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カテゴリー「新譜」の記事

2018年11月18日 (日)

出張から帰ったら届いていたCharlie Haden~Brad Mehldauデュオの現物。

"Long Ago and Far Away" Charlie Haden & Brad Mehldau(Impulse!)

Long_ago_and_far_away既にストリーミングでは聞けていたこのアルバムの現物が,出張から帰ったら届いていた。昨日はバテバテでさっさと寝てしまったので,今日になって開封して聞いているが,まぁ,想定通りと言えば,これほど想定通りの音もないって感じである。

そもそもCharlie HadenとBrad Mehldauの縁は結構古い。Lee Konitzを加えたトリオでのライブを吹き込んだのが97年の暮れ,そこにPaul Motianを加えたクァルテットでECMにライブ・レコーディングしたのが2009年,Charlie Hadenとのバラッド・アルバム"American Dreams"をレコーディングしたのが2002年,更にはHadenの奥方,Ruth Cameronのアルバムや,娘のPetra Hadenのアルバムへの客演時にもCharlie Hadenとは共演しているから,彼らがデュオで演奏する機会を持ったとしても,それはまぁ不思議ではないということである。しかし,2014年にCharlie Hadenが亡くなって,デュオによる演奏を聞くことができないのかと思っていたところへの,このアルバムのリリース告知は非常に嬉しいものであった。

本作がレコーディングされたのは2007年なので,もはや10年以上前であるが,その頃はBrad MehldauはMetheny Mehldauをやっている頃のはずである。そこへPat MethenyともデュオでやったCharlie Hadenとのデュオがその頃に吹き込まれているというのは何となく因果を感じる。

そして,ヘッドフォンを通じてストリーミングで聞いた時よりも,我が家の甚だシャビーではあるが,スピーカーを通して聞いた時の印象は結構違っていた。それは音楽を聞く環境が通勤途上の「ながら聞き」と,音楽だけに集中している時の違いと言ってもいいかもしれないが,この時の対話の深みみたいなものをついつい感じてしまったのである。例えば,Irving Berlinが書いた"What'll I Do"のような古い曲でさえが,現代的な美しさを持って再生されていて,実に驚いてしまった。これは通勤途上で聞いた時に感じることがなかった感覚なのだ。

まぁ,デュオ名人のCharlie Hadenと,私が追っかけをするBrad Mehldauが合体すれば,真っ当な演奏にならないはずはないのだが,やはりこの共演は素晴らしい成果を生んだと言ってよい。Ruth Cameronが書いたライナーによれば,Charlie Hadenが初めてBrad Mehldauを聞いたのは,MehldauがJoshua Redmanのバンドでピアノを弾いていた時,それも1993年9月19日のことだったそうである。その瞬間からCharlie HadenはBrad Mehldauの才能を認識していたとのことであるが,若くしてHadenにそう思わせたBrad Mehldauも大したものである。Hadenに"This pianist is brilliant. He is special, so unique."とまで言わしめたのであるから,これはMehldauのファンを自認する私としても嬉しい。

このアルバムはRuth CameronとBrad Mehldauの共同プロデュースの元にリリースされたものであるが,このお二方の心のこもったライナーを読むだけでも価値のある作品と言ってよいと思う。もちろん,これって最高だっ!て言いきれるものではないと感じる部分もあるにはあるのだが,リリースしてくれたことだけでも星★★★★★としてしまおう。ダウンロード音源としてだけ公開された"No Moon at All"なしでも十分楽しめることは間違いない。

Recorded Live on November 5, 2007

Personnel: Charlie Haden(b), Brad Mehldau(p)

2018年11月 7日 (水)

Eric Harland Voyagerの第3作はダウンロード・オンリー?

"13th Floor" Eric Harland Voyager (GSI Records)

13th_floor世の中でCDが売れるのは日本だけって感じになっているのかもしれないが,ほかの世界では基本は音楽はダウンロードで聞くものって感じなのかもしれない。流通等を考えれば仕方ないところもあるが,媒体指向の私みたいな人間にとってはちょっと残念な部分もある。ミュージシャンもダウンロード・オンリーでしか音源をリリースしない人が増えているが,ライブの場での販売等のために媒体も作るってのが一般的なのかもしれない。先日取り上げたCharlie HadenとBrad Mehldauのデュオ・アルバムにもダウンロード・オンリーの曲があったが,ダウンロードにリスナーを誘導しようとしているのかもしれないと感じる部分もある。

そんな中で,リリースされたのがEric Harland率いるVoyagerの第3作である。第1作のライブを高く評価しつつ(記事はこちら),第2作には感心しなかった(記事はこちら)し,ライブにも違和感を覚えていて(記事はこちら),ちょっと評価が下がっていたのは事実である。それでも,アルバムは購入し,ライブにも行っているのだから,Eric Harlandの注目すべきミュージシャンとしての位置づけは変わっていないのだ。そんな彼が,自身のバンド,Voyagerとしてのアルバムをリリースするとなれば,聞きたくなるのは当然のことなのだ。しかし,上述の通り,本作はダウンロード・オンリーと思われるため,ストリーミングで聞いた。

正直に言ってしまうと,こういう音こそ彼らに期待するものであって,第2作やライブで聞いた時よりもはるかにいいと思う。やはりこれだけのメンツを揃えていれば,これぐらいのスリリングな音が出てくると嬉しくなってしまう。私としては,ライブの場でもこういう感じでやってくれと思ってしまうし,これなら再来日しても,また聞きに行くだろう。

比較的コンパクトな曲が多いが,あっという間に11曲,47分という時間が経過していくのは,彼らの演奏の熱さゆえってところを強く感じる。曲にはややばらつきがあるようにも思えるが,アドリブ・パートになると,その熱量ゆえに気にならなくなってしまうが,やはり私も彼らのそうした世界が好きってことになるが,これは改めてVoyagerの評価をぐっと押し上げる効果があったと思わせるに十分なアルバムである。Eric Harlandも40代前半ということで,まさに中堅としてこれからもジャズ界をサポートし,プッシュしていく立場にあることを改めて実証した作品。フェード・アウトがあったりして惜しいと思わせる部分もあるが,星★★★★☆と評価できるアルバム。

こういう時代になってくると,今後はますますCDの購入枚数は厳選したものとなり,減っていくんだろうなぁと思うと,何となく寂しいような気もするが,まぁ,置くところにも困っているからねぇ。逆に買う方が珍しくなるのかもしれないな。

Personnel: Eric Harland(ds), Walter Smith III(ts), Julian Lage(g), Nir Felder(g), Taylor Eigsti(p), Harish Raghavan (b)

2018年11月 5日 (月)

Charlie HadenとBrad Mehldauのデュオ・ライブ。現物はまだ来ていないが,ダウンロード・オンリー音源の話。

"Long Ago and Far Away" Charlie Haden & Brad Mehldau(Impulse)

Long_ago_and_far_away故Charlie Hadenは数々のデュオ・アルバムを残しており,まさにデュオ名人と言ってもよいぐらいだと思うが,彼が生前,Brad Mehldauとのデュオによるライブ音源を残していたと知った時は大いに喜んだ私である。当然のことながら,即発注となった訳だが,現物はまだ届いていないので,ストリーミングでその音楽を聞いていた。

そして,本作を出張の道すがら,ストリーミングで聞いていて,演奏時間が妙に長いと思ってしまったのである。その時,私は東北に向けて移動中で,新幹線の中で,うつらうつらしていたのだが,目的地に近づいても,まだプレイバックが続いているのだ。演奏時間はCDの限界を越える時間のはずだと思ってよくよく見たら,ストリーミング音源には最後に12分を越える"No Moon at All"がダウンロード・オンリーで入っている。とあっては,この音源も入手せねばならん(きっぱり)。ということで,ダウンロードしようと思うと,曲単位のダウンロードはできず,アルバム全体を購入する羽目となった。まぁ,そんな高くないからいいんだけど...。

本編はそれだけで70分を越えているので,この"No Moon at All"が媒体のボーナス・トラックとして出ることは考えにくい。だから,まぁこれはダウンロードしてもいいやという判断もあるものの,無駄と言えば無駄だよなぁ。でも,こういうのもちゃんと聞いてこそ,真のBrad Mehldauファンである(きっぱり)。単なるアホ,あるいはオタクだと言われれば,返す言葉はない。

本作については,正式には現物が来てからレビューしたいと思うが,これも「コレクターはつらいよ」シリーズとしてアップしたいぐらいである。なかなか大変だよねぇ。

2018年11月 4日 (日)

Shai MaestroのECMデビュー作。これもいいねぇ。

"The Dream Thief" Shai Maestro(ECM)

_20181103ブログのお知り合いの皆さんは,以前からこのShai Maestroについては記事にされておられたが,私はほとんど縁のないまま過ごしてきたと言って過言ではない。例外はCamila Mezaの"Traces"ぐらいである。そのアルバムもMezaの声にはまいっていても,伴奏までは全然触れていない(爆。記事はこちら)。Theo BleckmannのECMレーベル作"Elegy"にも参加しているが,それは購入していても,レビューをアップしていない。この辺りに,私の彼に対する関心の低さが表れていると言っても過言ではない。

しかし,そのShai MaestroがECMからアルバムをリリースするとなっては,事情は変わってくる。ここではECMらしい詩的で抒情的なピアノを中心とした演奏を聞かせており,このレーベルのファンにとっては納得の出来と言ってもいいのではないか。昨今,ECMは有望なピアニストを傘下に収めて,いいアルバムを連発しているが,そこにこの一枚も加わったってところだろう。

それにしてもタイトルが「夢泥棒」ってのが,いかにもそれっぽいが,唯一演奏されるスタンダード,"These Foolish Things (Remind Me of You)"で聞かせるソロ・ピアノはKeith Jarrett的な感覚もありながら,やはり美しいという表現しか出てこない。その一方,最後の"What Else Needs to Happen"では米国前オバマ大統領の銃規制のスピーチをコラージュして,音とは違って硬派な主張も打ち出し,通常のECMとはちょっと違った雰囲気も出している。

いずれにしても,非常に聞き易いトリオ演奏であることは間違いなく,この響きに単純に身を委ねていれば,心地よく時間は過ぎていく。まぁ,私としては夢見心地の間に,心を奪われたって感じで,まさにこれが本当の「夢泥棒」。星★★★★☆。

Recorded in April, 2018

Personnel: Shai Maestro(p), Jorge Roeder(b), Ofri Nehemya(ds)

2018年11月 3日 (土)

今回もKenny Wheelerを想起させたWolfgang MuthspielのECM作

"Where the River Goes" Wolfgang Muthspiel(ECM)

_20181028_2前作"Rising Grace"から比較的短いインターバルでリリースされたWolfgang MuthspielのECMにおけるリーダー作である。前作は約2年前の今頃のリリースだったはずだが,結構豪華なメンツをまたも集めるというのは,ECMレーベルにとっても相当なことである。ドラムスがBrian BladeからEric Harlandに代わっているが,優秀なミュージシャンであることには変わりはない。だが,私にとっては,Brad Mehldauの参加が本作のキモであることは,前作同様である(きっぱり)。

前作を聞いた時に,私はECMの先祖がえりと評した(記事はこちら)が,今回もその印象は変わらない。Ambrose Akimsireのラッパを聞いていると,どうしてもKenny Wheelerの往時のアルバムを思い出してしまうのである。そして,本作のメンバーは必ずしもECMゆかりの人ばかりではないが,セッション・アルバムとしてリリースするところはまさに70年代から80年代のECMにはよくあったことだ。思うに,異種格闘技とまでは行かないが,メンツをとっかえひっかえしながら,アルバムを作っていたようなところもECMにはあった。本作はドラムスを除いて,前作とメンバーは一緒だから,必ずしもそうした企画とは違う。しかし,出てくる音がどうしてもKenny Wheeler的に聞こえてしまうのだ。だが,それは決して悪いことではなく,むしろ私にとっては歓迎すべき音作りだったと言ってよい。

ブルージーな感覚が強いBrad Mehldauのオリジナル"Blueshead"以外が,リーダーMuthspielのオリジナルだが,全編を通じて決して「熱く」ならないのが,ECMらしいところである。まぁ,このジャケットで,ゴリゴリのジャズが出てきたら,逆に笑ってしまうが...。Brad Mehldauとしては助演に徹しているって感じが強いが,やはりこれだけのメンツが揃えば,レベルは高いねぇ。ってことで,毎度のことながらECMには甘い私だが,星★★★★☆。

Recorded in February 2018

 Personnel: Wolfgang Muthspiel(g), Ambrose Akinmsire(tp), Brad Mehldau(p), Larry Grenadier(b), Eric Harland(ds)

2018年10月31日 (水)

Lars DanielssonとPaolo Fresuが紡ぐショート・ストーリーズって趣。

"Summerwind" Lars Danielsson & Paolo Fresu (ACT)

_20181028今年の秋,私が聞いている新譜はほとんどECMで占められてしまっているが,それらがすべからくいい出来であり,まさに豊作と言ってもよい状態だ。そうした中で,ECMの諸作以上に,私の中で期待値が高まっていたのが本作。何と言っても,Lars DaielssonとPaolo Fresuのデュオなのだ。期待するなって方が無理なのだ。聞く前からこの二人による詩的な世界が広がることは大いに期待できた。

そうした中で,組み合わせの関係でなかなかデリバリーがされなかった本作がようやく届いたのだが,こちらの期待通りと言うか,想定通りの音が出てきて嬉しくなってしまう。そして,本作では最長の「ローズマリーの赤ちゃん」からの"Sleep Safe And Warm"でさえ,4分24秒,多くの曲が2分台という短い曲が並んでいて,二人の静かな対話によって紡ぎだされる短編小説集のような趣である。

やや,エレクトロニクスの風味も加えながら,演じられる15曲は穏やかな演奏に終始するが,秋口から冬場への音楽生活を,瑞々しいものにすること必定と言いたくなるような演奏群なのだ。もちろん,本来のジャズ的な強烈な刺激のある音楽ではない。しかし,こうした音楽を受け入れられないことの,度量の狭小さこそ馬鹿馬鹿しいと言いたくなるような優れたデュエット作品。間にバッハのカンタータ「目覚めよと我らに呼ぶ声あり」なんて曲(ってより,私にとっては「シューブラー・コラール」と言った方がわかりやすい)が挟み込まれるが,これこそそうした原理主義的リスナーに聞かせたいって感じである。

これだけ琴線に触れる演奏をされてしまっては,私としては星★★★★★とせざるをえない。たまらん。まいりました。

Recorded on May 14 & 15, 2018

Personnel: Lars Danielsson(b, cello), Paolo Fresu(tp, fl-h)

2018年10月25日 (木)

Rachael Yamagataの新譜EPにしびれる。

"Porch Songs" Rachael Yamagata (Download Only)

Porchsongs私はデビュー以来のRachael Yamagataのファンである。彼女の音源はほぼすべて保有しているし,彼女がクラウド・ファンディングでアルバムを制作するというなら,喜んで協力してしまうぐらいのある意味「熱烈」なファンである。

そんな彼女が前作"Tightrope Walker"以来約2年ぶりにEPをリリースしたのが本作である。彼女の魅力はその声と,内省的でありながら極めて魅力的な曲調にある。今回のEPでもその魅力は健在であり,私の心を鷲掴みにしてしまう曲が揃っているではないか。まじでく~っと唸ってしまった。だから彼女の音楽は最高だと思う訳で,今回も現状はダウンロード・オンリーの音源で我慢するが,そのうち媒体が出れば,間違いなく買ってしまうと思う。

ダウンロード・オンリーなので,詳細のクレジットはわからないが,そんなことは関係なしに,本当に彼女の書く曲の素晴らしさに改めて感服した私である。Rachael Yamagata親衛隊(笑)としては当然星★★★★★。

彼女はこの秋,台湾,韓国,中国などを回るアジア・ツアーに出るが,今回も日本はスキップされてしまった。なぜなのか私にはよくわからないが,どうしても解せない。よほど嫌なことでもあったのか?いずれにしても,こんな音源を出されてしまっては,できるだけ早い時期の再来日を期待するだけである。

2018年10月23日 (火)

一聴,KeithのEuropean Quartetを想起させたTrygve Seimの新作

"Helsinki Songs" Trygve Seim((ECM)

_20181021書きかけていながら,途中で止まっていた記事を今更ながらアップしよう。振り返ると,1カ月近く放置してしまった。

豊作が続く秋のECMレーベルであるが,これまたいいアルバムである。サックス奏者,Trygve Seimが,ピアノにこれもECMにおける注目株であるKristjan Randaluを迎えた新作だが,一聴して思い浮かべたのがKeith JarrettのEuropean Quartetであった。特に冒頭の"Sol's Song"に聞かれる牧歌的にも,フォーク的にも響く展開がそう感じさせたのは間違いないところで,そうした第一印象を与えるに十分な響きであった。

曲によっては,静謐な展開もあり,まぁ必ずしもKeith的ではないなぁと思わせるが,全編に渡って,粒揃いの曲が並んでいて,これは結構多くのリスナーに受け入れられるのではないかと思わせる。

タイトルに"Helsinki Song"とあるのは,ライナーにあるように,リーダー,Seimがフィンランド,ヘルシンキにあるフィンランド作曲家協会のアパートメントの滞在中に,ここに収められた曲のほとんどを作曲したことによるものだろう。Trugve Seimはノルウェイの人だが,やはり地域的な近接性で通じ合うところもあるんだろうねぇ。

Trygve Seimはその見た目からは想像できないような(笑),リリカルな旋律を生み出しているが,それを支えるKristjan Randaluのピアノが楚々として美しい。こういう音楽を聞いていると,私はまんまとECMの総帥,Manfred Eicherの思うつぼにどんどんはまり込んでいっている気がするが,それでも好きなものは仕方ないのだ。

これもECM好きにはすんなり入ってくる音楽だと思うが,一般的な音楽,あるいはジャズのリスナーにとってはどうなのかなぁと思わせる部分もある。しかし,このスタイリッシュな響きを聞いていれば,私には満足度が高かった。ということで,原則,私はECMには星が甘いがこれも,星★★★★☆としてしまおう。

Recorded in January, 2018

Personnel: Trygve Seim(ts, ss), Kristjan Randalu(p), Mats Eillertsen(b), Markku Ounaskari(ds)

2018年9月21日 (金)

Barre Phillips,最後(?)のソロ・アルバム。

"End to End" Barre Phillips(ECM)

_20180916Barre Phillips,私にとっては高いハードルとなってきた人である。ベース・ソロでアルバムを作った最初の人はBarre Phillipsらしいが,結構若い頃からECMのアルバムは聞いていても,ベース・ソロというのはさすがに厳しいという感じで敬遠してきたというのが実際のところである。そうしたところもあって,彼のリーダー作は"Mountain Scape"しか保有していない。じゃあ,何枚も保有しているDavid Darlingのチェロ・ソロならいいのか?と聞かれれば,返す言葉もないのだが,まぁはっきり言ってしまえば食わず嫌いである(爆)。

本作のSteve Lakeのライナーによれば,本作はBarre Phillipsからの直々に総帥,Manfred Eicherに連絡があって,最後のソロ・アルバムを作りたいのだが,ECMとしてはどうよ?って聞いてきたらしい。Eicherとしては断る理由もないということで,本作がレコーディングされることになったようである。私も年を重ねて,いろいろな音楽に接してきていて,ベース・ソロだからと言ってビビることはなかったし,現代音楽も結構好んで聴いているので,今回は「最後のベース・ソロ・アルバム」ということとあっては,発注せざるをえまいと思ってしまった私であった。

そして流れてきた音は,決してアブストラクトではないベースの響きを聞かせるものであり,43分余りの時間はあっという間に過ぎていったという感じである。もちろん,聞き易いなんて言うつもりはないし,一般の人にとっては,それはハードルが高い音楽であることは間違いない。しかし,ライナーを書いているのがSteve Lake,そしてライナーの多くの写真を撮っているのがSun Chungってことからしても,それだけでBarre PhillipsのECMにおける立ち位置がわかるってものだ。それだけ「最後のベース・ソロ・アルバム」の意味合いは重いということを表している。Barre Phillips単独名義でのECMでのリーダー作は91年の"Aquarian Rain"以来だと思うが,それでもこうしたレコーディング機会を提供されるBarre Phillips。それをどう捉えて,この音楽に対峙するかが,少なくともECMレーベル好きにとっては重要だろう。

いずれにしても,私はこのアルバムを聞いて,これまで食わず嫌いでいたことを大いに反省した。ミニマルとは全く違いながら,簡潔にして,深遠。何回も聞くようなものではないかもしれないが,聞いておかねばならないと思わせるに十分な音であった。星★★★★☆。私の中でのハードルも若干下がったので,ストリーミングで,過去のBarre Phillipsのベース・ソロも聞いてみることにしよう。

Recorded in March, 2017

Personnel: Barre Phillips(b)

2018年9月19日 (水)

Tord Gustavsenによるピアノ・トリオの新作は期待通りの出来。そして彼の信仰心を感じさせる。

"The Other Side" Tord Gustavsen Trio(ECM)

_20180915_3総帥Manfred Eicherにより,新世代のピアニストも続々と紹介されており,私も結構その世界にはまってはいるが,現在のECMレーベルにおいて,確実に期待できるピアニストとして評価を確立しているのは,私は先日記事をアップしたMarcin Wasilewskiと,このTord Gustavsenだと思っている。

Tord Gusravsenに関しては,全部が全部いいという訳ではないと思っていて,例えば私の中では,"Restored Returned"なんかはちょいと評価が低い(記事はこちら)。しかし,それは例外的なものであって,ほかの作品は極めて高く評価している。そうした中で,この人の魅力はピアノ・トリオだけではないということは,テナー入りの"Extended Circle"でも,ヴォイスの入った"What Was Said"でも実証されている。しかし,やはりピアノ・トリオも聞きたいと思うのがファンの心理であることも事実であった。本作は2007年リリースの"Being There"以来という,実に11年ぶりのピアノ・トリオ作である。

ここでは,Gustavsenのオリジナルに加えて,トラッド,更にはバッハの曲をアダプテーションした演奏が聞けるが,さすがに1月のオスロ,Rainbow Studioでの録音と感じさせるような,静謐で,内省的な音の連続である。これこそがECM,あるいはTord Gustavsenの美学であると言ってもよいかもしれない。まぁ,冬のオスロでじゃかじゃかした演奏はやってられんと言う話もあるが...(笑)。それでも,こうした音楽をやられてしまうと,私のようなリスナーは無条件によいと思ってしまう。それが一般的なリスナーの感覚とは必ずしも合致しないところはあるだおるが,こうしたサウンドには全面的にOK!と言ってしまうのである。

バッハのアダプテーションでは,宗教的な響きさえ感じさせるが,それはモテットやカンタータの原曲なのだから当たり前なのだが,トラッドや,2曲目に入っているノルウェイの作曲家Lindemanの"Kirken, den er et gammelt hus"も讃美歌みたいなものであるから,ここでのテーマには宗教を感じる。そして,そこに加わるGustavsenのオリジナルが,何の違和感もなくブレンドして,この音世界を作り上げている。

私からすれば,この音楽は決して刺激を求める音楽ではない。そこに不満を感じるリスナーが聞くべきものでもない。これは冬のオスロの気候に思いを馳せながら,信仰の音楽による表出とは何かということを考えるに相応しい作品だと思う。Tord GustavsenはSolveig Slettahjellと"Natt I Betlehem"という素晴らしいホリデイ・アルバムを作り上げているが,この人の根底には宗教感が根差していることを強く感じさせる作品。Marcin Wasilewskiのアルバムと比べれば,私はWasilewskiに軍配を上げるが,これはこれで,私の心を十分に捉えたと言っておこう。星★★★★☆。

Recorded in January, 2018

Personnel: Tord Gustavsen(p), Sigurd Hole(b), Jarle Vespestad(ds)

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