2018年7月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

2016年おすすめ作

無料ブログはココログ

カテゴリー「新譜」の記事

2018年7月10日 (火)

奥方Fleurineの新作にBrad Mehldauが4曲で客演。

"Brazilian Dream" Fleurine (Sunnyside)

_20180708Brad Mehldauは奥方Fleurineのアルバムにも結構ゲスト参加しているが,今回の新作も同様である。アルバム・リリース後のライブにもゲストで出ているから,随分奥さん思いだといつも感心してしまう。私が彼女のアルバムをこのブログで取り上げたのはもう10年以上前の"San Francisco"になる(記事はこちら)が,彼女のアルバムはそれ以来ってことになるのかもしれない。"San Francisco"でも感じられたブラジリアン・フレイヴァーが今回は更に強まって,タイトル通り完全にブラジル的なアルバムになっている。

今回,Brad Mehldauはrhodesとピアノで4曲に客演しているが,あくまでもバッキング中心の,楚々としたプレイぶりである。このアルバムにはクリポタことChris Potterも3曲で客演しているが,4曲目"Ausencia de Paixao(Passion)"において、テナー・ソロで場をかっさらうのとはちょっと違う(笑)。もちろん,Mehldauも6曲目"My King"や"Sparkling Gemstone"等でソロは聞かせるが,出しゃばった感じはない。だからと言って,決してクリポタが出しゃばっているという訳ではないので念のため。あくまでもおぉっ,クリポタ!と思わせるだけである(笑)。

今回はバックのミュージシャンも"Boys from Brazil"としてブラジル人で固めているが,彼らはFleurineのWebサイトの情報によれば,NYCをベースにして活躍している人たちのようである。そういう人たちのサウンドをバックにしたFleurineは,オランダを出自とするにしては,いい感じのブラジル感を醸し出している。私はブラジル音楽もそこそこ好きだが,そんな私でも非常に心地よく聞くことができるアルバムになっている。彼女はギターでここに収められたオリジナルを作曲したらしいが,かなりブラジルにはまっているってことなのだろう。

もちろん,リアルなブラジル音楽を聞くなら,私はMaria Ritaのアルバムを選ぶだろうが,それでもBrad Mehldauやクリポタの客演もあり,これは相応に評価してもよいと感じている。聞いてもらえばわかるが,ちゃんとブラジル音楽になっているのである。そうした点も加味して,甘いの承知で星★★★★☆としてしまおう。尚,レコーディング日の記載はあるが,年が書かれていない。多分2017年だろうということで下記のような記述にしておく。

Recorded on May 30 & 31, 2017(?)

Personnel: Fleurine(vo, g), Ian Faquini(g), Eduardo Belo(b), Vitor Goncalves(p, accor, rhodes),Rogerio Boccato(perc), Chico Pinheiro(g), Brad Mehldau(p, rhodes), Chris Potter(ts, ss, a-fl) with Strings and Horns

2018年7月 9日 (月)

Ry Cooderの新譜:どこまで渋いのか

"The Prodigal Son" Ry Cooder(Fantasy)

_20180707_2Ry Cooder,6年ぶりのスタジオ作だそうである。そうは言っても,2013年には素晴らしかったライブ盤をリリースしている(記事はこちら)から,そんなに久しぶり感はない。だが,今回はRy Cooderのオリジナル(息子との共作も含む)は3曲で,そのほかは古い曲が揃っている。それも教会で歌われていたような曲が多いようである。だからと言って,極端にスピリチュアルな感じはしないし,ゴスペル,ゴスペルした感じではない。

基本的にはRy Cooder自身と息子のJoachim Cooderのドラムスで演奏は構成され,そこに若干のゲストが加わるというかたちになっているが,親子でこういうアルバムを作ってしまうってのは,実に羨ましい感じがする。

Ry Cooderという人は,昔から様々な音楽的なフレイヴァーに深い理解を示すとともに,古い曲に光を当てる活動をしていたので,今回のアルバムに関しても,そうした彼の志向は何も変わっていない。そして,昔から渋いなぁと思わせる部分もあったが,それも変わらない。71歳になった現在,更に声は渋みが増し,味わいが更に深まったってところか。

まぁ,現代において,Ry Cooderのやっている音楽は,幅広いオーディエンスに訴求する訳ではなかろうが,こういう音楽を好む私のようなリスナーにとっては,まさに聞いているだけで極楽みたいに感じるものである。そして,Ry Cooderのスライドの腕には全く衰えはない。もちろん,Derek Trucksのような切れ味はないが,Ry Cooderならではの音色は健在である。やっぱりいいねぇ。

ということで,実はこのアルバムも買うか買うまいか,あるいはストリーミングでよしとするか悩んでいたが,これは買って正解と言えるアルバムであった。星★★★★☆。この渋さを理解するのに最適な映像がYouTubeにアップされているので,貼り付けておこう。

尚,ライナーにも書かれているが,長きに渡って,Ry Cooderのアルバムに参加し,ここにも参加しているTerry Evansは今年1月に亡くなっており,これが彼にとっての遺作となるだろう。R.I.P.

Personnel: Ry Cooder(vo, g, mandolin, banjo, b, key), Joachim Cooder(ds, perc), Robert Francis(b), Aubrey Haynie(vln), Terry Evans(vo), Arnold McCuller(vo), Bobby King(vo) 

2018年7月 8日 (日)

Antonio Sanchezはビッグバンド化しても素晴らしいが,私としてはコンボの方がいいと思う。

"Channels of Energy" Antonio Sanchez(CAM Jazz)

_20180707リリースされてから待てど暮らせどちっともデリバリーしないAmazonからHMVに発注替えをして,今頃になってこのアルバムが到着した。本作がリリースされたのは3月下旬だったはずだから,約3カ月半遅れとなってしまって,なんだか新譜として紹介するのもしまりがない(爆)。

それはさておきである。Antonio Sanchezのアルバムはどれも出来がよく,興奮度も高い音楽だと思っている。これまでのアルバムについても,私はかなり高く評価してきたつもりである。そんな彼の音楽はビッグバンド化しても,優れたものになるだろうという予測は簡単につく。本作もアレンジと指揮は名手,Vince Mendozaであるから,作品としての成功は約束されたようなものである。本作も聞いてみれば,モダン・ビッグバンドのアルバムとしてはよく出来たものという評価は可能だと思う。WDR Big Bandの面々のソロも立派なものである。

それはそうなんだが,私がビッグバンドのアルバムをあまり聞かないこともあるだろうが,私はここで演奏されている曲については,コンボで演奏したものの方が興奮度が高かったように思えるのである。私がAntonio Sanchezに求めるものは,演奏の熱量ということもあるが,それがビッグバンド化によって,やや薄まった感覚がある。これはあくまでも好みの問題ではあるが,私としてはこのアルバムに満足はしながら,Antonio Sanchezの本質はこれではないだろうと思ってしまった。

ただ,実によくアレンジされていて,2枚組で80分を越えるヴォリュームも一気に聞かせる力は十分にあるし,Antonio Sanchezのプッシュも効いている。結局どのような編成でも叩けるというドラマーとしての多才ぶりは十分に捉えられているが,でもやっぱり,私はコンボでの熱い演奏の方が好み。ということなので,完全に個人的な好みの問題ではあるが,星★★★★ってところに落ち着かせよう(苦笑)。

Recorded on December 5-10, 2016

Personnel: Antonio Sanchez(ds), Vince Mendoza(arr, cond), Johan Horfen(as), Karolina Strassmayer(as), Oliver Peters(ts), Paul Heller(ts), Jens Neufang(bs), Wim Both(tp), Rob Bruynen(tp), Andy Haderer(tp), Ruud Bruels(tp), John Marshall(tp), Lorenzo Ludeman(tp), Martin Reutner(tp), Jan Schneider(tp), Ludwig Nuss(tb), Shannon Barnett(tb), Andy Hunter(tb), Mattis Cederberg(b-tb), Paul Shigihara(g), John Goldsby(b), Omer Klein(p, el-p)

2018年7月 7日 (土)

Utopiaボックスがようやく到着。

“The Road to Utopia: Complete Recordings 1974-82” Todd Rundgren/Utopia (Friday Music)

C98715bcc57b47108e608eac94ad2483Amazonで早々と予約していながら,入手困難でキャンセルされたボックス・セットをHMVで再注文したものが,発送のタイミングもあって,ようやくデリバリーされた。

まだディスクは聞いていないものの,正直言って,私は彼らの音楽にこれまで数多く接してきた訳ではない。実のところ,これまで購入したことがあるのは”Ra“だけなのだが,そのオープニング・トラックのカッコよさはまさに強烈なレベルだったと思っている。

ということで,”Ra“を含め,彼らの音楽に改めて触れることを楽しみにしている私である。

それにしても,最近のAmazonは実にけしからん。このボックスのキャンセルもそうだが,Antonio Sanchezの新譜もいつまで経っても入荷せず,結局こちらからキャンセルするなど,デリバリーが全くなっていない。CDを売るよりも,デジタル・シフトを消費者に押し付けているのではないかと思いたくもなる今日この頃。マーケットプレースの業者の方が良心的だと言っておこう。

2018年7月 2日 (月)

話題沸騰。John Coltraneの未発表音源の発掘。

"Both Directions at Once: The Lost Album" John Contrane(Impulse)

_20180701John ColtraneはPrestige,Atlantic,Impulseとレーベルを渡り歩いたが,巨人としての地位はやはりImpulseレーベルにおける諸作によって確立したと言っても過言ではないだろう。そんなImpulseレーベルにおける完全未発表音源が発見されたとすれば,それはまさに大きなニュースである。このアルバムのリリース情報が世の中に出回った時に,私はたまたまNHKの「ニュースウォッチ9」を見ていたのだが,まさかNHKのニュースでこのアルバムに関する情報が報じられるとは予想していなかった。裏を返せば,それだけのビッグ・ニュースということになるが,世間一般の人がそのニュースを聞いてどう思ったのかってのは極めて興味深い。

それはさておきである。6/29に全世界同時リリースというのが,このアルバムに対する世の中の期待値,あるいはその位置づけを裏付けているようにも思える。そしてこのアルバムを最初に聞いたのはテナーの聖地,新橋のBar D2においてであったが,家に帰って冷静に聞いた後の感触を書いてみたい。

ライナーにはJohn Coltraneの息子,Ravi Coltraneが"To my ears, it was a kicking-the-tires kind of session."と述べているという記述がある。それはそうなのかもしれないし,ちゃんとアルバムとしてのリリースを意図したものだったのかは,マスター・テープが失われているので,何とも言えない。だが,このレコーディングにプロデューサーであるBob Thieleがいたかどうかは全くの謎であり,このアルバムの位置づけは実はよくわからない。Raviが言うように,リハーサル的なものだった可能性も,リリースを意識した録音だった可能性の両方が存在する。

そして,音源を聞いてみると,誰がどう聞いてもColtraneのサウンドが聞こえてくるわけだが,"Nature Boy"はさておき,オペレッタ「メリー・ウィドウ」から"Vilia"のような曲をやっているのが,ほかの曲から浮いた感じがしたのは事実である。この辺りをどう評価するかは各々の聞き手に委ねられるということだろうが,この曲,”Live at Birdland"のCDのボートラとしても,本作と同日の録音が収録されているようだ。私個人としてはちょっとイメージが違うってところだろうか。

だが,全編を通して聞けば,Coltraneクァルテットは快調そのものである。本作はJohnny Hartmanとのアルバムの前日だが,以前はこの頃,あるいは"Ballads"吹き込みの頃のColtraneが,マウスピースの不調に悩まされていたというような情報があったが,それはガセネタだったのではないかと思いたくなるような吹きっぷりなのである。実際にColtraneがインタビューでそう語ったという話もあるのだが,演奏を聞いている限り,そんなことはないように思える。マウスピースの件が事実だとしても,この頃には既に復調していたということなのかもしれない。

いずれにしても,世に出ただけで感謝すべきアルバムであり,多少の瑕疵には目をつぶって,歴史的価値を重視して星★★★★★としてしまおう。久しぶりに,このクァルテットのスタジオ音源を集成したボックスが聞きたくなった。

Recorded on March 6, 1963

Personnel: John Coltrane(ts, ss), McCoy Tyner(p), Jimmy Garrison(b), Elvin Jones(ds)

2018年6月27日 (水)

Dave Liebmanの"Fire":これはあらゆる意味で厳しい...。

"Fire" Dave Liebman(Jazzline)

_20180623_3Dave Liebmanは多作の人である。リーダー作はもちろん,神出鬼没にほかの人のアルバムにもゲスト出演しているから,一体何枚ぐらいアルバムがあるのやら...って感じである。日本で真っ当に情報を抑えているのは,新橋のテナーの聖地,Bar D2のマスターぐらいではないか。

そんなLiebmanがKenny Werner,Dave Holland,Jack DeJohnetteというリズム・セクションを伴ってアルバムをリリースすると知れば,購入意欲が高まる好き者は多いはずである。ピアノをRichie Beirachに代えれば,名作"First Visit"と同じメンツであり,あの世界の再現を期待してしまう。しかしである。ここで展開されるのはほぼフリー・インプロヴィゼーションと言うべきもの。別にフリーが悪いという訳ではない。私はLiebmanがEvan Parkerと対峙した"Relevance"は全面的に支持している(記事はこちら)し,フリー・ジャズにも抵抗はない。しかし,このアルバムには,このメンツならではと言うべき激烈感を感じることができなかったのは残念である。

火花が散って,それが燃え上がり,それが大火となり,地獄を見て,最後は灰燼に帰すという曲目を見れば,タイトル通り「火」をテーマにしたコンセプト・アルバムなのかと思いたくなるが,その燃え上がり方がどうにも私には中途半端に聞こえるのだ。燃え上がるなら,もっと徹底的に燃え上がって欲しいと思ってしまう。Liebmanにはそれができるはずだと思うがゆえに,ちょっとこのアルバムは私にとっては期待はずれだったと言わざるをえない。

演奏そのものの質は高いとは思うが,タイトル・トラック冒頭におけるピアノなんて,調律してんのか?と思いたくなるのも事実であり,もっと「ぐわ~っ」とならないと,どうにも私としては居心地が悪いと言うか,全面的に楽しめないのである。

私としてはDave Liebmanははまだまだ"Relevance"で聞かせたパワーが発揮できると思うので,これではやはりイマイチと言わざるをえないというのが実態。Liebmanのソロは聞きどころがあるのに免じて星★★★とするが,何度もプレイバックするような音楽だとは全く思っていない。音楽そのものも厳しいが,聞き続けるのも厳しい。

Recorded in April, 2016

Personnel: Dave Liebman(ts, ss, wooden-fl, c-fl), Kenny Werner(p), Dave Holland(b), Jack DeJohnette(ds)

2018年6月10日 (日)

Fred Hersch & Anat Cohen: Herschの新作ピアノ・トリオ盤よりHerschらしいと言っては言い過ぎか。

"Live in Healdsburg" Anat Cohen & Fred Hersch(Anzic)

_201806092月にFred Herschが来日した時に先行してCotton Clubでも売っていたCDであるが,実は私はその時には買っていない。その後,ストリーミングで聞いて,これはかなりいいと思い始め,先日,珍しくもショップに行ったときに購入してきたものである。

Fred Herschが先日リリースしたトリオによるライブ・アルバム"Live in Europe"はレベルは高いのだが,Fred Herschらしい美感よりも,アブfストラクトで,トリオの緊密感を強く打ち出しているようにも感じられていて,もろ手を挙げて評価できなかったというのが正直なところである(記事はこちら)。しかし,こちらはいきなりHerschの美しいオリジナル"A Lark"で幕を開け,それこそこちらが期待する音が溢れ出してくる。

今回のデュオ・メイトであるAnat CohenとはNYCのJazz Standardにおけるデュオ・シリーズでも共演していたはずなので,Fred Herschにとっては馴染みの人だろうが,兄貴のAvishai Cohen(ラッパの方)とは音楽的には違う感じで,彼女のクラリネットはFred Herschのピアノに寄り添う抒情性をたたえたものと思える。

このアルバムが録音されたHealdsburgという町は,アメリカ西海岸有数のワイン・カントリーであるソノマ・カウンティにあるが,そういう町でこういう音楽を聞ける喜びってのは格別だろうなぁなんて思ってしまう。このアルバムもその町で開催されたHealdsburg Jazz Festvialの実況盤であるが,このフェス。毎年開催していて,今年も6/1~10の期間で行われている。Herschは今年はトリオで出演したようだから,このフェスとは結構縁が深いのかもしれない。場所柄行きたくなるところでもあるけどね(笑)。

それはさておき,これはFred Herschのリリカルな感じが聞けて,正直なところ,トリオ盤よりこっちの方が好きだなぁ。"The Peacocks"のイントロでは,最近のHerschらしいアブストラクトな感覚も若干顔を出すが,それはあくまでもイントロだけである。2月にこのアルバムをCotton Clubで購入しなかったのは,クラとピアノのデュオってどうなのよって思っていたところもあるのだが,それは完全に私が間違っていましたと言わざるをえまい。

とにかく,これは私が想定して以上によい。編成が編成だけに,演奏そのものにメリハリがつけにくいというところもあるかもしれないが,そんなことを気にせずに楽しめるアルバム。星★★★★☆。

Recorded Live at Raven Performing Arts Theater on June 11, 2016

Personnel: Anat Cohen(cl), Fred Hersch(p)

2018年6月 9日 (土)

コレクターはつらいよ(21):Brad Mehldauの国内盤新譜にボートラが...。

_20180518既にこのブログでもBrad Mehldauによるトリオによる新作"Seymour Reads the Constitution!"については記事をアップした(記事はこちら)。いつもながらのBrad Mehldauのハイ・レベルな演奏に嬉しくなったことは言うまでもない。

だが,先日,ブログのお知り合いのmonakaさんの本作に関する記事を拝見していて,本作の国内盤にはボーナス・トラックが入っていることがわかってしまった。それを知った以上,Brad Mehldau音源のコンプリートを目指す私としては,国内盤も買わざるを得なくなった(爆)。前にも書いたと思うが,コンプリートと言っても,既発音源を収めたコンピレーション盤まで集める気はなく,あくまでも,ほかのアルバムには未収録の曲が入っていれば買うというスタンスである。しかし,1曲のためにもアルバムを買う必要があるのは決して楽なことではないのだが...。まぁ,好きでやっているのだから仕方がない。

それでもって,今回の国内盤である。私はBrad Mehldauの新譜が出れば,一刻も早く聞きたいと思っているクチなので,リリース・タイミングが遅れがちな国内盤に手を出すことはまれなのだ。最初から分かっていれば,ストリーミングで我慢して,輸入盤購入を見送っていたかもしれないが,まぁいいや。

今回,ボーナス・トラックとして収録されているのはBrad Mehldauのオリジナル”Middle Game"である。本編の演奏同様,Brad Mehldauのオリジナルらしい響きを持つ変拍子の曲である。これを別にボツにしなくてもいいではないかというような曲であり,演奏であるが,国内盤向けとは言え,陽の目を見たことはファンとしては喜ぶべきである。私としては余計な出費となったが,もう結構行くところまで行ってしまっているので,もはややめるというオプションはないのである。

2018年5月23日 (水)

Fred Hersch Trioの新作はまたもライブ盤。今度はベルギーでの演奏。

"Live in Europe" Fred Hersch Trio(Palmetto)

_20180520ここのところ,順調なペースで新作をリリースするFred Hersch。当ブログで彼の"Open Letter"を取り上げたのが昨年の9月である。その後,Anat Cohenとのデュオ作をリリースしているが,早くも届けられたトリオによるライブ盤である。

トリオによる前作もVanguardでのライブだったが,こうしたライブ盤のリリースの連発は,Keith Jarrettのトリオとかぶる部分を感じる。これがたまたまなのか,意図的なのかはわからない。しかし,前作ではオリジナルを前半に固めるという構成が取られていたが,今回もそうした構成に近い。1曲目こそThelonious Monkの"We See"で幕を開けるが,その後のオリジナル3曲は,アブストラクトな感覚を与えて,特に新曲である2曲目"Snape Maltings"と3曲目"Scuttlers"は,演奏後の拍手からすると,やや聴衆に戸惑いを与えているようにさえ聞こえる。"Whirl"で演じられた"Skipping"も出だしはアブストラクトではあるが,徐々にメロディアスに転じていき,そこからのJohn Taylor,Sonny Rollins,Tom Piazzaに捧げたオリジナル3曲で,一般的に期待されるHersch Trioの演奏になっていくという感じだろうか。そして,ピークをCotton ClubのライブでもやったWayne Shorter作の2曲,"Miyako"~"Black Nile"のメドレーに持って行った感覚が強い。

このトリオによるコンビネーションも高度化することにより,前半に演じられる曲でも,演奏の密度は高いが,ちょっとテンションが高過ぎるかなぁって気がしないでもない。そうした中で,John Taylorに捧げられた"Bristol Fog"で美的な部分が顔を出し始めると,こっちも安心してしまう。またRollinsに捧げた"Newklypso"(Rollinsのニックネームの"Newk"とカリプソをかけたものだろう)で,それっぽいスウィング感を提示しつつ,前曲とこの曲でベース,ドラムスの活躍の場面を演出するところに,Fred Herschの気配りのようなものさえ感じる。

そして,しっとりとしながら,そこはかとなくブルージーな"Big Easy"に続いて演じられる"Miyako"~"Black Nile"のメドレーは,やはり彼らはこうでなくてはならんと思わせるに十分である。これこそ私はこのアルバムの白眉だと思うし,コットンクラブで演じられた同じメドレーに思いを馳せてしまったのであった。あのライブもやはりこのメドレーは演奏の白眉であったことは記事にも書いた通り(記事はこちら)であるし,その感覚が蘇ってきた私である。

最後はHerschのソロで"Blue Monk"で締めるが,テーマをなかなか提示しないで弾くのはなかなか珍しいと思う。だがどうだろう。正直に言ってしまうと,トリオとしてのここ2作の路線は,彼らの音楽的成熟度を示してはいるが,2012年の傑作"Alive at the Village Vanguard"には及ばないのではないかと感じてしまう。よく出来たアルバムであり,凡百のアルバムとは比較にならないクォリティは確実に確保しているのは事実なのだが,ファンは強欲であり,より優れた演奏(あるいはHerschへの期待を体現する演奏)を求めてしまうのである。

これが現在進行形のFred Herschだとすれば,次はどういう路線に行くのだろうか?Keith Jarrettはソロ・ライブの前半はそれこそ現代音楽的アプローチとも言える演奏を行うことが多いが,後半ではよりメロディアスに弾いているように思うが,Herschもそうした感じを狙っているのかと思えないこともない。いずれにしても,Herschの演奏はいつも同様高く評価したいのだが,今回は前作の"For No One"のような曲がないこともあり,敢えて星★★★★としよう。

Recorded Live at Recorded Flagery Studio 4, Brussel on November 24, 2017

Personnel: Fred Hersch(p), John Hébert(b), Eric McPherson(ds)

2018年5月19日 (土)

Brad Mehldauの新譜,"Seymour Reads the Constitution!"を早速聞く。

"Seymour Reads the Constitution!" Brad Mehldau Trio (Nonesuch)

_201805183月にソロ・アルバム,"After Bach"をリリースしたばかりのBrad Mehldauであるが,極めて短いインターバルで今度はトリオによる新作をリリースである。このトリオによる前作"Blues And Ballads"が出たのが約2年前,更にChris Thileとのアルバムをリリースして,ここところのBrad Mehldauの高頻度のアルバム・リリースは,ファンとしては本当に嬉しくなってしまう。

そして,今回の新作がデリバリーされるということで,仕事もさっさと終えて,帰宅してこのアルバムを聞いた。冒頭の"Spiral"は既にネット上で公開されていたが,このやや内省的でありながら,Brad Mehldauの個性を十分に表出させたこのトラックを聞いて,期待値が高まっていた私である。

このアルバムは,Brad Mehldauのオリジナルが3曲,そこにスタンダード,ジャズ・オリジナル(それも,Elmoo HopeとSam Riversってのが凄い),ポップ・チューンから成る5曲を加えた全8曲で構成されている。8曲中6曲が8分を越え,最短の"Almost Like Being in Love"でも5分41秒という比較的尺の長い曲を揃えている。本作を聞いていて,面白いと思ったのはBrad Mehldauのオリジナルとそれ以外で,響きがかなり違うということだろうか。オリジナルでは両手奏法も使いながらの内省的演奏であるが,その他の曲では,ややコンベンショナルではありながら,曲の個性を活かした演奏となっており,全く飽きさせないのは立派である。

逆に言うと,Mehdlauのオリジナルとそれ以外では,だいぶ受ける感じが違うので,その辺りに違和感を覚えるリスナーがいても不思議ではない。私はミュージカル"Brigadon"からの"Almost Like Being in Love"に強い印象を受けるだけでなく,冒頭の2曲と全然違うが,これはこれでいいねぇと感心させられたし,今回も選曲のセンスは健在だと思わせるに十分であった。オーソドックスなかたちで演じられるElmo Hopeの"De-Dah"なんて,ちょいと浮いて聞こえてしまうようにさえ感じる。それでもソロの後半になるとちゃんとMehldau的になっていくのだが(笑)。

だが,トリオの緊密度は極めて高く,特にLarry Grenadierのベースはかなり自由な感じで弾いているにもかかわらず,ちゃんとトリオとしての響きになっているのがわかって面白い。まぁ,私が近年のMehldauトリオの最高作と思っている"Where Do You Start"には及ばないとは言え,今回も質の無茶苦茶高い演奏を堪能させてもらった。星★★★★☆。それにしても,Sam Riversの"Beatrice"はいい曲である。

Personnel: Brad Mehdau(p), Larry Grenadier(b), Jeff Ballard(ds)

より以前の記事一覧

Amazon検索

2017年おすすめ作