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カテゴリー「ECM」の記事

2017年2月13日 (月)

ユニークな作りの児玉桃によるECM第2作

"Point and Line" 児玉桃(ECM New Series)

_20170212_3_2日本のピアニスト,児玉桃がECMからアルバム"La Vallée Des Cloches"をリリースした時には,その年のベスト盤の1枚に選出するほど,優れたアルバムだと思った(記事はこちら)。そのレパートリーが非常に私の好みだと思ったが,ピアノの響きに身を委ねたいと思ったことは今でも記憶に新しい。

その児玉桃がECMから第2作となるアルバムをリリースすると知った以上,これは買わないわけにはいかないし,聞かないわけにもいかない(きっぱり)。ということで,デリバリーされたものを早速聞いたのだが,これが非常にユニークな作りではあるが,前作同様に優れたピアノ作品になっていて,嬉しくなってしまった。

今回の作品の特徴はドビュッシーと日本の現代音楽作曲家,細川俊夫の"Etude"が交互に出てくるというのが,まずユニークなところである。まぁ,これがバッハと細川俊夫が交互に出てくれば,私も頭を抱えたかもしれないが,近代作曲家と言ってよいドビュッシーと,細川俊夫ならば,それほど違和感はない。むしろ,ここで想定されているのは,二人の作曲家の作品を並列させながら,それを一つの組曲のように成立させようという試みのように思える。

ライナーに児玉桃も書いているように,ドビュッシーの「エチュード」はその番号にかかわらず,単体でも,組み合わせで弾いてもいいという自由度の高いものであり,このアルバムでもそうした考え方に基づいて配置されている。それらに挟み込まれるのが細川俊夫の「エチュード」ということになる。作曲されたタイミングにはほぼ100年近い違いがある二人の作曲家の作品を相互に連動させて,一枚のアルバムを構成させるというのが本作の狙いとすることは,児玉桃とECMの総帥,Manfred Eicherの合意のもとに行われており,それがいかにもECMらしいと思わせるところであり,そして見事な成果になっていると思う。

私が現代音楽のピアノ作品が好きだということもあるが,今回のこの作品もドビュッシーのエチュードという,ドビュッシー最晩年の作品と,児玉桃自身が初演者となっている曲を含む,細川俊夫作品の意表を突いた組み合わせによって生み出される美しい響きに改めて身を委ねたくなった私である。これはもはや私のツボにはまった音楽である。星★★★★★。

Recorded in January 2016

Personnel:児玉桃(p)

2017年1月25日 (水)

相変わらずのMr.中音域(笑):Colin Vallon。

"Danse" Colin Vallon (ECM)

_20170122Collin VallonのECM第3作である。私は前作"Le Vent"を評して「アルバムを通じて,ある意味環境音楽のような音楽が流れ続ける。感覚的にはフランス映画のBGMのようだと言ってもよいかもしれないぐらいの感じ」と書いて,星★★☆というECMに甘い私にしては辛い評価をした。更に第1作"Rruga"に関しては「中音域が中心で,かなり落ち着いた響きを醸し出している」と書いているが,その印象は本作でも全く変わらない。結局こういう音楽の人なのである。

本作においても,音使いは中音域が中心であり,"Tsunami"に顕著なように,左手から繰り出されるリズムはミニマル的に響く。前作には辛い評価をした私だが,今回もそう高くは評価できないとしても,前作よりは印象はよかった。だが,ほかのECMのピアニスト,例えば先日当ブログに取り上げたBenedikt Jahnelと比べても,個性,美的感覚,タッチともに,私に響いてこない。

もちろん,ECMらしいピアノの響きは相応に美しいと思うが,起伏の乏しさは否定できない事実である。ECMのピアニストには清冽でクールな感覚を持つ人は多いが,この人の低い温度感は飛び抜けている気がしてならない。

結局のところ,私にとってはTigran Hamasyanとの相性の悪さ同様のものをCollin Vallonには感じてしまう。私にとってはTigran Hamasyanは何度聞いてもいいと思えない代表みたいな人(苦笑)だが,Collin VallonはTigran Hamasyanほどではないとしても,私の感情に訴求してこないのだ。アブストラクトな感覚の曲調の演奏をしても,ECMのほかのピアニストなら気にならない(むしろ喜ぶ)のだが,Collin Vallonの場合は,この人の演奏の気に入らない点が浮かんできて仕方ないのである。ミニマル・ミュージックに耐性のある私(耐性どころか積極的に聞いているって話も...)ではあるが,この人の音楽を面白いと思えないのは本当に相性としか言いようがない。前作,本作を聞いて,次も買おうというモチベーションが高まらないのは残念なことである。星★★★。結局は趣味じゃないんだってことにしておくが,ECMから出たとしても次作の購入は多分ないだろうなぁ。

Recorded in February, 2016

Personnel: Colin Vallon(p), Patrice Moret(b), Julian Sartorius(ds)

2017年1月16日 (月)

新譜のリリースを前に,Benedikt Jahnel TrioのECM第1作を聞く。

"Equilibrium" Benedikt Jahnel Trio (ECM)

_20170115間もなくECMからの第2作,"The Invariant"のリリースが迫るBenedikt Jahnelであるが,この人聞いたことがあったかなぁ?なんて思ってECM棚(笑)を見たら,あった,あった。危うくダブり買いをするところであった。それだけちゃんと聞いていないということの裏返しで,反省した私である。

ドイツ出身のBenedikt JahnelはECMにはCyminologyというグループ名義でもアルバムを残しているが,そちらも未聴の私には,正直どういうピアノだったのかという情報が欠如していた。しかし,ECMのサイトで新作の音源をちらっと聞いて,これは多分私の好みだなぁなんてことで,新作は発注済みの私だが,このECMでのトリオ第1作については,本当に記憶になく,保有していることすら忘れていたのは実に情けない。

しかし,このアルバムを聞けば,いかにもECMらしい美しいピアノ・トリオの音となっていることがわかって,もっと早くちゃんと聞いておくべきだったと思ってしまった私である。ドイツのミュージシャンというと,もう少しアブストラクトな感覚が強い演奏を想像してしまうが,これは若干そうした表現も聞かれるものの,基本的にはECM的美学に彩られた演奏ということができると思う。人によっては,こういう演奏って,どれを聞いても同じに聞こえるという批判もありそうだが,いいのである。ECMの音が好きな人間にとっては,こういう音が出てくるだけで満足してしまうのである。

このトリオ,リーダーはドイツ,ベースはスペイン,ドラムスはカナダという国際的な編成であるが,トリオ結成から今年で10年ってことはこのレコーディング時は結成から4~5年ぐらいってこともあると思うが,非常にバランスの取れた演奏を聞かせて,これはいいトリオだと思えた。ということで,私の趣味にジャスト・フィットであり,新作への期待も高まったこともあり,星★★★★☆としよう。それにしても,Manfred Eicherも次から次へといいミュージシャンを見つけてくるねぇとまたまた感心。

Recorded in July 2011

Personnel: Benedikt Jahnel(p), Antonio Miguel(b), Owen Howard(ds)

2017年1月10日 (火)

今年最初のECMレーベルはJohn Abercrombieの新作。

"Up and Coming" John Abercrombie Quartet (ECM)

_20170107昨年も素晴らしい作品を連発して,音楽好きを唸らせたECMレーベルであるが,私の今年の最初のECMのディスクはJohn Abercrombieの新作である。前作"39 Steps"発表後,今回も参加のMarc Coplandを連れて来日したのも,もう2年前以上の話になるのかと思うと,時の経つのは早いと思わざるをえない。ということはアルバムも約2年半ぶりのリリースということになるが,久しぶりって感じはしない。メンツは今回もMarc Copland入りの前作から不動のクァルテット(特にGress~Baronとの付き合いは更に長いが...)だが,これが何とも穏やかなアルバムとなっている。

まぁ,ジョンアバは録音当時71歳だし,一番若いJoey Baronだって還暦を過ぎているクァルテットなので,音楽が落ち着いたものとなることは当然と言えば当然なのかもしれないが,それにしても,静謐で美しい音楽となっているのが,いかにもECMらしい。ある意味枯れた味わいとでも言うべきものだが,いかにもジャズ的に響く瞬間もあり,なかなかいいアルバムだと思える。

基本的にはジョンアバとCoplandのオリジナルで占められた本作において,唯一の例外として彼らが"Nardis"をやっているところに私としては耳が行ってしまう。CoplandはRalph Townerとのデュオ作"Songs without End"で"Nardis"をやっているが,当然,このクァルテットにとってもフィットするチョイスとなるだろうと思えたからである。結果としては予想通りと言ってもよいかもしれないが,今まで聞いたどの"Nardis"よりも穏やかであっさりとした印象を与えるのが,やはりこのアルバムのイメージを物語っているように思える。まぁ,ある意味,カヴァー・アートのSheila Rechtshafferのパステル画は,実にこの音楽をよく表しているようにも思える。この人のパステル画ってのは,結構後期ターナーもしくは印象派の絵画をややダークにした感じもする(換言すれば,いわゆるパステルっぽくない)のだが,そういう観点で聞くとまた面白いねぇ。

いずれにしても,全編に渡ってそんな感じなので,刺激には乏しいとも言えるのだが,こういう音楽を必要とする場合もあると思えるし,穏やかに新年を過ごすには適したアルバムだったということで,甘いとは思いつつ,星★★★★☆としてしまおう。いずれにしても,リーダーのジョンアバには甚だ失礼ながら,特筆すべきはMarc Coplandのピアノのタッチの美しさとフレージングだと思ってしまうのが,ファンの弱みである(苦笑)。

Recorded in April & May, 2016

Personnel: John Abercrombie(g), Marc Copland(p), Drew Gress(b), Joey Baron(ds)

2016年12月16日 (金)

ECM「積んどく」シリーズの4枚目はFerenc Snétberger。

"In Concert" Ferenc Snétberger(ECM)

Ferenc_sntbergerちょっと間があいたECM未聴盤の掘り起こしシリーズの4枚目。Ferenc Snétbergerって記憶にある名前だと思っていたら,Enjaから出たベスト盤は保有しているはずだが,現在行方不明(爆)。件のアルバムは,店頭かどこかで聞いて購入したものの,一軍を張るまでは行かず,今や二軍にも入っていないのだから,私の審美眼もいい加減なものである。

それはさておきである。本作はFerenc Snétbergerがブダペストにおいて,ライブ・レコーディングしたソロ作であるが,アルバムの曲名が"Budapest Part I-VIII"となっているところからすると,Keith Jarrettのように完全即興で臨んだ作品と考えていいのだろう。ついでにアンコールが"Over the Rainbow"ってところからしても,Keithの世界をギターでやろうとしたように思える。だが,Keith Jarrettのような緊張感というよりも,より開放的な感じで,曲調も親しみやすいものとなっているのが特徴的。

非常に聞きやすいアルバムなので,Keith Jarrettのアルバムと同列に扱うことはできないし,ある意味,この人の出自を考えれば,これぐらいは楽勝でできてしまうのではないかという感覚があるのも事実である。ということで,高く評価することはないとしても,悪いアルバムだということでは決してない。逆にこんなに即興的に弾けてしまうということに,なんちゃってギタリストの私としてはジェラシーを感じざるを得ないと言っておこう。星★★★☆。

Recorded Live at Liszt Academy, Budapest in December 2013

Personnel: Ferenc Snétberger(g)

2016年12月 4日 (日)

David Virellesの10インチ盤:なぜこれが突然ECMからリリースされるのか,全くの謎だ。

"Antenna" David Virelles(ECM)

Antennaブログのお知り合いの工藤さんが情報をアップされていて,そのリリースを知ったDavid Virellesの10インチEPである。6曲,22分しか収録されていないこのアルバムについては,これがなぜECMからリリースされるのかは全くの謎である。

プロデュースはDavid Virelles自身とアルバムにも参加しているAlexander Overingtonが行っており,Manfred EicherもSun ChungもSteve Lakeも一切関わっていない。そして,このジャケット・デザインである。全くECMらしくないのである。また,David VirellesのECM初リーダー作である"Mboko"とも全く雰囲気が違っていて,私としては戸惑ってしまったというのが正直なところである。

音楽としても,かなりアバンギャルドあるいは実験的な感覚が強く,そうした音源が,わざわざ10インチEPという,現在では極めて特殊なフォーマットでECMからリリースされる理由が理解できないのだ。まぁ,これは保有していることに意義があるって感じなのかもしれないが,ECMとしては極めて異色のリリースと言わざるをえない。ただ,通常のECMリリースとのギャップが大き過ぎて,正直あまり評価できない。星★★ぐらいで十分だろう。

Antenna_labelちなみに,本作の製造は米国で行われていて,Distributed and Marketed by ECM Recordsとある。かつ,レーベル・デザインも通常のECMとは異なっているので,ますます謎は深まるばかりである。まぁ,何らかのコネがあったんだろうとしか言いようがない。

尚,クレジットにパーカッションとして記載されているLos SeresとはDavid Virellesによりプログラミングされた架空のパーカッション・アンサンブルなので,念のため。

Personnel: David Virelles(p, org, el-p, prog, sample), Alexander Overington(electronics, sample, cello), Henry Threadgill(as), Román Díaz(vo), Marcus Gilmore(ds, MPC), Rafiq Bhatia(g), Etián Brebaje Man(vo), Mauricio Herrera(perc), Los Seres(perc)

2016年12月 2日 (金)

ECM「積んどく」シリーズの3枚目はMarkus Stockhausen & Florian Weber。

"Alba" Markus Stockhausen & Florian Weber(ECM)

AlbaECMの未聴盤掘り起こしシリーズの3枚目である。春ごろに出たアルバムを今頃取り上げているのもなんだかなぁ...。それはさておき,Markus StockhausenはECMにも何枚かアルバムを残しているが,ECMからのリリースは2000年に出た"Karta"以来のことだから,随分と久しぶりになったものだ。

今年出たECM作品では同じ編成でのWadada Leo SmithとVijay Iyerのデュオってのがあったが,随分と感じが違うと思わせるのが,いかにもECM的である。静謐と躍動をうまくミックスしながら,想定以上にメロディアスだったのが新鮮であった。Karlheinz Stockhausenの息子だけに,こっちが身構えているだけって話もあるが(笑),こんなラッパだったっけ?と思ったのも事実である。

しかし,それ以上に効いていると思わせるのが,Florian Weberのピアノである。この人の名前はどこかで聞いたことがあるが,このブログの記事にはしていないので,勘違いかもしれないが,なかなかのテクニックを持った美しいピアノを弾く人である。タッチもクリアで,この人の実力は侮れないと思った。

いずれにしても,これって典型的なECMサウンドと言ってもよい作品であり,昔からのファンでもこれは結構嬉しくなる作品である。せっかくだからMarkus Stockhausenの作品を聞き直してみるか。いかに自分がちゃんと聞いてないかバレバレになりそうでこわい...。いずれにしても,抒情性もあって,これは好きだなぁ...。もっと早く聞いておけばよかった(爆)。星★★★★☆。

Recorded in July, 2015

Personnel: Markus Stockhausen(fl-h, tp),Florian Weber(p)

 

2016年11月28日 (月)

ECM「積んどく」シリーズの2枚目はGiovanni Guidi。

"Ida Lupino" Giovanni Guidi(ECM)

_20161126_2「積んどく」状態のECMの未聴盤を掘り起こすということで,今回はGiovanni Guidiである。Guidiと言えば,甘美なピアノを聞かせる人(彼のアルバムに関する記事はこちらこちら)と思っていたが,今回はリード,トロンボーンにドラムスというベースレス編成で,しかもクラ/バスクラはLouis Scravis,ドラムスはフリーもこなすGerald Cleaverでは一体どうなってしまうのかがこのアルバムへの期待であり,不安であった。

ということで,聞いてみると,やっぱりというか,当然と言うか,これまでのGiovanni Guidiのアルバムとは全然雰囲気が違う。フリー的な要素も示しながら,時折美的なセンスが顔を出すのがこの人らしいが,それでもこれまでの路線からは大きく異なるところで,大きく好みが分かれてしまうことは間違いない。もちろん,これまでのアルバムにおいても,美的なだけでなく,フリー的なアプローチも多少は聞かせていたGuidiではあるが,それはスパイス程度のものであって,今回のレベルにまで行ってしまうことは想像していなかった。

だが,音楽としては結構聞きどころも多く,アヴァンギャルドということもないので,私には抵抗感はない。アルバム後半は静謐な中での抑制された音楽になっており,特に最後のGianluca Petrellaとの共作による"The Gam Scorpions"ではGuidiらしい美感が際立っていて,印象深いエンディングとなっている。だが,ちょっと14曲,収録時間70分超というのは,やや過剰かなぁと思えるのも事実。これまでのGiovanni Guidiの音楽とは一線を画する作品ではあるが,こういうチャレンジをさせてしまうのもECMらしいと言うべきだろう。星★★★★。

Ida_lupinoそれにしても,タイトルとなった"Ida Lupino"とは懐かしい名前である。監督,脚本にも取り組む多才さを持ち合わせながらも,決してメジャーになることはなかった女優の名前をこんなところで見るとは思わなかったが,よくよく見ていたら,Carla Bleyのオリジナルだったのねぇ。Carla Bleyがどういう理由でこのタイトルにしたのか。そっちも興味深い。

Recorded in February 2015

Personnel: Giovanni Guidi(p), Gianluca Petrella(tb), Louis Scravis(cl, b-cl),Gerald Cleaver(ds)

2016年11月25日 (金)

ECM積んどく状態からの脱却を目指す:まずはAndrew Cyrilleから。

"The Declaration of Musiical Independence" Andrew Cyrille Quartet(ECM)

The_declaration_of_musical_independECMレーベルから出される音楽については,大いにシンパシーを感じている私で,せっせと購入はしているものの,あまりにリリースが多いので,ついついCDが「積んどく」状態になっている私である。購入したまま,ろくすっぽ聞いていない,もしくは封さえ切っていないCDが何枚もあるのはさすがにまずいということで,まずはAndrew Cyrilleである。

Andrew Cyrilleと言えば,Ben Monderの"Amorphae"にいきなり登場してびっくりさせられたが(記事はこちら),Cecil Taylorとやる時のような武闘派の姿はそこにも,ここにもない。スタイルの変化なのか,それとも経年変化なのか。Andrew Cyrilleと言えば,基本的にフリー・ジャズにカテゴライズされるドラマーである。本年喜寿を迎えた彼が,自身のリーダー作において,どんな演奏をするのかは極めて興味深いところであったが,そこに加わるのがビルフリでは更に関心が高まる。

昨今のビルフリはCharles Lloydとやったりしていて,以前なら感じられたフリーな傾向は抑制されているように思えるが,今回は1曲目から浮遊系だけじゃないぜという感じのぶちかましモードで攻めてくる。おぉっ,正調フリー・ジャズって感じである。そこに加わるRichard Teitelbaumってのは,Andrew Cyrilleと同い年の大ベテランであり,ノーノに師事したってんだから,筋金入りのアバンギャルドだが,そんなにここでは前面には出ておらず,ビルフリの存在感の方が際立っているって感じである。

フリー・ジャズって言っても,激しくドラムスを叩きまくるタイプの音楽ではなく,ほとんどビートを感じさせない方(笑)のフリー・ジャズである。これは間違いなく「なんじゃこれは?」と思うリスナーが多いタイプの音楽であろうが,私には全然問題ない(爆)。本作のプロデューサーであるSun Chungはこうしたタイプの音楽がお好みと思えるという感じのサウンドであり,最近のManfred Eicherからは感じられない音って気がする。正直言って,何度もプレイバックしたいとは思わないが,こういう音楽があってもよいと思える作品である。星★★★★。

とにかく,キモはビルフリだな。

Recorded in July 2014

Personnel:Andrew Cyrille(ds, perc), Bill Frisell(g), Richard Teitelbaum(synth, p), Ben Street(b)

2016年11月24日 (木)

これは強烈。Keith Jarrettの未発表ライブ音源ボックス。

"A Multitude of Angels" Keith Jarrett(ECM)

Multitude_of_angelsKeith Jarrettが慢性疲労症候群により,長期の沈黙に入る直前の音源がリリースされた。まさにこれらのライブにおいて,Keithは激しい疲労感に襲われていたらしいのだが,そんなことは全く感じさせない演奏となっている。

現在のKeithは,この当時のように長大なソロを演奏することはなくなり,比較的短い即興を聞かせるスタイルに変わっているが,おそらくは病気がこうした演奏をさせることをやめさせたと考えればいいのではないかと思う。現在は現在で素晴らしい演奏を聞かせるKeithではあるが,こうしたスタイルを懐かしむオーディエンスがいることも事実であろう。私がKeithのソロをライブで聞くようになったのは,今のスタイルになってからのことなので,こういうスタイルの演奏も聞いておきたかったなぁというのも正直なところである。

それはさておき,激しい疲労感を覚えていたということが信じられないぐらい,演奏は充実したものであり,ECMにはこうした蔵出し音源がいくらでもあるのではないかと思える。"Hamburg '72"の例もあることだし,こういう蔵出しはこちらとして大歓迎である。まぁ,この音源はKeith本人がDATで録音していたものをリリースしたものであるから,正確に言えばECMの蔵出しではないとも言えるが...。いずれにしても,ECMの歴史上,Performed, Produced and Engineered by Keith Jarrettというクレジット表記はなかなかないのではないかと思える。

ここには現代音楽的な響きもあれば,クラシカルな響きもある一方で,Keithらしいフォーク・タッチも顔を出し,そうそう,Keith Jarrettのピアノはこんな感じだよねぇと思わせるに十分な演奏である。その一方でこうした長大な演奏は集中力を要することは当然であり,それがKeithの病因となったのだとすれば,皮肉なことと言わざるをえないが,それを音楽として楽しんでしまう私も勝手なものである。

だが,ECMの総帥,Manfred Eicherがこの音源に対し,ECM2500~2503というきりのいい番号を与えたことには,この音源に対する自信があるものと考えられるし,Keithも納得の音源だったのであろうということは想像に難くない。そう考えて然るべき音源であり,これを聞いたらまいりましたと言わざるをえないというのが正直な感想である。喜んで星★★★★★としよう。

Recorded in Modena, Ferrara, Torino and Genova on October 23, 25, 28 and 30, 1996

Personnel: Keith Jarrett(p)

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