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カテゴリー「SSW/フォーク」の記事

2019年10月17日 (木)

"Strombringer"と言ってもDeep Purpleではない(笑)。John and Beverley Martynの渋~いアルバム。

_20191014 "Strombringer!" John and Beverley Martyn (Island)

主題の通りである。"Stormbringer"と言っただけで,日本ではDeep Purpleの「嵐の使者」かっ?と言われそうだが,これは英国出身の夫婦デュオ,John and Beverley Martynによるウッドストック・レコーディングである。タイトルには「!」マークが付いているが,プロデューサーはNick Drakeやら,ブリティッシュ・トラッドからアメリカン・ロックまで渋いところを制作してきたJoe Boydであるから,まぁ大体音は想像がついてしまうところである。「!」が付いたところで,どう考えてもDeep Purpleのようにはならないのである(笑)。

私は所謂ウッドストック的な音を昔から好んできたから,こういう音楽は無条件にOKと言いたくなってしまう。アメリカ的な音と言うよりも,やっぱりブリティッシュだなと思わせるところもあるが,こういう音楽を聞いているとしみじみしとした感覚を覚える私である。そしてなかなかの佳曲揃いで,たまに聞くとこんなにいいアルバムだったのかと思いたくなるようなアルバム。

アルバム全体を仕切ったのはManassasにもいたPaul Harrisだが,その貢献度は結構大きいと思わせる。その一方で,John and Beverley Martynのヴォーカルはもとより,アコースティック・ギターの響きが楚々として美しく,フォーク・ギターはこう弾きたいというような音で鳴らしているのが嬉しい。

まぁ,決してメジャーになることはないであろうアルバムだが,雨降りの午後にでも静かに楽しみたいアルバム。やっぱりこういうのが好きなのだ。星★★★★☆。

Personnel: John Martyn(vo, g), Beverley Martyn(vo, g), Paul Harris(p, org, arr), Harvey Brooks(b), Levon Helm(ds), Bill Mundy(ds), Herbie Lovell(ds), John Simon(harpsichord)

2019年9月27日 (金)

Woodstock Boxついに来る。こりゃ~重い(苦笑)。

Woodstock-box 発売後,いつまで経ってもデリバリーされず,ついにはRhinoに問合せのメールを入れたら,あっという間に到着したのがWoodstock Boxである。とにかく重い。そもそも木箱が嵩張る(苦笑)。いつ聞くの?って聞かれれば,そのうちとしか言えないが,よくもまぁこんなもんを買うわってところ。散らかっているのがバレバレの私の部屋に置かれたボックス,一体どこに収納すればいいのやら(爆)。

2019年6月23日 (日)

発掘音源2枚目はNeil Young。Stray Gatorsとのライブってのがいいねぇ。

_20190622-2_20190622154101"Tascaloosa" Neil Young & Stray Gators(Reprise)

発掘音源の2枚目は兄貴ことNeil Youngである。彼が1972年に"Harvest"をリリースした後のライブ活動の記録ってことになるだろうが,Stray Gatorsとのライブと言えば"Time Fades Away"である。以前から"Time Fades Away 2"的なアルバムを出す,出すと兄貴は言っていたようだが,ついに先日リリースされたのが本作である。

何と言ってもこのアルバムのポイントは曲である。"After the Gold Rush"やら"Heart of Gold"やら"Old Man"やら"Don't Be Denied"をやっていることからしてポイントが高い。やはりこの頃のNeil Youngの音楽は実に魅力的である。ストリーミングで聞いた時は,ちょっと軽く響いたように感じたが,CDで聞くといい感じに響くから不思議である。やはり通勤途上に「ながら」で向き合っているのと,部屋で聞くのでは環境が違うってことだろうなぁと思うが,いずれにしてもこれは実にいい。グランジのゴッドファーザー化したNeil Youngもいいが,往年のファンってやっぱりこの辺を最も好んでしまうのだろうと言わざるをえない。

実に瑞々しいフォーク・ロックとでも言うべきアルバムだが,私の初期の音楽体験にかなり大きな影響を与えたのがCSN&Yの”4Way Street"だったことからしても,そこから45年近く経過しても,こういう音楽に対するシンパシーは全然変わらないってことだ。私も芸がないと思うが,こういうのは星★★★★★しかつけようがないのだ(笑)。それが惚れた弱みってことだ(と開き直る)。久しぶりに"Time Fades Away"のLPでも聞いてみるかね。

Recorded Live at University of Alabama on February 5,1973

Personnel: Neil Young(vo, g, p, hca), Ben Keith(pedal steel, vo), Jack Nitzche(p, vo), Tim Drummond(b), Kenny Buttrey(ds)

2019年5月26日 (日)

真夏のような暑さの中で”Blue”を聞く。

_20190526 "Blue" Joni Mitchell(Reprise)

私はJoni Mitchellのファンだとか言いながら,実はこのブログでは彼女の公式アルバムについてはあまり記事をアップしていない。これまでは"Hejira"と"Miles of Isles"ぐらいしか取り上げていないはずである。だが,そろそろちゃんと彼女のアルバムについて書いた方がいいのではないかと思ってしまったのは,ブログのお知り合いの910さんが,ジャコパス入りのJoni Mitchellのアルバムを連続投稿されていることも影響しているのは間違いない(笑)。

ってことで,外では5月下旬とは思えない暑さが続く中,ピックアップしたのが"Blue"である。これをJoni Mitchellの最高傑作に挙げる人は多いし,世の中の評価も無茶苦茶高い。米国の公共ラジオNPRは本作を”Greatest Album of All Time Made by a Woman"に挙げているぐらいである。私個人的なJoniの最高傑作は"Hejira"ではあるが,このアルバムに収められた曲のクォリティの高さは,"Hejira"とはちょっと違う世界ではあっても,レベル的には同等と言ってよい。私が"Hejira"を評価するのは音楽全体としてだが,個別の表現という意味では"Blue"の方が強烈である。

このアルバムに収められているのは,私小説的心象風景とも言われるが,このアルバムはJoni MitchellとGraham Nash,あるいはJames Taylorとの恋に破れたJoniの感情が表出しているがゆえに,シンガー・ソングライターの世界における金字塔と言っても過言ではない評価を得ているとも思える。歌詞を真面目に読むと,それこそ切なくなるような表現に満ちているが,これぞ音楽による心もようの描出と言ってよいであろう傑作。ここまで来ると純文学。改めて聞いているとグサグサ心に刺さる。星★★★★★以外あるまい。

Personnel: Joni Mitchell(vo, g, p, dulcimar), Stephen Stills(b, g), James Taylor(g), Sneaky Peat Kleinow(pedal steel), Russ Kunkel(ds)

2019年5月12日 (日)

Warren Zevon: 商業的成功とはあまり縁のない人だったが...。

_20190504 "The Envoy" Warren Zevon(Asylum)

Warren Zevonという人は,批評家やミュージシャンからは高く評価されながら,全然売れなかった訳ではないとしても,大きな商業的な成功とは縁がない人だったと言っていいだろう。確かに普通のアメリカン・ロックやSSWの感覚で言えば,多少癖のある人だとは思う。しかし,音楽の質は十分高いことは間違いないと思っている。それまでのプロデュースだって,Jackson BrowneやWaddy Wachtel等が行っていることだけでもポイントが高い。本作もWarren Zevon本人とWaddy Wachtel,そしてDon Henleyのソロ・アルバムにも関わったGreg Ladanyiがプロデュースなのだから,それだけで好きものはよしと判断してしまうようなものだ。

そして,私がリアルタイムでこの人のアルバムを購入したのは,本作"The Envoy"が初めてだったはずである。本国では全然売れず,その結果Asylumとの契約を切られたって話だが,私はこのアルバムを売らずにいまだに手許に置いている。リリースは82年なので,私は大学生になっているが,帰省中に京都か神戸の輸入盤屋で買ったような気がする。

一聴して,冒頭のタイトル・トラックなんかは,アメリカン・ロックの典型からは随分と離れた感じがする。ほかの収録曲と比べても,特にこの曲の異色さが際立っているように思う。そのほかの曲もロック・テイストあり,ハワイアン・テイストあり,SSWっぽい曲ありと,実に多様な感覚がある訳だが,その辺りに戸惑いを感じるリスナーがいても不思議はない。しかし,バックにコーラスで参加している面々を見れば,この人の音楽界における立ち位置のようなものもわかるような気がする。それでも売れないものは売れないのだから仕方がないが,少なくとも誰かに媚びるような音楽ではない。

この人の持つ骨太さゆえにセールスに結びつかなかったような部分も多々あるとは思うが,質が高いだけにもったいないと思う。まぁ評価としては星★★★★ぐらいが妥当とは思うが,もっと知られてよいアルバムだと思う。今度はVirginレーベル時代のアルバムでも久々に聞いてみることにしよう。

Persoonel: Warren Zevon(vo, g, p, synth), Waddy Wachtel(g, vo), David Landau(g, vo), Steve Lukather(g), Danny "Kootch" Korchmar(g), LeRoy Marinell(g), Kenny Edwards(g), Leland Sklar(b), Bob Glaub(b), Jeff Porcaro(ds), Rick Marotta(ds), Russell Kunkell(ds), Jim Horn(recorder), Don Henley(vo), Lindsay Buckingham(vo), Jordan Zevon(vo), Jorge Calderon(vo), J.D. Souther(vo), Graham Nash(vo)

2019年4月27日 (土)

更に感動的だった映像版”Joni 75”

_20190324_2 "Joni 75: A Birthday Celebration" Various Artists(Rhino)

韓国から帰ったら,アメリカから飛ばしたDVDがデリバリーされていたので,早速見てみた。そうしたら,これがマジで素晴らしい出来である。この時のライブの音源がリリースされた時にも,私は「どの歌唱にもリスペクトが感じられる」と書いた(記事はこちら)が,映像で見ると,そのリスペクト具合がよりヴィヴィッドに伝わってきて,感動してしまったのである。

どの歌唱も真剣にJoniの生誕75周年を祝うだけでなく,彼女へのリスペクトが如実に表れているのである。マジでチャラチャラしたところは皆無であり,ステージに立ったミュージシャンがそれぞれ真剣に取り組んでいる姿が捉えられていて,私は映像を見ながら大いに感動していたのであった。CD音源の時にも,お祭り騒ぎにするよりも,こうした取り組みの方が好ましいと思ったが,それこそ出演している歌手陣,伴奏陣は極めて誠実かつ真面目にこのライブに取り組んだことが手に取るようにわかってしまうのである。

DVDにはCDに収録されなかった音源も入っているが,それにも増して,ここに参加したミュージシャンの取り組みを見るだけで感動できることを保証したい。私が特に映像版で素晴らしいと思ったのがDiana Krall。本当にJoni Mitchellの音楽への敬愛をにじませた素晴らしいパフォーマンスであった。

そして,先日Chick Coreaとのライブを観た時も思ったが,Brian Bladeは本当に楽しそうにドラムスを叩く。そしてそれが的確な演奏なのだから,やはりこの人半端ではない。

いずれにしても,いいものを見せてもらった。私は音楽については映像よりも音源指向だと思うが,これに関しては,映像の凄さがCDを上回った稀有な事例として挙げたい。こんな映像を見せられたら星★★★★★以外ありえない。DVDはリージョン・フリーなので,さぁ皆さん,これは買いましょう(笑)。

2019年4月20日 (土)

これまた久々に聞いたTom Jans。いいねぇ。

Tom-jans "The Eyes of an Only Child" Tom Jans(Columbia)

私はブラックホークの99枚として挙げられているアルバムの中でも,アメリカ,カナダ系のシンガー・ソングライターの音楽がずっと好んできた。それはジャズを聞き始めるのとほぼ同時期からだったようにも思うが,どちらかと言えば,SSWのアルバムでも渋いアルバムを偏愛してきた。このTom Jansのアルバムは,そうした中では渋さというよりも,ややロック・フレイヴァーの強い中での,曲のよさにずっと魅かれてきたアルバムである。今では本作もCDで簡単に手に入るというのが日本というマーケットの凄いところであるが,私は本作については長年LPで聞いてきたが,CDで改めて購入するところまではいっていない。でも相当好きなアルバムであることは間違いない。

上述の通り,このアルバムのよさはTom Jansの書く曲の質の高さにあるが,それに加えて,Lowell Georgeをエグゼクティブ・プロデューサーに据え,「その筋」のミュージシャンが集結した感のあるタイトなバッキングも実に魅力的。そしてこのジャケである。ジャケの暗い部分には煙草を片手に座り込む子供の姿が...。今の時代であれば許されないであろうこうしたジャケには時の流れを感じさせるが,何とも雰囲気のあるジャケットではないか。音楽とジャケが相俟って強い印象を残すというアルバムなのである。B面に入って,1曲目の"Out of Hand"からカントリー色が強くなり,やや感覚が異なってくるが,それでも本作は全編を通して実に楽しめるもので,私をSSW系アメリカン・ロックの道に誘ったものの一枚と言ってもよい。ラストに収められたタイトル・トラックなんて実にしみるねぇ。

Tom Jansは1983年には交通事故により腎臓に重傷を負い,更にはドラッグのオーバー・ドーズで1984年に36歳で亡くなってしまったが,生前彼のアルバムが売れることはなかったとしても,今でも彼の音楽は魅力を放っている。星★★★★☆。やっぱり好きだなぁ,これ。

Personnel: Tom Jans(vo, g, p), Bill Payne(p, synth), Mike Utley(org), Fred Tackett(g), Lowell George(g), Jesse Ed Davis(g), David Lindley(g, slide-g), Jerry McGee(g), Colin Cameron(b), Chuck Rainey(b), Jeff Porcaro(ds), Jim Keltner(ds), Harvey Mason(ds), Sam Clayton(congas), Valerie Carter(vo), Lovely Hardy(vo), Herb Pedersen(vo)

2019年3月27日 (水)

どの歌唱にもリスペクトが感じられるJoni Mitchell生誕75周年記念コンサートのライブ・アルバム。

_20190324_1"Joni 75: A Birthday Celebration" Various Artists(Decca)

私のブログのカテゴリーにはJoni Mitchellというものがある。ミュージシャン単位でカテゴリーとなっているのはJoni MitchellとBrad Mehldauだけだが,それほど私はJoni Mitchellの音楽が好きなのである。そんな私が彼女の生誕75周年記念のトリビュート・コンサートが開催されることを知った時には,それこそ臍を噛む思いをしたわけだが,その時の模様がこうしてライブ・アルバムとしてリリースされることは実にありがたい。

それはさておきである。ここには相応に豪華なメンバーが揃っているのだが,Joni Mitchellへのトリビュートということであれば,更に豪華なミュージシャンが揃ってもいいように感じるというのも正直なところである。しかし,ここに収められた各々のミュージシャンによる歌唱,演奏を聞いていれば,まさに本当のリスペクトが込められており,妙にお祭り的にチャラチャラしたところがないのが実に素晴らしい。

歌われるのは,Graham Nashが"Our House"を歌う以外は,Joni Mitchellのオリジナルである。しかも"Nothing Can Be Done"と"The Magdalena Laundries"以外は70年代のレパートリーであり,やっぱりこうなるわねぇって感じの選曲である。どれも魅力的な歌唱だが,私にとって意外なほどの魅力を感じさせたのがSealによる"Both Sides Now"だろうか。Sealはある意味クセのある歌い手だと思っているが,ここでの歌唱は,ある意味ベタな選曲である「青春の光と影」を非常にストレートに歌っていて,Joniへのシンパシーを強く感じさせるのだ。正直これには驚いたが,実にいい歌いっぷりであった。本作では貫禄のChaka Khanもいいが,更にいいのがRufus Wainwrightのように思えた。正直言って,Graham Nashの聴衆に歌わせるという演出はあまり好かんが,歳の割には結構声が出ている。その一方で年齢を感じさせるのがKris Kristoffersonだが,彼のデュエット相手であるBrandi Carlileが補ってバランスを保っている。James Taylorがいいのは当たり前だが,いずれにしても,全曲捨て曲がないって感じなのが素晴らしい。

これだけのクォリティを維持したのは,このコンサートのプロデューサーを務めたBrian BladeとJon Cowherdの功績と言ってもいいかもしれない。彼らが,ここに登場したミュージシャンの選定を行ったのだとすれば,まさに適材適所,あるいはちゃんとわかっている人間だけを選んだって感じが素晴らしいのだ。更にScarlet Riveraなんて懐かしい名前を見つけたのも嬉しかった。

残念ながら,現在モルジェロンズ病(ある種の精神疾患と言ってよいだろう)を患っていて,音楽活動を行うことはままならないため,本作においても歌ってはいない。ライナーにはステージには立ったことを示す写真が掲載されているが,彼女が歌っていようがいまいが,ここで聞かれる歌唱,演奏を聞けば,彼女の偉業を振り返るには十分なクォリティを保っていることは特筆に値する。やはり曲の持つ力が偉大だというのが一番だとしても,こうしたパフォーマンスを引き出すJoni Mitchellの磁力ってものを強く感じた私であった。これはやはりDVDも買わなきゃねって思わせるに十分。尚,日本盤にはDiana Krallによる"For the Roses"がボーナス・トラックで付くらしいが,私は輸入盤でも十分楽しんだことは言うまでもない(でもちょっと聞いてみたい...)。ここに参加したミュージシャンへの感謝も込めて,星★★★★★としてしまおう。

Recorded Live at the Music Center, Los Angeles on November 7, 2018

Personnel: La Marisoul(vo), Chaka Khan(vo), Diana Krall(vo, p, rhodes), Rufus Wainwright(vo), Glen Hansard(vo, g), James Taylor(vo, g), Seal(vo), Graham Nash(vo, p), Kris Kristofferson(vo, g), Brandi Carlile(vo), Norah Jones(vo, p), Emmylou Harris(vo), Steve Berlin(clave, key), Cesar Castro(requinto jarocho, quijada), Xochi Flores(tarima), David Hidalgo(leona, g), Louie Perez(jarana, g), Ambrose Akinmusire(tp), Brian Blade(ds), Jon Cowherd(p, rhodes), Jeff Haynes(perc), Greg Leisz(g, pedal steel), Marvin J. Sewell(g), Bob Sheppard(sax), Christopher Thomas(b), Ricky Rouse(g), Eve Nelson(p),Scarlet Rivera(vln)

2019年2月12日 (火)

S&Gの再編ライブを改めて。

"Old Friends: Live on Stage" Simon & Garfunkel (Columbia)

_20190210先日,フィギュア・スケートの中継を見ていて,米国のJason Brownがフリー・スケーティングでS&Gの曲を使っていたので,ついつい懐かしくなって聞いてしまったアルバムである。

彼らが日本公演を行ったのはもう10年前になってしまうのかって思うと,時の流れの早さを感じざるを得ないが,あのライブは本当によかった。私がこれまで見たライブの中でも記憶に残るものの一つである。正直言うと,その時のライブは東京では当初東京ドームだけで開催されることになっていたのだが,誰がどう考えたって,S&Gにはスタジアム級のヴェニューは合わないだろうと思っていた。だから武道館の追加公演が発表された時は,チケット代は高くても行こうと決意した訳だ。だが,実はそのライブに行く前に,このアルバムを聞いていて,結構不安はあった。

正直言って,このアルバムに収められた演奏は褒められたものではない。ヴォーカルは粗いし,初めて聞いた時から,いいと思えた記憶がなかったからだ。だから,ライブの場で想像以上にいい演奏を聞かせてもらって,このアルバムの印象から,ライブにも正直なところあまり期待していなかった私が感涙にむせんでしまったのも当然なのだ。どう考えても,あのライブは想定外のよさだった。

そして,改めて何年かぶりにこのアルバムを聞いてみても,やっぱりこれはよくない。声の出ていないところがやはり厳しいのだ。Paul SimonもArtieも両方なのだ。武道館の時はちゃんと歌えていたものが,ここではかなり覚束ない。ライブより5年前の演奏であるにもかかわらずである。バックはかなりのメンツを集めているが,歌そのものが勝負どころの二人だと思うと,やっぱりこのアルバムはダメだ。これを聞くならセントラル・パークのライブを聞いてる方がはるかにましってことで,私はちっともこのアルバムを評価できないままだということがよくわかった。星★★。金儲けに走ったなって感じさせるだけ。だからと言って,武道館で見た彼らのライブの印象が悪くなることは一切ないが(きっぱり)。

Personnel: Paul Simon(vo, g), Art Garfunkel(vo), Mark Stewart(g, cello), Larry Saltzman(g), Warren Barnhardt(p), Rob Schwimmer(key, theremin), Pino Palladino(b), Jamey Haddar(perc), Jim Keltner(ds)

2018年12月10日 (月)

またもユーミン。今日は「悲しいほどお天気」。

「悲しいほどお天気」 松任谷由実(東芝EMI)

_2018120812月に入り,新譜もそうは入ってこないってことで,なぜかユーミンをプレイバックする機会が増えているのは,単なる気まぐれなのだが,今日は「悲しいほどお天気」である。

このアルバムは結構地味な感じがするのだが,ユーミンのファンの中ではこのアルバムが結構好きな人がいるのではないか?ライブでも定番のように演奏されていた(と言っても,彼女のライブなんて何年も見たことはないので,現在はどうかは知る由もないが...)"DESTINY"のような人気曲もあるが,印象的な佳曲の多いアルバムだと思っている。そして,各々の曲に英語タイトルがついているのが面白いが,ちゃんと歌詞と連動したタイトルになっていて,なるほどねぇと思わせる。

  1. ジャコビニ彗星の夜(The Story of Giacobini's Comet)
  2. 影になって(We're All Free)
  3. 緑の町に舞い降りて(Ode of Morioka)
  4. DESTINY
  5. 丘の上の光(Silhouetts)
  6. 悲しいほどお天気(The Gallery in My Heart)
  7. 気ままな朝帰り(As I'm Alone)
  8. 水平線にグレナディン(Horizon & Grenadine)
  9. 78
  10. さまよいの果て波は寄せる(The Ocean And I)

冒頭の「ジャコビニ彗星の夜」からして,しっとりしたいい曲だが,2曲目の「影になって」なんて,メロウ・ソウルっぽいアレンジも決まっていて,心地よいのだ。そして爽やかな感覚の「緑の町に舞い降りて」の後に来る"DESTINY"の曲調は,ある意味このアルバムの中では浮いている。このディスコ的な感じを持つベース・ラインも現れるノリのよいバックの演奏に対して,歌われる歌詞の暗いことよ(笑)。だって,「冷たくされていつかは見返すつもりだった それからどこへ行くにも着かざってたのに どうしてなの 今日に限って やすいサンダルをはいてた」って凄い歌詞だよねぇ。このギャップが強烈なのだ。それに続く「丘の上の光」との曲調の落差も大きい。

LP時代ならばB面に移ってからの構成もA面と似ている感じがする。A面の"DESTINY"に相当するのが"78"ってことになるが,上田正樹がアレンジを担当したバックのコーラスが,ほかの曲との違いを際立たせている。タイトル・トラック「悲しいほどお天気」というしっとりした佳曲で始まり,「気ままな朝帰り」に聞かれる「家なんか出てしまおう」の部分のフレージングや歌いっぷりなんて,おぉっ,ユーミン的って思わせるのも微笑ましい。「水平線にグレナディン」なんて高水健司のベース・ソロが入るというのも珍しいが,「海を見ていた午後」を彷彿とさせる。そこへタロットをテーマにした"78"は"DESTINY"同様の異質感があるのだ。アルバムの構成にメリハリをつけるという点では,まさにメリハリがついているのだが,メリハリつき過ぎって感じもする。そして最後が「さまよいの果て波は寄せる」だもんなぁ。Eaglesの"Hotel Claifornia"で言えば,"Last Resort"的なエンディングって感じ。

これも実は久しぶりに聞いたのだが,それでもやっぱり好きだなぁ。

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