"Radio Music Society" Esperanza Spalding (Heads Up)
昨年のグラミーで最優秀新人となり,話題沸騰と言ってもよいEsperanza Spaldingであるが,私はそんなことはどこ吹く風,全然関係な~いというモードを続けてきたのだが,先般ショップをうろついていたら,このアルバムがかかっていて,気持ちのよいファンクに思わず手が伸びてしまった私である。
Esperanza Spaldingはオレゴン州ポートランド近郊の出身らしいが,ポートランドは綺麗な街で,このアルバムにも"City of Roses"という曲が入っており,まさにそれはポートランドの別名である。同地のバラ園は本当に綺麗だし,街全体も綺麗なのだ。また,音楽も盛んな街で,ローカル・ミュージシャンも結構多いところである。同地にあるUmpqua Bankの営業店に行けば,ローカル・ミュージシャンの自主制作CDも買えてしまうのだが,試聴した音楽のレベルは結構高かった。そんな土地から現れたEsperanzaであるが,グラミーの最優秀新人をジャズ・ミュージシャンが獲得したのは初めてということでも話題になったが,ほかのアルバムはどうかわからないとしても,この作品に限って言えば,ジャズ的な要素は希薄である。だからと言って,それが悪いことではなく,越境することは私には問題にならない。だって私はRobert Glasperの"Black Radio"を極めて高く評価しているのだから...(記事はこちら)。
ショップで聞いていて,これはいいかもしれないなぁと思ったのが冒頭の"Radio Song"であったのだが,エレクトリック・ベースのサウンドが魅力的であったのに加え,彼女のヴォーカルはどちらかというとチャーミングな響きだと言ってもよいだろう。まずそのギャップに驚いた私である。だが,アルバム全体を通して聞いてみると,やはりグラミー受賞ということもあったのかもしれないが,かなりポップな要素も強く感じられる。私が気に入ったのはファンキーなベース・サウンドが聞ける曲だったので,そうした路線で通してくれれば,Robert Glasper並に評価できたかもしれないが,残念ながらそこまではいかなかった。特に,このアルバムにおいてはJef Lee Johnsonのギターが効いていて,そうしたサウンドを活かしてくれれば尚よかったのではないかと思える。
また,"Hold on Me"のようなビッグバンド歌謡みたいなサウンドはこのアルバムにはフィットしているとは思えない。まぁ,何でもできまっせ的な感じと言えばその通りだが,このあたりにプロデューサーとしてのEsperanzaはもう一歩かなぁと感じる私である。その一方,Michael Jacksonが"Off the Wall"で歌ったStevie Wonder作"I Can't Help It"なんて非常に魅力的。特にここでのJoe Lovanoの歌伴は最高と言ってもよいし,ここのLovanoを使うセンスはいいなぁ。
いずれにしても,これはなかなかいいアルバムだということは認めるが,私としてはもう一歩の進化を彼女には遂げてもらいたいという思いが残った。ということで星★★★☆。
尚,ミュージシャンのクレジットが老眼には辛いので,省略させてもらう。それにしてもJack DeJohnetteの3曲参加ってのは意外だが,そんなには目立ってないので念のため。
"Let It Burn" Ruthie Foster(Blue Corn Music)
先日,Michael Kiwanukaのアルバムを取り上げた時にも同じようなことを書いたが,今回はネット上でこのアルバムのジャケを見て,これはよさそうだと直感した私である。こんなことをやっていると,ギャンブルのようになってしまうのだが,ネット社会の中では,本人のサイトで試聴もできるのだからいい世の中になったものである。そして,試聴して直感に誤りはないと確信しての購入と相成った。
私はRuthie Fosterについては今まで全く聞いたことがなかったのだが,ブルーズを基調としながら,ソウル,ゴスペル,SSW,あるいはルーツ・ミュージック的なところも感じさせる音はまさに私の好みとするところである。まさにアメリカンなのだ。The Bandの"It Makes No Difference"やCS&Nの"Long Time Gone"なんかをやっているところも嬉しくなってしまう要因である。これはよい。更にこのアルバムを私が好きだと感じさせるのがバックのハモンドB-3の響きと,全編でペダル・スティールを使っていることによって生まれるグルーブである。ペダル・スティールと言っても,カントリー的なサウンドではなく,ここでは完全にスライド・ギターの趣である。Derek TrucksやSonny Landrethが好きな私にはたまらない音なのだ。
もちろん,これでRuthie Foster自身のヴォーカルが貧弱ではどうしようもないのだが,素晴らしいディープ・ヴォイスである。とにかくしびれる出来である。
キャリアとしては既に15年近くに及ぶらしいが,こういう人に突然出会うと本当に嬉しくなってしまう一方で,世の中には凄い人がいるんだねぇと思わざるをえないし,自分の無知を恥じたくなってしまった。2009年には来日もしていたようだが,次に来日する機会があったら,絶対見に行きたいと思わせるようなそんな歌手であり,そんなアルバムである。曲想にややばらつきがあって,戸惑う瞬間がないわけではないが,こうしたアルバムのジャケットにビビッドに反応した自分への褒美も含めて星★★★★☆(なんのこっちゃ?)。
Personnel: Ruthie Foster(vo), George Porter, Jr.(b), Ike Subblefield(org, p), Russell Batiste(ds), Dave Easley(pedal steel), Jemes Rivers(ts) with The Blind Boys of Alabama(vo), William Bell(vo)
"Home Again" Michael Kiwanuka (Polydor)
ショップをうろついていると,ジャケがどうしても気になってしまう作品というものはあるものである。ジャケの雰囲気からして,こりゃよさそうだという野生の勘に訴えてくるのだが,本作もまさにそうした私のインスピレーションを刺激した作品である。こんなアップのジャケのどこがいいのかという人もいらっしゃろうが,これが私の直観を刺激したのである。
この人のバックグラウンド等はよくわかっていないが,英国出身で1988年生まれの24歳(らしい)というのが信じられないような渋くも,落ち着いたサウンドを聞かせる。Adeleの前座で注目されたというのが,いかにもAdele同様若年寄的と言ってよいかもしれないが,それでも注目されて当然のミュージシャンだと一聴して感じさせられた私である。私が購入したのはボーナス・ディスク付きの2枚組だったのだが,そもそもそのボーナス・ディスクがEthan Johnsプロデュースというところからして大いに気になったし,そして期待に応える出来である。そして,Ethan Johnsがプロデュースしたくなるような人だと思わせる。
アルバムとしてはソウル的なアプローチも聞ける(特に冒頭の"Tell Me a Tale"等は70年代初頭のソウルを思い出させる) が,そこかしこに何ともSSW的というか,私は聞いていてちょっとBobby Charlesを思い出してしまうような音楽だったのは意外であったが,その手の音楽を好む私にとっては嬉しかった。例えば"Rest"のような曲がその代表的だが,本当にBobby Charlesの曲だと言えば,通じそうな音楽なのだ。これはよい。こういう音楽が現代においてどのように受け入れられるのはわからないが,この人は今年1月にBBCの"Sound of 2012"に選ばれたそうだから,本国でも注目されているということであろう。
いずれにしても,そんなことは関係なしに,直観を信じてこのアルバムを買った自分を褒めたくなるようなナイスなアルバムであった。こういう出会いがあるから,オンラインへの依存度が高くなった昨今でもショップ通いはやめられないのだ。
世の中にはまだまだ恐るべき若手が存在することを,またも痛感させられたアルバムである。繰り返すがこれはかなりよい。私としては全面的にOKである。今後の更なる成長を期待して満点とはせず,星★★★★☆とするが,私の中では注目度急上昇,というか次もきっと買うだろうと確信させられた作品。尚,クレジット情報が老眼にはきついので,詳しいミュージシャン情報は今回は省略させて頂くが悪しからず。
"Black Radio" Robert Glasper Experiment(Blue Note)
ここのところ,飲み会続きで記事を書く余裕がなかったのだが,通勤途上ではこのアルバムばかり聞いていたような気がする。それぐらい気に入ってしまったし,これは素晴らしい作品である。
Robert Glasperが"In My Element"でデビューした当時からジャズとヒップホップの融合のように言われていたが,演奏としては別にヒップホップ色が強いわけではなく,純粋なジャズ・ピアノ・トリオのアルバムのように感じていた私である。Glasperその人はいろいろなジャンルのアルバムに顔を出しているし,越境型のミュージシャンであることは間違いないが,彼のアルバムではそこまでの融合度を感じなかったというのが正直なところである。しかし,Gretchen Parlatoのアルバムをプロデュースしたり,本当にいろいろなところに顔を出す人だと感じていたのであった。
この作品はそんなGlasperが黒人音楽の様々な要素を融合させた作品だと言ってよいと思うが,その融合度合いがまさしく半端ではない。現代のソウル,ヒップホップ,ジャズの要素を全て取り込んで,そして素晴らしい作品に仕上げたところが凄いのである。Glasperのピアノ自体は一貫したトーンとタッチを持っていて,強面な見た目とは違ってかなり繊細である。だが,そのピアノが乗るのがまさに強烈なソウル/ヒップホップのフレイバーでありながら,全く違和感をもたらさないのである。だが,単にビートを強調するものではなく,どちらかと言えば,落ち着きさえ感じさせるものだからこそ,50歳を過ぎた私にも心地よささえ感じさせる音楽となっている。これがビートばかりが目立つものだったらおそらくは辟易としてしまったはずだが,そうはならない。昨日の記事にも書いた通り,いい意味で「ゆるいグルーブ」なのでだ。
アルバム全体を通して,そうしたトーンの一貫性は維持されていて,曲ごとにゲストが変わっても,全く悪影響を及ぼしていないのである。これはGlasper自身のプロデュースの勝利と言ってもよいが,それにしてもこれは凄い。曲よし,演奏よし,歌よしの三拍子揃ったアルバムとして強く推薦できる。もちろん,純粋ジャズではないから,ジャズ原理主義者には受け入れがたいものだろうが,この音楽のよさは誰にでも理解できるものであるはずである。Glasperのオリジナル(共作)に加えて,David BowieやNirbanaの曲が入っていても全然違和感なしである。最後のNirbanaの"Smells Like Teen Spirit"なんて思わず「おぉっ!」と唸ってしまった私である。
これは間違いなく,私にとってはちょっと気が早いが,本年最高作の候補と言ってもよい優れた作品である。Robert Glasperは黒人音楽の全てを取り込み,全てを越境したと言い切ってしまおう。星★★★★★。まじで最高である。久々にぶっ飛んだ私だった。
Personnel: Robert Glasper(p, el-p, synth), Casey Benjamin(vocoder, fl, sax, synth), Derrick Hodge(b), Chris Dave(ds, perc), Jahi Sundance(turntable), Shafiq Husayn(vo), Erykah Badu(vo), Lalah Hathaaway(vo), Lupe Fresco(vo), Bilai(vo), Ledisi(vo), Amber Stroher(vo), Anita Bias(vo), Paris Stroher(key), Musiq Soulchild(vo, snapping), Chrisette Michele(vo), MeShell Ndegeocello(vo), Stokley(vo, perc), yaslin bey(vo)
"Let It Be Roberta" Roberta Flack(429 Records)
Roberta FlackがBeatlesをカヴァーすると言えば,相当気になってしまうのが当たり前って気がする。彼女がどういう風にBeatlesを料理するか,興味はその一点に集中するのだが,今回このアルバムを聞いてみて,私には結構な違和感が残ってしまった。
その原因としてはアレンジメントの軽さということが一番の要因である。Robertaの声は何だか線が細く,彼女の声のよさを活かしているとは思えないし,曲をひねり過ぎなのも気に入らない。Roberta Flackももう75歳らしいので,昔ほど声が出ないのは仕方がないかもしれないが,それならソフトに歌っても私には全然問題ない。しかし,いくつかの曲は原曲のよさを消しているようなアレンジなのがどうしても私には気に入らないのである。無理にコンテポラリーな感覚を付け加えようという意図が見え見えで,聞いていて冷めるのだ。
Beatlesの曲は,曲そのもののよさがあるのであって,それをいじくるというのはある意味ミュージシャンにとってはチャレンジングな取り組みと言うこともできるわけだが,ここでの対応はアレンジャーが趣味でいじくってみましたって感じが強く,独りよがりにしか思えず,どうしても納得がいかない。その責任はRobertaと言うよりも,プロデュースもしているSherrod Barnesなるミュージシャンに帰するべきだろう。Barnesが単独でプロデュースせず,Barry Milesがアレンジに絡んでいる曲はまだ許せるのだから,この責任はやはりBarnesにある。Barnesがアレンジしたバックのスカスカ感も私には違和感の塊である。崩すなら崩すで,"Oh Darling"のようにブルーズ感覚を強めるのはいい(ここにもBarry Milesがちゃんと関わっている)としても,"I Should Have Known Better"なんて絶対に納得いかんわ。
結局,全編を聞いていても,最後のCarnegie Hallでの1972年のライブで収録された"Here, There & Everywhere"が一番いいのではやはりリスナーの納得は得られまい。この曲がよいと思えるのは,妙にいじくることなく,素直に曲に対峙している感覚が強いからである。その線でやればよかったものをと思わざるをえないのである。期待が大きかった分,失望も大きい失敗作。星★★。Sherrod Barnes抜きで作り直して欲しいと思ってしまうわ。
尚,Robertaには失礼だが,彼女のアルバム,ジャケが怖すぎである。購買意欲が高まないこと甚だしい。
Personnel: Roberta Flack(vo, key), Sherrod Barnes(g, key, b, ds, strings, vo), Jerry Barnes(g, b, vo), Dean Brown(g), Nathan Page(g), Selan Lerner(key), Barry Miles(key), Shedrick Mitchell(key), Morris Pleasure(key), Bernard Wright(key), Nichlas Branker(b), David Williams(b), Charlie Drayton(ds), Ricardo Jordan(ds), Kuhari Parker(ds), Chris Parks(ds), Bernard Sweetney(ds), Buddy Williams(ds), Tameka Simoen(vo), Vivian Sessoms(vo), Paul Lassiter(strings)
"Phoebe Snow" Phoebe Snow(Shelter)
Phoebe Snowが一昨年亡くなって,その後,Columbiaレーベルの諸作が紙ジャケで再発になった。それらのアルバムも私は"Never Letting Go"を筆頭に結構好きだが,Phoebe Snowについて考えるならば,やはりこのデビュー・アルバムが最高であることには異論はないだろう。
シンガー・ソングライターとしての素晴らしさとブルージーな感覚,ソウルフルな歌いっぷりを聞いて,当時の彼女が23歳とか24歳だったと信じられる人がどれぐらいいるだろうか。かつ,アコースティック・ギターの弾き手としても味わい深いのだからこれは大した才能だったと言ってよいだろう。
バックにもジャズ系のミュージシャンも交えて展開される音楽は相当に渋い。Zoot Simの参加も驚くが,Teddy Wilsonまで入っているのには恐れ入ってしまうと言ってよいだろう。しかもそうしたジャズ界の大物がThe PersuasionsやDave Masonのような別のフィールドのミュージシャンと同居していても,全く違和感がないのである。これはまさに優れたプロデュースの賜物とも言えるが,それを実現してしまうPhoebe Snowは偉い。
そして,このように渋いアルバムが全米トップ5に入ったというのも今にして思えば凄いことだが,それでもこういう音楽が評価される土壌があること自体が素晴らしいとも言える。今だったらAdeleがバカ売れする感覚に近いものかもしれないが,それにしてもこのアルバムの曲のクォリティには驚いてしまう。リリースからもはや40年近くが経過しても,ちっとも古びたところがないのは私がここに収められた類の音楽が好きだという理由だけではないだろう。これはやはり立派なアルバムであったのだ。
私がこのアルバムを聞くのは久しぶりのことだったのだが,私の記憶の中にあるレベルよりもはるかに優れた演奏が聞こえてきて,正直,自分の耳の至らなさを反省してしまった。Columbiaの作品もいいが,この作品に比べると何かが足りない。あるいは,逆に何かが過剰だったのかもしれないが...。
1974年のPhoebe Snow,彼女はまさに後年のアルバム・タイトルではないが,"Something Real"であった。星★★★★★。素晴らしい。
尚,オリジナルのカヴァー・アートは上のものであるが,ちょっと素っ気ない感じもする。当時のこの作品の邦題は「サンフランシスコ・ベイ・ブルース/ブルースの妖精フィービー・スノウ」というものだったため,日本盤には金門橋の写真を被せたジャケになっているが,どっちかというとこっちの方が雰囲気出ているように思うのは私だけではあるまい。でもPhoebeは生粋のニューヨーカーではあるが...
Personnel: Phoebe Snow(vo, g), Teddy Wilson(p), Bob James(el-p), Steve Burgh(g), Dave Mason(g), Hugh McDonald(b), Chuck Domanico(b), Chuck Israels(b), Steve Mosley(ds, perc), Margaret Ross(harp), Zoot Simes(ts), The Persuasions(vo)
"Are You Glad to Be in America?" James 'Blood' Ulmer(Rough Trade)
これまた懐かしい音源である。私がRough Tradeというレーベルを知ったのはこのアルバムが最初だったんではないかと思う。ジャズ界でははっきり言って無視されていたようなものが,ロック側のリスナーから盛り上がったのが,Ulmerあたりの音楽だったのではないか。パンク・ジャズとかわけのわからない呼び方をされていたようにも記憶するが,基本的にこれはファンク・アルバムだろう。そこに強めのフリー・ジャズのフレイバーとロックの要素を混ぜたのがこの音楽だと言っていいように思う。当時のロック界にもこうした音楽はあったし,A Certain Ratioにも似たような感覚があった(と言っても私がA Certain Ratioを聞いたのは完全に後付けだが...)。だからこそ,ジャズ界より,ロック界の方が早く反応したとも思えるのだ。
それにしても,今聞いてもけたたましい。アメリカ黒人のファンクネスもろ出しという感覚のこの演奏は現在の耳で聞いても別に違和感はない。私もこのアルバムが出てから幾星霜を経て,ちょっとやそっとのことでは驚かなくなっているから,本作を聞いても,おぉっ,どファンク!って思ってしまうぐらいのことである。UlmerがOrnetteとハーモロディクス理論を実践していたとかいないとかなんてのはどうでもよい話である。David Murray,Oliver Lake,Olu Daraからなる強烈な3管をフロントに,激しくうねるUlmerのギターはロック・ファンにアピールしても当然かなとも思わせるものがあり,それに身を委ねればいいのだ。
このアルバムの成功があって,UlmerはメジャーのColumbiaと契約するのだから,これもそれなりに売れた上に,インパクトも強かったのだろうと思われるが,ただ,こういうタイプの音楽であるから,おそらくはリスナーに飽きられるのも早かったはずである。Ulmerがかなり早い時期に失速してしまったのはそういう要素が強いように思える。その後はよりブルーズ色を強めた演奏をしているようであるが,昔日のような人気を保っているとは言い難い。
しかし,時代の徒花だったと言われても仕方がないとしても,一時期にはちゃんとしたムーブメントとして,それを代表するミュージシャンとして活躍したUlmer,特に本作の価値が下がるとは思っていない。喧騒の時代に喧騒の音楽を聞きたいならばまさにぴったりだし,フラストレーションがたまったときにこれを大音量でぶちかませばすっとするだろうなんて夢想してしまう私である(実際はiPodで聞いているからなぁ...)。このアルバムを聞いたのはおそらく20年以上ぶりぐらいなのだが,今でも楽しめてしまったのはちょっと意外と言えば意外であった。星★★★★☆
Recorded on January 17, 1980
Personnel: James Blood Ulmer(g,vo), David Murray(ts), Oliver Lake(as), Olu Dara(tp), Billy Patterson(g on 4), Amin Ali(b), G. Calvin Weston, Ronald Shannon Jackson(ds)
いよいよ年末も迫ってきたので,2011年の回顧シリーズも音楽編に突入である。今回はジャズ以外の音楽を取り上げるが,最終的にはジャズも含めた全カテゴリーの中から,私のベスト3を選ぶことにしたいと思う。
書籍編でも書いたが,今年は通勤環境が変化したため,通勤時間帯とは言え,音楽を集中してきくことが難しくなったのは事実である。そのため,記事のアップに時間が掛かってしまったり,ちょっと聞き方が浅いかなぁなんて思うことも多々あったのは事実である。来年の春先あたりになれば,少しは環境が改善すると思われるが,それまでは我慢,我慢である。また,震災の影響もあって,音楽鑑賞に身が入らないこともあったし,また,私にとってはダウンロードへの依存度がこれまで以上に高まったことなど,これまでにない音楽生活だったかなぁなんてことも思っている。
そうは言いながらも,今年もいろいろな音源を耳にしてきたと思うし,よくもまぁノン・ジャンルで何でも聞けるわと,自分でも呆れてしまうほどである。しかし,以前からこのスタイルは変わらないし,おそらくは今後も変えようがないだろう。ということで,マルチ・カテゴリーで私が今年気に入ったアルバムをまとめたい。
ロック:ロックでは何と言ってもLou Reed & Metallicaの"Lulu"にまいってしまった私である。このアルバムには賛否両論であるが,「否」の方は多くがMetallicaのファンの訳のわからない批判であるように思う。また,Lou Reedのファンにとってもこれが最高傑作かと言えば違うというような論調も多い。しかし,私が今年聞いたロックの中では,本作が最も私を感動させたものだと言ってよい。とてつもなく深い音楽だと思えたこの作品は,ロック・フィールドにおいて,最高作と位置づけたい。そのほかにはDaniel Lanoisの新バンドBlack Dub,そしてDave Stewartの"Blackbird Diaries"が記憶に残っている。Ry CooderによるRy Cooderらしい作品,"Pull Up Some Dust & Sit Down"も私にとっても久しぶりのRy Cooderとなったが、そんな私にも納得のいく作品であった。
ソウル/R&B:何と言っても,今年最も私を狂喜させたのはMarsha Ambrosiusの"Late Nights & Early Mornings" であろう。この人の歌のうまさ,まさしく半端ではない。彼女の作品はソウル部門では間違いなくトップだと聞いた瞬間に思ったことも事実である。友人にも呪文のようにMarsha Ambrosius,Marsha Ambrosiusと唱え続け,気味悪がられたこともあった(笑)。そのほかではBooker T. Jonesの"Road from Memphis",Betty Wrightの"The Movie",そして年末ギリギリに記事をアップしたKindred the Family Soulの"Love Has No Recession"だろう。Booker T.もBetty WrightもバックはThe Rootsであるが,彼らがベテランに新しい血を吹き込んだことは間違いのない事実だと思う。
ブラジル:今年の私のマイ・ブームはMaria Ritaであった。彼女の新作"Elo"は私をノックアウトするに十分な出来であり,その後,私は彼女のアルバムを速攻で全部揃えてしまった。それぐらい気に入ってしまったのである。こんなことはMarisa Monte以来と言ってもいいかもしれないが,そのMarisaも年末近くになってナイスな新作を届けてくれた。やはりブラジル音楽はいいねぇと思わせてくれた二人の歌姫である。
ワールド・ミュージック:そんなたくさんのアルバムを聞いたわけではないが,Tinariwenの"Tassili"(記事はアップしていない)が渋い出来だったのには驚いた。ただ,私としては"Aman Iman"の方が好きかなぁって気がする。それよりも何よりも今年,この分野で最も凄かったのはSeun Anilulapo Kuti & Egypt 80の"From Africa with Fury: Rise"である。Brian Enoプロデュースということもあり,"Remain in Light"にもなぞらえることがあるが,このスピード感溢れるファンク・ミュージックには心底参った。
そして今年の特別賞に値するのは由紀さおりがPink Martiniと見事に歌謡曲の世界を再構築した"1969"であろう。各国のチャートも賑わしたということで,様々なメディアにも取り上げられたが,私も昭和歌謡の世界にどっぷりとつかってしまった。尚,先日,飲み会の二次会でカラオケに行ったら,「真夜中のボサノバ」が加えられていたのに反応して,思わず歌ってしまった私である(爆)。歌手としてはオリジナルのヒデとロザンナではなく,Pink Maritniと由紀さおりなのにはちょっと受けてしまった。
"Love Has No Recession" Kindred the Family Soul(Shanachie)
これも随分前に入手していたのだが,アップするのに無茶苦茶時間が掛かってしまったアルバムである。しかし,これがコンベンショナルなソウル・ミュージックのようでいて,現代的なフレイバーを感じさせるナイスなアルバムなのだ。このFatin DantzlerとAja Graydonからなる夫婦デュオを見出したのはこのブログでも新作を取り上げたJill Scottらしいのだが,そのJill Scottよりはるかにいい出来なのは皮肉だ。
このアルバムはRaheem Devaughn,Snoop Dogg,更にはChuck Brownまで含む多彩なゲストを迎えて,ソウル・ミュージックのいいとこ取りをしているようにも感じられるが,スパイスのようにコンテンポラリーな響きを感じさせるところが,単なるコンベンショナル・ソウルとは違う。しかし,そうしたコンベンショナルなソウル・ミュージックを好むリスナーさえも納得させるディープな感覚は失っていないところがしびれる。
正直言って,聞くまではどういうタイプの音楽か不安だったのだが,これは完全に買って正解の優れたソウル・アルバムであった。
またまたミュージシャンは多岐に渡るのでPersonnelは省略するが,ソウル好きなら買っても決して損はしないアルバム。星★★★★☆。しかし,Shanachieというレーベルは私が買った作品ははずれがなくて,好感度高いなぁ。こういうのをレーベル・パワーって言うな。
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