カテゴリー「新譜」の記事

2008年12月 4日 (木)

Arild Andersen:かなり完成度の高いライブ盤

Arild_andersen "Live at Belleville" Arild Andersen(ECM)

このアルバムは拍手がなければ,スタジオ録音だと言われてもわからないほど緊密度の高いライブ演奏を展開したアルバムである。ピアノレスのサックス・トリオであるから,自由度が高いのはある意味予想通りであるが,フリーなアプローチと高速の4ビートがうまくブレンドしていて,私は結構嬉しくなってしまった。

このアルバムを聞いていて思うのは,何とも絶妙なエコーによって生み出される「場」の空気である。Andersenは時にエレクトロニクスを交えながら(あくまでも地味にだが...),雰囲気たっぷりのベースを聞かせる一方,Tommy Smithのテナーにもこれまた何とも言えないエコーがかかっていて,音楽的には結構ハードな部分もあるのに,聞いていてとにかく心地よいのである。そこに鋭く突っ込んでくるのがPaolo Vinacciaのドラムスであるが,この人,ライナーの写真からしてロック畑の人と思わせるのであるが,サウンド的にも確実にロック的なドラミングである。Wikipediaにはジャズ・ドラマーとして紹介されていたが,私はこの人にはロック的なアプローチを強く感じるのである。このVinacciaのドラムスがスパイスとして効いてきて,このトリオのサウンドを魅力的なものにしているように感じる。

このハードな音楽はある意味ではECMらしからぬサウンドと言ってもよいが,プロデューサーはAndersenが兼ねており,Manfred Eicherはミキシングと編集に関わっているだけだから,そう聞こえるとも言えるのだが,このアルバムにエコー感を加えたのはEicherではないかと私には思えるのである。音楽の質はECM的でなくとも,エコーでECM的サウンドにしてしまうということである。これは私だけの思い込みかもしれないが,私の想像が当たっているとしたら,それこそマジックではないか。

収録時間が70分超と長いので,ずっと集中できるわけではないのだが,それでも私はこのアルバムについては結構楽しめたし,評価したいアルバムである。ちょっと甘いかもしれないが星★★★★☆。

Recorded Live at Belleville, Oslo and Drammen Theater in September, 2007

Personnel:Arild Andersen(b, electronics), Paolo Vinaccia(ds), Tommy Smith(ts)

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2008年11月18日 (火)

楽器編成ゆえに山下トリオのように響くフリー・ジャズ作

Full_contact ゛Full Contact" Daniel  Humair / Joachim Kuhn / Tony Mallaby (Bee Jazz)

最近,私も年のせいか,フリー・ジャズらしいフリー・ジャズの新譜というのはあまり聞いていないが,久々にいかにもフリー・ジャズと言うべき新作を聞いた。

Daniel HumairとJoachim Kuhnは今は亡きJF Jenny Clarkとのトリオで何枚もアルバムを発表しているが,今回はブルックリン派(?),Tony Malabyを迎えてのトリオ作である。このアルバムはHumair,Kuhnのコンビネーションは既に確立しているという前提で,このTony Malabyとの演奏がどんなものになるのかが注目されるのは当然である。

私がTony Malabyを聞くのはおそらくは今回が初であるが,これが何とも言えぬパワー・テナーである。昔のDavid Murrayを彷彿とさせるという感じだろうか。フリーな・セッティングにおけるこのブイブイ感が何とも心地よいのである。

私にとってフリー・ジャズが爽快感をもたらすのは,それがあまり頭でっかちではなく,ミュージシャン同士の相互の触発が明確で,かつ彼らのパワーの爆発や疾走感が心地よい場合ということになるのだが,その代表格が山下洋輔トリオだったのである。ジャズを聞き始めた頃,あれほど毛嫌いしていた(というか全く理解できなかった)山下洋輔トリオだが,一度はまるとそれは癖になるのである。このアルバムに聞き取れるのはその山下トリオとの同質性である。これは楽器編成が同じということもあろうが,演奏のパターンというか展開方法も極めて近しいものをこの演奏を聞いていて強く感じてしまった私である。

Humair,Kuhnという既にエスタブリッシュされたミュージシャンに比べて,Tony Malabyの知名度は圧倒的に低いが,ここでの演奏は彼らと互角に渡り合っていて非常に心地よい。冒頭にも書いたとおり,私がフリー・ジャズを聞く機会はどんどん減っているが,このアルバムは何度もリピートして聞いてもいいと思わせるものであった。

こういうアルバムは誰かが認知度を高める努力をしなければ,そのまま埋もれてしまう可能性が高い。Humair,Kuhnが演奏しているので,比較的このアルバムは認知されやすいものではあろうが,より幅広い,特にハイブラウな演奏を好むオーディエンスに対しては強く推奨して耳に届く機会を増やせたらと思う。確かに万人向けではないので,フリー・ジャズに耐性のないリスナーは買ってはならないと思うが,間口の広い方々には一度聞いてみて欲しいアルバムである。星★★★★。

Recorded in January, 2008

Personnel: Daniel  Humair(perc), Joachim Kuhn(p), Tony Mallaby(ts)

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2008年11月16日 (日)

名曲"Kiss from a Rose゛にやられるJulia Hulsmann

End_of_a_summer_2 "The End of a Summer" Julia Hulsmann (ECM)

何ともECMテイストに溢れた新作ピアノ・トリオの登場である。Julia Hulsmannというピアニストは初めて聞いたが,ドイツの女流ピアニストとのこと。このサウンドが彼女の音楽性の本質なのかどうかはわからないが,ECMというレーベル・カラーにフィットしたサウンドには嬉しくなるECMファンが多いのではないだろうか。

全10曲中,6曲がリーダー,1曲がベースのMuellbauer,2曲がドラムスのKobberingのオリジナルで,それらもそれなりに聞き応えはあるのだが,私が参ってしまったのがSealの名曲゛Kiss from a Rose"である。この曲が映画゛Batman Forever"で使用され,グラミーを受賞したのは1995年のことになるが,しばらくぶりにこの曲を聞いて,曲の力を再認識した次第である。Sealのボーカルは若干くせがあってやや好き嫌いはわかれるが,インストで演奏されるとこれはたまらん。正直言ってほかの曲がかすんで聞こえてしまった。これはやはりこの曲の持つメロディ・ラインの魅力に依存するところ大である。しばらく前のヒット曲であるこの曲をなぜHulsmannが今になって取り上げたのは謎だが,このアルバムの魅力を高めるのにこの選曲は少なくとも私にとっては貢献したと言ってよい。

゛Kiss from a Rose"ばかりほめているようだが,実はこのアルバム,冒頭にも書いたとおり,ECMテイストはかなり強い(即ち,本質的にはクールで静謐であり,ダイナミズムを求めてはいけない)から,この筋の音楽好きは"Kiss from a Rose"がなくても気に入るはずである。私としては最近のECMレーベルのアルバムではかなり好きな部類のアルバムである。星★★★★。でもやはり゛Kiss from a Rose"にやられた私である。

Recorded in March 2008

Julia Hulsmann(p), Marc Muellbauer(b), Heinrich Kobberling(ds)

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2008年11月15日 (土)

Mavis Staplesの新作は熱いライブ盤

Mavis "Live: Hope at the Hideout" Mavis Staples(Anti)

音楽の秋である。次から次へと気になる新譜が発売されて,財布の紐がゆるくなり,気がついてみれば財政難に陥りがちな今日この頃であるが,本日はMavis Staplesである。

Mavis Staplesと言えば,前作"We'll Never Turn Back"は昨年のベスト・アルバムにも挙げた大傑作(前作のレビューはこちら)であった。それに続く新作とあれば当然期待が高まってしまうのだが,結果はどうか。

Mavis Staplesだけに当たり前と言えば当たり前なのだが,これが非常に熱い。そしてバックバンドのギター・トリオはかなりの実力者で,特にギターのRick Holmstromは大技とかギミックはないのだが,ツボをおさえた伴奏は大したものである。このバンドは聞き物である。

しかしである。ライブ盤だけに熱い演奏というのはまぁ予定調和と言えばその通りであって,この盛り上がり具合はライブハウスという環境をしても当然である。ただここでのMavis Staplesの気合は逆に考えれば力み過ぎってことにはならないだろうか。そんなにこぶし回さなくたっていいじゃないかとも思ってしまうのである。演奏としては結構楽しめはしても,ちょっとここまでやられると疲れるというのが正直なところである。

Mavisはここまで力まなくてもちゃんと歌えることは前作でも立証されているのだから,そうした余裕というかレイドバック感を感じさせてくれれば,このライブはもっといいものになっていたように思えてちょっと惜しい。ちょっと甘めの星★★★☆。

Recorded Live at the Hideout on June 23, 2008

Personnel: Mavis Staples(vo), Rick Holmstrom(g), Jeff Turmes(b), Stephen Hodges(ds), Yvonne Staples(vo), Donny Gerrard(vo), Chavonne Morris(vo)

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2008年11月14日 (金)

Jeff Beckの新作はまたまたライブだが,前作と何が違うねん?

Beck ゛Performing This Week: Live at Ronnie Scott's" Jeff Beck (Eagle Rock)

Jeff Beckの新作がいきなりの登場であるが,ロンドンの名門ジャズ・クラブ,Ronnie Scott'sでのライブというのにまず驚かされる。クラブでBeckを見られるなんていいよなぁ。日本ではそもそも考えられないではないか。そこでのライブの模様を収めたものであるが,これがちょいと微妙である。

何分,Jeff Beckの日本における前作は"Official Bootleg USA '06"(前作のレビューはこちら)であるが,それはそもそもコンサート会場やWebサイトで販売されていたものをマーケットに出したものである。よって,そんなに流通量はないのかもしれないが,それでも今回の新作は前作との曲のかぶりがあまりに多過ぎるのである。確かにベーシストはThe WhoでもプレイするPino Palladinoから小柄ながらエネルギッシュなベースを弾くTal Wilkenfeld嬢に代わっているが,演奏のトーンや雰囲気に大きな違いはないので,前作を買ってしまったファンにとっては,敢えてこれをまた買うかというとこれはかなり微妙であろう。Vinnie Colaiutaは前作よりずっとタイトでいいと思うが,録音のバランスがギターに偏り過ぎで,そのパワーの全貌を捉えられているかというとそれもちょっと微妙である。

まぁこのアルバムの演奏の模様はDVDでも発売されるようだから,敢えてこのCDを買うならば,DVDを購入した方がよいだろう。このバンド,特にJeff BeckのカッコよさはCrossroad FestivalのライブDVDでのたった2曲の演奏だけでも実証されているから,彼らだけの演奏をフルに楽しめるなら私もDVDを買ってもいいかなと思う。ということで,演奏そのものはかなり荒っぽいところもあるが,相変わらずのカッコよさで,音源としてだけ考えれば,前作同様星★★★☆ぐらいだろう。しかし,消費者の弱みにつけこむような音源のリリースの仕方は糾弾したくなるよなぁ。

Recorded Live at Ronnie Scott's in London between November 27 and December 1, 2007

Personnel: Jeff Beck(g), Tal Wilkenfeld(b), Vinnie Colaiuta(ds), Jason Rebello(key)

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2008年11月13日 (木)

Bireli Lagreneのフュージョン作:1曲目の軽さに戸惑う

Bireli_lagrene ゛Electric Side゛ Bileri Lagrene(Dreyfus)

結構前に入手していたのだが,アップするのに随分と時間が掛かってしまったアルバムであるが,まだ新譜扱いとしてよかろう。私はBireliのアルバムはVic Jurisとのアコースティック・デュオぐらいしか持っていないのだが,お知り合いのブロガーの皆さんが取り上げられているのにつられて購入したものである。

そのアコースティック・デュオとは全く趣の異なるエレクトリック・アルバムなのだが,このアルバム,1曲目゛Hips゛のあまりにポップで軽い乗りに幻惑されて,私は結構戸惑ってしまったのである。このメロディといい,ギターのカッティングといい,ちょいと古臭過ぎやしないか。表現は悪いが,まるで80年代のライト・フュージョンのようなのだ。この1曲が私にとってはこのアルバムのイメージを悪くしているような気がしてならないのだが,その後は持ち直してくるのでまぁいいか。

Bireli Lagreneという人は決してハード・フュージョンにはならないし,ハイブラウという感じでもない。やはり全体的な乗りが軽い。この軽さはドラムスの録音具合にもよるような気もするが,欧州系レーベルのフュージョンというのは,こういう軽い感じが多いようにも感じるなぁ。それでも皆さんも注目するベースのHadrian Feraudの参加によって,このアルバムはベースを聞いていると,ほかのことがあまり気にならないという何とも不思議な効果をもたらしている。Bireliには悪いが,ついついHadrian Feraudのベース・ラインに耳が行ってしまうのである。速射砲のごときフレーズやきめきめのユニゾンでプレイされれば,そりゃそうなるのが人情である。おそらくはFeraudの参加なかりせば,このアルバムはそんなに注目を集めなかったのではなかろうか。ベーシストが一番注目されてしまうというのはどうなのよという気がしないでもないが,このアルバムの聞き方としてはそれが一番楽しめるかもしれない。

ということで,音楽全体を聞いているのか,Feraudのベースだけを聞いているのかよくわからないが,そのせいでAndy Narrellの影が薄いこと甚だしいと言っては言い過ぎか。また,どうせDJを入れるならば,もう少し徹底してヒップホップしてもらいたかった。なんか文句ばかり言っているようだが,それでもHadrian Feraudは聞き物なのである。全体の評価としては星★★★ってところだろう。でもやはり1曲目は...と微妙な私である。

Recorded on January 9 -12, 2008

Personnel: Bireli Lagrene(g), Hadrian Feraud(b), Franck Wolf(ss, ts), Andy Narrell(steelpans), Daniel Schmitt(ds), DJ Afro Cut-Nanga(DJ, turntables, samples, FX), Michael Lecoq(key)

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2008年11月 5日 (水)

John Legend:より広範なリスナーへの訴求を狙った新作

John_legend_2 ゛Evolver゛ John Legend(Columbia)

私は現代ソウル/R&Bの王道を突き進む存在としてJohn Legendを高く評価してきた。このアルバムはスタジオ録音としては久々になるが,今年の春には素晴らしいライブ"Live from Philladelphia"(紹介記事はこちら)が発売されていたので,渇望感はそれほどなかった。とは言え,今後のソウル界を担う存在であること間違いない彼の新作が出たということ自体めでたい。

今回もこれまで通り,Kanye Westとの共同総合プロデュースではある。しかし,これまでとジャケットの雰囲気が違っているので,店頭で見たときはJohn Legendとは思わなかったぐらいだが,音も随分これまでと感じが違う。よくよく見てみるとプロデューサーは山のようにいる。今回収められている曲が悪いというのではないのだが,かなりポップなイメージが強くて,音楽のタイプも雑多なのである。これは更なるポピュラリティの確保を図ってのことだと思うのだが,私としてはポップさやコンテンポラリーな響きでなくてもこの人は勝負できると思っているだけにやや微妙である。確かにタイトル「進化する者」というのには偽りはないとしてもである。これは完全に好みの問題である。

私はやはりこの人にはダンス・フロア向きの音楽よりも,スイートなクルーナー路線を歩んで欲しいのである。これが彼の次なる「進化」への一つの糧だとして考えればいいのであろうが,それでもこれはちょっと行き過ぎのような気がする。アルバム後半は比較的これまでの路線に近いところもあるから,私としては後半ばかりを聞くことになりかねないアルバムである。ただ,このアルバムをプレイバックするなら私はライブ盤の方を優先するだろう。まぁ次作に期待するということにしようということで,星★★★。

それにしてもブックレットのミュージシャンのクレジットは文字が小さ過ぎて私の目では全く対応できない。虫眼鏡を使わないと見えないようなクレジットってのはちょっと問題があるなぁ。私が年を取り過ぎたせいもあるのかもしれないが,もう少し消費者のことを考えて欲しいものである。よって,いつもは書いているPersonnelについては記述不可能である。

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2008年10月27日 (月)

Burt Bacharachのライブは究極のイージーリスニング

Bacharach ゛Live at the Sydney Opera House" Burt Bacharach with the Sydney Symphony Orchesra (Verve)

今年2月に来日したBurt Bacharachのライブを見逃したことは,彼の年齢を考えれば再来日は難しいであろうから,私にとってはかなりの痛恨事であったが,そんな私の渇きを癒してくれるアルバムが登場した。ジャケには記載はないが,これは来日直前(のはず)のオーストラリア公演の模様を収めたライブ盤である。これが何とも緩やかに時間が流れていくかのような,究極のイージー・リスニング,あるいはヒーリング・ミュージックだと言ってもよい音楽である。

ここに収められているのはBurt Bacharachの代表的な曲ばかりである。それもメドレーで多数の曲が演奏されているが,上述のように本当にゆったりした気分でそうした曲を楽しむことができるのは,曲のテンポやリズムが決して激しいものにならないせいもあろう。そういう意味では刺激はゼロ(本当にゼロだ)なので,若い人たちにはこのゆるやかさには耐えられない部分もあるに違いない。しかし,私のような中年以上の人間にとっては,曲の懐かしさもあるが,このゆったり感こそが極上のリラクゼーションを提供してくれるものと言えよう。もちろん,私だって毎日この音楽を聞いていたいとは思わないが,ストレスがたまったときにはこういう音楽を聞いてリラックスすることもよきチェンジ・オブ・ペースになるに違いない。

私が知らないだけかもしれないが,参加しているミュージシャンに有名どころは見当たらない。しかしヴォーカリスト3人のうち,男性のJohn PaganoはまるでQuincy Jonesとやっていた頃のJames Ingramのような魅力的な声を聞かせていてうっとりさせられてしまった。この人,随分昔にソロ・アルバムも出しているようだが,決してメジャーな人ではないと思う。それでもこんなに魅力的な歌唱を聞かせるのだから,アメリカのポピュラー音楽界は人材が豊富である。

まぁ,最後に聴衆にまで歌わせる"Raindrops Keep Fallin' on My Head"等は明らかに鑑賞音楽としては蛇足だが,その場にいた人にとっては記憶に残るものとなろう。日本でも同じようなことをやっていたのかと気になるところだが,これはCDとしてはやり過ぎである。しかし,それでもBacharachの素晴らしい曲を楽しめ,行けなかった彼のライブを追体験できるアルバムとしては歓迎したい。いろいろケチの付けようはあるが,星★★★☆ぐらいにしておこう。

ところで,クレジットを見ていて気がついたのだが,このバンドにはギタリストがいない。なるほど。Bacharachのサウンド・カラーはギターを入れないことにも秘密があるのかもしれないと今更ながら思ってしまった。

Recorded Live at the Sydney Opera House, Australia on February 6, 2008

Personnel: Burt Bacharach(p, vo), David Coy(b), David Crigger(ds, perc), Bob Shrock(key), Dennis Wilson(reeds), Tom Ehlen(tp, fl-h), Josie James(vo), John Pagano(vo), Donna Taylor(vo) with the Sydney Symphony Orchestra

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2008年10月26日 (日)

これはいい!:吉田美奈子と渡辺香津美のデュオ・アルバム

Nowadays ゛Nowadays゛ 吉田美奈子/渡辺香津美(ewe)

これは素晴らしいアルバムである。吉田美奈子のヴォーカルと渡辺香津美のギター(多重録音あり)のデュオで演じられたロック,ジャズ・フィールドにまたがる曲の数々が何ともスリリングな響きを醸し出している。

この編成だからと言って静謐な響きを予想すると,軽く裏切られる。何てたって冒頭はDoorsの゛Light My Fire゛である。これまた吉田美奈子のディープ・ヴォイスが魅力的に響き,それを香津美の適確なバッキングが支えている。そしてDuke Ellingtonの゛Sophisticated Lady゛をはさんで演じられる3曲目のHarace Silver作゛Opus De Funk゛は吉田のスキャットにユニゾンでかぶさる香津美のギターがカッコよ過ぎで,ここで私は悶絶した。その後も次から次へと展開されるめくるめくデュオ・ワールドである。これはたまらん。

このアルバムのよいところは,渡辺香津美が時ににディストーションをぶちかまし,ヴォリューム・ペダルもうまく使いながら,単なるデュオ・アルバムに終らせていない点である。ギターとヴォーカルと言えばJoe PassとEllaか,Jack WilkinsとNancy Harlowかという感じだが,このアルバムは全く違うオリジナリティを感じさせる。

選曲としてはDuke Ellington関係の4曲というのが突出しているが,Joni Mitchell関係も2曲(゛Both Sides Now゛と゛Goodbye Pork Pie Hat゛)をやっていて,吉田美奈子の声を聞いていると,煙草の吸い過ぎでディープな声になってしまったJoni Mitchellその人を想起させると言ってはほめ過ぎか。

私はこのアルバムを全面的に支持するが,一点だけ問題があるとすれば,吉田美奈子の英語の発音である。彼女は子音が連続すると(F-R等が典型的),途端にカタカナ英語のように母音がさし込まれるように聞こえてしまうのが難点である。これさえなければ満点でもよかったが,そこを減点して星★★★★☆。しかし,私の中では間違いなく今年のベスト・アルバム候補の一つとなった。ジャズ,ロック,ポップス等を幅広く聞いている人は確実に気に入るタイプの音楽と思う。

Recorded on July 6, 7, 8, 9, 28, 29 and 30, 2008

Personnel: 吉田美奈子(vo),渡辺香津美(g)

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2008年10月21日 (火)

James Taylorのカバー集:もはや国民的歌手である

Covers "Covers" James Taylor (Hear Music)

昨年も素晴らしいライブ・アルバムを発表して,大いに私を喜ばせてくれたJames Taylorであるが,1年を置かずに発売されたこのカバー・アルバムでも素晴らしい歌唱,演奏を聞かせる。このアルバムのバック・バンドを務めるメンツが集まってしまうという事実だけで,James Taylorという歌手が米国ポピュラー・ミュージック界においてどういうポジションにあることがわかろうというものである。やはりこれはどう見ても「国民的歌手」である。そう言う意味で先日けなしたJ.D. Southerとはそもそも器が違う。

まぁ選曲としてはどうなのよって感じの曲がないわけではないが,ソウル系,カントリー系,ロックンロール系,SSW系と幅広い中で,Taylorの個性に合わせられているのは立派である。このアルバムでカバーされている曲は必ずしも有名曲ばかりではないが,有名曲であってもTaylor色に染められていて,あたかも彼のオリジナルのように響いているのである。単なるロックンロールになりがちな"Hownd Dog゛がこうなるか!という感じである。

まぁこれがTaylorの個性ということになるのだろうが,やはりこの人は大したミュージシャンである。多分,ファンの心の琴線に触れるのは,ここにあるような選曲ばかりではないと思うのだが,ここはTaylorの選択を尊重することにしよう。トータルで言えば十分に星★★★★には値するナイスなカバー・アルバムである。演奏のライブ感も楽しめるところがまた素晴らしい。ジャケのアップ写真はもう少しなんとかなりそうなものだが...。

Personnel: James Taylor(vo, g, hca), Steve Gadd(ds), Jimmy Johnson(b), Michael Landau(g), Larry Goldings(p, el-p, org), Luis Conte(perc), Lou Marini, Jr.(fl, cl, sax), Walt Fowler(tp, fl-h, key), Arnold McCuller(vo),  David Lasley(vo), Kate Markowitz(vo), Andrea Zonn(vo, vln), Yo-yo Ma(cello), Caroline Taylor(vo), Jeff Babko(p, org)

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2008年10月20日 (月)

待望!Rachael Yamagataのセカンド・アルバム

Elephants "Elephants...Teeth Sinking Into Heart" Rachael Yamagata (Warner Brothers)

あの傑作デビュー・アルバムから4年,Rachael Yamagataのセカンド・アルバムはメジャーのWarner Brothersからであるが,こんなアルバムをレーベル初作にして大丈夫なのかと思わせるイメージを持つアルバムである。

このアルバム,オリジナルは2枚組で1枚目が゛Elephants゛,2枚目が"Teeth Sinking Into Heart゛というコンセプチュアルな作りになっているのだが,日本盤はRachaelが曲順を変更して敢えて1枚ものとして発売されている。私が購入したのは輸入盤の2枚組であるが,どちらがいいのかは微妙としても,Rachaelやプロデューサーの意図を理解するためには私は輸入盤の方がいいと思う。

ではなぜ微妙なのか。1枚目の゛Elephants゛はストリングスも交えたかなり静謐系の内省的サウンドであるのに対し,2枚目の゛Teeth Sinking Into Heart゛はロック的なバンド・サウンド主体であるからである。この1枚目がある意味ではかなり「暗い」と思われても仕方がないところがあり,これを1枚続けて聞かされると辟易としてしまうリスナーがいても不思議ではない。よって,曲順を変えてある程度メリハリをつける国内盤のやり方もありだとは思わされるのである。しかし,私のように1枚目の内省的な音楽にも強い魅力を感じる人間にとっては,やはり輸入盤仕様でも全く問題ない。面倒なのはディスクを代える手間だけである。iPodに突っ込んでしまえば,それも問題にならない。1枚目のサウンドは私が結構ひいきにしているRay LaMontagneとの連関性も見出せる(彼も参加している)ということで,やはりこれはたまらん。そう言えばほぼ時を同じくしてRay LaMontagneの3rdアルバムも発売されたし,こちらも早く聞きたい!!

2枚目のディスクは1枚目に比べると完全にロック化していて,このギャップに驚かされると言えばその通りである。しかしこういうコンセプトだと思えばいいのである。しかし,冒頭に書いたように,レーベル移籍第1作でこうしたコンセプト・アルバムを打ち出すことにはかなり勇気が必要だったはずであり,そうであるがゆえに,セールス的にもどうなのかと余計な心配をさせられてしまう。デビュー・アルバムに比べるとキャッチーさにはやや欠けるような気もするし,これで売れなくてまたレーベルを転々とさせられ,次のアルバムはまた4,5年後っていうのは勘弁してっもらいたい。女性シンガーソングライター好きの私としては,今後のシーンを支える存在として彼女にはもっともっと活躍して欲しいのである。

ということで,2ndアルバムの発売を喜び,今後の彼女の活躍を期待してちょいと甘いが星★★★★☆としよう。贔屓目入り過ぎかな~。

ところで,ジャケットにはパーソネル情報が記載されているが,文字が小さ過ぎて,最近明らかに老眼が入っている私には読み取れないので,別のサイトからの情報を転載するが,間違っていたらごめんなさい。

Personnel: Rachael Yamagata (vo, g, hca, p, glockenspiel), Ray LaMontagne (vo,  g), John Alagia (g), Mike Bloom (g, dobro); Cameron McGill (g, p), Mike Mogis (g, org, key),  Josh Grange(g), Mark Goldenberg(g), James Valentine(g), Michael Chavez (g), Kevin Salem(dobro), Kimberly Salistean(vln), Donna Carnes(vln), Lorenza Ponce(vln), Antoine Silverman(vln), Becky Doe(vln), Chris Cardona(viola), Cynthia Ricker(viola), Jane Scarpantoni(cello), Oliver Kraus(cello), Tracy Sands(cello), Peck Allmond(fl), Owen Kotler (cl), Marilyn Coyne (oboe), Robert Carlisle (Fr-h), Daniel Clarke (el-p), Nate Cambell(marimba), Pete Donovan (b), Catherine Popper (b), Davey Faragher(b), Jen Condos(b), Chris Giraldi(ds), Jon O'Reilly(ds), Sean O'Keefe(ds), Jay Bellerose(ds), Jason Boesel(ds), Than Luu(perc), Matthew Cullen (gong), Maria Taylor (vo)

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2008年10月19日 (日)

JD Souther:何と25年振りだそうだが,これはかなり微妙。

Jd_souther_2 "If the World Was You" JD Souther (Slowcurve)

6番目のEaglesとも称されるJ.D.Southerはソロでもいいアルバムを残してきたが,そのJDが25年ぶりに放つアルバムである。28年ぶりにフル・オリジナル・アルバムを出したEaglesについて酷評した(→ココ)私であるから,このアルバムとて大して期待できないかなぁと思いつつ,それでも買ってしまうのが「性」ってやつである。

一聴して,JDの声は年の割にはまだまだ瑞々しさを保っていると思わせるが,彼にどういう心境の変化があったのかはわからないが,ジャズ・コンボが伴奏をつけているのには驚かされる。それが成功していればいいのだが,私としてはどうも首をひねらざるをえない出来である。何がって,こういう伴奏で歌うことについての必然性を全く感じさせないのである。Boz Scaggsがコンボをバックにジャズ・スタンダードを歌ったアルバムがあったが,あれはあくまでもスタンダード集であって,Bozの声でそうした曲を歌うとどうなるのかという楽しみがあった。しかし,このアルバムは全部JDのオリジナルであるから,そもそも性格が違う。

私はJDの書く曲は好きな方だと思うが,この伴奏とはやはり合わないだろうと言わざるをえないのである。よって,彼のシーンへの復帰は祝いたいのはヤマヤマなのだが,私の期待する彼の姿とは違い過ぎた。また,ここでテナーを吹いているJeff Cooffinなるプレイヤーも雰囲気を壊しているって感じだなぁ。JDには悪いが,このアルバムを聞くぐらいならセルフ・タイトルのアルバムや゛Black Rose゛を聞いている方がはるかに楽しめるのである。星★★。

Personnel: John David Souther(vo, g, ts), Jeff Cooffin(ts, ss, fl), Rod McGaha(tp), Chris Waters(p), Dan Immel(b), Jim White(ds), Marie Borderon(vo), Sylvia Elena Garcia(vo), Marisol LaBoy(vo)

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2008年10月17日 (金)

話題沸騰:Jesse Van Rullerを聞いた

Silk_rush "Silk Rush" Jazz Orchestra of The Concertgebouw Featuring Jesse Van Ruller (55 Records)

ジャズ関係のブログのお知り合いの皆さんが絶賛しているアルバムがこれである。私もブログのお知り合いであるすずっくさんから「これは聞いていないの?」と聞かれて,素直に「はい,聞いてません」と答えた(爆)ものの,それから気になっていろいろな皆さんのコメントを拝見し直すに及び,これはやはり聞いておかねばなるまいと一念発起(大袈裟なっ!)しての購入と相成った。

私はJesse Van Rullerについては名前はよく知っているし,Fleurineのバックで演奏している彼の演奏も聞いたことがあるにはあったが,これまでちゃんと聞いたことがあるわけではない。言い訳がましく言えば,何らかのトリガーでもない限り,追い切れない,即ち私の中でのプライオリティは決して高いとは言えないミュージシャンの部類に入っていたのである。

まぁそんなところに,今回は格好のトリガーというか,すずっくさんからの突っ込みが入ったおかげでこのアルバムを聞いたのであるが,一言で言えば見事なソロ・フレーズの構成力と言うことができる。テクニックは十分あるし,これだけフレージングの妙を聞かせられれば,いかに私がヘボなギタリストの端くれと言えども,Jesse Van Rullerの実力はよくわかった。こういう人にちゃんと注目してこなかった自分の不明は恥じねばならないが,だからと言って今から追いかけるというのは彼のアルバム枚数からするとかなり厳しい。まずはこのアルバムをしっかり聞いた上で,次に何を買えばいいのかは皆さんにアドバイスを求めることとしよう。

いずれにしても,ビッグバンドの作品,かつライブで全面的にギタリストをフィーチャーしたアルバムというのは記憶にないが,これだけでもかなりチャレンジングな企画である。しかもJesse Van Rullerのオリジナルばかりというのも,当人としてはプレッシャーもかかるところであろうが,それをものともしないこの人の技術は本当に大したものである。アレンジャーは他人に任せたというのもおそらくは正解で,そこまでやってはソロに集中できなかったであろうと思わされる。

アレンジメントも結構モダンな響きを打ち出すのに成功しているし,このビッグバンド,オランダという国がジャズでもかなりのレベルにあることを実証している。コンセルトヘボウと言えば,クラシックの世界ではアムステルダム・コンセルトヘボウ・オーケストラであるが,このビッグバンドもそのレベルゆえに,きっちりしたスポンサーシップに支えられているということであろうか。いずれにしても大したものだ。

ライナーにあるパーソネルを見ても,あくまでもJesseはこのビッグバンドの一員という扱いなのも奥ゆかしい。ジャケ写真は日本でのセールスを意識したものなのかよくわからないが,それでもFeatured SoloistとしてJesse van Rullerはほぼ完璧な仕事をこなしている。このアルバムは欧州ジャズのファンだけでなく,より幅広いリスナーに聞かれるべきものと思う。星★★★★☆。

ところで,オランダには私は行ったことがないのでわからないが,BimhausはFred Hershもライブ盤を残している場所だから,同地の有名ジャズ・クラブって感じだろうか。コペンハーゲンにカフェ・モンマルトルがあり,アムスにBimhausありである。う~む。ちょっと行ってみたいなぁ。

Recorded Live at Bimhaus, Amsterdam on March 2, 2008

Personnel: Henk Mertgeert(cond), oris Roelofs(as ss, cl, fl), Jorg Kaaij(as, fl), Simon Rigter(ts), Sjoerd Dikhuizen(ts, cl), Juan Martinez(bs, b-cl), Jelle Schouten(tp, fl-h), Ray Bruinsma(tp, fl-h), Rini Swinkels(tp, fl-h), Ruud Breuls(tp, fl-h), Jan van Duikeren(tp, fl-h), Jan Oosting(tb), Jan Bastiani(tb), Hansjorg Fink(tb), Martien de Kam(b-tb), Jesse van Ruller(g), Peter Beets(p), Frans van Geest(b), Martijn Vink(ds)

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2008年10月16日 (木)

Pretendersの新作は正統派ロックだが,曲のクォリティがなぁ...

Pretenders "Break up the Concrete" The Pretenders (Shangri-la)

私にとってはPretendersと言えば今も昔も"Learning to Crawl"である。あの名曲満載のアルバムこそが,私は彼らの最高傑作だと信じているが,その後は彼らの活動をフォローしてきたわけではない。しかしCrissie HyndeはBob Dylanの30周年記念ライブとかでもカッコいいおばちゃんぶりを発揮していたし,私の中ではやはり気になる人たちではあった。

そんなPretendersの新作であるが,私をこのアルバムの購入に走らせたのはJim Keltnerの全面参加という点である。Jim KeltnerとPretendersの組み合わせはやや意外ながら,上述のDylanのライブにもKeltnerは参加して,Crissieとも共演しているはずだから,まぁ考えられないことはない。Keltnerはオールラウンドなプレイヤーであるから,ここでもバンドにきっちり同化しているのは大したものである。もう一つのポイントはJames Walbourneというギタリストとの共演だが,この人Pernice Brothersというバンドのメンバーらしいが,ここでは非常にソリッドなギターを聞かせていて,このロック魂あふれるアルバムに貢献している。

冒頭からいきなりの「南無妙法蓮華経」には思わずのけぞるが,その後は正統派ロック・サウンドが全面的に展開されている。サウンド的には私は文句はないのだが,このアルバム,いかんせん曲のクォリティが今一歩なのが残念である。ここに"Learning to Crawl"所収の曲のクォリティが加わればよかったのに...と惜しまれる。星★★★☆。

ところで,このCDには帯が付帯されていて,そこには"Soak this Handmade seed paper in water overnight and plant under a thin layer of sil. Keep moist. Seedlings may sprout in 1-4 weeks."と書いてある。ってことはこれを植えると何かが生えてくるということだが,一体何が生えるのやら。裏ジャケに映った可憐な白い花だろうか?ものは試し,やってみることにしよう。結果は追ってご報告としたい。

Personnel: Crissie Hynde(vo, g), James Walbourne(g, p, accordion, vo), Jim Keltner(ds, vo), Eric Haywood(pedal steel, vo), Nick Wilkinson(b, vo)

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2008年10月13日 (月)

怒涛の新譜ラッシュで記事のアップが追いつかない

秋も本番になると音楽シーズン到来ということで,沢山の音楽CDの注目すべき新譜が発売されたり,これから発売されることになっている。私にとって,この秋最高の注目作はRachael Yamagataがあの傑作デビュー・アルバム(素晴らしいRachael Yamagataのデビュー作という記事を以前書いた)から4年ぶりにリリースするセカンド・アルバムであるが,そのほかにもJames Taylorによるカバー作品集,J.D. Southerの25年ぶり作品,Jim Keltnerを迎えたPretendersの新譜,Dan Pennのデモ音源を集めたらしい新作,Otis Reddingのライブ発掘作等々枚挙に暇がない。

その多くは私は既に入手済みなのだが,いかんせんちゃんと聞いている時間がなく,記事のアップが滞りそうで恐い。そのほかにも入手するアルバムは新譜だけではないしなぁ。

それにしても,こうして書いていると全然ジャズの新作が含まれていないことに今更のように気がつく。巷では゛Kind of Blue"の50周年記念ボックスというのが出ているが,あれも既にブートで発掘済みの"Kind of Blue"セッションの模様がようやく公式盤に収められている程度のものであろうから,音源としては魅力はないし,CDの2枚目なんて゛1958 Miles゛そのまんまで,「なんじゃそりゃ」感が非常に強い。更にはボックス・セットにいまさらブルーのアナログLPを付けられても困る人の方が多いのではないかと思いたくもなる。Columbia/Legacyの復刻作というのは,どうもよくわからない編集方針で???と首を捻らざるをえないところがあるのだが,いかに私がMilesのファンと言ってもこれでは食指が動かない。

まぁジャズ界ではブロガーの皆さんの情報とショップからのメール情報を頼りにするしかないが,どうも「おぉっ!」というような新譜がないのは残念である。こういうことを言っていると自分がまたブートに走りそうで恐いのだが,いずれにしてもこの秋はしばらくロック系の記事ばかりになりそうな気がする今日この頃である。そう言えば,Bob Dylanの"Bootleg"シリーズもあったなぁ。あれって限定の3枚組と通常盤2枚組の価格差が大き過ぎて,さすがに3枚組の購入は躊躇してしまった。Dylanは今回は諦めて,持っているアルバムを聞き直すことで我慢しよう。そんなことをしていたら,また新譜を聞く時間がなくなるんだって(爆)。悩みはつきない私である。

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2008年10月12日 (日)

Dave Holland:バンド一新の結果やいかに?

Holland_pass_it_on ゛Pass It On" Dave Holland Sextet (Dare2 / Emarcy)

しばらく前に購入していながら,なかなかアップできていなかったアルバムである。

これまで鉄壁のコンビネーションを誇ったDave Holland Quintetであるが,今回発売された新作では,Robin Eubanksを残してメンバーが一新され,3管編成のセクステットとなっているところが,最大の注目点である。これまでのバンドは活動期間が長く,行くところまで行ったとHollandが判断したかどうかはわからないが,レベルの高い活動を継続するHollandのことであるから,期待が高まるのは当然である。

このアルバムでもDave Hollandのリーダーシップのもと,なかなか優れた演奏を展開しているが,前のクインテットに比べると変態度はやや薄れたというか,よりコンベンショナルな響きが増しているのは編成のせいと考えてよいかもしれない。ピアノも入った3管編成と言えば,Art Blakey & the Jazz Messengersという代表的コンボがあるが,今やHollandが目指すのはBlakey的なバンド・リーダーということかもしれない。

メンバーはピアノのMulgrew Millerの参加がやや意外である。Millerと言えば,中堅中の中堅(誉め言葉なのか,けなしているのかわからないなぁ)であるが,ここでも全く破綻のない演奏ぶりである。アルトのAntonio HartはRoy Hargroveのコンボでの活躍が記憶に残るが,最近は活動に華がないというか,どちらかというと低迷していたという感じだろうか。トランペットのSipiaginはCriss Crossレーベルでの活躍が目立つものの,まだメジャー化はしていないという人である。そこに最近,いろいろなバンドでの活動が目立つEric Harlandと番頭役Eubanksという編成は,ある意味いろんなタイプの人を一つのバンドに突っ込んでしまいましたという感じがするのだが,ここでの目的はそうしたバンドでもちゃんとHollandの統率力が機能することを見せつけたいかのようである。Hollandが目指すはジャズ界の野村再生工場かと冗談の一つも言いたくなるような編成である。

しかし,演奏のクォリティは現代的ハードバップとして非常に高いし,またこのアルバム,通勤途上で聞いても音がよいように思えるのである。ここではHollandのアコースティック・ベースが生々しくとらえられていることも私の好感度を上げる要因である。そうは言っても,前のクインテットとどちらが好きかと言われればクインテットだよな~とは思うが,ちょっと同じメンツでの活動が長くなり過ぎてやや食傷気味だったのも事実である。リスナーがそうなのだから,Hollandも同様だったのだろう。まぁ3管のメンツはHolland Big Bandのメンバーでもあるから,見ず知らずの仲であったわけではないし,ピックアップしてバンドにしてみましたって感じか。それでこの完成度ということなら,やはりHolland恐るべし。星★★★★。

Recorded in July 2007

Personnel: Dave Holland(b), Antonio Hart(as), Robin Eubanks(tb), Alex "Sasha" Sipiagin(tp), Mulgrew Miller(p), Eric Harland(ds)

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2008年10月 8日 (水)

Paolo Fresu対ノルウェーのバリサク・トリオ

Subtrio "Live at Sting" Subtrio Featuring Paolo Fresu (Dravle)

このアルバム,今年の8月頃に日本に入ってきていたはずである。しかし,一向に店頭で見つけられず,ネットでも見当たらないという状態が続いていたのだが,ようやく某店で入手できた。よって,まだ新譜扱いとさせてもらう。

ピアノレスのバリトン・サックス~トランペットのクァルテットと言えば,誰もがGerry Mulligan~Chet Bakerのバンドを思い起こすはずであるが,編成が同じでも,時代が変わるとこうも音楽は変わるものかと妙に感心をさせられるアルバムである。このアルバム,ノルウェーのSubtrioというバリトン~ベース~ドラムスという変わった編成のバンドが,Paolo Fresuを迎えて吹き込んだライブ・アルバムなのだが,Mulliganクァルテットが対位法,あるいは室内楽的な響きさえ持っていたのとは異なり,かなりホットな演奏が収められている。何てたってFresuである。ここでも吹きまくっている。

収録されている曲は,基本的にスタンダードか有名/無名ジャズ・オリジナルなのだが,プレイヤーの資質によって,この編成でもこうなってしまうんだというのが何とも楽しい。なぜか゛Line for Lions゛が2回収録されているのは蛇足のように思えるが,まぁご愛敬ということにしておこう。

いずれにしてもFresuのソロイストとしての魅力は十分に味わえる佳作である。星★★★★。

Recorded Live on December 9, 10, 11, 2004

Personnel: Paolo Fresu(tp, fl-h, electronics), John Pan Inderberg(bs), Svein Folkvord(b), Stein Inge Brekhaus(ds)

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2008年10月 1日 (水)

David Gilmourの新作ライブで亡きRichard Wrightを偲ぶ

David_gilmour ゛Live in Gdansk" David Gilmour (Clumbia)

Pink Floydのという接頭辞がどうしても付いてしまうDavid Gilmourであるが,彼が2006年にリリースした゛On An Island"に合わせて行ったツアーのライブ音源が発売になった。しかもツアーの最終公演として、ポーランドのグダニスク造船所で5万人の観客を前に行われたそうだが,伴奏にはオーケストラまでついているというまぁ何とも豪華な演奏である。

私が購入したのはDVD付きの3枚組輸入盤であるが,このDVD,少なくともライブ映像には日本語字幕までついている。しかし,演奏中大したMCもないので,字幕はあって困るというものではないが,別になくてもよいという程度である。

Wright このライブが重要なのは,今は亡きRichard (Rick) Wright(2008年9月15日逝去,享年65歳)の姿を収めていることである。ここでのWrightは2年後の死を全く想像させない演奏ぶりであり,こういうのを見ていると人の人生はつくづくはかないと思わされてしまう。私はPink Floydに関しては,大した思い入れはないが,彼らのファンはこの映像を見て,Wrightを偲ぶべきであろう。Pink Floydのライブ映像は壮大な規模を誇ったが,Wrightの死により今後のPink Floydとしての演奏はかなり厳しくなったのではないだろうか。Live 8でRoger Watersも入れてPink Floydを再編していただけに,Pink Floydの本格的な復活を願う人々にとってはこの死は惜しまれるものであろう。

Wrightのことはさておき,演奏についても触れよう。ここでの演奏はある意味アダルト・オリエンティッド・ロックだと言ってよい。なぜならば,テンポはミディアムが中心でロックの強烈なビート感はないからである。一言で言うとたおやかなのである。よって,私のような中年オヤジには気持ちよく聞けるが,逆に刺激には欠けるのも事実である。しかし,共同プロデュースも兼ねるPhil Manzaneraを含むバンドのクォリティは極めて高く,演奏は楽しめてしまうので私としては文句はない。オケを入れる意味がどのぐらいあるのかよくわからない部分もあることはあるが,まぁ最終公演としてのお祭り的な感覚だと思えば,それも気にならない。

この作品を評価するポイントは,本作に何を期待するかによって大きく変わるはずである。ちゃんとPink Floydナンバーも演奏されているし,とにかく見ていて安心,聞いていて安心,絶対損はさせませんという感覚は確実にあるから,私のような人間にはこれでも結構である。しかし,音楽に新奇性を求めたり,強いアタックを求めるリスナーには確実にスリルが足りない。よって,私は映像込みで星★★★★は付けてもいいと思うが,おそらくは賛否が分かれるのではないかと思わせる作品である。

Gilmour 尚,余談だが,映像に映るDavid Gilmourの顔はその筋の方のようで結構恐いものがある。紳士然としたRichard Wrightとえらい違いで,この2人がバンド・メイトというのは笑える。

Recorded Live at the Gdansk Shipyard on August 26, 2006

Personnel: David Gilmour(g, as, vo, banjo, etc.), Richard Wright(key, vo), Phil Manzanera(g, vo), Jon Carin(key, g, vo), Guy Pratt(b, vo), Steve DiStanislao(ds, vo), Dick Perry(ts, key) with the Baltic Philharmonic Symphony Orchestra, Zbigniew Preisner(cond), Leszek Mozdzer(p)

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2008年9月29日 (月)

Herbie Hancock:これでDefinitiveでは看板に偽りあり,かつかなり詐欺的なボーナスCD/DVD

Definitive_hancock ゛Then And Now: The Definitive Herbie Hancock" Herbie Hancock (Verve)

Herbie Hancockは様々な音楽スタイルで,時代の先端を走ってきたミュージシャンであるから,私も相当数のアルバムを保有している。そのキャリアを総括したアルバムが出たからと言って,大方は持っているから,普通だったらこんあものは絶対買わない。そもそもHerbieの輝かしいキャリアをたった12曲に凝縮するということ自体が無茶である。よって,私はこのアルバムの゛Definitive゛というタイトルには声を大にして異議を唱えたい。

じゃーなんで買うのよと聞かれれば,私が買った国内盤にはJoni MitchellとHerbieが共演したライブの映像がDVDとしてオマケでついているからなのだが,これとてYahoo! Musicで公開済みの映像だから,ことさら珍しいというものでもないし,ネットでダウンロードすればすむ話である。そもそも輸入盤でもDVD付きの2枚組みとしても出ている。しかし,Joniの名前を見て反応してしまった私が悪いと言えばその通り。そもそも元々のCDにボーナス・トラックで入っている音源だって,そのYahoo! Music音源と同じではないか。これってかなり詐欺的ではないだろうか。

さらに国内盤のオマケについているボーナスCDにはSonya Kitchellとの゛All I Want゛が帯には「初CD化」と書かれているが,これだって大嘘である。この曲はアルバム゛River: The Joni Letters゛を米国Amazon.comで買えば,この曲がボーナスとして入ったバージョンがAmazon Exclusiveというかたちで公表されているから,「国内初CD化」と書かれていないことはまたまた詐欺的である。私は米国Amazon経由でわざわざそのアルバムを購入しているし,ボーナスCDに入っているほかの2曲(゛Harlem in Havana゛と゛I Had a King゛)だって,iTunesで買えるのだから,結局このアルバムのオマケにはほとんど魅力なんてなかったということである。何,国内盤はベスト盤CDがSHM-CD仕様だって。それがどうしたっ!。ふざけるなと言いたい。

こういうことは購入前に調べておけばよかった話(そこは反省しなければならない)なのだが,店頭でそんなことまで調べる由もなく,Joniの名につられるという,ほとんどユニバーサルの策略にはまってついつい無駄使いをさせられてしまった。こうしたやり口を連発する最近のユニバーサルの商法は本当にあこぎとしか言いようがない。だから国内盤は買いたくないのだ。CDの売上げの低迷が叫ばれる昨今,こうした商法は更に状況を悪化させるレコード会社の自殺行為として糾弾したい。消費者としてはこういうやり口は許せないので無星。それにしても腹が立つ。

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2008年9月22日 (月)

買ってしまったLed Zeppelin究極のCDボックス・セット

Led_zeppelin 私はLed Zeppelinに関してはかなり遅れてきたファンだと言ってもよいかもしれないし,オリジナル・アルバムではなく,ずっと゛Led Zeppelin 4CD Box 1968-1980゛という90年代初頭にリリースされた箱ものや,その後リリースされたライブ音源だけで彼らの音楽を楽しんできただけなので,ファンと名乗ることもできない程度の聞き方しかしていないとも言える。

こういう人間が,これから彼らの音楽を全部聞き通そうと思うと,なかなか背中を押してくれるファクターがないと難しいだろうが,今回発売された紙ジャケ,SHM-CDボックスはそういう人間にとってはある意味ありがたいボックス・セットである。いろいろな付加価値がついているから,これなら買ってもいいかと思わされてしまったのである。

とは言っても28,000円という価格がどうなのよという話もあるし,こうしたレコード会社の商魂には賛否両論渦巻いているということも理解してはいるのだが,おそらくこうした機会でもない限り,私がLed Zeppelinの音楽に改めて向き合おうということはなかったであろう。もちろん,前述の4枚組やライブだけでも十分とも言えるし,何を今更Zeppelinだという声もあろう。

ということで,こんなものに28,000円を払って買っている自分のアホさ加減にあきれつつも,同梱された゛In through the Out Door"の6種のジャケット・レプリカをながめながらニヤニヤしている私である。やはりビョーキと言われても仕方ないかもしれないなぁ。

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2008年9月20日 (土)

なんとMaria SchneiderがDavid Sanbornを迎えてGil Evansナンバーを演奏したライブ!

Sanborn_gil "Music of Gil Evans゛ David Sanborn with the Danish Radio Big Band (Megadisc)

あまりにも珍しい演奏のブートが出たので紹介するが,このタイトルにははっきり言って偽りがある。正確にはMaria Schneiderが指揮するDanish Radio Big BandがGil Evansのナンバーを演奏するライブのゲスト・ソロイストがDavid Sanbornなのである。即ち,゛Maria Schneider and the Danish Radio Big Band Play the Music of Gil Evans Featuring David Sanborn゛というのが正しいタイトルである。ブログのお知り合いにはMaria Schneiderのファンが結構いらっしゃるが,ブートレッガーの感覚としてはSanbornを前面に出した方が売れるに決まっているとの判断であろう。まぁ当然ではあるが,ちょっと可哀想なMaria...。

このブート,3夜のライブの模様を収めたなんと4枚組の超大作である。しかし,曲のかぶりも多いので,コアなファン向けとも言えるが,音もいいし,何よりもここまでエモーショナルに吹きまくるSanbornは最近聞いたことがない。やはりGil Evansに対するリスペクトがそうさせるのか。まだ全部聞いたわけではないのだが,これは相当によい。また,Maria Schneiderも同様に,Gil Evansのアレンジにかなり忠実な演奏をしており,こちらもリスペクトが感じられる。

また,Big Bandのソロイストのレベルが総じて高いのには驚かされたが,デンマークと言えばコペンハーゲン,コペンハーゲンといえばカフェモンマルトルという名クラブがあるぐらいだから,ジャズへの理解度や演奏者のレベルが高いということであろう。

それにしてもこうした音源が突如現れてくるところがブートの世界の奥深いところである。私としてはブートをあまり持ち上げたくはないが,やはりこの盤は紹介せずにはいられなかった。Sanborn,Schneider,Gil Evansファンは必聴である。星★★★★☆。欲張らずに第2夜だけで2枚組にしていたら,満点でもよかった。尚,余談だが,Maria Schneiderの英語はクリアで非常にわかりやすい。みんなこういう英語を喋ればいいのにねぇと思わせるような英語である。

Recorded Live in Aarhus, Copenhagen, and Helsinki, on March 15, 16, 18, 2003

Personnel: Maria Schneider(arr, cond), David Sanborn(as) Danish Radio Big Band

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2008年9月17日 (水)

Harvie S:この名前はやめた方がいいよなぁ

Harvie_s "Now Was the Time" Harvie S (Savant)

出張から戻り,久々に音楽系の記事への復帰である。

私はいつもこのHarvie Sという名前を聞くと,Shiela EやRachel Zを思い出してしまうが,ShielaやRachelとは異なって,Harvieはむさくるしいオッサンである。だいたいSheilaやRachelはLast NameがEscovedoだとかNicolazzoだとか舌をかみそうな名前だからニックネームとしてアルファベットを使っているだけだが,Swartzなんて普通の名前なのになんでHarvie Sなんだっ!といつも突っ込みを入れたくなる。この名前だけで購買意欲が下がるジャズ・ファンは決して少なくないと思うのだが...。しかし,彼はこれまでもさまざまなミュージシャンと共演してきたベテランである。私としてはECMレーベルでのSteve Kuhn~Sheila Jordanバンドが懐かしいところである。

その名前はさておきのHarvie Sが名手Kenny Barronとデュオを展開する,しかも選曲がほとんど有名曲ということであれば,親密感と渋味溢れる演奏を期待するのが人情である。しかし,このアルバム,ベーシストのリーダー作だから仕方がないと言えば仕方がないが,ここで聞かれるミキシングはいかがなものか。リーダーのベースは増幅過剰,演奏はエコー過剰で,かつベースの音がでか過ぎで落ち着かないこと甚だしい。演奏自体は悪くないのだが,このサウンドはいかん。これでは音の方ばかりが気になって音楽そのものに没頭できないではないか。

そもそも私は増幅されたアコースティック・ベースの音が嫌いなので,このアルバムもその怖れがあることを認識しつつ購入したわけだが,やっぱり駄目だった。演奏の趣味は悪くないが,録音の趣味が最悪なのである。これはプロデューサーを兼ねるHarvie S本人と,共同プロデュースのLeni Stern(Mike Stern夫人がなんでここに?という感じである)を叱り飛ばしておきたい。星★★。

Personnel: Harvie S(b), Kenny Barron(p)

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