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2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

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カテゴリー「新譜」の記事

2017年6月14日 (水)

ある意味,これがVanguardでのライブというのが信じがたい"Small Town"

"Small Town" Bill Frisell & Thomas Morgan(ECM)

Small_town今年になってから,私はBill FrisellはCharles Lloydとのライブで,そしてThomas MorganはJokob Broとのライブで,その生演奏に接している。ビルフリについては長年の経験則からして,だいたいどういう音だろうというのは想像がつくし,Thomas Morganのあの超内省的な感じ(本当に内気な青年って感じなのである)からすれば,インティメートな音場になることはわかっていた。

しかし,本作が録音されたのは,モダン・ジャズの聖地と言ってよい,あのVillage Vanguardである。あまりこうした演奏には接するチャンスがある場所だとは思えないのだが,そういう場所でこういう演奏が行われたということがまず驚きである。

だが,このアルバムを聞いていると,彼らの演奏にはマジカルな部分があって,聴衆を誘因する特殊なケミストリーを発生させているようにさえ思える。ギターとベースというデュオというセッティングにおいて,非常に特異な個性に満ちた演奏と言うことができるアルバムだと思える。だって,Jim Hall~Red MitchellやJim Hall~Ron Carterとは違うし,Charlie Haden~Christian Escoudeとも違う。ではBebo Ferra~Paulino Dalla Portaとはどうかというと,内省的な響きは類似していても,やっぱり違うのである。彼らにしか出せない音。まさにそんな感じだろう。"Subconscious Lee"なんて,まさにツボに入る演奏である。

ビルフリの音は想定通りであるが,ここでのThomas Morganのベースの音がなんと魅力的に録音されていることよ。レコーディング・エンジニアの記載がないが,これをミキシングだけでこの音に仕上げたとすれば,それはそれで凄いことである。

前半はJakob Broにも通じる幽玄な世界が展開されるが,中盤から後半にはやや最近のビルフリに感じられるアメリカーナな感覚もあり,全体としてはバランスの取れたアルバムと言ってよいだろう。だって,やっているのがCarter FamilyやらFats DominoではいくらビルフリとThomas Morganでも多少はそうなるわねぇ(苦笑)。そして最後はなんと"Goldfinger"である。Shirley Basseyのオリジナルとは全く違う世界が展開する。万人には勧めにくいが,この世界,はまるとなかなか抜けられない。そういう世界である。星★★★★☆。

Jakob_bro_i_mosaicいかにThomas Morganが内気っぽいかを見て頂くため,Jakob Broとのライブ時の写真を再掲しておこう。いつも通り,私の顔はモザイク付きである。

Recorded Live at the Village Vanguard in March 2016

Personnel: Bill Frisell(g), Thomas Morgan(b)

2017年6月12日 (月)

メンバー・チェンジ後のOregonの新作が渋くも素晴らしい。

"Lantern" Oregon(CamJazz)

_20170611Oregon久々の新作がリリースされた。前作は"Family Tree"のはずだから,約4年半ぶりってことになるので,結構久しぶりである。その間には,バンドの創設メンバーであるGlen Mooreが脱退するという出来事があったが,今回のアルバムにおいては,Glen Mooreが去ったことの影響はどうかということに関心が向かざるを得ない。しかし,Glen Mooreに代わって加入したのはPaolino Dalla Portaである。Paolino Dalla Portaと言えば,Paolo Fresu Devel Quartetの演奏でも知られるが,私としては,ギターのBebo Ferraとの素晴らしいデュオ・アルバムがあったので,多分大丈夫だろうとは思っていたが,私が想像するよりずっとよいアルバムに仕上がっていると思う。

前作"Family Tree"についてはやや辛めの評価をした私である(記事はこちら)が,今回のアルバムは私が期待する彼ららしい音が出てくるのがまず嬉しい。Ralph Townerのオリジナルおw中心とした曲から構成されているが,2曲目には先日このブログでも取り上げたJavier Girottoのアルバムでも演奏していた"Duende"が収録されているが,GirottoのアルバムでもTownerはいいところを聞かせていた(記事はこちら)ものの,演奏の出来ははるかにこちらの方がいいように思える。

3曲目はMark Walkerによる"Walk the Walk"であるが,ちょっと聞いた感じではPat Metheny Unity Groupのようにも聞こえるのは面白いが,そこでも聞かれるRalph Townerのピアノの見事さには触れておかねばなるまい。ソロにしても,バッキングにしても,実に大したものであり,うまいねぇと思わせる。ギターが素晴らしいのはもちろんだが,ピアノも一流なのはEgberto Gismonti同様である。

そして,注目のPaolino Dalla Portaであるが,実にいい音を出していて,それがOregonというバンドのサウンドにジャスト・フィットと言っていいだろう。Glen Mooreの脱退の影響はほとんどないと言ってもよい。これならば,今後のバンド活動も安心である。

全体を通して聞けば,コレクティブ・インプロヴィゼーションのようなタイトル・トラック"Lantern"はどうなのよ?って気がしないでもないが,徐々に盛り上がりを示して,そんなに悪くもないかと思わせるし,更には最後をトラッドの"The Water Is Wide"で締めるってのは,演奏はちょいと緩いものの,決まり過ぎでしょう(笑)。いずれにしても,長年のOregonのファンが聞いてもおそらくは納得のいく,渋くも素晴らしい新作である。星★★★★☆。

Recorded on November 28-30, 2016

Personnel: Paul McCandress(oboe, english horn, ss, b-cl), Ralph Towner(g, p, synth), Paolino Dalla Porta(b), Mark Walker(ds, perc, ds-synth)

2017年6月11日 (日)

もはや裏Fleetwood Macの趣:"Lindsey Buckhingham Christine McVie"

"Lindsey Buchngham Christine McVie" (East West/Warner)

Buckingham_mcvie私はなんだかんだ言ってFleetwood Macのアルバムを結構保有しているし,Beb Welchのいた時代から,彼らの持つポップさが好きなのだが,その中でも特に好きなのがChristine McVieなのだ。特に彼女のソロ・アルバム(邦題「恋のハートビート」だったか...)なんて本当に好きである(記事はこちら)。

そんなFleetwood MacからChristine McVieからはかなりの期間離れていたが,現在は復帰しているが,そこでLindsey Buckhinghamと彼女がデュオ・アルバムを出すとは想像していなった。Buckinghamが組むなら,当然Stevie Nicksだと思うのが人情だが,Christine McVieの方が圧倒的に好きな私には嬉しい驚きであった。

そしてデリバリーされたアルバムのクレジットを見ると,バックはJohn McVieとMick Fleetwoodではないか。それにMitchell Froomがキーボードで加わるという布陣は,ほとんど裏Fleetwood Macである。更に音を聞いてみると,どうしてもバッキング・ヴォーカルがStevie Nicksに聞こえてしまうから不思議である。私としてはクレジットされていないだけで,彼女が参加しているようにさえ思えてならない。Buckinghamにはベース,ドラムスのクレジットもあるから,Macのリズム隊は一部参加と考えてもよいが,それでもこれはファンにとっては,ほとんどFleetwood Macのアルバムとして聞いても問題はなさそうに聞こえる。

まぁ,それはさておきである。彼ららしいポップさを持ったアルバムは予想通りであるが,随分とLindsey Buckinghamの声がハスキーになった感じがして,時の流れを感じてしまう。Christineは古希を過ぎ,Buckinghamも今年で68歳なのだから,声の衰えは当然あって然るべきであるが,Chrisitineの声が以前と大して変わらないように思えるのは驚異的である。昔からChristineの声は渋い声だったということもあろうが,まだまだ若々しさを感じさせるのは立派だと思う。

曲は彼らしい曲だとは思えるが,今一歩のキャッチーさが不足しているような気がするのはやや残念だとしても,長年のChristine McVieのファンとしては,彼女が歌ってくれるだけでもうれしいのである。"Game of Pretend"なんてそのイントロを聞いただけで"Songbird"を思い出してしまうしねぇ。まぁそれでも評価としては星★★★★てところだろうなぁ。

Personnel: Lindsey Buckingham(g, key, b, ds, perc, vo), Christine McVie(key, vo), Mick Fleetwood(ds, perc), John McVie(b), Mitchell Froom(key)

2017年5月25日 (木)

Jaco全盛期の輝きを捉えた未発表音源。

"Truth, Liberty & Soul" Jaco Pastorius (Resonance)

Jaco貴重な未発表音源を次から次へとリリースするResonanceレーベルから出たアルバムには,注目に値するものが多いが,これまた強烈な音源があったものである。

これは米国の公共放送,NPRで放送された音源のソースを完全公開したものであるが,これまでブートなどで聞かれた演奏は一部の音源がオミットされた不完全版だったらしいが,これはその完全版ということで,長時間に渡って,Jaco Pastoriusの凄みを感じさせる演奏を聞ける貴重音源となっている。そもそも,これはKool Jazz Festival,場所はAvery Fisher Hallという,ジャズ・ミュージシャンにとっての晴れ舞台のような機会である。Jacoとしても燃えるのは当然だが,それにしてもこれは素晴らし音源である。

正直言って,私は1984年にGil Evans OrchestraのゲストとしてLive under the Skyに出演したJacoを見て,完全に狂っていると思った(その音源に関する記事はこちら)が,この演奏はその2年前ぐらいのものであり,たった2年で人間はこんなにも変わってしまうのかと思わざるをえないし,何がJacoに起こったのかと改めて思っていしまう。私のように,Jaco Pastoriusというミュージシャンに特別の思い入れのない人間でも,天才を発揮した時のJacoの凄さはちゃんと感じられるつもりである。

例えば,本作の冒頭の"Invitation"のバックで弾けるJacoの演奏を聞いていれば,それだけで燃えるというのが普通の反応だろう。そして,ここに参加した強烈なメンツ(ホーン・セクションだけでも凄い名前が揃っている)による圧倒的なグルーブを聞かされてしまっては,84年の狂ったJacoのことは忘れることができるってものである。これは黙って聞いて,天才としてのJacoの演奏を認識すればいいということだろう。Disc 2の前半こそやや中だるみ感があるものの,この圧倒的な演奏には星★★★★★しかあるまい。よくぞ発掘してくれたというのが正直な思いである。

繰り返すが,私はJacoに対して特別な思い入れはない。しかし,そんな私でも,これは万人に勧めたくなるようなアルバムである。同じ年に日本で録音された"Twins I&II"に匹敵する名ライブであり,結局はこの年がJacoのピーク,あるいは最後に輝いた年だった。

Recorded Live at Avery Fisher Hall on June 27, 1982

Personnel: Jaco Pastorius(b, vo), Bob Mintzer(ts, ss, b-cl), Randy Brecker(tp), Othello Molineaux(steel ds), Don Alias(perc), Peter Erskine(ds), Toots Thielemans(hca), Bob Stein(as), Lou Marini(ts), Frank Wess(ts), Howard Johnson(bs), Randy Emerick(bs), Alan Rubin(tp), Leew Soloff(tp), Jon Faddis(tp), Ron Tooley(tp), Kenny Faulk(tp), David Taylor(tb), Jim Pugh(tb), Wayne Andre(tb), John Clark(fr-h), Peter Gordon(fr-h), David Burgeron(tuba)

2017年5月24日 (水)

Ondřej Štveráček参加のNajponkのライブ盤。よくやるわ。

"Live at the Offece Vol.4" Najponk Trio & Tenor Titans (Gats Production)

_20170521私を含めた一部の好き者(爆)が,ジャズ界の「おんどれ君」と呼ぶOndřej Štveráčekであるが,本人のWebサイトでも,音を聞いても,Coltrane愛が炸裂するこのテナー奏者には,固定的リスナーが私の周りに少なくとも3人(笑)はいる。しかし,彼のアルバムは入手がなかなか大変なのがやっかいで,日本に入ってくることが少ない。なので,私は直接本人やチェコのショップに発注しているのだが,今回のアルバムは,いつもと違って,入手が容易だったのは助かる。しかも値段が安い。と思ったら,本作は日本のガッツ・プロダクションの制作ではないか。それがまずへぇ~であった。まぁ,そうは言っても,本作はおんどれ君以上に,日本で固定ファンが付いているであろうNajponkをリーダーとするセッションとして企画されたものと想像する。それでもおんどれ君に対する注目度が少しでも上がれば,それは決して悪いことではない。

アルバムの企画としては,タイトルからもわかるが,2テナーをフロントに据えた典型的ブローイング・セッションと言っていい。しかもやっている曲が,ブルーズやモードなんだから,そりゃあそうなるわ。それはそうなのだが,おんどれ君の日頃のライブに接することができないはるか日本のリスナーにとっては,あぁ,やっぱりこういう感じでやってんのねぇって感慨を覚えてしまうぐらい吹きまくるおんどれ君である。ここに収められているような演奏を眼前で繰り広げられたら,あまりの吹きっぷりに,「笑いながら」悶絶してしまうこと確実である(爆)。

そういう意味では満足度は高いとも言えるが,アルバムとしてはどうなのかねぇと思ってしまう部分もある。最後に"All Clean"のリハーサル・テイクを収録しているが,ソロの出来がよかったとしても,こういうのは「蛇足」と言ってもよいものだろう。

それでもおんどれ君のファンを納得させるには十分と思えるし,難しいことを言わず,彼らのブローイングを楽しんでいればいいということではあるが,これなら星★★★☆程度でよかろう。いずれにしても,日本制作でOndřej Štveráčekが参加したアルバムができるとは思っていなかっただけに,これは嬉しい「誤算」ではあったが,ちょっと制作の仕方が安直なんだよねぇ。ちょっと惜しいなぁ。

Recorded Live at the Office on October 2016

Personnel: Najponk(p), Ondřej Štveráček(ts),Osian Roberts(ts), Taras Voloschuk(b), Marek Urbanek(ds)

2017年5月18日 (木)

直感を信じて買って大正解のRose Cousins

"Natural Conclusions" Rose Cousins(自主制作盤)

Rose_cousins某誌でこのアルバムの紹介を見て,Joe Henryプロデュースということを知り,猛烈に興味が湧いた私である。Joe Henryのプロデュースしたアルバムは正直言って玉石混交で,はずれはまじではずれることがあるのだが,基本的には信頼に値する人だ。これはApple Musicで冒頭の1曲を聞いて,自分の直感を信じて買いを決意したものだ。

Rose Cousinsというシンガーについては全く知らなかった。Wikipediaで調べてみると,カナダのシンガー・ソングライター。2006年にデビューした時にはアラサーだったという遅咲きのシンガーで,現在は不惑を迎えている。Apple Musicで聞いた時からちゃらちゃらしたところはないと思っていたが,だてに年齢を重ねていないと思わせるような音楽性である。

カナダのシンガーソングライターと言えば,私のアイドル,Joni Mitchellと同じってことになるが,Joniの音楽とはちょっと違うとしても,これはこれで非常によくできたアルバムであり,優れた曲集となっている。そんな彼女が,これはKickstarterというクラウド・ファンディングを使って制作したアルバムだが,PledgeMusicなら私も投資していたなぁと思えるほど,これはよい。そもそも,私はシンガーソングライターは渋めの男声が好きなのだが,女声についても,相応のリスナーである。代表はJoni Mitchellだが,Rickie Lee Jonesでも,Laura Nyroでも,Carly Simonでも,Carol Kingでも全然問題ない。まぁそれでも,どのシンガーを聞いても,キュートな声ではないということはおわかり願えよう。私にとっては,大人の声でないといかんのである。

そして,このRose Cousinsであるが,まさに私のツボと言ってもよい。最近聞いた女性シンガーのアルバムでは,何と言ってもRachawl Yamagata推しの私だが,この作品は,Rachael Yamagataと同じぐらいよい。Joe Henryのプロデュースよろしく,この人の歌手としての魅力を十二分に捉えていると言ってよいだろう。私はこういう音楽には弱いのである。声よし,曲よし,伴奏よしである。この手の音楽で久々にしびれたというのが正直な思いである。皆さんにより広く知ってもらうために星★★★★★としてしまおう。それでもこのジャケでは売れないか...(爆)。しかし,まじでこれはよい!ストリーミング環境のある方は,騙されたと思って,ものは試しで聞いてみて頂きたい。

Personnel: Rose Cousins(vo, g, p), Jay Bellerose(ds, perc), Asa Brasius(steel-g), David Piltch(b), Zachariah Hickman(b, vo, arr), Gord Tough(g), Aaron Davis(key, org, p), Kinley Dowling(vla, vln, vo), Miranda Mulholland(vo), Caroline Brooks(vo), Jill Barber(vo)

2017年5月16日 (火)

Avishai CohenによるECM第2作もいい出来である。

"Cross My Palm with Silver" Avishai Cohen(ECM)

_20170514Avisha CohenがECMからアルバム"Into the Silence"をリリースしたことには驚かされたが,ECM的なサウンドになっていたのにも驚かされたのが昨年の早春のことである。それから約1年強のインターバルでアルバムがリリースされることは,Avisha CohenがManfred Eicherの審美眼に適ったってことだろうが,今回もECM的な魅力に満ちたアルバムとなっている。

そもそも私は,ラッパのワンホーンという編成が結構好きなので,それだけでもポイントが高いが,この静謐な中にも,相応のダイナミズムを共存させるAvishai Cohenのトランペットの響きには,心惹かれてしまう。こうした響きは,以前であれば,Thomaz Stankoあたりがこういう音を出していたかなぁなんて気もするが,最近彼のアルバムも聞いていないので,正しいかは自信がない(苦笑)。

それはさておき,ここでのAvishai Cohenのトランペットの響きが何とも魅力的に捉えられている。よくよく見れば,これもAaron Parksの新作同様,フランス南部にあるPernes-les-Fontainesという都市の,Studios Ls Buissonneなるスタジオで,Gerald de HaroとNicolas Baillardのコンビのエンジニアリングによって録音されている。ということは,今後はこのフォーメーションがECMの録音でも増えていくということなのかもしれないが,今回も見事なまでにECM的サウンドである。

Avisha Cohenを支える3人も,出過ぎたところなく,バックアップに徹している感覚もあるが,もし,Nasheet Waitsがバンバン叩いていたら,こういうサウンドにはなりえない。Fred HerschともやっていたWaitsのことである。ちゃんとわかっているってことだろう。全編を聞いても,一貫性が保たれていて,これはやっぱりよくできていると思う。星★★★★☆。

YouTubeに本作の予告編のような映像がアップされていたので,貼り付けておこう。映像で見るとまた別の印象を与えるねぇ。

Recorded in September 2016

Personnel: Avishai Cohen(tp),Yonathan Avishai(p), Barak Mori(b), Nasheet Waits(ds)

2017年5月 8日 (月)

ECMからクリポタの新作がリリース。これが実によい。

"The Dreamer Is the Dream" Chris Potter(ECM)

The_dreamer_is_the_dreamECMレーベルからクリポタの新作がリリースされた。"The Sirens","Imaginery Cities"に続く第3作はクァルテット編成である。振り返ってみれば,ECMからクリポタがアルバムを出すと聞いた時に,Undergroundで聞かせるようなイケイケ感と,ECMのレーベル・カラーが合わないのではないかと思わせたのは,"The Sirens"の記事をアップした時にも書いた(記事はこちら)。しかし,ECMの総帥,Manfred Eicherが評価したのは,激しくブロウするクリポタというよりも,トータルなミュージシャンとしてのクリポタだと思わせた。

今回の新作においても,冒頭の"Heart in Hand"から,非常にメランコリックな響きに満ちている。しかし,James Farberの見事なエンジニアリングもあって,クリポタの本質と言うべき,サックスの音色が捉えられていると思える。2曲目の"Ilimba"においては,こちらが期待するようなクリポタ的なフレージングを聞かせて嬉しくなってしまうし,随所にクリポタらしさも表れている。その一方で"Memory And Desire"のような曲では,室内楽的な響きすら感じさせ,クリポタの音楽性の広さが聞いて取れる。

一聴して,クリポタ的イケイケ感は,それほど強くないとしても,アルバム全体を通して聞いてみると,これは実によくできていると思ってしまうようなアルバムである。この感覚,ここにも参加しているJoe Martinの2009年作"Not by Chance"を思い出させる(記事はこちら)。本作のメンツは"Not by Chance"のピアノをBrad MehldauからDavid Virallesに代えたものだが,一聴しただけでは地味に聞こえるのだが,"Not by Chance"のじわじわ来るよさと同じような感じを思い出させる。

いずれにしても,クリポタのミュージシャンとしてしての質の高さを十二分に捉えたアルバムとして,私は本作を高く評価したい。ECMのアルバム前2作もよくできていたと思うが,静的な部分とダイナミズムを兼ね備えた作品として,私はこれが一番いいように思う。ということで,クリポタにはついつい甘くなり,星★★★★★。

尚,クリポタのクレジットにあるilimbaというのは,カリンバに似たタンザニアの民族楽器らしい。へぇ~(笑)。

Recorded in June 2016

Personnel: Chris Potter(ts, ss, b-cl, cl, fl, ilimba, samples), David Viralles(p, celeste), Joe Martin(b), Marcus Gilmore(ds, perc)

ついでながら,この演奏よりもっと激しいクリポタをご所望の皆さんのために,Snarky Puppyのライブに乱入したクリポタの映像を貼り付けておこう。画像が揺れるのがちょいと気持ち悪いが,これは激しいでっせ(笑)。

2017年5月 7日 (日)

Aaron ParksのECM第2作は何とも美的。

"Find the Way" Aaron Parks (ECM)

Find_the_wayAaron ParksがECMでソロ作"Arborescence"をリリースしてからやく3年半,ついにその第2作がデリバリーされたので,早速聞いてみた。今回はピアノ・トリオ編成であるが,ベースのBen Streetはさておき,ドラムスがBilly Hartというのがやや異色に思える。と同時に,私にとってはちょっとそれが不安要因でもあった。

私がAaron Parksのソロ・アルバムに期待するのは,繊細でリリカルで美的なピアノである。そうした観点では,全編を通じて,期待通りの音が聞こえてくる。ただ,冒頭の"Adrift"に顕著なのだが,Billy Hartがちょっと叩き過ぎという感じがしないわけではない。これがミキシングのせいというわけではないと思うが,繊細なピアノには,もう少し繊細な叩き方があってもよいと思わせる。正直言って,Aaron Parksに合うと思えるのは,パワーもありながら,繊細さも打ち出せるEric HarlandやKendrick Scottあたりでないかと思う。全体を通じて聞けば,Billy Hartも楚々としたドラミングを聞かせているとは思うが,どうしても1曲目の印象が残ってしまうのである。5曲目,"The Storyteller"でも同じような感覚を覚えるのも事実。

しかし,そうした点を除けば,Aaron Parksの書くオリジナルの美しさ,紡ぎだされるソロ・フレーズのリリカルさを含めて大いに楽しめる作品となっている。欧州的なピアノとは違うリリカルさ(明らかに違うのだ)をECMで聞かせるところに,この人の力量を感じるとともに,本当に美的なピアノを弾く人だと改めて感心させられた。前回来日時には,ホーン入りのアルバムを吹き込みたいなんて言っていたが,総帥Manfred Eicherとしても,トリオとしての美学を優先したってところだろう。いずれにしても,この演奏,私の好物と言ってよいサウンドである。星★★★★☆。半星引いたのは上述のBilly Hartに対するちょっとした違和感ゆえ。

尚,本作は,フランス南部にあるPernes-les-Fontainesという都市の,Studios Ls Buissonneなるスタジオで録音され,エンジニアもGerald de HaroとNicolas Baillardという人が務めている。これって私が知る限りでは,ECMでは初めて,あるいは珍しいパターンなのではないかと思うが,それでも完全なECMサウンドになっているのがEicherマジックか(笑)。

このアルバムを聞いて,Aaron Parks Trioでの来日を期待するリスナーは多いはずである。私ももちろんその一人ってことで...。

Recorded in October 2015

Personnel: Aaron Parks(p), Ben Street(b), Billy Hart(ds)

2017年4月30日 (日)

またも出た。Dayna Stephensの豪華メンツによるバラッド・アルバム。

"Gratitude" Dayna Stephens(Contageous Music)

_20170426Dayna StephensがBrad Mehldauらのメンツを集めて,バラッド・アルバムをリリースしたのがほぼ3年前ということになるが,あれはスペシャル・プロジェクトだったんだろうなぁと思っていたら,なんと,同じメンツを集めてのアルバムが新たにリリースされた。詳しいレコーディング・データはないが,プロデューサーも同じ,レコーディング・スタジオも同じ,エンジニアも同じということで,前作の残りテイク集ということになるのかもしれない。そうでなければ,これだけのメンツを集めるというのはなかなか考えにくい。

今回も選曲は凝っていて,Aaron ParksやPat MethnyにBilly Strayhornが同居して,非常にユニークなものになっていると言える。いずれにしても,味わい深い演奏という表現が適切であり,これはなかなかいい。バラッド・アルバムとは言っても,相応のダイナミズムも感じられ,ちょっと聞いた感じでは,前作"Peace"よりもいいように感じられる部分もあると思う。

Pat Metheny作の"We Had a Sister"ではDayna StephensがEWIを吹いており,いいアクセントになっているのも評価したい。ということで,これはメンツ買いはもちろん,メンツ買いでなくても満足できるアルバム。星★★★★☆。

Personnel: Dayna Stephens(ts, bs, EWI, synth, b), Julian Lage(g), Brad Mehldau(p, tack-p), Larry Grenadier(b), Eric Harland(ds)

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