2019年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

2017年おすすめ作

無料ブログはココログ

カテゴリー「新譜」の記事

2019年11月25日 (月)

これは凄い!Lookout Farmの未発表ライブ音源。

_20191124”Lookout Farm at Onkel Pö's Carnegie Hall" Dave Liebman / Richie Beirach / Frank Tusa / Jeff Williams / Badal Roy (NDR Info)

未発表のライブ音源をリリースするこの"At Onkel Pö's Carnegie Hall"シリーズは,これまでもWoody ShawやらFreddie Hubbardのアルバムを当ブログで紹介してきたが,今回リリースされたのは何と,Lookout Farmである。今から10年以上前にこのブログで彼らのブートレッグを紹介したことがあるが,それも無茶苦茶燃える演奏だった(記事はこちら)のだが,今回発掘された演奏も実に強烈。凄いとしか言えない私の表現力の稚拙さを恨みたくなるような演奏なのだ。まずは皆さんに申し上げたい。買いましょう!(笑),あるいはストリーミングで聞きましょう!

冒頭の"Naponoch"のイントロからして私は金縛り状態だったと言ってもよいが,もはやフリー・ジャズ一歩手前と言ってもよいようなLiebmanのテナーにまず痺れる。家人がいないのをいいことに,ついついボリュームを上げた私である(爆)。続く"The Iguana's Ritual"のファンク・ビートに乗ったRichie Beirachのエレピを聞いて燃えなければ,この手の音楽と相性は悪いと言い切ってしまおう。もはやエグイと言ってもよいようなバンドのサウンドはリスナーを興奮させるに十分。これが時代の勢いと言うべきものかもしれないが,もの凄い爆発力である。そこからほぼLiebmanとBeirachのデュオで演じられる"I am a Fool to Want You"へと移行する,この動と静の転換の見事さに改めてゾクゾクさせられる。そして,ここでのLiebmanの無伴奏カデンツァの何と素晴らしいことよ。眼前でやられたら悶絶必至である。

それに続いてJohn Coltraneの"Your Lady"へなだれ込むのだが,Frank Tusaのベース・ソロは増幅感が強過ぎるが,このバンドにおいてはこれぐらいでないとサウンド的に対抗できないってことにしておこう。ここでのBeirachのエレピでのソロの部分は,ちょっとReturn to Forever的なところも感じさせるが,それもRhodesの音色ゆえか。最後に"Fireflies"で締めるこの時のプログラム,最高である。ファンクとロックが相俟ったようなサウンドに最後まで興奮が収まらないではないか。一瞬たりとも弛緩する瞬間がないこのアルバム,やはり音量を上げて聞くべきだ。

それにしても,何という破壊力。聴衆の反応もむべなるかな。LiebmanとBeirachの共演はまだQuestで聞けるが,このバンドのライブを見てみたかったというのももはや見果てぬ夢であるが,こうして40年以上の時を経て,改めて音源として振り返ることができる私たちは幸せである。この音源がリリースされたことには最大限の賛辞を送りたい。星★★★★★。いやぁ,まじで燃えた。私としてはこれをJohn Coltraneの"Blue World"さえ凌駕する,今年最高の発掘作とせざるをえないな。

Recorded Live at Onkel Pö's Carnegie Hall on June 6, 1975

いPersonnel: Dave Liebman(ts, ss, fl, perc), Richie Beirach(p, el-p), Frank Tusa(b), Jeff Williams(ds), Badal Roy(perc)

2019年11月23日 (土)

まさに三位一体:"Good Hope"。

_20191123"Good Hope" Dave Holland / Zakir Hussain / Chris Potter(Edition)

記事にするのが遅く成ってしまったが,またの名をCCrosscurrents Trioという3人による待望のアルバムである。Dave HollandとクリポタはHolland Quintetの時代から長きに渡って共演を続ける仲であるが,そこにタブラのZakir Hussainが加わるという異色と言えば異色な編成による演奏がどうなるかは実に興味深いものがあった。

結論から言えば,"Crosscurrents"というトリオの名前と相反するような彼らの協調ぶりに思わず嬉しくなってしまう。"Crosscurrents"とは「相反する傾向」というような意味だが,そうした相反する要素が混じり合うことによって,最高の音楽を作り出してしまうことが彼らのミュージシャンとしてのレベルを示している。

ここでのクリポタは私が通常期待するイケイケなクリポタではない。しかし,どのようなフォーマットでも,個性を打ち出しながら素晴らしいフレージングを繰り出すクリポタは健在である。クリポタに限らず,このトリオの演奏は一聴地味だと思わせる部分があるの。だが,それはステレオタイプの「激しさ」がないからだという言い方もできようが,ここでの音楽はそういうタイプの音楽を目指していないのだから当たり前と言えば当たり前なのである。Dave Hollandの見事なベース,そしてZakir Hussainの名人芸のようなタブラに乗ったクリポタのテナー(及び一部ソプラノ)を聞いて,このトリオの力を再確認し,実に嬉しくなってしまった私であった。

タブラが入ることによって,インド的なフレイヴァーが強まるという想定も成り立つわけだが,ここにはそうした民族的な要素はほとんど出てこないと言ってよい。あらゆるジャズ・ファンには容易に受け入れ可能な音楽であると同時に,あらゆる音楽ファンにとっても聞かれるべき傑作と思う。三位一体を具現化したようなこの一体感,実に恐るべしである。星★★★★★。

Recorded on September 21 & 22, 2018

Personnel: Dave Holland(b), Zakir Hussain(tabla, kanjira, chanda, madal), Chris Potter(ts, ss)

2019年11月21日 (木)

アブストラクト度の更に高まったKeith Jarrettの2016年ライブ。

_20191119 ”Munich 2016" Keith Jarrett(ECM)

これはなかなか厳しい音楽である。Keith Jarrettの昨今のソロは,昔に比べるとかなり抽象度が高まったと言うか,ほとんど現代音楽的な感覚さえ与えるものとなっている。しかし,昨年出た"La Fenice"は録音時期が本作より10年も前ということもあるだろうし,場所柄ということもあって,もう少し聞き易い演奏だったと思う。それに比べると,この2016年のミュンヘンで録音された音源は,これはKeith Jarrettとピアノの対峙の瞬間を捉えた音源に思える。特に前半部はとにかくテンションが高く,実に厳しいのである。

ミュンヘンの聴衆たちは万雷の拍手を送っているが,私が会場にいたらどう思っていたかなんて想像をしてしまった。おそらくはこのテンションと音の厳しさによって,どっと疲れが出ていたのではないかと思えてならないのである。ここで奏でられる音楽は芸術として評価しなければならないのは承知していても,冒頭の2曲などはもはや孤高の世界に入り込み過ぎではないのかとさえ言いたくなる。

こうしたパターンは最近のKeith Jarrettのライブには共通しているが,やっぱりPart IIIあたりで美的な感覚を打ち出してきて,聴衆をほっとさせるのはある意味演出と言っても過言ではない。こうしたところに若干の反発を覚えるのは,私が天邪鬼なせいだが,やはり一定のパターンというものが出来上がってしまっているように思える。Part IVがフォーク・ロック的な感覚を打ち出すのもこれもお約束みたいなものだ。まぁ,Keithとしては,最初の2曲で集中力を高めておいて,徐々に聴衆に寄り添っていくって感じなのかもしれないが,こういう感じだが毎度続いてくると,もう出れば買うみたいなことは必要ないかなとさえ思ってしまうし,ストリーミングで十分って気もしてきてしまうのだ。

ディスク2に移行すると,多少聞き易さは増してくるのだが,不思議なことにこちらのディスクには聴衆の拍手が収められていない。なんでやねん?だが,聞き続けていると,結局多くのリスナーにとってはアンコール3曲が一番の聞きものになってしまうのではないかと皮肉な見方をしたくなる。今回やっているのは"Answer Me, My Love",そして"It's a Lonesome Old Town"という渋いチョイスに「虹の彼方に」であるが,これらは実に美しく,このためにライブを聞いているのだと言いたくなってしまっても仕方がないのである。完全即興から解放された感覚がこれらの演奏に表れると言ってもよいような,実にしみる演奏なのだ。

ということで,正直言って私はアンコール・ピースを集成したアルバムを出してもらった方がいいとさえ思ってしまう。もちろん,全体のクォリティの高いことは否定するものではないが,やっぱりこう同じような感じの演奏パターンを聞かされると,さすがに微妙だと感じてしまった。星★★★★。全体としては前作"La Fenice"の方が私の好みだな。

Recorded Live at Philharmonic Hall, Munich on July 16, 2016

Personnel: Keith Jarrett(p)

2019年11月18日 (月)

またも出た!Woody Shawのライブ発掘音源。

_20191117 "At Onkel Pö's Carnegie Hall Vol. 1" New Woody Shaw Quintet (NDR Info)

全く同じタイトルのアルバムを昨年,このブログに取り上げた(記事はこちら)が,あちらは1982年の演奏に対し,こちらは1979年である。それだけWoody Shawのアルバムはここのところ,発掘ライブ音源として続々とリリースされているが,このアルバムを購入せねばと思わされたのは,録音があの"Stepping Stone"の翌年,メンツもベースを除いて同じというところが非常に気になったからである。その当時はWoody Shawが最も輝きを放っていた頃と言っても過言ではないと思うが,どのような演奏をするのか気になるのは当然なのだ(きっぱり)。しかも今回は2枚組である。

Woody Shawのライブ音源は1曲当たりの演奏時間が長くなる傾向があるが,このディスク1なんて,2曲で47分余りという長尺。ディスク2も3曲で45分越えというライブならではの演奏時間である。さすがに1曲20分越えは長いかなぁと思わせるディスク1であるが,Woody Shawのラッパを聞いていると,そういう時間が気にならないと思わせるほど素晴らしい。このストレート・アヘッドな響きを聞いて燃えない訳がないのだ。ある意味,ここでの演奏においてはWoody Shawが突出し過ぎているという感覚さえ与えるし,演奏の粗さも気にならない訳ではない。

しかし,私としてはディスク2に収められている演奏とかを聞くと,自然に燃えてしまうのである。私としてはディスク1よりディスク2の方を強く推したくなるのは,演奏のエネルギー量もあるかもしれないが,"Stepping Stone"との近似性もあるのは事実だろう。ディスク2に比べると,ディスク1はややルースな感覚が強いように思えてしまう。そうしたことを考えるとトータルで考えれば星★★★★ぐらいでいいと思う。それでも次から次へと出てくるものは追い掛けたくなってしまうと思わせるのはやはりWoody Shawである。

Recorded Live at Onkel Pö's Carnegie Hall on July 7, 1979

Personnel: Woody Shaw(tp, fl-h), Carter Jefferson(ts, ss), Onaje Allan Gumbs(p), Stafford James(b), Victor Lewis(ds)

2019年11月17日 (日)

Marc Coplandの新作は注目のメンツによるピアノ・トリオ。

And-i-love-her "And I Love Her" Marc Copland(Illusions Mirage)

Marc Coplandの前作"Gary"をこのブログで取り上げたのが約半年前のことだったが,それから短いインターバルでリリースされた新作はピアノ・トリオである。Drew Gress,Joey Baronとの組み合わせは,それぞれがこれまでMarc Coplandとの共演歴があるため,コンビネーションとしては鉄壁だろうと想像するに難くなく,リリースがアナウンスされた時から注目していた。ストリーミングでは結構早くから聞いていたのだが,ようやく現物を入手した。

結論から言ってしまえば,いかにもMarc Copland的な演奏である。いきなりミステリアスな雰囲気から始まるのは"Afro Blue"。そこかしこにMarc Copland的な感覚やフレージングがあって,やっぱりMarc Coplandだと思ってしまう。そして2曲目はこれまでもCoplandがやったことがあるHerbie Hancockの"Cantaloupe Island"であるが,原曲と全然イメージを変えてしまうのがMarc Coplandらしい。それに続くDrew Gressのオリジナル"Figment"はこのトリオの美学を感じさせる演奏になっていて,わかってるねぇと思ってしまう。そして,Marc Coplandのオリジナル"Might Have Seen"なんて,Marc Coplandしかこういう曲を書かんだろうという響きなのだ。

そして,よくよく考えてみれば,このトリオ,John Abercrombieの最後のクァルテットを支えたトリオである。バンマスのAbercrombieを偲んで(?)のジョンアバ・オリジナル,"Love Letter"をやって,それに続くのがこれまた実に美しくも動的な魅力にも溢れたMarc Coplandのオリジナル,"Day and Night"である。こういう演奏をされてしまうから私はこの人のファンをやめられない。そして,本作で最も注目されるであろう"And I Love Her"であるが,和声の使い方はMarc Coplandらしいものの,曲の崩しは限定的。この曲は崩しようがなかったってところかもしれないが,これも十分に美しい演奏である。私としてはついついBrad Mehldauの演奏と比較してしまうが,それでも個性の違いは明確に出るものだ。それに続くのはトリオ・メンバー3者の共作となっているので,即興で仕立てたものだと思われる"Mitzi & Jonny"。ほかの演奏と比べると,ちょっとこの曲は浮いた感じがするのはちょっと違和感がある。しかし,最後を締めるのはCole Porterの”You Do Something to Me"である。3者のソロ交換で締めるところはアルバムのクロージングとしては適切と思わせた。やっぱりいいねぇ。

一点補足するとすれば,このアルバムで特筆すべきはその音のよさだと思う。私はオーディオ・マニアでも何でもないし,家のオーディオ・セットも正直言ってしょぼいものだが,ここでの楽器音のリアリティは素晴らしいと思った。どこかのエロ・ジャケのレーベルとは全然違う,これが本当の趣味のよさ。相変わらずMarc Coplandに甘いと言われそうだが,星★★★★☆。

Recorded in August 2017

Personnel: Marc Copland(p), Drew Gress(b),Joey Baron(ds)

2019年11月 8日 (金)

Alabama Shakesのという注釈不要と思わせるBrittany Howardのソロ・アルバム。これが実に素晴らしい。

_20191105 "Jamie" Brittany Howard(ATO)

本作をリリースしたBrittany Howardは,Alabama Shakesのヴォーカリストである。Alabama Shakesというバンドは,この時代においても私のような年代のリスナーにさえ強烈にロックを感じさせてくれる稀有なバンドであり,私は彼らのアルバムに賞賛を惜しまなかった(記事はこちら)。Alabama Shakesのアルバムはその"Sound & Color"からリリースされないままだが,そこへBrittany Howardのアルバムが出るからには聞かない訳にはいかない。とか何とか言いながら,ストリーミングでやり過ごしていたのだが,やっぱりこれは保有に値するということで,現物を発注したものである。

ここでの音楽を聞いていて,私が何となく想起したのがMe'shell N'degeocelloであったが,ロックとソウルの中間をうまく行き来する感じって言うのが最初の感覚であった。だが,繰り返し聞けば聞けるほど展開される音楽は実に濃密な魅力に溢れる感じがしてくるのである。端的に言えばチャラチャラとしたところ皆無。音楽に真剣に対峙したいリスナーにこそ勧めたい深みのあるアルバムに仕上がっている。

Alabama Shakesのバンド・メイトのZac Cockrellに加えて,Robert GlasperやNate Smithが参加していることから,このBrittany Howardという人の立ち位置が見えるような気がする。GlasperもNate Smithも,軽々とジャンルを越境してしまう人たちだが,ここでの演奏,歌唱もジャンル超越型であることは前述の通りである。それが単にジャンルという枠だけで捉えてはもったいない音楽になっているのが強烈なのである。

一聴ローファイなサウンドから聞き取れる音楽のディープな魅力は私の筆力,表現力の及ばないところではあるが,それでも実にレベルの高い音楽であることは明らかなのだ。実に素晴らしい。Brittany Howard,31歳にしてこの成熟度は末恐ろしいとさえ感じさせる。いずれにしても,今年聞いた中でも屈指のロック・アルバムの一枚と思いつつ,響きは完全にソウルだ。星★★★★★。

Personnel: Brittany Howard(vo, g, key, b, ds, perc), Zac Cockrell(b), Robert Glasper(key, celeste), Paul Horton(key), Nate Smith(ds, perc, vib), Lloyd Buchanan(org), Larry Goldings(key), Lavinia Meuer(harp), Rob Moose(strings)

2019年11月 6日 (水)

”Jatroit“:大西順子はこういう感じでやって欲しいというアルバム。

_20191104-3 "Jatroit" 大西順子(Somethin’ Cool)

正式には"Junko Onishi Presents Jatroit Featuring Robert Hurst & Karriem Riggins"と表記すべきだろうが,まぁよかろう。私にとって大西順子という人はおかしな言い方だが「愛憎半ばする」人である。私は本質的に大西順子の音楽については肯定的な見解を持っているのだが,くそのようなラップを伴ったとんでもない愚作"Tea Times"は到底評価できないとか,ライブでのPAの扱いや所作にどうも納得がいかなかったりとか,どうも気に入らないところもある人なのだ。だから,このライブ・アルバムの音源となったブルーノートの公演に足を運ぶこともなかったが,このメンツなら期待できるだろうとは思っていたのは事実である。でも2018年2月のブルーノートでの印象が悪く,彼女のライブにはもう行かないと決めたので,その意志を貫徹したに過ぎない。

だが,本作は24年ぶりのライブ音源らしいし,音だけなら聞くに値するということで,だいぶ遅れての入手となった。そして感じるのは,やはりというか,ここで演じられるCharles Mingus作の”Meditations for Pair of Wire Cutters"や,Jaki Byardに捧げた大西順子のオリジナル”The Threepenny Opera"なんかを聞いていると,大西順子のハード・ドライビングなピアノはリスナーを興奮させるに十分だということだ。私としてはやはりこういう路線の大西順子のピアノは最大限に評価してしまうってところだと思う。

それだけでなく,動と静をうまく組み合わせてたかたちで,全体のアルバムの構成もよく出来ていて,これはやはり期待通りのアルバムに仕上がったと言ってよい。そうは言っても,私にとっては"Baroque"あたりの強烈さへの郷愁があるが,これはこれで十分楽しめる。聞くなら極力ボリュームを上げたくなるような一枚と言っておこう。星★★★★☆。

まぁ,でもねぇ,どうなんだろう...。ステージの右側にピアノを置いて演奏していては,リズムとのアイ・コンタクトが取りにくいだろうと思ってしまうが,多分ライブを観に入ったら,その辺にきっと私は居心地の悪さを感じたのではないかと思う。アルバムを聞いている限りは別に問題なさそうなので余計なお世話か(苦笑)。

Recorded Live at Blue Note東京 in February, 2019

Personnel: 大西順子(p),Robert Hurst(b), Karriem Riggins(ds)

2019年11月 1日 (金)

コレクターはつらいよ(25):突然フランス映画のサウンドトラックを担当したBrad Mehldau。

Mon-chien-stupide "Mon Chien Stupide" Original Soundtrack by Brad Meldau (My Music)

突然リリースされた映画のサウンドトラックをBrad Mehldauが担当していると知ってしまったからにはさぁ困った。この映画,以前Brad Mehldauが音楽を担当した「僕の妻はシャルロット・ゲンズブール」同様,Charlotte GainsbourgとYvan Attal夫妻主演の新作コメディとのことであるが,前の映画の縁もあって再登板となったのだろうか。

「僕の妻はシャルロット・ゲンズブール」のサントラはCDとしてもリリースされているが,本作の方は今のところダウンロードのみのようである。「僕の妻はシャルロット・ゲンズブール」 の方は別アーティストの音源も含んでいるコンピレーション的なものだったが,こちらは全面的にBrad Mehldauがピアノを弾いているように聞こえる。

冒頭の"Henri's Lament"から嬉しくなるようなトリオ演奏が聞こえてくるが,アルバムとしてはちゃんと曲として成立しているものと,あくまでも映画のバックを構成するための「サウンド」のような曲もあれば,弦を交えた室内楽のような曲もある。しかしソロで"And I Love Her"とかをやられると,6月のよみうり大手町ホールでのソロ公演の記憶が蘇ってしまう。電車の中で聞いていても思わずくぅ~っとなってしまった私である。

やっぱりサントラだよなぁと思わせる部分もあるが,これならCDで出してもいいのではないかと思えるような演奏ぶりであった。いずれにせよ,こういうのが突然出てくるのがコレクター泣かせってやつだよねぇ。ということで,ストリーミングでも全然かまわないのに,きっちりダウンロードもした私である。コレクターはつらいのだ。

尚,演奏者は全くデータがないが,トリオ演奏はレギュラー・トリオ,バスクラはJoel Frahmあたりだろうか。追って情報が出てきたらアップデートしたい。まぁ,普通の人はストリーミングで聞いて下さいってことで(笑)。

2019年10月31日 (木)

ついに到着:Brad Mehldau全面参加のChase Bairdのアルバム。

_20191029 ”A Life Between" Chase Baird(Soundsabound)

最近はAntonio SanchezのMigrationに参加して,知名度も上がってきたChase Bairdのアルバムなのだが,本作については実はかなり前から注目をしていた。ネット・サーフィンをしていて,Chase Bairdがこのアルバム制作資金を集めるためにクラウド・ファンディングを行っていて,そこにはBrad Mehldau,Nir Felder,そしてAntonio Sanchezが参加すると書かれていたからである。しかし,資金集めには結構苦労しているのを見ていて,プロジェクトも頓挫したかと思っていたのだが,このアルバムが今年の8月ぐらいにはストリーミングで聞けるようになって,完成したことはわかっていた。そして,Chase BairdのFBのページを見ていると,CDもプレスしているらしいことも察していたので,ひたすらフィジカルなリリースを待っていた私である。

そして,CDリリースが正式にアナウンスされて,発注したのが確か10月初旬のことだったが,約4週間もかかってようやく我が家に到着したので,現物を聞いているところである。リーダーのChase Bairdには申し訳ないが,私がこのCDを購入したのは,あくまでもBrad Mehldauの参加によるものであることは明確な事実である。しかし,Migrationでの演奏を聞いていると,サックス・プレイヤーとしてのChase Bairdも相応に期待は持てることがわかっていたので,結構期待の新譜だったと言ってよい。

しかし,正直言ってしまうと,アドリブ・ラインはかなり魅力的に響く一方で,Chase Bairdの書く曲に関してはやや力不足な気がする。サウンドがこのメンツゆえに成立したと言ってしまうと見も蓋もないが,特にNir Felderのギターがハードな感覚を付与して,相当出来を押し上げたように感じてしまう。Brad Mehldauがここに参加した経緯はよくわからないが,こうした音楽とBrad Mehldauの相性は決して完璧だとは思わない。それでも”Dream Knows No End"で聞かせるピアノ・ソロなんて見事なもの。Antonio Sanchezは相応のドラミングで対応していると思うが,このバンドにBrad Mehldauが必要だったかと言われると,う~むとなってしまう。もちろんいるに越したことはない。だが,私には,むしろアルバム・リリース記念のライブで共演していたJohn Escreetの方が,このバンドのサウンドにはマッチするかもなぁなんて思えてしまったのも事実なのだ。まぁ,私のようなリスナーがいるので,売上の増大には貢献しているとしても,バックのキモはやっぱりNir Felderの方だろう。テナーとギターのユニゾンを聞いていると,ちょっとUnity Bandを想起させるところもあったし。

いずれにしても,コンテンポラリーなサックスのアルバムとしては注目すべき作品であることは間違いないが,アルバム全体の出来としては星★★★☆ぐらいが妥当だと思う。録音のせいか,サウンドに今一歩キレがないのも惜しい気がする。エンジニアはJames Farberなんだけどねぇ。そして,いかんせん今のところ国内での入手が容易ではないのが最大の難点。私はCDに$20,送料に$20払ってゲットしたが,ご関心のある方は,そのうちDUあたりが大量に買い付けてからの入手でも遅くないかもな~(苦笑)。私はBrad Mehldauコレクターゆえに,手に入れられる時に,手に入れるための出費も仕方がないってことで,まぁいいや。

Recorded on January 12, 2018

Personnel: Chase Baird(ts),Brad Mehldau(p), Nir Felder(g), Don Chmielinski(b), Antonio Sanchez(ds)

2019年10月24日 (木)

突如現れたLeon Wareのアナログ盤2枚組。今更とは言え,この人がこの世にいないことの喪失感が強まる。

Leon-ware-rainbow-deux "Rainbow Deux" Leon Ware(Kitchen / Be With)

メロウ大王ことLeon Wareがこの世を去ったのは2017年2月のことであった。彼の遺作は日本だけで媒体リリースされたらしい"Sigh"(同作に関する記事はこちら)だと思っていた私だが,某誌を読んでいたらこのアルバムのことが紹介されているではないか。しかもアナログ2枚組限定らしい。となるとこれは聞きたい!ということで,早速発注した私である。因みにストリーミングでも聞けるので念のため。

早速届いたこのアルバムであるが,2枚組全12曲のうち,半数は"Sigh"と被っている。しかし,残り6曲は"Sigh"以降のものらしいから,まぁよかろう。そして,このどこから聞いても,おぉっ,Leon Ware!って響きに,私は甘酸っぱい気持ちと,Leon Wareのいないこの世界の喪失感が混じり合った不思議な感覚を覚えていた。

まさにここで聞かれる音楽はメロウ・グルーブそのものである。私は完全に遅れてLeon Wareの魅力にはまった人間であるが,この素晴らしさの前では,Moonchildのようなバンドもぶっ飛んでしまうと言わざるをえない。まさにメロウ大王の名に恥じないグルーブに,私は身をよじる思いをしたのであった。

正直言って,曲の出来には若干差もあると感じさせる部分もあるが,もうこれにはもろ手を挙げて星★★★★★である。リリースされたことを感謝したくなるのはきっと私だけではないはずだ。尚,アルバム・カヴァーは全然Leon Wareらしくないが,何と彼の自作の"Deux Hearts"。人は見かけによらない(爆)。

そしてつくづく,彼の2012年の来日ライブに行きそこなったことは痛恨事だったと思う私だが,後悔先に立たず。せいぜいアルバムを聞いて彼を偲ぼう。アルバムのスリーブにある"Cherish Where We Come From." The Sensual Minister aka Leon Wareという表記には死して尚エロいLeon Wareと思ってしまったが...。

Personnel: Leon Ware(vo), Rob Bacon(g), Ronald Bruner(ds), Stephen Bruner(b), Theo Croker(g), David Foreman(g), Taylor Graves(key), Wayne Linsey(key), Carl Smith(perc), Dwayne "Smitty" Smith(b), Freddie Washington(b), Kamasi Washington(sax), Codany Holiday(vo), Nikki Grier(vo), Taura Stinton(vo), Kimbra(vo)

より以前の記事一覧

Amazon検索

2018年おすすめ作