最近のトラックバック

2017年2月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28        

2015年おすすめ作

2015年おすすめ作(本)

無料ブログはココログ

カテゴリー「新譜」の記事

2017年2月21日 (火)

Tinariwenの新譜が出た。どれを聞いても同じって話もあるが,このグルーブには抗えない。

"Elwan" Tinariwen(Wedge/Anti)

_20170219_2早いもので,私がこのブログでTinariwenの記事を初めて書いてから,7年半近くの時間が過ぎてしまった。その間にアルバムが出るたびに,「砂漠のブルーズ」と称される彼らが生み出すグルーブが聞きたくて,必ず購入しているのだから,私の音楽的な嗜好とフィットしているってことになるだろう。

昨年リリースされたライブ盤から約1年という短いインターバルでリリースされた新作は,相変わらずのTinariwenである。主題にも書いた通り,どのアルバムを聞いても,同じに聞こえるって気がしないでもないが,このグルーブには抗いがたい魅力がある。もちろん,アルバムの収録曲には結構メリハリがついているので,全然退屈するような音楽ではないし,歌詞を読んでいると,結構プロテスト・ソングだなぁなんて思わせるものもある。しかし,言葉は別にして,私を惹きつけるのはやはり彼らの生み出すゆったりしたグルーブなのである。

彼らのサウンドは相変わらず呪術的とも思えるが,こういう音楽に魅力を感じる欧米のミュージシャンが多いことは,Tinariwenのアルバムにゲスト参加するミュージシャンが結構多いということからも明らかだが,ある意味では普遍的な魅力を有していることの裏返しと捉えることもできると思う。彼らが参加した曲はやや異なる雰囲気を作り出す瞬間もあるが,それがTinarwenの音楽ときっちりブレンドしている。例えば,"Talyat"に聞かれるアコースティック・ギターは,ゲストの影響もあってかむしろ欧米的な響きを持っている。また,"Nannuflay"にはMark Laneganがヴォーカルで加わるが,彼の歌は完全にアメリカンだが,Tinariwenのグルーブに乗った英語詞の響きも面白かった。そうしたヴァリエーションも含めて,何度聞いてもやはり魅力的な響きである。ということで,星★★★★☆。

尚,アルバムには11曲しかクレジットされていないが,隠しトラックが2曲あるので,最後までちゃんと聞きましょう(笑)。

Personnel: Ibrahim Ag Alhabib (g, vo), Abdallah Ag Alhousseyni (g, vo), Alhassane Ag Touhami (vo, g, clap), Iyad Moussa Ben Abderahmane(g), Elaga Ag Hamid (g, vo, clap), Eyadou Ag Leche (b, g, vo, clap), Said Ag Ayad(perc, vo, clap), Iyad Moussa Ben Abderahmane(g), Mina Wallet Oumar(you-you), Amar Chawoui(perc), Kurt Vile(g), Matt Sweeney(g), Alain Johannes(g), Mark Lanegan(vo) and Others

2017年2月19日 (日)

ようやく到着:Chris ThileとBrad MehldauデュオのLP。

既にこのブログにも書いた通り,Chris ThileとBrad Mehldauの新作デュオ・アルバムのLPには,Fiona Appleの"Fast as You Can"がボーナス・トラックとして収録されているため,Brad Mehldauのコンプリートを目指す私としては,どうしてもそれを手に入れなければならない。

ということで,Nonesuchのサイトで発注して,現地から発送の通知が来たのが,1/20であった。なかなか現物が届かなくてイライラさせられたが,それがようやく約3週間を要してデリバリーされた。その曲については,まだ聞いていないが,そのうちゆっくり聞かせてもらうようにしよう。

海外からの発送についてはこういうこともあるのは承知しているが,前回,Mehldauのソロ・ライブのLPボックスを仕入れた時は,確か正式発売日よりも前に着いたことを考えると,何だか違いが大き過ぎである(笑)。まぁ,でもちゃんとゲットできたんだからそれはそれでいいのだが。

ということで,次は国内盤CDにしか収録されない"Dark Turn of Mind"のために,国内盤CDのデリバリーを待つ私である。バカにつける薬はないって感じだが,せっかくほぼコンプリートなのだから,頑張るしかないのである。

ついでに行ってしまうと,ジャズ界のおんどれ君ことOndřej Štveráčekの"Sketches"を本人に頼んで,郵送してもらっているところだが,現物が到着する前に,新宿のDUで買えるなんて告知が。まぁ,いいんだけど。

2017年2月13日 (月)

ユニークな作りの児玉桃によるECM第2作

"Point and Line" 児玉桃(ECM New Series)

_20170212_3_2日本のピアニスト,児玉桃がECMからアルバム"La Vallée Des Cloches"をリリースした時には,その年のベスト盤の1枚に選出するほど,優れたアルバムだと思った(記事はこちら)。そのレパートリーが非常に私の好みだと思ったが,ピアノの響きに身を委ねたいと思ったことは今でも記憶に新しい。

その児玉桃がECMから第2作となるアルバムをリリースすると知った以上,これは買わないわけにはいかないし,聞かないわけにもいかない(きっぱり)。ということで,デリバリーされたものを早速聞いたのだが,これが非常にユニークな作りではあるが,前作同様に優れたピアノ作品になっていて,嬉しくなってしまった。

今回の作品の特徴はドビュッシーと日本の現代音楽作曲家,細川俊夫の"Etude"が交互に出てくるというのが,まずユニークなところである。まぁ,これがバッハと細川俊夫が交互に出てくれば,私も頭を抱えたかもしれないが,近代作曲家と言ってよいドビュッシーと,細川俊夫ならば,それほど違和感はない。むしろ,ここで想定されているのは,二人の作曲家の作品を並列させながら,それを一つの組曲のように成立させようという試みのように思える。

ライナーに児玉桃も書いているように,ドビュッシーの「エチュード」はその番号にかかわらず,単体でも,組み合わせで弾いてもいいという自由度の高いものであり,このアルバムでもそうした考え方に基づいて配置されている。それらに挟み込まれるのが細川俊夫の「エチュード」ということになる。作曲されたタイミングにはほぼ100年近い違いがある二人の作曲家の作品を相互に連動させて,一枚のアルバムを構成させるというのが本作の狙いとすることは,児玉桃とECMの総帥,Manfred Eicherの合意のもとに行われており,それがいかにもECMらしいと思わせるところであり,そして見事な成果になっていると思う。

私が現代音楽のピアノ作品が好きだということもあるが,今回のこの作品もドビュッシーのエチュードという,ドビュッシー最晩年の作品と,児玉桃自身が初演者となっている曲を含む,細川俊夫作品の意表を突いた組み合わせによって生み出される美しい響きに改めて身を委ねたくなった私である。これはもはや私のツボにはまった音楽である。星★★★★★。

Recorded in January 2016

Personnel:児玉桃(p)

2017年2月12日 (日)

Enrico Pieranunziの新作はクラシックをモチーフにしたトリオ・アルバム。

"Ménage à Trois" Enrico Pieranunzi(Bonsai)

_20170205_2Enrico Pieranunziはここ暫くCam Jazzレーベルから作品をリリースしていたが,最近は専属契約をやめたらしく,色々なレーベルからタイプの異なる作品をリリースしている。多作の人なので,なかなか全部追いかけるということはできないが,今回はドラムスがAndre Ceccarelli(チェカ爺)ということもあり購入となったが, 購入してからクラシック作品,それもフランス近現代の作曲家の作品を中心とした作品と知って,ちょっと不安が高まった私である。因みに,取り上げているのはサティ,プーランク,ミヨーの曲に加え,必ずしもフランスではないところも含んでいるが,ドビュッシー,バッハ,シューマン,フォーレ,そしてリスト等の曲に因んだPieranunziのオリジナルとなっている。

だからと言って,Pieranunziのことなので,ストレートにクラシカルな演奏をするというわけではなく,それらの曲を素材,もしくはモチーフとしてジャズに仕立てているので,ジャズ・ファンとしてもそんなに抵抗がなく聞けるはずである。そもそも冒頭のPieranuziオリジナルである"Mr. Gollywogg"からして,快調な4ビートで飛ばすので,へぇ~となってしまったが,それよりびっくりしてしまったのが,サティの「ジムノペディ」をボッサっぽくやっていることである。収録曲においては,確かにテーマを弾くとクラシック的に響くこともあるが,それは意図的にやっていると思われる。例えば,最終盤の3曲に顕著であるが,Pieranunziのオリジナルにもかかわらず,テーマは極めてクラシカルな響きなのである。それとアドリブ・ラインがいい塩梅のバランスで聞けるので,これはなかなか面白い取り組みだと思えた。

しかし,これはこれでかなり満足できる作品だとしても,これを以てEnrico Pieranunziの本質と言うつもりはない。Pieraninziにはもっといい作品があるし,これが最高だと言うつもりもないが,これもPieranunziの芸風の一つとして捉えればいいのではないかと思う。ということで,星★★★★。

Recorded on November 12-15, 2015

Personnel: Enrico Pieranunzi(p), Diego Imbert (b), André Ceccarelli(ds)

2017年2月10日 (金)

今年も出たJeremy Peltの新作。

"Make Noise!" Jeremy Pelt(High Note)

_20170205律儀なまでに年1作のペースで新作をリリース(それも毎年1月後半と大体決まっている)するJeremy Peltが,今年も新作をリリースした。前作はワンホーンのアコースティック路線であったが,本作もパーカッションは加わるものの,ワンホーンは継続している。しかし,メンツは全面入れ替えということで,なぜこうなるのかはよくわからないし,今回のメンツがレギュラーとなるのかもよくわからない。しかし,ネットで検索していると,昨年,Jeremy Pelt New Quintetとしてライブをやったメンツと同じなので,これからはこのクインテットで演奏していくということなのかもしれない。

以前,Jeremy Peltが率いていたクインテットに比べるとやや小ぶりかなぁって気はするが,それでもピアノのVictor GouldはDonald HarrisonやWallace Roneyとの共演歴があり,ドラムスのJonathan BarberはJ.D. Allenとのレコーディングやら,昨年はNY在住ピアニスト,早間美紀と来日もしているようである。パーカッションのJacquelene Acevedoという人はよくわからんが,ベースのVicente ArcherはDanny Grissettのアルバム等でお馴染みである。

そうしたメンツによる音楽は,ストレート・アヘッドで,なかなかスリルもあっていい感じの仕上がりになっている。まぁ,パーカッションが入ることを好む人と,好まない人には分かれるだろうが,ここではアクセントとしてはそんなに悪くないという印象を与える。

曲としてはほぼJeremy Peltのオリジナルで占められており,例外は前々作で鋭いピアノを聞かせたSimona Premazziの1曲と,"Make Noise!"と"Evolution"のイントロとなっているAcevedoとBarberのソロである。全体的には,曲によって緩急をつけたものとなっているが,私としてはどちらかというと,スピーディに鋭い切れを示す曲の方が好みではあるが,バラッド表現も悪くはない。やはり継続的にフォローするに値するミュージシャンだとは思うが,このバンドの成果は次の1作を聞いてからでもいいような気がする。ということで,星★★★★。それにしても,なんのこっちゃ?だった前作のジャケと今回のジャケのテイストの違いが大き過ぎるよなぁ。

尚,このバンドのBlue Note Milanoでの演奏の模様があったので,映像を貼り付けておこう。

Recorded on September 9, 2016

Personnel: Jeremy Pelt(tp), Victor Gould(p), Vicente Archer(b), Jonathan Barber(ds), Jacquelene Acevedo(perc)

2017年1月31日 (火)

John Legendの新作がようやく到着。やっぱりいいんだけどねぇ...。

"Darkness And Light" John Legend(Columbia)

John_legend発注しても全然入荷しないでイライラさせられたJohn Legendの新作であるが,よくよく見ると,より安い値段で在庫ありになっているではないか?一体,Amazonは何を考えているのかと思ってしまったが,当然のことながら発注替えで,それがやっとデリバリーされた。本来なら昨年の新譜として取り上げるべきものだったが,まぁ仕方あるまい。

私はデビュー以来,一貫してJohn Legendを贔屓にしてきたと言えるし,ほとんどがっかりさせられたことがない。前作"Love in the Future"がリリースされたのが2013年であるから3年以上待たされたことになるが,その間にはOscarも受賞した,映画"Selma"におけるCommonとやった"Glory"があった(Oscarの授賞式でのパフォーマンスは本当に素晴らしかった)ので,時間の経過はそんなに感じない。そんな彼の新作であるが,冒頭のほぼLarry Goldingsのピアノとオルガンだけをバックに歌う"I Know Better"からつかみはOKである。これはしびれる。

その後も,バラッドからアッパーまで様々な音楽が本作には収められているが,全体としては悪くないが,私にとっては,彼のメジャー第1~2作,あるいは前作に感じたような強烈なシンパシーまでは至らなかったというのが正直なところである。ローファイな響きの中からソウル的なサウンドが浮き立つが,せっかくタイトル・トラックにはAlabama ShakesのBrittany Howardを迎えたにしては,これならAlabama Shakesで歌っている彼女の方がいいなぁと思ってしまうのが残念である。もちろん,ソウルフルには歌っているのだが,ちょっと力み過ぎのようにも感じる。

私がこのアルバムを聞いていて,結局,私はこの人のバラッド表現が好きなのだろうなぁと再認識したのだが,だから私は彼の"Evolver"を失敗作と思っているのではないかと感じるわけだ。そして,このアルバムの前に聞いたのが"Glory"だったのが影響しているかもしれない。あの曲の強烈さはやはり印象深いものがあったから,どうしても"Glory"と比較してしまうのである。

ということで,このアルバムも決して悪くないとは思うのだが,最高とまでは言い切れないところがあるのが正直なところである。それでも新作が出れば次も多分買うと思うが...。ということで,星★★★★。それにしても,バックにいいメンツを揃えているところがこの人の人気と実力の裏返しと言えるだろうなぁ。

Personnel: John Legend(vo, p), Blake Mills(g, b,key, synth, perc, vo), Larry Goldings(p, org, key), Zac Rae(p, org), Pino Palladino(b), Wendy Melvoin(b), Sebastian Steinberg(b), Chris "Daddy" Dave(ds), John Ryan(ds, synth, b, perc), Chance the Rapper(vo), Brittany Howard(vo), Miguel Premental(vo), Jess Wolffe(vo), Holly Laessig(vo), Jessy Wilson(vo), Z Berg(vo), Perfume Genious(vo), Moses Sumney(vo), Kamasi Washington(ts), C.J. Camerieri(tp), Rob Moose(strings)

2017年1月28日 (土)

Chris ThileとBrad Mehldauのデュオ作をダウンロード音源で聞く。

"Chris Thile & Brad Mehldau"(Nonesuch)

Chris_thile_brad_mehldau_2注目の新作がリリースされた。Brad Mehldauのコンプリートを目指す私は,ボーナス・トラック入りのLPを米国から取り寄せ中であるが,現物が届く前に,まずはMP3音源で本作を聞いた。事前に,"Scarlet Town"と"Independence Day"の音源はNonesuchから届いていたが,ようやく全編を通して聞けることとなった。

Brad Mehldauはこれまでもライブの場で,Joe Henryと演奏したり,John Mayerと共演したりと越境タイプの演奏はしてきたし,アルバムで見ても,Willie NelsonやVinicius Cantuaria等との共演もある。Punch Brothersのマンドリン奏者であるChris Thileとの共演も,そうした越境型活動の一つであるが,彼らが初めて共演したのは2011年に遡り,更にデュオのライブ・ツアーを行ったのが2014年の頃のはずである。私はブート音源や,YouTube映像などで彼らの演奏はチェックはしてきたが,ついにアルバムのリリースとなった。マンドリンとピアノのデュオ作っていうのは記憶にないが,何曲かでヴォーカルも入り,これはジャズ的な響きというよりも,SSW・フォーク系の響きが強い。レパートリーも彼らのオリジナルに加えて,Gillian Welch,Eliott Smith,Joni Mitchell,そしてBob Dylan等をやっていることもそうした印象を与える要因だと思う。

結論から言えば,これは非常に味わい深いアルバムで,音楽的な観点でも非常によくできたアルバムだと思える。特に私がJoni Mitchellのファンだということもあり,彼女の"Marcie"の演奏には思わず耳をそば立てた。強烈な緊張感や美学を感じさせるというよりも,ルーツ・ミュージックやアメリカ音楽の素晴らしさを再認識させてくれる音楽であり,気軽に聞くこともできれば,Brad Mehldauのピアノに注目して聞くこともできるアルバムとなっている。私はもともとアメリカン・ロック,特に渋いシンガー・ソングライターの音楽も好きな人間なので,こういうアルバムを聞いていると,その手の音楽が改めて聞きたくなってしまうというところもあった。

だからと言って,本作が過去を振り返ることを目的としたアルバムではない。ジャンルを超越して,音楽を作り出すことの素晴らしさをつくづく感じさせる作品となった。私はBrad Mehldauには甘いのは承知だが,こういう味わい深さを感じさせてくれたことを評価しなければならないと思うので,星★★★★★としてしまおう。映像等でもわかっていたが,Brad Mehldauがコーラスを付けているのは,まぁご愛敬ってことで(笑)。

尚,3月にリリース予定の国内盤CDにもボートラが付くので,CDは私はそちらを購入予定。コレクターは大変だ(苦笑)。

Recorded on December 30, 2015, and January 2–3, 2016

Personnel: Chris Thile(mandolin, vo), Brad Mehldau(p, vo)

2017年1月25日 (水)

相変わらずのMr.中音域(笑):Colin Vallon。

"Danse" Colin Vallon (ECM)

_20170122Collin VallonのECM第3作である。私は前作"Le Vent"を評して「アルバムを通じて,ある意味環境音楽のような音楽が流れ続ける。感覚的にはフランス映画のBGMのようだと言ってもよいかもしれないぐらいの感じ」と書いて,星★★☆というECMに甘い私にしては辛い評価をした。更に第1作"Rruga"に関しては「中音域が中心で,かなり落ち着いた響きを醸し出している」と書いているが,その印象は本作でも全く変わらない。結局こういう音楽の人なのである。

本作においても,音使いは中音域が中心であり,"Tsunami"に顕著なように,左手から繰り出されるリズムはミニマル的に響く。前作には辛い評価をした私だが,今回もそう高くは評価できないとしても,前作よりは印象はよかった。だが,ほかのECMのピアニスト,例えば先日当ブログに取り上げたBenedikt Jahnelと比べても,個性,美的感覚,タッチともに,私に響いてこない。

もちろん,ECMらしいピアノの響きは相応に美しいと思うが,起伏の乏しさは否定できない事実である。ECMのピアニストには清冽でクールな感覚を持つ人は多いが,この人の低い温度感は飛び抜けている気がしてならない。

結局のところ,私にとってはTigran Hamasyanとの相性の悪さ同様のものをCollin Vallonには感じてしまう。私にとってはTigran Hamasyanは何度聞いてもいいと思えない代表みたいな人(苦笑)だが,Collin VallonはTigran Hamasyanほどではないとしても,私の感情に訴求してこないのだ。アブストラクトな感覚の曲調の演奏をしても,ECMのほかのピアニストなら気にならない(むしろ喜ぶ)のだが,Collin Vallonの場合は,この人の演奏の気に入らない点が浮かんできて仕方ないのである。ミニマル・ミュージックに耐性のある私(耐性どころか積極的に聞いているって話も...)ではあるが,この人の音楽を面白いと思えないのは本当に相性としか言いようがない。前作,本作を聞いて,次も買おうというモチベーションが高まらないのは残念なことである。星★★★。結局は趣味じゃないんだってことにしておくが,ECMから出たとしても次作の購入は多分ないだろうなぁ。

Recorded in February, 2016

Personnel: Colin Vallon(p), Patrice Moret(b), Julian Sartorius(ds)

2017年1月22日 (日)

Polliniの新譜を買ったのはいつ以来か?

"Chopin: Late Works" Marizio Pollini (Deutsche Grammophon)

_20170121久しぶりのクラシック・ネタである。私がMaurizio Polliniの新譜を最後に買ったのは「平均律」のはずなので,Polliniの新譜を買うのは7~8年ぶりってことになる。その間にもPolliniは新譜を出していて,ショパンに関しても「24の前奏曲集」があったし,そのほかにもいろいろ出ていたはずだが,昔の私なら,間違いなく買っていたであろうそうしたディスクを購入しなくなってしまった。まぁ,Polliniも巨匠なので,もちろん私を失望させるような演奏はしないだろうが,今やPolliniも75歳となり,昔感じれられたような一種のシャープさとは異なる感覚になってくるのは当然のことと思う。そもそもクラシックに限らず,CDの購入枚数が激減している状況であるし,このアルバムとてApple Musicで聞けてしまうのだから,何もCDで買う必要はなかったが,ついついポチってしまった(苦笑)。

そして,ようやくデリバリーされたCDを聞いてみると,非常に残響の効いた録音のように聞こえる。ミュンヘンのヘラクレスザールにおける録音で,スタジオ録音というよりも,コンサート・ホールで聞いているような気分になってしまう。長年,Polliniはヘラクレスザールでの録音を行っているから,録音環境ではなく,成熟度が増したと考えるのがいいのだろうが,いずれにしても非常に美しい演奏であることは間違いない。とにかく,ここには聞いていて,何じゃこれは思わせる要素は何もない。もちろん,それはいいことなわけだが,極めて真っ当な解釈及び演奏は,今までの名ピアニストの演奏でも聞いていてもいいのではないかと思えるのも事実であり,敢えて今,Polliniの演奏でこれらを聞かなくても,Samson Françoisで聞いていてもいいような気がしてしまうのが,私の方の変化ってことなのかもしれない。

逆にこれを聞いて,改めてSamson Françoisのショパン・レコーディングを聞き直したくなったってのが私の天邪鬼なところである。Polliniの演奏は本当に王道というか,こう弾きましょうって感じの演奏とも言えそうな演奏である。星★★★★。

Recorded in 2015 & 2016

Personnel: Marizio Pollini(p)

2017年1月10日 (火)

今年最初のECMレーベルはJohn Abercrombieの新作。

"Up and Coming" John Abercrombie Quartet (ECM)

_20170107昨年も素晴らしい作品を連発して,音楽好きを唸らせたECMレーベルであるが,私の今年の最初のECMのディスクはJohn Abercrombieの新作である。前作"39 Steps"発表後,今回も参加のMarc Coplandを連れて来日したのも,もう2年前以上の話になるのかと思うと,時の経つのは早いと思わざるをえない。ということはアルバムも約2年半ぶりのリリースということになるが,久しぶりって感じはしない。メンツは今回もMarc Copland入りの前作から不動のクァルテット(特にGress~Baronとの付き合いは更に長いが...)だが,これが何とも穏やかなアルバムとなっている。

まぁ,ジョンアバは録音当時71歳だし,一番若いJoey Baronだって還暦を過ぎているクァルテットなので,音楽が落ち着いたものとなることは当然と言えば当然なのかもしれないが,それにしても,静謐で美しい音楽となっているのが,いかにもECMらしい。ある意味枯れた味わいとでも言うべきものだが,いかにもジャズ的に響く瞬間もあり,なかなかいいアルバムだと思える。

基本的にはジョンアバとCoplandのオリジナルで占められた本作において,唯一の例外として彼らが"Nardis"をやっているところに私としては耳が行ってしまう。CoplandはRalph Townerとのデュオ作"Songs without End"で"Nardis"をやっているが,当然,このクァルテットにとってもフィットするチョイスとなるだろうと思えたからである。結果としては予想通りと言ってもよいかもしれないが,今まで聞いたどの"Nardis"よりも穏やかであっさりとした印象を与えるのが,やはりこのアルバムのイメージを物語っているように思える。まぁ,ある意味,カヴァー・アートのSheila Rechtshafferのパステル画は,実にこの音楽をよく表しているようにも思える。この人のパステル画ってのは,結構後期ターナーもしくは印象派の絵画をややダークにした感じもする(換言すれば,いわゆるパステルっぽくない)のだが,そういう観点で聞くとまた面白いねぇ。

いずれにしても,全編に渡ってそんな感じなので,刺激には乏しいとも言えるのだが,こういう音楽を必要とする場合もあると思えるし,穏やかに新年を過ごすには適したアルバムだったということで,甘いとは思いつつ,星★★★★☆としてしまおう。いずれにしても,リーダーのジョンアバには甚だ失礼ながら,特筆すべきはMarc Coplandのピアノのタッチの美しさとフレージングだと思ってしまうのが,ファンの弱みである(苦笑)。

Recorded in April & May, 2016

Personnel: John Abercrombie(g), Marc Copland(p), Drew Gress(b), Joey Baron(ds)

より以前の記事一覧

Amazon検索

2016年おすすめ作

2016年おすすめ作(本)