カテゴリー「ECM」の記事

2008年12月 4日 (木)

Arild Andersen:かなり完成度の高いライブ盤

Arild_andersen "Live at Belleville" Arild Andersen(ECM)

このアルバムは拍手がなければ,スタジオ録音だと言われてもわからないほど緊密度の高いライブ演奏を展開したアルバムである。ピアノレスのサックス・トリオであるから,自由度が高いのはある意味予想通りであるが,フリーなアプローチと高速の4ビートがうまくブレンドしていて,私は結構嬉しくなってしまった。

このアルバムを聞いていて思うのは,何とも絶妙なエコーによって生み出される「場」の空気である。Andersenは時にエレクトロニクスを交えながら(あくまでも地味にだが...),雰囲気たっぷりのベースを聞かせる一方,Tommy Smithのテナーにもこれまた何とも言えないエコーがかかっていて,音楽的には結構ハードな部分もあるのに,聞いていてとにかく心地よいのである。そこに鋭く突っ込んでくるのがPaolo Vinacciaのドラムスであるが,この人,ライナーの写真からしてロック畑の人と思わせるのであるが,サウンド的にも確実にロック的なドラミングである。Wikipediaにはジャズ・ドラマーとして紹介されていたが,私はこの人にはロック的なアプローチを強く感じるのである。このVinacciaのドラムスがスパイスとして効いてきて,このトリオのサウンドを魅力的なものにしているように感じる。

このハードな音楽はある意味ではECMらしからぬサウンドと言ってもよいが,プロデューサーはAndersenが兼ねており,Manfred Eicherはミキシングと編集に関わっているだけだから,そう聞こえるとも言えるのだが,このアルバムにエコー感を加えたのはEicherではないかと私には思えるのである。音楽の質はECM的でなくとも,エコーでECM的サウンドにしてしまうということである。これは私だけの思い込みかもしれないが,私の想像が当たっているとしたら,それこそマジックではないか。

収録時間が70分超と長いので,ずっと集中できるわけではないのだが,それでも私はこのアルバムについては結構楽しめたし,評価したいアルバムである。ちょっと甘いかもしれないが星★★★★☆。

Recorded Live at Belleville, Oslo and Drammen Theater in September, 2007

Personnel:Arild Andersen(b, electronics), Paolo Vinaccia(ds), Tommy Smith(ts)

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2008年12月 2日 (火)

Pat MethenyのWebサイトにおける記述

昨日の記事で年末年始のPat Metheny GroupのBlue Note公演で「彼らが(中略)このアルバム(註:"Pat Metheny Group")からの曲を演奏するとは思えないが,もし何かをやってくれたら,私は狂喜乱舞してしまうかもしれない。今回の来日はメンバーは変われど,同じクァルテット編成だから可能性がないわけではないので,ちょっと期待しちゃうなぁ。無理か...。」などと書いたばかりだが,MethenyのWebサイトの更新通知メールが届き,アクセスしてみると,次のような記述が...。

"they will play many of the most famous PMG classics from throughout the Group's history"

ということは,ECM時代のレパートリーも含めて演奏すると勝手に解釈してしまう私である。何をやってくれるのだろうなぁ。期待しちゃうよなぁ。最近とんと聞いていない"Phase Dance"なんかをオープニングでぶちかまされたら,私はその瞬間昇天確実であろう。う~む,楽しみである。ECM時代のアルバムもおさらいせねば。まぁ"Travels"を聞いておけばいいか。

Signature_6_4 それはさておき,今回のPat MethenyのWebサイトのデザイン変更は今イチである。フォントの選択,フォント・サイズ,あるいはサイト・デザイン全般のどれをとってみても,全くおしゃれさに欠けるし,相当"Ugly"な出来である。これだったら,以前のサイト・デザインの方がはるかにすっきりしていたように思えるのだが,皆さんどうであろうか?

尚,同サイトによれば,Methenyが使用しているLinda Manzer作のギターのレプリカ・モデルSignature 6が30本限定で発売されている。私に資金的余裕があれば欲しいなぁとも思ってしまうのだが,$32,000では無理ざんす。大体そんな高いギター弾くような腕もないしねぇ。ご参考までに写真だけでもアップしておこう。

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2008年12月 1日 (月)

懐かしのPat Metheny Groupとの初邂逅盤

Pmg "Pat Metheny Group" Pat Metheny Group(ECM)

私が初めてPat Methenyを聞いたのがこのアルバムである。もう30年近く前のことというのが信じがたいが,ECM時代のアルバムでは私が今でも聞く回数が多いのは"Travels" とこのアルバムである。ほかのアルバムが嫌いというわけではない。このアルバムが単純に好きなのである。このシンプルなジャケットのアルバムを私がどうして購入する気になったのかは全く記憶にないのだが,ある意味この超シンプルなジャケットに魅かれたというところもあったように思う。

いずれにしてもこのアルバム,何がいいって曲のクォリティが異常に高い。どれ一つとして駄曲がないというか,長年,Methenyのライブ・レパートリーを占めてきた曲が含まれている。人気曲は冒頭の"San Lorenzo"と"Phase Dance"だろうが,その他の曲もいま聞いてもよい。私はLPであればB面に収められていた曲もどれも捨て難い佳曲だと思っているし,その魅力が全く薄れることはないのである。

このアルバムのいいところは,テクノロジーに依存しない状態での「素」のPMGのよさが表れているところではないかとも思えるのだが,まだまだそんなにテクノロジーも進化していないし,Methenyその人がブレイクする以前の段階で,いい意味での手作り感が私には魅力的に響くのである。30年を経てこの瑞々しさに敬意を表して星★★★★★である。このアルバムとの出会いがなければ,私とMethenyは縁がなかったのだと思えば,偶然であろうがなんだろうが,幸福な出会いであった。

彼らが年末年始のBlue Note公演で,このアルバムからの曲を演奏するとは思えないが,もし何かをやってくれたら,私は狂喜乱舞してしまうかもしれない。今回の来日はメンバーは変われど,同じクァルテット編成だから可能性がないわけではないので,ちょっと期待しちゃうなぁ。無理か...。

Recorded in January 1978

Personnel: Pat Metheny(g), Lyle Mays(p,, key), Mark Egan(b), Dan Gottlieb(ds)

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2008年11月30日 (日)

ECMならではの組み合わせ

Solstice "Solstice" Ralph Towner(ECM)

以前,このブログでJack DeJohnetteのSpecial Editionを取り上げたときにもメンツの妙(記事はこちら)と書いたことがあるが,このアルバムもECMらしい組み合わせが楽しめる好アルバムである。そもそも私はRalph Townerのファンであるから,それだけでもOKなのだが,このアルバムはECMオールスターズと言ってもよい組み合わせであり,このメンバーならではの演奏が楽しめるから尚よい。

当時のECMは契約ミュージシャンの組み合わせをさまざまに変更することによって,レギュラー・グループとは異なるケミストリーを生み出していたと言っても過言ではないが,このアルバムもそうしたシリーズの一つと言ってよいだろうが,このアルバムが好評だったのだろう。同じメンバーで続編"Sound And Shadows"が制作されたことは珍しい事例である。しかし,それもうなずけるぐらい,ここではECMらしいサウンドが楽しめる。

相変わらず,Townerの12弦ギターの響きは美しく,Garbarekとのデュオを聞かせるクラシック・ギターでは幽玄さを醸し出している。また,Garbarekがこれだけフルートを聞かせるのも最近では例がないと言えるだろう。フロントの彼らを支えるリズムのWeber,Christensenもいかにもという伴奏ぶりで思わず嬉しくなってしまうのである。

私にとってのTownerの最高傑作は"Solo Concert"であることには間違いないが,このアルバムもプレイバック頻度がかなり高いアルバムである。ハイライトは冒頭の長尺"Oceanus"のスリリングな響きだと思うが,それだけに留まらず,全編を通じて,ECMの美学が詰まったアルバムと言うことができるだろう。星★★★★☆。やっぱりいいわ。

Recoreded in December 1974

Personnel: Ralph Towner(g, p), Jan Garbarek(ts, ss, fl), Eberhard Weber(b, cello), Jon Christensen(ds, perc)

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2008年11月16日 (日)

名曲"Kiss from a Rose゛にやられるJulia Hulsmann

End_of_a_summer_2 "The End of a Summer" Julia Hulsmann (ECM)

何ともECMテイストに溢れた新作ピアノ・トリオの登場である。Julia Hulsmannというピアニストは初めて聞いたが,ドイツの女流ピアニストとのこと。このサウンドが彼女の音楽性の本質なのかどうかはわからないが,ECMというレーベル・カラーにフィットしたサウンドには嬉しくなるECMファンが多いのではないだろうか。

全10曲中,6曲がリーダー,1曲がベースのMuellbauer,2曲がドラムスのKobberingのオリジナルで,それらもそれなりに聞き応えはあるのだが,私が参ってしまったのがSealの名曲゛Kiss from a Rose"である。この曲が映画゛Batman Forever"で使用され,グラミーを受賞したのは1995年のことになるが,しばらくぶりにこの曲を聞いて,曲の力を再認識した次第である。Sealのボーカルは若干くせがあってやや好き嫌いはわかれるが,インストで演奏されるとこれはたまらん。正直言ってほかの曲がかすんで聞こえてしまった。これはやはりこの曲の持つメロディ・ラインの魅力に依存するところ大である。しばらく前のヒット曲であるこの曲をなぜHulsmannが今になって取り上げたのは謎だが,このアルバムの魅力を高めるのにこの選曲は少なくとも私にとっては貢献したと言ってよい。

゛Kiss from a Rose"ばかりほめているようだが,実はこのアルバム,冒頭にも書いたとおり,ECMテイストはかなり強い(即ち,本質的にはクールで静謐であり,ダイナミズムを求めてはいけない)から,この筋の音楽好きは"Kiss from a Rose"がなくても気に入るはずである。私としては最近のECMレーベルのアルバムではかなり好きな部類のアルバムである。星★★★★。でもやはり゛Kiss from a Rose"にやられた私である。

Recorded in March 2008

Julia Hulsmann(p), Marc Muellbauer(b), Heinrich Kobberling(ds)

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2008年10月29日 (水)

Jack DeJohnette New Directions:これぞメンツの妙

New_directions ゛New Directions゛ Jack DeJohnette(ECM)

今や私もかなりのECMレーベル・オタクとなってしまった。もちろん,コンプリートではないし,New Seriesも一部自分の好みの音楽以外は買っていない。大体どれぐら保有しているのかも正確には把握していないが,それでもカタログの半分ぐらいはあるかなって感じではある。そんな私がジャズ・キャリアの中でもかなり早い時期に入手したECMレーベルのアルバムがこれだが,なんでこれだったのかっていうのははるか昔のことでもはや記憶が曖昧である。昔は背伸びをしてジャズを聞いていたのも事実だから,当時はこのアルバムもよくわからなかったというのが曖昧ながらも私の記憶の片隅に残っている感覚である。このメンツ,サウンドであるから,キャリアの浅い若造が理解できなくてもそれはある意味当たり前なのだが,今にしてこれを聞けば,このメンツの妙がよくわかるというものだ。

DeJohnetteとAbercrombieにはGatewayというバンドがあったから,2人については意外性はない。しかし,そこにECMのレーベル・カラーとは異なるEddie Gomezが加わるのがまず「ヘェ~」である。私は正直言ってGomezのベースの音があまり好きではないのだが,ここではECM的サウンドにより,いつものGomez的な音が控え目になっているのは私にとっては助かるし,ここでのGomezは実際悪くない。

しかし,このアルバムを更に凄いと思わせるのがLester Bowieの参加である。私は今も昔もArt Ensemble of Chicagoというバンドの魅力が理解できないのだが,その中ではLester Bowieは例外的に好きである。当時,Bowieがこういうスペシャル・ユニットで演奏するということは珍しかったと思うが,Bowieが見事な演奏でこのアルバムを優れたものにしていることに感銘を受けてしまうのだ。このアルバムはBowieが参加したことで明らかに緊張感が増している。サウンドとしての個性は,現在ならBill Frisell的とも言えそうな,アタック感を敢えて消したAbercrombieのギターに負うところも大だろうが,鋭さの根源はやはりBowieである。

もちろん,DeJohentteはDeJohnetteでシャープなドラミングでバンドを煽っていてこれまたたまらない。この音,誰がどう聞いてもDeJohenetteのものである。この個性は大したものだし,2曲のメンバー共作を含めて,全ての作曲に関わっている彼の作曲能力も同様に大したものである。

今でもECMは立派な作品を出し続けているが,この頃のECMレーベルの作品というのはレーベル参加者によるスペシャル・ユニット的なものも多かったように思う。そうしたテンポラリーな組合せにもかかわらず,こうした優れた音楽を作り出していたということは凄いことだと思わせる。最後をDeJohnetteがピアノを弾く"Silver Hollow゛で締める構成の妙も含めてプロデューサーManfred Eicher恐るべし。久々にこのアルバムを聞いたが,録音後30年を経過した今でも刺激に満ちたアルバムであった。私の嗜好にバッチリあってしまったので星★★★★★。

Recorded in June, 1978

Personnel: Jack DeJohnette(ds, p), John Abercrombie(g, mandolin), Lester Bowie(tp), Eddie Gomez(b)

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2008年7月13日 (日)

Jon Hassel:ECM最大の異色作か?

Power_spot ゛Power Spot゛ Jon Hassell(ECM)

ECMレーベルとしてはこれは相当の異色作である。何と言ってもプロデューサー,エンジニアがBrian EnoとDaniel LanoisというU2プロデューサー・コンビではないか。しかもカナダ録音というのはECMの歴史長しと言えども,この作品だけだろう。いずれにしても,なぜこのアルバムがECMから発売されるのかが不思議である。それだけでなく,このエレクトロニクスを多用したアンビエント・ミュージックのような音楽がなぜECMなのかというのも不思議である。

ということで,これは普通のECMレーベルのファンが聞くとやはりのけぞることは間違いない音楽と言ってよかろうが,そうしたECMの特異なレーベル・カラーを無視すれば,これはこれでOKである。しかし,そこはアンビエント・ミュージックであるから,これを「さぁ音楽を聞くぞ~!」と構えるとろくなことはない。環境と同化させる,あるいはリピート機能で延々流しっぱなしにすることがこの音楽の本質であるから,鑑賞的な態度は到底受け入れないし,聞いているこちらも何だかなぁと思うだけである。

ということで,これは決して鑑賞用の音楽ではないし,これに評点をつけるということ自体に意味はない。むしろこんなアルバムまで出しているECMレーベルの懐の深さに「ヘェ~っ」とうなっていればよいように思えるアルバム。

このアルバムが一体どういう層を狙った音楽なのか凡人の私には理解できないが,この音楽を聞いていて気持ち悪いというリスナーもいないだろうと思わせるのはさすがアンビエント。一方,積極的にこのアルバムを聞いている人も少数であろうと思わせる作品である。やはり不思議な音楽である。ということで,私も何が言いたいのかさっぱりわからない記事を書いてしまったが,興味のある方はヨガのおともにでもどうぞと言いたくなるようなCDである。

Recorded in October 1983 and December 1984

Personel: Jon Hassell(tp), J.A. Deane(perc, al-fl), Jean -Phillippe Rykiel(key), Michael Brook(g), Richard Horowitz(key), Brian Eno(el-b), Richard and Paul Armin(strings), Miguel Frasconi(fl)

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2008年7月12日 (土)

Peter Erskineの欧州トリオの復活を祈願する

Time_being ゛Time Being゛ Peter Erskine(ECM)

私はこのPeter Erskineの欧州トリオが好きである。ECMのレーベル・カラーと合致した美しくもスリルにも溢れたこのピアノ・トリオを聞いているといつも嬉しくなってしまう。Erskineと言えばAlan Pasqua,Dave Carpenterとのアメリカン・トリオは活動継続中ながら,この欧州トリオは1999年の゛Juni゛を最後にアルバムの発表がないのはファンとしては誠に寂しい限りである。どちらのトリオが好みかは聞き手の趣味次第だが,私は両方好きながら,どちらかを取れと言われれば,間違いなくこちらの欧州トリオを取る。

このトリオの良さは三者のバランスということになるが,美的な旋律でもフリー的なアプローチでもこなせてしまうこのトリオは私としては現代を代表するトリオの一つに数えたいぐらいである。John TaylorはECMにもリーダー・アルバムがあるし,Palle DaneilsonはKeithの欧州クァルテットのメンバーであるから,ECMレーベルの音楽性と相性がいいのは当然だが,あまりECMっぽくないErskine(とは言っても,John AbercrombieやBass Desires等の参加作はあるが...)のリーダーシップのもと組成されたこのトリオの音楽が極めてECM的なのが実に面白い。

それでもって,なんでECM第2作から取り上げるのかというと,たまたま目に付いたのがこのアルバムだっただけで,他意はない。それでも私にとっては最終作゛Juni゛は???の部分もあったように記憶する(しばらく聞いていないのだ)が,本作を含めた最初の3作はどれを聞いてもよい(はずである,とこれも自信がない)。この作品でもこのトリオの美的センスと自由度の高い自発性という特徴はよく顕われていると思う。久々に聞いたが,やはりよいものはよい。このErskineのサトルなドラミングを聞いて,Weather ReportでのErskineの演奏と結びつけられる人はなかなかいるまいが,こうした多彩なドラミング技術を持つPeter Erskineは大したミュージシャンである。復活を祈念して星★★★★★。

Recorded in November 1993

Personnel: Peter Erskine(ds), John Taylor(p), Palle Daneilson(b)

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2008年6月21日 (土)

Dave Holland Quintet:鉄壁のコンビネーション

Prime_directive ゛Prime Directive" Dave Holland Quintet(ECM)

ちまた(と言ってもごく一部局地的な話だが...)で何かと話題の゛Prime Directive"であるが,その本家バージョンを久々に聞いた。Dave HollandがこのQuintetを結成したのは1997年のことらしいが,それ以来ドラムスのBilly KilsonがNate Smithに代わった以外は不動のメンバーというのは今日のジャズ・シーンでは珍しいことである。Nate SmithはChris Potter Undergroundのメンツであるから,このメンバー交代はPotter人脈と考えていだろう。編成も結構変わっているが,Steve Nelsonのヴァイブが絶妙なアクセントになっていて,これがピアノではこうは行かないと思わせるのである。いずれにしても,少なくとも結成当時は比較的地味と思わせたメンツからこうした響きを作り出すDave Hollandのリーダーシップは大したものである。

このバンドのコンビネーションのよさはクインテットとしての第2作である本作でも既に際立っていて,極めてコンテンポラリーな響きの中にも,まさに鉄壁の演奏を展開している。タイトル・トラックはPotterのテナーとEubanksのトロンボーンが対位的にソロを展開し,この曲から聞く者の心を鷲掴みにしてしまうと言っても過言ではない。いずれにしても,単純な4ビートはあまりないのだが,変拍子でもなんでも非常に「ジャズ」を感じさせる演奏である。現在の管入りレギュラー・コンボではピカイチの実力を持つバンドであり,こういう優れたバンドはもっとメジャーになって欲しいものである。ということで,現代ジャズにおけるこのバンドの重要性も含めて星★★★★★としよう。

本作でもそうだが,Dave Holland Quintetの音楽がECMらしからぬものだということは大方のリスナーも認めるところだろうが,結局はこのバンドがECMから離れて,Hollandの自主レーベルに移行したのは,サウンド的な観点で言えば必然である。そうした意味ではECMサウンドを期待するECMファンがこのアルバムを聞くと面食らうかもしれないが,それでもこのバンドの意義を認めたECMのオーナー,Manfred Eicherの慧眼はやはり素晴らしいと言っておきたい。

Recorded on December 10-12, 1998

Personnel: Dave Holland(b), Chris Potter(ss, as, ts), Robin Eubanks(tb, perc), Steve Nelson(vib, marimba), Billy Kilson(ds)

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2008年6月10日 (火)

さまざまな顔を持つBobo Stensonの人気作

Bobo ゛Very Early゛ Bobo Stenson(Dragon)

ECMの諸作でも知られるBobo Stensonの「人気作」と言ってよい作品であろう。Bobo Stensonという人はJan Garbarekとフリーに近い演奏をしたと思えば,自身のトリオによるECM作品では透徹な美学を感じさせ,その一方でこのブログでも紹介したDave Liebmanとの共演作(David Liebman対スウェーデン人トリオ)やヴォーカルの伴奏(今更ながらスウェーデン・ジャズのレベルは高い)等,いろいろな活動をしていて,どれが彼の本質なのかよくわからないところがあるのも事実である。

私がこの作品を「人気作」と呼んだのは,その演奏のとっつき易さゆえというところがあるように思う。しかし,Bill Evans作゛Very Early゛を演奏しているからと言って,Bobo Stensonは決して所謂Evans派ではない。フレージングは全然違うし,タッチも違うのである。大体選曲だって本作のボーナス・トラックを見れば,かなり変わっていることもわかる(なんてたってフォーレのパヴァーヌにColtraneの"Satellite"までやっている)。しかし,それでもこの作品は非常に聞きやすいタイプのピアノ・トリオ作品に属するものであることには何ら変わりはないから,相応の人気は確保できるのである。

私にとってこのアルバムを聞くのも実は久し振りのことだったのだが,まぁこれはこれでいいんじゃないかという感じである。緊張感はあまり感じさせない音楽だが,だからと言ってリラクゼーション過剰でもないという,いかにも捉えどころのないStensonらしい作品と言うこともできるかもしれない。私としてはStensonの本質はこれよりややフリーなアプローチにあるように思っており,この作品よりはECMでの第1作゛Underwear゛の方がStensonの本来の姿に近いのではないかと感じている。ということで,この作品は私の中でのStensonのポジションに惑いを生じさせるものなのである。嫌いではないんだが,両手を上げて誉めることもできない。ということで,私までもがどっちつかずな感じになってしまうという不思議なアルバムである。星★★★☆。

Recorded on December 2 & 3, 1986

Personnel: Bobo Stenson(p), Anders Jormin(b), Rune Carlsson(ds)

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2008年6月 3日 (火)

驚きのOregonとオーケストラの共演盤

Oregon_in_moscow ゛Oregon in Moscow" Oregon(Intuition)

これはOregonがモスクワに乗り込み,現地のオーケストラと共演したアルバムであるが,何に驚かされるって,かなり精緻なオーケストレーションが施されているということである。そのオーケストレーションは「作曲者」によるものとクレジットにあるから,Towner,McCandless,Mooreの三者によるものということになるが,こう言っては何だが,いろんな才能があるのねぇと思わざるをえない。

私はRalph Townerのファンではあるが,Oregonの熱心なリスナーとは言えないので,このアルバムのライナーで初めて知ったのだが,実はOregonはオーケストラとの共演歴は結構あるらしく,もともとは彼らがPaul Winter Consortのメンバーだった頃に遡るらしい。ここに収められているTownerの名曲゛Icarus゛もPaul Winter時代のオーケストレーションを踏襲したものらしいのである。

その中で,一部の曲は意図的にOregonだけで演奏されているが,Towner曰く,それらの曲は曲そのものがオーケストラ・フレイバーを持っているからだとのことである。なるほど。

いずれにしても,このアルバムをどういう層のオーディエンスが聞いているのかというのは非常に興味深いところがあるのだが,Towner好きの私にとっては彼のギターやピアノとオケが共演しているだけでも興味深いところに,上述のようにこれだけしっかりしたオーケストレーションを聞かされれば,「へぇ~」と唸らざるをえないのである。Townerのギターの技が前面に打ち出される訳ではないのだが,あまりに気持ちよくて,(いい意味で)心地よい眠りに誘ってくれること請け合いの2枚組である。

ちなみに,このアルバムのプロデューサーはPat Metheny GroupのSteve Rodbyであるが,よくもまぁこんなにお金の掛かりそうなプロジェクトをうまく仕上げたものである。Oregonファンは選曲からして嬉しかろうが,クラシック音楽ファンも納得するオーケストレーションと言ってはほめ過ぎだろうか。Oregonというバンド,なかなか奥が深い。ということでいつものことだが,やっぱり私はRalph Townerには甘いのである。星★★★★。

Recorded in June, 1999 in Moscow

Personnel: Raslph Towner(g, p, synth), Paul McCandless(oboe, eng-horn, ss, b-cl), Glen Moore(b), Mark Walker(ds, perc), with Tchaikovsky Symphony Orchestra of Moscow conducted by George Garanian

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2008年5月25日 (日)

Keith Jarrettソロを聴いた@東京芸術劇場

Keith Jarrettのソロ公演を東京芸術劇場で聴いた。第1部は2曲,第2部は3曲,そしてアンコールは3曲,休憩をはさんで約2時間の公演であった。私は最近のKeithのソロを聞いているとPeter Serkinが現代音楽作曲家の曲を弾いたアルバムのように感じてしまうぐらい,現代音楽的な響きが強い。世の中,現代音楽愛好家なんてのは数が限られているはずで,Keithだからこそこれだけ聴衆を集めつつも,こうした演奏をしても文句が出ないと考えざるをえない。もちろん,ピアノのテクニックは素晴らしいのはよくわかるのだが,多くの聴衆が求めているのはこうした世界ではなく,昔のKeithの美旋律の世界ではないかと思うのだが...。結構Peter Serkinを愛聴している私にとっては別にかまわないが,やはりこれは一般の聴衆にとっては敷居が高いし,決して聞いていて面白い音楽とは言い切れないはずである。こうした感覚の曲は1-1,2-1,2-2が相当する。

今回,驚かされたのは1-2で「ど」ブルースを弾いたことである。Keithのソロ公演に私は何度も足を運んでいるわけではないので,レコード,CDからしか判断できないが,これだけストレートなブルースをソロで弾くというのは珍しいのではないかと思わせる。

しかし,私にとってこれぞKeithの本質と思わせたのが2-3及びアンコール3曲である。特に2-3は超スローなテンポで,これぞまさしく゛The Most Beautiful Sound Next to Silence゛というECM音楽の鑑のような演奏である。アンコール前の最後の曲としては素晴らしすぎである。そこからアンコール1曲目はKeithらしいフォーク~ゴスペル・タッチの曲になり,残りの2曲はスタンダード(不勉強で曲名が思い出せなかったのだが,゛I Loves You, Porgy゛と"Blame It on My Youth"だったような気も...。いずれにしてもそんな感じである。違っていたらごめんなさい)である。この終盤4曲の流れは私にとってはたまらないものがあった。多くの聴衆にとっても,やはり現代音楽的な世界よりもこの流れの方が明らかに受けがよかったのは明らかである。

今後,Keithがどういう世界を向いてソロ・ピアノに対峙していくのかはわからないが,私は今回のような完全即興でなくKeithの弾くショスタコービッチの「24のプレリュードとフーガ」を生で聞いてみたいような気がしたと言ってはKeithに失礼か。

いずれにしても,私は最後の4曲で昇天寸前であったので,演奏には文句はないが,惜しむらくは私がかなりひどい膝痛で演奏に集中できなかったのがかえすがえすも残念。

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2008年4月 2日 (水)

あまりに美しいピアノとギターの多重録音

Diary ゛Diary゛ Ralph Towner(ECM)

1曲目の゛Dark Spirit゛におけるTownerによるギターとピアノの多重録音を聞いて,感じるところがないとすれば,その人はECMレーベルとは縁がないと言い切ってしまおう。それぐらい美しい響きである。私はRalph Townerのファンであるから,多少の贔屓目はあるとしても,この響きには本当にうっとりさせられてしまう。そして続く2曲目゛Entry in a Diary"ではTownerの必殺12弦ギターの登場である。私はこの冒頭の2曲を聞くだけで「ほぼ」昇天モードである。4曲目ではPaul Winter Consortでも演奏した"Icarus゛を今度は12弦とピアノで多重録音である。ここまで来れば私は「完全に」昇天する。ECMかくあるべし。

私はTownerの最高傑作は゛Solo Concert゛だと思っている(なんてたってブログ開設2日目に「Ralph Townerの魅力」という記事にしている)。しかし,そこはライブ音源,多重演奏はできないのである。現代のテクノロジーを駆使すれば,今ならできてしまうかもしれないが,時はまだまだ1970年代である。ライブの場でのこの演奏の再現は無理だった。Townerはここではギターとピアノだけでなく,ギターとゴングの多重演奏も聞かせて,ライブ盤とは違う雰囲気を生み出すのに成功しているから,この作品はこの作品でちゃんと評価しなければならないのである。最高傑作はライブ盤に譲るとしても,これはTownerの代表作の一つに数えてよい。当然星★★★★★である。

尚,最後に収められたピアノ・ソロによる佳曲゛The Silence of a Candle"は一聴,George Winstonのようにも響くが,当然,こちらの方がオリジナルのスタイルであって,Townerのピアノとして認識すべきものであることは強調しておきたい。ちなみにGeorge Winstonは自身のHPの゛Influence゛のところにギタリストとしてのTownerを挙げているが,私としてはピアニストとしてのTownerにも影響されとるだろうと突っ込みを入れたい。

閑話休題。最近はあまり多重録音をしていないと思われるTownerであるが,1973年という段階で,多重録音をうまく使ってTownerの魅力をここまで引き出したプロデューサー,Manfred Eicherは本当に大した人物である。Eicherにも星★★★★★を謹呈したい。素晴らしい。

Recorded on April 4 and 5, 1973

Personnel: Ralph Towner (g, p. gong)

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2008年4月 1日 (火)

硬質なピアノの響きが美しいPaul Bley

Open_to_love ゛Open, to Love" Paul Bley (ECM)

Paul Bleyが耽美派と呼ばれるのはこのアルバムゆえではないかと思わせる美しいアルバムである。何ともピアノの音が硬質に捉えられているが,その響きの美しさはやはりECM的と言ってよいだろう。たまに挿入されるピアノ弦のはじきがまた何とも言えない雰囲気を作り出しているのがECM好きにはたまらない。

収録されているのはPaul Bleyのオリジナルが2曲,前妻Carla Bleyが3曲,後妻(実際結婚したかどうかはしらんが...。大体このアルバムを吹きこんだ頃にはもう別れていた)Annette Peacockが3曲,なおかつPaul Bleyのオリジナルには゛Harlem゛なんて曲があるという一体この人たちの人間関係はどないなってんねんと突っ込みを入れたくなるような選曲である。あるいはPaul Bley版「別れても好きな人」か。

そんなことはさておき,非常に音数が少なく,ある意味明瞭なメロディ・ラインを示すのは前出の゛Harlem゛ぐらいだと言っても過言ではない。ほかの曲はテンポ設定もあろうが,どういうメロディなのか,あるいはどこまでが書かれたメロディで,どこからがアドリブなのか凡人の私には掴み難いのである。ある意味現代音楽的な響きとも言えるが,それでもここで紡ぎ出されるピアノ・サウンドが美しいということは理解できる。この音楽をどう評価するのかは非常に難しいところであるが,私としては星★★★☆ぐらいだろうか。

いずれにしても,この音楽を聞いていて,どういうシチュエーションで聞くのが最適なのかは悩むところである。酒を飲みながらって感じではないし,食事のBGMにはなりそうにもない。しかし,真っ当に対峙すれば気分が落ち込みそうな予感もあるし,うーむ,なかなか難しい。ということで,私にとってはこれはしょっちゅう聞きたくなるようなアルバムではないのだが,必ず特定の頻度で聞きたくなるという点では,Peter Serkinが弾いた武満徹の音楽のようなものかもしれない。

それにしても,こういう演奏をしながら唸るPaul Bleyには困ったものだが,一時のKeith Jarrettほどの唸りではないので,それほど演奏を聞く妨げにはならない。あ~よかった。

Recorded on September 11, 1972

Personnel: Paul Bley (p)

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2008年3月11日 (火)

Charles LloydがJason Moran(!)を迎えたライブ作

Lloyd_2 "Rabo de Nube" Charles Lloyd Quartet(ECM)

リリース・ラッシュが続くECMレーベルから大ベテランCharles Lloyd(間もなく70歳である)がJason Moranを迎えてスイス,バーゼルで録音したライブ盤が出た。私はJason Moranの名前はずっと聞いていたが,音源はChristian McBrideのTonicでのライブ盤以外はまともに聞いた記憶がないし,日本ではメジャーにならない人だなぁ~ぐらいの意識しかない。しかし,本国では堂々たるBlue Note専属アーチストであるし,マンハッタン音楽院でも教鞭を取る人物である。だがMoranのピアノの師匠がJaki Byard,さらにはMuhal Richard Abrams,Andrew Hillにもピアノを習ったとあっては,「そういう」音楽性を受け継いでいると仮定すれば確かにメジャーにはなりにくそうではある。

そのMoranとCharles Lloydがいかなる理由で共演に至ったかはよくわからないのだが,そのMoran効果か冒頭からLloydが年齢を感じさせない演奏を聞かせている。Lloydは以前にもBrad Mehldauを共演に迎えたりして,世代の違うミュージシャンとの共演にも積極的であるが,今回もそうした共演がポジティブに機能していることを感じさせる演奏である。このスリリングな響きは明らかにMoranが持ち込んだものと評価できると思うが,これがかなりよい。リズムの2人もこれまた若いが,年齢差をものともしないLloydの挑戦心あるいはバイタリティは大したものである。そうは言いつつもLloydはいつも通りマイペースでソフトでゆったりと吹いているように聞こえるが,バックのリズム隊は結構激しく演奏している。Jason Moran,確かにAndrew Hill的にも響いており,フリーにはならないが,フリー一歩手前と言ってもよい瞬間も現れている。聴衆もかなり熱く反応しているのがビビッドに捉えられたライブ・アルバムと言えよう。

アルバムとしてはECM的な響きとは言えないが,これは優れたコンテンポラリー・ジャズ・アルバムとして評価してよい佳作だと思う。恐るべき老人,Lloydである。星★★★★。

尚,Charles LloydはMoran,Harlandを帯同し,4月に来日しBlue Noteに出演するようである。今のところはベースレスの編成で来ることになっているようだが,このアルバムを聞いた後ではかなり気になるところではある。

ところでこのアルバムの一部でLloydが吹いているTarogatoというのはソプラノ・サックスのような音を出すハンガリーを起源とするクラリネットの仲間の木管楽器だそうである。ブログをやっていると,いろいろ雑学も増えますな。

Recorded Live at Theater Basel on April 24, 2007

Personnel: Charles Lloyd(ts, a-fl, tarogato), Jason Moran(p), Reuben Rogers(b), Eric Herland(ds, perc)

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2008年2月 5日 (火)

Nik Bartsch's Ronin:新しいミニマル・ミュージック

Holon "Holon" Nik Bartsch's Ronin (ECM)

スイス出身のNick Bartschのグループ"Ronin"によるECM第2作である。彼らの音楽はミニマル・ミュージックがより明確なリズム・アプローチを持ったものという感覚が強いのだが,実は私はReichやRiley等のミニマルも好きなので,こういう音楽は一度はまるとなかなか抜けられない世界である。ということで彼らのECM第1作"Stoa"も私は結構好きだったが,その第2作とあっては当然飛びついた私である。

ECMのWebサイトにもあるとおり,Bartschは以前日本に滞在していたこともあり,グループ名"Ronin"はまさしく「浪人」を意味したものらしいが,だからと言って日本的な感覚があるかというとそんなことは全くない。

今回の作品は前作よりもややミニマル度が低下しているようにも感じられ,全編でよりリズミックでスリリングな感覚が増しているようにも思える。曲によってはロック・ビートを感じさせるし,特に2曲目の"Modul 41_17"や3曲目"Modul 39_8"の一部に顕著であるが,それでもこれはまだまだミニマルな世界であることに間違いはない。しかし,これが相当カッコいいミニマルなのだ。

ミニマル・ミュージックは興味がない人には何が面白いかわからない世界だと思うのだが,何も考えず身を委ねるというのが私のやり方である。しかし,ここで展開される音楽は決して環境音楽ではないので,若干違う聞き方(ちゃんと鑑賞もできるということである)が必要かもしれないが,それでも私はこれって好きだなぁ。これからもこの路線で作品を発表し続けて欲しいものであるが,ライブってやるんだろうか。やるなら見てみたいグループである。尚,Bartschは前作ではRhodesも弾いていたが,本作ではピアノに専念している。もちろんピアノだけでもクール度が上がって全く問題ないが,Rhodes好きの私は次作ではRhodesをまた弾いて欲しいなぁ。星★★★★。

Recorded in July 2007

Personel: Nik Bartsch(p), Sha(b-cl,as), Bjorn Meyer(b), Kaspar Rast(ds), Andi Pupato(perc)

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2008年1月26日 (土)

Marcin Wasilewski:何ともECM的なECMレーベル作

January "January" Marcin Wasilewski Trio (ECM)

なんともはやECMレーベルのファンが随喜の涙を流して喜びそうな美しいピアノ・トリオ・アルバムである。音数の少ない中で展開される徹底したECMの美学とも言うべきこの演奏は,長年のこのレーベルのファンをも魅了すること間違いなしである。

曲もリーダーWasilewskiのオリジナル(一部メンバーの共作を含む)に加えて,"Cinema Paradiso"(そう「ニュー・シネマ・パラダイス」である)やPrinceの"Diamond & Pearls"なんかが収められているのが,ECMとしては異色といえば異色なのだが,そこはレーベル・カラーの枠にきっちり入った演奏でこれまた嬉しくなってしまう。

音楽としては静謐という表現が相応しいものであり,この音楽にスリルを求めてはならない。録音も含めたピアノの美しい音,それを適切に支えるベースとドラムスのコンビネーションに静かに身を委ねればよいのである。寒風吹きすさぶ今年の冬だが,この音楽を聞いて,じっと寒波が去るのを待つというのもある意味おつである。"January"というタイトルもまさしくそんな感じでいいなぁ。

いずれにしても,Simple Acoustic Trioの名でも知られる彼らのECMレーベルでの2枚目となるこのアルバムは,彼らのECM第1作をはるかに凌駕するものと聞いたし,この1作で私にとってWasileuskiは,Tord Gustavsenと並んで今後のECMを支えていって欲しいピアニストとなった。ECMレーベルのファンのみならず,欧州ジャズのファンにも強く勧めたいアルバムである。久々にECMらしい音楽を堪能したような気がするという満足度を含めて星★★★★★。さすがManfred Eicher,いいところを押さえている。私のツボに完全にはまってしまった。

それにしても,ミュージシャンの名前,どう発音するんだろうなぁ...。ポーランドだからしょうがないか。

Recorded in February 2007

Personnel: Marcin Wasilewski(p), Stawomir Kurkiewicz(b), Michal Miskiewicz(ds)

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2008年1月21日 (月)

ECMファンも注目すべき新レーベル Inner Ear

Now "Now" Vigleik Storaas Trio(Inner Ear)

輸入盤屋をうろついていたら,大変美しいピアノ・トリオが聞こえてきた。一聴するとECMレーベルの音楽のようにも響く,明らかにヨーロッパのピアノ・トリオである。ジャケはJan Garbarekの"Dis"のようでもあり,よくよく見てみるとInner Earという聞いたこともないノルウエーの新興レーベルである。ご丁寧に「私たちは新興レーベルで,これが3枚目のリリースとなります」と書いてある。

更によくよく見てみると,何と録音はECMでもおなじみのRanbow Studioだし,エンジニアはこれまたECMでおなじみのJan Erik Kongshaugである。ECMのように響くのもむべなるかなという感じである。最近のECMも相変わらずいいのだが,New Series追加以降,昔ながらのサウンド・カラーがそれほど明確とは言えなくなってきたのではないかと思っていた私のようなリスナーが,まさに一聴して気に入ってしまったのである。とういうことで,個人的には注目すべきレーベルの登場と考えざるをえない。レーベル名称は直訳してしまえば「内耳」であるが,それでは身も蓋もないので,「内に秘めた聴覚」ぐらいに訳しておけば,ECMのかつてのレーベル・キャッチコピー"The Most Beautiful Sound Next to Silence"にも通ずるような部分があるようにも感じられるではないか(うーむ,ややこじつけか)。

このレーベル,ToreとRogerのJohansen兄弟がオーナーらしいのだが,出ているアルバムは本作を含めてまだ3枚。今からECMのコンプリートは厳しいが,この新興レーベルなら全部集めてみたくなるような演奏である(ということで,私は一気に3枚購入してしまった)。

いずれにしても,本作はとにかく美しい響き,あるいはそれらしい曲が楽しめるアルバムであり,ヨーロッパ・ピアノ・トリオ好きにはたまらないものではないかと思う。このレーベル,引き続きウォッチしていくこととしたい。まずはご祝儀的に星★★★★★。

Recorded on April 12 & 13, 2007

Personnel: Vigleik Straas(p), Mats Eilertsen(b), Per Oddvar Johansen(ds)

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2008年1月10日 (木)

ECM未CD化作:今度はMichael Nauraだ!

Naura "Vanessa" Michael Naura(ECM)

ECMレーベル未CD化作品紹介として更にもう一枚。本日はMichael Nauraである。Nauraと言えば,旧作が澤野商会から発売されて注目を集めたが,この作品はバスーンというジャズでは非常に珍しい楽器を加えた編成で吹き込まれたアルバムとして記憶に残していいアルバムだと思う。演奏はジャズ・ロック的というか,当時としては結構コンテンポラリーな響きを持つものである。

このアルバムがCD化されていない理由は,これまたプロデュースがNaura本人で,Manfred Eicherでないということだろうと考えられるわけだが,演奏自体は何とも言えないゆるくも心地よいグルーブが感じられるものとなっており,私はこのアルバムは再発してもいいのではないか思っている(もちろんどれぐらい売れるかはわかったものではないが...)。B面2曲目の"Listen to Me"なんて気持ちよいことこの上ないのである。最後に収められた"Black Pigeon"は相当ベタなサウンドで,Lalo Schifrinが書いた"Dirty Harry"のサントラに入れてもよさそうな演奏と言ってしまえばそれまでである。しかし,このアルバム,以前は国内盤も発売されたこともあるはずだが,市場ではほとんど目にすることがないのは,このグルーブが一部の好き者に受けているためではないかと思えるのである。

確かに日本人フォトグラファー,内藤忠行氏によるアルバム・カバーの写真は一体何なのよという話もあるが,サウンドだけ聞いている限りは私は結構このアルバムは好みである。サウンドは古臭いと言えばそのとおりであるが,74年の音楽として聞けばいいだけの話である。星★★★★。

Recorded on September 1974

Personnel: Michael Naura(p, key), Woffgang Schluter(vib, marimba, perc), Eberhard Weber(b), Joe Nay(ds), Klaus Thunemann(bassoon)

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2008年1月 9日 (水)

Wolfgang DaunerのECM作:未CD化は当然だろう

Dauner "Output" Wolfgang Dauner(ECM)

先日,ECMレーベル未CD化作品としてEnrico Ravaのアルバムを取り上げたので,調子に乗って別の未CD化アルバムも紹介してしまおう。このアルバムがCD化されない理由はこの悪趣味なジャケットにあると思わざるをえない作品だが,内容も特にA面はノイズ系で,全くECMらしくない。それにしてもジャケの美しさには定評のあるECMとしてはそのひどさとしては悶絶ものではないか。

このECMレーベル最初期の音源と言ってよいアルバム(何と言ってもECM1006である。つまりレーベルとしては6枚目のアルバム。)だが,このアルバムのプロデュースをManfred Eicherが務めていること自体がまずは驚き(というか信じられない事実)である。ECMは確かに多彩な音楽性を飲み込んだレーベルであるが,ここまで強烈なノイズ系はあまり記憶がない。私は結構ECMというレーベルのファンだが,これはさすがにねぇというところである。

この手の実験的な音楽(音楽と言えるかどうかも私のような凡人にはわからん)を好まれるリスナーには大いに受けるだろうが,はっきり言って私は残りの生涯で何度ターンテーブルに乗せるか疑問のアルバムと言ってよい。1970年という時代がこうした実験作を生み出したとも言えるかもしれないが,現在の中年となった私(若い頃なら若気の至りですまされるかもしれんが...)にとってはお呼びでないアルバムである。もはやこのアルバムには稀少性以外の価値は少なくとも私にとってはないし,21世紀に敢えて本作をCD化する理由は全くない。B面になって多少は音楽と呼べる展開を示すが,それでも星★で十分。

Recorded on September 15 and October 1, 1970

Personnel: Wolfgang Dauner(p, key), Fred Braceful(perc, vo), Eberhard Weber(b, cello, g)

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2008年1月 8日 (火)

Enrico RavaのECM未CD化アルバム

My_pictures_2 "Opening Night" Enrico Rava(ECM)

ECMレーベルには未CD化の作品がいくつかあるのだが,このアルバムもその一つである。Enrico Ravaは今でも現役ECMアーチストなのだから再発してもよさそうなものだとも思うが,オーナーのManfred Eicherが決める話だからどうこう言えた筋合いではない。まぁこのアルバムはEicherプロデュースではないというのがCD化されない理由のようにも思えるが,作品としてはどうか。

まず,冒頭しっとりと"I'm Getting Sentimental Over You"で幕を開けるのだが,2曲目のタイトル・トラックがいきなりフリー・ジャズに転じてそのギャップの大きさに思わずのけぞる。このある意味「なんじゃこりゃ~(松田優作かっ!)」的な乗りが,Eicherの美学に合わないという気がする。全編を通して聞いてみても,やはりこのタイトル・トラックがあまりに浮いていてどうも居心地が悪いのである。かと思えばB面冒頭のRavaのオリジナル"GRRR"はD'Andreaのピアノ・ソロはいけているのだが,肝心のコンポジションがなんとも陳腐な曲調でずっこけさせてくれる。尚,"Venise"という曲ではなんとAldo Romanoがギターを弾いているが,これが結構いけているのにはびっくり。ちょいとイージーリスニングみたいなのが気になるが,これはこれで悪くない。最後の"Thank You, Come Again"は軽快そのもの。但し,D'Andreaのバッキングはややうるさい(所謂目立ちたがり屋的ピアノ)。

ということで,結局このアルバム,プロデュースに一貫性がないのと,曲による良し悪しがはっきりし過ぎというのが問題になるのだろうと思う。一本芯が通っていないという表現が適切かもしれないが,だからいつまで経ってもCD化されないと考えてよいような作品である。星★★☆。

Recorded on December 1981

Personnel: Enrico Rava(to, fl-h), Frank D'Andrea(p), Furio Di Castri(b), Aldo Romano(ds, g)

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2008年1月 7日 (月)

Standards Trio誕生の瞬間の一コマ

Changes_2 "Changes" Keith Jarrett(ECM)

私がこのアルバムを聞くのも随分久しぶりのような気がする。LPに久々に針を落とすまではもっとフリーなアプローチだったと思っていたが,それは間違いだった。もちろん全編インプロヴィゼーションによるものではあるが,フリーな感覚と言うよりも,ECMらしい美しいピアノが楽しめるアルバム(特に最後の"Prism"が美的感覚が最も強い)であった。だから思い込みは恐ろしい。

この作品は"Standards Vol.1/2"と同時期の録音であり,三作合わせて一組の演奏群として楽しんでもいいものだと思うが,いかんせん"Standards"が良過ぎて,こちらまで手がまわらないというのが,買ってからこれまでの私の正直な感覚であった。しかし,このアルバム,聞かずに長年放置してきたのが勿体ないような出来であり,ちゃんとこのアルバムを聞いていなかったことを今回深く反省した次第である。確かにB面の"Flying Part 2"にはかなりフリーに傾斜する瞬間もあるのだが,"Survivors' Suite"等に比べれば「聞き易さ」という観点からは全く問題にならない程度のものであり,ダイナミックなピアニズムだと思えばよいものだと思う。

私がこのアルバムを聞かなかったのは冒頭に書いたとおり思い込みとそれから発生する食わず嫌い的な発想によるものである。それを反省も込めて星★★★★☆。なぜ半星少ないかはこの作品がこのトリオの最高傑作だとは思わないからだが,それでもこの作品はかなりよい。

My_pictures尚,このStandards Trio誕生の瞬間を捉えた三作がボックス・セットで発売されるそうである。価格はかなりお手頃なので,未聴の方はこれを機に購入しても損をすることはないだろう。それにしても結成からもう25年か~。早いなぁ。

Recorded in January 1983

Personnel: Keith Jarrett(p), Gary Peacock(b), Jack DeJohnette(ds)

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2008年1月 4日 (金)

Keith Jarrettの弾くヘンデル:これが結構よいので怖がらずに聞きましょう。

Handel "Handel: Suites for Keyboards" Keith Jarrett(ECM New Series)

既にこのブログで私のヘンデル好きを告白してしまったが,一般的にヘンデルと言えば,オラトリオや管弦楽のイメージが強いのは致し方ないところである。しかし,私がヘンデルで本当に好きなのはそうした曲ではなく,管弦楽系ならばオルガン協奏曲,そのほかでは木管のためのソナタやそしてこの鍵盤組曲である。鍵盤組曲に関して言えば,もともとそれほどアルバムがない中で,Andrei GavrilovとSviatoslav Richterによるライブ盤というあまりに美しいアルバムがあり,全曲版ならばそちらが決定盤である。今なら2枚組みの2セットで\3,000ぐらいで買えてしまうといういい時代になったが,何とも言えぬピアノの響きが楽しめる。

その鍵盤組曲をKeith Jarrettが弾くとどうなるかということなのだが,これが何ともいいのである。実は私はKeith Jarrettにしろ,Chick Coreaにしろ,ジャズ・ピアニストがクラシックの曲を演奏することに強い違和感をおぼえてきたのだが,そうした見解を改めなければならないと思える演奏である。私がKeithのヘンデルを初めて聞いたのは,リコーダー・ソナタのバックでチェンバロを軽快に弾いているアルバム(RCAレーベルの作品ながら,プロデュースはECMのManfred Eicherである)だったのだが,それが意外にもよかったので,このアルバムも買ったというのが正直なところである。しかし,期待を裏切られることはなかった。曲そのものとの相性かもしれないが,Keithのピアノ・タッチとヘンデルの曲は相当親和性が高いように感じられる。爽やかささえ感じさせる好演奏と言えばよいだろうか。

ある意味,バッハやヘンデルならば超絶技巧は必要なかろうが,逆に演奏にはピアニストの個性が出てきてしまうものである。そうした観点で,このヘンデルはちゃんとKeith Jarrettのヘンデルとなっていると思う。くせがなく,美しい響きが全編で楽しめる。私のヘンデル好きという弱みもあり,星★★★★☆(5つ星はGabrilovとRichterのアルバムにこそ相応しい)。

誤解を恐れずに言えば,ヘンデルはバッハよりもはるかにわかりやすく,ずっと気楽に聞ける音楽である。Keithのファンが,クラシック