも気に入らない。手練れの曲をやると言っても,もう少しリハーサルをするとかあるだろうと思ってしまうのだ。ソロはさておき,"Au Privave"のナベサダのソロのバックでの何がやりたいのかわからないような吹きっぷりは単に邪魔なだけで,辟易とさせられるところがあったのが惜しい。ライブだからと言ってもそれなりの演奏をして欲しいものだ。

私ならワンホーン・クァルテットで一枚仕立てたなというところだ。そこが気に入らないということで星★★★★。

Recorded Live at ヤマハホール on March 15, 1969

Personnel: 渡辺貞夫(as),八代一夫(p),原田政長(b),渡辺文男(ds),日野皓正(tp)

本作へのリンクはこちら。

2026年10月11日 (日)

Dave Hollandの未発表ライブ音源が早くもデリバリーされた。つくづく凄い人だ。

_20261010_0001 "Freedom Call" Dave Holland (Edition)

11月にAzizaを率いて久々の来日を果たすDave Hollandの未発表ライブ音源を集めた3枚組がリリースされ,私は英国から飛ばしたものが早くも到着した。送料はかかるが,Editionレーベルは発送が早くて好感度が高いが,今回もそうであった。

このボックス・セットは3種類のバンドの演奏を収めており,それぞれが"Unity","Synergism","Freedom"と題されている。ボックスのイメージが見つからないので,各々のディスクのジャケのイメージをアップしておくが,上から上記の順番である。

_20261010_0002 1枚目の"Unity"がセクステット,2枚目の"Synergism"がクインテット,そして3枚目の"Freedom"がPrismによる演奏を収めているが,まさにどのような編成でも素晴らしい演奏を展開することが実証されているようなボックスで,文句のつけようがない。こんな音源を惜しむことなく発表してくれたことは実にありがたいし,しかもすべてのディスクが70分越えの大盤振る舞いだ。そもそも各々のバンド・メンバーの素晴らしさを見れば,Dave Hollandというミュージシャンがどれほどリスペクトされているかの裏返しであるが,この演奏の質の高さ,スリリングな展開を聞けばジャズ・ファン興奮間違いなしである。

_20261010_0003 各々のディスクは聞きどころ満載ところだが,私にとってはDave Hollandはもちろんなのだが,やはりクインテットのクリポタことChris Potterと,PrismのKevin Eubanksの注目度が高い。クリポタについてはやはりテナーのソロが強烈で,聞いていて興奮してしまったし,Kevin EubanksについてはPrismのアルバムがリリースされた際に,そのギターのフレーズが素晴らしいと思ったのをライブでもきっちり引き継いでいる。また,ドラマーがEric Harland(disc 1/3)とNate Smith(disc 2)が分け合うという,現在これ以上望めないと言ってもよいドラムスである。悪いはずがないのだ。

まさに文句のつけようがない興奮必至のボックスとして星★★★★★。たまりまへん。

Recorded Live in 2008, 2010 and 2014

Personnel: Dave Holland(b), <disc 1>Antonio Hart(as), Alex Sipiagin(tp, fl-h), Robin Eubanks(tb), Mulgrew Miller(p) Eric Harland(ds), <disc 2> Chris Potter(ts, ss), Robin Eubanks(tb), Steve Nelson(vib, marimba), Nate Smith(ds), <disc 3>Kevin Eubanks(g), Criag Taborn(p, el-p), Eric Harland(ds)

本作へのリンクはこちら。

2026年10月10日 (土)

「ディスクロージャー・デイ」:少々陳腐なストーリーとも言えるが,それなりに見られる映画であった。

Disclosure-day 「ディスクロージャー・デイ("Disclosure Day")」(’26,米,Universal)

監督:Steven Spielberg

出演:Emily Blunt, Josh O'Conner, Colin Firth, Eve Hewson, Colman Domingo, Wyatt Russell, Elizabeth Marvel

早いもので,Steven Spielbergも今年の12月で傘寿だそうだ。「激突!」が1971年だから,半世紀以上前と言うことを考えれば,あぁそうなのかと思ってしまうが,歳はとっても,撮る映画は変わらないねぇと思ってしまう。宇宙人の存在の隠蔽,更には宇宙人とのコミュニケーション等,Steven Spielbergが一貫して描いてきたテーマと言ってもよい。

Steven Spielbergの頭には宇宙人の実在という信念があるから,こういう映画が出てくるのもわからないではないし,更にそこにアクション・シークェンスを交えて描くから,2時間半近い尺もそう気にはならなかった。しかし,この映画のテーマである「ディスクロージャー」の部分の必然性とそこに至る展開については,シナリオの弱さが指摘されても仕方がない。そもそもあのデバイスは何なんだ?と言わざるをえないが,細かく言うとネタバレになるので,ここでやめておく。

だが,Steven Spielbergの演出については大きな破綻はないと思えるし,撮りたい映画を撮ったという印象が強く,最も印象的なのはエンディングだったかもかもしれない。Emily Bluntの最後のセリフについては複数の解釈が可能だと思えるが,そこに想像をめぐらせばよいという感じか。私は放送局のシークェンスや人々の反応については,ありきたりという感覚はあったが,それを救ったのがエンディングだったかもしれない。

まぁ,娯楽作として評価はできるので,甘いの承知で星★★★★とするが,最高とは言わずとも,それなりの見応えはあると言っておこう。

2026年10月 9日 (金)

JD Allenの濃い~新作はリズム隊のドローン的な響きにテナーが乗ると言えばいいか。

Sowt "SÖWT" JD Allen(Savant)

JD Allenがモロッコを訪問したことにインスパイアされて,作り上げたアルバムだそうだ。Web情報によれば,北アフリカ・モロッコを中心に伝わる精霊信仰(アニミズム)とイスラム神秘主義(スーフィズム)が融合した伝統的なトランス音楽であるグナワ音楽的なものの再現ということらしいから,なるほどと感じられる響きを持つ音楽である。「トランス音楽」とすれば,主題の通りドローン的な響きを持つことになる訳だ。そこにJD Allenのテナーがかぶさるこのサウンドは,かなり濃厚な響きと言ってよい。例えて言えば,一時期のBilly Harperにもつながる吹奏という気がする。

現代において,こうした一種暑苦しいとも思える音楽がどの程度受けるかは微妙にも思えるが,こういうかつてのスピリアル・ジャズの亜種と呼んでいいような響きを持つジャズを好むリスナーに受けるだろうし,ジャズとある種の民族音楽と言ってよいグナワ音楽を融合させた響きは刺激的で面白い。

JD Allenは多数のアルバムをリリースしているものの,リーダー作はこれまで"Victory!"1枚しか聞いていないはずで,Jeremy Peltのクインテットでの演奏を聞いていたぐらいだが,Jeremy Peltとの演奏は比較的コンベンショナルな感覚だったのに対し,リーダー作はより自由度が高い人だった。そんなJD Allenが更にこうした新しいチャレンジする姿勢は評価してよいように思う。ただ終盤の"Lil Lullaby"がそれまでのアルバムの流れから浮いているのが惜しい。星★★★★。

Personnel: JD Allen(ts), Leo Montana(p), Hamza Souissi(b), Ruy Adrián López-Nussa(ds), ​Yazid Alaoui(guembri, vo)

本作へのリンクはこちら。

2026年10月 8日 (木)

Meshell Ndegeocelloの新作が最高だ。もはや完全にプロデューサーの世界。

_20261006_0001 "Synonym" Meshell Ndegeocello(Blue Note)

Meshell Ndegeocelloの新作が届いた。この人のアルバムには多少の好みはあれども,はずれのないアルバムを届ける能力にはいつも感嘆させられる。そのMeshell Ndegeocelloの新作は2018年の"Ventriloquism"に続くカヴァー・アルバム。今回は多彩なゲストを迎えつつやっているカヴァー曲の選曲の広さが物凄い。このアルバムで取り上げている曲とオリジナルで演じた人は次のようになっている(はず)。

  1. I Knew You Were Waiting (for Me): Aretha Franklin & George Michael
  2. Don't You Want Me: Human League
  3. Don't Stop the Music: Yarbrough and Peoples
  4. Islands in the Stream: Kenny Rogers & Dolly Parton
  5. It Ain't Me Babe: Bob Dylan
  6. Always on Time: Ja Rule
  7. Be Real Black for Me: Donny Hathaway & Roberta Flack
  8. Don't Look Any Further: Dennis Edwards & Siedah Garrett
  9. The Closer I Get to You: Roberta Flack & Donny Hathaway
  10. Golden Ring: George Jones & Tammy Wynette
  11. I Got You Babe: Sonny & Cher
  12. Here We Come (Here He Comes): Brian Eno
  13. Guilty: Barbra Streisand & Barry Gibb
  14. Hunger Strike: Temple of the Dog
  15. With God on Our Side: Bob Dylan

Bob DylanとDonny Hathaway/Robert Flackのデュオが2曲ずつというのが目立つが,それ以外はソウル,カントリー,ポップ,ロック,グランジ,ラップまで何でもござれだ。そうした中で,今回のアルバムが"Ventriloquism"と随分と趣が違うのは,リード・ヴォーカルはほぼゲストに任せて,Meshell Ndegeocello自身もリードを取りつつも,どちらかと言えばバッキング・ヴォーカル的な歌唱とベースの演奏に徹している感じということだ。つまりやっている曲は違っても,Robert Glasperの"Black Radio"的だと思えばいいだろう。即ち,主題の通り,プロデューサー的な役割が大きいのだが,ちゃんと演奏も自身でコントロールし,ちゃんとMeshell Ndegeocelloのアルバムにしているって感じだ。そしてこれだけ多様な曲を演奏しつつ,維持されるサウンドの一貫性,適材適所のゲストというところにプロデューサーとしての力量も見事に発揮って感じだ。

ゲストには知っている名前もあれば,知らない名前もあるが,冒頭の"I Knew You Were Waiting (for Me)"のゲストのCynthia Erivoの参加は驚きだ。この人は映画「ウィキッド」シリーズ2作に出ていた人である。そんな人まで呼んでくるセンスが凄い。懐かしやDavid Gamsonとのコラボレーション復活も嬉しいところだが,不勉強にして知らない名前の人たちも,このアルバムを聞いて,どういう人なのか調べたくなること,及びオリジナルも聞いて比較してみたくなること必定だ。

そんな効果ももたらすこの新作は,どの曲を聞いても新鮮に響き,過去の名曲を再構築して,現代におけるソウル・ミュージックに仕立てた作品として高く評価したい傑作。星★★★★★。クレジットに各曲のBPMが書いてあるのもユニーク。Meshell Ndegeocello,才人と言うしかない。今年のベスト作入り確実だ。

Personnel: Meshel Ndegeocello(vo, b), David Gamson(prog, key, g), Chris Bruce(g, b), Oliver Leiber(g), Ella Feingold(g), Wendy Melvoin(g), Doyle Bramhall II(vo), Bela Fleck(banjo), Jake Sherman(p, el-p, org, vib), Jebin Bruni(key, synth, p, bell), Benny Bock(synth, el-p), Larry Goldings(el-p, synth, key, org), Alan Hampton(b), Gabe Noel(b, cello, hca), Abe Rounds(ds, perc, g, b, vo), Deantoni Parks(ds, prog),  Josh Johnson(horn), Levon Henry(horn), Elena Pinderhughes(fl), with Cynthia Ervo(vo),  Cat Power(vo), Nick Hakim(vo), Robert Glasper(p, vocoder, vo), Chaka Kahn(vo), Madison Cunningham(vo, p, g), Laura Lee(vo, b), Emily King(vo), Lizz Wright(vo), Liana La Havas(vo, g), Destin Conrad(vo), Moses Sumney(vo), Brandi Carlile(vo), Anohni(vo), Evann McIntosh(vo), Ink(vo), Willow(vo, ds), Bill Callahan(vo, g), Chris Thile(vo, mandolin), Nayanna Holly(back-vo), Hanna Benn(back-vo)

本作へのリンクはこちら。

2026年10月 7日 (水)

Robert Mitchum演じるHarryの極悪非道ぶりが際立つ「狩人の夜」。

Night-of-the-hunter 「狩人の夜("The Night of the Hunter")」(’55,米,United Artists)

監督:Charles Laughton

出演:Robert Mitchum, Shelley Winters, Lilian Gish, James Gleason, Peter Graves, Evelyn Varden, Don Beddoe, Billy Chapin, Sally Jane Bruce

名優Charles Laughtonの唯一の監督作である。当時は興行的には失敗したが,後に評価の機運が高まった作品だそうだ。

既にこの当時にはスターと言ってよかったRobert Mitchumが主題の通り,とんでもない極悪非道ぶりを演じる映画である。映画冒頭からうさん臭さを出して,いかにも詐欺師的な口の上手さで人をだますところなんて,普通なら怪しいと思えよと言いたくなるところだが,まぁそれはさておきである。

次のシークェンスで殺人と銀行強盗で1万ドルを持ち逃げしてきた男を演じるのが,後の「スパイ大作戦」のフェルプス君ことPeter Gravesである。Peter Gravesが息子のジョンに現金の隠し場所を告げ,Robert Mitchum演じるHarryがそれをつけねらうというのが映画の中心。

Peter Gravesが死刑判決で出番が亡くなった後,その未亡人となったShelly WintersにRobert Mitchumが近づき,すぐに結婚というのは時代の成せるわざかって気もするが,結局は金目当てで,Shelly WintersはRobert Mitchumに洗脳された挙句,殺されてしまうというのもかなり無茶苦茶なストーリーだ。

Lilian-gish そして金のありかを知る子供のジョンとパールはボートで間一髪逃げ出し難を逃れるのだが,Robert Mitchumは馬に乗ってそれを追いかけるというのもこれまた凄い設定である。子供二人は結局Lilian Gish演じるクーパー夫人に助けられ,そして守られるというストーリーになっていくのだが,最後までRobert Mitchumの嫌らしさ炸裂である。よくぞこの役を引き受けたってところだが,その一方でLilian Gishが宗教観に満ちた強い女性を演じるところが素晴らしい。胡散臭いRobert Mitchumとの対比が実に見事なのだ。この映画製作時,Lilian Gishは還暦を過ぎていたが,若い頃の美貌を知って頂くためにポートレートを貼り付けておく。還暦を過ぎていても,かつての美貌の残り香を感じさせた。

結末については往時の映画ゆえ,推して知るべしの部分もあるが,敢えて書かないでおこう。いずれにしても,この映画はRobert MitchumとLilian Gishに尽きると言ってよいだろう。それに比べればShelley Wintersは熱演ながら,中盤で殺されてしまうので,印象が弱くなってしまい,女優としては完全にLilian Gishに場をさらわれたってところだろう。

シナリオには無理がある部分があるのは承知で星★★★★☆。

本作のDVDへのリンクはこちら。ストリーミングへのリンクはこちら。

2026年10月 6日 (火)

先日のライブを受けて購入したToninho Hortaの新譜はアメリカン・スタンダード集だが...。

"Standards & Stories" Toninho Horta(Minas)

_20261004_0001_20261005071201 先日のToninho Hortaのソロ・ライブに関しては既にレポート済みだが,それは素晴らしいギターの技であった。それにン感銘を受けて購入を決めたのがこの新作であった。ただ,これが聞いてびっくりである。ライブがシンプリシティの極致だとすれば,こちらはコーラスやオーケストレーションまで施されて,ある意味真逆の世界である。聞いていて思い出したのがAntonio Carlos Jobimの"Terra Brasillis"。私にはオーバー・プロデュース,更には出来の悪いイージー・リスニングにすら聞こえてしまった。

聞いていて最も困ったのがコーラスやらバッキング・ヴォーカルやらである。Toninho HortaのヴォーカルはJobim同様ヘタウマの世界であるが,そこにあまりに仰々しいコーラスをつければどうなるかなんて火を見るよりも明らかだ。

録音は2018年~2026年に渡ってNYCで行われたものに,ブラジルでのレコーディングをオーヴァーダビングしたもののようで,ジャケにはNY Works Vol1と書いてあるから,続編も出てくるということなのかもしれない。しかし,私が聞きたかったのはToninho Hortaのギターの響きとそれに乗った彼の歌であって,こんな路線なら私にはもはや無用の長物だ。音源がストリーミングされていないので,試聴しないで買った私が悪いのだが,先日のライブのよき記憶と印象を台無しにされた思いだ。

この趣味の悪さは完全にプロデュースを務めたSandro Albertの責任であり,私は絶対にこれは評価しない(きっぱり)。せめて本作の中では,先日のライブでも披露した"My One And Only Love"ぐらいのレベルになぜ留めておけなかったのかと言いたい。これを聞くぐらいなら先日のライブの印象を再現可能な"Solo Au Vivo"を聞く。仰々しいアレンジメントとあほらしいコーラス隊ゆえに星をつける気にもならないのは全く残念。

二度と聞く気がしないと言ってはToninho Hortaに失礼だが,正直なところアルバムとしてはその程度のものだ。

2026年10月 5日 (月)

アルバムを聞いて,彼らのライブへの期待値が異常に高まるMessthetics & James Brandon Lewis。

"Deface the Currency" The Messthetics And James Brandon Lewis _20260927_0001 (Impulse!)

James Brandon LewisはDownBeat誌の国際批評家投票で,テナー・サックス部門第1位に推されたプレイヤーである。前回の自身のバンドでのライブを見逃しただけに,次に来るときは必ずと思っていたのだが,27年1月にMesstheticsと来日することが告知され,速攻で予約を入れたのであった。

このバンドがどういう音楽をやるのかもよくわかっていなかったので,まずストリーミングで聞いたのだが,これがジャズとグランジの合体という感じで,何とも強烈な印象を与えてくれた。決してフリーではなく,メロディ・ラインは維持される中で,激しい音楽が展開されるという感じだ。もちろんJames Brandon Lewisは時折フリーキーなフレーズを発するとしてもだ。

バンドを構成するMesstheticsのリズム隊は元々Fugaziというバンドのリズム隊だったらしい。そもそもこのFugaziはNirvanaのKurt Cobainがファンだったという逸話も残っているから,相当のヴェテランである。リズム隊2人は既に還暦を過ぎているのだが,このアルバムから発せられる熱量は年齢なんて全く感じられない。

そうしたサウンドを聞けば,ライブの場でどのような演奏が展開されるのかが大いに楽しみになる訳だ。正直言って,彼らの音楽がCotton ClubやBlue Noteのようなこじゃれたヴェニューにフィットしているとは思わないのだが,そんなこと関係なしにぶちかましてくれるだろうという期待値も高まるアルバムである。これは実に爽快な騒々しさである。今年の2月のリリースなので,時間は経過しているが,新譜扱いとし,ライブへの期待も込めて星★★★★★としてしまおう。ディスクやストリーミングでもこれだけ興奮しているんだから,ライブでは悶絶必至?(笑)

Personnel: Anthony Pirog(g), Brendan Canty(ds), James Brandon Lewis(ts), Joe Lally(b)

本作へのリンクはこちら。

2026年10月 4日 (日)

またまた見ましたマカロニ・ウェスタン:「真昼の用心棒」はまぁそうなるわねという感じ。

Photo_20260823123101「真昼の用心棒 ("Le colt cantarono la morte e fu... tempo di massacro")」(’66,伊)

監督:Lucio Fulci

出演:Franco Nero, George Hilton, Giuseppe Addobbati, Nino Castelnuovo, Rina Franchetti

私も好きだねぇと思いつつ,またもマカロニ・ウェスタンである。マカロニ・ウェスタンと言えば「~の用心棒」ってタイトルにすればいいと当時の配給会社は思っていたようだが,この映画に関しては用心棒の要素は全くないと言ってよい。 まぁ葬儀屋を演じるTchang Yuが「用心棒」における棺桶屋に近いものがあるとは言っても,それだけである。

金塊探しをしていたFranco Nero演じるTomが知り合い(?)のCarradineから呼び出され,ララミーの町へ戻ってみると,ララミーの町はScott一家に牛耳られていて,そのScott一家に対するFranco Neroによる復讐劇のようなもの。そこに加勢するのが兄のGeorge Hilton演じるJeffreyなのだが,劇中ほとんどテキーラで飲んだくれているJeffreyがいきなり後半に活躍を見せるのを見ていると,「あぶさん」か!と言いたくなるような変貌ぶりを示すのが笑える。

ストーリーはまぁマカロニ・ウエスタンっぽいシンプルなもので,えぐいところはえぐい。そんな中で,悪役Scott Jr.を演じるNino Castelnuovoが超憎々しい。無表情にサディスティックな感じで鞭をふるう姿を見ていると,とても「シェルブールの雨傘」にも出ていたとは思えぬ演技ぶりで,悪役もこのレベルまで徹底すると潔いって感じか。

一方,Franco NeroとGeorge Hiltonの善玉二人はほとんどピンチもなく銃撃戦を乗り切るってのはさすがにないんじゃないの?という気もするが,その前にFranco Neroは鞭でいたぶられているからそれでよしってところだろう(笑)。まぁ暇つぶしには丁度よい尺でよかったっていう感じの標準作。星★★★。

本作のDVDへリンクはこちら。

2026年10月 3日 (土)

Yellowjackets@Blue Note東京参戦記。

Yellowjackets-on-bnt-stage

Yellowjacketsももう結成45年だそうだ。Bob Mintzerは47年と言っていたので,そちらが正しいのかもしれないが真偽は不明だ。

Yellowjackets-at-bnt それはさておき,結成当初はRobben Fordのバンドだと思われていた節もある彼らだが,Robben Fordが抜けて以降は一貫してワンホーンの編成のはずだ。今回来日するメンバーと同じ編成で7年前に来た時も私はライブを見ているが,苦手のBob Mintzerがいる割には結構いい評価であった(その時の記事はこちら)。実は長年私はBob Mintzerを苦手としていて,どうも彼のリーダー作にしても,参加作にしても響いてこないというのが実感だったのだが,前回ライブではその評価に変化が生じた。

しかし,その後,彼らのアルバムを買う訳でもなかったのだが,今回はBlue Note東京の7回行けばもらえる招待券をゲットしての参戦となり,相変わらずタイトな演奏ぶりで,大いに楽しめた。プログラムも,長いキャリアの中での曲をセレクトしていたように思えるが,ベースのDane Andersonを除けば,メンバーは結構なお年にもかかわらず,そんなことを感じさせない演奏だったと言える。

前回聞いた時はBob MintzerはEWIがよかったと感じたが,今回のライブでは圧倒的にテナーの方がよく,EWIの演奏が平板に聞こえるぐらいであった。テナーのフレーズを聞いていると,なぜ私がBob Mintzerを苦手としていたのかよくわからん!と思ってしまったが,それぐらい切れが良かった。演奏の切れのよさはメンバー全員に言えるが,Russell Feranteはシンセの利用は限定的な範囲に抑え,ピアノでこれまたいいソロを連発していた。Dane Andersonはスラップは使わないが,ベースはこう弾くんだぜって感じのソロを聞かせ,Will Kennedyはやはりこのバンドにはこのドラマーだという感じのタイトな叩きっぷりで楽しませたのであった。

感覚的に言えば,彼らはフュージョンと言うより,エレクトリックなジャズ・バンドとしての立ち位置を明確にさせたライブで,招待だからということで行ったにしては満足度の高いライブであった。

尚,トップの写真はBlue Note東京から拝借。

Live at Blue Note東京 on October 1, 2026

Personnel: Bob Mintzer(ts, EWI), Russell Ferrante(p, key), Dane Alderson(b), Will Kennedy(ds)

2026年10月 2日 (金)

私の推しの一人,Lizz Wrightの新作。相変わらずいいねぇ。

Lizz-wright-nearness "Nearness" Lizz Wright & Kenny Banks, Sr.(Candid)

私はデビュー以来,Lizz Wrightの推しである。この人の声は先日亡くなったCassandra Wilsonほどではないが,適度なディープさを持っていて,ジャズとゴスペル・フィーリングを融合させたその音楽は実に魅力的に響く。出したアルバムもことごとく出来のよいものであり,常にこの人の動きはウォッチしている。

そんなLizz Wrightの"Shadow"に続く新作は約2年という短いインターヴァルで届けけられたが,今回はKenny Banks, Sr.とのデュオ作である。Kenny Banks, Sr.という人については初聞きだと思ったら,Lizz Wrightのアルバムにはほぼ参加しているアトランタ・ベースのピアニストであった。この人は教会の音楽監督もやっているとのことなので,ゴスペル・フィーリングを持つLizz Wrightとの長年の付き合いもあり,相性は相当よいのだろうと想像させる。

ここでも"Nearness of You"や"All the Things You Are"等のジャズ・フィールドのスタンダードも歌っているが,半数以上はゴスペル曲であり,Lizz Wrightの音楽的ルーツに即した選曲と言える。そしてLizz Wrightの歌の上手さはここでも健在だし,Kenny Banks, Sr.の伴奏も適切。"All the Things You Are"で使っているのがクレジットに書かれたフェルト・ピアノだと思うが,この音色選びが何とも曲にフィットしている。

まぁ全体的にゴスペル色が強いので,ジャズ・ヴォーカルとして聞くと不満をおぼえるリスナーもいるだろうが,Lizz Wrightを元来純粋ジャズ・ヴォーカリストと捉えること自体に無理がある。こういう歌手だと認識して聞くと,これが何とも渋くも心に響く音楽である。昨日取り上げたGretchen Parlatoもジャズ・ヴォーカルの範疇を越えていたと思うが,Lizz Wrightも範疇は超越しつつ,全く違うアプローチなのが面白いのだ。

こんな歌を聞かされては,私のLizz Wright推しは永遠に続くとしか言いようがない。やや曲調にばらつきがあって,私としてはゴスペル・タッチ強めの曲の方に惹かれるところはあるのも事実だが,甘いの承知で星★★★★★としてしまおう。私の気持ちは下記の"Soon I Will Be Done"の映像を見てもらえばおわかり頂けよう。

Lizz Wrightが来日して時のライブを見てからもう11年の時が経過しているが,また来日して欲しいものだ。

Personnel: Lizz Wright(vo), Kenny Banks, Sr.(p, org)

 

2026年10月 1日 (木)

このメロウなサウンドこそGretchen Parlatoの魅力。2月の来日が本当に楽しみだ。

_20260926_0001 "The Wise Ones" Gretchen Parlato(Edition)

私が初めてGretchen Parlatoのアルバムを聞いたのは2011年の"The Lost And Found"だったのだが,そのコンテンポラリーな感覚が,コンベンショナルなジャズ・ヴォーカルとは異なっていた。日頃,あまりジャズ・ヴォーカルを聞かない私にもフィットするそのサウンドは記憶に残るものだった。それ以来,彼女のアルバムは結構買っているし,2023年にはライブも観に行った。

そんなGretchen Parlatoの新作であるが,前作"Lean in"は私が苦手とするLionel Louekeとのデュオということもあり,完全にスルーしたが,その前の"Flor"のよかった。今回はメンツを見て,まずはストリーミングで聞いて,そのメロウなサウンドが素晴らしかったので,現物も購入と相成った。

ここでGretchen Parlatoと共同プロデュースをしているAlan Hamptonは,本人自身SSWとしてアルバムをリリースしていて,私はそっちも支持してきたので,そのポイントも高いのだ。それに加えて"The Lost And Found"でプロデュースにも関わったRobert Glasperとの再会,あるいはゲストとしてMeshell Ndegeocello,更にはMoonchildのAmber NavranやMax Brykの参加等,私に訴求するポイントだらけなのだ。

2曲目のMeshell Ndegeocelloの野太いベース音には少々びっくりするが,全面的にメロウなサウンドが支配していて,これは聞いていて気持ちよいことこの上ない。これこそ本質的なGretchen Parlatoの魅力だと再認識した私である。特にRobert GlasperとGerald Claytonのエレピのサウンドの貢献度大だ。

来年2月にはここには参加していないTaylor Eigstiに,Alan Hamton,そして旦那のMark Giulianaという強力なメンツで来日が予定されていて,このアルバムを聞いて,それが猛烈に楽しみになってきた。そうした楽しみを増幅させるに十分なアルバムとして星★★★★★。記事の分類としてはジャズにカテゴライズしたが,ジャズの概念だけでは捉えきれない魅力炸裂だ。

これだけのクォリティのアルバムをわずか2日で仕立てるとはまさに驚き。尚,国内盤はボートラが1曲追加(この曲だけ録音が先)されているが,エンジニアも違うし,結構雰囲気が異なるのは仕方ないところだろう。

Recorded on November 17 & 21, June 18(Bonus Track), 2025

Personnel: Gretchen Parlato(vo), Alan Hampton(b, g, p, vo), Robert Glasper(p, el-p), Gerald Clayton(p, el-p, celeste, org), Mark Giuliana(ds, perc), Meshell Ndegeocello(b, vo), Amber Navran(vo, woodwinds, synth), Becca Stevens(vo, kora), Jacob Mann(synth), Josh Mease(g), Max Bryk(synth), Marley Giuliana(vo), Lauren Desberg(clap), John Clayton(b)

本作へのリンクはこちら。

2026年9月30日 (水)

「タイムリミット25時」:さすがにこのストーリーには無理があるかなぁ。タイトルにも疑問が。

Deadline-at-dawn 「タイムリミット25時("Deadline at Dawn")」(’46,米,RKO)

監督:Harold Clurman

出演:Susan Hayward, Paul Lucas, Bill Williams, Joseph Calleia, Osa Massen

川本三郎の「サスペンス映画ここにあり」にも取り上げられているこの映画は,William Irishによる原作を脚色したもので,大体午後11時から午前6時の7時間が描かれている。原題の通り,タイムリミットは「夜明け」なので,映画のストーリーに照らせば午前6時である。だから邦題の「25時」というのは明らかにおかしいというところから指摘しておかねばなるまい。

それはさておきである。このストーリーはかなり無茶苦茶だ。殺人現場に入り込んで,冷蔵庫は開けるは,手紙は持ち出すわでは現場に指紋がどっさり残ってしまうではないかと思えるし,当てずっぽうで犯人捜しをしたとしても,それが当たるとは限らないという瑕疵はたっぷりである。

しかし,序盤の悪女Ednaを盲目の元旦那のSleepyが訪れるシーンから,サスペンスはある程度盛り上げを図るし,さまざまな登場人物が交錯して,誰が犯人なのかというミステリー仕立てはある程度楽しめる。最後には大どんでん返しが待っているが,なるほどそういうことかと思わせるところで納得である。

いずれにしても,この映画はいたいけなBill Williams演じる気弱な水兵,AlexにほだされるJuneを演じたSusan Haywardがいい感じだ。そしてなんていい人と映画の中でもSusan Haywardに言わしめるタクシー・ドライバー,Gusを演じるPaul Lucasが本当にいい人に思えてしまう。ただ,正直なところ,世の中こんな人いるかねぇなんて思ってしまうのも事実。

まぁ小難しいことを言わず,楽しんでいればいいというレベルの映画であった。星★★★。尚,冒頭のニュース・スタンドでBill Willamsと話している兄ちゃんはJack Palanceに見えて仕方がなかったのだが,IMDbではWilliam Challeeという人らしい。他人の空似だったのかなぁ...。

本作のストリーミングへのリンクはこちら。

2026年9月29日 (火)

Toninho Hortaを武蔵野市民文化会館で聞いた。

Toninho-horta-guitars

来日中のToninho Hortaはいくつかのライブを行うことになっているが,完全ソロは今回の三鷹と静岡だけのはずだ。王子や大阪でも一部ソロはあるだろうが,私としては完全ソロを聞きたいということで,武蔵野からのメールでチケット発売情報を知り,速攻で申し込んでの,真正面ではないが,ステージに向かってやや左の最前列であった。まぁほぼかぶりつきだ(笑)。上の写真は開演前に私の席から撮ったToninho Hortaのギター3本。

Toninho-horta-poster 今回,私にとっては初の生Toninho Hortaとなったが,彼も既に77歳ということで,次があるかはわからない。そこへ未聴ながらスタンダードを演奏した新譜も出しているので,どういう演奏をするのかという期待値も高まる。場所は三鷹なので,我が家から少々遠く,椎間板ヘルニアの術後が経過が芳しくなく,電車で座れないとしびれが出てこける不安を抱える私である。12月には再手術を決意している状態での移動には不安を抱えつつも,行かぬ訳にはいかないのである(きっぱり)。ということで,時間は多少掛かっても,足に影響の出ない移動ルートを取って,現地に向かった。

右のポスターにもあるが,今回の公演はほぼソールド・アウトという人気ぶりであるが,Toninho Hortaのこれまでのキャリアを踏まえれば当然という気がする。そうした人気ぶりもあって,Toninho Hortaは終始ご機嫌な様子であった。演奏は2部構成であったが,第2部では新作"Standards & Stories"から"My One And Only Love"と"S'Wonderful"を聞かせた。この美しいプレイぶりは絶品だったと言え,私はCDの発注をその場で決意したのであった。そのほかにも"Bicycle Ride”やら聴衆のリクエストに応じた"Liana"等サンバ,ボサノヴァ,MPBでも何でもござれのようなプレイぶりであった。 

Toninho Hortaの歌そのものは加齢もあって,もはやヘタウマの世界だと思うが,そのギターの技は見事なもので,私はその指先を見ていて圧倒されていたという感じだ。それはアコースティックでもエレクトリックでも同じ。まぁシャイな日本人の聴衆,しかも三鷹界隈の聴衆に歌わせるのには少々無理があったと感じるが,ビルボードライブ大阪の聴衆ならノリノリで対応するかもなぁと思っていた。いずれにしても大いに楽しめる約90分のライブであった。

残念だったのは終演後サイン会がありながら,物販は早々と終了してしまったようで,私は物販期待でCDを持参しなかったことだ。せっかくのチャンスを逃したのは痛かった。

しかし,Toninho Horta本人にとっても,聴衆にとっても幸せな瞬間を共有できたことには感謝したい。

Live at 武蔵野市民会館小ホール on September 27, 2026

Personnel: Toninho Horta(g,vo)

2026年9月28日 (月)

約70年前の日本が舞台の「東京暗黒街・竹の家」を見た。

House-of-bamboo「東京暗黒街・竹の家("House of Bamboo")」(’55,米,Fox)

監督:Samuel Fuller

出演:Robert Ryan, Robert Stack, 山口淑子, Cameron Mitchell, Brad Dexter, 早川雪洲, DeForest Kelley

噂には聞いていたが,このSamuel Fullerが撮った映画を初めて見た。「情無用の街」のリメイクということも今回知った。「情無用の街」での悪役のRichard Widmarkが本作ではRobert Ryan,善玉のMark StevensがRobert Stackという位置づけで,舞台を日本に置き換えている。

この映画,当時の日本の世相がかなり捉えられているのはいいのだが,どうせなら日本人の役者を使えばいいものを,ロケーションはさておき,スタジオでの撮影は本国で行われているから,日本語のセリフ回しがおかしいところの違和感はどうしても拭えない。それにどう見ても山口淑子の着物姿も明らかに変なので,彼女はそうした点についてはちゃんと発言すべきだったと思う。そして山口淑子の身長が相当低いせいか,顔が大きくて,6頭身ぐらいに見えて仕方がなかった(笑)。まぁどんちゃん騒ぎのシーンとかも変だろうとケチをつけだしたらきりがないのだが,結局は日本のイメージはフジヤマ,ゲイシャの時代だった訳だから仕方あるまい。映画のストーリーとはあまり関係もなく鎌倉の大仏とかが出てくるのも笑える。

そうした中で,この映画の実質的な主役は後にTVドラマ「アンタッチャブル」でお馴染みのRobert Stackだが,この映画のポスターはRobert Ryanのイメージっぽいのはどうなのやらって感じだし,その背後の山口淑子のイラストは銭湯から逃げだすシーンのイメージだが,どう見ても身体のバランスを盛っている(笑)。

だが,この映画はラストの銃撃戦(かつての浅草の松屋の屋上らしい)がクライマックスってことになるが,これも日本の警察があんなに拳銃をぶっ放していたら大変だろうと言いたくなるもの。ということで,これはどちらかと言えば「ここが変だよ」と突っ込みを入れながら見ていればいい映画と言える。「荒野の七人」に出るBrad Dexterや「スタートレック」でお馴染みのDeForest Kelleyが出ていたりというところはあるものの,珍品としか言いようがないので,星はつけないでおこう。

本作のDVD へのリンクはこちら。

2026年9月27日 (日)

佐渡裕/新日本フィルのブルックナーを聞く。

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6月にこのコンビでマーラーの3番を聞いたが,今度はブルックナーだ。今回は交響曲5番である。先日の日フィルによるショスタコーヴィチの時にも書いたが,私がオーケストラを聞きに行くのは,大体派手派手しい曲が多くて,私の常套句を用いれば,「ぐわぁ~っとくる曲」専門(笑)で,今回も例外ではない。

私は熱心なブルックナーのリスナーではなかったのだが,Nelsonsの全集を買って以降,Thielemann,そしてJochumと全集が3組になってしまったのは完全な気まぐれと言ってもよいのだが,正直言って自分でもびっくりである。また,私の音楽的な嗜好を知る人から見ても,これは驚きだろうなぁなんて思っているが,まぁそれはよかろう。

サントリーホールの座席につくと,私が近年行ったコンサートの中では最も客入りが悪い感じであった。感覚的には7割程度の入りだったが,日本のオケの定期なんてこんなものなのかなぁと思う一方,大概の場合,私が行ったものはほぼフルハウスに近いものだったから,不思議に思ったのであった。私は今回がブルックナーの生は初だったのでよくわからないが,ブルックナーの人気がないとも思えず,なんでだろうと思いつつ聞いていた。まぁでも最近はブルックナーの演奏機会が多いから,敢えてという感じでもなくなっているのかもしれないが。

肝腎の演奏は,私が座っていた座席にもよるのかもしれないが,いつもより音が大きく感じられ,弦も管も鳴りがよく,この曲から感じられるダイナミズムを表現するには十分だったと思えるし,破綻は感じられなかった。前回のショスタコとの違いはパーカッションがティンパニーだけなので,当然ティンパニーの演奏は目立つ訳で,こなして当然とは思いつつ,カーテンコールでも一番の喝采を受けて当然と思える目立ちっぷりであった。独奏パートのあるクラリネット,フルートがそれに続くという感じだが,その他の管楽器部隊も大きな拍手を受けるのは,曲が曲だし,上述の通り実際によく鳴っていたので納得であった。弦も弱音も綺麗に響かせ,フォルテッシモにおける音量も全く問題なし。

ということで,人生初の生ブルックナーとしては悪くなかった演奏で,もう少し客入りがよくてもよかったと感じた次第。

Live at サントリーホール on September 25, 2026

Personnel: 佐渡裕(cond),新日本フィルハーモニー交響楽団

«Bootsy CollinsとBucketheadがコラボするとなればこうなるよなと思いつつ,想像以上の騒がしさ。

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