カテゴリー「ジャズ」の記事

2007年12月31日 (月)

私も今年のベスト盤を...

いよいよ大晦日となった。世の中ではいろいろな方が今年のベスト盤をブログ等でも挙げておられるので,私もあやかって今年のベスト盤を考えてみたい。そもそも私が今年何枚のCDを買ったのかもはっきりしないのだが,純粋な新譜はあまり多くなかったような気もするし,そうした私が今年のベスト盤を語る資格があるのかというと疑問ではある。しかし,いろいろなジャンルの音楽を聞いてきて,私のヘビー・ローテーションとなったアルバムをいくつか挙げておきたい。必ずしもこのブログで紹介していないものや発掘ものも含まれているが,まぁそれはご勘弁願いたい。

別格:Michael Brecker "Pilgrimage"

ジャズ:Antonio Sanchez "Migration",Chris Potter Underground "Follow the Red Line: Live at the Village Vanguard",Dave Douglas Keystone "Moonshine"

ロック/フォーク/SSW:Neil Young "Live at Massey Hall 1971",Joe Henry "Civilians"

ソウル/R&B:Mavis Staples "We'll Never Turn Back", Chaka Khan "Funk This",Aretha Franklin "Rare & Unreleased Recordings from the Golden Reign of Queen of Soul"

ブラジル:Eumir Deodato "Ao Vivo No Rio"

そして私にとっての今年のMVPはFred Hersch以外はありえない。新作"Night & the Music"もよかったが,何よりもカザルス・ホールでの彼のライブが私の心を鷲掴みにしたのである。あまりにその演奏がよかったものであるから,今年の後半最も聞いたのは彼のアルバム群ということになってしまった。また,今年最も嬉しかったのはJoni Mitchellへのシーンへの復帰。アルバム"Shine"は悪くはないが,Wayne Shorterの不在は痛く,私が求めるレベルには達していなかったのは残念。しかし,彼女が戻ってきてくれたのは何よりも嬉しかった。また,見られると思っていなかったEgberto Gismontiのライブは今年起こった奇跡の一つ。

(オマケ)映画:「ボーンアルティメイタム」(劇場,飛行機で見たものの中で,一番面白かった。)

(オマケ)書籍:吉田秀一 「悪人」(結局この本が新刊では一番面白かったような...)

ということで,今年になって始めたこのブログであるが,いろいろな方とお知り合いになる機会も与えてくれたし,それなりに私としては満足している。本年は都合359本の記事で打ち止めである。ほぼ毎日よく続いたものだが,来年以降もできる限り同様のペースにて続けていきたいと思う。

それでは皆さん,よいお年をお迎えください。また,来年もご愛顧のほどをよろしくお願い致します。

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2007年12月30日 (日)

コレクターはつらいよ(3)

Jazz_for_a_hot "Jazz for a Hot Cold Sunny Cloudy, Day Night on a Train Plane or Automobile, Alone or with Others..." (Warner Brothers)

おそらく世界で最も詳しいBrad MehldauのディスコグラフィをおさえているドイツのJens Linge氏に教えてもらったアルバムである。これは2000年に出たプロモ・アルバムで,何と言ってもこのジャケ,このタイトルであるから,よっぽどのことがない限り行きつくことのなさそうなものである。

しかし,このアルバムの4曲目にはBrad Mehldau Trioによる"Non Album Track"を堂々と謳った"In the Wee Small Hours of the Morning"が収録されている。同曲はライブなどで演奏していたから,アルバムにも入っているものと思っていたが,正式なレコーディングはここに収められたものだけのようである。詳しいクレジットはないので何とも言えないが,メンツはベースがLarry Grenadier,ドラムスがJorge Rossyで間違いないだろう。

幸いこのアルバムは世の中のEコマース・サイトで入手が容易なので助かったが,こういうのが出てくると,本当にコレクターは辛い。

実はLinge氏のサイトでもう一枚注目のアルバムを発見しているのだが,これがなかなかの曲者で,フランス版オークション・サイトのようなところでブツは大量に出ているのだが,サイトは全部フランス語(仏→英の翻訳ツールを使っても,理解するのに時間が掛かって大変である)だし,発送もフランス国内のみばかりなのである。うーん,これは困った。それについては機会を改めて報告したいと思う。

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2007年12月26日 (水)

Dave Douglas:年末になって現れた素晴らしい作品

Dave_douglas "Moonshine" Dave Douglas Keystone (Greenleaf Music)

年末近くになって,突如発売されたDave Douglas Keystoneの新譜である。Dave Douglasはかなり多作の人と言ってよいが,この新作はかなりカッコいい作品となっている。

ライナーによると,この作品はFatty ArbuckleとBuster Keatonの無声コメディ映画にインスパイアされたものらしいが,作品そのものはヘビーなビートの利いた作品であり,何がそうしたインスピレーションの源になっているのかははっきり言って私にはよくわからない世界である。しかし,これはかなりイケテいる。

メンツもなかなか優秀な人材を集めているが,その中で絶妙なアクセントになっているのがDJ Oliveによるターンテーブルとラップトップである。それにAdam BenjaminのRhodesが素晴らしいバックエンドのサウンドを作り出し,Brad JonesとGene Lakeの強力なビートに乗って,DouglasとStricklandが吹きまくる(特にDouglasの吹きっぷりが突出している)。こういう路線のサウンドはWallace Roneyもやっていたように思えるが,出来は本作の方がはるかによい。最近の注目株であるMarcus StricklandはJeff "Tain" Watts盤でのストレートな乗りとは一線を画したサウンドであるが,なんでも器用にこなすものであると感心してしまう。

それにしてもである。このサウンドはハイブラウなエレクトリック・サウンド好きには結構たまらんものがある。今年最後の最後になって,現れた素晴らしいアルバム。星★★★★☆。このバンド,今後真剣に追いかけざるをえない。

Recorded Live at the Mermaid Arts Centre, Bray Jazz Festival, Ireland, on May 4, 2007

Personnel: Dave Douglas(tp), Marcus Strickland(reeds), Adam Benjamin(el-p), Brad Jones(b), Gene Lake(ds), DJ Olive(turntable, laptop)

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2007年12月25日 (火)

追悼,Oscar Peterson

Peterson_2 12/23,Oscar Petersonが82歳で亡くなったそうだ。近年は演奏もキャンセルされることが多くなり,その健康が危ぶまれていたが,ついに不帰の人となってしまった。

私はPetersonのファンというわけではないし,CDも大して持っているわけではない。しかし,Verve,MPS,Pablo,Telarc等のレーベルを通じて発表された彼の作品の数々はスイングするとはこういうことだということを教えてくれたのではないかと思う。

Petersonを追悼するにはしんみりするより,彼の粋でスインギーなピアノが楽しめる゛We Get Requests゛こそが相応しい。これでこのブログでも取り上げたVery Tall Band(Peterson,Milt Jackson,Ray Brown:「Peterson/Jackson/Brownで悪いはずがない」)の全員が亡くなってしまったことになる。何とも複雑な気分のクリスマスである。

謹んでご冥福を祈りたい。合掌。

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2007年12月24日 (月)

Brian Bladeの初リーダー作はとんでもない傑作である

Brian_blade_2 "Fellowship" Brian Blade(Blue Note)

現在のジャズ・シーンを牽引するドラマーの一人であるBrian Bladeの初リーダー作であるが,これが何とも素晴らしい出来である。

Blue Noteレーベルでありながら,プロデューサーがU2やBob Dylan等でおなじみのDaniel Lanoisというのは異色ながら,全くコンベンショナルではないモダン・ジャズとしてこれほどの作品に仕上げてくるところがさすがLanoisと言わざるをえない。このアルバムが発売された1998年当時,ドラマーがリーダーのアルバムの中でも私は屈指のものと評価していたが,その感覚は今でも変わらない。初発から間もなく10年になるが,音が全く古びていないのも大したものである。

このアルバムで驚かされるのはBrian Bladeの作曲能力である。全8曲中7曲がBladeのオリジナルであるがこれらが大変魅力的である。ドラマーとして優秀なのはわかっていても,ここまでの才能があるとは当時は思わなかっただけに余計に驚かされた記憶があるが,ルーツ・ミュージック的な要素も示しながらクールな雰囲気の中にも展開される熱い演奏がまた隙がない。

編成としてはある意味変わっている。サックス2管に2ギター(うち1本はペダル・スティールである)にピアノ・トリオという7人編成(一部でLanoisがギターで加わりオクテットとなる)はかなりユニークであるが,Bladeの曲を演奏するにはこの編成でなければならないだろうなぁと思わせるのが先に言ったLanoisの手腕と言えると思う。とにかくこのアンビエンスというか雰囲気は見事としか言いようがない。その中で各人が展開するソロは素晴らしいし,それをバックで統率するBladeのリーダーシップも立派。私はこのアルバムにははっきり言って文句のつけようがないというのが正直なところである。メンバーも必ずしも超有名どころではないが,彼らの実力はこれまた大したものである。

というように様々な要素を織り込んで考えれば,私はこのアルバムには喜んで星★★★★★を謹呈するものである。尚,彼らの第2作にはJoni Mitchellがゲスト・ボーカルで参加しているが,これもBladeがJoniのバックを務めたゆえのことである。やはり優れた人脈は交錯するということである。

Personnel: Brian Blade(ds), Jon Cowherd(p, el-p), Christopher Thomas(b), Melvin Butler(ts, ss), Myron Walden(as), Jeff Parker(g), Dave Easley(pedal steel), Daniel Lanois(g)

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2007年12月22日 (土)

ブルース・フィーリング溢れるRay Bryantのソロ・ライブ

Bryant "Alone at Montreux" Ray Bryant(Atlantic)

何ともブルージーなアルバムである。どこから聞いてもブルース・フィーリングが溢れ出しており,ジャズとブルースの関係性を今一度再認識させるようなアルバムと言っては大袈裟か。

このアルバムはRay Bryantが単身,モントルー・ジャズ・フェスティバルに乗り込んで演奏した際の実況盤であるが,このときの演奏が実はOscar Petersonの「トラ」だったというのだから,人生何があるかわからない。このときの演奏で,Ray Bryantに対する認知度や評価が一気に高まったのは彼にとってもある意味千載一遇のチャンスをものにしたということであるが,Petersonの代役にBryantを立てたプロデューサーの慧眼も評価せねばならないとしても,何よりもこのときの演奏がそれぐらいよいということである。

Bryantはとりわけテクニシャンというわけ(左手なんてシンプルなものである)ではないので,演奏の雰囲気で聞かせる部分の方が強く感じられるが,モントルーの聴衆にはそのフィーリングが受けたか,大した盛り上がり方である。一方で,Bryantの最初のMCからは相当の緊張感が伝わってくる(声が震えているように思えるのは私だけだろうか)のが微笑ましいが,演奏にはそんな緊張感など微塵も感じられない。演奏が進んで,MCも2回目になるとだいぶ緊張がほぐれているように聞こえるから不思議なものである。

もちろん,これがホールでのライブ向けの演奏なのかという疑問もあるし,こういう演奏は一回限りあるいはごくたまにやるからよいという話もある。私なら,こういう演奏はもっと小さなあるいは下世話な雰囲気の場所で聞きたいと思うが,そうした話を抜きにしてもこのアルバムには一定の評価を与えるべきであろう。名盤とか何とかというものではないが,たまに酒でも飲みながら聞くにはよいアルバムである。但し,"Greensleeves"はどう聞いても蛇足だと思うが...。星★★★★。

それにしても,Bryantがその後ソロ・ピアノにこだわらなかったのは正解だと思う。

Recorded Live at Montreux Jazz Festival in 1972

Personnel: Ray Bryant(p)

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2007年12月21日 (金)

Phil Woods:何事もやり過ぎはいけません

Philwoodsatthefrankfurt356813991 "At the Frankfurt Jazz Festival" Phil Woods and the European Jazz Machine(Atlantic)

一言で言えば騒がしい。よく言えば疾走感に溢れている。このアルバムはそのどちらで評価するかによって,好き嫌いが大きく分かれるように思える。

私はPhil Woodsに関しては,ロックのアルバムで歌心を爆発させたソロやオブリガートの印象が非常に強く,彼名義のアルバムなんて殆んど持っていないというのが実情である。このアルバムは私が保有する数少ないWoodsのアルバムの1枚だが,以前はこのアルバムの演奏はもっと気に入っていたように思うのだが,久々にこのアルバムを聞いてみて,残念ながら私には騒がしさばかりが耳についた。

これは私が年を取ったせいもあるだろうが,これははっきり言ってやり過ぎだ。そりゃここまでやれば聴衆が「のる」のは当たり前である。だってこれはある意味「アジ演説(死語だな)」のようなものである。これを「煽情的ジャズ」と呼ばずして何と言おうか。しかし,それもやり過ぎればはっきり言って飽きられる。私も30代までだったらこの演奏で大いに燃えたかもしれないが,今や中年真っ只中の私にとってはちょっと厳しい。騒がしいのがWoodsだけならまだしも,バンドが全員やかましいのでは私にはやはり厳しい。

これだけ騒がしく思える原因として,Gordon Beckのエレピのミキシング・レベルが異様に高いことも影響しているように思えるが,それにしてもである。

やはり今の私には歌心を発揮しているWoodsの方がよい。ということで,現在の心境としては演奏は決して悪くはないが星★★☆。

Recorded Live at the Franfurt Jazz Festival

Personnel: Phil Woods(as), Gordon Beck(p, el-p), Henri Texier(b), Daniel Humair(ds)

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2007年12月19日 (水)

MurrayとWeston:ヘビー級デュオ

Healers "The Healers゛ David Murray and Randy Weston(Black Saint)

David MurrayとRandy Westonのデュオなんて聞いただけで胸焼けがしてきそうな気がしないでもないが,タイトルが"The Healer"なんてものだけに,比較的おとなしめにやってはいるものの,もちろんヒーリング・ミュージックではない(当たり前じゃっ!)。

ご両人とも,いつも通りと言えばいつも通りの演奏である。しかし,1987年頃のDavid Murrayを聞いていたリスナーには,おそらくこのMurrayでは欲求不満になってしまったのではないだろうか。それぐらいにここでのMurrayは抑制がきいているので,フリーキーなトーンはあまり出てこないし,奔馬の如く暴れるということもない。これはおそらく,大ベテラン,Randy Weston翁に合わせたというところもあるだろうが,そのあたりがこのアルバムへの評価の分かれ目ではないだろうか。

私のようにMurrayに入れ込んだことのないリスナーにとっては,Murrayがこういう感じで吹いてくれるなら,もっと彼のアルバムを聞いてもよかったかなと思ってしまうぐらいである。私としてはアルバムの最後を飾るWeston作"Blue Moses"が特に気に入っている。このレコードを聞いたのも本当に久しぶりだったが,これでWestonのピアノがよりビビッドに録音されていれば,もっと良かっただろうと思う。星★★★☆。

いずれにしても,このアルバム,Black Saintらしいと言えば(フリー度控えめながら)まさしくその通りであるが,これほどアバンギャルドな「黒さ」にこだわったレコード・レーベルがイタリアに存在したということ自体が今となっては信じがたい。

Recorded on Septenber 26, 1987

Personnel: David Murray(ts, b-cl), Randy Weston(p)

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2007年12月18日 (火)

冬の熱い熱いジャズ

Livesupreme "A Live Supreme" 森山威男(Syrinx Works)

これは森山威男が2003年に行ったコンサート・シリーズの中から,最もヘビーなメンツで,ヘビーな曲に挑んだ演奏を収めた実況盤である。なんてったって「至上の愛」全曲である。それだけでなく,"I Want to Talk About You"に"Impressions"ときては,聞く前からお腹いっぱいと言う気もしないわけではないが,森山とGeorge Garzoneのコンビとあっては,私のような好き者は聞かざるをえない。

やっている曲が曲だけに,当然,私としてもColtraneの世界にどれだけ近づけるかということを考えてしまうのは当然である。ここではGarzoneとAbraham Burtonという2管編成なのだが,特にGarzoneがトレーン的に迫ってくる。それをバックで煽る森山のシャープなドラミング。これはジャズ・ファンなら結構燃えるアルバムと言えると思うし,私の期待通りの出来である。

もちろん,ライブ・レコーディングということもあり,アンサンブルに破綻が生じそうな瞬間もあるし,演奏に荒さも感じられる。しかし,それを上回る演奏の熱さゆえに,大概のことは許してしまおう。この暑苦しさを許容できるかどうかが,このアルバムを聞く上での分かれ目である。頻繁に聞きたいと思うアルバムではないが,たまにこういう演奏は聞きたくなるはずである。

但し,但しである。そうした熱い演奏を聞きたいと思ったとき,このアルバムを手に取るかと言えば若干疑問がないわけでもない。私ならおそらくColtraneとDolphyのVillage Vanguardのコンプリート・ライブ盤(Dolphyファンこそ必聴のColtraneのVanguardボックス)に行ってしまうだろうと思うからである。それでもやはり一聴の価値のあるアルバムだと思うし,少なくともGarzoneと森山のファンには必聴である。星★★★★。

それにしても,どうせなら"A Love Supreme"の呪文を唱えて欲しかったなぁ。ストイックなファンからは「冒涜だ」と怒られるかもしれないが...。

Recorded Live on September 20, 2003

Personnel: 森山威男(ds),George Garzone(ts,ss),Abraham Burton(ts, as),田中信正(p),井上陽介(b)

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2007年12月17日 (月)

どこへ行ったか:今度はGary Thomasだ

Thomas "Seventh Quadrant゛ Gary Thomas(Enja)

以前,「どこへ行ったかChico Freeman」と書いたことがあるが,Gary Thomasも一体どこへ行ってしまったのかと思わざるをえないミュージシャンである。一時はジャズの未来を支えるかのようない割れ方をされたThomasは本当にどこへ行ってしまったのだろうか?21世紀に入って,これほど名前を聞かなくなってしまったミュージシャンもあまりいない。Milesとも一時共演したのにねぇ。

Gary Thomasがその魅力を最も放っていたのはJMT/Bambooレーベル在籍中であることは衆目の一致するところであろうが,このアルバムはそれ以前の1987年にEnjaレーベルに吹き込んだアルバムである。このアルバム,なかなか魅力的なメンバーを揃えて,ここでもThomasらしいハイブラウな演奏を展開している。特に驚かされるのがRenee Rosnessのかなり強烈なピアノによるバッキングである。Gary Thomasと言えば,大西順子をバックに来日したこともあったと記憶しているが,まるで大西順子のようなタッチでReneeがピアノを弾いているのには驚かされる。また,Thomasと絶妙なユニゾンを聞かせるPaul Bollenbackもいいプレイだと思うが,この人も最近は名前をあまり聞かないが,もっと注目されてよいギタリストではなかろうか(ただし,タイトル曲でのギター・シンセサイザーはあまりに無節操で閉口するが...)。リズムのAnthony CoxとJeff Wattsのコンビがこれまた素晴らしい(ただしWattsのドラムスが録音のせいか音が細いのは勘弁して欲しい)。

ということで,これなら大変素晴らしいアルバムになりそうなものだが,やや全体として一本調子というか,やや力まかせに走ったという感があるのは,プレイヤーの若さゆえということになるかもしれない。本作録音時,Thomasはまだ25歳であるから,それもまた仕方のないところである。その年齢で成熟していたら,むしろその方が怖い。

いずれにしても全編,Thomas君,テナー(及びフルート:結構この音色はいけている)を吹きまくっている。3曲目で現れるThomasとWattsのデュオの瞬間を聞けば,かなりのジャズ・ファンは耳をそばだてるだろうと思うのだが,Thomasのフレージングが何となく軽く響いて今いちなのが残念。Bollenbackとのユニゾンだと結構よく聞こえるのだが...。このあたりがThomasの限界だったということかもしれない。ということで星★★★。

そう言えばThomasも参加したJack DeJohnetteのSpecial Editionなんてバンドもありましたっけね。懐かしいなぁ。

Recorded on April 3 and 4, 1987

Personnel: Gary Thomas(ts, fl), Paul Bollenback(g, g-synth), Renee Rosness(p), Anthony Cox(b), Jeff Watts(ds)

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2007年12月16日 (日)

「懐かしの」と言うべき佐藤允彦のフュージョン・グループ

Msb "MSB゛ Masahiko Sato & Medical Sugar Bank(Open Skye)

佐藤允彦は多彩なミュージシャンである。とんがったフリー・ジャズをやるかと思えば,ストレートなピアノ・トリオもやれば,この作品に聞かれるようなフュージョンさえもこなす。大した才能である。

その佐藤允彦が1980年にOpen Skyeレーベルから発表したMedical Sugar Bank名義でのアルバムである。今となっては懐かしい。典型的なフュージョン・アルバムと言うこともできるが,これがメンバーゆえということもあろうが,タイトによくまとまったアルバムになっている。制作から四半世紀以上経過しているので,やや古臭い感覚がないわけでもない(特にキーボード,シンセの音色)。しかし,ある意味リーダーの佐藤よりも目立っていると言えるテナー,ソプラノの清水靖晃(テナーではまるでMichael Breckerである)の好演や,山木秀夫の鋭いドラミングもあって,結構今でも楽しめる。

これで佐藤がシンセではなく,Fender Rhodesぐらいで止めておいてくれれば,このアルバムの魅力はより長期に渡って,かつ普遍的になったのではないかと思うが,当時としては先進的な機材を使っていたはずだから,これに文句を言っては酷かもしれない。しかし,こういう演奏を聞いてしまうと,Fender Rhodesという楽器の秀でた個性(あるいは普遍性)を痛感させられてしまうのである。

また,これでもう少し曲がよければ,このユニット,あるいはこのアルバムはより高い評価を得られたのではないだろうか。つまりは記憶に残るメロディがあまりないのである。演奏の質が高い(一部ではWeather Report的に響く)だけにこれは勿体ないように思える。ということで,星★★★☆ぐらいだろうか。尚,このアルバムで特筆すべきは録音のよさ。今聞いても相当レベルが高いように思う。

このアルバムは長きに渡って廃盤のままだが,CDで再発される可能性も限りなく低いのだろうなぁ。しかし,とんでもなくマニアックなアルバムがCD(それも紙ジャケ)で再発される日本であるから,何が起こっても驚かないが。

Recorded in November / December, 1979 and Jamuary, 1980

Personnel: 佐藤允彦(p,key),清水靖晃(ts,ss),高水健司(b),山木秀夫(ds),穴井忠臣(perc)

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2007年12月15日 (土)

ホリデイ・シーズンにはジャズを聞こう(その2)

Warner_jazz_christmas "Warner Bros. Jazz Christmas Party゛ (Warner Brothers)

前回紹介したMarian McPartlandのアルバムがしっとりと楽しむべきクリスマス・アルバムだとすれば,こちらはタイトル通り,よりパーティ・ライクに楽しむべきアルバムである。

これは1997年当時のWarner Brothersレーベル所属のアーチストが会して制作されたクリスマス・アルバムであり,さすがメジャーの力と言うべき豪華な作りになっている。私はBrad Mehldauコンプリート・コレクターを目指す身であるから,4曲もMehdauが参加しているこのアルバムは無条件で買いであったわけであが,このアルバムもMarian盤同様,Mehldau云々抜きでも十分楽しめるアルバムである。

全体を通して言えば,ストレートな4ビートもあれば,フュージョン的なものもあり,バラエティに富むという表現がぴったりである。何と言っても冒頭がJoshua Redmanだと思ったら,次にはAl Jarreauという具合である。演奏としては驚くようなものはあまりないが,珍しいと言えば,Larry GoldingsのハモンドとMehldauのピアノのデュオで演じられる"Silent Night"とBela Fleckのバンジョーがまるでシタールのように響くと思ったらシタール・バンジョーという楽器(どんなんやっ?)を弾く゛White Chirstmas゛ぐらいだろうか。

いずれにしても安心して聞いていられるコンピレーションである。まぁそうは言っても,フュージョン系を聞きたいならGRPのクリスマス・アルバム3枚をを聞いていればいいような気もするので,私にとってはやはりMehldauを聞くために存在するのだろうなぁ。

Personnel: Joshua Redman(ts), Mark Turner(ts),  Boney James(ts), Kirk Whalum(ts), Brad Mehldau(p), Bob James(p), Lary Goldings(org), Bela Fleck(banjo, sitar-banjo), Nick Moroch(g),  Peter Bernstein(g), Larry Grenadier(b), James Genus(b), Billy Kilson(ds), Jorge Rossy(ds), Jeff Ballard(ds), Bashiri Johnson(perc), Al Jarreau(vo), Michael Franks(vo), Gabriela Anders(vo), Kevin Mahogany(vo), and Others

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2007年12月14日 (金)

ホリデイ・シーズンにはジャズを聞こう

Npr_jazz_christmas  "An NPR Jazz Christmas with Marian McPartland and Friends" (NPR)

世の中はクリスマス・シーズンである。クリスチャンでない人がクリスマスがどうこう言うのには違和感があるので,ここはやはりホリデイ・シーズンと言いたいところであるが,アメリカの公共ラジオの長寿番組の"Piano Jazz゛で堂々と"Christmas"と言っているので,まぁ堅いことは言うまい。このアルバムはその番組から生れたものだが,これは結構知っている人が少ないと思われるので紹介しておきたい。

実は私はクリスマス・アルバムを結構保有している(鞄にはロザリオを忍ばせているという驚くべき事実もあるが...)方だと思うが,なぜこのアルバムを保有しているかと言うと,1曲だけながらBrad Mehldauが参加しているからにほかならない。ここでのMehldauはMcPartlandとのピアノ・デュオで"O Tannenbaum゛を弾いているが,わずか2分45秒のこの曲のためにこのCDを買うのには結構苦労したのも懐かしい。

Npr_2 しかし,このアルバム,実はそれだけではなく,結構なメンツ(地味といえば地味だが...)が参加しており,Mehldau抜きで聞いても楽しめるのである。詳しくは下記のパーソネルを見て頂ければよいが,ほとんどの曲がピアノ・ソロで演奏されており,ほのぼのとした感覚で静かにクリスマスを迎えるには結構お薦めのアルバムと言えよう。尚,上に掲示したジャケットが1997年発売時のオリジナルであるが,現在は→のようにジャケを変えて発売されている。ご参考までに現在のジャケもアップしておくが,実はこの作品には続編が2作あるので,ご関心のある方はNPRの商品販売用のWebサイト(http://shop.npr.org/product/show/28941)をご覧あれ。

Personnel: Marian McPartland(p), Keith Ingham(p), Brad Mehldau(p), George Shearing(p), Jon Weber(p),. Bob James(p), Frank Kimbrough(p), Marcia Bell(p, vo), John Eaton(p), Michael Weiss(p), Renee Rosness(p), Darrell Grant(p), Freddie Cole(p, vo), Phil Mackowitz(p), Jon Faddis(tp), Peter Washington(b), Nnenna Freelon(vo), Joe Locke(vib), Roseanna Vitro(vo), J.J. Johnson(tb)

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2007年12月13日 (木)

久し振りにジャズの記事を...

Lunar_eclypse ゛Lunar Eclypse゛ Gil Evans Orchestra (New Tone)

暫く海外出張やら何やらで,ジャズを聞く機会があまりなかったので,ジャズ関連の記事も若干ではあるがご無沙汰(と言っても1週間ぐらいだが)となってしまった。これからは元のペースに戻していきたいが,忘年会シーズンでもあり,さてどうなることやら...。

さて,本盤は結構怪しげなジャケのアルバムであるが,よくよく見るとイタリアのTime Warnerグループの会社が製造,販売元となっているので,れっきとした正規盤のようである(但し,市場ではあまり見かけない)。

これはGilのオーケストラが1981年に欧州楽旅をした際の4ヵ所(イタリア,デンマーク,フィンランド,フランス)での演奏の記録であるが,このアルバムはオケの実力というよりも強烈なソロイストの演奏を聞くためのアルバムと言っても過言ではない。とりわけ2曲目でのSteve Grossmanのテナー・ソロと3曲目の゛Hannibal゛Marvin Petersonでのブルース・シャウトが強烈である。Grossmanはこれはまじで強烈である。私の中でのGrossmanのイメージを崩壊させるに足るこれぞ一生一度の激演と言ってはやや大袈裟か。一方のMarvin Petersonに関しては,何もこのバンドでここまでやらなくてもいいのではないかと突っ込みも入れたくなるが,ライブの場ならこれは楽しかろう。いずれにしてもジャズ好きはこの2曲で間違いなく相好を崩すのである。

ちなみにこのアルバム,Gilのオケとしては珍しくもOmar Hakimがドラムスを叩いているとか,Lucio Hopperとかいうあまり聞いたことがないベーシストが参加しているとか,あるいは4曲目だけだがBuster Williamsがこのバンドでアコースティック・ベースを弾いている等々,ほかにも珍しい部分はあるのだが,上述の2曲が強烈過ぎて,ほかがかすんでしまっている。結局のところ,上述の2曲を聞いて燃えるのをよしとすべきアルバムである。星★★★★。(でもやっぱりGil Evansと言えば,私は"Public Theater゛と゛Priestess゛の方が好きなことには変わりはないが。)

尚,David Sanbornファンには残念ながら,彼の参加は4曲目だけなので念のため。それにしても,ブログ・シンジケートのすずっくさんのところでもGrossmanネタで盛り上がっているし,世間は狭いですなぁ。

Recorded Live in Europe on July 9, 11, 13 & 23 in 1981

Personnel: Gil Evans(p, key), Lew Soloff(tp), "Hannibal" Marvin Peterson(tp, vo, perc), Miles Evans(tp), Steve Lacy(ss), David Sanborn(as), Steve Grossman(ts, ss), Dave Bargeron(tb, tuba), George Lewis(tb), Howard Johnson(tuba), Pete Levin(key), Hiram Bullock(g), Lucio Hopper(el-b), Buster Williams(b), Omar Hakim(ds), Anita Evans(perc)

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2007年12月 8日 (土)

OTB:若さまかせの...あるいは血気盛んな...

Otb "Out of the Blue" O.T.B. (Blue Note)

新生Blue Noteレーベルがオーディションで見つけ出した有能な若手により結成させたグループのデビュー・アルバムである。"Out of the Blue":日本語にすれば青天の霹靂ってやつだが,活きのいいというか,勢いまかせというか,とにかく若さにまかせて突っ走りましたという感じのアルバムに仕上がっており,ある意味ここまでやれば爽快感にあふれたアルバムということが出来ると思う。こうした感覚はRalph Petersonの"V"につながっていくものだが,当時のハードバップ・リバイバルの様子を思い出すにはいいアルバムである。

メンバーのレベルはオーディション(総勢では35人が最終的に参加したとジャケには書いてあるが,これは最終選考ということであろう)をくぐり抜けてきただけに総じて高いが,現在まで第一線で活躍を続けているのはKenny GarrettとBob Hurstぐらいか。もちろん,Ralph Petersonもそれなりにリーダー・アルバムを発表しているが当時の勢いはもはやない。Harry Pickensもいいピアノなのに惜しい。彼らのように実力はあるのになぜなのだろうとは思うが,プレイヤーとして優れた人たちが必ずしも活躍できないのはおそらくはリーダーとしての資質の欠如なのだろう。

収められている曲は全てメンバーのオリジナルであるが,作曲の才能もそれぞれに認めなければならないとしても,やはりこのアルバムは演奏の勢いを楽しむべきアルバムだと思う。私はこのハード・ドライビングな感覚を好むので,星★★★★ぐらいには評価したいと思う。その後O.T.B.はメンバーを変えながら活動を続けていくが,私はこのアルバムと,「マウントフジ」でのライブ盤が特にいいと思っている。ほかの作品ももちろん悪くはないのだが,この調子を続ければ,早晩マンネリに陥るのはわかっていた。世の中勢いだけでは生きていけないということである。なんか彼らが活動していたバブル前夜あるいはバブル期真っ盛りの時期の世情と重なるように感じるのは私だけだろうか。

尚,このアルバムのジャケット写真のイメージがなかなか見付らないため,eBayで拾ってきたJPEGを借用している。

Recorded on June 7&8, 1985

Personnel: Michael Phillip Mossman(tp, flh), Kenny Garrett(as), Ralph Bowen(ts), Harry Pickens(p), Robert Hurst(b), Ralph Peterson(ds)

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2007年12月 7日 (金)

辛島文雄トリオとLarry Coryellの共演盤

Photo "Round Midnight" 辛島文雄トリオ with Larry Coryell (Fullhouse)

このアルバムが出た当時の辛島文雄トリオはその実力からして,日本を代表するピアノ・トリオの位置付けにあったと思うが,その辛島が当時のKenwood系列のFullhouseレーベルから,Larry Coryellをゲストに迎えて放った佳作である。

当時,Coryellと言えば,アコースティック1本で「ボレロ」をやったりして,日本での人気もある程度あった頃だと記憶しているが,Coryellが登場するのはLPではB面に当たる3曲である。しかし,これは演奏的には決して悪くないものの,辛島がCoryellに遠慮したか,ギターのミキシング・レベルが妙に高く,辛島のピアノの魅力を損なっているようにも思えるのは少々残念である。

また,CoryellはここでもOvation一本で勝負しているが,このサウンドが辛島トリオと完全フィットかというとこれまた若干疑問である。Coryell参加3曲中1~2曲はアコースティックでもよかろうが,いくら一部で電気増幅したサウンドを聞かせるとは言え,全部Ovationというのはどうだろうか。

ということでCoryellを批判していながらも,いつもの辛島トリオがA面で楽しめるし,B面ではいつもとやや違う辛島が楽しめると思えばいいだろうか。収録曲は有名スタンダード/ジャズ・オリジナルばかりだから,ある意味安心して楽しめる。その中ではピアノ・トリオでは"Oleo"が,Coryell参加曲では"Footprints"がいいように思うが,"Nica's Dream"も意外にいけている。冒頭にも書いたとおり,本作は星★★★☆程度には相当する佳作ではあるが,プロデュースがもう少し何とかなっていれば,あと半星は上がったのにと思う。

Recorded on August 10 & 11, 1983

Personnel: 辛島文雄(p), 桜井郁雄( b), 日野元彦(ds), Larry Coryell(g)

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2007年12月 6日 (木)

Gil Evansとの共演でもおなじみのChris Hunterの初リーダー作?

Chris_hunter "Chris Hunter" Chris Hunter (Atlantic)

Gil EvansのMonday Night Orchestraでメジャー・シーンに登場した英国出身のChris Hunterによるこれがおそらくは初リーダー作である。これが完全なフュージョン作となっていて,本当にこれがHunterの資質に合っているのか疑問を感じさせるアルバムである。

サウンド的には完全にDavid Sanbornの線である。当時のフュージョン・シーンで売れ線を狙うならこうしたサウンドになるのは仕方がないところであるし,また,HunterにももともとSanbornからの影響があることも否定しがたい。また,GilのバンドではSanbornが長くメイン・ソロイストのポジションにあったから,アルトではSanborn的なものを求められることも理解できる。しかし,これではNelson Rangellと何が違うのかと言われても仕方ない。

アルバムとしては製作総指揮がJohn Snyder,プロデュースがDon Sebesky,バックのメンツも結構豪華とそれなりの予算を掛けているようにも思えるが,いかんせんサウンドに加えて,これまた売れ線狙いの選曲が鼻につくのである。”Georgia on My Mind"やPrince作"Purple Rain",Stevie WonderがMichael Jacksonに書いた"I Can't Help It",更には"America the Beautiful"と来ては何をか言わんやである。

はっきり言ってこのアルバムを市場で見掛けることもそれほど多くはない(よって,このアルバムのジャケの画像も探すのが大変だった)が,いずれにしてもChris Hunterとしても決して納得のいく出来のアルバムではあるまい。これも時代が生んだ徒花フュージョン・アルバムの一枚と言ってよいだろう。星★★。最近ではChris Hunterの名前を聞くことも少なくなったが,この人にはオリジナリティと言う点では問題があったのかもしれない。日本のレコード会社の製作で何枚かアルバムを出しているものの,結局はGil Goldsteinらの共演者に助けられていた部分も多いのかもしれない。(そう言えばNelson Rangellの名前も見かけなくなったなぁ。)

Recorded in May and June, 1986

Personnel: Chris Hunter(as), Hiram Bullock(g), Richard Tee(p, key), Anthony Jackson(b), Darryl Jones(b), Steve Jordan(ds), Clifford Carter(synth), Joe Bonadio(perc)

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2007年12月 4日 (火)

Blue NoteのDuke Jordanを久々に聴くと...

Flight_to_jordan "Flight to Jordan" Duke Jordan (Blue Note)

このアルバムを聞くのも随分久しぶりである。もしかしたら学生時代以来聞いたことがないぐらいだったかもしれないが,亡き父のCDラックから引っ張り出して聞いてみた。一聴して思うのは,どこから聞いてもDuke Jordan節に満ちているということであった。

私にとってのDuke Jordanと言えば,"Flight to Denmark"ということになっているが,このアルバムを聞いて思ったのは管が入ると,Jordan節がより濃厚に感じられるということかもしれない。"No Problem"即ち「危険な関係のブルース」も"Si-Joya" というタイトルで収められており,これはこれでいいのだが,このアルバムの色彩を決定付けているのは冒頭の"Flight to Jordan"ということになろう。このメロディ・ライン,誰がどう聞いてもJordanのオリジナルである。決して美メロというわけではないが,何ともファンキーで記憶に残るメロディ・ラインである。いいねぇ。

また,久々に聞いて思ったのが,Dizzy Reeceが結構朗々とラッパを吹いていているし,Stanley Turrentineもいけてるフレージングでなかなかの好演ということである。どうも私はDuke JordanについてはSteeple Chaseレーベルのそれもピアノ・トリオ盤ばかり聞いていて,こうした管入りアルバムに留意してこなかったし,ReeceやTurrentineも勝手に過小評価していたのは失敗だったなぁと痛感してしまった。折に触れ,こうしたクラシックなアルバムも聞いてみないといかんと反省。反省の意味も込めて星★★★★☆を謹呈しよう。

尚,このアルバム,CDにはボーナス・トラックが2曲収められているが,最後のトリオで演奏される"I Should Care"でしみじみと終えるというのはなかなかよかった。

Recorded on August 4, 1960

Personnel: Duke Jordan(p), Dizzy Reece(tp), Stanley Turrentine(ts), Reginald Workman(b), Art Taylor(ds)

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2007年12月 2日 (日)

久々にMiles Davisを:沈黙後の復帰作

Man_with_the_horn "The Man with the Horn" Miles Davis (Columbia)

Milesが長い沈黙を破ってシーンへの復帰を遂げた1981年の超話題作である。同時代のリスナーの殆どが,LPのファクトリー・シールを破り,A面に針を降ろす瞬間に何らかの緊張を覚えたはずである。私も同様であるが,私が最初にこの音源の一部(多分"Fat Time"だったと記憶しているが...)を聞いたのはタモリの「オールナイト・ニッポン」においてだったと記憶している。タモリが深夜放送で掛けるぐらいの期待を持たれていたということも,今となってはかなり懐かしい。

このアルバムについてはいろいろな意見があるのは承知しているが,全体的に見れば,ファンも十分納得できる出来だろうと思う。収録曲では"Back Seat Betty"と"Aida"が後年のライブにおける重要レパートリーとなっていくが,衝撃度と言う点ではやはり冒頭の"Fat Time"の1発目のMilesのミュート・トーンであり,Mike Sternのぶっ飛んだギター・ソロである。私にとって,やはりこのアルバムと言えばこの"Fat Time"ということになる。当時はこれまたいろいろ言われたMike Sternだが,ここでのバッキングやソロを聞いて興奮しないリスナーはもぐりだと言いたいぐらい興奮させられてしまったのである。そのほかの曲で弾いているBarry Finnertyにこうした興奮度を求めることはできないのである。よって,私はMike Sternをこのアルバム以来ずっと評価しているし,今でもファンである。

一方,Milesに往年の姿を求めるリスナーは"Ursula"の4ビート的な展開に落涙すること間違いなし。以上の4曲についてはかなりハイブラウでスリリングな出来のよい演奏であり,5つ星を謹呈したいところであるが,如何せんHerb Alpertの出来そこないのような"Shout"と軟弱AORもどきの"The Man with the Horn"は減点対象とせざるをえない。この2曲も決して悪い出来ではないのだが,私にとってはほかの曲との落差が大きい過ぎるのである。ということで星★★★★。しかし,全体で見れば,後にポップ度を増すMilesよりははるかにMiles的だと思うのは私だけだろうか。

尚,本作のもう一つの聞き所はMarcus Millerの鋭いスラッピング・ベース。Marcusの演奏でも屈指のものと評価したい。

Personnel: Miles Davis(tp), Bill Evans(ss), Mike Stern(g), Barry Finnerty(g), Marcus Miller(b), Al Foster(ds), Sammy Figueroa(perc), Randy Hall(vo, g, perc, synth), Robert Irving, III(p, key), Felton Crews(b), Vincent Wilburn(ds)

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2007年12月 1日 (土)

John Klemmer:やればできたのに...

Nexus "Nexus for Duo and Trio" John Klemmer / Carl Burnett / Bob Magnusson (Novus)

このアルバムが発売された当時,John KlemmerはElektraレーベルとの契約があったため,アルバムは3者のコ・リーダー・アルバムのようになっているが,Klemmerがプロデュースしているし,ジャケでもKlemmerだけが色違いで表記されているので,これはKlemmerのリーダー・アルバムと言ってよい。

John Klemmerと言えばフュージョン系サックス・プレイヤーと思われているのが通常だが,そのKlemmerが放ったこのハイブラウなアルバムはもっと知られてもよいのではないかと思う。何せピアノレス・トリオまたはドラムスとのデュオ(LPの2枚目は全曲ドラムスとのデュオだっ!)というフォーマットで,それこそKlemmerがテナーを吹きまくっているのである。しかも吹いているのは最後の"Nexus"を除けば,スタンダードや有名ジャズ・オリジナルばかりである。

"Misty", "Body And Soul", "Mr. P.C.", "God Bless the Child", "My One and Only Love", "Softly As in a Morning Sunrise", "Impressions", "Four", "Nexus"

こうした曲でKlemmerが非常に強烈なブロウを聞かせるのであるから,それまでのイメージが狂うというか,Klemmerというミュージシャンを見直すというか,それはびっくりという印象の方が強いアルバムではないかと思う。結局のところ,「やればできるじゃん」という世界だが,この路線でやっていれば,John Klemmerというテナー吹きはもっとメジャーになりえたのだろうと思うと惜しいような気がしないでもない。

もちろん演奏に文句がないわけではない。Bob Magnussonのベースの増幅された音や,相変らずうるさいドラムスを叩くCarl Burnettという共演者の選択には改善の余地があったと思う。特にBurnettはなぜArt Pepperが重用したのかいまだによくわからない大したことのないドラマーだけに,ここはElvin Jonesあたりに三顧の礼を尽くして登場願った方がはるかによかっただろう。

しかし,Klemmerが敢えてこうしたレコーディングに取り組んだということは認めてよいし,このテナー・サウンドを浴びてしまえば,大概のことは許すと言ってしまうのではないかと思う。かなりの硬派のアルバムゆえ,再発の可能性は薄い(短縮版CDは発売されたことがあるらしいが...)かもしれないが,認識しておいても損はないアルバムであるとともに,テナーサックス好きは必聴のアルバムと言える。いずれにしてもKlemmerだからと言って食わず嫌いは避けた方がよい。星★★★★。それにしてもこのアルバムの国内盤が発売された事があるということ自体今にして振り返れば驚きである。

Recorded in LA

Personnel: John Klemmer(ts), Bob Magnusson(b), Carl Burnett(ds)

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2007年11月28日 (水)

フュージョンやっているDave Liebman

What_it_is "What It Is" David Liebman(Openskye)

またまたLiebmanである。

これはやはり異色作と言ってよいと思うが,おそらくDave Liebmanが最もフュージョンに傾斜したアルバムである。日本のソニー系列のOpenskyeというレーベルから発表されたものであるが,私が結構Liebmanのファンだからと言っても,あるいは豪華なメンツが参加しているからと言ってもこのアルバムはやはり評価しにくいところがある。フレージングはいつものLiebmanなのだが,伴奏がかなり硬派とは言え完全なフュージョンなのである。ついでにStonesの"Miss You"なんてやられては相当ずっこける。これは時代が生み出したやはり徒花盤の一つと言ってよいかもしれない。

アルバムを聞いていると,結局最もいいのは冒頭の"Paoli's Vision"ではないかと思ってしまうが,Liebmanのソプラノに深いエコーが掛かっているのは何とも違和感がある。また,"Chick Chat"はChick Coreaとのツアー中に書かれたものとのことだが,Chick Corea的なサンバのリズムに乗って軽快に展開されているが,まんまChickのような曲調はどうなのよと言いたくもなる。

はっきり言ってしまえば,ここでのMike Mainieriのプロデュースはうまくいっているとは思えないし,Liebmanとしてもこうした演奏が成功しているとは思えない。せっかくこれだけのメンツをそろえているのにこれは惜しい。ここはもっとハイブラウにやって欲しかったというのが正直なところである。確かにこのアルバムが吹き込まれた当時,LiebmanはChick Coreaのバンドや日野皓正のバンドでややフュージョンよりの活動をしていたような記憶もあるが,その後Liebmanがそうした活動から足を洗ったように思えるのは本人としても資質との違いを認識していたからではないだろうか。星★★。

Recorded in 1979

Personnel: Dave Liebman(ss, ts, synth), John Scofield(g), Kenny Kirkland(p, key), Marcus Miller(b), Steve Gadd(ds), Don Alias(perc), Mike Mainieri(synth)

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2007年11月27日 (火)

ピアノもヴァイブもいけてるDon Thompson

"Country Place" Don Thompson(P.M.)

Country_place_2 先日,Ed Bickertとの共演盤を取り上げたDon Thompsonであるが,本盤は本業のベースを離れ,ピアノとヴァイブに専念したアルバムであるが,これが結構いけている。

リズム奏者でピアノもうまいと言えば,Jack DeJohnetteを思い出すが,それといい勝負と言っても過言ではない。冒頭の"Country Place"からして,曲名どおりのフォーク・タッチを聞かせているが,3曲目の"Sasha's Delight"などは一転してスピーディでスリリングなピアノ演奏を聞かせており,ピアニストとしての引き出しの多さを示すなかなかの多彩振りである。それをバックでJoe LaBarberaが煽るというのであるから意外と言えば意外である。Bill EvansのバックのときよりもこのLaBarberaはかなり激しい。

また,LPのB面冒頭を飾るThompsonのヴァイブが美しい"Second Voyage"は,その曲名からも想像されるHerbie Hancock作"Maiden Voyage"へのオマージュ(かなり「まんま」である)と言えるが,このあたりがピアニストDon Thompsonへの影響度を探るヒントになるのかもしれない。かと思うと,"Full Nelson"なんて曲はかなりフリーぽく迫ってくるし,最後の"Song for Sonny"ではまたもフォーク・タッチで牧歌的に締めくくっているのだから,悪く言うと捉えどころがない。

しかしながら,このアルバム,Don Thompsonの多彩なスタイルを捉えたアルバムとしてピアノ・トリオ好きは買っても損はないだろう。今年になってCDでも再発されたようで,入手が楽になったことはめでたい限りである。星★★★☆。

なお,本作のエンジニアは何とあのJan Hammerが務めている。これまた意外と言えば意外な組み合わせと言えるが,ベースのGene Parla(レーベル・オーナーのはずである)とHammerはP.M.レーベルでの録音で結構共演したりしているので,その縁でこういうことになったのであろう(そう言えば,Hammer参加のElvin Jonesの"On the Mountain"ではParlaがエンジニアだったような)。これが所謂ミュージシャン・シンジケートってやつですな。

Recorded in December 1975

Personnel: Don Thompson(p, vib), Gene Parla(b), Joe LaBarbera(ds)

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2007年11月26日 (月)

フュージョン色濃厚なArt Farmer作品

Crawl_space_2 "Crawl Space" Art Farmer (CTI)

Art Farmerがカッコをつけたジャケットを見るだけで,微苦笑せざるをえないアルバムであるが,これはArt Farmerとしては相当フュージョン色の濃いものとなっている。ここでもArt Farmerはほぼフリューゲルホーンに徹しているので,サウンド的にChuck Mangioneかっ!と言われても仕方がないような作品とも言えるのだが,結構曲がいいので,飽きることがなく聞けるというのが正直な感想である。

メンツからしても完全にフュージョン的であるが,ここでのサウンド的なテクスチャーを仕切っているのはおそらくDave Grusinである。結構ファンキーな"Crawl Space"にしても,メロディ・ラインが美しい"Chanson"(Lee Ritenourの”Gentle Thoughts”のこの曲もよかった)にしても,ナベサダと共演している頃のイメージが強く出ており,Grusin節と言っても過言ではない響きである。

その他の2曲はFritz Pauerがアレンジをしているが,雰囲気が大きく変わることはない。Fritz Pauerも長年Art Farmerとは共演していることもあり,Farmerのリリカルな特性はきっちり理解していると言うことであろう。

ということで,演奏として全編破綻はないし,相応に楽しめるのだが,私がこのアルバムを聞いていてやや辟易とさせられるのが,Jeremy Steigのワンパターンと言ってもよいノイジーなトーンである。これでは馬鹿の一つ覚えと言われても仕方がないのではないか。何でもかんでもノイジーなトーンで吹けばいいってものではない。ということで,それが減点材料となって星★★★。

Recorded in January 1977

Personnel: Art Farmer(flh, tp), Jeremy Steig(fl), David Grusin(key), Eric Gale(g), Will Lee(el-b, perc), George Mraz(b), Steve G