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カテゴリー「SSW/フォーク」の記事

2018年4月24日 (火)

Eric Andersenはこれじゃあないなと思ってしまう"Be True to You"

”Be True to You" Eric Andersen(Arista)

_20180422_2先日,Joni Mitchellのサイトで彼女のディスコグラフィを眺めていたら,このアルバムの5曲に参加しているというデータがあって,へぇ,そうだったのかなんて思って取り出してきたアルバムである。

正直言ってしまえば,Eric Andersenは"Blue River"1枚あればいいと思っている人がほとんどだろうと思う。Joni Mitchellに関して言えば,"Blue River"でも印象的なコーラスをつけているし,そっちで十分なのだ。

それでもってこのアルバムを聞いていると,どうにも「売ろう」という意識が強く出ていて痛々しささえ感じてしまった。それが極端なかたちで感じられるのが"Wild Crow Blues"である。Eric Andersenの声にも,音楽性にも全く合致しないようなこの曲によって,このアルバムへの評価は一段下がったと言ってもよいだろう。しかし,"Time Like a Freight Train"のようないい曲もあるし,ちょっとポップだが,いいメロディ・ラインを持つ"Liza, Light the Candle"のような曲もあるので,全否定とはならないのだが,やはり"Blue River"と比べてしまうのが人情であり,全編を通して素晴らしい"Blue River"には遠く及ばないのが残念である。

今,こうして聞いてみると,日本のフォーク,あるいはニュー・ミュージックにはこのアルバム当たりから影響を受けているのではないかと思えないこともないが,やはり私としては"Blue River"のもつすがすがしさ,清冽さの方がはるかに素晴らしく感じてしまった。まるでAORのような"Can't Get You Out of My Life"みたいな曲にも全然共感できないのも辛い。まぁ,残念ながらその程度のアルバムである。

豪華なミュージシャンに後支えしてもらってはいるものの,それだけではいいアルバムにはならなかったという事例。星★★★。

Recorded in August, November and December 1974 and January 1975

Personnel: Eric Andersen(vo, g, hca, el-p), John Guerin(ds), Russ Kunkel(ds), Scott Edwards(b), Dean Parks(g), Tom Henley(p), Howard Emerson(g, dobro), Gary Coleman(perc), Tom Scott(ts), Tom Sellers(key) with Mark Sporer(b), Chris Bond(g), Ernie Watts(fl), Jesse Ehrich(cello), Richard Bennett(g), Allen Lindgren(p, el-p), Dennis St. John(ds), Emory Gordy(b), Jennifer Warren(vo), Andy Robison(vo), Ginger Blake(vo), Maxine Willard Waters(vo), JUlia Tilmard Waters(vo), Doug Haywood(vo), Jackson Brown(vo), Herb Pedersen(vo), Mike Condello(vo), Deborah Andersen(vo), Joni Mitchell(vo), Ray Backwich(vo), Orwin Middleton(vo), Maria Muldaur(vo)

2018年4月 6日 (金)

コレクターはつらいよ(20);Joni Mitchellトリビュート盤の1曲

"A Tribute to Joni Mitchell" Various Artists(Nonesuch)

_20180401_2久しぶりのこのシリーズだが,このディスク自体はリリースされたのはもう10年以上前のことである。私自身はてっきり記事にしていたと思ったのだが,このブログにはアップしていなかった。なぜだ...?(苦笑) 

このアルバムはタイトル通り,様々なミュージシャンがJoni Mitchellの音楽をインタープリテーションするという企画アルバムである。その中で1曲,Brad Mehldauのソロが入っているのだから,これは買わないわけにはいかないし,そもそもJoni Mitchellも偏愛する私としては,多分Brad Mehldauが参加していなくても買っていたのではないかと思われる。

Brad Mehldauが演じているのはアルバム"The Hissing of Summer Lawn"から"Don't Interrupt the Sorrow"というなかなか渋いチョイス。これがいかにもBrad Mehldauらしい演奏で嬉しくなってしまう。やっぱりわかってるねぇ,って感じである。

だが,このアルバム,Brad Mehldau以外にも聞きどころ多数である。アフリカ風味だった"Dreamland"をブラジル的に仕立て直したCaetano Veloso,無茶苦茶渋く"For the Roses"を歌うCassandra Wilson,Joni Mitchellへのシンパシーを強く感じさせるPrinceの"A Case of You",そして真打ち登場的にラストに収められたJames Taylorの"River"等,どれも捨てがたいし,どれも魅力的である。

ただねぇ,冒頭のSufjan Stevensの"Freeman in Paris"はいじり過ぎでこれはちょっとなぁと思うファンも多いだろう。これは個性の表出としては認められても,歌詞だけ使って,原曲の曲の持つよさを全然活かしていないのは納得いかないねぇ。ということで,全体としては星★★★★ぐらいだろう。

Personnel: Sufjan Stevens, Bjork, Caetano Veloso, Brad Mehldau, Cassandra Wilson, Prince, Sarah McLachlan, Annie Lenox, Emmylou Harris, Elvis Costello, k.d.Lang, James Taylor

2018年4月 4日 (水)

改めてTracey Thornの「遠い渚」を聞く。

"A Distant Shore" Tracey Thorn(Cherry Red)

Photo先日,このブログにシンセ・ポップ的な色彩の強いTracey Thornの新作"Record"について書いた(記事はこちら)。随分とEverything But the Girlでやっていた音楽とも違うなぁと思わせたが,翻って1984年にリリースされた彼女の初ソロ作を聞いてみた。Tracey Thornにはこの前にMarine Girlsのアルバムが2枚あるが,彼女が広く知られたのは多分こっちの方からだろう。

私が保有しているのは国内盤を中古でゲットしたもののはずだが,オリジナルの8曲に加えて,EBTGで82年にリリースしたシングルから2曲を加えた構成となっている。このEBTGの2曲が若干雰囲気が違っていて,しかもそれを途中に挟み込むというやり方はどうなのかねぇ。こういう編集方針はどうなのかねぇと思ってしまうが,こういうところが1990年ぐらいの国内盤にはよくあったような気もする。まぁ,国内盤に限らず,ジャズ系でも別テイクを並べ立てるような編集もよくあったが...。最新の紙ジャケ盤は一番最後に持って行っているようだから,そっちなら許せる(笑)。

それはさておき,彼女のギター1本にヴォーカルという超シンプルな構成で録音されているが,これぞネオアコみたいな感じである。この当時からTracey Thornの個性はそんなに変わっていない気がするが,それでもこのシンプリシティってのは今の耳にはむしろ新鮮に響く。やっぱりいいねぇ。冒頭の"Small Town Girl"もいいが,Velvet Undergroundのカヴァー,"Femme Fatale"もいいねぇ。原石のような魅力というのはこういうものだろう。ジャケも素敵である。星★★★★☆。

Personnel: Tracey Thorn(vo, g)

2018年3月21日 (水)

多作家,Neil Youngの最新作が結構いいねぇ。

"The Visitor" Neil Young & Promise of hte Real (Reprise)

 _20180319最近の兄貴ことNeil Youngの多作ぶりは際立っていて,新作のほかにアーカイブ音源も出てくるものだから,一体どれぐらいリリースされているのかも追い切れていないような状態である。ここのところの新譜は,私にはどうも訴求してくる部分が少なく,このブログでも直近で取り上げたのはアーカイブ音源,"Hitchhiker"ぐらいで,新作については買ってはいても,とんと取り上げていない。

このアルバムもショップで仕入れたのは1カ月ぐらい前だが,ようやくの記事のアップである。だが,こうして兄貴の新作を取り上げるのには意味がある。とにかく,久々に一聴した感じがいいのである。ロック的な部分とフォーク的な要素をうまく組み合わせており,ここ何年かの新譜の中では,一番出来がいいように感じさせてくれた。

こうしたNeil Youngの多作ぶりは,彼の創造力が全く衰えていないことはもちろんであるが,いろんなことへの「怒り」を発露する手段としてアルバムを出しているという要素もあろう。だって,このアルバムの冒頭の”Already Great"では,"I am Canadian, by the way. And I love the USA. I love this way of life. The Freedom to act the freedom to say."なんて皮肉たっぷりな歌詞で始まっているのだ。そしてそのエンディングは”No wall. No hate. No facsist USA. Whose street? Our street."ときたもんだ。超リベラルな私が嬉しくなってしまうような歌詞ではないか。ロックってのはこういうもんだぜ。

もちろん,これをNeil Youngの最高傑作なんて言う気もないが,兄貴がもう70歳をとうに過ぎていることを考えれば,衰えない創作意欲と問題意識には感服せざるをえない。だって,4月にはもう次の新作が出るって,一体どうなっているのやら...。星★★★★☆。

Personnel: Neil Young(vo, g, p, hca, whistle), Lulas Nelson(g, vo), Micah Nelson(g, vo), Corey McCormick(b, vo), Anthony LoGerfo(ds), Tato Melgar(perc) and others

2018年1月21日 (日)

いまだに現役で頑張るLarry John McNallyのデビュー・アルバム。

"Larry John McNally" (Arc/Columbia)

_20180114_2Larry John McNally,懐かしい名前である。現在も現役で活動をしていて,アルバムも「細々と」(笑)リリースし続けている。現在はRoger Watersの息子のHarry Watersとバンドを組んでツアーもやっているようであるが,まぁ目立ってはいないな(爆)。この人の場合,本人のアルバムよりも,この人の曲を歌っている人の方がメジャーな場合が多く感じられて,むしろソングライターとしての評価が高いかもしれない。Bonnie Raitt然り,Rod Stewart然りである。

今回はカテゴリーをSSW/フォークとしているが,この人の音楽はよりAOR的だし,この人の声もフォークというよりも,より都会的なセンスを感じさせる。そして,このアルバム,いい曲が揃っているが,私に一番響いたのはメロウな"Sleepy Town"であった。どこかで聞いたような既視感を与える曲調なのだが,それは典型的AOR的な響きを持つからではないかと思ってしまった。

このアルバムも聞くのは本当に久しぶりだったのだが,これは今聞いても結構いいねぇと思える作品であった。こういうジャケにしなければ,もう少し売れたのではないかとも言いたくなるが,いずれにしても未聴の方は聞いてみて損はしない。その後,デモ音源などを加えたデラックス・ヴァージョンが発売されたっていうのには今更驚かされるが...。でもナイスなアルバムであることは間違いない。星★★★★。

それにしても,プロデューサーがJon Lindってのも懐かしい名前であった。元Fifth Avenue BandやHowdy Moonって言っても,わかってくれるのは一定の年齢層以上に決まってるな。

Personnel: Larry John McNally(vo, g), James Gadson(ds), Gary Mallaber(ds), Reggie McBride(b), Keni Burke(b), Kenny Lewis(b), Chuck Domanico(b), Buzzy Feiton(g), Richard Feldman(g), Chuck Bynum(g), Bill Payne(el-p, org, synth), Victor Feldman(el-p, perc), Peter Reilich(el-p), Bruce Malament(el-p), Ricky Kelly(p, el-p, synth), Lenny Castro(perc), Sam Clayton(perc), Valerie Carter(vo), Jon Lind(vo), Marti McCall(vo), Petsye Powell(vo), Margaret Branch(vo), Jude Johnstone(vo), Tom Scott(horn), Jerry Peterson(horn), Lee Thornburg(horn)

2018年1月16日 (火)

Ray Lamontagne:この素晴らしき歌唱に浸る。

"Live from Bonnaroo 2005" Ray Lamontagne(RCA)

Bonnaroo私がRay Lamontagneという人に出会ったのは"Till the Sun Turns Black"でのことであった。そこでの歌いっぷりに心底まいってしまい,彼のアルバムは全部買っている。だが,このブログに彼のアルバムについて書いたことがないのは,その後のアルバムが"Till the Sun Turns Black",あるいはデビュー作"Trouble"ほど,私に響いてこなかったということがある。まぁ,ちゃんと聞いていないからだという話もあるが,一聴して「これはっ!」って感じがなかったのである。

だが,今回,久しぶりにこのライブ盤を聞いて,やっぱり凄い歌い手であるという認識を新たにした。デビュー作"Trouble"のリリースが2004年だが,その翌年,米国のBonnaroo Music and Arts Festivalに出演した時の模様を収めたライブ音源である。このBonnarooは日本で言えば,フジ・ロック・フェスティバルのようなものと思えばいいだろうが,デビューの翌年,そのデビュー作からの曲を6曲収めたこのライブEPは,この人の曲の素晴らしさ,歌手としての訴求力を強く感じさせて素晴らしい。

一般的な感覚で言えば,フォークあるいはSSWの文脈で捉えられるべき演唱であるが,シンプルな演奏,歌唱でありながら,聴衆を惹きつける魅力は十分と思える。私がこの人に感じた魅力はこういうものだったのだなぁということを改めて認識させられた。こういう素晴らしい音楽はもっと取り出しやすいところに置いとけよっていう反省も込めて,星★★★★☆。このディスクそのものはなかなか見つかりにくいかもしれないが,ストリーミングでも聞けるので,ご関心のある方は是非お試しを。

Recorded Live at Bonnaroo Music and Arts Festival on June 10, 2005

Personnel: Ray Lamontagne(vo, g, hca), Chris Thomas(b), Larry Ciancia(ds)

2018年1月 3日 (水)

EBTGでくつろぐ。

"Worldwide" Everything but the Girl (Atlantic)

_20171230_2新年はくつろげる音楽を聞いて過ごしたいということで,今日選んだのはEverything but the Girlである。この"Worldwide"というアルバム,彼らのキャリアの中ではあまり目立たない一枚と言ってもよいかもしれないが,しみじみと聞かせるという点では,結構いいアルバムである。

比較的シンプルで抑制された伴奏の中で,Tracey ThornとBen Wattによって歌われる歌は,心に落ち着きをもたらしてくれるものである。中では"Twin Cities"のポップ度が群を抜いていていて,アルバムの中では若干浮いているような気もするが,これが実にいい曲なので許す(きっぱり)。

私はこの後に出た"Acoustic"というアルバムがかなり好き(記事はこちら)なので,それに比べるとプレイバック回数は少ないのだが,久しぶりに聞いてこの落ち着きに満ちた音楽はまさに「大人の音楽」だと思わせるに十分であった。それにしても本当にいい曲を書く人たちであるが,それを彼らの「声」で聞けることに,改めて幸福感をおぼえてしまった。

このアルバムが出て,もはや四半世紀を過ぎているが,その瑞々しさは不変であった。星★★★★。

Personnel: Tracey Thorn(vo), Ben Watt(vo, g, p, key, synth, prog), Greg Lester(g), Damon "The Doctor" Butcher(p), Peter Murray(org), Geoff Gescoyne(b), Steve Pearce(b), Ralph Salmins(ds, perc), Vinnie Colaiuta(ds), Martin Ditcham(perc), Dick Oatts(as, ss), Peter Whyman(ts), James McMillan(tp, fl-h)

2017年12月29日 (金)

2017年の回顧:音楽編(その1)-ジャズ以外

今年も大詰めが近づき,いよいよ今年の回顧も音楽に突入である。まずはジャズ以外の音楽について取り上げよう。私が高く評価したアルバム(★★★★☆以上)については,2017年のおすすめ作としてブログの右側に掲示しているので,大体予想がついてしまうという話もあるが,まぁそれはさておきである。

Vkingur_lafsson私が今年ジャズ以外の音楽で聴いて,最も感銘を受けたのはVíkingur ÓlafssonのPhilip Glassのピアノ作品集であることは疑いのない事実である。この清冽な響きには正直ノックアウトされてしまった。私は今年は現代音楽のピアノを結構聞いたと思うが,ほとんどはECMレーベルの作品であり,それはピアノの響きと演奏が一体化していて心地よいということがあるのだが,このVíkingur ÓlafssonはDeutsche Gramophoneからの作品であり,ECMでないということが重要なのだ。これはまじで最も感動した作品の一枚であった。

Graceそしてそれと双璧なのがLizz Wrightの"Grace"である。本作はジャズのカテゴリーに入れてもいいと思ったが,本質的にこれはルーツ・ミュージック,あるいはソウルの世界である。よって,ここに取り上げることにするが,記事を書いた時の「Cassandra Wilsonを越えた」という表現に私には揺らぎはない。Lizz Wrightはこれまでも優れた作品をリリースしてきたが,これこそこれまでの彼女にとっての最高傑作と言ってもよい出来である。傑作という表現以外思いつかないぐらいの超絶作品。素晴らしい。

Moonchild心地よさという点ではMoonchildの"Voyager"が最高であった。メロウ・グルーブっていうのはこういうのを言うのだと思わせるに十分なアルバム。音楽に何を求めるかっていうのはいろいろあるところではあるが,心地よさ,身体が揺れるという感覚を感じさせてくれるに十分なアルバムであった。彼らのライブを見逃したのは痛かったが,こうした演奏に触れる機会を与えて頂いたブログのお知り合い,kenさんには大いに感謝したい。本当に気持ちいいアルバムである。

Southern_blood_2こうした作品に加えて,今年涙なくして聞けなかった作品というのが一枚ある。それがGregg Allmanの遺作,"Southern Blood"である。作品としての質がどうこうということではなく,私は本作に純粋に感動してしまったのである。加齢により涙もろくなっているということも影響しているが,本作は死期を悟ったミュージシャンのまさに"Swan Song"である。ある程度年齢を重ねたリスナーにとっては,これはツボに入ってしまうこと確実な音楽と言える。私は決してAllman Brothers Bandに思い入れのある人間ではないにもかかわらずの感動なのだ。これは本物だと思っている私である。

そのほかにもいろいろ面白いアルバムはあったが,いずれにしても,先日発表された「ミュージック・マガジン」のベスト10とは見事なほどに全く無縁のセレクションになってしまったなぁ。まぁ,自分の嗜好で音楽を聞いているので,違うのは当たり前だが。いずれにしても,来年も自分の好みに忠実に過ごしていければと思っている。プロじゃないからね(笑)。だが,上に挙げた4枚はどれを聞いてもはずれはないと言っておこう。

ここに挙げていないアルバムにもいいものはあった。Joe Henry,Tangerine Dream,Rose Cousins等は無視するには惜しかったのだが,自分の中での感覚を重視したらこういうチョイスになったということである。おっと,忘れてはいけないが,今年入手して嬉しかったものはGeorge Harrisonの"All Things Must Pass"のアナログ再発盤とKraftwerkの3-D Box。我ながらオタクである(爆)。

2017年12月14日 (木)

兄貴,Neil Youngの未発表音源は味わい深い。

"Hitchhiker" Neil Young(Reprise)

Hitchhiker兄貴ことNeil Youngは多作な人である。新作もぼんぼん出すが,旧譜を再発したり,今回のように未発表音源は発掘したりと,ファンと言えども完全フォローって難しいのではないかと思う。そうは言いながら,私は比較的フォローしている方だが,ここのところのNeil Youngの新作はどうもピンとこないものが続いていた。近年の傑作は"Le Noise"だと思うが,どうもそれから後は,悪くはないとしてもやっぱりピンとこない。アーカイブ・シリーズはいいものが多かったが,新作がいかんせん私に訴求してこない。だから,最近のアルバムは記事にすらしていない。

その一方,前述の通り,アーカイブ・シリーズで出た音源は,結構魅力的なものが多いが,今回は新しいシリーズとして,Special Release Seriesと名付けられ,番号は「5」が振られている。ということはまだまだ出すぜという兄貴の意思だろうが,ファンも大変だなぁと思わざるをえない。

この音源は,ほぼ未発表の音源を集めているが,1976年にリリースを前提に録音された完全ソロ・アルバムである。曲としては,違うかたちでリリースされたことがあるものがほとんどだが,この音源は完全アコースティック・ソロで演じられるところに意義がある。そうした意味で,シンガー・ソングライターとしてのNeil Youngを回顧し,見直すにはいいアルバムだと思う。なんでこれをオクラ入りさせたかは全くの謎であるが,タイミングとしては"Zuma"と"Comes a Time"の間を埋める時期に録音されていたことになる。

グランジのゴッドファーザーとしてのNeil Youngも私は好きだが,それでもどちらかと言えばやっぱり"After the Gold Rush"や"Harvest"が好きな私にとっては,こういうアルバムはやはり味わい深い。33分強という収録時間もまさにLP時代のそれみたいな感じで,聞いていてしみじみしてしまった。

このアルバム,リリース後はなかなかネット上では入手ができない状態ができずにイライラさせられたが,ようやく今頃になって聞けて,こういうNeil Youngを懐かしむ自分がいた。ということで,もの凄い名曲揃いって感じでもないが,この味わいには抗えず,甘いの承知で星★★★★☆。

Personnel: Neil Young(vo, g, hca, p)

2017年11月20日 (月)

Joe Henryによる一発録りアルバムがこれまた素晴らしい。

"Thrum" Joe Henry(e.a.r.)

Joehenrythrumこのアルバムがリリースされたことに全然気がつかずにいたのだが,某サイトで情報をゲットして即発注した私である。国内の流通はあまりよくなかったようなので,海外のサイトから飛ばしたが,私が出張中にデリバリーされていたものである。

最近はCD購入のペースが落ちている私でも,無条件に発注するミュージシャンは少なからず存在するが,Joe Henryもそうしたミュージシャンの一人である。前にも書いたことがあるが,彼のプロデュースするアルバムも概ね素晴らしいので,たまに失敗はあるものの無条件発注対象だが,本人のアルバムとなると尚更なのである。

そして,今回,スタジオで一発録り,かつその場でミックスされた演奏は,いつもながらのJoe Henryのアルバムのように響くが,比較的穏やかなサウンドに詩的かつ直接的にではないが,政治的なメッセージを込めているのが特徴的である。それにしてもこの味わい深さは素晴らしく,やはりこの人は信頼に値する人だということを改めて感じさせるに十分なアルバムである。

録音及びミキシングの方式としてしてはかなりチャレンジングなことをやっているにもかかわらず,全然そういう風に感じさせないのは凄いことだと思うが,この音に身を委ねていれば,私は出張で疲れた身体を癒すことができると感じてしまう。そんなアルバムである。先日出たばかりのJoe HenryプロデュースによるLizz Wrightの"Grace"も本年屈指のアルバムの一枚だと思ったが,それと比肩しうる傑作。星★★★★★。素晴らしい。

Recorded on February 21, 22, March 29 and 30, 2017

Personnel: Joe Henry(vo, g), Jay Bellrose(ds, perc), Levon Henry(reeds, whistle), David Piltch(b), John Smith(g, vo), Patrick Warren(p, org, key), Ana Brosius(pedal steel), Joey Ryan(vo) with the Section Quartet: Eric Gorfian(vln), Daphne Chin(vln), Leah Latz(vla), Richard Dodd(cello)

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