カテゴリー「ソウル/R&B」の記事

2008年11月15日 (土)

Mavis Staplesの新作は熱いライブ盤

Mavis "Live: Hope at the Hideout" Mavis Staples(Anti)

音楽の秋である。次から次へと気になる新譜が発売されて,財布の紐がゆるくなり,気がついてみれば財政難に陥りがちな今日この頃であるが,本日はMavis Staplesである。

Mavis Staplesと言えば,前作"We'll Never Turn Back"は昨年のベスト・アルバムにも挙げた大傑作(前作のレビューはこちら)であった。それに続く新作とあれば当然期待が高まってしまうのだが,結果はどうか。

Mavis Staplesだけに当たり前と言えば当たり前なのだが,これが非常に熱い。そしてバックバンドのギター・トリオはかなりの実力者で,特にギターのRick Holmstromは大技とかギミックはないのだが,ツボをおさえた伴奏は大したものである。このバンドは聞き物である。

しかしである。ライブ盤だけに熱い演奏というのはまぁ予定調和と言えばその通りであって,この盛り上がり具合はライブハウスという環境をしても当然である。ただここでのMavis Staplesの気合は逆に考えれば力み過ぎってことにはならないだろうか。そんなにこぶし回さなくたっていいじゃないかとも思ってしまうのである。演奏としては結構楽しめはしても,ちょっとここまでやられると疲れるというのが正直なところである。

Mavisはここまで力まなくてもちゃんと歌えることは前作でも立証されているのだから,そうした余裕というかレイドバック感を感じさせてくれれば,このライブはもっといいものになっていたように思えてちょっと惜しい。ちょっと甘めの星★★★☆。

Recorded Live at the Hideout on June 23, 2008

Personnel: Mavis Staples(vo), Rick Holmstrom(g), Jeff Turmes(b), Stephen Hodges(ds), Yvonne Staples(vo), Donny Gerrard(vo), Chavonne Morris(vo)

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2008年11月 5日 (水)

John Legend:より広範なリスナーへの訴求を狙った新作

John_legend_2 ゛Evolver゛ John Legend(Columbia)

私は現代ソウル/R&Bの王道を突き進む存在としてJohn Legendを高く評価してきた。このアルバムはスタジオ録音としては久々になるが,今年の春には素晴らしいライブ"Live from Philladelphia"(紹介記事はこちら)が発売されていたので,渇望感はそれほどなかった。とは言え,今後のソウル界を担う存在であること間違いない彼の新作が出たということ自体めでたい。

今回もこれまで通り,Kanye Westとの共同総合プロデュースではある。しかし,これまでとジャケットの雰囲気が違っているので,店頭で見たときはJohn Legendとは思わなかったぐらいだが,音も随分これまでと感じが違う。よくよく見てみるとプロデューサーは山のようにいる。今回収められている曲が悪いというのではないのだが,かなりポップなイメージが強くて,音楽のタイプも雑多なのである。これは更なるポピュラリティの確保を図ってのことだと思うのだが,私としてはポップさやコンテンポラリーな響きでなくてもこの人は勝負できると思っているだけにやや微妙である。確かにタイトル「進化する者」というのには偽りはないとしてもである。これは完全に好みの問題である。

私はやはりこの人にはダンス・フロア向きの音楽よりも,スイートなクルーナー路線を歩んで欲しいのである。これが彼の次なる「進化」への一つの糧だとして考えればいいのであろうが,それでもこれはちょっと行き過ぎのような気がする。アルバム後半は比較的これまでの路線に近いところもあるから,私としては後半ばかりを聞くことになりかねないアルバムである。ただ,このアルバムをプレイバックするなら私はライブ盤の方を優先するだろう。まぁ次作に期待するということにしようということで,星★★★。

それにしてもブックレットのミュージシャンのクレジットは文字が小さ過ぎて私の目では全く対応できない。虫眼鏡を使わないと見えないようなクレジットってのはちょっと問題があるなぁ。私が年を取り過ぎたせいもあるのかもしれないが,もう少し消費者のことを考えて欲しいものである。よって,いつもは書いているPersonnelについては記述不可能である。

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2008年9月 5日 (金)

Leon Ware,68歳にしてこのスイートさは何だ!

Leon_ware_2 ゛Moon Ride゛ Leon Ware(Stax)

Leon Ware,当年とって68歳である。この年齢にしてこのメロウなグルーブを生み出すこの人の頭の中は一体どうなっているのだろうか?

Leon Wareと言えばMarvin Gayeの゛I Want You゛というのが相場になっているらしいのだが,私のように予備知識なしで聞いている人間にとっては,はっきり言ってそんなことはどうでもよいと思えるほど,このアルバムはスイートな響きに溢れていて,思わず枯れた人間でもスケベなことを考えたくなるような「発情系」音楽である。

ここに収められた音楽とは全く関係のない話であるが,自分が68歳という年齢に達した時,こうしたメロウでスイートな感覚を持ち得るかと言うとそれは難しいことのように思う。この音楽を聞いていると人間性あるいは更に遡ってDNAの組成の違いを強く感じると思わざるをえないが,それにしてもである。いやいや私はこのグルーブに頭がくるくるするような思いをしながら,思わず聞き惚れてしまった。星★★★★☆。今年のソウル系のアルバムではAl Greenがダントツだと思ったが,このアルバムも暫くはヘビー・ローテーション確実である。たまらん。詳しいデータはまた別途アップしたい。

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2008年9月 4日 (木)

イカす70年代黒人アクション映画主題歌集

Pimps "Pimps, Players & Private Eyes" Various Artists (Warner Brothers)

先日,このブログでのIsaac Hayesの追悼記事で,彼を追悼するにはオリジナル「シャフトのテーマ」をおいてほかにないと書いたが,そのために同曲を収めた70年代黒人映画音楽のコンピレーション盤を久々に聞いてみたらやっぱりよかったので,今回ちゃんと紹介をすることにした。

このアルバムはラッパーのIce Tがプロデュースの一翼を担っているのだが,もともと彼がテレビで放映していた゛Trouble Man゛のMarvine Gayeによるテーマ曲が最高だっ!とかいう話をもう一人のプロデューサーに電話したことからこのコンピの製作につながったらしいから,まさしくミュージシャンらしい乗りと言える。まぁIce Tと言えば,役者としても活躍しているから,70年代の黒人映画にはそれなりの思い入れもあったのだろう。

それにしてもよく揃えたものである。何本か日本未公開の映画も含まれているが,日本でも結構こうした映画が公開されていたことがわかって面白かった。公開されたものでは゛Across 110th Street":「110番街交差点」という比較的まともな邦題や,「黒いジャガー」シリーズである"Shaft's Big Score゛:「黒いジャガー シャフト旋風」や゛Shaft in Africa":「黒いジャガー アフリカ作戦」はさておき,゛Toruble Man゛:「野獣戦争」や"Cleppatra Jones゛:「クレオパトラ危機突破 ダイナマイト諜報機関」,なんて一体どうやったらこういう邦題が思いつくのかと考えるだけで笑えてしまう。

しかし,そんなことは関係なく,ここに収められた音楽の数々は無条件にイカしている。Curtis Mayfieldが音楽を担当した゛Superfly゛からは゛Pusherman゛が入っているものの,何でタイトル・トラックが入っていないのだという声もあろうが,それは本家のアルバムで聞けばよいのであって,こうした曲が集められたコンピレーションだからこその魅力もあるのである。これをいちいちサントラ全部を集めていたらそれこそ大変なのだ。そういう意味で70年代(それも前半)を彩った黒人アクション映画の代表的な音楽が楽しめるアルバムは,ジャケットのセンスはさておき,より多くの人に知ってもらいたい。Marvin Gayeも素晴らしいが,やはり「シャフトのテーマ」は最高にカッコよかった。星★★★★★。1991年に発売されたこのアルバムがまだ廃盤になっていないということは,やはりそれなりのニーズがあるということであるし,こうした音楽に魅力を感じるリスナーは多いということだと思う。

余談だがこのアルバムのタイトルにあるPimpsとはポン引き,Playersとは(おそらく)プレイボーイ的な遊び人,Private Eyesとは私立探偵のことである。映画の内容を何ともストレートに表しているのがまたまた笑える。映画も見たくなってしまったなぁ。相当くだらないものもありだろうが...。

Personnel(Compiled Artists): Bobby Womack & Peace, The Impressions,  The Four Tops, Marvin Gaye, Isaac Hayes, Millie Jackson, Willie Hutch, D.C. Smith, Curtis Mayfield

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2008年8月29日 (金)

追悼:Isaac Hayes

Hayes ある雑誌を読んでいたら,そこにIsaac Hayesの訃報が掲載されていて驚いてしまった。死因は不明ながら68歳というのはちょっと若過ぎる死である。

私はHayesの熱心なファンというわけではなく,今も昔もHayesと言えば゛Shaft゛なのである。「黒いジャガー」という邦題を持つこの映画で,Richard Roundtreeの登場とともに流れる「シャフトのテーマ」の格好よかったこと。子供心にワクワクしたのも懐かしい。振り返ってみれば,私とソウル/R&Bとの出会いはこの「シャフトのテーマ」だったと言っても過言ではないのである。

この真っ黒けな感覚を出すにはそれなりのエネルギーが必要だったのだろう。ここに掲げたWattstaxでのライブ盤での写真を見ても,脂ぎった黒さを感じさせるではないか。

Pimps こうしたHayesを追悼するには,私としてはやはり「シャフトのテーマ」しかないのである。Wattstaxのライブ盤に収められた同曲でもいいのだが,ここは黒人アクション映画のテーマ曲ばかりを集めたナイスなコンピレーション盤゛Pimps, Players & Private Eyes"(それにしても凄いジャケである)に収められたオリジナル「シャフトのテーマ」でIsaac Hayesを追悼し,彼の冥福を祈りたい。Isaac Hayes,きっと冥界でも真っ黒なんだろうなぁ。

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2008年7月14日 (月)

Sade:次回作はいつになるのか

Sade "Lovers Rock" Sade(Epic)

何ともSadeらしいタイトルのアルバムである。そしてファンの期待に応え,Sadeの音楽のイメージを崩していないところが立派である。2000年にリリースされたこのアルバムが今のところ,Sadeの最新スタジオ・アルバムのはずだが,それを考えれば何とも寡作な人たちである。何てたって1984年のデビュー以来およそ四半世紀になろうと言うのに,オリジナルのスタジオ盤は5枚しかない。しかもこのアルバムがリリースされてからもはや8年である。しかし,米国出張中に聞くスムーズ・ジャズ専門FM曲ではSadeが掛からない日はないと言ってもよいぐらいだから,そんなにリリースに間が空いたと思わせないのがこれまた大したものである。ある程度時間が経過しても彼らの音楽は普遍的なのだ。

このアルバムを聞いて冒頭の゛By Your Side゛からしてその曲のクォリティにノックアウトされること必至である。もはやこれは現代のスタンダードと言ってよい素晴らしい曲である。この1曲でアルバムとしてのペースはセットされ,あとはいつもながらのSadeワールドに浸るのみである。Sadeの魅力はもちろん,ヴォーカリストとしてのSade Aduの声に依存するところは大だとしても,彼女の魅力を最大限に活かす術を知っているバンド・メンバーもきっちりほめなくてはならないだろう。

音楽をカテゴライズすることにはあまり意味がないことは承知しているが,この音楽は何に分類すればいいのだろうか?ソウル?Sade Aduの声は確かにソウルっぽいが,音楽の全体感はソウルではないなぁ。ジャズ?もちろん,純粋ジャズ・ボーカルとは呼べないなぁ。ポップス?ポップな感覚はあまりないなぁ。ということで,これはあらゆるジャンルを超越したアダルト・オリエンティッド・ミュージックとしか呼べないのである。そうした観点でリスナーがやや年齢の高い層(高齢者ではない)と思われるスムーズ・ジャズ専門局がSadeを流し続けるのは当然なのである。

誤解をおそれずに言えば,ある意味この音楽は「清冽な空気」のような音楽である。刺激には乏しいが,流れていても決して害悪にはならないばかりか,流れていたらつい耳をそばだててしまうのである。例えば谷川岳の一の倉沢で吸う空気や立山室堂の空気が都会と違うのと当然な感覚であるが,そこに行けば必ず違いがわかるし,「うまい」と思わされる感覚にSadeの音楽は似ている。しかも,一聴して「あっ,Sadeだ」とわからせるこの個性。こういう人たちはなかなかお目に掛かれない。

私としてはサウンド・プロダクションから打ち込み臭さ(ドラマー不在もあるし,おそらくは意図的にそのようにプロデュースされているはずだが...)をもう少し減らしてくれて,より生音に近い感覚でやってもらうとなおよいのだが,それでもこれはよくできた大人のためのアルバムと評価してよいと思う。私のような中年はやはりたまに聞くとはまるが,逆にこの音楽が好きという若者がいると,それはそれで怖いようにも思えるなぁ。星★★★★☆。

Personnel: Sade【Sade Adu(vo), Andrew Hale(key), Stewart Matthewman(g, woodwinds), Paul S. Denman(b)】 with Leroy Osbourne(vo), Karl Vanden Bossche(perc), Janusz Podrazik(key), Andy Nice(cello), Nick Ingman(strings arr)

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2008年7月 3日 (木)

Al Green:これぞソウルの王道である

Al_green ゛Lay It Down" Al Green(Blue Note)

このゆるやか,あるいはたおやかと言ってもよいグルーブに満ちたアルバムを聞いて,私はまさにこれぞ「王道」と思ってしまった傑作アルバムである。

Blue NoteでのAl Greenと言えば,2003年の"I Can't Stop゛もよかったが,このアルバムは適材適所というか,Al Greenへのリスペクト全開のゲストたちの好演もあって,私としてはそれを上回る出来になったと言ってしまおう。だって,Anthony HamiltonにCorrine Bailey RaeにJohn Legendだ。みんな私が次代を担うソウルの逸材と思う人たちばかりである。その彼らが全身全霊でサポートしているのだ。悪いはずがないではないか。

難しいことは考える必要はない。Al Greenの声とこの素晴らしいソウルのグルーブがあれば,私はしばらくほかのソウルのアルバムは必要としない。繰り返す。これこそ「王道」である。今年のベスト・アルバム入り間違いなしの超傑作。星★★★★★以外にはありえない。たまらん。

Personnel: Al Green(vo), Anthony Hamilton(vo), Corrine Bailey Rae(vo), John Legend(vo), Chalmers "Spanky" Alford(g), James Poyser(org, p, key), Adam Blackstone(b), Ahmir "?uestlove" Thompson(ds), Jaguar Wright(vo), Mercedes Martinez(vo), Neal Sugarman(ts), Ian Hendrickson-Smith(bs), David Guy(tp), Randy Bowland(g), Owen Biddle(b), Gabriel Roth(b), Homer Steinweisee(ds), Danny Sadowick(perc), Larry Gold(strings arr)

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2008年5月27日 (火)

Billy Prestonのライブがバージョン違いを収録して復活

Billy_preston "Live European Tour゛ Billy Preston(A&M)

このアルバムが以前CDで再発された時に収められていたバージョンは米国版だそうである。それはまともなマスター・テープがそれしか残存していなかったかららしいのだが,今回はそれにオリジナルで発表された英国版の曲も追加収録しての再発である。しかも紙ジャケだけではなく,最近はやりのSHM-CD方式である。そうした点を踏まえれば,これはお買い得と言ってよいが,前回の再発盤を買った身としてはやや切ないのも事実。それでも迷うことなく購入である。ただし,UKバージョンはやはりマスター・テープがないらしく,LPからの音源起こしになっているようなので,音にはやや難があるが,それでもこの再発は貴重である。

私はBilly Prestonが結構好きで,Appleレーベルやその他の作品もいくつか保有しているが,彼のよさはやはりこの何とも言えずソウルフルなボイスということになろう。もちろん,Beatlesのバックでも聞かせたキーボードも素晴らしく,その両方を楽しめるのがPrestonのよいところである。ここでも聴衆を乗せる術を心得たPrestonの快演が聞かれる。この演奏,Rolling Stonesの前座での演奏らしいのだが,前座でこんな演奏されたら困るだろうなぁと思わせるほど,聴衆を乗せている。大したものである。

ここでの演奏に関しては詳細のクレジットがないので,参加メンバーは不明ながら,リード・ギターは当時Stonesに在籍中のMick Taylorが客演し,鋭いプレイを連発している。前座,本チャンで弾きまくるTaylorの体力やこれまた大したものと言わざるをえないが,それでもあくまでも主役はBilly Prestonである。Beatlesで名を売ったPrestonゆえ,"Day Tripper゛や゛Let It Be゛に゛Get Back゛なども演奏している。まぁそれが「素晴らしい」かと言えば,必ずしもそうでもないし,演奏にも粗い部分も多々あるが,このアルバムで重要なのはあくまでも「乗り」であるから,細かいことには目をつぶることにしよう。星★★★★。

Recorded Live in 1973

Personnel: Billy Preston(vo, key), Mick Taylor(g)

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2008年4月24日 (木)

Princeのオーバー・プロデュースが顕著なMavis Staples作品

Mavis ゛The Voice" Mavis Staples (Paiseley Park)

私はMavis Staplesの゛We'll Never Turn Back"を昨年のベスト・アルバムの一枚に加えているが,Ry Cooderの素晴らしいプロデュースと助演とも相俟って,Staplesが最高の歌唱を聞かせていたと思う。そのMavis Staplesが一時期Princeと共演していたというのは今となっては信じ難いが,本作ではそのPrinceが製作総指揮に当たっている。私はPrinceをある程度評価しているので,StaplesがPrinceと共演するとどういうことになるかという興味だけで中古で拾った一枚である。

結論から言えば,Princeがからんだファンク・アルバムとしての出来は悪くないのだが,これは歌い手がMavis Staplesである必要がないアルバムのように思える。あまりにもPrince色に染まり過ぎなのである。これだけPrinceが作曲やプロデュースあるいは演奏に参加していれば,そうなっても仕方がないのかもしれないし,そこがPrinceの凄いところだと言えばそのとおりである。しかし,本作のタイトルではないが,私のようにMavis Staplesの「声」そのものが好きな人間にとってはやはりこれは行き過ぎである。

これに比べれば゛We'll Never Turn Back゛やJoe Henryがプロデュースした゛I Believe to My Soul"はMavisの声をしっかり活かしたものであるように思う。Ry Cooderでさえやり過ぎと言う評論家もいたように記憶するが,彼らはこのPrinceはどう評価すると言うのだろうか。いずれにしても私にはあまりにもToo Muchである。星★★。

参加ミュージシャンが多いので,Personnelは省略するが,目立っているのはPrinceとSanbornとも共演が多いRicky Petersen。親父のPops Staplesもバックグラウンド・ヴォーカルで参加しているが,きっとやりにくかっただろうなぁ。

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2008年4月22日 (火)

こりゃ驚いた!Was(Not Was) 18年振りの新作

Was ゛Boo゛ Was (Not Was) (Rykodisc)

Was (Not Was)の新作が届いた。おそらく1990年の"Are You Okay?゛以来であるから18年振りのアルバムである。その間もDon WasはBonnie Raitt,Bob Dylan,The Rolling Stones等を手掛ける名プロデューサーとして名を馳せていたが,バンドとしては本当に久し振りである。実際にバンドとしての活動を再開したのは2004年ぐらいらしく,現在はツアーもやっているというのは信じられないが,まずはこのバンドの復帰を喜ぼう。

Was (Not Was)の音楽の特徴はさまざまな音楽が混在しているという点につきると思うが,これが本作でも全く変わっていないというか,録音が新しいテクノロジーでよりシャープになった以外,以前のWas (Not Was)のまんまである。一曲目からいかにもこのバンドらしい音が飛び出してきて,思わず笑みを誘う。少なくとも私が聞いた彼らの最後のアルバム,"What's Up, Dog?"と非常に近似性が高いように思わせ,まさに「三つ子の魂何とやら...」である。よって,今回もソウル,ファンク,ロック,フォーク等の要素がごった煮状態で,彼らのファンにとっては何とも言えない出来といえるだろう。

これが21世紀の現在において,どういうオーディエンスに受け入れられるかは疑問な部分もあるが,私は久し振りにWas (Not Was)を聞いて,非常に懐かしくも新鮮な気分に浸ることができた。下にあるようなゲスト陣がどういう仕事をしているかについてはもう少しよく聞いてみないとわからないが,まぁ昔からのファンは失望させられることはないと言っておこう。星★★★★。尚,゛Mr. Alice Doesn't Live Here Any More゛はBob DylanとDon & David Wasの共作である。

Personnel: Sweet Pea Atkinson(vo), Sir Harry Bowen(vo), Donald Ray Mitchell(vo), David Was(fl, hca, key, vo), Don Was(b, key, vo), David McMurray(sax), Randy Jacobs(g), Jamie Muhoberac(key), Luis Resto(key) with Kris Kristofferson(vo), James Gadson(ds), Curt Bisquera(ds), Lenny Castro(perc), Wayne Kramer(g), Booker T. Jones(org), Val McCullum(g), Greg Leisz(pedal steel), Marcus Miller(b), Tim Drummond(b), Portia Griffin(vo), Arnold McCuller(vo), Myrna Smith(vo), Sallly Dworsky(vo), Doc KLupta(bs), Lee Thornton(tp), Rayse Biggs(tp)

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2008年3月23日 (日)

John Legendのライブ盤は何としてもゲットしよう

John_legend_live "Live from Philladelphia" John Legend (Columbia)

以前,Herbie Hancockの"River"の記事を書いていて,特定ショップ限定のボーナス・トラックがある場合については話をしたが,このアルバムはアルバムそのものがTargetストアだけでの限定販売(WebサイトによればCD版は$9.98である。)されているものである。このアルバムがあるCDショップを通じて日本でも容易に入手できたのは大変ありがたいことである。

私はJohn Legendを高く評価していて,彼の2ndアルバムについて,当ブログ開設間もない頃「2ndも素晴らしいJohn Legend」として記事をアップしている。そこでも「今後のソウル界を担う男性ボーカリストはJohn Legendをおいてほかにない」とまで言い切ってしまっているが,その気持ちには今でも変わりはない。そのLegendのライブ盤であるから期待値が高いのは当然である。

それでもって結果はどうか。期待通りである。多少ヴォイスや歌唱に危うい部分が感じられるところもあるし,演奏にも荒さはあるが,選曲バッチリ,グルーブ系とスイート系のバランスも最適,ついでに私がひいきにするCorrine Bailey Raeがデュエット・パートナーとして登場(おそらく前座を務めたのが彼女であろう)とあっては大満足である。変わったところではBeatlesの"I Want You (She's So Heavy)"という意外な選曲もあるのだが,これがまた結構いけているのである。私としてはソウルのライブ盤かくあるべしとも思ってしまうようなナイスなアルバムである。星★★★★☆。いやいや楽しめました。それにしてもよい曲を書く御仁である。

まぁジャケの写真が泉谷しげるかどこかの漫才師みたいだという指摘もあるかもしれないが,男と音楽は顔ではない!(きっぱり)←ブログのお友だち,すずっくさんみたいになってしまった(実は意図的)。(爆)←すずっくさんみたい第2弾。また,蛇足ながら,John Legendに導かれて,聴衆が一緒に歌っているが,この中に音痴な女性がいてずっこけるのはご愛嬌である。

いずれにしても,こんなアルバムが一般流通ルートに乗ってこないというのはある意味不幸なことである。心あるソウル/R&Bファンは何としてもこのアルバムをゲットするべきである。さぁ,売ってるショップへ走れ!どこで売ってるかわからない?私に聞いて下さい。

Personnel: John Legend(vo, p), Corrine Bailey Rae(vo), Chris "Swiss Chris" Flueck(ds), Sharief Hobley(g), Kenneth Wright(b), Josh Valleau(key), Eugene "Man Man" Roberts(key), Steve Tripak(tp), Aaron Goode(tb), AAllen "Bizkit" Arthur(sax), Tara Michel(vo), Jessica Wilson(vo), Vaughn Anthony(vo)

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2008年3月 7日 (金)

なんともミスマッチなIsley Meets Bacharach

Isley_meets_bacharach "Here I Am: Isley Meets Bacharach" Ronald Isley & Burt Bacharach (DreamWorks)

先日奇跡的な来日を果たした米国ポピュラー音楽界の真の巨匠,Burt Bacharachであるが,私は仕事の都合がつかず,今回のライブに行くことができなかったのは痛恨事である。おそらく,この先日本で彼のライブを見る機会はもうあるまい。返す返すも残念である。

このアルバムはそのBacharachがIsley BrothersのRonald Isleyとコラボレーションしたものだが,Bacharachのアレンジに乗って,Isleyが数々のBacharachヒットを歌い上げるという作品である。伴奏はどこから聞いてもBacharach節と言うべきものなのだが,IsleyとBacharachの相性は若干微妙である。Ronald Isleyの声はファルセットを交えたスイートなものだが,そのボイスも節回しもBacharachのメロディとの相性がいいとは私には思えないからである。やはり私にとってはDionne WarwickこそがBacharachメロディに相応しいように思えるのである。これだけの名曲が揃っているのに,Isleyの声ゆえに私にとっては何とも居心地が悪いこと甚だしい。

バックの演奏の質は非常に高いので,Ronald Isleyには悪いが,私はこのアルバムは,彼の声を抜きにしてカラオケで出してもらいたいぐらいである。それか誰か別のシンガーに置き換えてくれと言いたい。これに比べれば,意外の極致だったElvis Costelloの方がはるかにBacharachとは合っていた。そういう意味ではCostelloは偉い。Bacharachの伴奏に免じて星★★★。

余談ながらRonald Isleyは現在脱税の罪で収監中である。やっぱりそういうところも含めてバブリーなのよねぇ。

Personnel: Ronald Isley(vo), Burt Bacharach(p, arr, cond), Jim Cox(key), Rob Shrock(key), Neil Stubenhaus(b), David Coy(b), Harvey Mason(ds), Vinnie Colaiuta(ds), John Robinson(ds), David Crigger(ds), Dean Parks(g), Ted Perlman(g), Dan Greco(perc), Gayle Levant(harp), Warren Luening(tp, fl-h), Gary Grant(tp, fl-h), Dave Duke(fr-h), Phillip Yao(fr-h), Brian O'Conner(fr-h), Dan Higgins(reeds), JS-Kandy(vo), Kim Johnson(vo), Josie James(vo), Donna Taylor(vo) with Strings

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2008年2月 8日 (金)

懐かしのNY Rock & Soul Revueの実況盤

Rock_soul_revue "The New York Rock And Soul Revue: Live at the Beacon" Various Artists (Giant)

私にとって懐かしいアルバムである。今から17年前,私はこの会場にいたからである。私はこのアルバムに参加しているDonald Fagen(Steely Dan),Michael McDonald(Doobie Brothers),Phoebe Snowのアルバムについてはこのブログで取り上げてきたし,Boz Scaggsについても相当なファンと言ってよい。こうしたメンツが一同に会すること自体が私にとっては奇跡的であり,在NYC中の私がこのライブの告知を見て,チケットを買いに走ったことは言うまでもない。

この演奏が収録されたBeacon Theaterは確かBroadwayと72丁目当たりにあったと記憶しているが,随分と歴史を感じさせる造作ながら,手頃なキャパシティのホールで,こうしたメンツを見るにはちょうどよい場所だったと思う。そして,確かこのイベントは正確には"New York Rock And Soul Revue II"だった(少なくとも私が買ったTシャツにはそう書いてある。実はいまだにそれを着ている物持ちのいい私である)が,1回目がどこであったか,あるいは3回目以降があったのかは私は知らない。いずれにしても,Fagen(ピアニカを吹きまくっていた)はそれほどでもないが,その他のメンツが相当ソウルに影響を受けていることを実証したようなライブである。

現場では大いに盛り上がった記憶があるが,レコーディングされた演奏はまぁ普通というか,それほど特筆するようなものではない。結局のところ,これはお祭り的なセッションであり,あくまでもそうした観点で楽しめばいいように思う。それでもFagenとMcDonaldで歌われる"Pretzel Logic"にはわくわくしてしまうのは当然であるが,そんなメンツの中でソウル心を爆発させるPhoebe Snowが特に素晴らしいと私は思う。いずれにしても我が過ぎ去りし日の想い出盤ということで☆オマケで星★★★☆。

ちなみにExecutive ProducerはLibby Titusである。彼女が残したソロ・アルバムもよかったなぁ。久し振りに聞きたくなってきた。

Recorded Live at the Beacon Theater on March 1& 2, 1991

Personnel: Donald Fagen(vo,key), Michael McDonald(vo key), Boz Scaggs(vo), Phoebe Snow(vo), Eddie & David Brigari(vo), Charles Brown(vo, p), Jeff Young(key, vo), John Hagen(ts, vo), Drew Zingg(g), Lincoln Shleifer(b), Dennis McDermott(ds), Cornelius Bumpus(ts), Chris Anderson(tp), Danny Caron(g), Jimmy Vivino(g), Larry DeBari(g), Bob Gurland(vo-tp)

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2008年2月 3日 (日)

Babyface:値段は激安,内容バッチリ

Babyface "MTV Unplugged NYC 1997" Babyface(Epic)

中古盤をあさっていると思わぬお買い得盤に出会うことがある。それは私にとってのお買い得であって,マーケットでは供給過剰だからこその安値な訳だが,それにしてもこのCDは安かった。何てったって270円である。この値段なら外しても文句はない。これだから中古盤あさりはやめられないのである。

このアルバムは,おなじみのMTV UnpluggedシリーズにBabyfaceが登場した時のライブであるが,録音されてからもう10年以上経ってしまったというのがある意味では驚きである。だがジャケに写るNYCの夜景の中の今はなきWorld Trade Centerが燦然と光っているのを見ると時の流れを感じざるをえない。しかし,音は今聞いてもそんなに古臭いとは感じないし,ゲストも伴奏陣も結構豪華で楽しめるアルバムである。

私にとっては,冒頭の"Change the World"だけで270円の元は十分に取ったようなものである。客演するEric Claptonのギターは相変わらずの手癖ぶりだわ,契約の関係上Claptonのボーカルは消されているわと,問題と言えば問題のある演奏なのだが,それでもこの演奏のグルーブは素晴らしいのである。Claptonは2曲目の"Talk to Me"にも続いて客演するが,ここでのゆるいグルーブ感も楽しい。

しかし,このアルバム,Claptonばかりで語ってはもったいない。他のメンツも好演しているし,Stevie Wonderとの"Gone Too Soon"は素晴らしいバラードであり,思わずぞくぞくするような演唱である。これはもともとMichael Jacksonが歌っていたはずだが,私はこの曲に参ってしまった。人間としてはさておき,ミュージシャンとしてのMichaelの凄さを認識させられるような曲である。それに比べると最後の"How Come, How Long"は曲としてはしょぼく聞こえるというところはあるが,いずれにしても,Babyface,いい曲を書き,たまらないスイート・ボイスが爆発している。

繰り返すが,270円でこれだけ満足させてもらえば,私は十分満足であり,コスト・パフォーマンス含めて星★★★★☆。ちなみに,どなたかもブログで書いていたと思うが,この演奏で"Unplugged"は看板に偽りありである。全然アコースティックな演奏ではないので念のため。そういう点を差し引いてもよいものはよい。

Personnel: Kenneth "Babyface" Edmonds(vo,g), Bo Watson(key), Nathan East(b), Ricky Lawson(ds), Sheila E.(perc), Michael Thompson(g), Wayne Linsey(key), Tim Carmon(key), Reggie Griffith(g, key, sax), Kevon Edmonds(vo), Melvin Edmondsd(vo), Marc Nelson(vo), Shanice Wilson(vo), Beverly Crowder(vo), Lynne Linsey(vo) with Eric Clapton(g), K-Ci & Jojo(vo), Stevie Wonder(vo, key, hca)

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2007年12月31日 (月)

私も今年のベスト盤を...

いよいよ大晦日となった。世の中ではいろいろな方が今年のベスト盤をブログ等でも挙げておられるので,私もあやかって今年のベスト盤を考えてみたい。そもそも私が今年何枚のCDを買ったのかもはっきりしないのだが,純粋な新譜はあまり多くなかったような気もするし,そうした私が今年のベスト盤を語る資格があるのかというと疑問ではある。しかし,いろいろなジャンルの音楽を聞いてきて,私のヘビー・ローテーションとなったアルバムをいくつか挙げておきたい。必ずしもこのブログで紹介していないものや発掘ものも含まれているが,まぁそれはご勘弁願いたい。

別格:Michael Brecker "Pilgrimage"

ジャズ:Antonio Sanchez "Migration",Chris Potter Underground "Follow the Red Line: Live at the Village Vanguard",Dave Douglas Keystone "Moonshine"

ロック/フォーク/SSW:Neil Young "Live at Massey Hall 1971",Joe Henry "Civilians"

ソウル/R&B:Mavis Staples "We'll Never Turn Back", Chaka Khan "Funk This",Aretha Franklin "Rare & Unreleased Recordings from the Golden Reign of Queen of Soul"

ブラジル:Eumir Deodato "Ao Vivo No Rio"

そして私にとっての今年のMVPはFred Hersch以外はありえない。新作"Night & the Music"もよかったが,何よりもカザルス・ホールでの彼のライブが私の心を鷲掴みにしたのである。あまりにその演奏がよかったものであるから,今年の後半最も聞いたのは彼のアルバム群ということになってしまった。また,今年最も嬉しかったのはJoni Mitchellへのシーンへの復帰。アルバム"Shine"は悪くはないが,Wayne Shorterの不在は痛く,私が求めるレベルには達していなかったのは残念。しかし,彼女が戻ってきてくれたのは何よりも嬉しかった。また,見られると思っていなかったEgberto Gismontiのライブは今年起こった奇跡の一つ。

(オマケ)映画:「ボーンアルティメイタム」(劇場,飛行機で見たものの中で,一番面白かった。)

(オマケ)書籍:吉田秀一 「悪人」(結局この本が新刊では一番面白かったような...)

ということで,今年になって始めたこのブログであるが,いろいろな方とお知り合いになる機会も与えてくれたし,それなりに私としては満足している。本年は都合359本の記事で打ち止めである。ほぼ毎日よく続いたものだが,来年以降もできる限り同様のペースにて続けていきたいと思う。

それでは皆さん,よいお年をお迎えください。また,来年もご愛顧のほどをよろしくお願い致します。

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2007年12月27日 (木)

やっぱりDan Pennは渋い:男の中の男

Dan_penn "Moments from This Theatre" Dan Penn & Spooner Oldham(Proper Box)

以前このブログで「Dan Penn:渋さの極致」として,Dan Pennの"Do Right Man"を取り上げたことがあるが,このアルバムはそのDan Pennが盟友Spooner Oldhamと作り上げたデュオによるライブ・アルバムである。

これを聞いてやはり私には「渋い」という表現しか見つからないのだが,"Do Right Man"に輪を掛けた渋さなのである。Dan Penn自身のギターと,Oldhamのエレピだけという伴奏で展開される演奏,演唱を聞いてしまうと,もはやため息がもれざるをえない世界へ行ってしまっている。

これは枯淡の境地と言ってもいいのかもしれないが,二人だけで紡ぎあげたこの世界はほかのミュージシャンでは再現不能な世界である。完全に別次元。今思い起こしてみれば,この二人のNYCのボトムラインでのライブに接するチャンスが滞米中の私にはあったのだが,当時はDan Pennなんて知らなかった私の不明を恥じざるをえない。こんなライブなら一生一度ものであったのにと悔やまれる。

いずれにしても,私の人生において繰り返し聞かれるであろう作品として当然星★★★★★である。師走のせわしない時に聞くと本当にしみじみしてしまうアルバムである。素晴らしい。

Personnel:Dan Penn(vo, g), Spooner Oldham(el-p, vo)

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2007年11月24日 (土)

またまたRhino Handmadeから登場したAretha Franklinの未発表ライブ

Aretha_oh_me_oh_my "Oh Me Oh My: Aretha Live in Philly 1972" Aretha Franklin (Rhino Handmade)

Rhino HandmadeでのAretha Franklinと言えば,何と言ってもあのFilmoreライブ完全版(このブログでも「これぞ究極!Aretha Franklinフィルモア・ライブ完全盤」として取り上げた)であるが,またまた同レーベルから完全未発表ライブが出た。今度はシリアル番号付き7,500枚限定である。Arethaのファンは価格高騰の前にRhinoから仕入れなければなるまい。私がこれを注文してからデリバリーされるまで結構時間がかかってやきもきさせられたが,無事到着したのは大変めでたい。

さて,この演奏は全国のアナウンサーやDJが集まるコンベンションでのライブで,バックバンドもストリングスやホーンも入れてかなりの大規模なものとなっている。そうしたバックに乗って展開されるArethaの歌は最高である。ただ,大所帯のバンドを必ずしも活用しているとは思えないし,ドラマーがやや節操がないように聞こえるのが難点か。クレジットがないので,誰が叩いているのかわからないのだが,このドタバタした感覚はちょっとなぁという感じである。

よって,全体の評価からするとArethaの歌に星★★★★★,伴奏に星★★★,トータルで星★★★★ということになろうが,それでもこの演奏が貴重なことには変わりはない。Arethaファンは必ずゲットしなければならないアルバムである。

Recorded Live at the National Associationof Television & Radio Announcers Convenstion, Philadelphia in 1972

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2007年10月 5日 (金)

Mariah Careyのデビューから数年は本当に凄かった

Mariah ゛MTV Unplugged EP゛ Mariah Carey (Columbia)

今やかなり太ったオバチャンと化してしまったMariah Careyであるが,彼女のデビュー当時は本当にキュートなシンガーであったと思う。その容姿もそうだが,音楽的にもソウル/R&Bの枠を超え,ポップスの領域に入っていたのは事実である。私も90年代は相当彼女に入れあげていたものだが,それも今は昔。今やほとんど興味がなくなってしまった。しかし,彼女のデビューから数年間は,本当に時代の先端を走る歌手としての輝きがあったと思う。

その中で,私が今だにちょくちょく聞いているアルバムはこのMTV Unplugged出演時の記録である7曲入りのEPである。ここでのMariahは美貌も音楽もそのピークにあったと今でも思える素晴らしい歌唱の数々である。私がMariahに対する関心を維持できるのは今やデビュー・アルバムから本作までの3作だけである。

私は゛Daydream゛はまだしも,"Butterfly゛ぐらいになると,彼女の曲に魅力を感じなくなってきたわけだが,ここに収められている7曲は全く違う。今でもその曲の力は健在なのである。このアルバムには今でも私は躊躇なく星★★★★★である。素晴らしい。

私がMariahへの関心をなくしたもう一つの理由は,彼女の初来日公演(それ以降もだが)に,東京ドームという彼女の音楽性に全くマッチしない場所を選んだことにある。いかに人気絶頂であろうが,ミュージシャンには適切な箱があるはずである。それを見誤った彼女及びプロモーターの罪は大きい。彼女にはもっとIntimateな空間が適しているはずである。せめて武道館どまりにすべきであった。あるいはチケット料金を上げてでも,東京国際フォーラムAぐらいが適切だったはずである。あれで私は完全にガックリきてしまったのである。ということで,最近のアルバムは全然買っていない私である。

Personnel: Mariah Carey(vo), Walter Afanasieff(p), Dan Shea(key), Vernon Black(g), Randy Jackson(b), Gigi Gonaway(ds), Sammy Figueroa(perc), Ren Klyce(perc), David Cole(p) and Strings, Horns, and Chorus

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2007年10月 3日 (水)

Chaka Khanのナイスな新譜

Chaka_funk_this "Funk This" Chaka Khan (Burgandy)

Jam & Lewis総合プロデュースにして,"Funk This゛なんてタイトルを付けられたら,これは買わずにいられぬChaka Khanの久々の新作である。タイトルほど全編ファンクという感じではないが,これはナイスなソウル/R&Bアルバムである。

このアルバムはオリジナル曲といくつかのカバーから構成されているが,オリジナルも結構佳曲揃いながら,Jimi Hendrix,Prince,Michael McDonald/Carly Simon,そしてJoni Mitchell等を並べたカバーが注目されるところである。中でもJoni Mitchellの復帰と同期したようなJoni作゛Ladies Man゛のカバーは意表を突いているが,これが完全なソウル・ミュージックと化し,かなりよいのにはビックリした。Chaka KhanもJoni Mitchellへのシンパシーを示したということであり,Joniの影響力を改めて知らされる結果となった。

また,Doobie Brothers,Carly Simonのレパートリーである゛You Belong to Me゛(私がひいきにしているDoobie Brothersの゛Livin' on the Fault Line゛に収録されている)はもともとが佳曲であるが,Michael McDonaldを迎えてのこの曲は,McDonaldがもともとソウル系の影響が強いだけに,Chakaが歌唱してもおかしくはない曲である。ここでの出来は悪くはないが,McDonaldの歌唱の方がはまっているという感覚が強いのはやや残念。

そうした中で,このアルバムで一番よいのはMary J. Bligeのペン及び共演による゛Disrespectful゛である。この一曲はこれぞファンクと言うべき「乗り」を示していて嬉しくなる。これがやはり旬の歌手を迎えた強みというところである。

全体を通して聞けば,曲毎の出来にバラツキはあるものの,ファンク,バラードのバランスもよく,Chaka Khanが若干のブランクを経ても立派なソウル・ディーバであることを再認識させるアルバムである。Chakaのシーンへの復帰へのご祝儀も含めて星★★★★☆。

尚,米国の電気量販店であるCircuit Cityで販売されているこのCDには,同店だけのボーナス・トラックとして゛Let Go゛という曲が収められた全14曲となっているようなので,コレクターは要注意である。ちなみにコレクターではない私が入手したのは全13曲の通常盤。それにしても最近,Herbie Hancockの゛River゛のAmazonエクスクルーシブ盤と言い,こういうのが多いなぁ。米国での流通業の競争の厳しさを思い知らされる。

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2007年9月11日 (火)

Mavis Staplesの大傑作:Ry Cooderファンも必聴

Mavis_staples ゛We'll Never Turn Back" Mavis Staples (Anti)

日頃からまめにCDショップめぐりはしているつもりだが,この作品が「ミュージック・マガジン」に取り上げられるまで,全くこの作品を認知していなかったのが情けなるぐらいの傑作である。私の中ではNeil YoungのMassey Hallでのライブ盤と並ぶ本年のベスト盤の一つとなった。

何がよいか。Mavis Staplesがメッセージ性の高い曲をソウルフルに歌い上げるのも素晴らしいのだが,私は本作をプロデュースしたRy Cooderの手腕を評価するとともに,全編に渡って聞かれる彼のギター・プレイに痺れてしまった。ここまでギターを弾きまくってくれたのは本当に久し振りのことではないだろうか。これはソウル・ミュージックではあるが,バック・バンドの演奏はアメリカン・ロック的な響き(Jim Keltnerのドラムスがこれまたよい)に溢れていて私のようなアメリカン・ロック好きにはたまらない出来である。

確かにRy Cooder色が強過ぎるという指摘もあろうが,本作はMavisの素晴らしい歌唱とバック・バンドのいかした演奏のトータルな音楽として捉えればいいのであって,そうした指摘は意味を成さない。繰り返すが,私はこのアルバムが発売されてからほぼ5ヶ月の間,このアルバムを知り得なかった自分の不明を恥じざるをえない。それほど素晴らしいアルバムである。星★★★★★。

Personnel: Mavis Staples(vo), Ry Cooder(g, mandlin), Mike Elizondo(p, b), Jim Keltner(ds)), Joachim Cooder(perc), Ladysmith Black Mambazo(vo), Rutha Harris(vo), Charles Neblett(vo), Bettie-Mae Fikes(vo)

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2007年9月10日 (月)

豪華ゲストを迎えたManhattan Transferのカバー・アルバムは楽しく聞けるのだが...

Tonin_2゛Tonin'゛ The Manhattan Transfer (Atlantic)

最近はメンバーによるソロ活動が活発化しているManhattan Transfer(以下は親しみを込めてマントラと呼ぶ)であるが,私が彼らに対する興味を失ったのはいつ頃だろうか。最近はアルバムが出ても全く買わなくなってしまった。グループとしての実力は誰しも認めるところだろうが,やはりこういうグループゆえにマンネリズムに陥りやすいのも事実である。゛Vocalese゛のような冒険たっぷりな取組みばかりも続けられないだろうし,彼らとしても苦しいところである。

そんなマントラがArif Mardinプロデュースのもと,豪華ゲストを招いて制作した「起死回生の」ためのカバー・アルバムである。ゲスト陣がゲスト陣だけに相当の制作費をかけて吹き込まれたものであることは容易に想像できるし,なかなかに楽しい出来となっている。

しかし,このアルバム,楽しいことは楽しいのだが,マントラ色が希薄過ぎはしないだろうか。ゲストとリード・ボーカル・パートを分け合い,あとはマントラがバック・コーラスをつとめているだけのように聞こえると言ってしまうとそれこそ身も蓋もないが,そう感じさせるのも事実である。これはゲストが豪華過ぎるために,彼らに花を持たせなければならないという事情こそあれ,ややそれが行き過ぎたように思えるのは残念である。

そうした点を除けば,よく出来たポップ・ボーカル・アルバムであり,音としては相当楽しめる。それにしても,一音でそれとわかるギターのトーンで,曲を締めるB.B.Kingが入った゛Thrill Is Gone゛が素晴らしい。ついでに歌えばよかったのにと言ってはボーカルを務めたRuth Brownに失礼か。星★★★☆。

Personnel: The Manhattan Transfer; Cheryl Bentyne(vo), Tim Hauser(vo), Alan Paul(vo) and Janis Siegel(vo), with Frankie Valli(vo), Ferix Cavaliere(vo), Bette Midler(vo), Smokey Robinson(vo), Laura Nyro(vo), Phil Collins(vo), Ruth Brown(vo), B.B. King(g), Chaka Khan(vo), James Taylor(vo), Ben E. King(vo)

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2007年8月24日 (金)

Dan Penn:渋さの極致

Dan_penn "Do Right Man" Dan Penn(Sire)

ソウル・ミュージック界において,数々の名曲を残しているDan Pennが自らの曲を歌唱した渋いアルバム。この声にしてこの曲を歌われたら,私のようなアメリカン・ミュージック好きはメロメロである。なんてたって,冒頭から゛The Dark End of the Street"だ。

バックをMuscle Shoalsのミュージシャンと盟友Spooner Oldhamが固めたこのアルバムは,まさにアメリカン・ミュージックの良心と言っても過言ではない。極論してしまえば,このアルバムを聞いてこのよさがわからないという人はアメリカン・ミュージックへの嗜好にずれがあると言ってもよい。もちろん,音楽の質からして,若者にこのよさがわかるかと言えば,それは難しかろう。しかし,私のような中年にとっては,この音楽が与える落ち着き,渋さ,くつろぎはどの側面から見ても素晴らしい。まさしく,これはたまらない出来である。

このアルバムに多言は無用である。ソウル好き,シンガーソングライター好きの双方に両手を挙げて推薦する大傑作。だまされたと思って聞いてみて頂ければ幸いである。決して後悔することはないだろう。当然のことながら星★★★★★である。

Personnel: Dan Penn(vo), Reggie Young(g), Jimmy Johnson(g), David Hood(b), Roger Hawkins(ds), Florence Flash(ds), Spooner Oldham(org, p), Bobby Emmons(p), David Briggs(key), Carson Whitsett(key) and Others

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2007年6月21日 (木)

Chaka Khan:何と言っても"I Feel For You"である。

Chaka "I Feel for You" Chaka Khan(Warner Brothers)

何と言ってもPrince作のタイトル・トラックが最高のChaka Khanの1984年の作品である。Grandmaster Melle MelのラップとStevie Wonderのハーモニカに導かれてスタートするこの曲のカッコよさは一体なんだ!制作からほぼ四半世紀を経ても,それは全く不変である。これは凄い。

とタイトル・トラックにばかり興奮しているが,このアルバム,実は無茶苦茶金が掛かっているはずである。Arif Mardinの製作総指揮のもと,集ったプロデューサーはMardin以下9人もいる。バックに集ったメンツもかなり豪華である。ほとんど曲毎にプロデューサーが違うが,Mardinが最終的にしきっている(であろう)ため,アルバムとしての一貫性には問題はない。

このアルバムが目指したところは「ブアツい」バック・トラックにChakaのボーカルを乗せるということであり,ミックス的にもChakaのボーカルとサウンドの一体化を図っているかのように聞こえる。よって,Chakaのボーカルを楽しみたいという筋にはあまりおすすめできないアルバムとも言えるが,これはあくまでもそのような意図で制作されたサウンド・プロダクションを楽しむべきものであろう。

アルバムを通して聞けば,バラードでは抜群の歌のうまさを聞かせ,アップビートな曲では完璧な「ノリ」を実現するChaka Khanの幅広いタレントをうまく捉えたアルバムだと思うが,リスナーの期待によって好き嫌いがわかれることは致し方なかろう。いずれにしても,このアルバムはソウルとかR&Bというカテゴリーをはるかに超越してしまっている。星★★★★(タイトル・トラックだけなら星★★★★★である)。

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2007年6月 2日 (土)

懐かしのStuffのゆる~いグルーブ

Stuff "The Right Stuff" Stuff (Warner Brothers)

懐かしのStuffである。当時の精鋭スタジオ・ミュージシャン集団として大きな注目を集めたのは1970年代後半のことである。Stuffはフュージョン・バンドだと言われることが多いが,メンツゆえにこのStuffというバンドをジャズまたはフュージョンの文脈で捉えることには相当無理がある。あくまでも彼らの音楽性はR&Bとして聞いた方がはるかに自然である。

このアルバムは彼らが所属したWarner Brothersの音源を適切にまとめたベスト盤だが,基本的にStuffというバンドは,グループとしてのグルーブを追求していることがよくわかる。これだけの実力者が揃いながら,個々人が個性を打ち出していないのはある意味驚きである。その中でこのバンドで最も個性を感じさせるのはRichard Teeということになるだろうが,アコースティックでもエレピでも一音聞いてそれとわかってしまうのがTeeの凄いところである