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カテゴリー「新譜」の記事

2017年7月24日 (月)

"Signs of Life"と同じメンツでライブ同窓会。

"Signs Live!" Peter Bernstein(Smoke Sessions)

_20170721Peter BernsteinがCriss Crossレーベルに"Signs of Life"というアルバムを吹き込んだのは1994年12月のことであった。それから約20年経過した2015年1月に,アルバムと全く同じメンツが集ってライブを行った時の実況盤である。

録音当時,リーダーBernsteinは27歳,Brad Mehldau24歳,Christian McBride22歳,Gregory Hutchinson24歳という初々しいバンドが,20年を経て,それこそ音楽的な成長を遂げた姿を聞かせるのは何とも嬉しいことではないか。

Peter BernsteinとBrad Mehldauは"Signs of Life"前後にも共演する機会があり,最も古い音源は92年の"Somethin's Burnin'",新しいところでは2014年のJimmy Cobbの"The Original Mob"まで続いている。彼らはJimmy Cobbのバンド・メイトだったはずで,それが続いているというのは麗しき友情と言うべきか(笑)。

オリジナルの"Signs of Life"も久しく聞いていないので,単純な比較はできないが,比較的コンベンショナルなセッティングな中で,私にとってはBrad Mehldauがどういうソロを聞かせるかというところに関心が行ってしまうのは,彼のファン故しかたないことではあるが,ここでもツボを押さえた魅力的なソロを随所で聞かせていて,私としては大満足である。そして,彼のリーダー・アルバムとは違うので,バッキングにも気を利かせて対応しているのが効いて取れ,やはり優秀なミュージシャンは,何をやっても優秀ということを改めて感じさせられる。

収められているのは基本的にPeter Bernsteinのオリジナルであるが,それ以外で選ばれているのが,Theloneous Monkの3曲というのはやや意外な気もするが,違和感なくプレイしている。Mehldauも"We See"では,ややMonk的(と言っても,大してMonkっぽくないのだが...。笑)なソロもやっていて,へぇ~と思ってしまうが,それも珍しいってことで。

2枚組で,各々が70分を越える収録時間で,正直お腹いっぱいになってしまうが,それでもこのメンツが,改めて集い,これだけの演奏を聞かせたことは,このときNYCの会場にいたオーディエンスにとって,実にラッキーだったと思う。星★★★★☆。

Recorded Live at Jazz at Lincoln Center on January 5, 2015

Personnel: Peter Bernstein(g), Brad Mehldau(p), Christian McBride(b), Gregory Hutchinson(ds)

 

2017年7月18日 (火)

買ってしまったKraftwerk 3-D The Catalogue

"3-D The Catalogue" Kraftwerk (Klingklang)

Kraftwerkこのボックス,出てから結構時間が経っているが,全部聞いてから記事をアップしようということで,随分遅くなってしまった。

これは彼らがこれまでリリースしたアルバムを,ライブで再現するという企画アルバムであるが,演奏そのものはスタジオ版と大きな違いがあるという訳ではない。スタジオ版の集成ボックス"The Catalogue"をライブ化したものであり,Kraftwerkの音楽は正直言って,スタジオとライブで大きな違いがあるとも思えないので,買うか買うまいか悩んだ末に買って,結局音だけではわからないなぁということで,映像版まで買ってしまった私である。

まだ,映像版は見ていないのだが,ステージの演出も結構重要という気がして,これは本来,最初から映像版を買っておけばよかったってことになるかもしれないが,そんなに映像をまめに見る人間ではない私にとっては,CD版も必要だったということにしておこう。あぁ,無駄遣いと言えばその通りだが,まぁしゃあない。

KraftwerkはどうやったってKraftwerkなので,当然,私のような人間は星★★★★★としてしまうが,やっぱりこれは映像を見て評価すべきかと思う。悪いはずはないが(苦笑)。

Kraftwerk: Ralf Hütter, Henning Schmitz, Fritz Hilpert, Falk Grieffenhagen

2017年7月10日 (月)

実にユニークなCharlie Parkerトリビュート盤。

"The Passion of Charlie Parker" Various Artists (Impulse)

_20170708これは実にユニークなCharlie Parkerへのトリビュート・アルバムである。プロデューサーのLarry Kleinが書いているように,現代にCharlie Parkerが生きていたら,こういう演奏をしたのではないかというかたちでのインタープリテーションを施し,Charlie Parkerの人生を辿るという趣旨の作品である。よって,典型的なビ・バップ表現で演じられるものではない。

ほぼ全曲でヴォーカリストが加わるとともに,伴奏陣はかなりコンテンポラリーな布陣である。そして作詞を手掛けているのが,懐かしやDavid Baerwaldである。David Baerwaldと言って,わかる人はもはや少ないかもしれないが,David Rickettsと組んだDavid + Davidというバンドでの"Boomtown"という結構いいアルバムや,その後のソロ・アルバムにはJoni Mitchellが1曲だけ参加した"Bedtime Stories"があった。"Bedtime Stories"はLarry Kleinが一部でプロデュースを担当していたから,随分長い付き合いの末の,今回の作詞家としての参加ってことになる。

Charlie Parkerの曲と言えば,バップ・テイストってのがお決まりのパターンなのに対し,ここでの演奏はどちらかと言えば,ソフトでけだるい感じを打ち出していて,結構ムーディだと言ってもよい。この伴奏陣からすれば,もう少し激しい演奏があってもよさそうなものだが,ここは意図的にそういうかたちにしていると思える。それがプロデューサー,Larry Kleinの狙いであり,それは成功していると言ってよいだろう。Billy ChildsによるLaura Nyroトリビュート,"Map to the Treasure: Reimagining Laura Nyro"でも素晴らしいプロデュースぶりだったLarry Kleinの見事な手腕もあり,非常に楽しめる作品となった。

これは普通のトリビュートではないが,こういうのも絶対ありだと思わせるに十分な作品。いいねぇ。星★★★★☆。尚,クレジットでMark Guilianaの名前のスペルがGiulianaと間違って記載されているのはご愛敬。でもそう思っちゃうのも納得なんだよねぇ(苦笑)。

Personnel: Madeleine Peyroux(vo), Barbara Hannigan(vo), Gregory Porter(vo), Jeffrey Wright(vo), Luciana Souza(vo), Kurt Elling(vo), Kandace Springs(vo), Melody Gardot(vo), Camille Bertault(vo), Donny McCaslin(ts), Ben Monder(g), Craig Taborn(p, el-p, org), Scott Colley(b), Larry Grenadier(b), Eric Harland(ds), Mark Guiliana(ds)

2017年7月 8日 (土)

Larry Coryellの遺作(?)はなんと11th House名義。

"Seven Secrets" Larry Coryell's 11th House(Savoy Jazz)

_20170706惜しくもLarry Coryellが亡くなったのが今年の2月のことであった。そのLarry Coryellの遺作と思しき作品が先頃リリースされたのだが,なんと懐かしや11th House名義である。しかもドラムスはこれまた昨年の12月に亡くなったAlphonse Mouzonである。更にフロントにはRandy Brecker,そしてベースはこれまた懐かしやJohn Leeに,Coryellの息子,Julianを加えた布陣によるハードなフュージョン・アルバム。

Julian Coryellを除くメンバーの平均年齢は60代後半となるはずだが,それにしてはやっている音楽は激しい限りである。ロック調あり,ファンク調あり,更にはアコースティック・ギター・ソロありと,曲はバラエティに富んでいるが,基本的には相当熱い(暑苦しい)音楽と言ってもよいが,この手の音楽が好きなリスナーのツボに入るタイプの音楽と言ってよいだろう。ここでの音楽を聞いている限り,このバンドからLarry CoryellとAlphose Mouzonが鬼籍に入るとは全く信じがたいような演奏群である。

曲はメンバーの持ち寄りであるが,Larry CoryellとAlphonse Mouzonが4曲ずつ,Randy Breckerが2曲,そしてJohn Leeが1曲(Dennis Haklarとの共作)と言った具合であり,プロデュースもバンド・メンバー全員によるものというかたちで,しっかりグループとしての表現を志向している志は認める必要があるだろう。正直言って,曲は玉石混交とは思うが,演奏としては予想以上に楽しめるものとなっている。それだけにライブも見てみたいと思わせる作品だったが,Larry CoryellとAlphonse Mouzonが亡くなってしまっては,それも夢のまた夢ってことになってしまった。

だが,亡くなる前に,これだけのフュージョン・アルバム,そして11th Houseという懐かしい名前でアルバムを制作していたことだけでも,彼らに感謝せねばならないだろう。Larry CoryellとAlphonse Mouzon追悼の気持ちも込めて,普通なら星★★★☆~★★★★ぐらいのところ,甘いのを承知で星★★★★☆としてしまおう。

Personnel: Larry Coryell(g),Julian Coryell(g), Randy Brecker(tp), John Lee(b), Alphonse Mouzon(ds)

2017年7月 2日 (日)

Hudson:このメンツならもう少し激しくやらないとなぁ...。

"Hudson" DeJohnette Grenadier Medeski Scofield(Motema)

Hudson意外なメンツによるバンドがオリジナルのほかに,フォーク/ロック系の曲を演奏するという企画を聞いた時,特にカヴァー曲の選曲が面白いと思って購入したアルバムである。ライナーによれば,彼らが初めて演奏したのは2014年のWoodstock Jazz Festivalでのことだそうであるが,かつ,メンバーが全員Hudson Valley在住ということで,このバンド名がついたようである。Hudson Valleyと言っても,北はAlbany,Troyあたりから,南はWestchesterまでということで,非常に広いエリアになるので,彼らがご近所ってことにはならないかもしれないが,共通項はHudson Valley在住ってことになる。

このメンバーを見れば,John Medeskiとジョンスコはジャム・バンド・スタイルでの演奏で共演してきているが,そこにJack DeJohnetteが加わるとどういうことになるのかというところに関心が高まるのだが,ジョンスコとDeJohnetteはTrio BeyondでLifetimeにトリビュートする演奏をしているから,今回もそういう感じかなぁと想像してしまう。だが,DeJohnetteも今年75歳になることを考えれば,昔のようにガンガン叩くってことはないとしても,結構抑制感のある叩きっぷりなのがまず意外である。また,Bob Dylanの"Lay Lady Lay"をレゲエ・タッチでやったり,これがほんまにDeJohnetteかってところがあるのも事実である。

それにしても,穏やかというか,淡々としていると言うか,このメンツから想定していた音とはちょっと違う感じが続く。Larry Grenadierはまぁこの感じかなって気もするが,ほかの3人はもっと激しいと思っていた。例えば,Joni Mitchellの"Woodstock"は,ほぼオリジナルに忠実なメロディ・ラインでジョンスコが弾いており,かなりストレートで,暴れるところはない(というより,この曲では暴れようがないだろうが...)。

そんな演奏の中で,ようやくこういう感じだよなぁって思うのはJimi Hendrixの"Wait until Tomorrow"まで待たなければならない。曲がジミヘンだけに,おとなしくやるってのはほぼ無理って話もあるが,やっぱりこういうのを期待してしまうのが人情なのである。

しかし,その後が続かない。"Dirty Ground"ではなんとヴォーカルが入り,アメリカン・ロック的な演奏が繰り広げられる。Jack DeJohnetteとBruce Hornsby(!)の共作によるこの曲は,決して悪い曲ではない。むしろいい。だが,このメンツによるアルバムに入っていることの違和感が強烈なのである。純粋に音楽として楽しむ分にはいいのだが,どうしても「う~む」となってしまった私である。誰がリードを取っているのかはわからないが,このアメリカン・ロック的なヴォーカルはかなりいいとしても,このアルバムに入っていること自体が,「えっ?」って感じなのである。

"Tony Then Jack"はタイトルからすれば,Tony WilliamsとJack BruceのLifetime組への新たなトリビュートだろうが,それですらそんなには激しくはならないところに,やはりフラストレーションを感じるのは仕方ないのかもしれない。リスナーなんて勝手なものと思いつつ,これだけ?って思ってしまうのである。The Bandの"Up on Cripple Creek"もこの人たちでなければならない必然性はないし,最後の"Great Spirit Peace Chant"で完全終戦。なんでこうなるのよって感じのエンディングで,違和感はピークに達するという作品である。一体何を思ってのエンディングだったのか。謎としか言いようがない。全体としては悪いと思わないが,星★★★が精一杯の問題作。Trio Beyondを改めて聞いてみるか。

Personnel: Jack DeJohnette(ds, tom-tom,, wooden-fl, vo), Larry Grenadier(b, vo), John Medeski(p, rhodes, org, wooden-fl, vo), John Scofield(g, wooden-fl)

2017年7月 1日 (土)

ようやく落ち着いて音楽に関して書ける。そこでアップするのがRoger Watersってのは強烈だが(笑)。

"Is This the Life We Really Want?" Roger Waters(Columbia)

Roger_watersここのところの国内外の出張続きで,正直なところ,ブログに記事をアップするのが難しい時期が続いていたのだが,ようやく連続出張も終了し,ようやく自室で音楽を聞ける環境になった。疲れているのだから,こういう時はもう少しおとなしい音楽を聞いてもいいような気もするが,今日はRoger Waters,25年ぶりのスタジオ作である。

昔,「笑っていいとも!」の中に,「おじさんは怒ってるんだぞ!」なるコーナーがあったと記憶しているが,まさにRogers Waters版,「おじさんは怒ってるんだぞ!」って感じのアルバムである。サウンドは,いかにもPink Floyd的であり,年齢を重ねたリスナーにとっても問題のないつくりなのだが,歌詞が結構激しい。既に古希を過ぎているRoger Watersがこうしたアルバムを作り上げることは,よほど腹に据えかねたのだろうと想像することはたやすい。ブックレットに掲載された写真(↓)を見れば,その怒りの矛先が,Donald Trumpといううつけ者に向いていることは間違いないし,Roger Watersの憤懣やるかたない思いが,歌詞の端々に感じられる。それにしても,"A Leader with No Brains"とはよく言ってくれたものである。

正直言って,私がPink Floydを聞くようになった時に,既にバンドにはRoger Watersはいなかった(私にとってのプログレはまずはYesがあり,そしてKing Crimsonだったのだ)のだが,このアルバムを聞くと,Pink Floyd的なサウンドは,Roger Watersがそもそもは作り上げたものなんだろうと感じるような音である。その後のDave Gilmourが実質的なリーダーとなったPink FloydはRoger Waters的なところを結構なぞっていたってことなんだろう。

本作を聞いていると,さすがにヴォーカルはきついなぁって感じで,絞り出すようなトーンと感じられる部分もあるが,それよりも,私としては,このサウンドが今,このタイミングでどう受け止められるかには非常に関心がある。だが,音楽的なところはさておき,私としては,怒りを発露し,音楽に乗せるという行為はあって然るべきものだと思えるし,超リベラルな私のような人間には,Roger Watersの怒りは理解できるものである。

であるから,純粋音楽的に評価するのと,このRoger Watersの姿勢を評価するという2面で考えなければならないが,音楽的に見ても,私はPink Floydの"Endless River"よりこちらの方が好きだし,Roger Watersの姿勢には大いにシンパシーを感じるということで,星★★★★☆としておこう。

Personnel: Roger Waters(vo, acoustics, bass),Nigel Godrich(arr, sound collage, key, g), Jonathan Wilson(g, key), Gus Seyfferts(b, g, key), Joey Waronker(ds), Roger Manning(key), Lee Pardini(key), Lucius: Jesse Wolfe & Holly Laessig(vo)

Trump

2017年6月27日 (火)

Enrico Pieranunzi入りMads Vinding Trioの未発表ライブ現る。これは悪いわけない。

"Yesterday: Mads Vinding Trio Live in Cipenhagen 1997" Mads Vinding / Enrico Pieranunzi / Alex Riel (Stunt)

Yesterdaysこのアルバムのリリースが発表された時,絶対これは悪くないはずだと思ったのは,きっと私だけではないはずである。Enrico Pieranunziのファンであれば,彼が同じメンツで吹き込んだMads Vindingの"The Kingdom"は,Pieranunziのトリオ・アルバムでもファンが多い傑作だからだ。かく言う私も,Pieranunziが2013年に来日した時に,サインをもらうために持参した何枚かのアルバムには"The Kingdom"が含まれていた。それにしても,それももう4年近く前のことである。光陰矢の如し。

そんなトリオが"The Kingdom"をリリースしたのが1997年のはずで,その同年,同メンツでライブ・レコーディングの模様が残っていたということは全く幸運だったと思わざるをえないし,冒頭のタイトル・トラック"Yesterdays"からこっちの思っているサウンドが響きだせば,それだけで「くぅ~っ」となってしまった私であった。

Enrico Pieranunziはその後も精力的に活動はしているが,やはりピアノ・トリオ・フォーマットによる演奏には魅かれるものが多い。しかし,多作な人だけにアルバムは玉石混交という感じがしないわけではないが,それでも"The Kingdom"があっただけに,このアルバムは期待させる部分が大きかったし,ちゃんとその期待に応えてくれるところが,ファンとしては非常に嬉しいのである。

レパートリーはスタンダードを中心に,Gary Peacockが"Tales of Another"でやっていた"Viignette",そしてPieranunziの美しいオリジナル"A Nameless Date"という選曲もファンは落涙必至であろう。

_20170625とにかく,Pieranunziのピアノのよさが十分に捉えられていると感じられる演奏の数々であり,私としては"The Kingdom"同様の満足が得られたと思っている。真剣に聞くもよし,聞き流すのもよし。様々なシチュエーションで,何度も聞きたくなるようなアルバムである。喜んで星★★★★★としてしまおう。Cotton Clubでのライブ後にサインをもらった"The Kingdom"の写真もアップしておこう。

Recorded Live at Copenhagen Jazzhouse on Novmeber 11, 1997

Personnel: Mads Vinding(b), Enrico Pieranunzi(p), Alex Riel(ds)

2017年6月14日 (水)

ある意味,これがVanguardでのライブというのが信じがたい"Small Town"

"Small Town" Bill Frisell & Thomas Morgan(ECM)

Small_town今年になってから,私はBill FrisellはCharles Lloydとのライブで,そしてThomas MorganはJokob Broとのライブで,その生演奏に接している。ビルフリについては長年の経験則からして,だいたいどういう音だろうというのは想像がつくし,Thomas Morganのあの超内省的な感じ(本当に内気な青年って感じなのである)からすれば,インティメートな音場になることはわかっていた。

しかし,本作が録音されたのは,モダン・ジャズの聖地と言ってよい,あのVillage Vanguardである。あまりこうした演奏には接するチャンスがある場所だとは思えないのだが,そういう場所でこういう演奏が行われたということがまず驚きである。

だが,このアルバムを聞いていると,彼らの演奏にはマジカルな部分があって,聴衆を誘因する特殊なケミストリーを発生させているようにさえ思える。ギターとベースというデュオというセッティングにおいて,非常に特異な個性に満ちた演奏と言うことができるアルバムだと思える。だって,Jim Hall~Red MitchellやJim Hall~Ron Carterとは違うし,Charlie Haden~Christian Escoudeとも違う。ではBebo Ferra~Paulino Dalla Portaとはどうかというと,内省的な響きは類似していても,やっぱり違うのである。彼らにしか出せない音。まさにそんな感じだろう。"Subconscious Lee"なんて,まさにツボに入る演奏である。

ビルフリの音は想定通りであるが,ここでのThomas Morganのベースの音がなんと魅力的に録音されていることよ。レコーディング・エンジニアの記載がないが,これをミキシングだけでこの音に仕上げたとすれば,それはそれで凄いことである。

前半はJakob Broにも通じる幽玄な世界が展開されるが,中盤から後半にはやや最近のビルフリに感じられるアメリカーナな感覚もあり,全体としてはバランスの取れたアルバムと言ってよいだろう。だって,やっているのがCarter FamilyやらFats DominoではいくらビルフリとThomas Morganでも多少はそうなるわねぇ(苦笑)。そして最後はなんと"Goldfinger"である。Shirley Basseyのオリジナルとは全く違う世界が展開する。万人には勧めにくいが,この世界,はまるとなかなか抜けられない。そういう世界である。星★★★★☆。

Jakob_bro_i_mosaicいかにThomas Morganが内気っぽいかを見て頂くため,Jakob Broとのライブ時の写真を再掲しておこう。いつも通り,私の顔はモザイク付きである。

Recorded Live at the Village Vanguard in March 2016

Personnel: Bill Frisell(g), Thomas Morgan(b)

2017年6月12日 (月)

メンバー・チェンジ後のOregonの新作が渋くも素晴らしい。

"Lantern" Oregon(CamJazz)

_20170611Oregon久々の新作がリリースされた。前作は"Family Tree"のはずだから,約4年半ぶりってことになるので,結構久しぶりである。その間には,バンドの創設メンバーであるGlen Mooreが脱退するという出来事があったが,今回のアルバムにおいては,Glen Mooreが去ったことの影響はどうかということに関心が向かざるを得ない。しかし,Glen Mooreに代わって加入したのはPaolino Dalla Portaである。Paolino Dalla Portaと言えば,Paolo Fresu Devel Quartetの演奏でも知られるが,私としては,ギターのBebo Ferraとの素晴らしいデュオ・アルバムがあったので,多分大丈夫だろうとは思っていたが,私が想像するよりずっとよいアルバムに仕上がっていると思う。

前作"Family Tree"についてはやや辛めの評価をした私である(記事はこちら)が,今回のアルバムは私が期待する彼ららしい音が出てくるのがまず嬉しい。Ralph Townerのオリジナルおw中心とした曲から構成されているが,2曲目には先日このブログでも取り上げたJavier Girottoのアルバムでも演奏していた"Duende"が収録されているが,GirottoのアルバムでもTownerはいいところを聞かせていた(記事はこちら)ものの,演奏の出来ははるかにこちらの方がいいように思える。

3曲目はMark Walkerによる"Walk the Walk"であるが,ちょっと聞いた感じではPat Metheny Unity Groupのようにも聞こえるのは面白いが,そこでも聞かれるRalph Townerのピアノの見事さには触れておかねばなるまい。ソロにしても,バッキングにしても,実に大したものであり,うまいねぇと思わせる。ギターが素晴らしいのはもちろんだが,ピアノも一流なのはEgberto Gismonti同様である。

そして,注目のPaolino Dalla Portaであるが,実にいい音を出していて,それがOregonというバンドのサウンドにジャスト・フィットと言っていいだろう。Glen Mooreの脱退の影響はほとんどないと言ってもよい。これならば,今後のバンド活動も安心である。

全体を通して聞けば,コレクティブ・インプロヴィゼーションのようなタイトル・トラック"Lantern"はどうなのよ?って気がしないでもないが,徐々に盛り上がりを示して,そんなに悪くもないかと思わせるし,更には最後をトラッドの"The Water Is Wide"で締めるってのは,演奏はちょいと緩いものの,決まり過ぎでしょう(笑)。いずれにしても,長年のOregonのファンが聞いてもおそらくは納得のいく,渋くも素晴らしい新作である。星★★★★☆。

Recorded on November 28-30, 2016

Personnel: Paul McCandress(oboe, english horn, ss, b-cl), Ralph Towner(g, p, synth), Paolino Dalla Porta(b), Mark Walker(ds, perc, ds-synth)

2017年6月11日 (日)

もはや裏Fleetwood Macの趣:"Lindsey Buckhingham Christine McVie"

"Lindsey Buchngham Christine McVie" (East West/Warner)

Buckingham_mcvie私はなんだかんだ言ってFleetwood Macのアルバムを結構保有しているし,Beb Welchのいた時代から,彼らの持つポップさが好きなのだが,その中でも特に好きなのがChristine McVieなのだ。特に彼女のソロ・アルバム(邦題「恋のハートビート」だったか...)なんて本当に好きである(記事はこちら)。

そんなFleetwood MacからChristine McVieからはかなりの期間離れていたが,現在は復帰しているが,そこでLindsey Buckhinghamと彼女がデュオ・アルバムを出すとは想像していなった。Buckinghamが組むなら,当然Stevie Nicksだと思うのが人情だが,Christine McVieの方が圧倒的に好きな私には嬉しい驚きであった。

そしてデリバリーされたアルバムのクレジットを見ると,バックはJohn McVieとMick Fleetwoodではないか。それにMitchell Froomがキーボードで加わるという布陣は,ほとんど裏Fleetwood Macである。更に音を聞いてみると,どうしてもバッキング・ヴォーカルがStevie Nicksに聞こえてしまうから不思議である。私としてはクレジットされていないだけで,彼女が参加しているようにさえ思えてならない。Buckinghamにはベース,ドラムスのクレジットもあるから,Macのリズム隊は一部参加と考えてもよいが,それでもこれはファンにとっては,ほとんどFleetwood Macのアルバムとして聞いても問題はなさそうに聞こえる。

まぁ,それはさておきである。彼ららしいポップさを持ったアルバムは予想通りであるが,随分とLindsey Buckinghamの声がハスキーになった感じがして,時の流れを感じてしまう。Christineは古希を過ぎ,Buckinghamも今年で68歳なのだから,声の衰えは当然あって然るべきであるが,Chrisitineの声が以前と大して変わらないように思えるのは驚異的である。昔からChristineの声は渋い声だったということもあろうが,まだまだ若々しさを感じさせるのは立派だと思う。

曲は彼らしい曲だとは思えるが,今一歩のキャッチーさが不足しているような気がするのはやや残念だとしても,長年のChristine McVieのファンとしては,彼女が歌ってくれるだけでもうれしいのである。"Game of Pretend"なんてそのイントロを聞いただけで"Songbird"を思い出してしまうしねぇ。まぁそれでも評価としては星★★★★てところだろうなぁ。

Personnel: Lindsey Buckingham(g, key, b, ds, perc, vo), Christine McVie(key, vo), Mick Fleetwood(ds, perc), John McVie(b), Mitchell Froom(key)

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