2019年6月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            

2017年おすすめ作

無料ブログはココログ

カテゴリー「新譜」の記事

2019年6月24日 (月)

発掘音源その3はWoody Shaw。

Basel-80 "Basel 1980" Woody Shaw(Elemental Music)

発掘音源という観点で,このところのWoody Shawの音源ラッシュはかなり凄いことだと思う。早いもので今年で没後30年ということになるWoody Shawであるが,彼の評価を改めて高めるに値する音源が続々とリリースされるのは非常にいいことだと思う。これも先日リリースされたアルバムであるが,ライブにおける彼の演奏の質の高さを改めて実証するような音源である。タイミングで言えば,Columbiaレーベルで"For Sure"をリリースした時期のライブ音源であるが,脂が乗り切った感じとはまさにこのことか。出る音源のほとんどが満足の行くレベルにあるってのは,結構凄いことだし,どれだけ彼らのライブが充実していたかの証左であろう。

冒頭の"Invitation"からして実に渋い。普通ならばもう少し速いテンポでやりたくなるところをミディアムで演奏して,つかみはOKという感じである。そして"Stepping Stone"でもやっていたVictor Lewisのオリジナル"Seventh Avenue"でギアを上げる。次の"In Your Own Sweet Way"でフリューゲルホーンに持ち替え,一転してリリカルなプレイを聞かせるが,ソロになると熱いフレーズも交えた演奏に転じていく。こういうのを聞くと,ライブの筋書き,あるいはメリハリをちゃんと考えているねぇってのがよくわかる。そして,1stセットの締めは"Stepping Stone"である。ちょいとメロディ・ラインは軽く響くが,Woody Shawのソロの切れ味の鋭いことと言ったら...。Carter Jeffersonとのソロ交換もたまりまへん。聴衆が燃えるのも当然である。そして,それに煽られたかのようなLarry Willisのピアノ。お~いぇい!の世界である。

ディスク2は"Love Dance"で幕開けである。Joe Bonnerが書いた,曲名とはややアンマッチと思えるダークでモーダルな曲は,実にWoody Shawにフィットした感じがする曲である。Larry Willisのソロが先発するが,これまたカッコいい。しかし,やはりこの曲での主役はWoody Shawのソロである。ラッパのフレーズってこうあるべきだとさえ言いたくなるような見事なソロと言いたい。Woody Shawに比べるとStafford Jamesのベース・ソロなんかは冗長な感覚が増してしまうのは仕方ないところか。そして,"'Round Midnight"でも曲とのフィット感が半端ではない。この曲は何と言ってもMilesのヴァージョンが有名なので,Woody Shawも例のブリッジの部分等,アレンジメントはかなりの部分で「採用」しているが,このWoody Shawヴァージョンも十分に魅力的。そこからいきなりStafford Jamesのオリジナル"Teotihuacan"へなだれ込む。ここでも火を噴くようなWoody Shawのフレーズを聞いているだけで,多くのリスナーは満足してしまうはずである。そして,それがCarter Jeffersonのソプラノにも火をつけるって感じだ。カッコよ過ぎである。エンディングは”Theme for Maxine"。最後にオマケで翌年のオーストリアにおける"We'll Be Together Again"が入っているが,これはメンツが変わって,ワンホーン。ブレーメンでの同じクァルテットでのライブにはこの曲は含まれていなかったから,これもよしとしよう。

ってことで,ブレーメンのライブとほぼ同列に捉えてもいいと思える出来のアルバムであるが,ブレーメン盤をより高く評価して,これは星★★★★☆としよう。

いずれにしても,私としてもこういうWoody Shawの発掘音源ばかり聞いていないで,Columbiaのボックスを再聴して,改めて彼の楽歴を振り返るも必要だと思ってしまった。

Recorded Live at Foyer Stadtthater, Basel, Switzerland on January 16, 1980 and in Lustenau Austria on June 20, 1981

Personnel: Woody Shaw(tp, fl-h), Carter Jefferson(ts, ss), Larry Willis(p), Stafford James(b), Victor Lewis(ds), Mulgrew Miller(p), Tony Reedus(ds)

2019年6月23日 (日)

発掘音源2枚目はNeil Young。Stray Gatorsとのライブってのがいいねぇ。

_20190622-2_20190622154101"Tascaloosa" Neil Young & Stray Gators(Reprise)

発掘音源の2枚目は兄貴ことNeil Youngである。彼が1972年に"Harvest"をリリースした後のライブ活動の記録ってことになるだろうが,Stray Gatorsとのライブと言えば"Time Fades Away"である。以前から"Time Fades Away 2"的なアルバムを出す,出すと兄貴は言っていたようだが,ついに先日リリースされたのが本作である。

何と言ってもこのアルバムのポイントは曲である。"After the Gold Rush"やら"Heart of Gold"やら"Old Man"やら"Don't Be Denied"をやっていることからしてポイントが高い。やはりこの頃のNeil Youngの音楽は実に魅力的である。ストリーミングで聞いた時は,ちょっと軽く響いたように感じたが,CDで聞くといい感じに響くから不思議である。やはり通勤途上に「ながら」で向き合っているのと,部屋で聞くのでは環境が違うってことだろうなぁと思うが,いずれにしてもこれは実にいい。グランジのゴッドファーザー化したNeil Youngもいいが,往年のファンってやっぱりこの辺を最も好んでしまうのだろうと言わざるをえない。

実に瑞々しいフォーク・ロックとでも言うべきアルバムだが,私の初期の音楽体験にかなり大きな影響を与えたのがCSN&Yの”4Way Street"だったことからしても,そこから45年近く経過しても,こういう音楽に対するシンパシーは全然変わらないってことだ。私も芸がないと思うが,こういうのは星★★★★★しかつけようがないのだ(笑)。それが惚れた弱みってことだ(と開き直る)。久しぶりに"Time Fades Away"のLPでも聞いてみるかね。

Recorded Live at University of Alabama on February 5,1973

Personnel: Neil Young(vo, g, p, hca), Ben Keith(pedal steel, vo), Jack Nitzche(p, vo), Tim Drummond(b), Kenny Buttrey(ds)

2019年6月22日 (土)

発掘音源の嵐。一発目はKing Crimson。

_20190622 "Live in Newcastle" King Crimson(DGM Live)

昨今,いろいろな発掘音源がリリースされており,私のような年寄りは,新しい音楽も聞きたいと思うものの,古い音源に郷愁を感じてしまうことはよくある話だと思う。ということで,最近,私が購入する音源のうち,こうした発掘音源が占める比率が高まっているのだが,今日はそのうち,King Crimsonである。

私はKing Crimsonの遅れてきたファンと言ってよく,昔はYesの方が好きだったということはこのブログにも書いたことがある。しかし,今やYesがヨイヨイ・バンドと化したのと対照的に,King Crimsonは今でも現役感満々の演奏を聞かせていて,それらは近年のライブ盤でも聞くことができる。そうしたKing Crimsonのアルバムの中でも,私は"Live in New Castle"Lark's Tangues in Aspic"(太陽と戦慄)が一番好きで,その時のラインアップのアルバムに魅力を感じている。なので,後年リリースされたライブ盤も結構持っているし,”Larks’ Tongues in Aspic"15枚組ボックスも保有しているのだから,そのボックスの間隙を埋めるようなこうした音源までフォローしなくてもいいんじゃないの?と言われてしまえばその通りである。しかし,この時期,このメンツ(Jamie Muir入り)というこの音源には抗い難い魅力があり,ついつい買ってしまうのが「性」と言うやつである。

そして,この音源,やはりアグレッシブなKing Crimsonの本質を捉えていて,実に嬉しくなってしまう。ほとんどフリー・ジャズみたいな展開を示す瞬間すらあり,この人たち,完全にロックのカテゴリーを超越してしまっていると思わせるのだ。このアルバムは途中に挿入される"Improv"2曲を覗いて,"Larks' Tongues in Aspic"の通りの曲順で演奏されるが,演奏はほぼ完成レベル。そして"The Talking Drum"における完璧なグルーブを聞けば,興奮しないリスナーはいるまい。残念ながら最後の”Larks’ Tongues in Aspic Part 2"は,ここから盛り上がるというところでフェード・アウトとなるのが実に惜しいが,それでもこの音源は,アルバムが完成に向かっていく姿を捉えていて,かなり貴重と言ってよいと思う。

いずれにしても凄い人たちである。星★★★★★しかあるまい。改めてボックスの音源も聞いてみるか(大変だけど...)。

Recorded Live at Odeon in Newcastle on December 8, 1972

Personnel:Robert Fripp(g, mellotron), David Cross(vln, mellotron), John Wetton(b, vo), Bill Bruford(ds), Jamie Muir(perc, allsorts)

2019年6月17日 (月)

もはやカテゴライズ不能:Esperanza Spauldingの“12 Little Spells“。

_20190615-2 ”12 Little Spells" Esperanza Spaulding(Concord)

先日,ショップに久々に行ったときに,併せ買いのディスカウントをゲットするために,最後に付け足したのが実はこのアルバムであった。昨年,ストリーミングでリリースされ,音源は以前から聞けたし,今でもストリーミングで聞けるのだから,別に媒体を買わなくてもいいではないかと言われればその通りだが,まぁいいや。

それでもって,既にストリーミングで聞いていても,そこかしこに現れるのは,いかにもEsperanza Spauldingらしいフレージングであったり,彼女の歌いっぷりな訳だが,もはやこれはジャズにカテゴライズする意味はほとんどないと思えるアルバムだと思った。もともと公開されていた12曲に,本作は4曲を追加してフィジカルでリリースしたものだが,強烈なコンセプト・アルバムと呼べるもので,相当好き嫌いはわかれるはずである。

私はこの人の前作"Exposure"(世界7,777枚限定だそうだ)は存在すら知らなかったからもちろん聞いていないし,その前の"Emily's D+Evolution"も保有はしているものの,ブログの記事にはしていない。その一方で,オーチャード・ホールやBlue Note東京でのライブは見ているので気にはしているのだが,どちらかと言えば,私にとってはこの人はライブの方がフィットする感じである。今回のアルバムも,実に良質の音楽とは思えるが,Esperanzaの持つ心地よいファンク・フレイヴァーが明確には打ち出されていないところが,私としては残念にも思えてしまう。

どちらかと言えば,昨今のEsperanza Spauldingは,アーティストとしての創造への欲求が強まっていて,いろいろな取り組みをしているという感じがするが,それが私のようなリスナーの受容度を越えてしまったような気がするということである。そういう意味では全面的には支持できないというのが本音だが,メンバーによる演奏は実によく出来ていて,特にレギュラーで活動しているギターのMatthew Stevensの貢献度が大きい。ということで,私としては試みは評価して星★★★★ぐらいってところか。こういう風に書いていると,私の音楽の嗜好というものが,以前ほど何でもありではなくなって,好みってのが明確になっているように感じるのはやはり加齢のせいってことだろうなぁ(苦笑)。

Personnel: Esperanza Spaulding(vo, p, org, b, orchestral bass drums), Mathew Stevens(g, b, vo), Justin Tyson(ds, org, synth, beats, prog), Aaron Burnett(sax), Burnis Travis(b, vo), Morgan Guerin(b, synth, vo), Corey King(vo), Rob Schwinner(continuum), Eric Reed(fr-h), Laura Weiner(fr-h), Brandon Ridenour(tp), John Blevins(tp), Richard Harris(tb, b-tb), Julietta Curenton(fl, piccolo), Katie Hyun(vln), Sami Merdinian(vln), Margaret Dyer Harris(vla), Yves Dharamraj(cello), Reiki Choir(vo)

2019年6月16日 (日)

Gilberto Gil全面参加のRoberta Sáの新作。

_20190615 "Giro" Roberta Sá(Deck)

Roberta Sáのアルバム,"Delirio"がリリースされたのが2015年10月ぐらいで,このブログに記事をアップしたのが翌年2月のことであった(記事はこちら)。その時にもこの手の音楽についつい惹かれてしまう私は大いにほめたわけだが,それから4年弱の時を経ての新作である。今回のキモはアルバムにGilberto Gilが全面的に参加していることだと思うが,曲作りにも全面的にかかわっているのだから,相当の入れ込み具合である。ついでに4曲目にはJorge Ben Jorも参加して場を盛り立てているが,本質的には相変わらずのRoberta Sáの清楚な声を聞いていればいいって気もする。

本作も実にいいアルバムだと思うのだが,私としてはよりシンプルな音,例えば8曲目"A Vida de Um Casal"のような感じで全編攻めてもらうと更にこのアルバムに評価が高まったのではないかと思える。結局は音に対する好みだと思うのだが,私がブラジル音楽にはメロディ・ラインとシンプリシティを求めてしまう傾向が強いのかもしれないと思ってしまう。そういうことで,3曲目"Cantando as Horas"のような曲にはバックのアレンジが過剰に感じられて,違和感を覚えるのも事実なのだ。

しかし,全編を繰り返し聞いていると,段々味わい深さも増してくる部分もあって,いいアルバムだとは思えてくる。そういう意味でも3曲目の浮いた感じが何とも惜しい。そこを減点して星★★★★としておこう。

Personnel: Roberta Sá(vo), Jorge Ben Jor(vo), Gilberto Gil(g), Ben Gil(g), Alberto Continentino(b), Domenico Lancellotti(ds, perc), Pedro Miranda(perc, vo), Yuri Queiroga(g), Danilo Andrade(key), Laurenco Vasconcellos(vib), Pedro Mibielli(arr, vln), Glauco Fernandez(vln), Nicolas Kurassik(vln), Daniel Albuquerque(vla), Iura Ranevsky(cello), Mestrinho(accor), Jorge Continetino(arr, fl), Marion Sette(arr, tb), Diogo Gomes(arr, tp, flh), Raul Mascarenhas(ts, fl), Ze Carlos "Bigorna"(as, fl), Milton Guedes(fl), Joana Queiroz(cl), Milton Guedes(bugpipe), Banda Giro(arr), Felipe Abreu(arr), Alfredo Del-Penho(vo), Joao Cavalcanti(vo)

2019年6月10日 (月)

久々にショップに行って仕入れたアルバムから,今日はMatt Slocum。

_20190609 "Sanctuary" Matt Slocum(Sunnyside)

最近はほとんどショップに行くこともなくなり,CDを購入する場合でもほぼ通販に依存しているが,先日,久しぶりにライブ前に時間があったので,ショップを覗きに行った。覗きに行くとついつい手が出てしまうということで,何枚かゲットしてきたのだが,そのうちの一枚がこれである。

Matt Slocumって名前は認識していたが,アルバムを購入するのはこれが初めてのはずである。今回は明確にメンツ買い。先日のジョンスコとのライブの記憶も新しいGerald Claytonがピアノ,そしてBrad Mehldau Trioを支えるLarry Grenadierがベースとあっては,これはちょっと期待してしまう。まぁ,よくよく見てみれば,Matt SlocumとGerald Claytonは結構共演作が多く,結構レギュラーに近いかたちで活動しているって感じだろうか。

本作やこれまでのアルバムのジャケを見ると,この人の美的なセンスみたいなものを感じさせるが,ある意味ECMのアルバムにも共通するようなテイストがジャケからは感じられる。当然,ゴリゴリのジャズではないだろうと思って聞き始めてみると,なるほど静謐な響きの中に,リリシズムを感じさせる演奏である。これがなかなかいい。決してダイナミズムに溢れた音楽だとは思わないが,決してカクテル的でもない。丁度いいぐあいのリリシズム,美的感覚と言えばよいだろうか。趣味がいいのである。逆に言えば,ドラマーがリーダーのアルバム,あるいは冒頭のSufijan Stevensの"Romulus"を覗いてMatt Slocumのオリジナルで固められたとはなかなか想像しがたい音が連続する。即ち,これがMatt Slocumの音楽性ってことになるだろう。

全編を通して,響きは一貫しているが,逆に言えば刺激に乏しいって言い方もできるかもしれない。しかし,これは3者のタッチもあるが,相当に趣味のいい音楽として,認知度を高めるためにもちょっと甘いと承知で星★★★★☆としてしまおう。それにしてもGerald ClaytonもMatt Slocumも30代だから,若手と言うよりは中堅って感じかもしれないが,なかなかやるもんだ。

Recorded on August 7 & 8,2018

Personnel: Matt Slocum(ds),Gerald Clayton(p),Larry Grenadier(b)

2019年5月29日 (水)

Kendrick Scott Oracleの新作:驚きはないが,よく出来たアルバム。

_20190527 "A Wall Becomes a Bridge" Kendrick Scott Oracle(Blue Note)

この記事を書こうと思って,過去の投稿を振り返ってみると,何と私はKendrick Scottのアルバムについては記事をアップしておらず,ライブについてのみ書いていたことがわかって,あれ~,そうなんだ...と独りごちてしまった。そうは言いつつ,Kendrick Scottのライブは1回しか見たことがないし,直近の来日公演も都合がつかず,行けなかった。おそらく,この新作からの曲も演奏したであろうはずのライブだったので,行きたかったのだが,まぁ仕方がない。

Kendrick Scottのアルバムは前作,"We are the Drum"と前々作,"Conviction"を保有しているが,コンテンポラリーなサウンドが展開された,いかにも今のNYC的なジャズ・サウンドが聞けて,実に嬉しかったというのが実感だ。それに続くアルバムであるが,今回はターンテーブルの導入など,今までにない取り組みもあり,コンテンポラリー度はこれまでと同様とも言えるが,ややRobert Glasper的な感覚,あるいはヒップホップ的な感覚が高まったとも言えるかもしれない。それはサウンド・エフェクトを加味していることからも感じられるが,Derrick Hodgeが今回もプロデュースしていることもあれば,やはりRobert Glasperとは一脈通じるところがあるミュージシャンなのだと思える。まぁ,彼らはBlue Note All Starsのアルバムでも共演しているし,二人ともGretchen Parlatoともつながりがあるから,同質性はあると言ってもよいのだろう。

そして,このバンド,メンツのレベルの高さが半端ではないというのが,今回も変わりなく,特にMike Morenoのフレージングは突出した魅力を持っているように聞いた。これはライブで彼らを聞いた時も同じ感覚であり,Oracleのサウンドにおいて,Mike Morenoの果たす重要性を認識できる。その一方,ライブではプッシュが効いているKendrick Scottのドラミングは,今回はちょっと控えめのようにも思えた。彼らの演奏にも驚かなくなったということもあるとは思うが,それでも十分にレベルの高い佳作ではあると思う。ってことで,星★★★★ぐらいにしておこう。

尚,このアルバムのタイトルはライナーには明示的には書いていないが,アンチ・トランプのメッセージだと思える。

いずれにしても,このバンドの最新ライブは見ておきたかったというのが正直なところだが,後悔先に立たず。

Personnel: Kendrick Scott(ds, vo), John Ellis(ts, ss, b-cl, cl), Taylor Eigsti(p, rhodes), Mike Moreno(g), Joe Sanders(b), DJ Jahi Sundance(turntable)

2019年5月27日 (月)

今回も素晴らしい音場を聞かせるBill Frisell~Thomas Morganのデュオ・ライブ。

_20190526-2 "Epistrophy" Bill Frisell & Thomas Morgan(ECM)

Bill FrisellとThomas Morganのデュオによるライブ,"Small Town"がリリースされたのが2017年のことであった。それから約2年を経て,同時期に同じくVillage Vanguardで録音された姉妹編ライブがリリースされた。前作が出た時,私はVanguardのような場所でこういう演奏が展開されたことに驚きを覚えた(記事はこちら)のだが,今回もメンツが同じなのだから,同一路線であることは当然である。しかし,こうして2枚目が出るってことは,ボツにするには惜し過ぎるとManfred Eicherが感じたからなのかもしれない。まぁ,それも納得できる演奏である。

それにしても面白いレパートリーである。「ラストダンスは私に」とか,「007は二度死ぬ」のテーマ,"You Only Live Twice"とかをやってしまうってのがそもそも普通ではない。だが,こういう曲がタイトル・トラックであるThelonious Monk作"Epistrophy"や"Pannonica"と並んでいても,何の違和感もないってのが逆に凄い。まぁ,前作でも"Goldfinger"をやっていたから,結構007好きなの?と思ってしまう(笑)。年齢からするとビルフリの趣味だろうが...。いずれにしても,"You Only Live Twice"はイントロから,原曲のメロディ・ラインを結構忠実に弾いていて,へぇ~と思ってしまった。こういうのも大いにありだなとも思う。

上述の2曲を除けば,選曲からすれば,結構ジャズ的なチョイスと言うこともできるのだが,サウンドとしては,もはやこれはジャズ的と言うよりも,私にとってはアンビエント的な感覚さえ覚えてしまう。だが,これはやはり中毒性があると感じてしまうアルバムである。甘いの承知で星★★★★☆

Recorded Live at the Village Vanguard in March 2016

Personnel: Bill Frisell(g), Thomas Morgan(b)

2019年5月21日 (火)

Brad Mehldauの新譜”Finding Gabriel”は美しさとスリルを共存させたコンセプト・アルバム。実に面白い。

Finding-gabriel_1 "Finding Gabriel" Brad Mehldau(Nonesuch)

既にストリーミングでも2曲が公開されていたBrad Mehldauの新譜がリリースされた。最初に公開された"The Garden"を聞いた時から,本作がかなりの問題作であることはわかっていたが,こうして全編を聞いてみると,これは確かに問題作という評価も可能だが,むしろ聖書を題材として作り上げたコンセプト・アルバムという評価の方が適切である。

一番の話題はヴォイスが加わっていることだと思うが,聖書を題材としたことからすれば,「聖歌」をイメージしてのことと解釈することも可能だろう。ここでのヴォイスは男声と女声のミックスであるが,Gabriel Kahaneの声が,Pat Metheny GroupにおけるPedro Aznarのような感覚を覚えさせる瞬間があったのは面白い。その一方でこのアルバムを特徴づけているのがシンセサイザーの響きであり,聖歌とシンセサイザーというアンマッチな感覚さえ与える組合せから作り出されるサウンドが実に面白い。それでも全然難しいところはないし,美的な感覚を与える瞬間もあれば,例えば冒頭の"The Garden"後半に聞かれるスリリングな展開もあるという,緩急と様々な要素を交錯させた響きなのだ。

Brad Mehldauが典型的なジャズから離れた音楽をリリースするのはこれまでもあったことだし,彼の越境型の活動を考えれば,今回のアルバムのリリースも驚くほどのことではないのかもしれない。しかし,Brad MehldauのWebサイトにも,かなり深い聖書に関する記述があり,聖書が彼の創作に影響を与えたことは紛れもない事実であり,それを反映させた音楽として聞いていると,これが聖歌のように聞こえてくる瞬間もあるから不思議である。

ドラムスのMark Guilianaは結構激しく,そして手数多く叩く瞬間もあるが,全体的には彼にしては抑制された感じがする。なぜならば,これはビートを強調した音楽ではないし,Mehldauが言うように聖書を"one long nightmare or a signpost leading to potential gnosis"とするような哲学的な感覚を付与した音楽なのだから,そういう風になるのも当然か。だが,その一方で6曲目"The Prophet Is a Fool"にはDonald Trumpへの強烈な批判的なトーンも現れて,さまざまな感情が交錯する。

こういうところが頭でっかち的に見えて,鼻につくってリスナーも世の中にはいるだろうが,Brad Mehldauは昔からこういう人なのである。様々な文学やクラシック音楽も吸収した上で作り上げられた彼の音楽性が強く表れたアルバムと言えるだろう。やはりこの人のやることは面白い。間もなくに近づいた東京でのトリオ,そしてソロ公演はどのようになるのか?おそらくこのアルバムとはほとんど関係ない世界の演奏をしてしまうはずだが,本当に幅広い人である。我ながらBrad Mehdauには甘いと思うが,やっぱり星★★★★★だ。だって面白んだもん。

Recorded between March 2017 and October 2018

Personnel: Brad Mehldau(p, synth, el-p, perc, vo, and others), Mark Guiliana(ds), Becca Stevens(vo), Gabriel Kahane(vo), Kurt Elling(vo), "Snorts" Malibu(vo), Ambrose Akinmusire(tp), Michael Thomas(fl, as), Charles Pillow(ss, as, b-cl), Joel Frahm(ts), Chris Cheek(ts, bs), Sara Caswell(vln), Lois Martin(vla), Noah Hoffeld(cello), Aaron Nevezie(sampler)

2019年5月13日 (月)

全くノーマークだったMarc Coplandの新作。

Gary "Gary" Marc Copland (Illusionsmusic/澤野商会)

Marc Coplandのソロ・ピアノによる前作"Nightfall"も全くノーマークだったのだが,今回の作品も出たことすら全然認識しておらず,"Nightfall"同様,ブログのお知り合い910さんの記事で認識したものである。全く最近はショップ通いも限定的なな中,情報の鮮度が保てないってのは問題だと思いつつ,早速発注したものである。

本作はフランスのPhillipe Ghielmettiがプロデュースしたものを澤野商会が配給しているもの。アルバムのタイトルは昨今,Marc Coplandが共演しているGary Peacockのオリジナル7曲に,Peacockの元妻,Annett Peacockによる"Gary"をアルバム・タイトルとした8曲から構成されている。

私がMarc Coplandの音楽に惹かれるのは,その美的な響きによるところが大きい。私はCoplandのアルバムを原則ソロ,弦楽器とのデュオ,そしてトリオでしか聞かないという偏った聞き方をしている人間であるが,それもこれもCoplandの美学はそういう編成でこそ発露されると思っているからにほかならない。今回もピアノ・ソロであるから,無条件購入なのである。

今回のアルバム,上述の通り,Gary Peacockゆかりの曲を演奏しているという「企画」のが最大の特徴なのだが,冒頭からややアブストラクトな響きが聞こえてくる。ただアブストラクトなだけでなく,そこに美的感覚を投入するのはMarc Coplandらしいところであるが,甘美さはやや控えめというところだろうか。既にCoplandのアルバムやPeacockのアルバムで演奏された曲も,違った印象を与えているような気がする。そこはかとない仄暗さと言えばいいだろうか。

こうした音楽については,かなり嗜好がわかれるというのはいつも通りのことであるが,全部が全部というわけではないのだが,このアルバムから感覚,私にとっては現代音楽のピアノを聞いている時におぼえるいい意味での「冷たい感覚」に近いものを感じたのも事実である。エンジニアはECMでも最近仕事が増えているGerald de Haroである。サウンド的に私が惹かれるのはそれも影響しているかもしれない。

いずれにしても万人受けする音楽ではないが,この手の音楽が好きなリスナーにとっては訴求力の高い音楽。こういう音楽にはついつい評価も甘くなり,星★★★★☆。尚,本作は世界1,200枚限定だそうである。ご関心のある方はお早めに。

Recorded on April 12&13,2018

Personnel: Marc Copland(p)

より以前の記事一覧

Amazon検索

2018年おすすめ作