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カテゴリー「ECM」の記事

2018年12月30日 (日)

2018年の回顧:音楽編(その2:ジャズ)

2018_albums_4

今年を回顧するのも今回が最後。最後はジャズのアルバムに関する回顧で締めよう。今年もジャズに関してはそこそこ新譜も購入したし,相応の枚数を記事にした。もちろん,聞いても記事にしていないものもあるが,それは優先順位を下げてもまぁいいだろうというものである。

そんな中で,ブログの右側に掲載している今年の推薦盤が,かなり高い比率でECMレーベルによって占められていることは明らかで,私のCD購入の中心がECMになってしまっていることの裏返しと言っても過言ではない。そんなECMにおいて,私が今年最も感銘を受けたのがMarcin Wasileuski Trioの"Live"であった。彼らの音楽の美的な部分と,ライブにおけるダイナミズムが結びついて,これが実に素晴らしい作品となった。彼らのアルバムのレベルは総じて高いが,ますますこのトリオが進化していることを如実に示したものとして,今年の最高作はこれを置いてほかにないと思えた。今回,改めて本作を聞いたが,来年1月の来日が実に楽しみになってきた私である。

ECMにおいては,Bobo Stensonの"Contra la Indecisión"も素晴らしかったし,Norma Winstoneの映画音楽集もよかった。Barre Phillipsのベース・ソロ作にはECMレーベルの愛を感じたし,Ben Monderが効いていたKristijan Randaluの"Absence"も印象深い。そのほかにも優れたアルバムが目白押しだった。そうしたECMにおける次点のアルバムを挙げると,暮れに聞いたAndrew Cyrilleの"Lebroba"ではないかと思っている。記事にも書いたが,このアルバムの私にとっての聞きどころはWadada Leo Smithのトランペットであったわけだが,この切込み具合が実にいいと思えた。

中年音楽狂と言えば,Brad Mehldauなのだが(爆),今年も彼自身のアルバムや客演アルバムがリリースされて,非常に嬉しかった。リーダー作が2枚,Charlie Hadenとの発掘音源,ECMでのWolfgang Muthspiel作,奥方Fleurineのアルバムで4曲,そしてLouis Coleのアルバムで1曲ってのが,今年発売された音源ということになるはずだが,その中ではチャレンジングな"After Bach"を推すべきと思っている。ジャズ原理主義者からすれば,こんなものはジャズとは言えないってことになるだろうが,ジャンルを越境するのがBrad Mehldauなのだということを"After Bach"は強く感じさせてくれた。

ジャズという音楽に興奮度を求めるならば,これも年末に届いたAntonio Sanchezの新作"Lines in the Sand"が凄かった。SanchezはWDR Big Bandとの共演作"Channels of Energy"もリリースしたが,興奮度としては,"Lines in the Sand"の方が圧倒的であり,これぞAntonio Sanchezって感じさせるものであった。このエネルギーを生み出したのはトランプ政権への怒りだが,メッセージ性がどうこうというレベルをはるかに越えた興奮度を生み出したことは大いに評価したい。

もう一枚の興奮作はJohn McLaughlinとJimmy Herringの合体バンドによるMahavishnu Orchestraの再現ライブ,"Live in San Francisco"であった。McLaughlinももはや後期高齢者であるのだが,何なんだこのテンションは?と言いたくなるのは,以前4th DimensionのライブをBlue Note東京で見た時と同様である。いずれにしても,ロック的な興奮という点では,このアルバムを越えるものはないだろう。

そのほかに忘れてはならないアルバムとしてあと3枚。1枚は本田珠也の"Ictus"である。これは2018年の新年早々ぐらいにリリースされたものであり,記憶が風化しても仕方がないのだが,このアルバムを聞いた時の印象は実に鮮烈であった。こうした素晴らしいアルバムが日本から生まれたことを素直に喜びたい。実に強いインパクトを与えてくれた傑作であった。

そしてCharles LloydとLucinda Williamsの共演作,"Vanished Gardens"を挙げたい。アメリカーナ路線を進むCharles LloydがLucinda Williamsという最良と言ってよい共演者を得て,かつ80歳を越えたと思えぬ創造力を維持しながらリリースした本作は,前作"I Long to See You"には及ばないかもしれないが,今年出たアルバムにおいて,決して無視することができない存在感を示している。ここにWayne Shorterのアルバムを入れていないのは,あのパッケージ販売が気に入らないからであって,音楽だけならもっと高く評価していたと思えるが,Shorterの分までCharles Lloydを評価したい。

最後に今年の最も美的なアルバムとして,Lars DanielssonとPaolo Fresuという好き者が聞けば涎が出てしまうような組合せによるデュオ・アルバム,"Summerwind"を挙げておこう。聞き手が想像し,期待する世界を体現するこの二人による超美的なサウンドにはまじで痺れてしまった。世の中がこのように穏やかなものとなることを祈念しつつ,今年の回顧を締めくくりたい。

2018年12月29日 (土)

2018年の回顧:音楽編(その1:ジャズ以外)

2018_albums_1

今年を回顧する記事の3回目はジャズ以外の音楽にしよう。昨今はよほどのことがないと,新譜を買う場合でも,ストリーミングで試聴して購入するのが常となっているので,以前に比べると,購入枚数は劇的に減っているし,以前なら中古で買ったであろうアルバムも,そんなに回数も聞かないことを考えると,そっちもストリーミングで済ませるようになってしまった。

そんなことなので,先日発売されたミュージック・マガジン誌において,今年のベスト・アルバムに選ばれているような作品もほとんど聞けていないような状態で,何が回顧やねん?と言われればその通りである。そんな中で,今年聞いてよかったなぁと思う作品は次のようなものであった。

<ロック/ポップス>Tracy Thorn:"Record"

<ソウル>Bettye Lavette:"Things Have Changed"

<ブルーズ>Buddy Guy:"Blues Is Live & Well"

<ブラジル>Maria Rita: "Amor E Musica"

そのほかにもNeil YoungやRy Cooder,Ray Lamontagneもよかったが,聞いた時の私への訴求度が高かったのは上記の4枚だろうか。その中でも最も驚かされたのがBuddy Guy。録音時に80歳を越えていたとは思えないエネルギーには心底ぶっ飛んだ。また,Bettye Lavetteはカヴァー・アルバムが非常に素晴らしいのは前からわかっていたのだが,今回のBob Dylan集も痺れる出来であった。しかし,印象の強さという点で,今年の私にとってのナンバー1アルバムはBuddy Guyである。しかし,買いそびれているアルバムもあってMe'Shell Ndegéocelloのカヴァー・アルバムもいいなぁと思いつつ,ついついタイミングを逃してしまった。これを機に買うことにするか,あるいはストリーミングで済ませるか悩ましい。

そして,今年は新譜ばかりではないが,現代音楽のピアノをよく聞いた年であった。特にECMから出たものが中心であったが,心を落ち着かせる効果のある,ある意味私にとってのヒーリング・ミュージックのような役割を果たしていたと言っていこう。

Joni_mitchell_isle_of_wight最後に映像に関して言えば,何はなくともJoni Mitchellのワイト島ライブ。いろいろと議論を呼んだこの時の演奏であるが,凛としたJoniの姿を見られただけで感動してしまった私である。Joni Mitchellと言えば,今年生誕75周年のトリビュート・コンサートが開催されたが,若々しいJoniの姿,声にはやはりファンでよかったと思ってしまう。Joniと言えば,Norman Seeffとのフォト・セッションの写真集を発注済みなのだが,まだ到着していない。そちらは今年中に来るか,越年するかわからないが,そちらも楽しみに待つことにしよう。

2018年12月23日 (日)

年末で記事の更新が滞ってしまった。ってことで,今日はECMのAndrew Cyrille作。

"Lebroba" Andrew Cyrille(ECM)

_20181223先日,海外出張から帰国してから,体力的な限界を感じる中,年末の飲み会とか,ゴルフとかもあり,音楽をゆっくり聞いている暇もなかったというのが実感だ。そのため,記事の更新が滞ってしまったが,ここにも何度か書いているように,以前だったら,投稿の間を空けることに抵抗があったが,最近はそうでもなくなってきたというところに,私も加齢を感じるとともに,ブログへの向き合い方にも若干の変化を感じる。できるときにやればいいのであって,無理に書く必要もないってところである。それによって,PV数は伸びなくなるが,まぁ素人なので,別にそれは大したことでも,クリティカルなことでもない。そうは言いつつ,やめる気もないのだが...。ってことで,今日はこのアルバムである。

Andrew CyrilleってECMとあまり結びつかないイメージだったのだが,Ben Monderのアルバムに参加して,更にはリーダー作として,"The Declaration of Musical Independence"を発表して,そして本作につながる訳だが,全てが総帥Manfred Eicherではなく,Sun Chungのプロデュースという共通項がある。Eicherが引退した後のECMレーベルは,このSun Chungに引き継がれていくと思うが,以前にも書いた通り,この人のプロデュース作には独特なアンビエンスが感じられるという印象が強い。

そして,今回はドラムス~ギター~トランペットという変則的な編成で演じられるが,前作にも参加していたビルフリはさておき,このアルバムのキモは私はWadada Leo Smithのラッパだと思う。比較的静謐な音場を切り裂くWadada Leo Smithのトランペットは静かな中にも,独特の興奮を生み出していて,これはいいと思えてしまう。以前のECMにもこういう変則的な組み合わせのセッション・アルバムが存在したが,そうした感覚を思い出させるものとも言える。

ビルフリはベースレスでも関係ないわって感じで,独特な音場を構築しながら,フレージングはらしさをとことん打ち出してきて,Andrew Cyrille名義のアルバムでありながら,3者のコラボ的な部分が強く感じられるし,曲も持ち寄りであるから,緊密な連携作であることは間違いない。

いずれにしても,このアルバム,ECM的なカラーを持たせながらも,こういうアンビエンスはどうよ?って感じの音作りで,私は大いに気に入ってしまった。でもやっぱり本作はWadada Leo Smithがその価値を高めたのは間違いない。星★★★★☆。

Recorded in July, 2017

Personnel: Andrew Cyrille(ds),Wadada Leo Smith(tp), Bill Frisell(g)

2018年12月 9日 (日)

Art Ensemble of Chicagoのボックスが届く。いつ聞くねん?(苦笑)

"The Art Ensemble of Chicago and Associated Ensembles" Various Artists(ECM)

Aec_and_associated_ensembles一部の好き者の間(爆)で話題のボックス・セットである。ECMにおけるArt Ensemble of Chicago(AEC)のアルバムと,AECのメンバーが参加したアルバムを集成したものであり,18アルバム,21枚組のセットである。正直なところ,これを全部聞くのは大変だなぁと思いつつ,私はECM好きの割に,ここに入っているかなりの数のアルバムを保有していなかったので,丁度ええわということで購入である。

なぜ,かなりの数を私が保有していないか?それは不勉強ゆえにAECの音楽の魅力がよくわかっていなかったということが一番大きい。そうは言いながら,AECが山下洋輔と共演した"First Time"やら,Brigitte Fontaineとやった「ラジオのように」とかも聞いているし,Lester Bowieのリーダー及び参加アルバムは比較的持っている。結局のところ,AEC単独での活動,あるいはそこで展開される音楽にやや苦手感があったのかもしれないなぁと思っている。ということで,今日は18アルバム中"I"となっている"Nice Guys"をプレイバックしている。

"Nice Guys" The Art Ensemble of Chicago(ECM)

Nice_guys思えば,私はこのアルバムを,昔LPで保有していた。多分買ったのは10代の後半だったと思うが,その頃には全くこういう音楽を理解できていなかったというのは上述の通りである。だから売り払うのも早かった。その後,私はどっぷりとECMというレーベルにはまっていくわけだが,それでもAECはフォローの対象からははずれていたのである。

ということなので,このアルバムを聞いたのは何十年ぶりってことになってしまうが,やっぱり変わっているというか,この人たちにしかできない音楽だなぁって気がする。完全なフリーではなく,それこそ「アンサンブル」として演じられるところが,この人たちの面白さなのかなぁと改めて感じた私である。でも,最後に収められた"Dreaming of the Master"とかの路線は非常によかった。多分,以前はB面のこの曲まで行きつかなったんだろうなぁ(笑)。星★★★★。

Recorded in May 1978

Personnel: Lester Bowie(tp, celeste, b-ds), Joseph Jerman(ts, ss, as, sopranino, cl, fl, conch shell, vib, gongs, congas, whistles, vo), Roscoe Mithcell(as, ts, ss, piccolo, fl, oboe, cl, gongs), Malachi Favors Maghostut(b, perc, melodica), Famoudou Don Moye(ds, bells, bike horns, congas, tympani, marimba, bongos, chimes, conch shells\, whistle, wood blocks, cowbells)

2018年12月 3日 (月)

まだまだ出るんだろうなぁ,Keith Jarrettのライブ音源。

"La Fenice" Keith Jarrett(ECM)

_20181201_2Keith Jarrettのライブ音源はある程度のインターバルを置いて,いろいろな場所での音源がそれこそいろいろ出てくる。そして,録音からどうしてこんなに寝かしておく必要があるのかと思わせることも多いが,これもそんな作品である。録音は2006年7月19日であるから,12年以上前である。そして,クラシックの殿堂のようなところの音源もあって,ウィーン国立歌劇場やスカラ座やカーネギー・ホールでのアルバムもあって,これもそうした流れのアルバムである。

最近のKeith Jarrettのソロは,以前のように長大なソロ曲はやらず,だいたいセット当たり5,6曲の即興を行うのが一般的だと思う。前半は現代音楽的なアプローチを強く聞かせ,後半には美的なメロディを増やし,アンコールの小品で痺れさせるって感じの演奏が多いと思う。本作もおそらくはディスク1が前半部,ディスク2が後半ということだと思うが,やはり現代音楽的アプローチが前半は強く出ている。しかし,Part IIIにおいて,いかにもKeithらしいフォーク的な色合いが出てきて,安心感(笑)を結構早く感じられるようになる。そしてその後のPart IVも美しい演奏だし,Part Vはブルージーな感じで,最近の私が聞いたKeith Jarrettのライブより,はるかに聴衆に寄り添った感じがするのがよい。これも場所の成せる業か。ディスク2に移っても,聴衆を突き放す感覚はなく,これはイタリアの聴衆と,La Feniceという場所が影響しているとしか思えない(苦笑)。だって,2曲目には早くもオペレッタ「ミカド」から"The Sun Whose Rays"のような曲をやってしまうのである。

Keith Jarrettは2014年の大阪のライブで完全にキレたことからもわかるように,相当神経質な感じもする人だが,この時はどうも様子が違うと思いたくなるようなピアノの弾きっぷりである。もちろん,それは悪いことではなく,この時の聴衆にとってはまさに幸せなことであったと言わざるを得ない。

こんな調子でアルバムをリリースされるのは,こっちにとっても大変なのだが,こういう演奏なら大歓迎である。星★★★★☆。

それにしてもこのヴェネツィアにあるフェニーチェ劇場,素晴らしい造形である。こういうところで演奏した記録をアルバムとして出したくなるのはアーティストとしては当然か。劇場内部の写真もアップしておこう。美し過ぎるよなぁ。こんなところでオペラを見てみたいものだ。

Recorded Live at Gran Teatro La Fenice, Venice on July 19, 2006

Personnel: Keith Jarrett(p) 

La_fenice

2018年11月 4日 (日)

Shai MaestroのECMデビュー作。これもいいねぇ。

"The Dream Thief" Shai Maestro(ECM)

_20181103ブログのお知り合いの皆さんは,以前からこのShai Maestroについては記事にされておられたが,私はほとんど縁のないまま過ごしてきたと言って過言ではない。例外はCamila Mezaの"Traces"ぐらいである。そのアルバムもMezaの声にはまいっていても,伴奏までは全然触れていない(爆。記事はこちら)。Theo BleckmannのECMレーベル作"Elegy"にも参加しているが,それは購入していても,レビューをアップしていない。この辺りに,私の彼に対する関心の低さが表れていると言っても過言ではない。

しかし,そのShai MaestroがECMからアルバムをリリースするとなっては,事情は変わってくる。ここではECMらしい詩的で抒情的なピアノを中心とした演奏を聞かせており,このレーベルのファンにとっては納得の出来と言ってもいいのではないか。昨今,ECMは有望なピアニストを傘下に収めて,いいアルバムを連発しているが,そこにこの一枚も加わったってところだろう。

それにしてもタイトルが「夢泥棒」ってのが,いかにもそれっぽいが,唯一演奏されるスタンダード,"These Foolish Things (Remind Me of You)"で聞かせるソロ・ピアノはKeith Jarrett的な感覚もありながら,やはり美しいという表現しか出てこない。その一方,最後の"What Else Needs to Happen"では米国前オバマ大統領の銃規制のスピーチをコラージュして,音とは違って硬派な主張も打ち出し,通常のECMとはちょっと違った雰囲気も出している。

いずれにしても,非常に聞き易いトリオ演奏であることは間違いなく,この響きに単純に身を委ねていれば,心地よく時間は過ぎていく。まぁ,私としては夢見心地の間に,心を奪われたって感じで,まさにこれが本当の「夢泥棒」。星★★★★☆。

Recorded in April, 2018

Personnel: Shai Maestro(p), Jorge Roeder(b), Ofri Nehemya(ds)

2018年11月 3日 (土)

今回もKenny Wheelerを想起させたWolfgang MuthspielのECM作

"Where the River Goes" Wolfgang Muthspiel(ECM)

_20181028_2前作"Rising Grace"から比較的短いインターバルでリリースされたWolfgang MuthspielのECMにおけるリーダー作である。前作は約2年前の今頃のリリースだったはずだが,結構豪華なメンツをまたも集めるというのは,ECMレーベルにとっても相当なことである。ドラムスがBrian BladeからEric Harlandに代わっているが,優秀なミュージシャンであることには変わりはない。だが,私にとっては,Brad Mehldauの参加が本作のキモであることは,前作同様である(きっぱり)。

前作を聞いた時に,私はECMの先祖がえりと評した(記事はこちら)が,今回もその印象は変わらない。Ambrose Akimsireのラッパを聞いていると,どうしてもKenny Wheelerの往時のアルバムを思い出してしまうのである。そして,本作のメンバーは必ずしもECMゆかりの人ばかりではないが,セッション・アルバムとしてリリースするところはまさに70年代から80年代のECMにはよくあったことだ。思うに,異種格闘技とまでは行かないが,メンツをとっかえひっかえしながら,アルバムを作っていたようなところもECMにはあった。本作はドラムスを除いて,前作とメンバーは一緒だから,必ずしもそうした企画とは違う。しかし,出てくる音がどうしてもKenny Wheeler的に聞こえてしまうのだ。だが,それは決して悪いことではなく,むしろ私にとっては歓迎すべき音作りだったと言ってよい。

ブルージーな感覚が強いBrad Mehldauのオリジナル"Blueshead"以外が,リーダーMuthspielのオリジナルだが,全編を通じて決して「熱く」ならないのが,ECMらしいところである。まぁ,このジャケットで,ゴリゴリのジャズが出てきたら,逆に笑ってしまうが...。Brad Mehldauとしては助演に徹しているって感じが強いが,やはりこれだけのメンツが揃えば,レベルは高いねぇ。ってことで,毎度のことながらECMには甘い私だが,星★★★★☆。

Recorded in February 2018

 Personnel: Wolfgang Muthspiel(g), Ambrose Akinmsire(tp), Brad Mehldau(p), Larry Grenadier(b), Eric Harland(ds)

2018年10月23日 (火)

一聴,KeithのEuropean Quartetを想起させたTrygve Seimの新作

"Helsinki Songs" Trygve Seim((ECM)

_20181021書きかけていながら,途中で止まっていた記事を今更ながらアップしよう。振り返ると,1カ月近く放置してしまった。

豊作が続く秋のECMレーベルであるが,これまたいいアルバムである。サックス奏者,Trygve Seimが,ピアノにこれもECMにおける注目株であるKristjan Randaluを迎えた新作だが,一聴して思い浮かべたのがKeith JarrettのEuropean Quartetであった。特に冒頭の"Sol's Song"に聞かれる牧歌的にも,フォーク的にも響く展開がそう感じさせたのは間違いないところで,そうした第一印象を与えるに十分な響きであった。

曲によっては,静謐な展開もあり,まぁ必ずしもKeith的ではないなぁと思わせるが,全編に渡って,粒揃いの曲が並んでいて,これは結構多くのリスナーに受け入れられるのではないかと思わせる。

タイトルに"Helsinki Song"とあるのは,ライナーにあるように,リーダー,Seimがフィンランド,ヘルシンキにあるフィンランド作曲家協会のアパートメントの滞在中に,ここに収められた曲のほとんどを作曲したことによるものだろう。Trugve Seimはノルウェイの人だが,やはり地域的な近接性で通じ合うところもあるんだろうねぇ。

Trygve Seimはその見た目からは想像できないような(笑),リリカルな旋律を生み出しているが,それを支えるKristjan Randaluのピアノが楚々として美しい。こういう音楽を聞いていると,私はまんまとECMの総帥,Manfred Eicherの思うつぼにどんどんはまり込んでいっている気がするが,それでも好きなものは仕方ないのだ。

これもECM好きにはすんなり入ってくる音楽だと思うが,一般的な音楽,あるいはジャズのリスナーにとってはどうなのかなぁと思わせる部分もある。しかし,このスタイリッシュな響きを聞いていれば,私には満足度が高かった。ということで,原則,私はECMには星が甘いがこれも,星★★★★☆としてしまおう。

Recorded in January, 2018

Personnel: Trygve Seim(ts, ss), Kristjan Randalu(p), Mats Eillertsen(b), Markku Ounaskari(ds)

2018年10月22日 (月)

Hans Otte: このミニマルな響きがたまりまへん。

"Das Buch der Klänge" Herbert Henck(ECM New Series)

_20181019_3Hans Otteという作曲家については今まで聞いたこともなかったが,Herbert HenckがECMで弾いているんだから,これも買ってしまうのが「性」である。

一体どんな音楽なのかということで,プレイバックした瞬間から,美しい和音に彩られたミニマルな響きに思わず嬉しくなってしまった私である。この音,私の好物なのだ(笑)。Hans Otteという人は作曲家でありながら,同時代の現代作曲家を招聘したコンサート・シリーズも開催していたようだ。そうした点を考えれば,このミニマルな響き具合はどういうことなのかとも思えるが,ネット上の情報によると,この人のほかの曲は結構小難しい中,この作品だけが例外のようにも受け取れる。

だが,例外だったとしても,この美しい響きに身を委ねれていれば,私は満足してしまうのだが,Hans Otte自身,この音楽について,"Rediscovers the listners as a partner of sound and silence, who in the quest for his world, wishes for once to be totally at one with sound"なんて言っているようだから,これってやっぱりECMのコンセプトに合致するよなぁなんて思ってしまう。一部アブストラクトな響きも出てくるが,それも含めて心地よい。

この曲のタイトルは英語にすれば,"The Book of Sounds"である。「響きの書」とはまさに言い得て妙。ECMらしいサウンドと相まって,私はこのアルバムのプレイバック中,結構な至福感に浸っていたことを告白してしまおう。いや~気持ちよかった。星★★★★★だ。

Recorded in September, 1997

Personnel: Herbert Henck(p)

2018年9月30日 (日)

ECM New Seriesから今日はMosolovのピアノ曲集。

"Alexandr Mosolov" Herbert Henck (ECM)

_20180923ここのところ,ボックス・セット聞きが続いていたので,ちょっと気分を変えよう。私はECM New Seriesについては長年手を出さずにいた。Steve Reichは基本的にNew Seriesに入ると思うが,最初はNew Seriesが存在していなかったはすであるから,普通にECMの作品としてリリースされていたと記憶する。昔からReichが結構好きだった私は,ECMのReich作品は買っていたものの,そのほかのNew Seriesについては,Andras Schiffが吹き込むようになるまで,ほとんど購入していなかったと言ってもよい。しかし,いつの頃からか,現代音楽のピアノ曲に関しては,ECM New Seriesからリリースされる音楽が素晴らしいと感じるようになって,今では現代音楽のピアノ曲に関しては,せっせと買うようになっているのだから,人間は変われば変わるものである。

そんなECM New Seriesにおいて,ピアノ曲のアルバムを最も吹き込んでいるのは,多分このHerbert Henckだろうと思う。カタログには8枚載っているが,Jean Barraquéのピアノ・ソナタだけは廃盤状態のようである。だが,私はそれ以外のアルバムは保有していて,直近で入手したHenckのアルバムの一枚がこれである。

不勉強にして,ここでHenckが取り上げたAlexandr Mosolovという作曲家については,初めて聞いたが,調べてみると,旧ソ連時代には反体制の疑いをかけられ,相当シビアな生活を強いられた人のようである。1900年に生まれて,ここに収められた曲は1920年代中盤に書かれているので,かなり若い時期の作品となる。だが,その後強制労働に送り込まれてしまったようなので,作曲家としてのキャリアは30年代以降停滞してしまうことになる。だが,20代半ばで書かれた音楽としては,構造がしっかりしたピアノ曲であり,そんなにアバンギャルドな感じはしないが,ロシア的な重量感はあるかなぁって気がする。

どちらかと言うと,私が好む現代音楽のピアノ曲は,もう少し「間」を重視した曲が多いので,本作に収められた曲は,ちょいとタイプが違うように思えるのだが,それでもこうして全く聞いたこともない(そして,自分では決して見つけることのない)ような音楽に出会えるのも,ECM New Seriesゆえってことになるだろう。それはそれでありがたいことである。星★★★★。

Recorded in March 1995

Personnel: Herbert Henck(p)

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