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2016年おすすめ作

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カテゴリー「ブラジル」の記事

2018年7月10日 (火)

奥方Fleurineの新作にBrad Mehldauが4曲で客演。

"Brazilian Dream" Fleurine (Sunnyside)

_20180708Brad Mehldauは奥方Fleurineのアルバムにも結構ゲスト参加しているが,今回の新作も同様である。アルバム・リリース後のライブにもゲストで出ているから,随分奥さん思いだといつも感心してしまう。私が彼女のアルバムをこのブログで取り上げたのはもう10年以上前の"San Francisco"になる(記事はこちら)が,彼女のアルバムはそれ以来ってことになるのかもしれない。"San Francisco"でも感じられたブラジリアン・フレイヴァーが今回は更に強まって,タイトル通り完全にブラジル的なアルバムになっている。

今回,Brad Mehldauはrhodesとピアノで4曲に客演しているが,あくまでもバッキング中心の,楚々としたプレイぶりである。このアルバムにはクリポタことChris Potterも3曲で客演しているが,4曲目"Ausencia de Paixao(Passion)"において、テナー・ソロで場をかっさらうのとはちょっと違う(笑)。もちろん,Mehldauも6曲目"My King"や"Sparkling Gemstone"等でソロは聞かせるが,出しゃばった感じはない。だからと言って,決してクリポタが出しゃばっているという訳ではないので念のため。あくまでもおぉっ,クリポタ!と思わせるだけである(笑)。

今回はバックのミュージシャンも"Boys from Brazil"としてブラジル人で固めているが,彼らはFleurineのWebサイトの情報によれば,NYCをベースにして活躍している人たちのようである。そういう人たちのサウンドをバックにしたFleurineは,オランダを出自とするにしては,いい感じのブラジル感を醸し出している。私はブラジル音楽もそこそこ好きだが,そんな私でも非常に心地よく聞くことができるアルバムになっている。彼女はギターでここに収められたオリジナルを作曲したらしいが,かなりブラジルにはまっているってことなのだろう。

もちろん,リアルなブラジル音楽を聞くなら,私はMaria Ritaのアルバムを選ぶだろうが,それでもBrad Mehldauやクリポタの客演もあり,これは相応に評価してもよいと感じている。聞いてもらえばわかるが,ちゃんとブラジル音楽になっているのである。そうした点も加味して,甘いの承知で星★★★★☆としてしまおう。尚,レコーディング日の記載はあるが,年が書かれていない。多分2017年だろうということで下記のような記述にしておく。

Recorded on May 30 & 31, 2017(?)

Personnel: Fleurine(vo, g), Ian Faquini(g), Eduardo Belo(b), Vitor Goncalves(p, accor, rhodes),Rogerio Boccato(perc), Chico Pinheiro(g), Brad Mehldau(p, rhodes), Chris Potter(ts, ss, a-fl) with Strings and Horns

2018年4月 6日 (金)

コレクターはつらいよ(20);Joni Mitchellトリビュート盤の1曲

"A Tribute to Joni Mitchell" Various Artists(Nonesuch)

_20180401_2久しぶりのこのシリーズだが,このディスク自体はリリースされたのはもう10年以上前のことである。私自身はてっきり記事にしていたと思ったのだが,このブログにはアップしていなかった。なぜだ...?(苦笑) 

このアルバムはタイトル通り,様々なミュージシャンがJoni Mitchellの音楽をインタープリテーションするという企画アルバムである。その中で1曲,Brad Mehldauのソロが入っているのだから,これは買わないわけにはいかないし,そもそもJoni Mitchellも偏愛する私としては,多分Brad Mehldauが参加していなくても買っていたのではないかと思われる。

Brad Mehldauが演じているのはアルバム"The Hissing of Summer Lawn"から"Don't Interrupt the Sorrow"というなかなか渋いチョイス。これがいかにもBrad Mehldauらしい演奏で嬉しくなってしまう。やっぱりわかってるねぇ,って感じである。

だが,このアルバム,Brad Mehldau以外にも聞きどころ多数である。アフリカ風味だった"Dreamland"をブラジル的に仕立て直したCaetano Veloso,無茶苦茶渋く"For the Roses"を歌うCassandra Wilson,Joni Mitchellへのシンパシーを強く感じさせるPrinceの"A Case of You",そして真打ち登場的にラストに収められたJames Taylorの"River"等,どれも捨てがたいし,どれも魅力的である。

ただねぇ,冒頭のSufjan Stevensの"Freeman in Paris"はいじり過ぎでこれはちょっとなぁと思うファンも多いだろう。これは個性の表出としては認められても,歌詞だけ使って,原曲の曲の持つよさを全然活かしていないのは納得いかないねぇ。ということで,全体としては星★★★★ぐらいだろう。

Personnel: Sufjan Stevens, Bjork, Caetano Veloso, Brad Mehldau, Cassandra Wilson, Prince, Sarah McLachlan, Annie Lenox, Emmylou Harris, Elvis Costello, k.d.Lang, James Taylor

2018年2月25日 (日)

Maria Rita,最高である。

"Amor e Musica" Maria Rita(Universal)

Amor_e_musicaブラジル音楽に決して造詣が深い訳ではない私でも必ず新譜を買ってしまう人がいる。Maria Ritaはそんなミュージシャンの代表である。私は後追いもいいところだが,今や彼女のリーダー・アルバムは全部保有しているぐらいなのだ。

今回のアルバム・タイトルは「愛と音楽」と来たが,これがまじで最高である。ブラジル音楽の普遍的なよさというのを強く感じさせてもらった。正直言って,これほど気持ちよいと思わせてくれれば,何の文句もない。

まぁ,ジャケに写るMaria Ritaの表情は,これまでとちょっと印象が違うかなぁって気もするが,それはそれ,これはこれである(笑)。この曲のよさを聞けば,無条件に推薦したくなる傑作。星★★★★★。

参加ミュージシャン多数なので,Personnelは省略するが,これってまじでいいですわぁ。

2017年12月29日 (金)

2017年の回顧:音楽編(その1)-ジャズ以外

今年も大詰めが近づき,いよいよ今年の回顧も音楽に突入である。まずはジャズ以外の音楽について取り上げよう。私が高く評価したアルバム(★★★★☆以上)については,2017年のおすすめ作としてブログの右側に掲示しているので,大体予想がついてしまうという話もあるが,まぁそれはさておきである。

Vkingur_lafsson私が今年ジャズ以外の音楽で聴いて,最も感銘を受けたのはVíkingur ÓlafssonのPhilip Glassのピアノ作品集であることは疑いのない事実である。この清冽な響きには正直ノックアウトされてしまった。私は今年は現代音楽のピアノを結構聞いたと思うが,ほとんどはECMレーベルの作品であり,それはピアノの響きと演奏が一体化していて心地よいということがあるのだが,このVíkingur ÓlafssonはDeutsche Gramophoneからの作品であり,ECMでないということが重要なのだ。これはまじで最も感動した作品の一枚であった。

Graceそしてそれと双璧なのがLizz Wrightの"Grace"である。本作はジャズのカテゴリーに入れてもいいと思ったが,本質的にこれはルーツ・ミュージック,あるいはソウルの世界である。よって,ここに取り上げることにするが,記事を書いた時の「Cassandra Wilsonを越えた」という表現に私には揺らぎはない。Lizz Wrightはこれまでも優れた作品をリリースしてきたが,これこそこれまでの彼女にとっての最高傑作と言ってもよい出来である。傑作という表現以外思いつかないぐらいの超絶作品。素晴らしい。

Moonchild心地よさという点ではMoonchildの"Voyager"が最高であった。メロウ・グルーブっていうのはこういうのを言うのだと思わせるに十分なアルバム。音楽に何を求めるかっていうのはいろいろあるところではあるが,心地よさ,身体が揺れるという感覚を感じさせてくれるに十分なアルバムであった。彼らのライブを見逃したのは痛かったが,こうした演奏に触れる機会を与えて頂いたブログのお知り合い,kenさんには大いに感謝したい。本当に気持ちいいアルバムである。

Southern_blood_2こうした作品に加えて,今年涙なくして聞けなかった作品というのが一枚ある。それがGregg Allmanの遺作,"Southern Blood"である。作品としての質がどうこうということではなく,私は本作に純粋に感動してしまったのである。加齢により涙もろくなっているということも影響しているが,本作は死期を悟ったミュージシャンのまさに"Swan Song"である。ある程度年齢を重ねたリスナーにとっては,これはツボに入ってしまうこと確実な音楽と言える。私は決してAllman Brothers Bandに思い入れのある人間ではないにもかかわらずの感動なのだ。これは本物だと思っている私である。

そのほかにもいろいろ面白いアルバムはあったが,いずれにしても,先日発表された「ミュージック・マガジン」のベスト10とは見事なほどに全く無縁のセレクションになってしまったなぁ。まぁ,自分の嗜好で音楽を聞いているので,違うのは当たり前だが。いずれにしても,来年も自分の好みに忠実に過ごしていければと思っている。プロじゃないからね(笑)。だが,上に挙げた4枚はどれを聞いてもはずれはないと言っておこう。

ここに挙げていないアルバムにもいいものはあった。Joe Henry,Tangerine Dream,Rose Cousins等は無視するには惜しかったのだが,自分の中での感覚を重視したらこういうチョイスになったということである。おっと,忘れてはいけないが,今年入手して嬉しかったものはGeorge Harrisonの"All Things Must Pass"のアナログ再発盤とKraftwerkの3-D Box。我ながらオタクである(爆)。

2017年10月10日 (火)

久々に聞いたらヒーリング効果抜群だったIvan Lins曲集

"A Love Affair; The Music of Ivan Lins" Various Artists(Telarc)

_20171008このアルバムを聞くのはかなり久しぶりである。無性にブラジル音楽が聴きたくなって,ブラジル音楽が収まっているラックを漁っていて,久しぶりに聞いてみるかってことになった。

そもそもメロディアスなIvan Linsの曲をいろいろな人がやっているのだが,これがヒーリング効果抜群というか,相当和める(笑)。これほど音楽が気楽に聞けるのも久しぶりって感じである。まぁ,Chaka Khanみたいに,やっぱり自分色に染めてしまう人も入っているが,そっちが例外的であり,全体的にはゆったりした感覚でIvan Linsの曲のアダプテーションが楽しめるって感じである。

曲の出来はそれぞれ多少の良し悪しはあるとは思うが,こういうアルバムなので,目くじらを立てるほどではない。そうした中で,これはいいねぇと思ったのがLisa FischerとJames "D-Train" Williamsによる"You Moved Me to This"である。この二人の声が何ともこの曲にマッチしている。Dianne Reevesのバックで楚々としたピアノを聞かせるJoe Sampleもいいねぇ。

そして,Jason Milesのプロデュースのもと,集められたミュージシャンは下記の通り,相当に豪華で,Ivan Linsも歌だけでなく,キーボード,エレピで一部の曲に参加している。やっぱりいい曲を書く人だと思わせた。こういう企画アルバムは評価が難しいが,一本筋が通っているとまともな作品になるし,この心地よさにはついつい点も甘くなり星★★★★。

Personnel: Sting(vo), Vanessa Williams(vo), New York Voices: Peter Eldridge, Lauren Kinhan, Darmon Meader, Kim Nazarian(vo), Chaka Khan(vo), Lisa Fischer(vo), James "D-Train" Williams(vo), Brenda Russell(vo), Freddie Cole(vo), Dianne Reeves(vo), Ivan Lins(vo, key, el-p), Michael Brecler(ts), Bob Berg(ts), Dave Koz(as), Jay Beckenstein(as), Grover Washington, Jr.(ss), Jim Pugh(tb), Jason Miles(key, org,prog), Rob Mathis(key, prog), Oscar Hernandez(key,p), Joe Sample(p), Jan Folkson(prog), Dean Brown(g), Romero Lubambo(g, cavaquinho, vo), Chuck Loeb(g), Marcus Miller(b), Will Lee(b), Mark Egan(b), Vinnie Colaiuta(ds), Marc Quinones(perc), Cyro Baptista(perc), Pamela Driggs(vo)

2017年6月 7日 (水)

ピアニスト,Egberto Gismontiのもの凄さ。

"Alma" Egberto Gismonti(Carmo)

_20170606ECM系列のCarmoレーベルからリリースされた作品だが,もともとはEMIから出ていたCDにボーナス・トラックを追加したものらしい。但し,オリジナルにあった"Infancia"という曲が省かれているようである。

Gismontiと言えば,まずはギターのイメージが強いが,ピアノもうまいことはわかっている。しかし,本作は1枚をピアノで通しており,そしてその手腕は見事としか言いようがない。はっきり言ってしまえば,普通のピアニストでは勝てないレベルである。全編を通して,開いた口がふさがらないぐらいうまい。強靭なタッチ,優れたインプロヴィゼーション能力はある意味Keith Jarrett級と言ってもよい。マルチなタレントを持つミュージシャンは何をやらせても上手いということはわかっているし,去年のライブでもピアノから繰り出されるメロディに圧倒された私だったが,久々にこのアルバムを聞いて,やっぱりすげぇやって思ってしまった。そんな月並みな表現しか出てこないほど圧倒的なピアノである。改めての驚きも含めて星★★★★★。

Recorded in 1987 & 1993

Personnel: Egberto Gismonti (p)

2017年5月 3日 (水)

Deodatoがオケと共演するという,いかにもな企画のアルバム

"Artistry" Deodato (MCA)

_20170429このブログにも何度か登場しているDeodatoである。私は彼のエレピが生み出すグルーブ感が好きなのだが,一昨年のどうしようもないライブを見せられて,今後は彼のアルバムはもうえぇわと思っている。そんな私でも,以前のアルバムまで手放す気はないのだが,そんな中で,中古でゲットしたまま,あまり聞いていないアルバムを取り出してきた。

これはCTIからMCAへ移籍後のアルバムだが,セントルイス交響楽団との共演ライブという,いかにもな企画のアルバム。Depdatoのアルバムは,ホーン・セクションは結構充実しているから,オケに期待されるのはストリングスってことになるだろうが,オケをフィーチャーした曲は"Farewell to a Friend"が準備されているが,ありがちな映画音楽,あるいはへなちょこなアダージェットのような響きで,別にこうしたサウンドを期待しているリスナーは多くないだろうと言いたくなる。まぁ,ライブ盤だから,こういうのもありってことだとは思うが,Deodato=グルーブだと思っている私のようなリスナーにとってはどうでもよい(きっぱり)。

だから,その次に"Super Strut"が演奏さえると,Deodatoかくあるべしと思ってしまうのである。クラシックのアダプテーションが多いDeodatoであるから,ここでも「なき王女のためのパヴァーヌ」もやっているが,そこでのストリングスの響きはよしとしても,オケと共演することによる相乗効果までは得られているとは到底言えない。セントルイス交響楽団と共演だから,"St. Louis Blues"もやっちゃいましたってのも,いかにも安易。

まぁ,そうは言いながら,Deodatoのサウンドは嫌いではないのだが,別にこれは持っていなくても問題なかろうと思える凡作と言ってよいだろう。正直言って,オケが邪魔なだけという,企画倒れ作。星★★☆。

Recorded Live at the Missisippi River Festival

Personnel: Eumir Deodato(key), John Tropea(g), John Giulino(b), Nick Remo(ds), Rubens Bassini(perc), John Eclert(tp), Larry Spencer(tp), Sam Burtis(tb), Robert Mintzer(fl, sax) with St. Louis Symphony Orchestra

2016年12月29日 (木)

2016年の回顧:音楽編(ジャズ以外)

今年の回顧の3回目。今回はジャズ以外の音楽である。このブログにも何度も書いている通り,Apple Musicのようなストリーミング・サービスを利用することによって,CDを買うこと自体が減っているのは事実である。よほどひいきにしているミュージシャンは別にして,基本的には,Apple Musicで試聴してから購入するということにしているので,失敗の数は減っている。その結果として,新譜として紹介したものの中でも,推薦に値する★★★★☆以上の作品の比率が非常に高くなってしまっている。逆に言えば,Apple Musicで試聴して,全然魅力を感じなかったものについては,このブログにもアップしていない。今年,新譜としてこのブログにアップしたものは80枚程度ではないかと思うが,結局それでも100枚以上は購入していることにはなるはずなので,普通の人に比べれば,まだまだ買っている方だということにはなろうが,以前に比べれば,かなり減ったという感覚が強い私である。

Blackstarそんな中で,今年の音楽を回顧する場合,多くの有能なミュージシャンがこの世を去ったということが私の意識には強く残存している。その代表が新作"★"のリリース直後(2日後)に亡くなったDavid Bowieである。そのタイミングにあまりに驚かされ,そしてショックを受けたことは1年近く経った今でも変わらない。ある意味ではカッコよ過ぎるが,遺作となった"★"も枯れたところを全く感じさせなかっただけに,その死への驚きが増してしまうのである。Bowieの死のインパクトが強過ぎて,Glenn FreyやPrinceも亡くなったという重大な事実がかすんでしまうところに,David BowieのDavid Bowieたる所以がある。

Leonard_cohen同じように,新作をリリースして間もなく亡くなったLeonard Cohenも同様である。彼の音楽は決して取っつきやすいものではないと思うが,彼が亡くなったというニュースに接して,彼の新作のタイトル・トラック,"You Want It Darker"をネットで試聴して,そこに宗教的なものを感じてしまった私が,そのアルバムを購入し,更に強烈な印象を受けたことは事実である。死期を悟った人間が作った2枚のアルバムが今年を代表するものというのもいかがなものかと思わせるが,それでもこの2枚に関しては,私はどうしても優劣はつけられないのである。"★"については,前作"The Next Day"の方が上だと書いた私でも,Bowieの死と結びついた段階で,評価を越えてしまった。ということで,今年を代表する2枚は"★"と"You Want It Darker"ということにせざるをえない。

Believersこれらの2枚の前で,ほかのアルバムがどうしても分が悪いものとなってしまうのは仕方がないが,私の印象に残っているものとして,瑞々しさという意味でDeacon Blueの新作,"Believers"を挙げたい。どうしてこんないいアルバムがほとんど話題にならないのか,私にとっては不思議で仕方がないが,Ricky Rossのポップ職人としての技は,もはや匠の領域としか言いようがない。ここのところ,彼らの新作("The Hipsters","A New House",そして本作)が出るたびに,私はその年のベスト盤に選んでいるが,私の琴線をとことんくすぐってくれるバンドである。より多くの人に聞かれるべき音楽として,改めて強く推薦したい。

Fever_dreamそして今年,Deacon Blueと並ぶ瑞々しさを感じさせたのがBen Wattの新譜"Fever Dream"である。ライブの回顧でも取り上げたBen Wattであるが,一時期のDJ三昧の生活から,ミュージシャンとしての生活に軸足を移してくれたことは本当に歓迎すべきことである。前作"Hendra"も2014年のベスト盤に選んでいるし,その年にはDeacon Blueの"A New House"も選んでいて,いつもお前のチョイスは変わらないではないかと言われるかもしれないが,いいものはいいのである(きっぱり)。私としては"Hendra"よりも"Fever Dream"の方が更にいい作品だと思っている。ライブとの合わせ技もあり,今年もBen Wattを選出である。

Otis_reddingソウルやクラシック,そしてブラジル音楽は今年はあまり縁がなかった年であった。クラシックでは年末にAndras Schiffのベートーベンのピアノ・ソナタ・ボックスもリリースされているが,あれは純粋新譜ではないので,ここには選びづらい。現代音楽では今年の新譜ではないが,Kate Mooreの"Dances and Canons"を演じた Saskia Lankhoornのアルバムが印象に残った。そして,ソウルは新作はあまり聞いていない中で,Corrine Bailey Raeの久々の新作もよかったのだが,それを上回るインパクトを持っていたのはOtis Reddingの"Live at the Whisky a Go Go: The Complete Recordings"の6枚組である。Corrineには申し訳ないが,Otisと比べられてはこっちを取らざるをえない。ブラジル音楽ではRoberta Saぐらいしか購入していないが,彼女の"Delírio"は実にいいアルバムだったと言っておきたい。

そのほかにもRachael Yamagataの新作もよかったし,King Crimsonのライブ2作品は,彼らが現役バリバリであることを実証したものであった。そのほかにも印象に残るものは多々あるが,私としては順当なチョイスってところだろうな。

2016年12月19日 (月)

2016年の回顧:ライブ編

年の瀬もだいぶ押し詰まってきて,そろそろ今年の回顧をしなければならない時期となった。今年,もう行く可能性がないのはライブなので,まずはライブの回顧からしたいと思う。

ここ数年,私がライブに出掛ける回数が増えていて,一昨年,昨年は22本ずつ行ったが,今年はそれを上回る25本ということになった。これはNYCに2回出張して,各々3回ずつライブを見たのが大きいと思うが,それにしても月2本以上行っていることになるから,結構な頻度なのは間違いない。まぁ,その分,CDを買う枚数は大きく減少しているから,まぁいいってことにしよう。

そして,今年もいろいろなライブに行ったわけだが,回数からすれば,Wayne Krantzである。NYCで2回,東京で1回の都合3回見ているわけだから,私も好きだなぁと思うが,いつも興奮させてくれるので,Krantzは見るに値する人なのである。東京での客入りの悪さは本当に同情したくなるレベルだったが,その分,NYCでの大人気ぶりを見て,安堵した私である。そして,今年最後のライブとなった55 BarにおけるKrantz~Lefebvre~Carlockの凶暴なライブは,出張先での最後の夜を記憶に残るものにしてくれた。ということで,MVPはWayne Krantzである。

一方,今年最高のライブと思えたのはPatti Smithのビルボードでのライブであろう。私は従来からPatti Smith教の信者であると書いてきたが,彼女の歌の持つパワーは半端ではなく,ライブの場で本当に涙してしまったのである。そして,彼女と一緒に歌った"People Have the Power"の記憶は今でも鮮明だ。今,思い出しても,感激に打ち震えるだけのライブだったと思う。

それに次ぐのがBen Wattだろうか。非常にインティメートな環境で聞くBen Wattの音楽は非常に瑞々しく,バンドもタイトな演奏で楽しめるものであった。

もちろん,このほかにもFred Hersch Trio,Joshua Redman~Brad Mehldau,Billy Childs,Jeff Lorber Fusion,五十嵐一生~辛島文雄,Pat Metheny,Mike Stern,Egberto Gismonti等,素晴らしいライブは何本もあった。しかし,いろいろな点を考慮して,どれがよかったかと言えば,Patti Smith,Ben Watt,Wayne Krantzってことになると思う。さすがにPatti SmithのBillboardでの映像はないが,ノーベル賞のセレモニーで歌った"A Hard Rain's A-Gonna Fall"の映像(歌詞を忘れるPatti様)と,私がスマホで撮影したWayne KrantzとBen Wattの映像を貼り付けておこう。Krantzは不完全ながら結構激しい(このKeith Carlockを見よ!),Ben Wattの方は,ほぼ1曲"Nathaniel"を完全に撮影できている。こちらは当ブログでは初公開のものだが,お楽しみ頂ければ幸いである。

2016年4月21日 (木)

素晴らしかったEgberto Gismontiソロ。

Egbertogismonti
Nana Vasconcelosとのデュオ・ライブとして演じられるはずだった今回の公演が,Nanaの急逝によりEgberto Gismontiのソロとなったライブを観に,練馬文化センターに行ってきた。西武池袋線に乗るのは一体何年ぶりになるだろうか。大学時代に家庭教師をしていた頃だから,30数年ぶりってことになるが,その練馬駅前に会場はあった。

どうも会場は知り合いの集いみたいな感じの人々が多く,あちこちで挨拶を交わす声が聞こえたが,私は今回は完全単独行であった。前回,Gismontiを聞いたのは2007年の晴海でのライブだったが,晴海も珍しいヴェニューなら,今回の練馬も珍しいヴェニューである。駅に近いのはいいが,ちょっと通路が狭いので,動線には問題あるよなあなんて,ついつい商売(の一つ)に近いことを考えてしまったが,席は2列目センターやや右寄りというナイスなポジションであった。ギターを弾く姿はばっちり見られたが,ピアノを弾く手が見えなかったのはちょっと残念だった。しかし,それはないものねだりってことで。

演奏は第一部がギターと笙に似たタイのケーンという楽器,そしてノルウェーのウイロー・フルートの持ち換え,第二部がピアノによる演奏ということで,晴海も第一部がギター,第二部がピアノという構成だったので,これが通常パターンと言ってよいのだろう。

演奏はギターのパートはややミスタッチもあったが,まさに技のデパートというような感じで,どうやったら,あんなにハーモニクスを効かせられるのかとか不思議に思いながら聞いていたが,私が最も惹かれたのは唯一スチール弦の12弦ギターで弾かれた曲であった。聞いたことがあるように思えるが,曲名が思い出せない。しかし,オープン・チューニングで奏でられるこの曲が本当に気持ちよかった。Ralph Townerが弾く12弦ギターの音が好きな私ゆえ,こういう音には本当に簡単にまいってしまうのである。演奏を聞きながら,久しぶりにスチール弦を張り替えて,オープン・チューニングの曲を弾きたくなっていた私である。写真は今回のものではないが,雰囲気はほとんど同じである。

そしてピアノで演じられた第2部は,ギターでは土俗的な響きを感じさせる部分もあったGismontiが,メロディアスなフレーズを炸裂させるという展開であった。この人,ピアニストとしても相当のテクニシャンで,左手が強烈だと思ったが,そこから見た目とは異なる美しいフレーズが出てくるのだから,意外性もあると言ってよい。そして"Maracatú"を聞いて,この曲の魅力を再認識していた。本当にいい曲である。

Tenugi_2ということで,音楽的な満足度は極めて高かったが,アンコールで演じられたNanaの映像との「共演」はちょっと蛇足かなとは思っていた。それまでの演奏でも,十分Nanaを追慕/追悼する気持ちは表れていたのだから,あれはなくてもよかったように思う。もちろん,あっても問題はないのだが,敢えてあのようなかたちを取る必要はなかったというだけである。

尚,今回は来場者に結構可愛い手ぬぐいが配られたが,これはNanaの逝去で浮いたギャラを還元したのかなぁなんて「しけた」ことを考えていた私である(笑)。でもなかなかよいデザインだと思うので,写真もアップしてしまおう。

Live at 練馬文化センター大ホール on April 20, 2016

Personnel: Egberto Gismonti(g, p, vo, khaen, willow-fl)

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